「伝説って?」「ああ!」   作:絞りカス

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まだ無職のまま就活が始まりそうです。


自分を不審者情報として流される事はないほうがいい。

 この街には、ありとあらゆる曲に関する技術が集結している。

 

 それもこれも、町全体に大きな柱として、“RAD WEEKEND”というイベントが未だに残っているからなのだろう。

 競争における勝者は、称えられる権利がある。

 だから、“RAD WEEKEND”を決行した者には、そうして柱として、先駆者としての椅子に座っている権利がある。

 だが、競争とは、生きている限り何処までも続いていく。それは椅子に座った後も、その椅子を奪うために次の挑戦者が、何処までも。何処までも。

 その競争の終わり方は、たった一つだけだ。

 

 負けて果てること。それに尽きる。

 

 ☆

 

 某日、昼の散歩道。

 僕はまたいつも通りに散歩道を歩き、ぶらりぶらりと足を進めていく。当然のことながら、僕の歩く道は特に決まっているわけではない。その日の気分で、街のどこかにふらりと現れては、またどこかにゆらゆらと飛んでいくのが自分のこの街での習性ともいうべき振る舞いだ。

 聞こえはあんまりにも悪いけど、別に僕自身は悪いとも思ってないし、それしかやることがないので帰る気もない。

 変えないからこそ、こうして知り合いが増えていくからってのもある。

 そうして、ふらりふらりとほんの少しだけ入り組んだ道を歩いていると、見慣れた子がよろよろと入っていくのが見えた。その子の入った道は、少々厄介な道ではある。

 

「そっちはダーメ」

「あっ……都楽君」

 流石に見て見ぬふりをするほど非情な人間ではいたくはないので声をかけてみたが、唐突な声に驚いたのだろうか少し肩を震わせて、小豆沢こはねはこちらに振り返った。

「そっち、行き止まりだよ」

「え?ほ、本当だ……ありがとう。教えてくれて」

「いいの。いいの」

 僕は手のひらをひらひらとしてお礼をもらう。まぁ、驚かれるよねそりゃ。事実、この先は行き止まりの袋小路だ。少なくとも、彼女がそこに用があったとも思えないので声をかけて良かった。

 

「で、どこに行きたかったのよこはねちゃんはさ」

「えっとね、ここなんだけど……」

 そういってこはねちゃんは僕にスマホを見せて、行き先を教えてくれる。どうやら行き先はここから少し離れている。どこかで曲がる場所を間違えて変な方向へぐるぐると曲折してしまったようだった。

 こういうのってGPSとかついた地図アプリで進んでいくものじゃないのかな。まぁ他人のそれこれをいえる立場にないんだけどさ。

 

「もしかして急ぎ?」

「ううん、でもそこで杏ちゃんと待ち合わせしているから……」

「出来るだけなるはやってことね、道案内じゃないけど、嫌じゃなければ、そこまで連れて行ってあげる」

 すっごいナンパの構文みたいになってしまった。普段と等しく花柄着物の変質者の恰好してるだよ?ダメだって。キツイって。どうしようかなこれ杏ちゃんに殴られてもしょうがないって。

 

「お願いしてもいいかな……ごめんね」

「いいの。いいの。こういう時位しか街をぶらぶらふらつく人間の使い道なんてないんだからさ」

 そうして、僕らはこの場所を早々に後にしたのだった。

 本当に、迷いやすい道なのにその道の終着点がドン詰まりなの割と欠陥だと思うんだけど、そういうものなのかな。

 まぁ、だたの根無し草の知ったこっちゃないんだけど。

 

 

 

⭐︎

 

 

 薄暗かった人通りの少ない道から抜け出し、こはねちゃんの指した目的地に向けて足を進める。

 ……話が何もなくて少し気まずい。

「都楽君って、いつからこの街にいるの?」

「いつからっていうか……一応生まれがここだよ」

「そ。伝説が伝説として完成してしまうよりも前、この街がただの街であったときからずっと。多分、杏ちゃんとかと一緒だよ」

 

 こはねちゃんが僕の経歴についてが気になったのかそんなことを聞いてきた。とはいえ、道楽者として街で記録を続けるようになったのは、そんなにも前の話じゃない。4年とか3年とか前の話だ。というか、そういう風に言うしかないんだよねコレ。

 

