PrecureStageON!   作:主氏レム

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第11話:時計塔の対決!夢見る乙女の救出作戦

 

 

 

 

 

「みんなまだかな〜、そろそろステフォンの持ち主さんも来てる頃かな〜」

 

 

 

 時計塔の上、闇の使者が一人、脚を投げ出して下界の様子を観察していた。随分と暇そうにしているが、暇にならないために自分が知っている怪物の姿をした欠片をざっと数十体ほど投げ飛ばしたのだが、彼らの鳴き声が全く聞こえなくなってしまった。

 ルージュ達でも手こづってしまう程度に繰り出したのだが、倒されてしまったのだろうか。ミルキィローズもいるからありえない話でもないが。

 

 もしくは、すでに彼女の言うところの“ステフォンの持ち主”がこの世界に現れて、ルージュ達と合流して欠片を倒して行ったかのどちらか。

 

 隅には、自分が人質的な意味合いで連れ去った“この世界の自分”が気を失っている。別に、攫おうが攫わまいが、どっちだってよかった。

 

 

 

「こうでもしないと、あの持ち主さんは手加減しちゃうんだろうなぁ」

 

 

 

 ────自分は彼女が戦ったという他の4人とは違い、他の世界であれど仲間達と戦うことに対しての躊躇はしない。いや、する資格はきっとない。こうなることへの覚悟はしている。

 

 

 

「……ああああああ!!!ルージュ達にどこで待ってるか伝えるの忘れてた!!」

 

 

 

 そりゃいつまで経ってもみんな来ないよ〜!と、肝心なことを今思い出した少女は、頭の上から直接飛び降り、急いで彼女達がいるであろう場所に走るのだった。

 

 立場がなんであれどの世界の彼女も、ドジやら何やらをかましてしまうのは変わらないようだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

第11話:時計塔の対決!夢見る乙女の救出作戦

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 『Yes!プリキュア5Go!Go!』の世界に来たキュアコンプリートこと繋巡は、世界に来て早々ネオフュージョンの欠片の大群に囲まれていた。しかし、この世界のプリキュア達と共闘しつつ、この場のピンチをどうにか切り抜けることができた。

 しかし、この世界に現れたというキュアドリーム似の“闇の使者”により、この世界のキュアドリームが連れ去られてしまったという。そこで、新たなキュアウェポン・ブロッサムミラーの力を借りて、彼女達がいるであろう時計塔を目指して走っている途中であった。

 

 

 

「時計塔ってあの角曲がったらすぐ?」

「そう!そっちが近道だから!」

「なるほどさすが地元民」

 

 

 

 ブロッサムミラーが指し示す光と、この街を誰よりも知っているルージュ達の案内により、時計塔への道は迷わずに進めていた。

 

 

 

「これは本当に突拍子のない思いつきなんだけどさ……闇の使者が突然その角から飛び出してきたらどうする?」

『え、えぇぇ???』

『本当に突拍子ないね!?』

『ドリームならあり得るの、かなぁ……???』

「まるで少女漫画でありそうな展開ね」

「『いっけな〜い、遅刻遅刻!』的なやつですか!?」

「いやいやそんなこと真面目に言ってる場合!?そんな偶然あるわけ────」

 

 

 

 コンプリートによる本当に突拍子のない思いつきに驚くが、ミントやレモネードが真面目に考えてくれる。ただそんなことはしているほどの余裕があるかどうかと言われると怪しいのでミルキィローズがしっかり突っ込もうとした。

 

 

 

「うぐっ」「わあぁっ!!」

 

 

 

 時計塔周辺の広がりに出る角を曲がろうとしたところ、コンプリートがちょうど飛び出してきた誰かとぶつかった。完全に見えていなかったためにコンプリートは避けきれず、しっかりぶつかってしっかりよろけた。一方、向こうから走ってきた方はコンプリートに弾き飛ばされたかのように尻餅をついてしまったようだ。

 

 

 

「ほ、本当に誰かとぶつかったわよ……?」

『大丈夫ですか!?』

「いたた……あたしはなんとか……」

「も〜前見て走ってよね……」

 

 

 

 ぶつかってしまった側はなんとか立ち上がり、その姿をコンプリート達に晒す。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……ああああ!アンタは!!」

「……あ!ルージュ達だ!」

「え……あ、闇の使者じゃん」

 

 

 

 その姿に、ルージュ達は見覚えがあった。その人物こそ、キュアドリームを連れ去った本人だったのだから。

 彼女の光のない紅い瞳がキラキラと輝いていて、謎のアンバランスさが妙な雰囲気を醸し出している。黒いローブを羽織っていたりと、今までの闇の使者とは何かが違う。

 

