I am the perfect and ultimate XX   作:生物産業

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第32話 バカなの?

 ペーパーシャッフル試験、および期末テストが実施された。

 2日間に分けられ、各々が勉強会での成果を全力で出そうと奮闘している。

 実際、その成果はあった。

 

「退学者なしにDクラスにも勝利か。結構地力がついてきたみたいだな」

 

 ポツリと綾小路がこぼす。

 

「ええ。今回はクラスの勝利と言って差し支えないでしょう。私個人としては福田君に負けてしまったけど」

「満点ですまん」

 

 鈴音も各教科90後半で揃えてきている。迫ったと言えばそうであるが、上限が100点で設定されている以上、福助との距離が縮まったのかは分からない。

 

「軽井沢も見事なもんだ。わざわざ自慢しに来たくらいだからな」

 

 期末試験の結果が発表された後、へへーんと福助に80点オーバーで揃えた答案用紙を見せてきた恵。

 クラスの全員の結果は張り出されているので、わざわざ見せに来る必要はないが、余程嬉しかったようで、満面の笑みでやって来たのだ。

 おめでとうと無感情の綾小路の発言に、顔を赤らめた恵を見て、福助が呆れるまでが一連の流れ。

 

「須藤君は50点前後。指導者としても敗北ね」

「さすがにギャル子と須藤ではスタート地点が違う。そこは須藤の努力を誉めるべき」

「労っておいたけど、やっぱり勝てないのは悔しいの」

 

 負けず嫌いだなーと福助も綾小路も声には出さずともそう思った。

 

「そう言えば、佐藤が今回の試験の打ち上げに、今日カラオケ行こうって言ってたんだが……」

「ひよりとデート」

「図書館で感想を言い合うだけだろ?」

「残念。本屋巡ってからのカフェです~。デートじゃないか」

「変な情報は漏らさないで欲しいわ。それと私は行かない」

「だよな。俺はカラオケに行ったことがないから、経験のありそうな二人に色々聞きたかったが」

「女の子と二人だと、店内に設置されているカメラに、男店員が群がるぞ」

「……よく分からんが、いらん情報だろうな」

 

 怪しげな情報は不要と判断し、綾小路は鈴音を見るが、彼女は一人勉強をしている。

 中学時代に、皆で仲良くカラオケに行くようなタイプではないため、得られる情報がないことがわかった。

 結局、麻耶が綾小路を呼びに来て、3人は解散。

 本日が午前中で終了する特別日程のため、福助は綾小路と鈴音に挨拶をしてから、ひよりとの待ち合わせ場所に向かった。

 

 ◆

 

「いっぱい買えました♪ ですが本当に宜しいんですか? 私の代わりにポイントを使っていただいて」

「いいよ。ひよりが読み終わった後は、俺も読むだろうし。自分のために買ったようなもんさ」

「ふふ、そういうことなら遠慮なく。ありがとうございます♪」

 

 二人で本屋をめぐり、図書館にはない新刊を中心に本を購入した。

 現在は、談笑するために穴場のカフェでお茶をしているところだ。

 

「龍園君がクラスのリーダーを辞退しました。クラスはかなり動揺していますね。彼の弁では今回の試験で敗北したことの責任だそうです。一時期は自主退学するなんて噂もありましたが、噂の域を出ませんね」

「へぇー」

「あまり興味ありませんか?」

「うん」

「ふふ、あれだけ龍園君を苛めたのに。酷いですね、福助君は」

「ひよりに言われると心が痛む不思議」

 

 なぜかひよりには頭が上がらない福助。

 

「ひより、うちのクラスに来る?」

「え?」

「龍園が立ち直れないなら、これから先Dクラスが這い上がることは難しいと思う」

「確かにそうですね。金田君が暫定で取りまとめを行うことになってますが、私のクラスで正直求心力という点で龍園君に勝る生徒はいません」

「武闘派クラスだもんね」

 

 入学時点ではスペックだけなら福助のクラスより上と判断されたクラスだ。龍園が暴力政治を行っていたため、他のクラスからはあまり高く見られていない。

 だが、少なくとも学校側の期待値は、福助のクラスより高かったはずだ。

 