「自分のことをすごく面倒見てくれていたおじさんたちがいてね、毎日のようにそこに行っては色々と遊んでもらったりしてたよ」

 話してみると、意外とその時の景色が明瞭に再生されていく。時たま、夢に出てくるほどには印象的な時間だったよ。幼少期の記憶だったからというバイアスもかかってるんだろうけれど。

 

「歌とかも、教わったしね」

「えっ?でも歌わないって……」

 

 もしかして誰も僕のスタンスをこはねちゃんに共有してないん?いや、自分たちには関係ないことだし、知らなくてもさほど関係のないことだと思うけれど。

 

「歌いはしないよ。僕が教わったのはここでやってるようなバチバチの、人の胸を打つような歌じゃないんだよ」

 

 こうなんというか、時折鼻歌で口ずさむとか、一緒に温泉に入りに来たオッちゃんと気分よく歌うみたいな、宴会の時に高揚した気分で歌うみたいな。

 うん。大体おっさんのするようなシチュエーションじゃん。え?生涯僕おっさん相手にしかできない?別に構わないけどさ。

 何ていうのかな。結局のところ、流行しているものと、自分の教わったものが合っていないというか。流行もしていないもので殴りこんだところですべてを白けさせて台無しにするのが関の山でしょ。

 

「そんなだから、もしもステージに立つような事があっても白けることしか出来ないから、僕は観測者であることを選んだ。ただ、それだけのこと」

 そう結論付けて、僕はこはねちゃんに理由の説明を終える。

 選んだ道が正しいのかと言われれば、きっと正しくない。楽しいのかと言われれば、今は楽しい。後、道の分岐点で選ばなかった方を想像するのは、隣の芝を見るようなものだし。あんまりしないほうがいいよね。

 

「だから、路傍のシャボン玉の行き先なんかを気にするよりも、自分の進む道を見据える方がよっぽど大事だよ」

「シャボン玉……?」

「そ。こんな風に何をするわけでもなくただ浮ついているだけの人間はシャボン玉か枯葉と同義だよ。実際、年配の方々にはそう言う風に揶揄されたし」

「……おじいさんみたいってこと?」

「おかしいね。僕一応君らと同い年なんだけど」

 アンタを見てると、穏やかな昔を思い出すなんて言われた。僕は歩いているだけで縁側で茶を飲んでいるような雰囲気を醸し出すらしい。老舗のコクの出る茶葉か何かなの僕?

 

「んで、用事があるって言ってたけど、なんなんすかね.」

「杏ちゃんとお買い物をする予定で、行こうとした場所が集合場所だったんだけど……」

「あーオフの日ってやつ」

 

 仲のいいというか、親睦を深めるじゃないけど、結束の向上は日々の生活から成るとは言うからね。なんの不思議もなかったね。仲睦まじき事はいいこと。民明書房の古事記にもそう書いてた。嘘。適当こいた。

 

 ……ん?女の子?相棒とショッピング??

 待って?これ杏ちゃんの所に僕が行ったら殺されない?

 だってさ、明らかな間男やん今の僕。NTRに近い何かになるの???

 

 Q.あなたの同姓の大切な相棒が見知った異性のバカヤロウと一緒に歩いて待ち合わせに来ました。どうしますか?

 A.主文後回し。guilty.一瞬千撃。瞬獄殺。

 

 ダメですね。どうあがいてもワンボタンCAかまされて30HITで体力全削りK.Oです。対戦ありがとうございました。

 瞬獄殺人狼の人狼は占い師のCOで追放されたはずなんですよ?なんで打てるんですか?死じゃん。僕。

「都楽君。凄い青ざめてるけど、大丈夫?」

「うーん大丈夫では無いけど体調不良とかそう言うのじゃないから大丈夫」

 

 純真無垢な瞳でこちらを心配してくれているこはねちゃん。優しいね。でもね、僕の命の灯火が消えそうなの半分の要因は君なの。でもこれ悪意なんて一切ないから僕の自業自得なの。

 震える手のまま薬液にパイプを突っ込む。自らの命の終わりが確定したら青ざめもするって。でも言えるわけないって。厳しいって。

「まぁ日々の息抜きに虫がいたら、叩くよなとしか」

「なんのこと?」

「こっちの話」

 震えの止まらない身体のまま、薬液漬けのパイプを口に咥える。確実な社会的死のことを頭から消すように、落ち着いて呼吸をし、吐く呼吸でシャボン玉を吹く。

 

