I am the perfect and ultimate XX   作:生物産業

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第33話 その曲を選ぶセンスよ

 クリスマスが近づいて来ている。

 校内はカップルの話で盛り上がり、相手がいない生徒たちの中にはターゲット捕獲に躍起になっている者もいる。

 Dクラスのもてない男たちは、「彼女欲しい~、つうかやりてぇ~」と女子の軽蔑の視線を一身に集めながら、そんなことを叫んでいた。

 

「貴方はあそこに混ざらなくて良いのかしら?」

「そこらの変態と同じにしてもらっては困る」

「なんの自慢にもならないプライドを見せてくれてありがとう」

 

 鈴音は呆れながら話を終えた。変態に種類があったとしても、それは彼女にとってなんら必要のない知識だからだ。

 

「明日から冬休み。クリスマスにサバトで綾小路を火あぶりに。新年あけましてさようならで綾小路の公開処刑。あ、こっちは俗物的な方で。俺はクリエイター。画像作成は得意分野」

「少なくとも俺が2回死ぬな。おれは神の子になったつもりはないぞ。復活の術など身に付けてはいない」

「この短期間で習得するんだな」

「無茶を言う」

 

 綾小路がいくら人工的に作られた天才であっても、死者蘇生までは出来ない。社会的抹殺からの復活などなおさらだ。

 

「綾小路と堀北はクリスマスのご予定は?」

「特にない」

「いつも通りよ」

「よしクリパしよう。俺たちのようなモテない美男美女で楽しくパーティーをしようじゃないか!」

 

 ちゃっかりと自分をイケメン枠に含める。

 

「私は遠――」

「マナブ君を呼ぼう」

「……参加するのも悪くないかもしれないわ。色んな人と交流を持つのは大事だから」

 

 顔を真っ赤にして鈴音は顔を背ける。その様子を綾小路と福助は「ちょれぇ~」と小さくバカにした。

 

 ◆

 

 思い立ったが吉日。学に嫌がらせのようなメールを送り続け、なんとか参加にこぎつける。

 それから綾小路を引き連れて、クリスマスに予定のない友人たちを招待して回った。

 

「初めて来るなAクラス」

「うちのクラスと比べると民度が違う」

 

 Aクラスのドアから目的の人物を探す。その際、「彼女欲しい~」みたいな言葉は飛んでこなかった。ペーパーシャッフル試験でBクラスに敗れ、ポイントでも上位3クラスが2桁圏内でいつ降格してもおかしくない。

 入学時からAクラスをキープし続けているものの、降格への焦燥感は普段関わりのない福助たちにも容易に感じることはできた。

 

 故に、異物に対して相当な敵意をむき出しにする。

 福助たちがAクラスのドアから中を覗き込んだだけで、睨みつけるような視線がそこかしこから飛んできた。

 

「民度が違うな。良い意味ではないが」

「何言ってんの? これが俺たちの世代を背負う人材の姿だよ。よく目に焼きつけといた方が良い」

「排他的な世の中が出来上がりそうだ」

「尊王攘夷に逆戻り。鎖国政策で、日本の未来は暗いぜ」

「笑えないぞ」

 

 そんな馬鹿なやり取りをしていると、目的の人物がやってきた。

 この特殊な学校では、他のクラスに無断で入るわけにもいかない。

 だからこそ、二人で漫才をして注目を集めていたのだが、目的の人物はそんなことをしなくても、二人のところやってくるであろうことは想像に難くない。

 

「あら、敗者の顔を見学にでも来たのですか?」

「それもある。四天王最弱の帆波に敗れるとは、勇者の面汚しも良いところ」

「一之瀬が魔王の幹部になったことも初耳だし、坂柳が勇者になったのも初耳だな。まあ、魔王がお前なのはすぐに分かるが」

「黙れ最弱その2。四天王筆頭ひより様に罵倒されたいか。ちなみにその3はいない」

「四天王じゃないな。それと椎名の罵倒は心が折れそうだから遠慮する」

「ふふ、お二人は随分仲が宜しいご様子。さて、ここではなんですから、食堂にでも行きませんか? 丁度お昼です」

「椅子役は綾小路に任せろ」

「それはそれは、綾小路君お願いしますね」

「お願いしないでくれ」

 

 この二人が揃うと色々と大変なのでは? 綾小路は福助について来たことを後悔した。

 

