I am the perfect and ultimate XX 作:生物産業
夏休みも終わり、新学期初日。学校に向かう途中で、久しぶりの顔を見つけた。
夏休み前に生徒会室に呼ばれて顔を合わせたのが、最後だ。
「おはー、マナブ君。彼女と朝登校とかムカつくから眼鏡に指紋ベタベタつけていい?」
「俺と橘が交際関係にあるという事実はない。故にお前に俺の眼鏡を触られるいわれもない」
生徒会長堀北学と、書記の橘茜が仲良く登校していた。
福助の彼女発言に顔を赤らめたり、学の否定に肩をがっくり落としたりと忙しい茜。
「橘パイセン、どんまい」
「べ、べつに、わ、私は……何でもありませんけど」
「マナブ君、なぜこの女子力を妹に身に付けさせなかった? 兄として失格だぞ」
「昔の鈴音はこういう表情をしていた」
「まじで!?」
顔をあからめて、恥ずかしそうにする鈴音を想像する。しかし、乙女丸出しの姿が、全くイメージできず、罵倒が返ってきて終了した。
「あいつが今のようになったのは、俺の責任なのだろうな」
「あ~なるほど、はい、理解。ブラコンプギャーって後でチャットしておく」
優秀でイケメンな兄に妹がひかれる。良くある話だ。
「意味は分からんが、やめておけ。それにお前の方がどうなんだ? 意中の相手でもできたか?」
「マナブ君とコイバナはテンションが上がらないぞ。橘パイセンのコイバナが聞きたいっす」
「わ、私ですか!?」
「女性にそういうこと軽はずみに聞くから、お前はモテないんだ――と綾小路がお前の性格を言い表していたな」
「よし、屋上からノーロープバンジーさせよ」
「死んじゃいますよっ!?」
茜が危険思想の福助にびっくりする。
「いや、ワンチャン無傷で生還。普通に骨折、最悪死亡くらいの確率だと思う」
「屋上ですよ!?」
「人間がんばれば、空を飛べる」
「本当ですか!?」
「橘、からかわれているぞ」
「え?」
「冗談だ」
「冗談の冗談です」
「二人してからかってますよね!?」
もうどっちを信じていいか分からない茜だった。
「お前は生徒会に入る気はないのか?」
「全く。何度も言ってるでしょ?」
「俺は有能な人材を放っておくつもりはない」
「俺は学生のお遊びに付き合う気はない」
3年の生徒が聞けば、飛び上がって驚きそうな発言だ。
黙ってはいるが、不満そうな茜の表情をみれば、学への信頼感が伝わってくる。
ただ、学本人が、福助の方が優れていると認めたのだ。その時の茜は口を大きく開けて、あられもない顔を晒していたが。
その信じがたい事実があるため、茜は眉をひそめて話を聞くだけにしている。
「やはりダメか」
「妹でも誘え」
「今のあいつでは生徒会に入ることはできない。しかし、成長したあいつならどうだろうな?」
「楽しそうじゃん。同じ学校にいるんだから、声を掛けてやればいいのに」
「俺が接触することで、あいつが厄介ごとに巻き込まれる可能性がある」
「ほーう、良いお兄ちゃん」
「内緒な」
表情は硬いのに、ウインクをしているような茶目っ気を感じる。
これは完全なイケメンと、福助が心の中で手放しに賞賛する。
「橘パイセン、鼻血出さないでくださいね」
「出しませんよ!?」
「橘、体調が悪いなら保健室に付き合おう」
「会長!?」
結局二人に弄られながら、茜は登校することになるのだった。
◆
「福田っ! 聞いてくれよ! お前に言われて体幹鍛えたらさ、夏休み最後の試合で、トリプル・ダブルを決めちまったぜっ! 相手は全国にも出てくる強豪校だったのによっ!」
珍しく福助より先に登校していた須藤が、そう言いながら近づいてきた。
「いつもここで切り返せればって場面で諦めてたことが、出来たんだぜ! あの変なギブスも寮にいる間は付けてるし、まだ全然動けねえけど、なんとなく筋肉の動かし方がわかったっていうか、俺が俺の意思で動かしてるって感じが、マジで気持ち悪ぃ!」
「嬉しいのは分かったから、抱き着こうとするのはやめろ。俺は男に抱き着かれて喜ぶ趣味はない」
「俺もねえよっ!」
テンションが壊れたのか、いつものように言葉は荒いが、終始笑顔で騒いでいる。
福助はそんな須藤の成長を嬉しく――見るわけもなく、良かったなと一声かけて、自分の席に向かった。
テンションが上がった須藤は、他の3バカメンバーが来るのを待っているのか、一人そわそわしている。
「朝から騒がしいわね。何事かしら?」