「福助くんがいるクラスというのは非常に魅力的ですが、ポイントが足りません。私も福助くんを引き抜こうと考えていたんですよ? 貴方がいれば、うちのクラスがAクラスに上がれますから。そして、それは他のクラスへの絶対的な脅威になります」

 

 ひよりが真剣な表情で語る。

 

「ポイントをうまくやりくりすれば、他のクラスのエースを引き抜くことは可能だもんな」

「相手の同意も必要でしょうけどね」

「さすがに個人の権利を買うことはできないか。というか出来たら困る」

「一之瀬さんと坂柳さんが争奪戦を始めそうですね」

「美少女に狙われる俺……武器扱いだけど」

 

 男として求められているわけではないことは福助も分かっている。

 

「ちなみに、ひよりをうちのクラスに引っ張るためのポイントは既にある。俺個人のポイントで」

「え?」

 

 いつもマイペースなひよりが驚きで目を見開いた。誰かと協力してではなく、単独で2000万以上のポイント所持していると宣言したのだから、驚くのも無理はない。

 

「ただ、クラスの人数が偏るからな。そこら辺はどうなんだろう?」

「そこも気になりますが、福助君、もうポイントを集めたんですか?」

「あいあむあじーにあす」

「そこは流暢で宜しいかと」

「I am a genius」

「わー綺麗な発音です」

 

 ぱちぱちと拍手するひよりに気をよくする福助。

 

「冗談はさておいて、ひよりどうする?」

「そうですね。福助君がいるのであれば、ぜひ」

「あー……そのことなんだけどさ」

 

 ひよりの回答に、福助は少し苦笑する。

 そして先日桔梗に話した情報をひよりに告げた。

 告げられたひよりは少し寂しそうな顔をするが、すぐににっこりと笑いそれはそれで楽しそうだとそう言った。

 

「来年は楽しくなりそうですね」

「だね」

「まだ早いですが、来年もよろしくお願いしますね」

「こちらこそ」

 

 それから二人は最近読んだ本の話で盛り上がりながら時間を過ごすのだった。

 

 ◆

 

 福助は理事長室を訪れていた。

 

「とりあえず、一言。娘に甘すぎですね」

 

 娘経由で情報が漏洩している。学校を運営するものとしてあるまじき行為だ。

 そんなあるまじき行為をした二人に福助はネチネチと嫌味を言うことにしたのだ。

 すでに有栖にはペア試験で帆波に敗れたことに関して盛大に煽り散らかした後である。半泣きの彼女にこの場のセッティングをお願いするまでが一連の流れだ。

 そして嫌味の対象のもう一人の人物とご対面である。

 

「……申し訳ない」

 

 お互いソファに腰を掛けているが、理事長が謝罪をする。

 白髪混じりの中年の男性。物腰は柔らかいが、この学校で理事長の座にいるだけの貫禄はある。

 そんな男が、ただの学生に過ぎない福助に頭を下げるという異様な光景だった。

 

「正直、娘さんのAクラス入りも、貴方の鶴の一声があったのでしょう? 病気を悪く言いたくありませんが、頭が良いだけのお嬢ちゃんが、Aクラスはおかしい。1Bの一之瀬が中学時代に問題を起こしていることはそちらも確認しているでしょうが、反省し立ち直った彼女がBに配属されて、有栖さんがAというのは親のひいきを疑うしかありません。実際、直近の試験で一之瀬のクラスは娘さんのクラスに勝っています。正当な判断だというなら根拠を今示してください」

 

 福助の強い追求に、坂柳は沈黙するしかなかった。

 

「まあ、親心として見逃せる範疇ですが、教育者としての矜持をもっと持ってもらいたいものです」

「耳の痛い話ですね」

 

 少年に説教されるこの状況。本来ならありえるわけもないが、福助の立場がそれを許している。

 

「本日、可愛い娘さん経由で時間をとっていただきありがとうございました」

「はは、もう娘のことで苛めるのは勘弁してくれないでしょうか?」

「大人がだらしないと子供が真似するんで」

「面目ない」

 

 ネチネチと嫌味を言ったところで、本題に入る。

 

