I am the perfect and ultimate XX   作:生物産業

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第7話 お気に召さない?

 中間テスト対策。普通にやっていては赤点を取りそうな人間が存在するDクラスにおいて、退学者を出さないために必要な措置だ。

 平田、鈴音が発起人になり、勉強会が開催されることとなった。

 自学で問題ない生徒に参加義務はないが、強制参加の3名は決定している。

 教室を上手く仕切り、平田組と鈴音組で分かれる。

 一番危険な3バカを鈴音が見ることになった。人付き合いが得意ではない鈴音のために、サポート役として桔梗と福助が付いている。

 しかしサポーター役の福助の方が、問題を起こしそうだ。「こいつら、人様の時間を奪っている自覚があるのか?」とこの環境を用意したメンバーに申し訳なさを一切感じていない3バカを見て、沸点が下がりだしている。

 3人のやる気のなさと、バカさ加減に福助の怒りメーターが常に最大値を更新し続けている。自分たちの立場が分かっているのかと。

 

「既に2週間を切っているわ。テストに出る範囲をまとめてきたから、それを基に進めていきましょう」

「32点未満が赤点つってたよな? 32点じゃアウトってことか?」

「うん、その理解力じゃアウトだから、アウトで良いよ」

 

 未満の意味が分からないのだから、アウトだろうと福助が指摘する。須藤のバカさ加減に呆れる周囲。

 

「福田、調子こいてんじゃねぇぞ!」

「頭が高いぞ、小僧。その下等な頭でも退学を回避させてやるという堀北神の慈悲を理解できないのか?」

「んだとっ!」

 

 どんっと立ち上がり、福助に詰め寄る須藤。胸倉をつかんだところで、

 

「ぶち殺すぞ♪」

 

 くるんっと身体を反転させられ、腕を極められる。

 

「いっ!」

「状況を理解できないなら、肩を外す」

「や、やめ――」

「やめなさいっ!」

 

 鈴音が止めに入る。

 

「なぜ?」

「やりすぎよ」

「普通にやってたら退学するんだ。腕一本ですむなら御の字でしょ?」

「だ、ダメだよっ! す、須藤君も苦手な勉強だから、イライラしちゃっただけだって!」

 

 殺伐とした状況に、桔梗も助け船をだす。

 

「苦手な勉強? 部活ならまじめにやるとでも言いたげだね」

 

 須藤から手を放しながら、福助は桔梗に尋ねた。

 

「須藤君は部活を頑張っているから、勉強がおろそかになっているだけで」

「そうだぜ、須藤はバスケに命をかけてるんだ。全国区のうちの高校でレギュラーが取れそうな位置にいるくらいにはすげぇんだ!」

「そうだ、そうだ!」

 

 池と山内が桔梗に加勢する。

 

「と言っているけど、須藤は本当に命を懸けてるの?」

「あ? そうだよ、悪いかよっ! おれはプロを目指すんだからよっ!」

 

 喧嘩では勝てないとわかったため、不貞腐れながらもそう答えた。

 

「ほ~なら勝負をしよう。なに、こちとら本場アメリカで揉まれて来たんだ。どんなに言っても全国レベルでしかない高校生の相手なら問題ないよ」

「んだとっ!!」

「負けたら、黙って勉強しろ。命を懸けているなら、それくらいできるよね?」

「たっりめぇーだっ! 目にもの見せてやるからなっ!」

 

 そう言って二人は体育館に向かう。数十分後、茫然自失という状態の須藤が、福助に引きずられるようにして戻ってきた。

 

「さ、勉強を始めよう。クソみたいなプライドはバキバキにへし折ってきた」

「…………」

「…………」

「…………」

 

 桔梗、池、山内は須藤のありさまを見て、絶対に福助に逆らわないようにしようと心に誓う。

 

「貴方、たまに行動が突飛過ぎないかしら?」

「須藤みたいな自分は強いって考えを行動の起点にしている奴は、考えを改めさせようと思った場合、それなりの対応になるさ。なにより人様の時間を奪うという行為の重さを理解させたい」

「それにしたって……」

 

 鈴音が眉を顰める。

 

「どうせ、放っておいてもお前と言い争いになって、殴り掛かってくるよ。だから、先に止めた」

「…………」

 