 

 

「どこで待ってるか伝え忘れちゃって、伝えに行こうって思ったんだけど……その必要はなかったみたい。“ステフォンの持ち主”さん、だよね?」

「ブロッサムのおかげでなんとかなったんだけどね……君は、“闇の使者”でいうところのダークネスドリームって感じかな?」

「うん、そうだよ!よくわかったね!」

 

 

 

 闇の使者もといダークネスドリームは、ニコニコ笑顔を崩さぬまま立ち上がる。彼女の周囲には、欠片が姿を変えた怪物が数体現れている。

 

 

 

「この世界のドリームは、時計塔の上で眠ってるよ。助けに行ってもいいけど、ちゃんとたどり着けるかな?」

『ホシイナーァァァ!!!』

「ルージュ!コンプリート!ドリームをお願い!」

 

 

 

 アクアに頼まれ、コンプリートとルージュは時計塔を目指す。あの上へ直接行くには、ハッピーウィングに頼る他ないだろう。

 それを予知してか、ダークネスドリームはその手に紅い光を集め、それを握りしめる。それは細い刀身と針のような切先を持つレイピアのような形状となり、飛び上がってコンプリートの方に剣先を突き出す。

 

 

 

「おっと」

「ちょっ……きゃあ!?」

「ル、ルージュ!」

 

 

 

 剣先をなんとか避け切るも、今度はルージュに標的を変えてその剣先を突き刺そうとしている。

 

 

 

『な、なんでルージュまで?!』

「……狙いはあたしじゃないの?」

「あたしね、ピーチ達みたいほど上手に手加減できないし、優しくもなれないし、なっちゃいけないの。だからこうして、知ってるみんなに対しても、躊躇わずに戦える」

 

 

 

 さも「当たり前だが?」とでもいうように、無邪気な笑顔で首を傾げる。プロトキュアたちはかなり警戒していたようで、まあきっと大丈夫だろうという気持ちでいたが、そんな甘い話ではないようだ。彼女は、かなり覚悟を決めている。

 

 

 

「近接で戦える武器がないとちょっと部が悪いかも……!ルージュ!あたしに捕まって!」

「え、ええ!」

『CureWeapon!Happy!』

 

 

 

 流石にまともに相手をしていたら勝てないと悟り、先に連れ去られた方を見つけようと思い立つ。コンプリートはルージュを担いで、翼を展開し上空を舞う。

 

 

 

「逃がさない!ダークネス・シューティングスター!」

「ぐ……っ!」

 

 

 

 ダークネスドリームも彼女達を追いかけるため、黒い闇を纏った突進攻撃で撃ち落とそうとする。人一人を担いだまま闇の使者の攻撃を避けるのはある意味至難の業であり、煽られて落ちないようにするので必死だった。

 

 

 

『うわわわわっ!?』

「ちょっとこの子覚悟決まりすぎてるし容赦もなくない?」

「このままじゃ本当に落とされるわよ!?」

『ここは私が……!』

 

 

 

『CureWeapon!Blossom!』

『PowerCharge!Passion!』

 

 

 

 ステフォンから出現したブロッサムミラーの鏡面から放たれる赤い光に包まれる。光に包まれた彼女達の姿は半透明になっているが、特にダークネスドリームは容赦無く彼女達につっこんで行く。

 突進が直撃したのはいいが、半透明の“鏡像”はガラスが割れるように砕け散った。これは分身のようだ。

 

 

 

「あ、あれ!?どこに行ったの!?」

 

 ゆっくりと降下しながらコンプリート達を探すが、周囲にいる気配はない。

 

 

 

 

 

「……おっと」

『テレポートした!』

「ど、どういうこと!?……って、のぞみ!!」

 

 

 

 コンプリートとルージュが飛んだ先は、目指していた時計塔の上部分。鐘が釣り下がる場所は人が入れるようなスペーずになっており、その隅の手すりによしかかるように、キュアドリームであろう中学生が眠っていた。

 

 

 

「その子がドリーム?変身解けてるね……、お、おーい、大丈夫?」

「のぞみ!のぞみ、起きて!」

「うぅ……うーん……?」

 

 

 

 二人に呼びかけられて、閉じていた瞼がゆっくりと開く。

 

 

 

「……あれ?ここって、時計塔の上……?ルージュ?も、もしかして、助けに来てくれたの!?ありがとう!」

「のぞみ!あんた、何もされてない!?」

「あたしは大丈夫だよ!あれ?あなたは……?」

「あたしは今はキュアコンプリートだけど繋巡。君をここに連れ去った子に用があって助けに来たの」

「コンプリートって言うんだね!あたし、夢原のぞみ!」

「まあ、挨拶してる場合じゃあないんだけど……」

 