「自分の成長が感じられて嬉しいんだろ。お前もそういう時期があっただろ?」
「私は私の努力に見合った成果を出しただけよ。当たり前のことを当たり前にして嬉しいわけないじゃない」
「マナブ君曰く、昔の鈴音は感情を良く出す子だったと。朝、話を聞いたぞ。クソブラコン」
「なっ!?」
鈴音の顔が真っ赤に染まる。あまりの気恥ずかしさに、両手で顔を覆うほどだ。
「大丈夫。それくらいしか聞いてない。ただお前がブラコンなのはよく分かった。お兄たまに憧れちゃったんだよな。まあ、イケメンだし、優秀だし、声もカッコいいし、茶目っ気もある。わかる、わかるよ、自慢のお兄ちゃん」
「くぅ……」
耳まで真っ赤にして、そしてそれを隠そうと必死になっている姿を見て、さすがに可哀そうになり、それ以上からかうのをやめたのだが、世の中タイミングというのがある。
「とうとう、堀北に手を出したのか。福田、俺はお前が刑務所から出てくるのを待っているぞ。堀北がここまで赤く――」
神速の一投。ペンではなく、ペンケースが綾小路に襲い掛かる。眠い目をこすりながら登校してきた綾小路からすればたまったものではない。
本気であればよけられたかもしれない。しかし実力を隠しながら生活している弊害か、無防備に顔面に受けてしまう。それでも眼球を痛めないように、微妙にずらしているあたりはさすがだ。
「痛いぞ。なぜ、俺が……」
「お前の不運を気の毒に思う。少しほっとけ。あと鼻血出てるぞ」
福助に投げ渡されたティッシュを鼻に詰めながら、自分の不幸の原因を尋ねる綾小路だった。
しかし、鈴音の前なのだ。「世の中知らなくても良いことがある」と福助に優しく諭され、綾小路は困惑のまま朝のホームルームを迎えた。
◆
正式にBクラスに昇格したことなど細かい説明があり、授業は授業で進んだ。
ただ、午後の2時間あるホームルームで茶柱が体育祭の説明を始めたことで、クラスの空気が大きく変わった。主に運動部に所属する者たちが。
9月から10月の初めまでの1か月、体育祭に向けての準備の時間が増えるため、それに伴って体育の授業が増えることに大喜びしているのだ。
ここが自分のたちの活躍の場だと、気合を入れている者が多い。
【組み分け】
全学年を赤組と白組に分ける。
赤組:AクラスとDクラス
白組:BクラスとCクラス
【種目の点数配分】
全員参加の個人競技は1位から順に、15点、12点、10点、8点が与えられ、それ以降の順位はそれぞれ1点ずつ引かれていく。
推薦参加の個人競技も同様に、50、30、15、10点とそれぞれ与えられ、それ以降の順位は2点ずつ引かれていく。ただし、最後のリレーだけは3倍の点数配分になる。
団体競技では勝ち組に500点
【勝敗及び学年順位の結果】
赤組対白組の結果が与える影響
・全学年の総合点で負けた組は全学年等しくクラスポイントが-100。
学年別順位が与える影響
・各学年、総合点で1位を取ったクラスにはクラスポイントが+50。
・総合点で2位を取ったクラスのクラスポイントは変化なし。
・総合点で3位を取ったクラスはクラスポイントが-50。
・総合点で4位を取ったクラスはクラスポイントが-100。
配布された資料をまとめると、こうなった。
さらに個人競技で3位までに入賞した者にはテストの点数と交換可能なプライベートポイントが与えられる。逆に、最下位は1000ポイント没収される。
最終結果として学年内下位10人は、次回の筆記試験で減点を受けるということ。詳細は試験時に通達される。
茶柱は一通り説明と生徒からの質問に答えると、後のホームルームは好きにしろと言って出ていく。
監督責任と言うものを知らないのかと、茶柱の教師として評価表に心の中で10点減点をつける福助。後で理事長に提出し、解任騒動でもしてやろうかと、考えていた。
作戦時間と言うことになり、平田を中心に競技への方針を皆で決定することになった。
「これは学力試験と同じで、普段の積み重ねが物を言う試験と考えた方が良いかしら? 茶柱先生も、特別試験かどうかは明言していなかったのだし」
「授業内容は普通、生徒への態度は最悪。基本的な報連相もダメ。好みの綾小路をたびたび呼び出し、不純異性交遊疑惑有り。よし、こんなところか」
「貴方は何をしているのかしら? 絶対に体育祭と関係してないわよね?」
ゴーイングマイウエイな福助に、呆れながらも確認する鈴音。実際、全く関係ない作業をしている。
