I am the perfect and ultimate XX   作:生物産業

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第15話 あのバカたちをぶちのめして♪

 福助がスポットを占有しに行ってから、数時間後。

 普段なら掻かない汗を額に浮かべながら、Dクラスが拠点にしているところまで戻ってきた。

 彼が戻って来て早々に見たのは、男女に分かれて言い争いをしている姿だった。

 特に目立つのが、池と篠原の言い争いだ。

 

「クラス抗争の勃発か?」

 

 Dクラスらしいなと感じながら、言い争いから少し離れて様子を見ている桔梗に話を掛ける。

 

「あ、お帰りなさい。あのバカたちをぶちのめして♪」

「笑顔と可愛い声が怖すぎる。周囲の人間に聞かれたら大変だぞ?」

 

 桔梗もそれは分かっているようで、笑顔を崩さない。例え聞こえても、勘違いで通すための小細工だ。

 

「言い争いの理由は?」

「うーん、お互いがお互いの利益を主張しているって感じかな。池君はポイントを増やしたいから、いろいろ我慢しろって感じで、篠原さんは女子的にきつい部分はポイントを使おうって感じかな。池君も篠原さんも譲れないラインが高すぎて、平田君を巻き込んであんな感じ。篠原さんは女子の中でも意見を言える子だから、女子と男子に分かれちゃってる」

「アホ草。だったら、最初の1か月で減点行為を行ったやつからポイント徴収するぞ。少なくともあの二人は対象だ」

「それを言い出したら、クラス崩壊待ったなしだね」

「よし」

 

 崩壊させるかと、特攻を仕掛けようとした福助の腕を桔梗が掴む。笑顔で首を横に振り、絶対にやるなと釘をさす。

 

「もう面倒だから、女子と男子でポイント分け合えよ。で、最終結果で得たポイントから差額分を計算して、毎月徴収すればいいだろ」

 

 お互いに150ポイントづつにして、男女で消費する。最終的に100ポイントが残った場合に、女子が70、男子が30であれば、毎月支給されるプライベートポイントをもらった後に、差額分4千ポイントを男子から徴収して、女子に渡せばいいと福助は言っている。

 

「完全にクラスが男女に分かれるよね? 先が見えないよ」

「人様が汗水流して、ポイントゲットして来たのに、下らん言い争いをしているからだ。崩壊してしまえ」

「3時間は経ってないよね? 私たちもこの拠点を見つけてるまでに時間かかったから。まあそれも、福田君が占有した後だったけど」

 

 Dクラスが見つけた場所は、既に福助が占有したものだったが、クラス単位で移動していたため、たどり着いたのは福助が占有してから1時間後。

 その後、島の探索や生活拠点作成など班分けを行い、茶柱から渡されたポイント消費での生活用品などの確認をしているうちに今に至ったのだ。

 

「とりあえず、20か所は占有してきた。この島、人の手が入っているから、痕跡をたどれて楽だった。おそらく去年も使われたんじゃないか? その後、今年も使えるように管理者が手を入れた感じかな? 畑とかあったし、季節に合わせたものが植わってたよ」

「に、20って……本当に人間?」

「他のクラスが拠点にしそうなところは先に占有してきた。わざと拠点向きじゃないところを残してきたから、ちょっと困ってるかもね。まあ8時間程度だし、夜は怖いかもだけど、精神修行の一環だよね」

「クズな性格。うん、人間だ」

 

 福助が桔梗の頬を無言で引っ張る。「いらりよ~」と頬を掴まれているため、上手く言語出来ていないが痛がっているようだ。

 桔梗の小さな叫びが聞こえてしまったのかもしれない。もしくは、ひたすら桔梗と福助のやりとりを注視していた人間がいたとか。

 クラスのマドンナが苛められていれば、当然気づかれる。

 櫛田大好き人間の一人、山内が声を上げた。

 

「おい福田、なに桔梗ちゃんを苛めてるんだよっ!」

 

 この島に来る前の船内で、名前呼びを許可してもらった嬉しさからか、ここぞとばかりに桔梗の名前を叫ぶ。

 山内の声で、クラスメイトの視線が福助と桔梗に注がれる。

 福助はそんな視線のものともせず、桔梗の頬をぐいぐいと伸ばす。

 