 ◆

 

 食堂に向かう途中に帆波を拉致していく。一応お付きに神崎と白波が付いてきている。

 ひよりにも連絡を取ったが、どうやら図書館にいるようで返信が来ない。

 仕方ないので、そのまま食堂に移動した。なお、有栖の補助役には普段の橋本や神室ではなく、葛城がついている。

 最近までは有栖とAクラスのリーダー争いをしていた人物だ。

 そんな彼が反目しあっているはずの有栖と行動をなぜ共にしているのか? 理由は単純に福助が誘ったからである。

 

「クリパをしよう。彼氏彼女がいない俺たちに救いを」

「他クラスの人間を集めて言うことじゃないな。それに彼氏彼女がいる奴もいるだろ」

 

 綾小路がそういうと、全員が一斉に視線を逸らす。勉強がお友達。まさに健全な高校生たちだ。

 

「クリパという言葉に抵抗があるんだな? 仕方ない、有栖たん敗北パーティーと名前を変えよう。皆で盛大に煽り散らかしてやろうじゃないか!」

「ちょっと待ってください。それはあまりに非人道的な行為ではありませんか?」

 

 プライドの高い有栖の待ったの声。

 しかし煽りの天才福助には声は届かない。

 

「帆波のクラスくらい余裕だろとか、調子に乗って敗れるお嬢ちゃんを慰める会とかにした方が良い? うちの帆波をなめてもらっちゃ困りますよ。やれば出来る子なんで」

「くぅ~~」

「別に福助君の子になった覚えはないけどね」

 

 有栖は普段大人びた振る舞いをする。それは自分が優れているからであり、他者を見下して生きてきたからだ。

 自分は他とは違う。そう言った心持が、彼女を少しだけ背伸びさせている。

 しかし、実際は頭が良いだけの世間知らずのお嬢様。少しメッキをはがせば、見た目通りの子供の部分がすぐに顔を出す。

 

「負けたAクラスの身で言うのはあれだが、あまり坂柳を責めてやらないでくれ。正直、俺たちのクラスは体育祭までまとまっていたとは言い難い。それを坂柳は、1か月の間で統率出来るまでにしたのだ。争っていた俺が言うのもなんだが、今回の敗北は俺が足を引っ張っていたのが大きい」

 

 この場で最も大人な対応をする葛城。

 弱者に対して冷酷で苛烈な攻撃をする有栖のやり方に対して、価値観の違いからかずっとリーダーの立場を争っていた。

 不用意に人を傷つける有栖のやり方を快く思っていないため、自分が舵取りをしなければ悲しむ生徒がでるという責任感から彼は有栖と争っていたが、彼女自身の能力は十分に認めている。お互いが協力を出来るというスタンスであれば、それがAクラスにとって一番望ましいことだろうとは葛城も思っている。

 体育祭の間から、どこかおもちゃを壊す子供のような危険な性格が消えた有栖を見て、これならばと今は彼女にクラスのリーダーの座を譲っている。体育祭に至るまで、さんざん彼女の手の者に妨害されていたことを有栖自身から聞いたのも大きかったからかもしれない。

 

 保守的なだけでは、未来は変わらない。

 

 自分が保守的な人間だというのは自覚があるが、有栖から言われたその言葉ではっとされたのは、葛城がこの学校を卒業するという小さい目標にこだわり過ぎていたことを自覚させられた瞬間だった。

 それ以降、有栖の言動に問題があれば諫めるAクラスの良心的な立ち位置についている。

 

「葛城、お嬢ちゃまを甘やかすな。現状最高の手札を持って敗れる奴など罵ってやれ。敗北は人を成長させるんだ。名将堂本監督も言っていたではないか、『負けたことがあるというのが、いつか大きな財産になる』と。油断も慢心もしてないはずなのに、経験を積ませるために美紀男を投入した舐めプを俺は忘れない」

「私はぴょん吉くんがもっと働くべきだと思った。ポストプレーをもっとやれば良いのにと」

「お前ら二人はなんの話をしているんだ?」

 

 福助と帆波はバスケ漫画の名作について語っている。ちゃっかり神崎が「いや、あれは王者スタイルにこだわりすぎた判断ミスだ」とファン丸出しの感想を述べている。

 

 

