I am the perfect and ultimate XX   作:生物産業

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ちょっと真面目?回。頻度は少ないと思いますが、たまに出てきます。


第6話 誰が田中よっ!

 A 940

 B 820

 C 490

 D 210

 

 福助が高校に入学してひと月、待ちに待った結果が朝のホームルームで張り出された。

 張り出される前に、プライベートポイントが振り込まれていたため、福助や綾小路に混乱は起こっていない。

 桔梗経由で、クラスにポイントの説明がされてはいたが、絶対的に正しいというわけではなかっため、半信半疑だった者たちの減点行為が重なって、クラスポイントを大きく減らすこととなった。

 

「本当に愚かな生徒だなお前たちは。ただ私の予想を少しばかり上回ったことは素直に褒めてやる。てっきりすべてのポイントを吐き出すと思っていたからな」

 

 悪びれもなく、茶柱がDクラスの面々にそう告げる。

 

「確かに。納得の予想です」

「楽しんでるな、福田。まあ、お前の助言がなければ、0だっただろうけど」

「嫌な性格ね」

 

 小声で話す、この状況を予想していた者たち。

 

「先生、質問があります」

「なんだ平田、聞いてやるぞ?」

 

 桔梗から伝え聞いてたとはいえ、確認するべきだと判断したクラスのリーダー格の平田が皆を代表して尋ねる。

 

「毎月1日に10万ポイントが振り込まれるのではなかったのですか? 今朝確認したら振り込まれていなかったので」

「既に分かっているだろう?」

「それでも確認を取らなければいけませんから」

 

 平田の言葉に満足したのか、茶柱がこの学校のシステムを説明し始める。

 A~Dのクラスは学校の判断基準に基づいて、上から順に振り分けられたのだと。

 クラスポイントはその結果であり、クラスポイントで他のクラスを上回れば、クラス順位が入れ替わるということ。

 

「その説明を最初にしなかったのは、新入生の能力を正しく判断するためですか?」

「そういうことだ。我々、学校側の査定が本当に正しいのかを確認するためだな。結果は言うまでもないな」

 

 黒板に張り出されたクラスポイント表が、結果を物語っている。

 

「分かりました。ありがとうございます」

「やけに素直だな。もっと反発があるものだと思っていたが」

「この状況を事前に予測していた生徒がいるので。驚きはありましたが、この学校が日本最難関の一つに数えられる理由が分かった気がします」

「……ほーう。事前に予測していたのであれば、もう少しポイントを残せ――いや、予測してなおこの結果ということか。呆れるべきか、実力相応と頷くべきか」

 

 生徒を煽りにあおる。

 彼女の教師としての適性が皆無なことが分かる行動だ。

 

「ただの学生に毎月10万の時点でお察し」

「エリート意識で察せられなかったけどな」

「まあ、普通に会社でも、将来の可能性に期待とかで新卒社員に結構な額を提示する場合があるから、間違いでもないけどね」

「生の経営者の声ね」

 

 それからいくつかの説明があって、ホームルームは終了した。

 茶柱が立ち去った後、桔梗の周りに人だかりができる。

 

「さすが櫛田ちゃん!」

「完璧な予想だよ!」

「らぶりーすぎる!」

「結婚して!」

 

 賞賛の嵐。福助や綾小路は自分の名前を出すことを、控えたため今回の予想は桔梗が、彼女のコミュニケーション能力を発揮して、色んな人に尋ねた結果を合わせたものだということになっている。桔梗本人は褒められて苦笑しているが、実際、自分で考えたわけじゃないためそれも仕方がない。

 

「最後に重大なことを言っていたね」

「赤点をとったら、その時点で退学だろ?」

「普通にやってれば、赤点なんて取らないわ」

「赤点取りそうな人に心当たりある人~」

 

 3人が小さく手を上げる。

 Dクラスの3バカ、それ以外にも怪しい輩が若干名いる。先日の小テストの結果もクラスポイント同様に張り出されているが、既に赤点者がいるのが現実だ。

 

