羅旋 -RAZEN- 〜双極ノ剣〜   作:さぼてんmark.2

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杵 柄 ②

翌日。

瓦礫の山と化したコンビニの周りには多数の報道機関とーーそれを抑える警察官の姿があった。

事故か?

それとも何らかのテロなのか?

様々な憶測が飛び交う中ーー

 

「ホラーの仕業…だね」

「やはりそうか」

 

遠巻きにそれを見つめながら呟く一人のーー否、一組の姿があった。

現場に残った微かなホラーの気配を嗅ぎ分けた魔導輪ソルバ。

相棒である緋影は言う。

 

「にしたって派手にやったものだ…相当な手練れか、それとも馬鹿か…」

「まぁどちらにせよ、ホラーはこの手で斬るの…」

そう言いかけて、緋影はふと言葉を止めた。

「どうしたの?」

ソルバが問う。

その答えは、相棒の視線の先にあった。

 

「成程」

そこにあったのは、道路を行く大型バイク。

「魔導二輪、憧れてるもんね」

「…フン」

 

照れ臭そうに鼻を鳴らす緋影。

はるか海の向こうの異国の地。

そこに魔導二輪を己の手足の如く駆る黄金騎士がいるという。

その話を聞いてからというものの、彼は密かに憧れているのだーー自分の魔導二輪を持つことに。

 

しかし、そこには決定的な問題があった。

導入のための予算もそうだがーー

 

「無いもんねぇ、操縦センス」

ぐぅ、と緋影が言葉を詰まらせる。

そうーー彼にはそう言った類のものに対してのセンスが壊滅的と言っていいほどに無いのだ。

まだ見習いの頃ーー二足歩行の魔導具を作成して試運転をしようとした所、ものの見事に操縦を間違え、大破させてしまったことがある緋影。

当然、弟にこっ酷く叱られた。

そんなことがあって尚ーー憧れは抑えられず。

いつか自分だけの魔導二輪を手に入れるとーー彼は密かに思い続けていたのだ。

 

「ええい!もういいだろう!?行くぞ!」

「あっ誤魔化したね」

「…ッ!」

「イテッ」

 

からかうソルバの額を指で弾き、緋影はその場をそそくさと立ち去った。

 

※※

 

「兄さん、今日は何を作ったのさ」

 

開けた草原。青空の元、何やら大柄な機械を前にした二人の若者がいた。

 

「先日街で目にした広告にヒントを得てな、二足歩行の魔導具を作ってみたのだ。早速試運転と行こうと思う」

ゴーグルを頭に装着し、自信満々に鼻を鳴らす男ーーありし日の緋影。

彼は操縦席に乗り込むとゴーグルを下ろし、スイッチを入れる。

 

「やめときなって」

「そう言うな蒼陽。お前とてロボは好きだったろう。憧れは止められんのだ」

 

あちゃあ、という様子で頭を抑える黒髪の青年ーー名を蒼陽。

緋影の唯一の弟である彼は、兄のこうした行いに度々悩まされていた。

思いつきでほいほい魔導具を作り、実験する。

そして大抵の場合ーー

 

「せ、制御が…ヌワーッ!」

「言わんこっちゃない!」

 

失敗に終わる。

 

「ぐ、ぐぐ…」

「もう…大丈夫?」

「ああ…すまぬ」

 

土埃を払い、立ち上がる緋影。

しかしーー

 

「よし!次は失敗せぬよう材質を変えてみるか」

 

懲りた様子は微塵もない。

 

弟は何も言わず、そんな兄の頭を強めにはたく。

 

「な、何を!」

「いい加減懲りて」

「しかしだな?魔導具が発展すればただでさえ年々数が減っている騎士や法師の助けになるはず。それに言うだろう?失敗は成功の母と」

「うーん、一理ある…って言いくるめられないからね?」

 

ーー夢は記憶。過去の記録。頭の中の情報を整理し、投影するものでもある。

 

緋影は今、簡素な寝床の中で夢を見ていた。

ありし日の記憶をーー弟がまだ、生きていたあの頃の思い出を。

 

「そろそろ起きなよ、緋影」

 

相棒の声を耳にし、ゆっくりと彼は目を開く。

見ると、窓から差す光はすっかり橙に染まっていた。

 

「珍しく気持ち良さそうに寝ていたね?」

「……」

 

黙する緋影。

ソルバは奥ゆかしく、それ以上何も問わない。

 

「さ、そろそろまた仕事の時間だよ」

「そうだな……」

 

魔法衣を纏い、魔戒剣を収納する。

そして弟に叱られながらも作り上げた数少ない成功作ーー魔導銃やら鉤縄やらも収納し、支度を整えた緋影。

 

彼は戸を開き、再び戦いの世に足を踏み入れたーー

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