I am the perfect and ultimate XX   作:生物産業

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第30話 個人的感情が優先されてる

【少し、今回の試験でお話したいことがあります。宜しいでしょうか? 出来れば、Bクラスの一之瀬さんを呼び出してくれると助かります】

【ちょっと待て。なぜ俺の連絡先を知っている】

【ふふ、私はこの学校の理事長の娘ですよ。気になる男の子の連絡先くらい、手に入れることは容易いことだと思いませんか?】

【この理事長にしてあの教師ありか。マジでこの学校はクソしかいない】

 

 パパ、娘に甘すぎだろと、福助は心の報告書に理事長罷免と記載するのだった。

 

 ◆

 

「ねえ、なんで私なの? 堀北さんとか平田君の方が良いんじゃない?」

「イケメンを横に並べると相対的に俺が悲しくなるだろ。鈴音は人見知りだから、すぐ相手に嚙みついてしまう。キャットファイトはみたくない」

 

 福助は有栖に呼び出されたことを桔梗に伝えた。

 

「一人で行けば良いじゃん」

「もし他の面子が人を連れてきたとき、悲しくなっちゃうでしょうが。気遣って」

「そんなボッチな気持ちを持っているわけないじゃん。冗談も大概にして欲しいよ」

 

 桔梗の満面の笑みでの全力パンチ。福助の心は大きなダメージを負った。

 

「桔梗さん、お願いします」

「いつもみたいに変な画像で脅すのかと思った」

「心外な。友達の卑猥写真を公開するとか最低の人間のすることだ」

「桔梗ぱんち」

 

 言葉を理解する前に桔梗は福助の下腹部に狙いを定めていた。

 何の躊躇もしない右ストレート。

 福助はそれを容易くキャッチするが、不満の顔は隠さなかった。

 

「何をする?」

「さんざん酷い脅しをしてきておいて、普通のことをいうから身体が勝手に」

「男の股間に反応するなんて、ハレンチな奴め」

「ふんっ!」

 

 幻の左。憎たらしい顔を叩きのめすのはこの左手だとうなり上げる。

 だが、それすらも福助に容易く防がれる。

 ぐぬぬと恨めしそうにする桔梗の頭をぽんぽんと優しく叩いて、福助は改めてお願いをした。

 

「頼む」

「……分かった。でも彼氏面しないでね」

「クラス会合に彼女を連れてく奴はいねぇよ」

 

 バカップルかと、ツッコミをいれる福助に対し、桔梗は無言で歩いていく。

 

「会合場所、カフェなんだけど」

「……!」

 

 カフェとは逆方向に向かっていた桔梗がむぅ~と顔を膨らませながら戻って来たのは言うまでもない。

 

 ◆

 

 有栖主催のクラス会合。

 参加メンバーは以下の通りだ。

 

 A:坂柳有栖、神室真澄、橋本正義

 B:一之瀬帆波、神崎隆二

 C:福田福助、櫛田桔梗

 D:龍園翔 石崎大地 椎名ひより

 

 福助たちが来るより前に来ていた帆波たちは、福助たちが来ると笑顔で対応。

 桔梗はほんの数十秒前まで、福助に悪態をつきまくっていたが、帆波たちが見えた瞬間に表情を切り替える。

 すげぇなこの女と、福助が感心したのも仕方がない。

 

 それから遅れてAクラスの面々が到着。軽く自己紹介を済ませる。10人掛けのテーブルに5人ずつが向かい合う形だ。福助と桔梗、帆波、神崎が同じ側に座る。Aクラスのメンバーは反対側に腰を下ろした。

 そして最後にDクラスが登場。誰が呼んだかは定かでなかったが、消去法から有栖が誘ったことは福助にはわかった。

 龍園は福助に対し睨みを利かせるが、絡んできたりはしない。

 ひよりはいつも通りにっこりと福助と帆波に手を振っていた。Dクラス全員が同じ席に座れないため、空いていた桔梗の横にひよりは一人移動してきた。

 

「揃いましたね。話し合いの場に参加していただいてありがとうございます」

「福助君に呼ばれたから、何かあると思ったけど、まさか龍園君まで来るとは」

 

