長いです。
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朝の8時30分。星街は目覚めたようだ。
ちょうど朝のニュースで、親衛隊のことが放送されていた。
主犯の3人は3年間少年院で過ごし、ほかは1年半ほどに収まったらしい。
それを聞き、すいせいの意識がはっきりする前にテレビの電源を切った。
「おはよ」
「よかった···夢じゃなかった」
そう言って、また泣いてしまった。昨日今日で何回泣いてるんだ?
そんな野暮なことを考えてしまった。
すいせいは朝ご飯を買うために病院のコンビニに向かった。
数分後、すいせいは病室に戻り、たまごのサンドウィッチとリンゴジュースを頬張っている。
俺は既に病院食を食べ終えていたのだが、味が薄い。つまるところ、濃い味付けのものが食べたい。
そして、すいせいの食べているサンドウィッチを見つめる。
その視線にきがついたのか、すいせいが「食べたいの?」と聞いてきた。俺は無言でコクリと頷く。
「仕方ないなぁ···ひとくちだけだぞ?」
そう言って、食べかけのサンドウィッチを俺に食べさせた。
うむ。うまい。やはりコンビニ飯は最強だな。
そして、すいせいは気にすることなく、俺の齧ったサンドウィッチを食べている。
「それ、間接キスだぞ?」
「すいちゃん、あんまり気にしないから。お互い様だね」
女子が気にしないのはどうかと思います。
「ごちそうさま!」
すいせいがご飯を食べ終えた瞬間だった。
病室にサングラスをつけ、ヒゲの生えた黒髪のオールバック、腕に濃い入れ墨の入った強面の男が入ってきた。
「ひっ」
すいせいが、思わず声をあげる。
その様子を気にもとめず、俺の方を睨むかのような目つきで見た。
「おい結有」
「···お」
その目つきに気がついたのか、すいせいが男の前に立つ。
「あ、あの···」
「あ?」
「だ、だから···その···」
すいせいは、恐怖で声を震わせている。
「君、誰?」
「わ、私は星街すいせい···です」
「そうか···星街ちゃん」
男は、純黒のバッグの中を漁る。
そして、何かを取り出す。
すいせいは、恐怖で目を瞑った。
「飴、いる?」
「ふぇ?」
思わず、すいせいは気の入っていない声をあげた。
それはそうだろう。こんな男から、そんな呑気な言葉が聞こえたら。
「親父、すいせいが怖がってる」
「え、嘘。ごめんね。星街ちゃん」
「···結有くんの···パパ?」
「「そう」」
「―――あ、あの、すいませんでした!! お父様とはいず知らず失礼なことを!!」
「いいよ。こんなナリだからな。そうなるのも無理ねぇよ」
「ほんと、ごめんなさい」
「で、飴何味がいい?」
「えーっと、りんご味がいいです」
親父は、りんご味ののど飴をすいせいに手渡した。すいせいは、袋をあけ、口の中に飴を放り込む。
「で、結有、体はどうだ?」
「問題ない」
「嘘つかないで! すごく危険だったのに、出血が酷くて···お医者さんがこんな量の出血をしているのに意識を保つのがおかしいって」
「そうか···」
「親父の血を受け継いだ結果だな」
「みたいだな」
「親父、元暴走族の幹部で、不死鳥って言われてたんだぜ」
「バカ、言うな!」
「ぼ、暴走族···ひ、人を殺したりとかは···」
「してない!! 俺がおった組は犯罪には手染めとらん。全く怖くない。ただ他の組とほぼ毎日ヤり合ってただけや」
「親父、それだけでも十分に怖いよ」
その証拠に、現にすいせいはベッドの横に隠れている。
「あ、あの···なんで不死鳥なんですか?」
その理由を、親父は自慢げに話した。
20年前のヤクザとのたった1回の抗争で、腹部を刺され、銃で左肩、右腕、脚、耳の4箇所を撃たれ、ワインボトルで頭を思い切り殴られたが気にも止めず相手の組の3割を一人で倒したことを。
その後、病院に運ばれ、普通なら失血死するレベルの出血で意識を保ち、8時間に渡る手術後眠った。
さらに目を覚ますまでに10日はかかると言われていたのだが、ほんの僅か1日で目を覚ましたことを。
