「伝説って?」「ああ!」   作:絞りカス

5 / 17
アルバイトの初任給が出ました
一週間後の発売のゲームにすべて消えます。


ユニストらしい
実はFateってそこらへんに転がってるらしい


 常々、思ってはいる。

 競い合い、高めあう中で生まれる熱を取りこぼさないようにかき集める自分。その競い合いを傍観する自分。

 こぼれ落としたくないと思いながら、こぼれ落としている原因を止めようとせずに、眺めている。

 自己矛盾。致命的なパラドクス。証明不能。

 街の在り方からも人からもズレていることはもはや今更のことである。

 だからこそかもしれない。

 矛盾すら吹き飛ばすような、新たな発見というものには、一時的であれど目を引かれるのだ。

 そんな常識すらを消し飛ばすような、明るく先のある光景。

 これは記録者である僕がほんの少し、注意して記録しようと思った、そんな気変わりをした日のことだ。

 

観測記録報告書 No.13

報告者 唐桜 都楽

 

 

 

 

 それはいつも通りのように街を放浪していた時のことだ。

 その日だって変わらずに、自分の散歩道を不規則正しく、誰にも左右されることなく街を眺め、僕はある店前に留まり、その扉を開ける。

 その扉の先は、カフェ『WEEKEND GAREGE』

 この街の伝説の夜として刻まれた名を冠している店。

 僕の散歩道の休憩所であり、この通りでは割と一番くらいの人通りがあると思う。

 その名の看板がそうされるのか、その店の周りには、夕方から夜にかけて多くの人間がこの近辺に集まっている。

 

「いらっしゃいませー。あっ!都楽!」

「ちゃっす杏ちゃん」

 

 カラン、と鈴の音とともに空いた扉の先からは、元気な看板娘の声が聞こえてくる。

 忙しなく競争の起こるこの場所において、休憩地でもあり最前線でもあるこの場所は、僕にとって良い観測場所の一つだ。……嘘です、ただの行きつけです。

 

 白石杏。

 かつてこの街に伝説として玉座を打ち立てたアーティストの娘。

 記録者としてを述べるならば、歌唱力・パフォーマンス力の双方ともに突出した才を持ち、まだまだ伸び代を残す者であり、立てられた伝説を越えることを目標としている人物。

 僕個人としていうならば、この街に生まれ落ち、音楽の扉に近づいた時から、奇妙な縁で何故かついてきた腐れ縁。もしくは幼馴染という者。

 あと笑ったらすっごい可愛い。これは断言できる。そこら辺の人なら堕ちる。僕が保証する。

 

 そして杏ちゃんの隣には、少し前に僕が割と不審者みたいな動きしながら背中を押してあげてみた女の子がいた。

 

「あれ……この人……」

「道楽者でーす。あの時入ってみて、良かった?」

 

「は、はい……」

「そっか。ソイツは良かったよ」

 

 僕はそう言ってその女の子に笑みを浮かべる。どうやら、僕が背中を押した女の子はこの街の音楽に不足なく触れてくれたようだ。

 

「都楽はさ、いい加減その道楽者って名乗っていくのやめたら?」

「え、嫌どす。この街去るか味しなくなるまで擦っていくどすえ」

「今から京風になってほしいとは言ってないんだけど」

 ここまで定着しちゃったんだから、擦り続けるしかないじゃん。ええそうです徹底した開き直りです。

 

「もしかして初めの時、都楽がこはねをここに連れてきたの?」

「あれ?言われなかった?道楽者って人に案内されたっていうといいよって案内してくれた子に言ったんだけど」

「あ、杏ちゃん。この人が連れてきてくれて……でも、名前とかわからなかったから……」

 

「あー……確かに、名前とかも言わずに送っちゃったからね、僕は、唐桜都楽。道楽者って渾名で呼ばれてる」

「……道楽者って、あんまりいい言葉じゃないんじゃ……」

「うーん正解。でも、もうそれでいいやって思っちゃったからね、そのまんま呼ばれ続けてる。まぁ、あんまり深ーく考えなくていいよ」

そうして自己紹介を終えたあたりで店の扉がまた開いた。

 