 

 

 そう誰かが言った瞬間、どこに飛んだか検討ついたダークネスドリームが、レイピアを構えてこちらに飛び上がって迫ろうとしていた。

 

 

 

「みーつけた♪」

「わ、感動の再会だったのに」

「のぞみ!ちょっと掴まってて!」

「え、ちょ、うわあああああ!?」

 

 

 

 流石にまずいと感じ、二人はのぞみを抱えて時計塔の上から飛び降りる。どうみても生身でやるとタダじゃおけないことが起きそうな高さだが、プリキュアだからこそできる芸当である。地上に逃げようが、闇の使者はしつこく自分たちを追ってくる。

 ルージュに抱えられたままののぞみは、首に下げていたキュアモを構えた。彼女も変身するつもりだ。

 

 

 

「プリキュア・メタモルフォーゼ!」

 

 

 

 光に包まれた彼女は、桃色の蝶を模したようなプリキュアの姿に変身する。二つ縛りだった髪がドーナツみたいな輪の形に結われている。

 

 

 

「この……っ!」

「はぁっ!!」

 

 

 

 ダークネスドリームが振りかざす剣先を、プリキュアにようやく変身した彼女がルージュから抜け出し、蹴りで受け止めた。そしてお互いに距離を取り、地上に降りてばちばちと対峙する。

 

 

 

 

 

「大いなる希望の力!キュアドリーム!」

 

 

『ドリーム!』

「みんな、お待たせ!」

 

 

 

 なんとか戻って来れた少女を待っていた地上の仲間達が、彼女の名前を呼ぶ。呼ばれたドリームは仲間を心配させまいと笑顔で応えた。プリキュア5が今ここに、再集合したようだ。

 

 

 

「あーあ、みんな揃っちゃった……でも、あたし負けないよ?」

『ホシイナーァァァ!!』

『まだいる!?』

「出血大サービスかな?」

『全然嬉しくないサービス!!』

 

 

 

 ダークネスドリームの声に呼応するように、まだまだ増える欠片たちが7人の戦士たちを追い詰めようと動き出す!どうやら本格的に容赦をしてくれないらしい。

 

 

 

「みんな、行くよ!」

『Yes!』

「……あたしも釣られて言っちゃったけどまあいいか」

 

 

 

 ドリームの掛け声で、コンプリート達も反撃のために走り出す。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『ホシイナーァァァ!!』

「プリキュア・エメラルドソーサーッ!!」

 

 

 

 欠片が振り下ろす拳を、ミントが放った緑色の光の円盤で押し返す。押し返された欠片は後ろに踏ん反り返る。

 

 

 

「プリキュア・ファイヤーストライクッ!!」

 

 

 

 踏ん張って体勢を戻そうとする欠片に向けて、ルージュが蹴り飛ばした火球でさらに追撃を与えられて耐えきれず、欠片は消滅する。

 

 

 

「プリキュア・プリズムチェーンッ!!」

『ホシイナーァァ!?』

 

 

 

 レモネードが操る黄色の弾ける光の鎖が欠片に巻きつき、その動きを封じる。どうにか抜け出そうとするが、それを許さぬように上空に誰かが飛び上がる。

 

 

 

「プリキュア・サファイアアローッ!!」

 

 

 

 アクアが放った数本の水の矢が欠片を貫き、その威力に押し負け消滅してしまう。

 

 

 

「邪悪な力を包み込む、バラの吹雪を咲かせましょう!ミルキィローズ・ブリザードッ!!」

 

 

 

 ミルキィローズの拳で怯んでいた欠片数体が、彼女の放った青いバラの花吹雪に包まれ浄化されてゆく。欠片の方はプリキュア達によって無事劣勢に追い込まれつつあった。

 

 

 

「はぁっ!」

「うわわっ、やっぱ剣的な武器ないときついかも?」

 

 

 

 一方のコンプリートは、ダークネスドリームの猛攻を避けることに必死だった。自分は素手であるがキュアウェポンを使うことができればなんとかなる。現在その手には手鏡が握られている。

 しかし相手はレイピアというリーチの長い得物持ちである以上、反撃に有効になりそうな手段がかなり限られてしまう。

 

 

 

「コンプリート!わあっ!?」

『ドリームまで狙われてる!?』

 

 

 

 さらに本来の目的であるコンプリートと同等に、こちらの世界のドリームまで狙われている。本当に容赦という言葉がない。みんな等しく狙われている。

 闇の使者が放った鋭い突きが、コンプリートの前髪につけられたリング状のガラスの髪飾りを掠める。壊されてはいないが、ガッツリ跡が付いてしまっている。

 