 鈴音は無言になる。ただ顔は福助から逸らして、自分の感情を見せないようにしていた。

 

「それにプロを目指すと公言しているんだ、経営のプロでもある俺がきっちり教え込んでやるのも優しさだよね。スポーツはお客さんがいないと成立しないってことから、スポンサーである企業様が金を出さなければ、組織として維持もできないこと。人気商売なのに、ファンサービスもできない暴力沙汰を平気で起こす選手を雇うバカな経営者はいないということ。その上で、お前は所詮全国区なだけで、将来が約束されたわけでも何でもないただの選手であること。仮にプロになれても頭が悪いとそれだけでカモられるということ。プロスポーツ選手の引退後の破滅の割合とか、懇切丁寧に説明してあげましたとも。その上で、海外で少し嗜んだ程度の俺に負ける実力しかないということを叩き込んでやりました」

「本当にへし折って来たのね。さすがというか、なんというか。反論の余地を残さないところが特に貴方らしい」

「あの喧嘩っぱやさは問題だからね。クラス対抗戦とかあった場合、簡単に狙われる。バスケの面を見てもそう。感情をコントロールできなければ、ファールアウトで退場する人生だよ」

「彼のためには……良かったのかしら?」

「どうだろうね? さ、これでやりやすくなったでしょ?」

「やりやすくはないのだけど」

 

 福助にビビりまくる、池たち。

 

「じゃあ、ちょっくら先遣隊の綾小路に合流するわ。櫛田、ちょっと付き合って」

「わ、私!?」

「一番面倒くさそうな須藤はへし折ったから、堀北で十分。池も山内も、堀北神の慈悲を拒否するなんて、愚行は冒さないさ」

 

 ちらりと福助が二人を見ると、顔を青くして首を大きく縦に振っている。

 

「私は堀北神の奴隷です」

「女神堀北には逆らいません」

「やめてちょうだい」

 

 へんな宗教がDクラスに出来上がる。

 すごく嫌そうな鈴音を放置し、困惑気味の桔梗を連れて、綾小路を探しにむかう。

 

「堀北さんたち、大丈夫かな?」

「ダメなら、ダメでまだ策はある。男は変態だからね。ちょっとえっちな授業風に動画を作れば、点数なんて簡単にあがるよ。あ、ちゃんとR指定は守るよ」

「も~う、女の子の前でえっちな発言は減点だよ、減点!」

「AIを駆使して、櫛田をエロ先生にしたてあげるつもりだったけど、お気に召さない?」

「召さないよっ! むしろどうしてお気に召すと思ったの!?」

「折角我が社の特許技術が使えるのに」

「我が社って……?」

「俺、会社の社長」

「え?」

 

 携帯を操作し、ネットでの検索結果を見せる。

 

「う、うそ……」

「あんまり広めないでね。恥ずかしいから」

「ドヤ顔してるように見えるけど?」

「よし、櫛田の魅力で男子たちはイチコロだ! 声も録音データから自動生成できるようにするから、男子の健全な毎日が約束されるね。ああ、簡単に社会貢献しちゃえる自分の技術が恐ろしい」

「やめてよっ! 社会貢献が男子生徒だけで限定すぎるしっ!」

 

 いやいやと福助の腕を大きく揺さぶる。

 

「え? 櫛田ってビッチでしょ? 男をとっかえひっかえして、楽しむ魔性の女じゃないの?」

「そんな事実はないよっ!? 名誉棄損もいいとこだよ!」

 

 絶対にちがうと涙目で抗議する桔梗。

 

「え、それじゃなぜDクラスに? 頭はそこまで悪くないよね? 運動音痴にも見えないし、堀北と違って協調性は別格。中学時代やりまくりで、男たちに争いを起こした上に学級崩壊させたという櫛田ビッチ説が崩れるんだけど?」

「崩してよっ! そんな酷い説はないから!」

「なん……だと!?」

「どれだけ驚いているの!? 失礼すぎるよ!」

 

 ポコポコと顔を真っ赤に染めながら、福助を殴る桔梗。手加減なしなのは、彼女の名誉にかかわるからだろう。

 