 帆波が龍園に視線を向けるが、彼には特に気にした様子をみせない。

 

「私がお願いしました。今回の試験は皆さんもご存じでしょう? 対戦相手を誰にするか、いちいち探り合いをするのも時間の無駄というもの。ここで決めてしまいましょうというのが、私の提案です」

「異議なし。帆波、お前にBは似合わない。お前はFだ」

「何の話をしているのかな?」

 

 帆波は笑顔のまま右隣に座っていた福助の足を蹴る。それと同時に桔梗が福助の太ももを全力でつねった。

 

「福田、場を乱すつもりならやめてくれ。こんな機会はそうそうないんだ、有意義な時間にしたい」

「お口チャック」

 

 神崎に指摘され、福助は黙る。

 そのふざけっぷりが気に入らないのか、龍園の睨みが酷くなった。

 

「ふふ、私としては福田君がおふざけしているのを見るのも楽しくていいですが、神崎君の言う通り。話を進めましょう」

 

 有栖の言葉に反対の声は上がらない。

 

「ではAクラスを代表して宣言させていただきます。AクラスはBクラスとの勝負を望みます」

「ありゃー、やっぱりそうなるよねー」

 

 帆波は困った風におちゃらけるが、既に予測済みだったようで、特に動揺した感じは見られない。

 ポイントで最も近いのがBクラスなのだ。突き放すなら、そこからだろうというのは予測できる。

 

「まあ、こちらとしてもAクラスに挑むつもりだから問題ない」

 

 神崎は堂々と対戦を了承する。

 

「ちょっと待て。帆波に舐められたままは福田家の恥。帆波の顔に負けましたと書き込むのは俺たちの仕事だ」

「恥ずかしいから、私を巻き込まないでくれるかな」

 

 桔梗は仲間ではなかったらしい。

 

「なんか負けた場合の罰ゲームが勝手に決まってるけど」

「帆波の尊厳が失われるだけだ。クラスの代償としては安いものだろう」

「ホント何する気なの!?」

「一之瀬、落ち着け。福田の言うことは無視すればいい」

 

 Bクラスの参謀、神崎隆二。冷静な対応だ。

 

「おいおい、黙って聞いていれば、うちクラスは眼中になしか!」

「……」

「……」

「……」

「石崎君、ポイント差を考えましょう」

 

 石崎の発言に各クラスが無言の肯定。ひよりが申し訳なさそうに、彼の発言をいさめる。

 Dクラスとその他のクラスではポイントが倍近く離れているため、眼中にないというのは間違っていない。

 仮に今回の勝負で負けても最大で100ポイントしか変動しないため、Dクラスを相手にする意味はそこまでない。

 

「おい、福田」

 

 それまでずっと黙っていた龍園が口を開く。自然と周囲の目が龍園に注がれる。

 

「俺と勝負しろ」

「無理」

「おいおい、まさか神童様が俺ごときに怖れをなしたのか?」

「弱いもの苛めは可哀そうでしょ? 苛めは良くない」

 

 福助は人をブチ切れさせることにかけては天才的だ。龍園の怒りメーターが一瞬で最大値を振り切った。

 

「こ――」

「何度このやり取りさせるの?」

 

 龍園がテーブルを蹴り上げようとするが、それ以上に福助が力をこめて押さえつける。

 微動だにしなかったテーブルから来た反動で、龍園の表情が少しだけ歪む。

 その隙に、福助が立ちあがり、テーブルに手を付いて前方宙返り。対面に座る龍園の背後を取った。

 そのまま首を絞める態勢になり、勝負が決まる。

 

「あのさー、中学時代、どんだけ不良とやりあってきたのか知らないけど、この平和な日本でイキってる相手を倒して王様気分になれる理由はなんで?」

 

 スポーツ格闘技ではなく、ルール無用の戦闘訓練を受けた福助にとって、龍園の相手は子供を相手にするのと変わらない。

 

「く、クソがっ!」

「龍園さんっ!」

 

