I am the perfect and ultimate XX   作:生物産業

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第28話 イベントを消化した覚えがない

 男女混合リレーで優勝した歓喜の日が明けて、一日。福助クラスは現実は厳しいということを思い知った。

 体育祭の結果、赤組の勝利で終わり学年順位としては、

 

 1位 Cクラス

 2位 Bクラス

 3位 Aクラス

 4位 Dクラス

 

 となった。帆波クラスが安定した勝利を積み重ね、1位を獲得。

 有栖のクラスは、平均して能力が高い生徒が多いが、逆に上位を取れる選手が少なく成績が伸びず3位。

 龍園クラスは福助クラスを狙って戦っていたが、謀略がすべて潰され、データを集めて戦略を立てた福助クラスに敗れ、さらに最下位に沈む。

 この体育祭の結果を受けてクラスポイントは、

 

 A 1140

 B 920

 C 930

 D 480

 

 となった。学年1位となった帆波クラスは50ポイントを得たが、白組であるため100ポイント引かれ-50ポイント。

 同様に福助クラス、-100ポイント。学年順位による増減はなし。AとDはそれぞれ赤組として100ポイントを得た。

 学年3位であった有栖クラスはそこから-50、龍園クラスは相殺されてクラスポイントに増減はなかった。

 帆波クラスが福助クラスを逆転、夏休みの特別試験のから3クラスが混戦を続けている。

 

「短いBクラス生活だったな」

「これはこれで良かったんじゃないか?」

「そうね。努力した結果が必ず報われるとは限らない。これも一つの経験として受け入れましょう」

 

 1か月のBクラス生活からのCクラス降格。

 結果がすでに出ていた昨日、帆波が『敗残兵、ぷぎゃー♡』と可愛いメールを送ってきたときには、帆波画像集の作成に取り掛かる。

 3分おきに変顔の写真を送り続け、勝者の栄誉を称え続けた。しかし、帆波側がギブアップ。ごめんなさいと電話で謝罪をする。

 勝者の偉業を称えるために記録を残すことは、敗者の役目だと福助は帆波を説得したが、彼女がやめてくれというのでやめた。

 かつての自分の発言を棚に上げて、酷い対応である。

 

 個人で学年1位の最優秀賞に輝いた須藤は、プライベートポイント10万と次回のテストでの得点アップ権を得たことで調子に乗っている。池や山内にウザがらみ中だ。

 

「福田氏~感謝でござる! 福田氏が点数を下げてくれなかったら、拙者が下位10位に入ってしまっていたでござるよっ」

 

 神よ、と言わんばかりに外村が福助に感謝を告げる。

 福助が1学年の点数をすべて計算した結果、福助がいなければペナルティ圏内に入ったのは外村だった。山内も外村に次ぐ僅差。さらに池や井の頭もそれに続いたため、高円寺、有栖の欠席は彼らの救いとなったのだ。

 

「良き良き。まあ、これで次のテストで赤点とかだったら、外村の将来がなくなるかもね」

「あまりに酷すぎるプレッシャー」

「らぶりーアイカたんが、ゴリゴリマッチョに変わっても良いなら、怠けるがいいさ」

「拙者、勉強の鬼となるでござる。さらばっ!」

 

 しゅったと去っていく外村。クラスの男子から博士と呼ばれているが、忍者のような動きで消えていく。

 その動きがあれば、体育祭の成績が良かったのではと、疑問に思う綾小路だが、深くは考えないことにした。

 

「ちなみに、らぶりーアイカたんってなんだ?」

「今や外村専用の学習ツール。外村が好きなアイドルを掛け合わせて作り出した完璧で究極のアイドル(2次元)だ」

「なるほど、お前次第で教師役がアイドルからゴリラに早変わりするんだな」

「そういうこと。あいつの人生は俺の匙加減と言っていいかもしれない。まあ、そうはいっても元々下位だった成績の外村が、中堅に食い込んでいるし、放っておいても勉強はすると思うけどね。そうなるように作ったんだから」

 

 アプリのキャラを変えるだけで、一人の人間の人生が崩壊する。アプリってなんだっけと、綾小路はまた深く考えることやめた。

 