「チャバティの教師としての評価を理事長にでも報告しようと思って。あのアラサー、まじで仕事舐めすぎだろ」
「俺は良いと思うぞ。確かに教師としての行動をたびたび逸脱している」
「囲い鳥のお前がそういうとは……まさか、散らされたのか? おい、そうなってくると、話が変わってくるぞ。綾小路も追放の対象に――」
「おい、変な誤解をするな。何もされてない」
「貴方たち、少しは真面目な会話をしてくれないかしら?」
鈴音が二人を叱りつける。漫才コンビのやり取りを見ていては、先に進まないのだ。
「ごめん、ちょっと良いかな?」
全く話が進まないうちに、平田が鈴音たちの元にやってきた。その後ろには恵がいて、少しそわそわしている。
「ギャル子、お花摘みなら行ってこい。チャバティが居なくなった時点で、授業という体裁は取れてない。少しくらい抜け出しても大丈夫だ」
「……あんた、本当にデリカシーがないだけで、人の事良く見てるのね。あと、それはセクハラだから。別に何でもないから気にしないで」
「気遣いがセクハラ扱い。世知辛いぜ」
恵がクラスで恥をかかないための配慮のつもりだったが、福助の気持ちは届かないようだ。
「今回の体育祭なんだけど、クラスの方針を早めに決めておいた方が、良いと思うんだ」
「個人の意見を尊重するか、完全に能力重視で行くか、もしくはその両方で行くのかってことかしら?」
「うん」
鈴音の言葉に、平田が頷く。福助も綾小路も、特に何も言わない。
「私としては能力重視一択だと思ってる。でも、それだとダメだと思うの」
「福田くんに頼り過ぎるってことだよね?」
自然とその場の全員の視線が福助に向かう。福助は特に気にした様子を見せず、不敵な笑みを浮かべるだけだ。
「今までの試験、彼がいなければ、私たちがBクラスになることはなかったと思う。そしてこれから先、彼が私たちに協力してくれるとも限らないわ」
「裏切者扱いを受ける俺」
「そこまでは言ってないだろ。ただ制御できないってだけだ」
福助の気分次第で、クラスの立ち位置が変わってしまう。それが健全なことであるとは鈴音は思えなかった。
「言い方は悪いけど捨て石戦略は決して間違っていないと思うの」
「同感だ。でもそれをするにはクラスをまとめる必要がある」
「そうね。合理的に説き伏せることは出来ると思う。でも、それは指揮を取る側の怠慢にならないかしら?」
鈴音の言葉に一番、驚いたのは恵だった。弱者の意見など、聞く耳を持たないと思ったのだろう。
「足が遅くて負ける。力が弱くて負ける。そこに異論をはさむつもりはないわ。でも、安易に捨て石戦略を取るのは、策略を得意とするクラスと比べて成長する機会を失ってしまわないかしら?」
「なるほど。勝ちにこだわりすぎて、大局的な視点を失ってしまうってことだね。僕たちが恐れているのは、ギリギリ勝負の組み合わせで負けてしまうこと。それを防ぐための捨て石戦略は確かにあるかもしれない。けれど」
「ギリギリの勝負で勝てる組み合わせを考えることだって立派な作戦よ。そうすれば、運動が苦手な子にだってチャンスがあるかもしれない。他人の能力不足を指摘するなら、まずこちらが最善の戦略を見せつけて、納得させなければならないわ」
「なんとしても他人の能力不足を指摘したい鈴音様の強い意思を感じる」
「黙りなさい」
キッと福助を睨みつける。鈴音としては他人の能力を嘆くだけでは状況は好転しないと言いたいのだろう。それが彼女らしい言葉にまとめられたとしてもだ。
「そうだね。僕も安易に考えすぎていたのかもしれない。この試験の答えはシンプルイズベストなんて、少し前の自分を殴ってやりたい気分だ」
「自虐趣味があるのは構わないけど、出来れば私の見えないところでやってちょうだい。あと、彼女の軽井沢さんがいるのだから、あまり心配をかけるのはどうかと思うの」
「これは拍手」
「あの堀北の返答とは思えない」
観察していた男二人から、賞賛の拍手が送られる。
鈴音は男二人にペンを投げつけて黙らせるが、彼らは器用にかわしながら、彼女を褒め続けた。
平田としては、あくまで言葉の綾で言ったものだったが、まさかの返しに苦笑するしかない。恵は少しだけバツの悪そうな顔をしているが。
「情報収集は大事だね。今度の体育で皆の記録を測ってみよう」
「情報漏洩は気を付けた方が良いわ。口の軽そうなのが若干名いるから。それと他クラスの調査も必要ね」