 石崎が龍園を助けるために、福助に飛び掛かる。

 だが、福助は龍園を持ち上げると、そのまま武器として扱い石崎の顔面に攻撃。綺麗に顎に食らったようで、石崎が失神。一瞬で、無力された。

 

「君は暴力第一主義みたいな雰囲気出してるけどさ、実際はただの雑魚な訳。喧嘩もしたことがない坊ちゃん嬢ちゃんが集まるこの学校にちょっとやんちゃしてました程度の君が来ればそりゃあ、天狗になれるかもだけど、随分と狭い世界で生きたいんだね。可哀そうに。世界の広さを知らなさすぎる」

 

 本当に憐れむような声。

 福助の憐みに逆に周囲が龍園に同情の視線を送るほどだ。

 

「俺は俺のやりたいようにやるだけだ。この場ではお前が勝つだろうな。だが、明日は? 明後日はどうだ?」

「お前の負けだよ」

「しょうべんしてる最中は? 糞してる最中は? どこからでも狙ってやる!」

「汚ぇよ。お前がしょうべんかけられて、糞に顔を突っ込むだけだ。ちょっと受け入れがたい神経してるけど、怖くないの?」

 

 女性陣の冷たい視線。なんだこの男たちはと、軽蔑の目で様子を伺っている。

 

「恐怖なんて俺にはないのさ、一度も感じたことがない」

「それは病院に行った方が良い。便器マンというあだ名がつく前に」

「………」

 

 龍園の迫真の叫びが、福助の前では無意味な言葉に変わる。

 本来ならあるべき彼の狂気に対する恐怖が、ただ不潔な人間という認識になりかわっている。

 

「今ここでお前が俺に勝っても、俺は何度でも食らいつく。学校のどこにいてもすきを見つければ仕掛けてやる。そして最後に勝つのは俺だ!」

 

 無理やり仕切りなおしたが、場の空気は最悪だ。

 そしてそれを悪化させる男がこの場にいる。

 

「ストーカーは勘弁。男趣味はない。お前がそういう趣味なのは分かった。俺は女の子が大好きだ。だからお前の考えは理解できない。お前は頑張ってカマバッカ王国を作ってくれ」

「……俺にそんな趣味はねぇ」

「四六時中付け狙うんだろ? ストーカーと何が違う? 教養ある俺が特別に教えてあげるけど、ストーカーとは特定の者につきまとったり、位置情報を無断で取得したりすること。待ち伏せや見張り、対象者の周辺をうろつくなんかもストーカー行為だね。お前、やってるよね? 真正のストーカーじゃん」

 

 見ていた桔梗は心の底から思った。やめて差し上げろと。

 

「ストーカーなんてそんなちんけなもんじゃねぇ。暴力による支配、そして恐怖をお前に植え付けてやるぜ!」

 

 なんとかストーカーを否定しようとする龍園。

 しかし、それは許さないのがこの男だ。

 

「ストーカーは自分の行動を理解できないから困る。あれでしょ? 暴力という名の愛情表現。DV野郎の常套句じゃん。ちょっとDクラスが心配になってきた。ひより大丈夫?」

「私は龍園君の対象外なので問題ありませんよ」

 

 にっこりとひよりが返す。龍園の疑惑を否定しないところが彼女の寛容さを表しているのかもしれない。

 女子は対象外。それを暗に示唆することで、この場にいる女子生徒を安心させているあたりも知性を感じさせる。

 

「良かった。まあ、お前を大好きな手下とは好きにしてくれ。さすがにそこまで干渉する気はない。ただストーカーはやめろ。やるにしても俺以外にしてくれ。夜な夜なポスターで自家発電はちょっと……」

「そんなも――」

 

 龍園が暴れようとするが、それすらもかなわない。

 そして福助は現実を突きつける。

 

「うっせ。そんな暴力にが好きなら紛争地帯でも行ってこい。お前の大好きな世界だ。それができないお前は所詮、安全なところで自分より弱い奴を見て自尊心を満たすただの困ったちゃん。実際、お前がこの学校に入れてる時点で、大して問題を起こしてない似非ヤンキー。どうせクラスの奴にも、いざとなったらぶっ殺すとか脅してんだろ? 出来ねえから。クソガキが強がるな」

