羅旋 -RAZEN- 〜双極ノ剣〜   作:さぼてんmark.2

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杵 柄 ⑥

「ソルバ、どうするつもりだ?」

「よく思い出して、奴にぶつけられそうなもの…あるでしょ?」

 

少し考え、そして思い至った。

丁度それは、つい最近思い返したばかりーー確かにあれならば。

緋影は頷き、魔導筆を取り出すと天へと翳す。

筆先が輝くと、放たれた閃光は花火めいて夜空に消えた。

 

「…?」

 

行動の意味が理解できず、天を仰ぐスコルベル。

暫し待てどーー何も起こらず。

 

「何をするのかと思えば…ハッタリか?」

 

嘲笑うようにそう言って緋影へと向き直り、切先を向ける。

しかしだ。

その言葉が間違いであった事をーーすぐに思い知ることとなる。

何故なら。

 

ガーーション。

ガガッーーション。

 

奇怪な駆動音と地響きを立てながら、カエルめいた跳躍で緋影の背後より迫り来る一つの影。

それは緋影の頭上を飛び越すとーー両者の間へと割って入り着地。

威嚇の如く煙を吹かす、逆関節の脚部を持った異様な物体。

号竜と呼ばれる魔導具によく似ているが、違う。

箱状の上部パーツには、頭にあたる部分はなく空洞だ。

それは正しくーーありし頃の緋影が作り上げ失敗と終わったあの魔導具、その改良型であった。

乗り込んで操縦するという観点を取り去り、脚力補助や強化のみに機能を絞ったものがこれである。

魔導具は緋影の方を向き直ると、その腰から下を覆い装着される。

きちんと脚の動きに追従するかを確かめ、緋影は再び構えを取る。

 

「己の実力では敵わぬと踏んだか?臆病者め…!」

「確実な方法を取ったまで。貴様を葬るためにな」

 

煽りをバッサリと払い捨て、睨む。

そして脚部に力を溜め、跳躍!

先程までとは比較にならない程の高度へ上昇する!

「イイーーヤァッ!」

そして宙で身を翻し、跳び蹴りの構え!

各部に備わった噴射口より炎が舞い、加速!

それを尻尾により防御しようと試みるスコルベル!

だがーー

 

「なっ…!?グオオッ!」

 

粉砕!そして直撃!当然脚部は分厚いソウルメタル製だ!

毒針を微塵も通さず、圧し折る!

「クッ!」

スコルベル、たまらず身を引いて退避!

「デェアーッ!」

地面を窪ませて着地した緋影、隙を与えず追撃のソバット!

「ウオォーッ!?」

装甲部に空いた穴へ、鋭い蹴りが突き刺さる!

見よ!そこを中心点とし、亀裂が広がってゆく!

「ハーッ!」

そして、追撃の膝が浴びせられる!

寸分狂わず、二度の衝撃!

耐えきれず、表皮を覆う鎧は砕け去った!

大きく体勢を崩すスコルベル!

頭を上げ眼前を見やると、そこにはーー

 

「オオオオオーッ!」

 

既に鎧を纏い、走りくる羅旋の姿が!

咄嗟に刀を横に構え、防御姿勢を取る!

 

「なっ…!?」

 

しかし、錆びついた刃では防げない!

鉄拳が唸り、刀身を叩き折る!

そして返す勢いのままーー青い柄の魔戒剣による一閃が放たれた!

身体を袈裟に裂かれ、悶絶するスコルベル。

その姿は老父のものへと戻り、フラフラと折れて地に突き刺さる刃に手を伸ばす。

 

「おお、おお…ワシは…ワシは…斬らねば…鬼畜どもを…この国を穢す邪悪を…」

 

そんな様子の彼へ、羅旋はぴしゃりと言い放つ。

 

「貴様にはもう何も斬れん。過去に囚われたまま錆びついたのだ。その刀と同じようにな」

 

「そんな…オオッ…ウォォ…」

 

静かに断末魔を残し、スコルベルは消滅。

それを見届けると、羅旋の鎧は天へと還り緋影の姿へと戻った。

そして月明かりに魔戒剣を翳すと、何やら思い詰めた顔で暫し、それをじっと見つめていたーー

 

「最も…俺も同じ様なものかもしれんがな」

 

そう、ぽつりと呟いて。




別れ。
それは時として唐突に襲いくるもの。
残された者がどう感じ、動くのかは人次第だけどね。
次回、「兄弟」!
分かたれし双子星の物語が今、語られる。
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