すいせいは、話を聞きつつ、段々と見えていた顔をベッドに隠していき、最後にはアホ毛だけが見える状態になってしまった。。
「親父···」(ジト目)
「ほ、星街ちゃん、そんな怖がらんくても」
「怖いわ。つーか、母さんは?」
「え、あぁ、
「結有! 大丈夫!?」
「お兄ちゃん!!」
噂をすればだな。
美結は、俺に抱きつき、俺はその頭を撫でる。
「
「す、すまん」
「もう!!」
すいせいは、隠れるのをやめ、立ち上がる。
「え、もしかしてお母さん?」
「「「そう」」」
すいせいは、もう一度硬直。
そして、恐る恐る母さんに訪ねた。
「も、もしかしてNIGHT KNIGHTSのギターボーカルのMAYAさんですか?」
「おっ、知ってるの!? 嬉しいなぁ」
「は、はい!! お姉ちゃんの影響で好きになって、もしよかったらサインとかもらえませんか?」
「全然オッケーだよ〜」
そのやりとりを見て、親父が俺の耳元で、俺のときと全然反応ちがくね?とか聞いていた。
あたりまえだろ。
そう一言告げると、親父は少ししょんぼりした。
「結婚されて、お子さんがいるのは知ってたんですけど、まさか結有くんだったなんて! なんで早く言ってくれなかったの!?」
「そうだぞ〜」
うるさい。
―――すいせい視点(母登場のところ)―――
結有くんのパパ、やっぱり怖い。
根はいい人なんだろうけど、見た目があまりにもヤクザすぎる。
結有くんのパパが怖がらないで、って言うけど、やっぱりすいちゃんには怖いです。ごめんなさい。
「結有! 大丈夫!?」
チラッと、声のした方を見る。
するとそこには、20代後半に見える金髪の女の人が。
この人···どこかで···。
そういえば、さっき“まや“って。
え、も、もしかして、NIGHT KNIGHTSのMAYAさん!?
え、嘘。結有くんのママだったの!?
それなら普通に40前後だよね!! 若すぎない!?
っていうか、おっぱいでか!!!!
「も、もしかしてNIGHT KNIGHTSのギターボーカルのMAYAさんですか?」
「おっ、知ってるの!? 嬉しいなぁ」
もしかすると、これはサインをもらうチャンスなのでは!!
すごいよ、まさか日本だけじゃなくて海外でも超人気を誇る女性ロックバンドの一人と会えるなんて!!
「は、はい!! お姉ちゃんの影響で好きになって、もしよかったらサインとかもらえませんか?」
「全然オッケーだよ〜」
やったあ!!
結有くん、通りでギターがうまいわけだ!
あのMAYAさんがママなんだもん!!
「結婚されて、お子さんがいるのは知ってたんですけど、まさか結有くんだったなんて! なんで早く言ってくれなかったの!?」
「そうだぞ〜」
普段のLIVE映像では、ハードロックやバラードまで多岐に渡る曲を弾き、歌い上げ、激しく会場を走り回り、客を煽るMAYAとは違って、眼の前にいるのは結有くんのママとしての真夜さんだ。
「そういや、今外国でツアーやってたろ。日本に来てる暇なんてあるのか?」
「何を言っているこのバカ息子!! 愛する我が子がこんな状況になってるのに駆けつけない親がどこにいる!!」
「おい、お前を殴ったやつ、ちゃんとケジメつけたんだろうな···」
「親父···少年院で··」
「そうです···足りませんよね···あのときは殴る蹴るで気絶させるだけで済ませてあげたけど、出所したら二度と喋ることもままならないくらいに····」
「あ、あの、す、すいせいさん···」
やばい、心の底から怒りと憎しみが···。
すいちゃんのバンドのギターをこんな目に合わせておいて、たった3年?
死ぬまで入ってろよ。
それで、毎日電気椅子や、斧で何度も体を切り刻まれてろ。
―――
「そういや、結有とすいせいちゃんはどういう関係なの? もしかして、付き合ってるとかー!? こんなに可愛い子、あたし的には大歓迎なんだけど! どう、明くん?」
親父に聞くなよ。
親父がとてつもない程口下手だってことは、プロポーズされたあんたが一番わかってるだろ。
落とし文句すら言えずに、そのまま指輪を薬指にはめて抱きしめるやつがいるか?