 

 

「ひえっ」

「わっ……?!」

 

 

 

 跡がつくほどの威力が外れたことへの安堵と、これが当たっていたら危うく動けなくなるところだったという恐れから、コンプリートの口から気の抜けた声が漏れる。

 しかし、さっきまでこちらを絶対に逃さない強い意志で攻撃を繰り返していた彼女が、若干驚いた様子で立ち止まる。まさか本当に当たるなんて思っていなかったとでも言うように。

 

 

 

『と、止まった……?!何?!何が起きたの!?』

「わからないけど……これはチャンスでは」

 

『PowerCharge!Rouge!』

 

 

 

 鏡面に情熱の赤い炎が宿り、鏡像のように現れたコンプリートの分身が、一瞬だけ立ち止まったダークネスドリームを囲う。

 

 

 

真実映す純情の花(トゥルーフォルテストライク)ッ!!」

「……!!」

 

 

 

 分身達が持つ鏡から放たれた真っ赤な火球が、ダークネスドリームを狙う。我に帰った彼女は、自身のピンチに気づいてすぐに飛び上がって避ける。

 

 

 

「プリキュア・シューティングスターッ!!」

「……あ」

 

 

 

 コンプリートのはなった技を避けて油断していた彼女の元に、光を纏ったドリームが彼女に向かって飛んでくる。

 こっちも避けるが完全には避けきれず、風圧に押されて体勢を崩す。標的を失った突進は、地上にいる最後の一体になった欠片にぶつかり浄化させる。

 

 

 体勢を崩した今なら、自分の技をしっかり当てられる。

 

 

 

「今らいける!プリキュア・ポップンロケットシャワーッ!!」

 

 

 

 自分の状況を理解し、逆に突き破ってやろうと闇を纏った突進で突き進んでくるダークネスドリームを、無数のハートの激流で受け止める。

 今まで闇の使者を一時的な無力化にまで持っていったこの技が、彼女に対して何も効いていない。むしろうまく掻き分けられて、今にもこちらへ向かってきそうだった。

 

 

 

『お、押し返されちゃう……!!』

「ぐ、強い……けど……絶対、負けない!!……ぅ」

 

 

 

 コンプリートの髪飾りであるガラスのリングが煌めいた一瞬、とんでもないパワーがコンプリートの体に流れ込む。

 

 放たれていた無数のハートは突如一つのハートに集約され、弾丸のようにダークネスドリームの胸のクリスタル向けて弾き出され、彼女の体を貫くように被弾した。

 

 

 

「……ん!?」

「あぐ……っ!?」

 

 

 

 紅いクリスタルごと撃ち抜かれたような感覚に陥ったダークネスドリームが、膝から崩れ落ちた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「だ……大丈夫!?」

 

 

 

 今あたしは何を繰り出したんだと、放ったコンプリートも驚いた。

 

 自分はただ必殺技を放っただけなのに、突然力が溢れ出したと思えば、とてつもないパワーが詰まったハート型のエネルギー弾を放ったのだ。彼女からしてみれば、ダークネスドリームを撃ち落としたように見えてしまったのだから、驚いた上に心配になって駆け寄る。

 

 ダークネスドリームはあのハートの弾丸を喰らった胸部を押さえつけうずくまっていたが、コンプリートを見つけるや否やすぐに立ち上がり、再びレイピアを構える。

 痛がっていたものの、肝心な無力化までには至っていないようだ。

 

 

 

「……っ」

「はぁ……はぁ……、あ、あはは……!なーんだ、ステフォンに宿る力ってまだまだそんなにあったんだ〜。ちょっと痛かったけど……」

『うっそでしょ!?』

『あんな強い光の力を受けても、全然元気のままなんですが!?』

「あ、あの子、まだやる気なワケ……!?」

「諦め悪すぎるでしょ……!!」

 

 

 

 ステフォンの中のピーチとブロッサムが信じられないと言った様子で驚愕し、ルージュやミルキィローズは引き攣った表情で若干の絶望感を滲ませている。あんなに苦戦した相手を待たしてもしなければならないのだ。

 どちらかといえば今回は、闇の使者よりもコンプリートやドリーム達プリキュア5側の体力がギリギリだ。ダークネスドリームだって体力を持っていかれているはずなのに、その様子を表に全く出していない。

 

 

 

「こんな強い力は、君みたいな“ただの中学生”が使っていいものじゃないよ、これは……」

「た、確かにあたしもドリーム達もただの学生だけど……それでも、守らなきゃいけないものがあるから戦ってること、あなたもわかってるよね」

「そうだよ?分かってるからこそ、言ってるんだよ、ねえ……っ!!」

 