「体育祭への貢献の仕方は何も、競技だけじゃないってことだね? 分かったよ。クラスの皆と相談して、偵察隊を結成してみせるよ」
それだけ言って、平田と恵は去っていく。去り際に恵が視線を残していた。
それに勘づいた福助だったが、特に何も言わなかった。
◆
今日はほぼ一日が体育の授業に割り当てられた特別な一日。
白組として参加する福助のクラスは、全学年が顔を合わせる場である体育館にやって来ている。
白組として集まったクラスは、3年Bクラスの代表が総指揮を執ると聞かされる。
と言っても、基本的には各学年ごとの勝負。1年生に、全力でやることがこの学校で生き残るために必要なことだと、アドバイスをして集まりを解散させた。
「貴方のお眼鏡にかなうような人は居たかしら?」
「めっちゃ美人の先輩がいた」
「……貴方に聞いた私がバカだったわ」
鈴音はそれだけ言って、福助から離れる。代わりにやって来たのは桔梗だ。
「堀北さんと何を話していたの?」
「お眼鏡にかなう人は居るかって。めっちゃ美人がいたと答えておいた」
「どこ?」
「あそこ」
福助が指をさした方向に、周囲と全く溶け込まず、つまらなさそうに座っている容姿端麗な女子生徒。
「鬼龍院楓花先輩だね。何でも能力だけなら、2年生で1番って噂があるよ」
「ほ~。ジャージ姿であることが何よりも惜しい」
「評価基準が本当に欲望に正直だよね? あと噂だと高円寺くんみたいに唯我独尊であんまり人と関わらないんだって」
「マジで? じゃあ、話しかけるのやめとこ。渾身のキモイを食らったら、1か月くらい引きこもるかも」
「体育祭が終わっちゃうね」
精神安定のための戦略的撤退は大切。
他に興味が惹かれるものはないかと、福助が探していると、4月以来特に交流がなかった少女を見つけた。
赤組で敵対クラスだが、そんなことを気にしない福助はその少女の下に足を向ける。桔梗は向かう先にいる人物を見て、この男が何か失礼なことをしないか心配になった。
「おひさー」
「あら、福田君に、そちらは櫛田さんでしたか? 福田くんはお久しぶりです。櫛田さんは初めましてですね。坂柳有栖です。この場では浮いてしまっているかもしれませんが、どうぞお気になさらず」
有栖が優雅に頭を下げる。
彼女は先天性心疾患を患っているため、医師から一切の運動を禁じられている。そのため、先日の特別試験も、今回の体育祭も不参加という形をとるしかないのだ。
今は、用意された椅子に座り、静かに佇んでいるだけだ。
「Aクラスは最近どんな感じ?」
「あら? スパイ活動ですか? ふふ、そんな直接聞いても教えてあげませんよ」
「リーダーがいないクラスって大変だと思って。苦労してないか心配になってね」
「……Aクラスにリーダーはいないですか?」
「いないね。いたらうちのクラスがこの位置まで来てないよ」
笑顔でそう告げる福助。桔梗は、福助の後ろで彼のジャージを引っ張っている。わざわざ問題を起こすなと。
「なるほど。興味深いお話です」
「そんな深い話じゃないよ。入学時点で学校側から最高評価を受けて編成されたクラスが、獲得ポイントだけを見ると全く成長していない。何か秘策でもあるのかと思ったけど、この場でAを見て確信した。そんな秘策もなければ、統率もとれていない」
「葛城くんは頑張っていると思いますが?」
「違うよ、君に言ってるんだ。半年近くあってクラスを掌握できていない程度の優秀さの君にね? チェスをしたときそれなりに賢いと思ったけど、そうでもなかったみたい。残念だよ」
「…………」
「ちょっと福助君、いきなりそんな喧嘩腰にならないでよ。坂柳さんも困ってるからっ!」
さすがに見ていられなかったのか、桔梗が止めに入った。
「うちにもなぜかわからんが、実力をだすことを嫌うアホが居てね。まあ、本人がそう望んでいるからとやかく言わないけど、君の場合は違うよね? 相手の失脚でも狙って、その後の独裁を強めたいのか知らないけど、本当にすごい奴ってのは、わざわざそんなことをしないよ。あ、Aクラスにもなってない俺のセリフじゃ無意味だったね、すまん、すまん」
全く謝罪する気がない福助に、有栖は笑みを返すがその目はまるで笑っていなかった。
「いいえ、貴重な助言を感謝します。私もAクラスの一員として、最善を尽くすつもりですよ」
「うん、ちゃんとやってね。君がやるべきことは弱者を見下して喜ぶことではなく、挑んできた相手を全力で叩き潰し力を見せつけること。もし君が天才を語るなら、他のクラスに天才の高みを見せつけて欲しいな。それが学年の向上につながると思っているから」