まぁ、そんなところに母さんは惚れたんだろうけど。
俺が生まれてからも、美結が生まれてからもずっと、こんな感じのおしどり夫婦で、俺がになる10歳まではほぼ毎日のように母さんの···おっと、これ以上はよそう。
「そ、そうだな···いいと思う」
よし、これで親公認だな、とはならない。
すいせいよ、顔を赤くするだけでなく、否定をしろ。それだと信憑性が高まってしまうだろ。
仕方ない、ここは俺が説明するか···。
「そんなんじゃねぇよ。俺とすいせいはバンド仲間。文化祭で演奏するんだよ」
「へぇー、いいねぇ〜。高校の頃思い出すわぁ〜。椿と瑠李と一緒に高校で歌ったんよね〜。何年前···?」
「22年前だろ? それで20歳でメジャーデビューして、24歳で親父と結婚した。そうだろ?」
「そうそう。よく覚えてるじゃーん」
何回自慢話を聞かされたと思ってるんだか。
「真夜、もう帰りの飛行機まであと1時間半しかない」
「えー、嘘でしょ? せっかく会えたのにー!! ごめんね、結有」
「いいよ。久々に顔見れてよかったよ」
「お兄ちゃん、早く元気なってよー?」
「うぃ」
そう言って、俺の両親は病室をあとにした。
俺が家にいない間は、祖父母の家に美結は預けるらしい。
美結は一人だと料理もできないからな。懸命な判断だ。
――
「いいご両親だね」
「ああ。そういや、俺すいせいの家族と会ったことないよな」
「あー、お姉ちゃんがいるよ。退院したらウチくる?」
「いいのか?」
「すいちゃんは全然いいよー」
すいせいの家···か。
知っておけば、今後合同で歌詞とか、メロディを作るのに都合がいいな。
「じゃあ、今度お邪魔させてもらうわ」
「はーい」
「そういや、すいせい」
「なに?」
「バンドやるにしても、方向性はどうする?ロックとか、バラードとか、ポップとか···あと、オリジナル曲とか」
「···全部やりたい」
「全部?」
全部は流石に厳しい気がする。文化祭があるのは9月25〜27の3日間。
どの日にLIVEをやるのかの日程も決まっていないし、セトリも、俺自身のギターも、作曲、作詞。これをこの短期間にすべてやりきるというのは、かなり厳しい。
曲数を10曲以下にする、とかが出来ればなんとかなるかもしれないが、すいせいが性格的にそれで妥協するとは思えない。
「LIVEは何曲歌いたいんだ?」
「うーん、本格的にしたいから最低15曲。そのうち、オリジナルは3曲くらい入れたいかな」
「15····」
「どうかした?」
「正直、あまり現実的な数じゃない。文化祭まであと2ヶ月と少ししかない。それまでに15曲、しかも3曲もオリジナルとなると、厳しいぞ」
「そのための夏休みでしょ?」
確かに···夏休みに1日も休まずに俺がギターを弾き、曲を覚え、なおかつ作曲し、すいせいが歌詞を書く、というのをすればなんとかなるかもしれない。
だが、それはあまりにも俺の負担が大きすぎる気がする。
「毎日、俺が休まずに···そうだな、7時間ギターでお前の歌いたい曲とオリジナルを作れればなんとかなるかもしれないが···いかんせんこの学校は課題が多いからな···」
「それ、すいちゃんにお任せください」
「やってくれるのか? 勉強嫌いなお前が?」
「うっ···LIVEのためなら頑張るよ···。それに、結有くんがこんなにも頑張ってくれるのに、私だけ何もしないなんておかしい!!」
「···わかった。なんとかしてみる」
――ダメだな。すいせいには勝てない。こいつには、人の心を動かすなにかがある。
それに、俺は動かされてしまう。
恐怖、それもあるかもしれないが、それとは違う、他のなにかが、俺を動かす。
この二人······結ばれる?
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結ばれる
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結ばれない
-
結ばれてほしい
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はよ既成事実つくれや
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結ばれないでほしい