「人様が苦労してスポットを占有してきたのに、くだらない争いをしているから櫛田が罰を受けている。文句があるなら、これだけの時間があって何も決まっていない自分たちのアホさに言ってくれ。ポイントを減らすことをぐだぐだ言ってる奴は明日以降のリーダーで満足いくまで稼いで来い」

「はにゃして~」

「全く、罪のない櫛田にこんな非道な仕打ちをするなんて、酷いクラスだ」

「酷いのは福田君じゃないかな?」

 

 平田がやって来たところで、桔梗から手を放す。

 顔を押さえながら涙目で睨む桔梗を無視しながら、福助は話を始める。

 

「とりあえず、食料調達の目途はたった。男女で収穫に行って来てくれ」

 

 ポケットに忍ばせていた手帳を平田に投げる。

 

「こ、これは……」

「島の全観とスポットの位置、あと野菜とかの収穫場所だ。移動しながらマッピングしてきた」

「……すご。普通に地図じゃん」

「現代の伊能忠敬と呼んでくれ」

 

 平田の後ろから覗き込むように見ていた恵が驚きの声を上げる。

 それにつられて、クラスメイトがわらわらと寄ってくる。

 手帳を見た生徒からは、「精密すぎて逆に気持ち悪い」、「もう福田君一人で良いんじゃないかな」などという声が聞こえる。

 

「俺は明日にはリタイアできる算段がついた。徹夜して島を回れば、問題ないだろう。ということで、クラスの皆は楽しくサバイバルしてくれ」

 

 汗をながしてくると言って、福助がその場から離れる。

 

「皆聞いてくれ。福田君が得た情報からこの特別試験でどれだけのポイントを残すか、考えがあるんだ。ただ、男子と女子では譲れない部分があると思う。始めからになってしまうけど、もう一度話し合おう。女子は櫛田さんが意見をまとめてくれないか? 男子は幸村君とキャンプ経験者の池君が取りまとめて欲しい。感情論ではなく、無理のない範囲で」

「任せて♪」

「分かった」

「俺も」

「堀北さんには、僕の意見を聞いてもらいたい。何かあれば指摘してくれ」

「分かったわ」

「皆、これは試験だということを忘れずに! 普段と同じような生活はできないことは覚悟して欲しい。それでも地獄のサバイバルのような真似はしたくない。福田君なら最終日に軍隊みたいなクラスを作りそうだけど、僕には無理だから、皆の力を貸して欲しい」

 

 サーイエッサーとクラス全員が乱れずに言う光景を想像し、嫌そうに顔をゆがめるDクラス。

 ポイント至上主義を行えば、そのような未来もあるだろう。

 平田が冗談ぽく言って笑いをとるつもりだったが、日頃の言動により冗談だと捉えられず青い顔をした女子生徒が若干名。

 

 ある意味では福助という敵に対して、一致団結するDクラスであった。

 

 ◆

 

「ふぅ~」

 

 近くの川で汗を流す。

 開けた場所であるため、日光を頼りに髪を乾かす。

 上半身は裸になりながら、次のスポット占有に向けて英気を養っていた。

 

「福田君」

 

 ちらりと声の方に視線を向けると、そこには松下千秋が立っていた。

 クラスの話し合いは続いているようなので、一人で抜けてきたようだ。

 テストの勉強会で会話した程度で特別親しいというわけではない。

 それだというのに、特に気にした様子もなく千秋は福助の横に腰を掛ける。

 

「松下か。何か用? シックスパックの拝観料とるよ」

「自分で見せびらかして、お金取るって詐欺じゃない?」

「あ、確かに。まあ、俺もいつも女子生徒の絶対領域ガン見してるからね。ジャージとか滅べばいいのに」

「……」

 

 千秋の絶対零度の攻撃。しかし、福助には効果がなかった。

 

「いやいや、松下の視線だってシックスパックに行ってるでしょ? これは自然の摂理」

「親しくもない女子に、太もも見てますっていう男子はモテないよ」

「正直者なんだ、すまない」

「正直に言えば、なんでも許されるじゃないから」

 

 千秋の正論パンチ。福助のライフが大幅に削られた。

 