「俺としては退学者はいてくれて構わない」

「クラス対抗イベントがあるとか、予想していなかったか? 参加条件に一定の人数とかあったら詰むぞ」

「……切り捨てるわけにもいかないということね。イベント内容が学力だけとは限らないわけだから、運動能力が高い人間を残す必要は絶対に出てくるわね」

「おお~堀北からチームプレイを感じる言葉が出てくるとは、ちょっと感動する」

「私はまだ貴方のようにクラスに個人で対抗するビジョンが浮かばないだけよ」

「ん~根底は何も変わってない感じが、堀北らしい」

 

 鈴音の協調性が5上昇した。それだけでも立派な成長だ。

 クラスの喧騒がありながらも、時間は過ぎていき昼休みとなる。

 

「ちょっと出てくる。茶柱先生に呼び出しをくらった」

「不良生徒め」

「全く心当たりがないんだが」

「禁断の恋の予感」

「職員室に呼び出しだぞ。どんな教師だ」

 

 福助の発言に、呆れながら綾小路は教室を出て行った。

 

「堀北も先に出て行ったから、ばったり出くわすかもね」

 

 そのつぶやきは綾小路に届かない。

 

 ◆

 

「福田君、ちょっと良いかな?」

 

 綾小路が立ち去ってすぐ、平田が福助の下にやってくる。

 その後ろには桔梗と、平田の彼女と噂がある軽井沢恵が控えている。

 

「これ見よがしに女子を侍らせるとはふてぇだ。去勢するぞ」

「侍らせてるわけじゃないし、怖いことはやめてほしい」

「では何の用?」

「朝のホームルームの話。これからのことについてお昼を食べながら話せないかなって思って」

 

 桔梗がいる以上、なぜ福助に話しかけてきたのかは簡単だ。綾小路は面倒を嫌う人間である。

 今回のSシステムに対する予測を誰がしたのかは、伝えていることだろう。

 

「奢られましょう」

 

 そして4人は学食に移動する。

 

「悪いね、奢ってもらって」

「君のおかげで今月の支給があるようなものだからね。これくらいは問題ないよ」

「イケメンがイケメンすぎる」

「あんた、本当に今回のことを考えたの? そんな風には見えないんだけど」

「考えてないよ、田中さん」

「誰が田中よっ! か・る・い・ざ・わ。軽井沢恵よ。クラスメイトの名前くらい憶えておきなさいよ」

「ギャル子、周りに迷惑だぞ。音量を下げて」

「かっちーん! 喧嘩売ってるのね、そうなのね!」

「軽井沢さん、落ち着いて」

「そうだよっ。福田君もあまりからかわないで」

 

 平田と桔梗になだめられた惠は、ふんっと顔を逸らして食事を始める。

 

「それで福田君、君はこれからのことをどう考えているのか、教えてもらえないかな」

「特に何も」

「え?」

「今回のシステム予想にしたってそうでしょ? 基本的に俺から何かをする気はないよ。頼まれれば協力はするけど、積極的に何かをする気はない」

 

 そう言ってオムライスを口に運ぶ。その味に満足したのか、満足そうな笑みを浮かべる。

 

「福田君って凄い人なんだよね? 既に海外の大学を卒業してるって聞いたよ」

「そう凄い人なの、えっへん」

「うっざ」

「ギャル子、しばき倒すぞ♪」

「うっ」

 

 笑顔で脅しをかける福助に、少しばかりビビる恵。

 

「クラスメイト同士で争うのは良くないよ」

「平田に免じて、ここは引こう」

「ありがとうと言えばいいのかな? それで福田君は僕たちに協力してくれるってことで良いんだよね?」

「まあ、それなりにね。勉強なら大学に首席で合格するくらいの勢いで叩き込んであげるよ。たぶん、俺の方がこの学校の教師より優秀だし」

「す、すごい自信」

「チャバティの淡々とした授業より、面白おかしく日本の成り立ちから現在に至るまでの日本人の文化形成を伝える自信はある」

「ちょっと、聞いてみたいかも……私勉強得意じゃないし」

「仕方ない、おバカギャル子をインテリギャル子に導いてあげよう。専攻はコンピュータサイエンスだから、プログラミング言語の開発からやるのも面白い」

「それ、この学校のテストで出てくるの?」

「さあ? 日本を担う人材を育てる学校のカリキュラムまで把握はしてないかな。今までの授業からは全く想像できないけど、きっとウルトラCがあるはず」

 

 恵の認識としては、授業の進行は早いものの、想像していたエリート教育を受けている実感はなかった。

 それゆえに、福助でも想定できないウルトラCが一体何なのか、不安でたまらなかった。

 