「……都楽君っていつもシャボン玉を吹いているけれど、どうして?」

「自分のキャラを確立させるためって言ったら?……いや、流石に冗談だよ」

 おどけてみてはみたけれど、これ以上はただ悪戯に困らせるだけと思い、即座に発言を撤回する。実際齢16近くの人間が未だにシャボン玉作って歩いてるのは充分に変だよ。

 

「自分の楽しかったとか、大事だった時のうれしかった時の感覚をずっと引きずってるんだと思うよ」

 

「例えばだけど、君たちが持ちうる最高のパフォーマンスを絶対に失敗したくない、成功させたいタイミングで出せたとする」

「そうして、人から何かしらを認められるなり、褒められたりしたとき、それは自分の中で無意識にその体験を最高の瞬間として切り抜かれて保存される」

 

 それこそシャボン玉で遊んではおじさん達に見せて、大きなシャボン玉を作れれば、褒めてもらったり笑ってくれたり、そんな記憶が初めにあったと思う。

 そうして、時も経ちある程度記憶が薄れていくほどの経験をしても、これだけは残った。

「長々言ったけど、多分クセになってるからかな」

 結局のところ、クセなんてのは自分の中から漏れ出た衝動の欠片にすぎない。

 だから、あんまりこれをしている理由って何?って聞かれてもそんなことやってたん?直すわガハハ!で終わっちゃうし。

 

「ぼーっとしている時間があるよりも、何かしている方がいいって心のどっかで思ってるから、自然になんか手が伸びちゃうというか、そんなものだよ」

 

「ちょっと話を変えるけど、いいかい?」

僕は、自分の癖の話を切り上げる。こはねちゃんには聞いておきたいことがあった。こう言う時じゃないと、一対一になって聞くことなんてないからね。

「今はさ、色々と吸収しながら伝説を超えるってとてもとても大きな目標に向かっているわけじゃない?」

「その過程はさ、楽しい?」

 僕は、道楽者である。

 人の旅路を記録する記録機。人の旅路を観測する望遠鏡。

 この街においていま最も急激に力をつけている彼女の事を、彼女の気持ちを記録しなくてはならなかった。

電波を線で記録するように。振動を記録する昔ながらの機械のように。

 

「……まだ、色々と学んだり、分からないことはあるけれど」

「私ね、みんなと歌えてて、楽しいよ」

 

 この子は、今街にいる人間の誰よりも大変な道を歩んでいる。

 ほぼほぼ無垢な状態でこの街に訪れ、この街で音楽と運命みたいな出会い、杏ちゃんと出会い、ノメちゃん、青ちゃんと出会い、苦難の道を進むことを決めながらも、驚異的な力で一歩一歩を進んでいる。

 だからこそ、ぼくはその歩みがどうなのかを見届ける身勝手な義務がある。

 意図的ではないにしろ、僕がその出会いに手を出しているからだと言われれば、そうなのだが、そんな彼女から今自分は楽しいという言葉が聞けた。

 それだけで、満足だった。

「そいつは、よかったよ」

 そうこうしている内に、目的地が目と鼻の先にあるところまで辿り着いた。元々そんなに遠いわけじゃなかったし、途中まではただ戻るだけだからね、ちょっとの時間潰しでつく距離ではあったからね。

 

「一応、目的地だけど近くに杏ちゃんはいるみたいな連絡は来てたりする?」

「うん。このあたりにいるよってちょっと前に来てる」

「じゃ、ここで案内役はおしまいかな」

 そういって、踵を返して帰ろうとした時に、

「こはねー!」

「あっ死ぬ」

 一番会いたくない人間に鉢あった。

「……なんで都楽がいるの?」

「私は頼まれた仕事を完遂しました仕事以上の事は何もしていませんそれではさようなら」

 

 止めてください。私だって命は惜しいんです()こはねちゃんお願いだから困った笑いしてないで説明して?なんで何も言わないんですかもしかしてそういう趣味なんですか???

 

 [唐桜 都楽の社会的地位は破壊された!]

