I am the perfect and ultimate XX 作:生物産業
翌日、走り回った体力を回復させ仲良く二人での登校。
お馴染みのようなバカみたいな騒がしさがあるのかと思いながら教室の扉をくぐる。
しかし、教室の様子はいつもと違っていた。
「……え、空気悪くない? 綾小路、何かしたか?」
「俺は何もしてない。可能性としてはお前の方があるだろ」
「心当たりが多すぎて、分からない」
「犯人はお前だ」
そう結論づけて、二人は席に向かう。クラスメイトの視線がそのまま二人に向かったので、原因はまぎれもなく彼らにあった。
「おは、堀北。この状況を説明してくれると嬉しい」
「……はあ~、貴方、昨日何をしたのか忘れたの?」
「綾小路と二人で堀北家と面談」
「……須藤君のことよ」
なるほどと、福助が周囲を見回すとビクつく数名の生徒。
綾小路はその場にいなかったため、何のことかわからず首を傾げるばかりだ。
「やばい奴だと思われているわけね」
「そうね」
「今までの須藤の態度を許容してきたクラスからすれば全く理解できない反応だけど」
「須藤君の場合、見た目と言動が一致しているから……」
「なんと、世紀末のモヒカンにすれば暴れても許されるという風潮。日本のモラルはどこにいった?」
「そう言うことじゃないと思う」
綾小路のツッコミを受けつつ、鈴音にどうにかしなさいと視線を送られる。
本気でよく分かっていない福助であるが、さすがにクラスの雰囲気が暗いままのは嫌なため、前に出て話すことにした。
「皆さんの熱烈な視線をあびて、前に出ることになった福田です」
「……」
「どうもクラスの元気がないのは、私が原因であるとのことですが、なぜでしょうか?」
その質問に誰も答える者はいない。
「もしかして、私が意味もなく暴力に訴えると? しかし、それに不満を覚えるなら、今までの須藤氏の行動を容認していたのはおかしいと思われるのですが、いかがでしょう? 彼は物に当たり、気に入らないことがあれば声を荒げる。一方で私ですが、昨日、確かに力を振るいましたが、あれは須藤氏が攻撃してきたからであり、正当防衛です。私に非があるというなら、どの部分にあったのか、意見を言っていただきたい」
どこぞの記者会見のような対応に、周囲が困惑する。
「もしや見た目にワイルドさが足らないことがご不満で? 明日からドレッドヘアにでもすれば満足でしょうか? クラスの総意というのなら、やぶさかではありませんが」
「ふ、福田君」
「平田氏、発言をどうぞ」
「なぜ記者会見風なのかな?」
「え、そこ? そこを気にするの? Why Japanese people?」
まだ日本の文化に慣れていないのかと、嘆く福助。
しかし、そのふざけたやり取りが、周囲から若干の恐怖を取り除く。
「ご、ごめん、やっぱりそこはいいや。ただ、昨日の福田君は、普段と違ったから、みんな驚いちゃったんだと思うんだ。その部分を説明してくれると……」
「普段から偉そうな態度をとってると思うけど?」
「確かに」
「よし、田中、放課後サッカーな。ボールはお前」
「だから、田中じゃないってば! 軽井沢よ、軽井沢!」
「と、このような発言は普段からしていますが?」
「あ、うん、そうだね」
平田が納得する。けして、福助が心優しい人間ではないことは周囲も分かっている。
「あ、もしかしてヤンキーをモブキャラが倒したことに驚いている? あーはいはい、そのパターン。B2パターンね」
「A1はなんだろうか?」
「黙れ、綾小路。えー、水泳の授業でも見せたと思いますが、私は身体をそれなりに鍛えております。夜な夜な軽井沢のまつげ全部抜いたろと恨みノートを書く様な小さな人間ではありません」
「あんたそんなことしてるの!? マジでありえないんだけど!?」
「してねぇっつってんだろ、眉毛も刈り取るぞ!」
「や、やめてよ~!」
必死に眉毛を隠す恵。さすがにバカすぎたのか、周囲がクスクス笑っている。
「ということで、俺は悪い人間では――あるので、理不尽な暴力を振るう人間では――あるが、むやみやたらではない。善人ではないので、暴力で対応するならそれ以上の暴力で対抗する所存。挑んでくるなら相応の覚悟を持ってね」
「悪い人間であることは認めてしまうんだね」
平田の言葉にほぼクラス全員が頷いた。
「私は善人です、と言って信じてもらえる人間を俺は一人しか知らない。興味がある人は、Bクラスの大天使帆波エルまでどうぞ」
ご清聴ありがとうございましたと、そう言って自分の席に戻る福助。
この日、Dクラスは福田福助という人間の一端を理解することになった。
そして、帆波を見学しに、Dクラスの人間が押し寄せたのは彼女にとっていい迷惑である。
◆
所信表明らしき演説を終えた結果、クラスの雰囲気は元に戻った。遅刻気味に遅れてきた3バカは福助の演説を見ていないが、単純に物理的恐怖を見ているので、非常におとなしい。
放課後に行われた勉強会でも素直に言うことに従っている。
「日本人は単語帳の訳に依存しすぎ。I am a studentを吾輩は学生でおじゃるって訳すくらいのセンスを持って欲しい。あ、実際には、語尾にindeedを付けた方が古風さというかユーモアが伝わるよ」
「学校のテストで絶対にでないだろ、その知識」
「福田先生~! 外国で美人にモテたいなら、何て言えばいいですかー!」