「そのウルトラCも踏まえて、これから僕たちはどう立ち回っていくべきか、何か考えはあるかな?」

「ご自由に。協力はするけど、依存はさせないよ? 君たちは未来を担うエリート候補生だ。すべてに答えが与えられるなんて甘い考えは捨て去るべきだね」

 

 笑顔であるが、威圧感がある。平田も、桔梗も、恵も、その迫力に飲まれた。

 

「Dクラスの編成を考えれば、いろんな爆弾を抱えている子もいると思う。平田や櫛田だってそうかもしれない。ギャル子はまあ、納得というか、お察し」

「…………」

「…………」

「ぐぬぬぬ」

 

 おバカであると自覚している恵だけは、言い返せずに顔をしかめている。平田と桔梗は苦笑を浮かべるだけだった。

 

「あ、俺がDにいるのは中学時代に問題を起こしたからだよ。帰国子女ってことで、いじめられちゃったから、報復したんだ。海外生活でもよくあったし、なめられたら終わりだから。叩くなら根本まで。まあ、面白半分で他人の人生を破滅させる行為を平気でするくらいなんだから、反撃されて破滅してもしょうがないよね。目には目を、古代の知恵だよ。たしか屋上からの悲鳴が彼らとの最後の会話だった気がする。今頃どうしているだろう?」

「…………」

「…………」

「…………」

 

 穏やかな雰囲気で話しているのに、目だけはいっさい笑っていない福助に、三人は恐怖を感じるしかなかった。

 それでも数秒後には、暢気に残りの料理を口に頬張り、満足そうに笑う。

 

「Dクラスが他のクラスに対抗するにはどうするべきか、悩むと良いさ、若人よ」

「同い年のくせにおっさんくさい」

「ギャル子、お前のまつ毛全部抜くぞ」

「や、やめてよっ!」

 

 必死に目を隠す恵。

 そんなバカみたいなやり取りが面白かったのか、平田と桔梗はクスクスと笑うのだった。

 Dクラスがどうなるのか、それはまだ誰にも分からない。

 

 ◆

 

 放課後、堀北鈴音は福田福助を寮の自室に呼び出していた。

 

「今日は大人気」

「何を言っているのかしら? それと本当にペットボトルのお茶だけで良いの? 食事くらいは出すわよ」

「堀北の手料理を味わえるのは光栄だが、信用していない人が作ったものは食べないようにしている」

「……深くは聞かないでおくわ」

 

 資産が目の飛び出る額を持っている人間だ。色んなことをされていても仕方がない。鈴音はそう考えることにした。

 

「それで、相談とは?」

「綾小路君のことよ」

「恋愛相談か、良い人選だ」

 

 ふんすとやる気をだす福助に対して、鈴音は冷たく言い放つ。

 

「違うわ。彼の能力に関してよ」

 

 その言葉に、福助の興味が著しくなくなった。テーブルに顔を付けて、寝ようとするくらいには。

 

「もう、そのままで良いから聞いて頂戴。今日、茶柱先生に確認を取ったの。私がDクラスの理由を。貴方の予想通りだったわ」

「へぇー」

「その時、綾小路君も呼び出されていてね。おそらく意図的だと思うのだけど、彼の入学試験の点数を教えてくれたのよ」

「あのアラサーまじで教師やめろよ。生徒の個人情報どうなってんだよ」

 

 教師のとる行動ではないことに、福助が悪態をつく。

 福助の言葉に同意しながらも、本題はここからだと、鈴音は話をつづけた。

 

「彼、入試のテスト、すべて50点だったのよ」

「…………」

 

 福助が無言で起き上がる。

 

「驚くのも無理ないわよね。すべての配点を見極めて、わざわざ50点に合わせるなんて……普通じゃないわ」

「いや、俺が驚いたのは、すべての教科を50点しか取っていない生徒を入学させた学校の判断だ」

 

 事実はどうであれ、中学の内容を半分しか理解できていないと言っているようなものだ。

 エリート校の合格基準がガバガバなことに、落ちた生徒がいかにヤバかったのかを思い知らされることになった。

 同時に、日本の未来が果てしなく暗いのではないかと、不安も襲ってくる。

 