 

 

 そのまま彼女は紅い瞳をギラつかせ、コンプリート達の方にレイピアの剣先を構えて笑顔で駆け出してゆく。

 まずい、彼女はまだやる気だ。己の限界が来ようとも、目的を果たすまでは絶対に諦めないつもりだ。プリキュアの代名詞である『絶対に諦めない』『絶対に負けない』が、全く別の方向で発動している。

 

 

 

「あーこれ第2ラウンドってこと?この状況で?うっそでしょ」

『コンプリート!どうする!?』

「どうするもこうするも、こうなったら向こうの気が済むまでやれってことじゃん……っ」

「みんな!まだ行ける?」

「……っはい!」

「私たちも諦められないわ!」

「とにかく、彼女を止めるわよ!」

 

 

 

 ドリームの声かけによりすぐに戦闘態勢に入る。コンプリートもラブリーショットガンを構え、エネルギーを溜める。向こうがあんなに元気だから、きっと自分たちはこれで一気に吹き飛ばされるかもしれない。それでも向こうが逃げ出すつもりがないのだから、こっちだって守るために戦わざるを得ない。

 

 笑顔のまま飛び上がったダークネスドリームの、構えたレイピアの剣先が、コンプリートに迫る。コンプリートは彼女の胸のクリスタル目掛けて、エネルギー弾を放とうと、光溢れるショットガンの銃口を向けた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……えっ!?」

「……え?」

 

 

 

 互いの攻撃が、互いに届くことはなかった。

 

 なぜなら、コンプリートとダークネスドリームの間に乱入者が横入り、黄金色の光のバリアで、二人が繰り出した攻撃が受け止めていた。光の粒が弾ける中、バリアで思い切り押し返される。

 

 

 

「はぁっ!」

「うわっ」「きゃあっ!?」

 

 

 

 エネルギー弾を放ったコンプリートは弾かれたそれを避けるだけで済んだのだが、直接攻撃に出たダークネスドリームの方は大きく吹き飛ばされ、とうとう地面に倒れた。レイピアはもっと遠くの方に弾き飛ばされ形状維持できず、消滅したようだ。

 喧嘩の仲裁に来たような感じで現れたので一瞬味方かと期待したが、闇の使者特有の黒いコスチュームと紅いクリスタルに紅い目と、どう考えてもこちらの味方ではないのは確かだ。そして、ドリーム同様にローブを羽織っている。

 

 

 

「……ごめんね〜、ドリームってば怪我しても動こうとするから、びっくりしちゃうよね」

「あ、あなたは……」

「闇の使者増えたんだけどどなた……?」

『え、ちょ、ちょっと!?ドリームの次は、ブルームまで出てきちゃった!?』

『彼女もブラックに止められてなかったっけ!?』

「え、何?今止めに入ってきた子も手強い方に入るの?あたし本格的に消されそうになってる?」

『何でそんな呑気な?!』

『自分の危機だよ!?』

「え?やっていいならやるけど……今日はそんなつもりなかったんだよなあ……」

『うわああああそっちも乗らなくていいから!』

 

 

 

 オレンジがかった明るい色の髪を束ねた闇の使者────ダークネスブルームは、屈託のない笑顔で話しかけてくる。アクアの問いかけに答えず、弾かれて倒れたダークネスドリームの方に歩み寄った。本当に、彼女が戦うつもりは一切ないようだ。

 

 

 

「痛たたた……!」

「みんなから聞いたよ、ブラックに内緒でこっちにきたって。もう少しくらい待ってたっていいのに……」

「ぶ、ブルーム……何で止めたの……!?絶対あたし今なら行けたよ!」

「あんな威力のコンプリートの力を受けてたら、動くの辛いでしょ。その様子じゃ本当に止まらなくなりそうだったし」

「い、いつから見てて……わ、ちょっ……!?」

「ドリームを一人で止められるのはあの人か私しかいないんだから、勘弁してよね全く……あれ、何これ」

 

 

 

 そのまま彼女は、ダークネスドリームが抵抗できないように担ぎ上げる。担がれた側はジタバタしているが、ブルームは全く意に介していない。

 それどころか、彼女のそばに転がっていた桃色の光の玉を見つけ、空いた片手で拾い上げる。それはいつも闇の使者がコンプリートの技を受けた時に飛び出してくる、プロトキュアの元らしき物体。おそらくあの世界で水晶の中で眠っているプリキュア達の魂らしきもの。

 しばらく指で摘んで転がしていたが、特に興味を持つことなくコンプリートの方に投げ渡す。

 

