羅旋 -RAZEN- 〜双極ノ剣〜   作:さぼてんmark.2

5 / 8
杵 柄 ③

刻は少し遡り、昼頃のことであった。

マンションの一室にて、何やら騒がしく言い合う親子が一組。

 

「もうおじいちゃんとは会えないんだ、わかってくれ」

「何で?何でなの?またお話し聞きたい!」

 

それは、あの老父の孫とその父親であった。

 

「おじいちゃんと一緒にいると、お前にとって良くないんだ!」

「パパの言ってる事、僕何もわからないよ!おじいちゃん優しいじゃん!一杯珍しいものだって見せてくれるし、かっこいい刀だってあるし!」

 

先日の一件以来、父親は悩み続けていた。

このまま我が子を祖父にーー己の父に会わせ続けてよいものかと。

最近一層外国嫌いが悪化してきた父の悪い影響を受けてしまうのではないか、と考えていたのだ。

そして、決断した。

金輪際、この子を会わせないようにしようと。

それを伝えた結果ーーこの始末だ。

どうすれば納得させられる?

そう思いながらも、口論はヒートアップしてゆきーー

 

ぱぁん、と乾いた音が響いた。

それから暫し、静寂が場を包む。

 

「…っもういい!パパの分からず屋!」

 

そうして目に涙を溜めながら、子は背を向け、玄関を開け放って駆け出した。

 

「ま、待ってくれ!」

 

はっと我に帰り、手を伸ばす父。

しかし、そこにはもう我が子の姿はない。

彼もまた、急いで家を飛び出したーー

 

※※

 

「へー、そんな事があったんだ」

「うん。パパなんてもう知らない」

 

そうして少し経ってから。

彼は級友の家へと転がり込み、語らっていた。

幸いな事に、今ここに親はいない。

口裏合わせもバッチリだ。

もし父が訪ねてきても、バレはしないだろう。

しかし、いつまでもここにいられる保証は無い。

少年は考えーー思いついた。

 

「あのさ、一緒にうちのじいちゃんに会いに行かない?」

「おじいちゃんに?いいけど…」

「やった!一人じゃ心細かったんだぁ〜」

 

そうして、少年達は僅かな小遣いを握りしめ、家を出たーー

 

※※

 

そして、夕刻暮れ。

 

「…む」

 

戸を叩く音と、聞こえる声に声を漏らす老父。

彼はーー彼であった男は、その声の主を知っている。

孫だ。この依代の孫だ。

祖父を訪ねて来たのであろう。

老父はにこやかな顔を作りつつ、玄関へと向かう。

子供の魂は美味いーーが、ただ喰らうだけでは野の獣と変わらない。

幸と絶望の差が大きければ大きい程ーー極上の逸品へと仕上がるのだから。

そうして戸を開けると、飛び込んできた小さな身体を抱き止める。

 

「よく来たのう!おや、お友達も一緒か」

「聞いてよおじいちゃん!パパったら酷いんだ!」

「まぁまぁ、とにかく上がりなさい。話はたーっぷり聞いてあげるから」

「うん!行こ!」

「お邪魔します」

 

老父はニコニコと笑いながら二つの背を見送り、鍵を閉める。

今にも喰らってしまいたいという衝動を堪えつつ、茶菓子の準備をしに向かうーー

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。