「下劣ね。男ってみんなそうなのかしら?」

「鈴音たんだって、お兄たまに勉強を教わったら嬉しいでしょう? 人のやる気なんてそんなもんだ」

「ぐぬぬ」

「堀北のキャラが崩壊しかけているぞ。クールビューティはどこに行った」

「黙りなさい、綾小路君」

 

 そう言って睨みを利かせる鈴音。おお、これだと綾小路はMの扉を開きかけるのだった。

 

 ◆

 

 放課後、寮に帰る途中で会った。

 部活動にも入っていない、福助と綾小路。自室に帰って各々が好きなことをする。

 だから、自然と一緒に帰ることも多い。

 そんな中、綾小路から爆弾発言が飛び出した。

 

「佐藤に告白されそうだ」

「へぇ~」

「……熱でも出たのか?」

「どういう意味だ?」

 

 福助の思いがけない返答に綾小路が困惑した。

 恨みごとの一つでも飛んでくると思っていたからだ。

 

「俺は人の恋路を邪魔する気はない。お前がモテないように評価を下げることはためらわないが、それはあくまでお前がフリーな場合だ。ロックオンされてから、貶めていたらただのクズだろうが」

「……だな」

 

 お前がクズであるということに関して疑いようがない、そう喉元まで出かけた言葉をぐっと飲み込み、静かに押し黙る。

 空気が読めないとよく言われる綾小路だが、成長しているのだ。

 

 ◆

 

 体育祭から少し日が経ち、中間テストが終了した。

 中間テスト前には、生徒会が新体制になると発表された。

 新生徒会長に南雲雅が就任し、この学校を変革すると宣言したときにはそれなりに歓声が沸いたものだ。

 話が中間テストに戻る。

 すべての得点から-10点をされた福助は、答案用紙がすべて正解であるのに、90点という奇妙な結果となる。

 須藤に関しては、体育祭のボーナスを込みして人生で初めての平均70点を獲得。歓喜のあまり騒ぎすぎて、茶柱に叱られるというお約束を披露した。

 最低点を叩き出したのは山内。赤点が40点であるが、42点というギリギリをせめた。もし、福助、高円寺の両方が体育祭に参加していれば、彼の退学は確実のものになっていただろう。

 ギリギリセーフとは本人の談である。

 そんな中間テストの結果が発表された直後のことだった。

 茶柱から新たな試験の内容が伝えられる。

 

「小テストをふまえての期末試験。ペア退学とか笑える」

 

 期末試験は特別試験となり、自分たちでテストを作成し、それを他クラスに割り振られると。

 当然、他クラスも同じようにテストを作り、そのテストを自分たちが受けるのだと。

 総合点を比較し、クラスポイントを奪い合う。ペーパーシャッフル試験の実施が茶柱の口から語られた。

 

「テスト作成とか、数学なら20桁×20桁の計算をひたすら並べてタイムオーバーとか狙えるね」

 

 学校の教育方針とかをまるで無視する福助の言葉に、鈴音は眉をひそめた。

 

「教師のチェックがあるのだから、それは無理でしょう。それに何の確認をするテストなのか分からないじゃない」

「計算スピードですよ。割と大事な技能でしょ」

「限度があるでしょう? 貴方のそれはただの嫌がらせよ」

「いかに相手に屈辱を与えるのか、この試験はそれを試されているんだ」

「そう思っているのはお前だけだろう。お前にテスト作成をさせるのだけはダメそうだな。茶柱先生の胃に穴が開きそうだ」

「むしろ開けて、療養させた方がクラスのためじゃないか?」

「お前、どれだけあの人が嫌いなんだよ」

「仕事を舐めてる奴が嫌いなんだ。成果を出せば文句は言わない」

 

 茶柱は基本的に放任主義。彼女の手腕でこのクラスが救われたためしが一度もないため、福助の評価は最低だった。

 

「ペアをどうするかもそうだけど、問題をどうするかも考えなくてはいけないわ。福田君の方法も悪くないかもしれない」

「堀北にもとうとう福田のクズっぷりが――」

「確認作業の話よ。学校側がどこまで許容するのか、問題として成立するラインはどこなのかを突き止めるために、ふざけた問題を用意するというのもありという話。私はクズではないわ」

「お前ら、人をクズ呼ばわりしすぎだから。人類皆兄弟。俺がクズならお前らもクズだからな。特に綾小路、お前は絶対にこちら側の人間だ」

 