 

 

「それはあげるよ。特に私たちの体から飛び出しても大丈夫そうなやつだし」

「え、えぇぇ?大事なものぽいのにいいの?」

「だって、別に動けなくなってるわけじゃないし、放っておいてもいいのかなって」

「そ、それならありがたくもらうけど……」

「今回はドリームを回収しにきただけだから見逃すけど、次会う時はよろしくね〜」

 

 

 

 それだけ告げて、闇の使者一人を抱えてダークネスブルームはどこかに消えた。

 一体何だったんだろうと思ったが、自分が苦戦したドリームを弾き飛ばした時点で、どう考えても厄介な相手だなと直感した。今後彼女とも対峙することになるのだろうという事実が、心に重くのしかかる。

 

 

 

「な、何だったのあれ……?」

「助かったというよりも、見逃されたという感じだったわね……」

「こ、コンプリート!大丈夫だった!?」

「あたしは何とか……ドリームこそ、連れ去った闇の使者に何もされてない?」

「うん!全然平気!」

 

 

 

 こちらのドリームは連れ去られたとはいえ特に何もされていないようだったし、さっきも一緒に戦っていたので本当に大丈夫そうだ。連戦を覚悟したが思わぬ乱入によって、ネオフュージョンと闇の使者の魔の手がこの世界から退いたようだった。

 まあひとまずは、一件落着でいいらしい。

 

 

 

 

 

 もう一つ。ダークネスドリームから飛び出したであろう光の玉が、ステフォンの中に吸い込まれていった。

 そして、いつものようにコンプリートの視界はステフォンから溢れた白い光に塗りつぶされた。あの世界に、意識が飛んでいく。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ほらもうそうだよね?分かってるんだから」

 

 

 

 ステフォンから溢れた光が収まると、コンプリートの意識と視界はあの水晶の世界に飛ばされていた。少しずつ、この世界が変化していっているが、今回はどんなふうに変わるのだろう。

 

 自分の視界の先に映るのは、プリキュアが眠る水晶の柱。今回はダークネスドリームと対峙したため、コンプリートが近くに立っている水晶の柱の中には、あらかた予想通りの人物が眠っていた。

 

 

 

「ドリーム、だよね」

 

 

 

 水晶の中で眠るのは、キュアドリームだ。

 

 彼女が眠る水晶の柱からは、淡く優しい桃色の光が溢れ出し、厚い雲が覆う天へと伸びていく。

 

 光が収まった後に周りを見渡すと、視線の先にはバラの花の庭園が増えていた。手入れされた赤いバラに囲まれるように、小さなガゼボ────公園や日本庭園的な場所によくある東屋のような西洋風の白い建築物が増えていた。歩けるなら近くで見てみたいが、残念ながらこの場からは動けない。

 

 

 

 

 

「やっとここに戻って来れた……」

「その声はルージュ?ということはこの世界のプリキュア5が……って、あれ?」

 

 

 

 聞き覚えのある声がしてそちらを向くと、光に導かれてこの世界に辿り着いたルージュ・レモネード・ミント・アクア・ミルキィローズが近くに現れた。しかし、何か違和感を持つ。

 

 

 

「……見た目違くない?」

「やっぱりあなたもそう思うわよね?」

 

 

 

 ミルキィローズはあっちの世界と同じなのだが、問題はプリキュア4人だ。白ベースにそれぞれのカラーが合わさったコスチュームで、バラモチーフというより、蝶モチーフの要素が強い。そしてキュアもではなく腕に何かしらのアイテムが煌めいている。

 確かこれは『Go!Go!』がつく前の変身アイテムではなかったか。

 

 

 

「おっかしいなぁ、なんでピンキーキャッチュで変身した時の姿になってんの?」

「ここにくる前は、キュアモがあったはずなのに……」

 

 

 

 ルージュやアクアですらも、なぜ自分たちの見た目が違うことになっているのかがわからない。何かしらのバグが起きているのだろうか。

 

 

 

「だ、大丈夫ですよ!私たち元気ですからね!」

「もしかすると、あなたが助けてくれたのぞみさん……ドリームの方に何かがあったのかもしれないわ……」

「ど、ドリーム側に?」

 

 

 

 心配するコンプリートをレモネードが励まし、ミントはとある予測を彼女に話す。

 今まではコンプリートの技を受けて浄化(一時的な無力化)を施したことでステフォンの中にプリキュアが集まり、この世界にも仲間達が集まってきた。

 しかし今回のドリームに関しては、自分の技を喰らってもピンピンしていたこともあって、完全に力を削いだわけではなさそうだった。

 

 

 