「ただし、俺はあの場面でも将来を見据えて教育に徹した堂本教諭を支持したい。特にこの学校の教師は模範とすべきだ。職員室にバイブルとして全巻置いて置こうと思う」

「星之宮先生とか熱中しすぎて、ホームルームに遅刻しそう」

 

 漫画に興味のない綾小路や有栖はただひたすらに困惑するしかなかった。そんな二人に読破させようと思った福助と帆波は、黙って頷く。

 

「話を戻すと、帆波ごときにぷぎゃーと煽られたときの俺の気持ちが分かるか? クラスのために身を捧げた体育祭の救世主に対する悪逆非道。俺は帆波が泣くまで写真を送ることをやめなかった」

「全然戻ってないし。どうして私に被弾させるのかな? WRYYYとは叫ばないよ」

「ムカついたからだ」

「子供!」

 

 もともと有栖への非難だったが、福助は会話で魔球を投げるため誰も取れないことが多い。唯一ダイビングキャッチができる帆波を、綾小路は本気で欲しいなと思った。主に制御役で。

 

「葛城が大人な対応なため、クリパをしよう」

「話が戻ったな」

「ちなみにプレゼントに危険物は禁止だ。ガチもんの爆弾を作って会場を狂喜乱舞させたあいつを俺は忘れない」

「そのあいつの話は怖いから、一般的なクリパの話をしよう。済まないが、俺はクリスマスパーティーというのを体験したことがない」

「ぼっちだからな」

「うるさいぞ。というわけで、一之瀬、普通のクリパを教えてくれ。福田に聞くと見当違いなパーティーが開催されそうだからな」

 

 綾小路の言葉に、帆波が苦笑しながら答える。

 皆で会場を準備したり、料理を用意したり、時間になったらクリスマスプレゼントを交換したりと、わいわいと楽しくやることだと説明した。

 

「なるほど」

「こういう準備の時に、普段会話しない子と盛り上がったりするんだよね♪」

「はい。まあ、私は帆波ちゃんがいればそれで満足です」

 

 白波の言葉に、帆波は笑みを返したが、背中は冷や汗でびっしょりだった。もう冬だというのに。

 

「余興は綾小路と俺の漫才で良いだろうか? 渾身のツッコミを披露しよう」

「お前はただ俺にツッコミをいれたいだけだろ」

「というか二人なら、福助君がボケ役だと思う」

「聡明な俺がボケだと?」

「片腹痛し♪ 自分がボケクズである自覚を持って♪」

 

 帆波の煽りに福助は顔を歪ませて悔しがった。頭が良くても言動がおかしいというのは、福助が体現してきたことだからだ。

 

「なんというか、驚きだな。一之瀬が人に暴言を吐くのもそうだが、福田が想像と違っていて少々困惑している」

「葛城、一之瀬の暴言は福田限定だ。福田が想像と違うのは諦めろ。俺も思った」

 

 神崎の言葉に葛城が「そうか」と困惑を解消しきれずに頷いた。

 

「帆波は後で報復するとして」

「ちょっと!」

「冗談だ。とりあえず、この場の面子はクリパの参加は決定で良いだろうか? クラスが違うとか、そんな小さなことをいう奴には、改心のための動画を俺が製作してやろう。ちょっと精神的ダメージで3学期以降の復帰が危ぶまれるかもしれないが、挫折は早い方が良い」

「挫折ってなんだっけ?」

「さあ?」

 

 帆波の言葉にその場の全員が首を傾げる。トラウマを植え付けると挫折は、福助の中では同じらしい。

 

「Aクラスはどの程度集められそう?」

「どんな手段を用いても良いのであれば、ほぼ全員かと」

「よし、ならB――」

 

 有栖の言葉に納得した福助。ただ、それを周囲は許さない。

 

「良しじゃないよ! 全然良くないからっ! 坂柳さんも悪乗りしないで」

「悪乗りしているつもりはありません。福田くんには借りがありますので、ここで返済しておく方が良いと思ったのです」

「女の子がたくさんいれば俺はそれでいい」

「欲望が駄々洩れだよっ! そんな無理やり連れてこられてもつまらないだけだからっ!」

「一之瀬が居てくれてよかった」

 

 福助の制御役として、綾小路は一之瀬の引き抜きを本気で考えようとしていた。

 