「こんにちは白石さん。今日もお邪魔するね」

「いらっしゃい!いつも来てくれてありがとね」

 

 そうして入ってきたのは、自分も顔見知りの人間であるノメちゃんと青ちゃんが入店してきた。

「ノメちゃん、青ちゃん。こん」

「都楽くんも、こんばんは。じゃあ注文はいつもの……

 ……あれ?そっちの子は見ない顔だね」

 

 うーんこの清々しいほどの外面。ノメちゃんの普段を知っていれば知っているほど違和感MAXではあるけれど、コレが自然と形になるのも賜物ではあるでしょ。

「オレは東雲彰人。よろしくね。

 こっちは相棒の青柳冬弥」

 こはねちゃんは、少し緊張した様子で二人に自己紹介をした。

「んで、君のほうを聞いてなかったわ、聞いてもいい?」

 

「え、えっと……小豆沢……こはね……です」

「こはねちゃんね。たまーに会うだろうけど、よろしくね」

 

 そういって、僕は笑顔で手を振る。杏ちゃんは不審そうにこっちを見ている。しゃあないやん。半分こっちも責任感みたいなのできちゃったんだから。すいませんだからそんな目で見ないでください。

 

「そう!こはねはあたしの相棒なの!ついさっき、一緒に歌って見て分かったの!」

 杏ちゃんは僕らは自信満々にそうこはねちゃんを紹介してくれた。

「……白石さんがそう言うってことは、かなり歌えるのかな。小豆沢さん、今までどこでやってたの?」

 

「えっ?い、いえ……まだイベントに出たこともなくって……音楽の授業くらいでしか、歌ったことが……」

「え?」

「え!イベントの経験ないんだ!それであんなに歌えるなんてスゴイよこはね!」

 

 あらそうなの。あのときこの辺りが目的地だと思って案内したけど、ほんとに迷い込んできただけの子だったのか。それで案内されていまこうなってるの?すごいね運命力。ほんまに正真正銘のニュービーってことなのね。

 

「……へぇ」

 

 杏ちゃんがそう褒めている間、そのふとした瞬間、ノメちゃんの顔がほんの一瞬全てが抜け落ちたように無になったが、すぐさま人当たりのいい外面に戻った。

 いきなり百面相し始めたから何事かと思ったが、なんとなく理由が分かった気がした。

 ……今のノメちゃんの腹の中に渦巻いてるもんには大体当たりがついてはいる。

 苛立ちだろう。

 そりゃあ同年代のライバルにも近しい人間がどこの誰かもわからない、さらに右も左もわからないようなひよっ子連れて相棒宣言されたらそうなるって。

 こはねちゃんと杏ちゃんが僕らそっちのけで盛り上がっている間、おそらく十中八九maybe良くないことを考えていたであろうノメちゃんは、二人の会話の切れ目を見計らって声を掛けた。

 

「……じゃあさ、ちょっと提案なんだけど。ふたりとも、イベントに出てみない?」

「イ、イベントに……!?」

 

 突然の提案に驚いていているこはねちゃんに、先ほどと変わらぬ穏やかな表情で優しく語りかけるようにノメちゃんはさらに提案を続けていく。

 

「うん。ふたりともせっかく組んだわけだし。同じ目標を持つ者同士、一緒にイベントに出ようよ」

「オレ達が来月に出るイベント。出演者が一組出られなくなって、枠が空いてるんだ」

「場所はREDってライブハウスだよ。どう?」

「…………」

「REDか……。たしかにあそこなら小さめだし、初めて出るにはいいかもね」

「こはね、せっかくだし出てみない?みんなにも私達の歌を聴いてもらいたいし!」

「で、でも来月なんて、そんなに急に……大丈夫かな……」

 