「……佐倉にも似たことを言われた気がする」

「……反省してないってことだよね?」

「男の子だもの」

「だものじゃないよ」

 

 はぁ~と呆れる千秋。

 なんで話しかけたんだろうと後悔しつつも、千秋は話を続ける。

 

「福田君は明日にはリタイアするつもりだっけ?」

「まあね。サバイバルは嫌いなんだ」

「何かあったの?」

「……俺の経歴は?」

「大卒、社長」

 

 端的に自分の知っている情報を伝える千秋。

 

「お金を持っていると、身の危険があるんだよ。で、友人の勧めで傭兵会社に護身術を学びに行ったんだけど」

「……友人は選んだ方が良いと思う」

「いや、良い奴なんだ。ちょっと突飛な発想をするだけで。それで、護身術とは名ばかりの拷問訓練が始ってね。無手や銃を使った本格戦闘を嫌って程経験させられたんだ。この腹筋はその時に出来た。福助成長編だな」

「海外って凄いね」

「いや、その会社がおかしかっただけ。山の中に装備なしで放置されて、5頭の熊をけしかけられた時は、さすがに死ぬと思った」

「……普通死ぬよ」

「人類最大の武器、投擲があったからね。150kmくらい投げたかもしれない」

「それ、普通にプロ野球選手」

 

 福助の異常な身体能力に驚愕する千秋。ただそれを身に付けた過程が全く笑えなかった。

 

「スネークアイランドに連れていかれた時は、毒蛇とのキャッキャウフフの逃避行。フルマラソンを完走できる体力が付きました。視界が蛇で覆われると、もう笑いしか起こらない。福助進化編だな」

「……もう」

「その帰りには強盗、殺人なんでもござれのスラムに高級品を身に付けさせられて放置なんてものあった。飛行機代として、売り払って逃げ切るまでがミッション。住民全てがハンターで、脅す前に銃をぶっ放すから、危機察知と緊急回避、相手の動きからの予測スキルが格段に向上しました。命がけって凄いのよ。福助人間をやめる編だな」

「……もう大丈夫です」

「この島は人の手が入っているから、そういう心配はしなくて大丈夫だ。危険なのはウミヘビくらいかな。まあそこら辺の配慮はあるでしょ」

「……凄く心配になったんだけど」

「血清とか準備しているはず」

 

 まず蛇に嚙まれたくないというのが千秋の感想だ。

 

「そんな感じでサバイバルは嫌い」

「うん、普通の人はトラウマか、死んでるね」

「よせやい、超人だなんてテレるじゃないか」

「紛うことなき超人だよ」

 

 福助のハイスペックぶりに千秋の顔は大きく引きつる。

 

「それで何の用? コイバナは大歓迎だけど」

「コイバナじゃないけど、ちょっと相談かな。ほら、既に社会人じゃん、福田君って。経験豊富だと思って」

「仕方ない。媚薬を盛られたとき、いかに冷静に乗り切るかの上級編を教えてしんぜよう。福助ドキドキ編の開始だ」

「……私の想像する社会経験じゃない」

 

 普通の社会人は薬を盛られないのだ。

 

「松下は美人さんだから気を付けた方が良い。世の中にはとんでもない奴がいるんだ。自分のアンダーヘアを食わせようとする変態が男女ともにいるしな」

「ごめん、褒めてくれて嬉しいんだけど、その後の話ですべて気持ち悪くなったよ」

 

 一体どんな生活を送って来たのか、尋ねようと思った千秋だが、思わぬの返答に気分が悪くなりそうなのでやめた。

 

「で、誰が好きなんだ? 平田か? それともちゃっかりイケメンランキングなるものにランクインしている綾小路か? 唯我独尊高円寺という可能性も……」

「どれも違うし、コイバナはまだしないかな。もう少し仲良くなったら相談するね」

 

 コイバナは仲の良い友人同士で行うものだ。ぽっと出の男など不要である。

 

「福田君は、卒業後は自分の会社に戻るの?」

「戻らない。俺がいなくても問題ないしね。筆頭株主の地位は渡さないけど」

「ひぇー、高校1年生の言葉じゃないね」

「ぶっちゃけこの学校を乗っ取るのもありだと思っている」

「へ?」

 