「ふふ、承知しました。貴方の期待に応えられるように私も努力します。ですが、久しぶりの経験ですね、上から物を言われるというのは」
「It's because you're still a little girl who hasn't fully developed your skills yet. I've mentioned it before, right? Return once you've developed your abilities further(それは君がまだ成長しきれていないからだよ、お嬢ちゃん。以前にも言ったよね? 成長して出直して来いって)」
「I see, it means I've overestimated my own abilities. I am simply ashamed of my immaturity. But I promise you, I will surely defeat you and Ayanokoji(なるほど、私は自分の能力を見誤っていたということですね。未熟を恥じるばかりです。ですが約束します、必ず貴方と、そして綾小路君を倒して見せると)」
「I'm looking forward to it(期待しているよ)」
お互い、そう言って笑顔になった。福助としても満足したのか、軽く手を振りその場を後にする。
「ねえ、何て言ったの? なんか綾小路君の名前が出た気がしたんだけど」
「イケメンですねって話さ」
「絶対うそでしょ」
ぷく~と頬を膨らませる桔梗。分かっていてもそのしぐさは可愛いもので、膨らんだ頬をつついて、笑う福助。
セクハラだよっと桔梗に言われながらも、彼らは自分のクラスの場所まで戻ってきた。
現在は、協力関係になる帆波のクラスと少し打ち合わせをしている。最近友人になった神崎を見つけた福助は、彼に声を掛けた。
「やっはろ~、神崎」
「神崎君、こんにちは」
「福田に、櫛田か。今回は同じ白組だ。個人競技で争うことにはなるだろうが、チームとしては協力していきたい」
「好きな言葉は、我行我素! どうぞよろしく」
「俺の話を聞いていたか?」
「ごめんなさい、うちの福助君が傍若無人で」
桔梗が福助の代わりに頭を下げる。それに何とも言えない表情する神崎。幸先が不安なやり取りであった。
「福田をコントロールすることはできなそうだ」
「俺をコントロールできるなら、大した奴だよ」
「とりあえず、福助君は協調性って言葉を学ぼう」
「少なくともクラスの足を引っ張ったことなどない」
「……そうなんだよね。優秀なんだよね」
「櫛田も苦労しているんだな」
「ありがとう、神崎君」
神崎の同情に、桔梗は苦笑いを浮かべて感謝するしかできなかった。
「よし、桔梗をハニートラップとしてCクラスに送り付けよう。男たちを崩壊させてから帰ってこい」
「なんか勝手に捨てられちゃったよっ!?」
ささっと、桔梗の背中を押し、神崎に渡そうとする福助。桔梗も抵抗するが、力が違い過ぎてビクともしなかった。
「いや、櫛田なら出来るかもしれないが、さすがにその話を聞いて引き取るわけがないだろう」
「あら嫌だ、うちの桔梗では御不満? なんなら、女子懐柔枠で平田と綾小路を付けよう」
「さらっとイケメン二人を他クラスに送り出そうとしている。さすがのクズ思考」
「黙れ。それにお前だって、神崎にビッチ扱いされてるじゃん」
「ち、ちょっと! へ、変なこと言わないでよっ!」
ぽかぽかと桔梗が福助を殴りつける。
「俺は櫛田のコミュニケーション能力の高さを評価しただけだ。間違っても彼女の尊厳を傷つけるような発言はしていない」
「なるほど。それは済まなかった。どうも頭が思春期なもので」
「病院行きなよっ!」
精神科を桔梗に勧められるが、そんなもので治るわけがないと福助は言い返すのだった。
それからBとCクラスで話が付いたようで、神崎と別れて二人は、自クラスに戻る。
「福田っ! お前、桔梗ちゃんと行動なんてずるいぞ!」
「そうだ、そうだ! 桔梗ちゃんは皆の桔梗ちゃんなんだ!」
池と山内が絡んできたが、
「黙れ。地面に埋めるぞ♪」
にっこりと笑って二人を退散させた。
「皆の桔梗ちゃん、感想をどうぞ」
「死ねばいいのに」
桔梗も桔梗で、立ち去った二人を見ながら笑顔で毒を吐くのだった。