「じゃあ、最低10人はお願いしたい。無理な場合は、少人数でも可。調整役は綾小路に一任する」

「なぜ俺に。言い出しっぺのお前がやるべきだ」

「会場の手配から、ケータリングの予約、学校側との交渉、それらすべてをお前がやるというなら俺がやろう」

「俺は友達100人目指しているんだ。喜んで調整役を引き受けよう」

 

 無表情でそう語る綾小路に、あ、こいつ実はかなり面白い奴と周囲が思ったのは秘密だ。

 

 ◆

 

 茶柱経由で学校と交渉。元生徒会長である学も利用し、円滑に事が進んだ。

 陰で茶柱が、胃腸薬を飲んでいたのは親友の星之宮しか知らない。

 

「クリスマスパーティーか。まさか、この学校でやるとは思わなかったなー」

「千秋、しゃべっても良いが手を動かせ」

「はーい」

 

 クリスマスに予定がない人間を集めてのパーティー。福助のクラスからは、福助を始めとして、綾小路、鈴音、桔梗、恵、千秋、平田、須藤、麻耶、三宅、幸村、外村、愛里、波瑠加、さつき、かやのが参加する。

 

「それにしても参加費が2000ポイント以内で本当に大丈夫なの?」

 

 福助が用意したツリーの飾りつけをしながら、千秋が尋ねる。

 

「ぶっちゃけいらないけど、まあ、ただだとあれでしょ?」

 

 ただより高いものはない。

 何かあると疑われては本末転倒なため、参加費としてクリスマスプレゼントを用意するようにしたのだ。

 その上限を2000ポイントとしたのだ。

 

「それにしても、BはまだしもAクラスまで巻き込むなんて」

 

 有栖と葛城が連れてきたAクラスのメンバーを見ながら、千秋は少しばかり呆れていた。

 有栖が肉体的な活動ができないため、指示を出し、それを葛城が監督しながら進めると言った感じで作業を行っている。

 帆波のクラスの生徒や桔梗や平田といった社交的な人間たちも混ざりながら、楽しくやっているようだ。

 クラスの勝負でもなんでもないため、こんな日までいがみ合う気はないらしい。そしていがみ合いそうな人間はこの場に呼ばれていない。

 

「女の子、いっぱい、うれしい」

「知能指数が酷いことになってるよ」

「ええやん。これでこの日にカップルが生まれたら、新しい宗教の開祖となるよ、yes, LoveLove」

「頭の悪そうな宗教だね」

「うるさいよ。千秋も良い男探しな。俺以上は中々いないけど」

「それはそうなんだけど……顔と性格を除けば」

「それメッチャ大事なやつー。美人の千秋に言われると反論が出来ない。稼いだ額ならマウント取りまくれるのに」

「そこで勝てる人はこの学校にいないんじゃないかな。理事長を含めて」

 

 アメリカの資産家ランキングがあれば、少なくとも100位には入ってくる人間だ。

 日本ではトップ20に入っていてもおかしくない。

 

「千秋が苛めるから、他見てくる。サポートとして麻耶を連れてくるわ」

「やめてあげてよ。麻耶ちゃん、綾小路君と作業してるんだから」

「俺は気遣いが出来る人間。麻耶と一緒に綾小路も送り出す。千秋は、ラブラブしている二人の横でムキーすればいい」

「……性格悪いね。あと、あの二人じゃラブラブにはならないかな」

「酷いことを言う」

 

 それが福助に対してなのか、綾小路たちに対してなのかは千秋には分からなかった。

 福助は、綾小路と麻耶の下には向かわず、この場で唯一の上級生の下に向かう。

 

「マナブ君、やっほー。橘パイセンちーす」

「ああ」

「お疲れ様です」

 

 学はいつものように淡白に、茜はしっかりと頭を下げる。

 

「参加ありがとね。他に人を呼んでくれてありがとう」

「卒業も間近だ。普段交流のない下級生に何か影響を与えられるならと皆参加してくれた」

「先輩から話が聞ける貴重な機会。大切にさせてもらうよ」

「試験のことはあまり話せないがな。まあ、上手くやってくれ」

「カッコいいのがムカつくから、鈴音たんをおちょくっていい?」

「やめろ」

 

 兄への嫉妬を、妹で晴らそうとする悪魔に、学は制止をかける。

 