「……闇の使者の中でも何かあるのかな?」

「その闇の使者って奴らの中に、ドリーム達が閉じ込められていたかもしれないのね……」

「全くネオフュージョンの奴、ドリーム達にそんなことさせてるなんて……!」

「助けに行きたいんけど、今の私たちの体では……」

「そのためのステフォンで、あたしがいる」

 

 

 

 決意を秘めたオッドアイが、プリキュア達をしっかり見据える。

 

 この世界が崩壊した理由を知ることも、闇の使者の中に囚われているであろうプリキュア達を助け出すことも、コンプリートはやり通すと決めたのだ。肉体を失ってしまった彼女達のためにも、記憶がなくなっている彼女達のためにも、誰かがやらなければ誰も救われない。

 

 友達と言ってくれたラブリー達のためにも、自分だって頑張っていきたい。これはコンプリート────繋巡の我儘であり決心だ。

 

 景色が白み出す。そろそろ元の世界に戻される。

 

 

 

「大丈夫。あたしもこの力で何かできるなら頑張るからさ」

「……どうやらしばらくは、あなたに頼ることになりそうね……けれど、決して無茶はしないのよ?」

「安心して、休む時は休むから!」

「ふふっ。何だかドリームみたいな子ね」

「ドリームあの子、頼れるけどドジで天然で危なっかしいしなんか自分に無頓着なところがあるから、あんたも気をつけなさいよ!」

「お母さんみたいなこと言うねぇ……まあ、任せといて」

 

 

 

 ルージュにドリームについて何やら色々と託されたが、最初からそのつもりだ。果たして今の自分がどう見えているのかはともかく、彼女達に笑顔を見せておいた。

 

 世界は明転し、コンプリートの意識を元の世界に引き戻す。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……!」

『こ、コンプリート!おかえり!』

 

 

 

 ラブリーがこちらを覗き込んでいる。再びあの時計塔の前に意識が戻ってきた。

 

 

 

「コンプリート!突然倒れちゃったけど大丈夫?!」

「大丈夫!いつものことだから!」

「い、いつものこと……?」

『昨日言ってたあの世界に行ってたの?』

「そう。今回はルージュ達が辿り着いたらしいんだけど……そ、そうだ、ちょっとおかしなことが起きて」

『コンプリートも?偶然だね!あたし達の方もちょっとおかしなことが起きたの!』

 

 

 

 そう言って、ステフォンの画面を見せる。そこで眠っていたのは、猫耳と二頭身の、キュアドリームの姿をした精霊────プロトドリームだった。しかし、何やら見た目が違う。

 

 

 

「あたしがいる!」

「けど、見た目違くない?」

「私たちがナイトメアと戦っていた時と同じ姿をしているわ……」

 

 

 

 しかしこのプロトドリーム、あの世界で出会ったルージュ達と似たようなコスチュームを纏っている。何なら彼女だけ唯一のヘソ出しのコスチュームだ。一番わかりやすい。

 

 

 

『ど、どうしてドリームだけ違う姿なんだろう?』

「やっぱり……技をしっかり喰らっていないから?」

『でも、眠ってるだけで特に異常はなさそうだよね』

 

 

 

 何かしらのバグが起きているのかはわからないが、とりあえずこちらのドリームが起きなければ何もわからないだろう。

 

 時計塔の鐘の音が、乾いた響きを奏でて時間を告げている。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

<ネオフュージョンの世界 漆黒の城・闇の使者の大部屋>

 

 

 

 

 

「ただいま〜」

『ドリーム!!』

「あはは、まだいけると思ったんだけどな〜?」

「そのボロボロの状態でよく言えますね?!」

「もう絶対この子無茶したんだって!」

「誰か〜!ミラクル呼んできて〜!」

「私ここにいまーす!キュアップ・ラパパ!怪我よ治れ!」

 

 

 

 ブルームに担がれたままあの世界から戻ってきたドリームは、早速待機していた他の闇の使者達に心配されている。そのうちの一人であるダークネスミラクルによる魔法で、ある程度の怪我が治癒されていく。

 

 

 

「治したけど、とにかく今はまだ動かないでね?」

「わかってるよ〜!」

「本当にわかってる、よね……?」

「ドリーム!自分の体はちゃんと大切にしてね!生徒会長との約束だよ!」

「ハートも人のことが大概言えないよ!無茶する筆頭……」

「ほ、ホイップ!?アタシは自制しようと思えばできるから!それにみんなだってそうでしょ?」

「うぐ」

「まあそうなんだけども、絶対に二人ほどじゃないって思いたい」

 

 

 

 闇の使者達がドリームを囲んで話している中、ブルームは人の気配を感じて振り向く。

 

