羅旋 -RAZEN- 〜双極ノ剣〜   作:さぼてんmark.2

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光あるところに、漆黒の闇ありき。
古の時代より、人類は闇を恐れた。
しかし、暗黒を断ち切る騎士の剣によって、人類は希望の光を得たのだ。


杵 柄 ①

杵 柄

 

「あやつは何も分かっておらん…!何も…!」

 

草木も眠る丑三の刻。

ランタンの明かりに、怒れる老夫の姿が照らし出される。

何故、彼はこんなにも怒りを燃やしているのだろうか?

答えは、少し時を遡った所にあるーー

 

「じいちゃーん!」

「おお、よく来たのう」

 

それは、前日昼の出来事であった。

老父の元を、一人の少年がーー彼の孫が訪ねてきたのだ。

目に入れても痛くないとはまさにこの事、彼は孫を溺愛していたのである。

そうして彼は、愛孫を部屋へと通す。

すっかり珍しくなった完全木造製の古き良き日本の豪邸と言った佇まいの家の中には、物心ついた頃の子供にとって新鮮に映るものばかりで埋め尽くされていた。

 

「じいちゃん、これは?」

 

少年の指の先にあったものに視線をやると、そこには壁にかけられた数多の勲章が。

 

「それはのう、お爺ちゃんが若い頃にな…」

 

老父は感慨深そうに、己の過去を語りだす。

誇るべき戦いの記憶をーー

 

「あ!パパの車だ!」

 

そうこうしているうち、時は瞬く間に過ぎ去った。

迎えの車から降り立った父に駆け寄る少年。

 

「楽しかったか?」

「うん!」

 

そんな親子のやり取りがなされた後、子だけを車へと行かせ、父親は老父へと歩み寄っていく。

 

「父さん、今日は一日ありがとうございました…」

 

感謝の言葉。

しかしそこには、先程までの暖かな空気はない。

ピリピリと張り詰めた緊張感がーー両者の間にあった。

父親は、一息溜めてから言い放つ。

 

「それで、あの子に余計な事を吹き込んでないでしょうね?」

「余計な事、とは…父親に向かって何だその言い草は?」

「当たり前です!事あるごとに昔の事を誇らしげにして…あの子に悪い影響があったらどうするんですか!」

 

老父の耳が、眉間がぴくりと動く。

怒りに火をつけたのだ。

 

「悪い影響だと!?ワシから言わせれば、米英に汚染された貴様の方こそ、孫に悪い影響を与えている張本人に見えるがな!」

「そういうところが悪い影響だって言うんですよ!人の命を奪った事を誇りにしてるなんて、おかしすぎます!」

「ええいもういいわい!孫の目がなければ切り捨てている所だぞ!」

 

「帰れ!帰らぬか愚か者!」

「言われなくたって!」

 

そう言うと、父親は肩を怒らせながら車へと身を返した。

その背を睨みながら、老父は吐き捨てる。

 

「嗚呼、なんと嘆かわしい…!すっかり鬼畜どもの文化に染まりおって…!」

 

ーーこの一連の出来事が、この老父の怒りが冷めやらぬ原因であった。

 

老父は明かりに照らされる軍刀を指でなぞり、ため息を吐く。

 

「…か?」

 

その時であるーー何者かの囁きが、彼の耳へと届いたのは。

老父は慌て、辺りを見回す。

されど声の主の姿はどこにも見えず。

そして幾許かの静寂が過ぎた後。

 

「貴様の望み、私が叶えてやろう」

 

老父は、悪魔の手を取った。

 

そして、次の夜更け頃。

 

静まり返った街中に似つかわしくない、騒々しい集団がひとつ。

至る所にピアスを開け、タトゥーを掘った若者たちの集まりだ。

彼らは日課のリーマン狩りを終え、コンビニ前で一息ついていたのだ。

 

しばらくして、ゲラゲラと笑いあう若者たちの耳にある音が響いた。

かつん。

かつん。

 

感高く、かつ冷たいその音はーー足音であった。

聞き慣れない音に、若者たちは耳と目をすます。

 

そして暗がりの中から現れたのはーー軍服を見に纏った老父であった。

若者たちは好奇の目でそれを取り囲む。

 

「オイオイなんだよ爺さん、いい歳してコスプレかぁ?」

「似合ってんじゃないのぉ、ええ?カッコいいじゃん」

「ほら写真撮ろうぜ写真」

 

そう言ってスマートフォンを取り出す若者。

その瞬間ーー

 

「粛正ッ!」

 

老父は腰の軍刀を抜き放ち、若者を袈裟に裂いたではないか!

 

「あぁぁーっ!助け…」

断末魔の叫びとともに、その魂が錆びついた刀身へと吸い込まれてゆく!

 

「う、うわあぁぁ!」

その光景を目にした仲間は怯え、しめやかに衣服を湿らせる!

 

「鬼畜の文化に染まった愚か者どもめ…このワシが…このワシが…一人残らず粛正してくれる…!」

 

脚がすくみ、這う這うの体でしか逃げ出せない若者たち。

そんな彼らに容赦なく、刃が突き立てられてゆく。

そして最期の一人が餌食となった頃ーー

 

「な、何がウワーッ!」

 

ただならぬ騒ぎを聞きつけたコンビニアルバイターが外へ出てきたのだ。

彼は目に映った凄惨な光景に腰を抜かし、へたり込む。

 

「貴様…!日本人ではないなぁ!」

「アァーッ!?」

 

哀れ、罪なき店員は恐怖に顔を引き攣らせたまま刀の錆となったーー

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