 

 龍園を突き飛ばすように解放し、他の面々から距離を取らせる。

 男趣味の人間と密着した状態にやばいことに気付いたからだ。

 

「学校側がお前みたいな生徒を入学させた理由は、ラフプレーへの対応だよ。世の中、綺麗ごとでは回らない。脅しに裏切り、後ろ暗いことはたくさんある。そう言ったお勉強(・・・)のためにお前は利用されてるの。気づけアホ。王様気取りなのは勝手だけど、裸の王様でしかないから」

「…………」

 

 龍園は何も言えなかった。

 自分の信じる暴力は容易く防がれ、得意とする謀略もこれまでさんざん防がれてきた。

 クラスポイントだけを見れば、何を言っても負け犬の遠吠えに過ぎない。

 

「男関係以外、お前はやりたいようにやればいいさ。それが将来を担う若者のためになる。せいぜいあがけ」

「て、てめぇ!」

 

 龍園のホモ疑惑はこうしてここから生まれることになった。

 

「謀略も暴力も武器になる。だけど、お前のそれはこの学校の優しさで見逃されてるに過ぎないことを自覚しろ。バレてないつもりかもしれないが、バレてんの。惨めすぎてさすがに同情する。ま、バラしてる犯人は俺だけど」

「んだと!?」

「お前の不幸はお前ごときを王様と錯覚させてしまった周囲の未熟さだな。俺tueeeをやりたいなら、最低でも俺に勝ってからにしてくんない? 闇討ち、謀略、情報操作、何でも良いよ。無駄だから。お前なんてその程度」

 

 突きつけられる現実。絶対的強者から初めての啓示。

 闇討ち――龍園が集められる精鋭ではどんなに人数を集めても返り討ちにしか合わず、最初に犠牲になる人間が酷い目に遭えば、龍園に対する恐怖より福助に対する恐怖が勝ってしまう。

 謀略――知能レベルが違う。龍園に考え付くことが、福助に考え付かないわけがない。

 情報操作――誰が、どこで、何をしたかを開示する手段を持っている相手に対し、何の効力も持たない。逆に赤っ恥をかかされるだけだ。

 龍園ができることは福助はもっと上手くできる。戦いになりはしないのだ。

 

「…………」

 

 龍園にとって暴力は絶対だ。そしてその暴力によって生み出される恐怖。

 それを克服したものが最強なのだ。そう信じて今まで生きてきた。

 時には敗北もあった。しかし、最終的には打ち勝ってきたのだ。

 そして、それが今の龍園を形作った。俺が最強だ。俺の相手になる奴などいるものか。

 そう信じて疑わなかった。

 

 しかし福助には通じない。暴力も知略も何一つ勝るところはない。

 負けないことへの執着心すら、福助には及んでいないのかもしれない。

 結局、井の中の蛙。上を見ずに下を見て生きてきただけなのだと突き付けられ、龍園は何も言い返すことが出来なかった。

 福助を睨みつけ、しばらくしてから舌打ちをして立ち去る。龍園が恐怖を感じずに敗れた初めての敗北だった。

 負けてもやり返せる、そう思わせないほどの実力差を福助の行動、言葉、視線、表情、あらゆる情報から叩きつけられたのだ。

 無様。龍園の心には、そんな感情で埋め尽くされていた。

 

「あー、やっぱ福助君だねー。龍園くんのプライドがズタズタどころじゃないよ。説教しているように見せて、挑発も酷いし」

 

 悪くなった空気を帆波が変える。彼女の言葉で周囲の緊張感が少し和らいだ。

 これは彼女の持って生まれた才能と言って良いだろう。

 

「他人に迷惑をかけるヤンキーは嫌いだからね。中学の時もそうだったでしょ」

「あー……」

 

 帆波は福助を苛めて返り討ちにあったヤンキーたちの哀れな姿を思い出し、口を閉ざした。

 先ほどの重い空気が再び流れてしまうからだ。

 