「……確かに、言われてみればそうね。でも、須藤君や山内くんのような例もあるわけだし」

「須藤は身体能力でごまかせる。山内? 誰だそれは? 身体能力に関しても隠しているあいつが、面接でもボッチ陰キャ少年のような回答をしていそうなあいつが、合格する理由がまるで分らん」

「一人のクラスメイトが亡き者になったわね。そして酷い言われようね、綾小路君」

 

 若干1名、本気でなぜ入学できたのか不明であるが、実力を隠している綾小路が入学できた理由もこれまた不明だ。

 

「一応、茶柱先生の話だと、難問が解けているのに、簡単な問題を落としているから、わざと点数調整をしていたと予想していたわ」

「それにしても50点はないだろ。いや、むしろわざとやってアピールしたのか? なるほど、策士策に溺れるとはこのこと」

「目立たないようにわざと点数を調整したのに、逆に目立ってしまう結果になったと。でも、Dクラスに配属されている以上、他の教師の目に留まらなかったんじゃないかしら」

「そこはマジで何を考えているか分からん。普通の人間であれば、出来たとしてもやらない。やるならもっと上手くやるが、そこら辺があいつの欠陥なのかも。それか、チャバティの個人的事情。余程好みにあったんだろう」

 

 一人の教師の名誉が大きく傷つけられているが、教師として仕事をほとんどしていないため、鈴音も特に否定をすることはしなかった。

 実際、綾小路が自分の面談の場にいたことを考えると、絶対に違うと否定はしきれない。

 

「極端に成績が悪そうな生徒がちらほら見かけるのは、実は隠れた実力者でしたパターンを信じて、チャバティが選出したのかも。眼力を疑うぞ」

「さすがに一教師にそれだけの権限はないはずよ。なぜ入学できたのか分からない生徒がいることには同意するけど」

「入る学校間違えたかも」

「わ、私はAクラスにあがるから……」

 

 鈴音の声が震える。自分も間違ったとは言いたくないようだ。

 

「Aクラスね。これは平田にも言ったんだが」

 

 鈴音の目をしっかりと見る福助。

 

「応援はするし、協力もする。だけど依存はさせない」

「……貴方だからこそ、言える発言ね。分かったわ」

「そもそもエリートの道を歩もうとしている人間が、何の成長もせずにいるのは間違いだ。苦悩し努力し、色々経験をしてこそ、人は成長できる」

「もっともね」

「君がAクラスを望むなら、成長するしかない。個人的な能力だけじゃなくてね。そういう意味では君は最高の環境にいる」

「どういうことかしら?」

「足手纏いを抱えるクラスを統制する。これはAやBクラスのような個々の能力が平均的に高いメンバーをまとめることより、はるかに難易度が高い。Dクラスが存在する理由は、ハンデを背負った状況でも戦える人間を育成することかもしれない」

 

 Dクラスに配属されたからこそ、得られる経験。

 入った当時は、絶望でしかなかったが、なるほど、そういう考え方もあるのかと鈴音は思った。

 

「優秀な人間は優秀な人間のいるところに集まる。でも、ここはそうじゃない。ここでしか得られない経験があるはずだ」

「そうね、そうかもしれない」

 

 福助の言葉に、自分の未熟さを痛感する。

 

「そもそも目的がAクラスになってるのはいただけないぞ」

「え?」

「お前はAの特権を利用しないと、希望した進路にすらすすめないポンコツか?」

「……」

「自分の能力に自信がある人間はそもそも進路など気にしない。いや、違うな、気にするに値しない。だって、自分は優秀だから」

「貴方を見てると、本当にそう思う」

「本来、堀北のあるべき姿は、『Aクラスを見下しながら、私程度に負けてAなの? 学校の評価基準に助けられてよかったわね』くらい言って煽り倒す実力を身に付けるべきなんだ」

「……ただの嫌な奴じゃない」

「お前、Dの奴からどう見られてるか分かってる?」

「……」

 

 似たようなことはやっている自覚はあるようだ。

 

「Aに固執するのは、好きにすればいいけど、名ばかりのAにならないでくれよ。何がお前をそうさせているのか、知らないが、たとえAになったとしても、今のままのお前じゃ、たぶん目的は果たせない」