 突然の提案に、こはねちゃんは不安から返答に悩んでいる。

 そらそうよ。こはねちゃんからしたら、話が目に見えてトントン拍子に転がりすぎてるし。

 

「大丈夫!来月だったらわりと練習もできるし、それに、私も一緒だしね!」

「………………。…………それなら……できるかも……」

 

 杏ちゃんの説得により、こはねちゃんもやるって気が前になったようだ。

 こういう時一歩を後押ししてくれる人とか言葉って貴重だよね。どんなことであれポジティブに前を向かせてくれる人ってほんとにすごいと思ってるよ。

 

「じゃあ決まりだね。話はオレから通しておくよ」

「オッケー!誘ってくれてありがとね、彰人」 

「どういたしまして。同じイベントに出るのは初めてだし、楽しみだな」

「………………」

 

 笑みを浮かべて対応するノメちゃんを青ちゃんは黙ったまま見つめている。

 凡そ、青ちゃんも何かを何かを企んでいるのは理解したけど、どうする気なのかがわからないんだろう。だって僕もわからない。しかし、青ちゃんの表情は何かを疑っているような顔をしていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 ☆

 

「おい、道楽者」

 

 そうして、店を出た後に、ふとノメちゃんに先ほどの物腰柔らかな態度から一変した強めの口調で僕のことを呼び止めた。

 

「さっきのアレ、どう思った?」

 まぁそうなるだろうなとはお店にいた時から内心想像してはいたよ。

 

「別になんとも。アレをこっちに引っ張ったのは僕ではあるけど、そのこの行く道筋は彼女自身が歩いてるものだ」

「お前……」

「僕は、どんな形であれ、挑戦者の歩みを応援する者だ。それが、初めの一歩になるんなら尚更の事」

 

 生憎、今回の僕は新しい歩みの一歩を応援する立場だ。

 あの子たちに対してどんな不満を持とうが、僕は関与する気もない。ただ、黙って歩みを記録するだけの集音機なものでして。

 

「……そうかよ」

「納得なんてしてもらわんでいいって。僕は、そうあるだけの蓄音機。集めて刻んで、後に発するだけの地蔵なんだから」

「不満があるんなら、挑戦すればいい」

「……それを道楽者のお前が言うのか?」

 青ちゃんがそんなことを聞いてきたけれど、残念ながら

「道楽者だから言うんだよ。僕は争う事が好きじゃない。遊びにうつつを抜かす通り名付いてるんだから」

 とても、とても不本意だけどな!だけど、使えるものは使っていく主義なものでして。

 

「……チッ、いくぞ冬弥」

「また会おう。都楽」

「じゃあのーノメちゃん青ちゃん、頑張ってねー」

 

 僕の返答に納得しているのか、いつまでも平行線に近い話しかならないことが時間の無駄だと判断して切り上げたのか、ノメちゃん達は自分とは逆の方向へと足を向けて歩き始めた。

 そうして僕が呼び出されては話をされたその日は、若干の不和を残しての解散となった。

 

 かくいう僕の方はと言うと、来月の杏ちゃんとこはねちゃんの初陣を記録することを決め、その日に起こる他のものは僕のいろんなツテに頼んで記録を行ってもらうことにした。

 どんな歌を歌うんだろうか。どんなパフォーマンスをするんだろうか。

 どんな一歩を刻むんだろうか。

 記録者の僕は、道楽者の僕は楽しみで仕方ない。僕は新たな挑戦者のはじめの一歩を見にいくことにした。




唐桜 都楽
記録者。又は道楽者。
小豆沢 こはね
ニュービー。
白石 杏
相棒。
東雲 彰人
熟練者。
青柳 冬弥
相棒。
また片耳聴こえんようになったわガハハ。
もうちょい更新速度上げれるように頑張ります。
スパイラルアントニオ健二様評価していただきありがとうございます。

感想用フォーム https://syosetu.org/?mode=review&nid=341288

評価用フォーム https://syosetu.org/?mode=rating_input&nid=341288&volume=4
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。