「I'm pretty much a lost cause, so feel free to use me as your punching bag. I seem to have a knack for being on the receiving end of a good roast! とでも冗談めかして言っておけばいいよ」
「待って、待て、メモるから」
私はほとんど救いようのない存在なので、どうぞ私をあなたのサンドバッグにしてください。からかいを受けるのは得意なんで、という英語を必死にノートに書く山内。彼の輝かしい未来に幸あれと、意味の分かった生徒は黙とうをささげている。
福助のイタズラもありながらも、3バカは勉強に励んでいる。須藤に関しては、逆らう気が失せたのか素直に鈴音や他の生徒の教えを受けている。
福助との賭け勝負の結果というのもあるだろう。
「外村と佐藤も英語はダメか?」
3バカ以外に学力が低いメンバーも福助の勉強会に参加しているため、二人の悲しい英語力が福助の目に入った。
「日本人万歳でござる」
「外国に興味ないんだよね」
外村秀雄、佐藤麻耶。外村は小太りでオタク風なしゃべり方が特徴的で、逆に佐藤は外村とは正反対の正統派ギャルだ。よく恵と一緒にいることが多い。
「二人ともゲームは好きか?」
「拙者の心の栄養の一つでござる」
「私はそこまで好きじゃない。なんかボタンがたくさんで大変そう」
「つまりシナリオ形式なら問題ないわけか……これをインストールしてみろ」
学校支給のスマホを取り出し、QRコードを見せる。
よく分からない二人だったが、言われたとおりに自分のスマホでQRコードを読み取り、アプリをインストールした。
「好きなアイドルでもタレントでも良い。声と画像があればアプリ内にアップロードしてくれ。動画の切り抜きでも構わない。イヤホンマイクがこの場では必要だからこれを付けて」
そう言われて、外村は人気女性アイドルを、佐藤は若手俳優の画像を用意し、渡されたイヤホンマイクを装着する。
「これは俺が過去に作ったものだ。画像から、AIを使って対話が可能な動画を生成することができる。実は学生のテスターを探していたんだ」
「なんでござるか、その技術!?」
「あ、本当だ。でも、ちょっと加工されてる?」
「商売用に考えていたんだけど、著作権や人権、その他諸々の事情があって、ボツにしたんだ。それをこの学校に来てから、画像に似た別人を作り上げるようにデチューンして作り直した」
「……いや、そもそもの技術がおかしいでござるよ!?」
「VR対応もできるが、それをするとやばさのレベルが一段上がる」
「いやいやいや、それ以前の問題でござる!」
「佐藤を見ろ」
外村の叫びを無視しながら、すでにスマホをガン見している佐藤を見るように促す。ぼそぼそと小さい声で話しているのが聞こえてくる。
少し様子を伺っていると、頬が微妙に赤くなっているのが分かる。
「佐藤氏?」
「うるさい、だまれ」
佐藤に睨まれ、外村は押し黙った。
「コンセプトは理想の相手とにゃんにゃんしようだ」
「頭わる! 使ってる技術とコンセプトの乖離が酷すぎるでござる!!」
「開発は順調に進んだが、問題が起こった」
「拙者の言葉が届いていない!?」
ツッコミキャラの素質を開花させつつある外村に、福助は話をつづけた。
「内容は可変なんだが、恋人みたいなキュンキュンするやり取りを俺がしたかった結果、それに即したシナリオを組み込んだら」
「あ、そこは福田氏の煩悩なのですな」
「廃人が続出した。こっちの世界に戻れなくなってしまったんだ」
「でしょうねっ!!」
理想の相手が、自分に話しかけ、相手をしてくれる。どんなギャルゲーをも超える完成型ギャルゲーだ。
「このままリリースしてしまえば、人口減少に追い打ちをかける結果になるため、泣く泣くデリートしたわけだが、ふと勉強に使えば良いんじゃないと思って再作成してみた」
「考えが浅いのに、技術が凄い!」
「ござるが抜けてるぞ」
「そんなこともうどうでも良いです、はい」
作っていたキャラを忘れるほどの衝撃だったようだ。
「今回の定期テストの範囲に合わせて、俺が独自に作成したシナリオだ。まだ英語だけだがな」
「それはつまり?」
「外村視点で言えば、大好きなアイドルに英語を教えてもらえるってことだ。好きな人から教われば、大抵のことは努力できる。そして努力できるようにAIは作られている。ムフフの匂わせなど――いや、健全な学生にこれ以上はいけない」
「言ってる! 99%言ってる!」
「実は櫛田を使ったバージョンを本人に打診したんだが、断られてしまってな。まあ、それだと男専用になってしまうからダメだな」
「そこじゃない、そこじゃないです――あ、でも櫛田バージョン欲しいです」
「本人と交渉しないとダメだな。一応、この学校の生徒は対応不可にしている。だから櫛田の写真をアップロードしても無駄だぞ。生徒名簿はすでに取得済みだ。方法は企業秘密」
「技術は凄いのに、やってることがしょうもない」
「テスターは外村以外でいいな。アプリは削除するか」
「殿、拙者は忠実なるしもべでござる」
「うむ、現実世界に帰ってこれるよう、願っている」
ははと、外村も二次元の世界に旅立った。
その後、二人の英語力がとんでもなく向上したのは言うまでもない。そして、廃人になる前に二人のスマホにハッキングをかけて、アプリを消去することになるのは、もう少し後のこと。
よう実2次創作で、外村くんが輝いた作品トップ5に入ると自負しています。
次回は少し時間がかかりそうです。