「……そうね。私としたことが目的を見失っていたわ」

「まあ、だからといってDにいることを良しとしているわけじゃないよ?」

「分かっているわ。私がAクラスより優れていると証明できれば、結果は勝手についてくる」

「そういうこと」

 

 経験の違い。鈴音はそれを感じた。

 だからこそだろうか、少しばかり福助の会社のことについて聞いてみることにした。

 

「話は変わるけど、貴方の会社の人間はみんな貴方のような人かしら?」

「能力的なこと言えば、そうだね。より専門的部分は俺だって及ばない」

「……意外ね。何でもできるスーパーマンとか自称しそうなのに」

「高等学校のカリキュラムという決められた範囲、いうなれば答えが出る(・・・・・・)範囲の話ならそうだ。でも、社会にでれば答えがない問題に必ずぶち当たる。ふざけているわけじゃないけど、男女の関係だって答えは出ない。お金を出して築ける関係だって立派な関係だ、と言い張る奴もいるし、お金がなくても愛さえあればという奴もいる。当人たちの心持ち次第で答えなんか変わってくる。社会はそんな答えのない世界だ」

「……そうなのでしょうね」

 

 恋愛というわけではないが、鈴音の頭の中に1人の人物が思い当たった。認めて欲しい、褒めて欲しいと願ってやまない存在を。

 

「問題解決の能力が高いというのが社会で求められる。その一つの方法として人間は知識を蓄えるわけだ。でも、蓄えただけで使えなければ意味がない」

「そうね。それに使い方を誤れば、多くの人を苦しませる」

 

 福助は鈴音の言葉に真剣に頷いた。

 

「俺の会社の人間は能力が高い。アメリカ政府とも喧嘩できるくらいには、技術的急所を押さえている」

「……急所?」

「安易に公開すると、世界恐慌、第3次世界大戦が起こるかもしれない。言い過ぎかもしれないが、そういう研究で既に成果をあげているチームもある。非公開だけど」

「…………」

「逆に世界に貢献だってできる。まだ導入段階に至ってないが、人がいなくても検診したり、必要な薬を提供できる装置が開発されている。高齢化や過疎化で問題になっている国には必須のものだと自負している」

「凄いのね」

「偏差値が高いって必ずしも良いこととは限らないんだ。これは平均からどれだけ外れているかを表しているに過ぎない。お前は須藤を頭が悪いからとバカにしているかもしれないが、平均から外れているという意味では俺だってやばい人間だ。危険思想を持っていないだけで、世界の脅威に十分になれる」

「世界の脅威になろうと思うほど、貴方は愚かではないでしょう?」

「それが勘違いだ。俺たちの普通は他人にとって普通じゃない。頭の良い人間が頭の悪い人間が作り出した常識を理解できると思うか? 政治家とか、有名な企業の社長にもいるだろう。日本最高学府を出ているのに、こんなバカな発言してるの? ってことが」

「ええ」

「でも、彼らにとって自分が信じたことが正解なんだ。パフォーマンスの人が大半だけど、中には本気でそう思って発言している人もいる。理解できない奴がおかしいのだと」

「ありえないわ。そんなの普通じゃない」

「普通じゃないことを普通にするのが頭のおかしい人間だ。世間が認めるかどうかで、頭が良いと称賛されるし、おかしいと罵倒される」

「……」

「頭の良い人間は自分で常識を作り出す。かなり極端な話で悪いが、普通と違うとはそういうこと。頭が良いと倫理観を持った人間なのかは別の話」

「最後の言葉で、納得したわ。だって貴方……」

「おい、含みのある視線はやめろ」

 

 ふふ、と少し笑う鈴音。

 

「ま、俺の会社の天才たちは好き勝手やって、世界を面白くしてますよってお話でした。良い社会勉強になったね」

「なんだか、兄に諭されている気分だわ。ちょっとムカつく」

「お兄たまと呼んでくれて構わないよ」

 

 福助の言葉が、鈴音の逆鱗に触れた。

 

「死になさい」

 

 低く、深く、激しく、それでいて暗い。

 その時の死になさいは、いつものとはレベルが違っていた。

 福助は二度と、この手の冗談は言わないことを今日ここに誓ったのだった。




感想ありがとうございます。個別に返信はしてませんが、感想は読んでいますのでこれからもよろしくお願いします。あと、誤字脱字報告も感謝しています。
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