「この時期に私が接触した理由が分かりますか?」

「日本政府からの対応でしょう。君がなぜこの学校に入学したのか、調べてみて分かったよ。まさか政府が君にこの学校の調査を依頼していたとは思いもしませんでした」

「政府からは問題がなければ普通に学生をしてくれて構わない。見込みのある生徒がいればスカウトしても良いという条件だったので依頼を受けました。正直、普通の学生として過ごすつもりでしたが、色々と問題がありすぎます。貴方の理事長としての手腕に首をかしげたくなりますね。特に教師陣。正直、彼らに日本の将来を担う学生を指導できるとは思えません」

「彼らの中にはこの学校のOBも存在している。この学校の仕組みもよく分かっている。授業のレベルも問題ない水準に達していると思いますが?」

「OBですか? つまりあれがこの学校が求めた理想形ですか? 失礼を承知で言いますが、鼻で笑うレベルです。指導力がどうこう以前に、人としてダメでしょう? Aクラスの真嶋教諭を除けば、1学年の担任教師は落第です。この学校のシステム上、過干渉はダメなんでしょうが、あれならいないほうがましです。私がAIで代理教師を作った方が、余程うまくやれますよ」

 

 福助が話しているのはB~Dクラスの教師陣たちだ。Dクラスは言わずもがな、龍園の無法を許し過ぎであるし、Cの茶柱に至っては教務の放棄が酷い。態度ですら、社会人として落第レベルだと福助は指摘する。Bクラスの星之宮は問題こそ起こしていないものの、帆波から聞かされた二日酔いでホームルームを行うほどに自己管理ができていない。指標となるべき教師が、全くその道を示さないのだから生徒のモチベーションも上がらないと強く非難した。

 

「この学校が求めるエリート像を示して欲しいです。それが多岐にわたるのは構わないですが、あの教師を見て自分の将来が心配にならない生徒はいないはずです。こんなもんかと舐められてますし、正直OBと聞かされて頭を抱えたくなりました。ちなみに、茶柱教諭、星之宮教諭はOBなのでしょうか? 二人は高校の頃からの知り合いと聞かされているので、同じ高校のはずですが」

「……Aクラスの真嶋先生を含めて3人はここの卒業生だ」

 

 福助は本気で頭を抱える。

 Aクラスとして卒業したと言われなかっただけまだマシだと少しばかりホッとしている。

 国主体の学校が、まさか税金をドブに捨てているとは思いもしなかったからだ。

 

「理事長解任の話が出ることは覚悟してください。すでに調査報告は済ませています。問題教師は副担任への配置転換を考えてください。改善が見られなければ、貴方と一緒に退場させるつもりです」

「……そのことに関しては、おそらく君の報告関係なく、動きがあると思うよ」

「こちらで把握している限りでは、政財界にコネのある人間が動いているということです。たしか綾小路という名前だったかと。具体的な調査はしてませんが、きな臭そうな感じではありますね」

「そこまで把握済みですか。やはり君をこの学校に招いたのは正解だったようですね」

 

 坂柳理事長が、優しく微笑む。

 

「推薦が必須で、入試があまり関係していないというのが私の予想ですが、合ってますか?」

「それはこの学校を管理する者として教えるわけにはいかないよ。少なくとも君の合格は完全に実力だ」

「Dクラスの配属だったのですが?」

 

 お前の目は節穴かと、福助は視線で訴えた。

 

「クラス編成に関しては口を出させてもらった。君はどこのクラスに配属させようと、成果を出すだろうから、それならくすぶっていたり、問題を抱える生徒が多いクラスの方が良いと判断した」

「慧眼恐れ入ります」

「嫌味かな?」

 

 福助は満面の笑みで返す。

 

「……綾小路という生徒は君にとってどう映っただろうか?」

「急な話ですね。さきほどの綾小路氏の話を含めて関係がありそうですね。名前からして親子ですよね?」

「あまり生徒の個人情報を語るのは良くないが、その通りだよ」

 

 語る気満々だっただろと、福助は思った。

 

「どうといわれると困りますが、AIって感じですね。知識、知能は高いのに、行動の意思決定が自分で出来ない。問題を解決する能力は高くても、新しい何かを生み出す存在ではない」

「なるほどAIか。核心をついているかもしれない。彼の育った環境はかなり特殊でね、それこそ、未来を担う人材に必要とされる教育はすべて受けてきたはずだ」

「まあ、各国にもエリート育成プログラムはありますからね。人権を無視して天才を作り出すプロジェクトは、権力者なら求めたくなります」

「君ならそれをAIで実現するのだろう?」

「そうですね、そちらの方が早いと思います。不確定要素が強いのが人間です」

 