 この後、事情を説明し、決して何かやましい事をしたわけじゃない事を理解してもらった上で、荷物持ちをさせられる前にほかの埋め合わせをする約束する事で杏ちゃんには納得をしてもらい、その間こはねちゃんは終始僕を見ながらほんの少し笑っていた。

 あの、ほんとに、純粋な子からの哀れみの目が一番心にクるんです。

 

 ☆

 

 都楽君は、不思議な人だ。

 私が、この街に偶然迷い込んでしまったあの日。右も左もわからずに入ってきた所をほんの少し案内してくれて、私のあの瞬間を引き合わせてくれた人でもある。

『危ないよ』

 スマホの充電が切れて、変なところに迷い込んでいた私の前に、都楽君は現れた。今と同じように大きな着物を羽織って、白い半紙のような白に黒が濡れるように入ったまばらで、綺麗な髪を揺らして私の前に現れた。

 どう答えようか、どうしようかを考えていると、

『……ごめん』

 しゅんとして、

『でも、日が落ちてきた。帰りなら、案内する』

「あ、えっと……」

 知らない通りで、誰かに聞くことも出来なかった私にとっては、ありがたいことではあったから、その言葉にのろうとした時、

 ──―♪.──―♪.

 歌が、聞こえた。それは私のことを変えてくれるきっかけの歌。

「…………?これ……歌?」

 気になって、その歌を方向を向いていると

『こっち?』

 その時の都楽君も気づいて歌の方向を向いた。

『聞く?』

 都楽君は音楽を気になっている私の意思を尊重しようとしてくれていた。

「……は、い!行ってみたい……です!」

『じゃあこっち。離れないで、危ないから』

 

 私が勇気を出してそう答えると、そういって危ない雰囲気の人たちから守るように着物で隠しながら歌の方向に歩いて行った。

 

『僕は道楽者』

「え?」

『きっと先で、経緯を聞かれる。その時に僕の名前、言うと、大丈夫』

 

『ここ』

『行っておいで』

 そう私を送り出すような言葉をいって、都楽君はふらりと横道に逸れてシャボン玉のように消えて行ってしまった。

 

 私は、その行先で私を変えるものに出会った。

 そこからは、きっと知っている通り。

 あの時のことにお礼を言うと、都楽君本人は、アレは君がそういう運命だったんだから僕は関係ないって自分の功績のようには言わないけど。

 でも、そうしてあの日一歩を踏み出せた事で、私は杏ちゃん達と出会って、色んなことに出会って、 そうやって決めたことが大変な道なんてわかっているけど、あの時見つけた私の目標だからって。皆で伝説を超えようって決めて。

 

 

 

 でも、そこには都楽君は来ない。

 というよりも、都楽君本人が自分の中で何か線を引いているように、私達の歌に関しての部分で踏み入ってくる事はない。

 

 でも、時折私は都楽君を見ると、思うことがあったりする。

 

 ほんの一瞬だったり、日常の中でステージに立つ人のことを見ている時、

 都楽君は、どこか寂しそうに笑う時がある。

 だから、いつかの時に聞いてみたことがある。

 

 どうして、貴方はステージを寂しそうに見るの?って。

 そしたら、都楽君は、

『僕の心があの日以来動いてくれないから』

 そんな曖昧な言葉を私にくれた。

 

 あの日ってなんなんだろう。

 杏ちゃんや彰人君から、都楽君はある人達の背中をずっと追っていたって聞いた。

【宝船】。

 そんな名前を聞いたけれど、今の街では私は聞いたことが無かった。

 だから、もしかしたら、今の街にはいないのかな、なんて考えたりもしたけど、都楽君に聞いてもきっと答えてくれないと思う。

 

 

 だから、私がいつかその事を聞けるくらいに成長出来たら。

 都楽君の心を私たちの歌で動かせることができたなら。

 その時に聞いてみよう。

 きっとその時なら、道楽者として、ほんの少しだけ軽口を混ぜながら話してくれる。

 

 だから、がんばろう。

 

 もっともっと、私達の歌が街の人に聞いてもらえるように。

 

「しっかしまさかあの日何の気無しに案内した女の子がこんなに成長するなんて思ってなかったよ」

「あの日、どうして声をかけてくれたの?」

「そらだってあなたねぇ、あの時おとなしそうな子を日暮れのあんなところに置いて見て見ぬ振りは、ダメかなって思っただけだったんだがね」

「でも、どうしてあの日あんなに言葉が少なかったの?」

「初対面の人間にあの格好でヘラヘラ話しかけに行ったら通報ものだと思って、怖がらせないように慎重になったから」

 

 ……意外と、そういうところを気にしている人なんだ。




唐桜 都楽(かさくら とらく)
シャボン玉。
小豆沢 こはね(あずさわ こはね)
原石。

ファイターリュウ様 グピ様 きたのさん様評価していただきありがとうございます。
私はスト6はDJを使います。楽しいよねあの人。
ここからメインストの話を軽く書くことになります。
評価お気に入り感想の程よろしくお願いします。
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