「……ごめん」

「不服っ!? 私がビッチじゃないのがそんなに不服なのっ!?」

「こらこら、人が少ないからって女の子がビッチだ、ヤリ〇ンだなんてはしたない」

「そこまでは言ってないよっ!」

 

 酷い名誉棄損に叫ばずにいられないのは仕方がない。

 

「何してるんだ? 櫛田が叫んでいたのは聞こえたが」

 

 二人が騒いでいるうちに近づいて来ていた綾小路が声をかける。

 

「わ、私、よごされちゃったよ~」

 

 半泣きの桔梗が、綾小路に助けを求める。

 

「……んーなんとなく状況は察した。ただ襲ってはいないんだろ?」

「そうだね。彼女の尊厳という意味では冒したかもしれない」

「櫛田、よく頑張った」

 

 何もしてないという返事がくるとは思っていなかった綾小路は、櫛田のフォローに回る。

 

「福田君は、女の子の敵だよ~」

「あ~そう言えば、一之瀬もそんなことを言っていた気がするな」

「帆波ちゃんにまで迷惑をかけたの!?」

「あれ、櫛田は帆波たそと知り合い? あ、そう言えば皆と仲良くしたいとか言っていたね。帆波たそなら当然か。俺は帆波たそとは中学が同じで友達なんだ」

「嘘だっ!」

 

 迫真の否定。

 

「櫛田、一之瀬本人が友達であること()認めていた。クズだとも言っていたが」

「う、うそ……」

「酷い言われようだ。帆波たそに文句を論文形式で送ってやろう」

「酷い嫌がらせだ。やめて差し上げろ」

 

 綾小路が福助の愚行を止めに入る。

 

「それでどうだった?」

「ああ、試験範囲は茶柱先生が言っていたのと違っていたな」

「え?」

「チャバティはまだアラサーだろ? うっかりかボケが始まったか判断が難しいな」

「お前、茶柱先生にぶん殴られるぞ」

「受けて立つ。教師としての職務をまっとう出来ていないことを逆にネチネチと説教してくれるわ」

「お前は誰と戦ってるんだよ」

「ねぇ、ちょっと待って! 試験範囲が違うってどういうこと?」

 

 二人が自然に会話をすすめるので流されているが、桔梗としては聞き流せない言葉があった。

 

「そのままの意味だ。他のクラスに確認を取ったが、どうやら試験範囲が違うらしい」

「帆波たそだね」

「分かるなら聞くな」

「チャバティの嫌がらせか?」

「どうだろうな? 自分の生徒を貶めるような先生ではないと思うが」

「ああ、禁断の恋」

「やめろ、そんな事実はない。呼び出しをくらっただけだ。少し不真面目に見えるから、真面目にやれってさ」

「はい、嘘。お前の不真面目さを指摘するならもっとするべき人物がいるわ。チャバティめ、未成年は犯罪だぞ」

 

 どうやら、綾小路と茶柱の関係は福助の中でふしだらとして決定したようだ。

 綾小路が否定を続けるが、聞く耳を持ってくれない。

 

「ねぇ、そんなことより」

「そんなことじゃない。今、俺の名誉が著しく傷つけられている」

「皆に教えた方が良いよ!」

「俺の声は聞こえないのか?」

 

 無視されてショックを受ける綾小路。

 しかし、それを慰める人物はここにはいない。

 

「いや、チャバティがボケてなくて、わざと試験範囲を間違えて伝えたのだとしたら、そこには意味がある。ははーん、ツンデレだな、あのアラサー」

 

 福助が少しばかり考え、そして答えに至る。一人の妙齢の女性の名誉が著しく侵害されたが。

 

「ねらい目は陰気そうにしている先輩だ。そして男。櫛田ならちょちょいのちょい」

「え、なんで私?」

「櫛田の能力がいかんなく発揮される時。念のために連れてきておいて正解だった」

「だから、一体何の話を……」

「なるほど、完璧な人選だな」

 

 福助が何をしたいのか察した綾小路が、これ以上ない人物を連れてきていることに賞賛の声を送る。

 

「櫛田、お前は最高だ」

「お前しか頼れる奴はない」

 

 二人に煽てられた桔梗は、訳も分からないまま行動させられるはめになった。

 ただその表情は満更でもないというものだった。

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