「橘パイセンは参加でよかったんですか?」

「ええ……どうせ一人ですし」

 

 橘茜は決してモテないわけではない。

 社交的であり、クラスメイトからも学同様に信頼されている。

 だが、彼氏はいない。

 それもそのはずで、彼女の目には学しか映っておらず、それは周囲も理解している。

 つまり、学が茜を受け入れなければ、彼女が寂しいクリスマスになるのは仕方がないことなのだ。

 今回のイベントは、彼女からすれば仲を深める絶好のチャンスとも言える。心の中で福助にお礼を言ってるくらいだ。

 

「妹とは話した?」

「少しばかりあいさつした程度だ」

「ツンデレ兄弟」

「俺の方からあれやこれやとするわけにはいかない。お前が鈴音を守ってくれるというならそれも考えるが」

「ああ、南雲君? まあ、噂だと女遊びが激しいらしいし、妹の貞操を守るのは兄としては当然か」

「別にそういうつもりで言ったわけではないがな。あいつの恋愛事情まで口を出す気はない」

「脅しの道具。うわぁ~南雲君のイメージがどんどんマイナスになっていく」

「元々マイナスなのか? 俺が言うのもなんだが、能力は高いと思うぞ」

「イケメンで女たらしの時点で、好感度があるわけがない」

「まっすぐな嫉妬」

 

 茜が素直に感心するほど、福助の言葉に嘘はなかった。

 

「ま、このパーティーに南雲君は呼んでないから問題ないよ。途中で乗り込んできたら、バリカンであの髪を刈り取るから」

「嫌がらせの仕返しにしては、随分と酷い対応だな」

「それでもイケメンなのが変わらないのがムカつく。入学したての頃にポイント全部巻き上げてやったから、大きなことはできないだろうけど」

「……堀北君、私は今どこに驚けばいいか分かりません」

 

 坊主にしたところでイケメンであることを認める福助の素直さか、はたまた学の対抗馬として評されてきた南雲を4月の段階で下したことか、茜にはその判断がつかなかった。

 

「あ、マナブ君も勝負しようよ。ポイントはいらないからさ。余興の一環として」

「余興か。良いかもしれんな」

「よし定番のロシアンルーレットにしよう。大丈夫、実弾は日本では禁止だから、ゴム弾だよ」

「全然大丈夫じゃないんですけどっ!」

 

 当たりどころによってはお亡くなりになる可能性がある代物だ。福助が用意している時点でおふざけレベルではないだろう。

 茜が叫ぶのも当然と言える。

 

「クリスマスをお通夜にするわけにはいかないだろう? 普通は歌とかダンスとかじゃないか? 一発芸の範囲で」

「俺の会社の奴は結構ノリノリでやってくれたんだけど。しかも皆豪運でさ。8人8発でやったのに、最後まで弾が出ないの。で、壁に向けて撃つと出るわけ。俺らすげぇーって盛り上がった」

「……それは凄いな」

「神様ですか?」

 

 頭が良すぎると、運も引き寄せるらしい。

 

「橘パイセンはマナブ君の歌とダンスどっちが見たいですか?」

 

 両方。そう言えればどれだけ良いだろうかと、茜は心の中で叫ぶ。

 

「おk。両方ね」

「嘘でしょ!?」

「パイセンの目がそう言ってました。ということでマナブ君、歌って踊れるアイドルであることを見せましょう」

「アイドルになるつもりはないが、勝負事で負けるつもりはない」

「じゃあ、負けたら鈴音たんかパイセンの耳元でぐっとくる言葉を囁いてね。ぐっときたかの判定はどちらかが鼻血を出すか、気絶するかで」

「私、福田君を応援しますっ!」

 

 橘茜、18歳。欲望が隠し切れないお年頃である。

 

「俺が勝ったら、どうするんだ?」

 

 学の言葉は茜には聞こえなかった。

 そしてお互いが選曲をする。

 もともと余興用に福助が準備していたため、インパクトが強い曲ばかりだ。

 

「俺はこれで行こう。橘手伝ってくれ。あと何人か声をかけるぞ」

「ここでその曲を選ぶセンスよ」

 

 学の選曲のセンスに、福助は脱帽するしかなかった。




次回の話が一番最初に作った話です。タイトルを決めてすぐに話を作りました。
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