 ようこそクズの世界へと、福助が招き入れる。

 綾小路としてもそれは自覚しているが、この場でそれを認めるのは嫌らしく、無言を貫くのだった。

 

 ◆

 

「うわぁ~」

「桔梗ちゃん、お口、お口。だらしなくってよ」

 

 ここは寮内にある福助の部屋だ。

 ストレスをためた桔梗は、ここで発散するのが恒例になっている。

 体育祭や中間テストを終えたことで、ストレスMAXになった桔梗が訪れて来たのだ。

 ちょうど福助が作業中であったため、定位置となっているベッドに腰をおろした。

 作業中の福助を見ていると、呆れてしまうのが普通になっている。

 

 なんどか目にしている光景。

 福助がディスプレイと向き合い、ひたすらに何かを打ち込んでいる。

 3面のディスプレイがあり、せわしくなく目を移しながら、時折黒い画面が現れては消え、消えては現れてを繰り返している。

 SFの世界のハッカーってこんな感じだったなというのが、初めてこの光景を見た時の桔梗の感想だった。

 

「ねぇ、それは何してるの? また新しいアプリでも作っているの?」

「これは完全に別件。セキュリティチェックと依頼の報告って感じ?」

「依頼って自分の会社? 外部との連絡って禁止じゃなかった?」

「まあ、そんなところ」

 

 珍しく福助が答えを濁したが、桔梗は何か悪いことをやっているのだと思った。

 桔梗は福助のことを良く分かっていない。

 頭がよくて、運動ができ、女体に並々ならぬ興味を持っていることくらいで、彼の行動の指針が理解できていなかった。

 そんなことを考え、自分以外の女子がそれを知っているのかと思うと、無性に腹が立ってくる。不満だ、凄く不満だ。

 その苛立ちをなんとくぶつけるために、福助に声を掛けた。

 

「ねえ、ちょっとこっちに来て座って」

 

 桔梗が指さしたのは、自分の足元。

 

「俺、踏まれて喜ぶ性癖はないんだけど」

「良いから」

 

 少し怒り気味の桔梗。ストレスが相当にたまっているようだ。

 しぶしぶやって来た福助を無理やり座らせる。対面になるとスカートの中が見えてしまうため、同じ方向を向かせ、ベッドに寄りかかるようにさせた。

 

「えい」

 

 可愛い声。

 その声とともに、福助の頬に柔らかい感触が伝わる。

 

「桔梗ちゃん、いけません、いけませんよ。なんてハレンチ。あざます!」

 

 その正体は、桔梗の太ももだった。

 桔梗が福助の顔を挟むように座ったのだ。

 

「うるさい。これ、かなり恥ずかしいんだから!」

 

 べしっと頭を叩く。福助から顔は見えていないが、彼女の顔は真っ赤になっていた。

 逆に福助は、マッサージでも受けているかのような、恍惚の笑みだ。変態プレイのようだが、そんなことはどうでもよかった。

 桔梗の太もも、それだけが彼を天にも昇る気持ちにさせている。

 

「こんな、変態バカップルみたいなやり取りをするフラグあったっけ? いや、普通に嬉しいよ。でも、そんなイベントを消化した覚えがない」

「福助君はいつも頑張ってるし、たまにはこれくらいのご褒美くらいあっても良いかなって」

「ご褒美のレベル高くない? これを許してくれるならまず膝枕でしょ」

「見合っちゃうでしょうが。それに胸とか触られそうだし」

「太ももは良くて、胸がダメの基準が分からない。普通に俺の後頭部に桔梗ちゃんを感じてるけど、それは良いの?」

「自分から当てるのと、相手から触られるのは全然違うのっ!」

 

 再度頭を叩かれる。立っていれば肩車をしているような態勢なのだ、桔梗の御立派様が当たってしまうのは仕方がない。

 

「それにこの態勢なら変なことしたときに潰せるし」

 

 桔梗の足の先には、福助君の大事なものがぶら下がっている。体重をかければ、福田家の将来が暗くなることは間違いない。

 

「太ももで挟まれるって、実はかなりの恐怖だったんだ。初めての体験だよ」

「えっち」

「それをこの状況で言うのは違くない?」

「変態」

 