 それなら指示を出せるスーパーコンピューターを作った方が確実だと福助は考える。

 

「貴方が綾小路の名前を出したことと、先ほどの話から綾小路は天才育成プログラムを受け、そして成功した一人ということでしょう。そして、それを実施したの父親。家庭内教育レベルではないでしょうから、それなりの規模の施設があるんでしょう。俺が知らない以上、国に秘匿されるレベルの人権を無視した育成機関だと推測できる」

 

 福助はホワイトルームのことは知らない。しかし、坂柳理事長との会話でその存在に気付いた。

 そのことに、坂柳理事長は驚きを隠せない。

 

「その施設が秘匿され、この学校が国主体であることから二つは敵対組織の関係。その施設出身の綾小路がこの学校で特に何かをしていない以上、敵組織の調査という線はない。父親と問題があって、ここに逃げてきた感じですかね。で、綾小路が退学していない以上、彼の父親はこの学校には直接手を出せない。だから、貴方を解任し、自分の都合の良いような人間を理事長に添えようと動いている感じですか?」

「さすがは神童だ。驚異的な洞察力ですね。親のひいき目を抜きにしても有栖は天才だと思っていたが、君を見ると霞んでしまうね」

「御託は良いです。若輩から申し上げますが、アンタたち、ホント何してんの? バカなの?」

 

 理事長に対して、普段茶柱にすら使っていない言葉遣いで話していたが、福助の口調が大きく変わった。

 

「親子喧嘩に国を巻き込むとか、バカすぎる。国の未来を何だと思ってるの? 綾小路を退学させたら、代理の理事長もまた別の人に変わるんでしょ? アンタが復帰することだってあるだろうさ。たかが一人の人間に振り回されるとか、マジでやめて欲しい。綾小路パパ、迷惑だから暗殺するよ?」

「それは危険な発想だ」

「宇宙開発が着々と進んでいる。衛星からのデータで誰がどこにいるかなんて把握できるようになってきてるんだよ。引きこもりは別としてね? その解析作業すら機械化しているわけで、俺たちが作っているの。世界大戦の引き金になりかねないわけ。俺が選民思想賛成派だったら、日本の老害と呼ばれる人間がマジで不慮の事故に遭うから」

「…………」

「世界が楽しいことであることを俺は知っている。そしてそれを作って来たのが過去の人であり、今の上の世代だ。でもね、下の世代を蔑ろにして、世界の成長を止めるようなことがあれば、俺は戦うよ? この学校は少なくとも日本の、ひいては世界の成長に貢献できる人材を育成しているつもりだと思っていたけど、違うの?」

「いや、君の言う通りだ」

「なら頑張ってよ。下の世代が頑張れるように、上の世代も頑張って欲しい。俺もどんどん下から突き上げていくからさ、貴方たち大人も負けないようにして欲しい」

「君のような若い子に、そこまで言わしてしまうとはね。大人として恥ずかしいよ」

「悔いるくらいなら、綾小路パパを止めてね」

「何とかしてみせるよ。理事長の立場を失ったとしてもね」

 

 坂柳理事長はしっかりとした表情で頷いた。

 そんな彼を見て、福助は今までの自分のやり取りを省みてすっと立ち上がる。

 

「政府関係者の立場では、出過ぎた真似でした。申し訳ありません」

 

 福助が頭を下げる。ここを訪れたのはあくまで仕事のためだ。

 立場を忘れて、私情に走ったことを謝罪した。

 

「いや、君が謝ることは何一つない。不甲斐ない大人の一人として、こちらが謝罪すべきだ。申し訳ない」

「お互いに頑張るということで」

「ああ。娘に顔向けできないような情けない大人にはなりたくないからね」

「娘さん、好きすぎじゃないですか?」

「有栖は可愛いだろう?」

 

 親バカだなと思いつつ、有栖が可愛いことには同意した。

 その後、少しばかり談笑して、坂柳理事長が呼び出されたため、福助は理事長室を後にする。

 部屋を出た時に、茶柱が「なぜお前がここに?」と驚いた顔をしていたが、「減給されないと良いね」と嫌味を言って去っていくのだった。

 




真面目回はこれで最後になります。
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