「ふふ、あれが福田君なりの叩き潰すなんですね。参考になります。物理的にも精神的にも追い詰めるなんて、怖い人です」

「いい笑顔で言う君の方が怖いよ、坂柳」

 

 Aクラスの二人が顔を引きつらせる。女王様をバージョンアップさせるなと言いたいらしい。

 

「それにしても良いのか? お前の発言が正しいのなら、龍園を退学させることもできるのだろう? いやむしろ退学させてやった方があいつのこれからの人生のために良いんじゃないか?」

 

 神崎は龍園を嫌っている。卑怯な人間だからだ。しかし、さきほどの福助の対応はあまりにも酷すぎる。

 この学校を去った方が、楽なのではないかと思えるほどに。ホモ疑惑が広がれば、龍園の立場はなくなるかもしれない。

 

「まあそうだけど、ああいう存在はいた方が良いのも確か。特に帆波の甘ったれを体現したクラスだと、色々やられるかもね」

 

 福助が不敵に笑うと、神崎は渋い顔をする。一方で帆波は笑顔を返し、大丈夫と小さくウインクした。心配はいらないと言いたかったのだろう。

 

「学校側もああいう人材をぶつけて、エリート候補を磨こうとしてるんだろう。各学年にそう言った人はいるんじゃない? 2年なら新生徒会長とか同じ部類だよ。こっちの方がドラゴンボーイより優秀だけどね」

「南雲生徒会長が?」

 

 はた目からは爽やかなイケメンに映る南雲。

 しかし、その本質は違うのだと福助はそう言った。

 

「前生徒会長のマナブ君が生徒の最大値を上げること目標にしているとすれば、南雲君は最大値を下げて自分を上にする感じ。そのために他人の足を引っ張ることをためらわない。最大値を下げてでも自分の居心地のいい環境を作る人間だよ。本質的にはドラゴンボーイと同じで、他人を陥れないと勝てないタイプ。あ、彼の名誉のために言っておくけど、これは俺のイケメンの嫉妬が多分に含まれた見解だから」

 

 以前、南雲と似ていると評価された桔梗は笑みを崩さず、周囲にバレないように福助の足をぐりぐりと踏みつける。さすがに自分はそんな人間ではないと思ったらしい。南雲が元々Bクラスに配属になったのは、そう言った性格面も考慮されているのではと、桔梗の足をどかしながら福助は考えていた。

 一方桔梗以外の生徒たちは、生徒会長就任演説で語った、実力至上主義に反しているのではと、首を傾げた。

 

「南雲先輩は実力主義を掲げていなかったか?」

「あれは建前。マナブ君とは違うよってところアピールしたいだけ。マナブ君と直接やり合っても勝てないから、違う路線を攻めただけさ。マナブ君が超合理主義の実力路線を取っていたら、全く逆のことを言ったと思うよ。皆の平等のために頑張るさ、と胡散臭い笑顔で」

 

 なるほどと周囲が納得する。

 この場に集まった面々も新生徒会長が、善人であるとは思っていないようだ。

 

「中途半端な才能を持つと、上限が見えてしまいます。だから相手が下がってくることを望むしかありません」

 

 有栖が一つの真理を語る。

 

「そうだね。日本はそれを和と呼び、和を乱す行為を嫌悪する。停滞した30年なんていうのも、その辺りが原因かもね」

「ふふ、それでも日本の信用度は世界でも上位ですよ。停滞といえば聞こえが悪いですが、現状維持といえば、プラスマイナスゼロです」

 

 有栖が嬉しそうに尋ねる。

 

「日本のポテンシャルは上位なんかで満足すべきじゃない。1番を目指せるはずなんだ。それこそ、この学校からそのきっかけになる人材が出ることを、日本政府が祈ってる」

「おお~、そう聞くともっと頑張らなくちゃって思うね。福助君的には私たちは日本の将来を担う若者なんだから♪」

「そういうこと。というわけで、帆波クラスに宣戦布告したいんだけど? 俺の名誉のために」

「完全な私怨!?」

 

 桔梗の驚きの声。さきほどまで日本の未来を語った格好良さは一体どこに行ったのかと、本気で困惑した。

 