 いつの間にかネオフュージョンの”悪事”から帰ってきたブラックが、向こうの盛り上がりを避けて、一人フラフラと自室に戻ろうとしているところだった。疲れているどころか、彼女の頬には若干の傷がこさえられている。どうやら無茶をしていたのは、ドリームだけではないようだ。

 

 ドリーム共々、ブラックの事情をよく(・・)知っているからこそ、あれは今絶対に一人にさせちゃいけないと思い立つ。ひとまずブルームは音を立てずに彼女に近づき、背中に生える黒い翼を掴んで盛り上がっている方に連れ込もうとする。

 

 

 

「う……!?」

「ブラックってば、また一人になろうとする。ミラクルに傷治してもらおうよ」

「ちょ、ちょっと、ただのかすり傷なのに……!!」

「そんなことばかり言ってるから、私やドリーム以外のみんなが変に心配しちゃうんだって……」

「……あ!ブラック!?おかえり!いつの間に帰ってきてる!!怪我してる!?どこ掴まれてるのそれ!?」

「ブラック〜!私治しますよ!」

「情報過多すぎる……」

 

 

 

 ブルームに引っ張られたままのブラックに気づいたドリームが声を上げたことで、注目がそちらに移動する。

 

 

 

「聞いてくださいよブラック!あなたがネオフュージョンに連れ回されている間にドリームが!」

「あ〜!ブロッサム言っちゃダメ〜!」

「ど、ドリーム、アンタ勝手に行ったのね?私はまだ待っててって言ったのに……」

「だ、だって、ステフォンがあればブラックが『望んでること』もできるって言ってたし、あたしだって待ってるばかりじゃいられなかったんだもん!」

「……そうだ。ドリームはそういう子だったわ……」

「えへへ」

「あんまり褒められてないと思いますぞ!?」

「多分この子それ以外にも、普通にコンプリートに興味を持ったのもありそう……」

 

 

 

 『コンプリート』という言葉を聞いて、ブラックは少しだけ反応する。噂には聞いていたが、ドリームも苦戦してしまったらしい。

 

 

 

「……ドリームまで撤退させた、今のステフォンの持ち主……随分と面白そうじゃない……」

「……え?」

「あれ?この流れは……」

「まさか……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「────次、私が行っていいかしら?」

 

 

 

 紅く鋭く光る眼光が、闇の使者達に有無を言わさぬほどの威圧で言い放った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

<巡の世界 心野宮・私立光星中学校 2-B教室>

 

 

 

 

 

 闇の使者内が若干不穏な空気になり、巡に何かしらの脅威が迫ろうとしていることもつゆ知らず。

 プリキュア5の面々と別れて元の世界に戻ってきた巡は、すぐに学校に向かっていった。

 

 

 

「帯刀君!昨日はありがとう!」

「ぅお、あ、ああ……」

 

 

 

 教室に入ってすぐに行ったのは、昨日途中まで一緒に帰ってくれたりアドバイスをくれたりした帯刀廻へのお礼だった。まあまあ大きい声だったため、談笑中のクラスメイトが静まり返る。

 突然ありがとうと言われた廻は若干寝ぼけ気味だったために、何事だと理解が追いついていなかった。しかしすぐに昨日のことを思い返し、いつもの調子で返す。

 

 

 

「帯刀君のアドバイスのおかげで友達にちゃんと伝えられたし、むしろ前向きに捉えてくれたみたい」

「そ、そうか……俺はただ、自論を話しただけだが……」

「それでも助かったよ!本当にありがとう!」

「……!お、おう」

 

 

 

 巡に笑顔で言われ、廻は顔を僅かに赤く染めつつ、巡から視線を外して返した。流石にこの顔を見せるのはまずいと思ったのだろう。

 その後すぐに巡は後輩に呼ばれて教室を後にしたが、クラスの注目は廻に集まる。

 

 

 

 

 

「お、お前!とうとうめぐるんを振り向かせたか!?」

「繋のあんな笑顔、なかなかねえぞ!?」

「一歩進んだじゃん!おめでと〜!」

「今夜は赤飯だな!」

「う、うるせぇ……!お前らちょっと黙ってろよ……」

 

 

 

 巡は廻からの好意に気づいていないのに、他のクラスメイトには彼女への好意がバレバレなのはなぜなのか。

 

 

 果たして巡が彼からの気持ちに気づくのはいつの日になるのやら……。それは、神のみぞ知る事象でしかないのだろう。

 梅雨明けした6月下旬の青い空が、夏の訪れを告げている。

 

 

 

 

 

続く…

 




次回投稿日:5月11日(土)
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