 とんでもない発言に千秋の目が点になる。

 

「これだけの規模で将来有望(笑)な生徒を好き勝手出来るなら、俺としてはもっと日本教育の在り方を変えれそうなんだよね」

「(笑)って言われると、ちょっと傷つく。でも、凄いこと考えているね」

「手を抜いて普通ちゃんを演じてる松下は十分(笑)だよ」

「え?」

 

 福助の何気ない一言。だがそれは千秋を驚かせるには十分なものだった。

 

「勉強会でわかった。少なくとも、テストの結果通りの学力じゃない。わざと点数下げてるだろ?」

「……」

「天才とは言わないけど、学習能力は高いよ。俺が協力すれば、どこの大学にも入れるさ。海外を含めてね」

 

 松下千秋は優秀な人間だ。それは自分でも認めている。

 裕福な家庭に生まれ、自他ともに認める容姿、今までの人生を表すなら順風満帆と言えるだろう。

 だが、それは学生での話だ。福助のような天に愛された人間と言うわけではない。例え福助が居なかったとしても、この学校で学年1位の成績を取れると思えるほど驕ってはいない。

 Dクラスに配属されたこともあって、自分が優秀だと信じ込んでいる鈴音のように周囲と軋轢を生むようなことを避け、平均的な人間として振る舞うくらいの精神性は持っている。

 ただ、その振る舞いが見破られるとは思ってもみなかった。会話もろくにしたことのない男子にだ。

 

「自分のやりたいようにやっているならそれが一番。進路はおおざっぱに決まってる感じ?」

「ううん、まだ分かんないかな。海外の大学に行ってみたいと思ったけど、福田君レベルがうじゃうじゃしてたら、私じゃ太刀打ちできないし」

「俺みたいなのはあんまりいないさ。堀北レベルが有名大学のスタートライン」

「うわぁ~言い方が嫌な感じが、天才っぽい」

「事実だから。いちいち気にしない。それとも平田みたく優しく言った方がモテる?」

「ん~平田君が言うからモテるのであって、福田君が言っても効果がないかも」

 

 他人のスペックには厳しい千秋。福助がそうであるように、お世辞などは言わない。

 

「どうすればモテるだろうか?」

「いや、普通にしてればモテると思うよ。頭いいし、運動できるし、行動力もあるし、社長さんだ。モテないほうがおかしい」

「つまり世間がおかしいと? まだ時代が俺についてきてないと?」

「……そだね」

「含みのある同意をありがとう。ペースダウンを心がけるよ」

「ブレーキは踏みっぱなしの方がいいかも」

 

 まずは止まれと、松下神の素敵なアドバイスだ。

 

「でも、なんでモテないんだろうね? 普通に会話してても楽しいよ。惚れたりはしないけど」

「ねえ、笑顔で俺の繊細な心をドリルでえぐるのやめてくれない?」

「あははは、またまた御冗談を。あ、笑いも取れるし、どうしてモテないのかな?」

「く、これが顔面偏差値の高い人間からの差別か」

「学力偏差値が高い人間の差別と同じだよ♪」

 

 松下千秋、恐ろしい子。

 福助は、隣に座る美少女の底知れない闇を見た気がした。気がしただけだが。

 

「福田君、学校に戻ったら英語を教えて欲しいな。主にスピーキング」

「美少女からの誘いはお金を集られない限り断らない。おk、ビジネスからスラングまできっちりと仕込んで見せよう」

「よくよく考えれば、英語に堪能な福田君がいるんだから、普通に授業を受けるより、将来のためになるよね。みーちゃんもいるし、中国語を学ぶのも面白いかも」

「王か。美少女たちが仲睦ましく会話をする……尊し」

「あーそういうところがモテないかな。顔は決して不細工じゃないから、発言の一つ一つが問題だね」

「くっ! 顔面偏差値70に、48の気持ちは分からんっ!」

「あはは、51くらいはあると思う」

「平均越えどうもッ!」

 

 クスクスと笑う千秋に、いつか顔面でマウントを取るのだと心に誓った福助。金を使えば顔などいくらでもいじくれると、邪悪な笑みを浮かべて。

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