「いいえ、一之瀬さんを倒すのは私です。どうやら二人は深い仲のご様子。中学も同じということであれば、師匠と弟子と言っても過言ではありません」

 

 過言だろうと一部の人間が思ったが、有栖の何をしてくるか分からない恐怖に口に出すことをやめた。

 

「帆波、深い仲だって」

「坂柳さん、見間違いだよ。ただの友達だから」

「一之瀬さんたら、意地悪ですね。希望を持たせてあげても宜しいでしょうに」

「ちょっと待て、これは嫌な空気だ。話を戻そう」

 

 自分の悲しい未来を察知した福助が無理やり話を戻す。

 

「私は一度、福田君に敗れた身。彼に挑戦するなら、相応の資格を持って挑みませんと。ですので、一之瀬さん、お相手願えますか?」

 

 有栖が敗れたという言葉に反応した者はいない。直近の体育祭の結果は確かにそうだろうからだ。

 ただ実際には違う。それを知るのはあの時チェスの勝負を知る者だけだ。

 

「クラス単位の話なのに、個人的感情が優先されてる」

「桔梗しゃらっぷ。ここでツッコむのはお作法に反する」

 

 ぼそっと桔梗の本音が漏れるが、そう思っていた人間は多いらしく特にツッコむことはなかった。Aクラスはよく言ったと有栖に分からないように頷いている。

 

「そうなると、私たちDクラスが福助君のクラスとの対戦になりますね」

「ひより、すまん」

「いえいえ。それにまだ負けた訳ではありませんから」

 

 福助の勝利宣言に、笑顔で返すひより。福助がいなければ、学力的差はほぼないクラス同士だ。しかし、改造の天才福助がいる。

 ひよりも、自分のクラスと福助の能力を加味して、勝算が高いとは思えなかった。

 

「ひよりにお願いされたらテストの答えを教えてしまうかも」

「あ、勝ち目が出てきました」

「椎名さん、福助君はテスト作成にかかわらせないから、無駄だよ」

 

 桔梗が笑顔でひよりに牽制する。

 

「さすがにダメですか。龍園君ならそちらの生徒を脅して答えを用意させるくらいはしそうですが」

「桔梗、問題作成は君に任せた」

「私を生け贄にする気!?」

 

 相手の裏をかくための生け贄作戦。対戦相手であるひよりが話を聞いていなければ有効だったかもしれない。

 全く無意味な作戦に桔梗が、ゲシゲシと福助の足を攻撃するが、誰もが福助が悪いと思っており、桔梗の様子が普段と違うことを気にしなかった。

 

「なるほど、生け贄戦略ですか。橋本君」

「無理です。目の前に相手がいる時点でバレバレでしょう。そもそもBクラスは脅しをするようなクラスじゃないです」

 

 福助の悪辣さに有栖が乗ろうとしたが、橋本が正論でなんとか防ぐ。

 

「自分のクラスの人間を平然と見捨てるような発言」

「にゃはは、それも一つの作戦だよ。自分たちと違うからと言って、思考を放棄しちゃダメだよ」

「ああ」

 

 帆波と神崎は暴君が龍園だけではないと、理解した。

 

「あのー、話がまとまってきてなんなんですが、石崎君どうしましょう?」

「「あ!」」

 

 テーブル近くで意識を失っている石崎。今の今まで完全に忘れられていた。

 

「この状態で目を覚ますと、女性陣のスカートの中が見えてしまう。なんてうらやま――けしからん」

 

 福助が石崎を無理やり起き上がらせて、意識を戻させた。

 

「ホントぶれないよねー」

「うちの福助君が変態で申し訳ありません」

「デリカシーを学んだ方が宜しいかと」

「……クズ」

「福助君、あまりそういう発言はいけませんよ」

 

 帆波、桔梗、有栖、真澄、ひよりの順である。ひよりお母さんはいつだって最強だ。

 状況が全くつかめない石崎は、そんな罵倒を受けて去っていく福助たちの姿を見つめるしかできなかった。




龍園さんありがとうございました。
原作では輝くことを願っています。
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