 もう何も言えない。

 福助はあきらめて、幸せを享受することにした。

 桔梗も少しばかり落ち着いてきたのか、そのままの態勢でストレスの元を吐き出していく。

 時折、語気を強めた反動で、福助の腹筋を足で攻撃しているが、そこは頼れるシックスパック。

 彼女の攻撃の無力化に成功する。

 

「なんか髪良い匂いだね」

「普通に売ってるものだけど? これ逆だとセクハラじゃない?」

 

 桔梗が福助の頭に顎を乗せる。柔らかくもなければ固くもない。普通の髪質だが、桔梗は興味深そうに引っ張る。

 

「男の子ってもっと汗臭いと思ってた」

「風呂に入った後だから」

「髪抜いていい?」

「ふざけんな」

 

 福助の頭頂部に攻撃を開始しようとする桔梗の手をがしっと掴む。

 

「このやり取り、もう付き合うしかなくない?」

「いーや。あんたはすぐに浮気するもん。私浮気は絶対許さない派だから……殺すよ?」

「怖ぇよ。つうかしねぇよ。可愛い彼女がいたら、浮気する気にならないじゃん」

「堀北か帆波ちゃんが全裸で迫ってきたら?」

「抗えない」

「ふん!」

 

 福田の福助君に向かって桔梗のかかとが踏み込まれる。

 しかし、予想していたのか、空いていた手でガード。いくら桔梗が体重をかけているとはいえ、華奢な女の子だ。

 力自慢の福助に容易く防がれてしまった。

 

「そこは抗ってよっ!」

「無茶を言うな。あの二人が全裸だぞ? 抗える奴は男色か女に興味がない奴だけだ」

「私というものがありながらっ!」

「それはそれ、これはこれ」

 

 絞め殺してやると言わんばかりに、桔梗が太ももに力を込める。

 ただ、不慣れな態勢にであるため、あまり力は入らない。

 福助を喜ばせるだけだった。

 

「バカみたい」

「そだね」

「ホント、今日は私バカみたい」

「どうした、体調でも崩したか? 太ももからは感じないけど」

「太ももで感じたら、本当にヤバいから。大丈夫、体調は悪くない。ただなんとなくこうしたかっただけ」

「承認欲が支配欲に変わるとかやめて欲しいんですけど。鞭で打たれる趣味もないよ?」

「しないよ。私は自分が褒められる方が良いもん」

「よしよし」

「そこで太ももを撫でるから、変態なんだよ」

「この態勢で、他にどこを撫でろと?」

「頭」

「関節を全部外しても無理だわっ!」

 

 肩の上に足太ももを乗せられているのだ。肘から先しか動かせない状態で、腕の長さを必要とする位置にある頭を撫でろとは、桔梗もなかなか無理なことをいう。

 

「あんまりストレスためこむなよ。あと、信用もしてない男にするな。襲われるぞ」

「するわけないでしょ。一応、福助君のことは信用してるんだから。私の性格だって分かってるし」

「でも付き合ってはくれないんだろ?」

「うん。まだダメ」

「まだ……ね? まあ期待が持てる方が、人生楽しいですね」

「10年くらい修行してきて」

「それでも26才。ちょうどいい時期じゃね?」

「あ、誕生日来てたんだ。おめでとう。私からのプレゼントはこれで良いよね?」

「十分だ。ぺろぺろしたい」

 

 無言で拳骨を落とす桔梗。さすがに許容できなかったようだ。

 

「でも福助君と付き合ったら、結婚まで行きそう。彼女イコールお嫁さんって感じがする」

「結婚式で聞かれる思い出場面で、太ももに挟まれたのが決定的でしたとか、会場の爆笑をさらいそう」

「普通に引かれるでしょ。どんなバカップルだよって」

「普通が分かんない。俺の初は目が血走った金髪の姉ちゃん。手錠で手足を縛られ、初めての精通を経験したのがスタート。あの時はまだ会社起こしてなかったんだけど。将来性か、ショタだったのか」

「……おふ」

 

 桔梗は何も言えなかった。レイ〇されたという言葉が、男女逆でも酷いものだと初めて理解した。

 

「性の喜びを知った瞬間でした」

「私の良心を返せっ!」

 

 桔梗の再アタック。太ももを堪能していたため、防御が遅れる。

 桔梗は悶え苦しむ福助を後にして、部屋から出た。

 それからしばらくの間、福助がうずくまっていたのは仕方がないことである。

 

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