羅旋 -RAZEN- 〜双極ノ剣〜   作:さぼてんmark.2

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杵 柄 ⑤

「ハッ!」

緋影は様子見がてら、と言わんばかりに魔導銃を取り出し、三度射撃!

しかしスコルベルは無傷!

分厚い装甲が弾丸を阻み、地に落ちる。

 

「またこの手の相手か…楽はさせてもらえんものだ」

 

さてどうするーー緋影は思案する。

見たところ、あの装甲は全身を覆っている。すなわち接近戦を仕掛けても、ただでは有効打を与えられないだろう、そう思った。

手数こそ多いが、決定打に欠けるのが自分の弱点だなーーとも思った。

 

「緋影!」

「!!」

 

ソルバの声に思考を戻し、眼前より迫り来る剣撃を回避する緋影。

 

「チッ…考える暇もないか」

三度バク転して距離を離し、吐き捨てる。

 

緋影は言う。「ソルバ、何か案はあるか」と。

「え、急に振られてもさ」

「そうか。代わりに考えておいてくれ」

「あぁもう!」

 

いささか無茶振りだがーー思考しながら戦うのにも限界があると見た故の策である。

緋影は相棒に全てを託し、自身は戦いに集中する事にした。

 

「イイヤッ!」

緋影は上体を大きく屈め、突撃!鉤縄を回収!

そのままスコルベルの眼前に迫った瞬間、縦回転を伴って跳躍す!

そして今度は横に捻りを加えつつ、素早く背後を取り、鉤縄を勢いよく投擲!

見よ、鎧の有無こそあれど、これは正にリブラルクを屠った必殺の手順である!

だが、今回の威力はその比ではない!

強烈な回転が加わる事により、その加速度は倍増!すなわち破壊力も倍増!

古来より伝わる戦闘のセオリーだ!

 

「む!」

 

しかし、それで尚スコルベルの装甲を砕くには至らなかった。

乾いた金属音を立て、先端が地に落ちる。

 

「カアッ!」

 

お返しと言わんばかりに、スコルベルは力強く前進。

着地したばかりの緋影の首を狙い、刃が横一文字に振るわれる!

 

「く…!」

 

すんでのところで弓なり姿勢回避を成功させる緋影。

空が裂かれる感覚を肌で感じつつ、反る勢いのまま縦回転跳躍!

そして脚を勢いよく振るい、スコルベルの顎へと叩きつける!

所謂サマーソルトキックだ!

 

「くぁ…ッ」

 

堅牢な装甲に包まれているスコルベルであったが、流石に衝撃がモロに伝わったようだ。呻きをあげ、頭を振りつつ少し後ずさる。

 

しかしそれは、緋影にとっても同様であった。

刃すら通さぬ表皮を思い切り蹴りつけたのだ。当然彼の足にもダメージは蓄積する。

同じ手段をそう取れないな、心の中で吐き捨て、左手をちらと見やる。

相棒はまだ、思案している様子だ。

鎧を召喚した所で、あの装甲を破る手立てが無ければ徒労と終わる。

ならばまた、時間を稼ぐのみ。

唾を飲み、覚悟を決める。

一応ではあるがーー考えそのものならある。

それを実践し打つ手無しとあらばーー撤退も視野に入れなければならないだろうがーー

ええい、と緋影は首を振る。

最初から駄目なケースを考えてどうするのだ?といった思い故だ。

息を整え、魔戒剣を順手に持ち変える。

構えを取ると同時に、スコルベルもまたフラつきから脱した。

思案の時間は終わりだーー今はただ、立ち合うのみ!

 

「ハァッ!」

緋影は掛け声とともに円参を複数枚投擲!

事も無げに切り払うスコルベル!

が、これは陽動だ!

素早く接近し、懐へ飛び込む緋影!

そして魔導銃を引き抜き、装甲へ押し当てて数度、ゼロ距離射撃!

銃身が、銃口が悲鳴を上げ、反動がより大きく伝わる!

「オオオーッ!」

構わず連射!

ついに魔導銃が耐えきれず、爆発!

愛用している手製の装備を惜しむが、今はそれどころではない!

「セアァッ!」

素早く放り捨て、打ち込んだ箇所へと魔戒剣を突き立てる!

音を立て、弾かれる刀身!

しかし緋影は引かず、斬りつける!

何度も、何度も…同じ箇所を執拗に!

彼が今、何をしようとしているのかーー既に察しがついていることであろう。

『雨垂れ岩を穿つ』。

古来より伝わりし諺を、今ここに実践しようというのだ!

 

「ウォ…ッ!?」

 

そして、成就の時が来た!

ピシリと音を立て、スコルベルが怯む!

彼が己の腹部を見やると、そこにはほんの僅かではあるが綻びが生まれていた!

なんたる慢心!故の結果!

 

「余裕ぶって受け続けたのが仇となったようだな…!」

「貴様ーッ!」

 

自信を崩され、憤慨するスコルベル!

しかし、ゼロ距離を維持されたこの状況、軍刀の長さでは満足に攻撃は望めない。

そこまで考慮した上でーー緋影はあえて懐へ飛び込んだのだ!

しかし、スコルベルにもまだ手はあった!

ずるり、というぬめりのある不快な音と共に、彼の背から何かが飛び出した!

尻尾!蠍の尻尾である!

鋭い針を緋影へと向け、うねり来る!

それを見た緋影は慌てて地を蹴り、バックステップ回避。

先端が地面へと突き刺さる。

そこからジワリと何かが染み出し、大地を蝕んでゆく!

周辺の草花は瞬く間に枯れ、崩れゆく。

強烈な毒素であった。

まともに食らえば、魔戒騎士とてただでは済まない。

再び距離が開き、仕切り直しの形となる両者。

しかし、縦横無尽にうねるあの尻尾がある以上、近づくことが難しくなってしまった。

ちぃ、と舌打ちし、睨む緋影。

 

どうにかして、あの空けてやった穴を広げることが出来ればーー

緋影は思考する。

先程までの連続攻撃はおそらくできない。

途中で尻尾の妨害を受けるであろうためだ。

如何にして近づき、かつ強烈な一撃を与えるべきか?

そんな時。

 

「思いついたよ、緋影!」

 

相棒の声が、彼の鼓膜を震わせた。

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