PrecureStageON!   作:主氏レム

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今回はピンチ回ですね


第12話:初めての大ピンチ!?宿敵は黒い光

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……」

 

 

 

 ここはぴかりが丘、ぴかり神社のちょうど真上にあたる上空。空は、あいにくどんよりとした曇りである。それでも街の人々は、いつものような笑顔あふれる毎日を過ごしている。

 翼を生やした闇の使者が、そんないつも通りの日常を過ごす街の様子を見下ろしている。

 

 他の仲間にかなり無茶を言ってしまったが、今回は自分が“ステフォンの持ち主”であるコンプリートと交戦する予定である。

 

 

 

「……」

 

 

 

 

 

『えぇ!?ブラックが出るの!?マジで!?』

『来たーー!!』

『と、というかそれは大丈夫なんですか!?一応、ネオフュージョンには何かしら言っておいた方が……』

『私はアイツのお気に入り認定されてるのよ?今更止めるだなんてしないでしょ』

『でも、今帰ってきたばっかりなのにもう行くの?』

『まさか……流石に休んでから行くわよ……』

『ま、まあ……あたし達は大丈夫だけど……』

 

 

 

 他の仲間達には無論驚かれたし止められそうにもなったが、少し話せばわかってもらえた。

 仲間達を退ける程度の力と覚悟を持った今の持ち主がどんなものなのかが気になってはいるんだ。ピーチの時に一度姿だけを見たことはあるが、本当に一瞬だけだったので彼女がどんな人物なのかはわからない。それでも、ステフォンとラブリーを持っているのなら、早急に彼女から回収しないといけない。

 

 そのためならば、どんな手段を使おうとも、本当の悪役に成り下がろうとも、“あの世界”のために────

 

 他の仲間達やこっちの事情を知るドリームは、「まあブラックの好きにさせよう」くらいのノリで了承してくれたが、ただ一人、若干乗り気じゃなさそうな様子の子はいるが。

 

 

 

『……何か言いたそうな顔ね』

『別に〜?ブラックが自分から行きたいだなんて言うこと自体、珍しいからびっくりしただけだよ』

『……そんなに?』

『うん。てっきり、私たちがステフォンを取り返すだけなのにコンプリートに追い返されちゃってるから、もしかして怒っちゃったのかな〜って』

『『『『『ギクッ……』』』』』

『別に怒ってないから。みんなが頑張ってくれていること、ちゃんとわかってる』

『『『『『ブラック……ッ!!』』』』』

『ふぅん……ならいいや。無茶しないでね』

 

 

 

 それだけ言って、ブルームは特に何も言うことなく了承した。彼女なりに無茶はするなと釘を刺したんだろう。

 

 でも、私には仲間達の優しさに甘えられる筋合いはない。許されちゃいけない。自分の手は、すでに他の世界にいる誰かの悲しみとぶつけられた憎しみで真っ黒に汚れてしまっている。

 

 そんな手で、彼女達の救いの手を触ることは許されない。

 

 

 

 

 

「……コンプリート、待ってなさい。すぐに呼んであげる」

 

 

 

 ダークネスブラックの周囲には、ネオフュージョンの欠片が複数個浮いている。欠片達はぴかりヶ丘中に飛び散り、落ちた先でこの世界由来の怪物の姿に変化し、やがて暴れ出すだろう。

 この世界のプリキュア達とステフォンの持ち主が、簡単に合流できないように手は打ってある。

 

 

 

 紅い瞳は、ステフォンを持つものを待ち続けている。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

第12話:初めての大ピンチ!?宿敵は黒い光

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

<巡の世界 心野宮・スーパーよりどり心野宮店>

 

 

 

 

 

 全国に17000店以上の店舗を展開するスーパーマーケット、スーパーよりどり。品揃えが豊富で、地元産の食材やよりどり独自のブランド製品の品質も高く、地域にとても愛されているスーパーである。

 

 7月上旬のとある真夏の休日。繋巡は今日の晩ご飯などのための買い物でその店に訪れていた。カートに乗せたカゴの中には野菜やら何やら色々と入っている。

 

 

 

「にんじん、じゃがいも、玉ねぎ、カレー用のお肉は買ったし、カレールーは家にあるからいいでしょ?あとはお茶のパックとパスタとかかな?」

[牛乳とお醤油は?切らしたって言ってなかった?]

「そうそれ。教えてくれてありがとう」

 

 

 

 ステフォンの中のプリキュア達にも手伝ってもらいながら、お買い物メモに書かれたものを次々にカゴの中に入れていく。流石に人がたくさんいるため、テキスト上でのやり取りにはなるが。おかげで結構助かっている。

 

 

 

[買ってるもの的に、今日はカレーかな?]

「うん。幸姉が作るから今日はあたしが買い物当番」

[す、すごい。しっかりと分業されてる……!]

「みんなにも手伝ってもらったし、おやつも買っていこうか」

[やったー!おやつだー!]

[何食べようかな〜?ね、ドリーム!]

[う、うん!]

 

 

 

 メロディに話しかけられ、何かを考え込んでいた様子のドリームは驚くが、すぐにいつも通りの笑顔で返す。ステフォンの中に新しく入ってきたプロトドリームは、自分たちが目を離した隙にこんなふうに考え込むことが多いような気がするのは気のせいか。

 プロトキュア達は皆、元々のプリキュア達と性格はほとんど同じである。ドリームも例に漏れず、ドジでおっちょこちょい、けれど前向きで気づけばみんなの中心に立っているような明るい女の子だ。

 

 

 

「闇の使者の中にいた時に、何かされたとかない?」

[う、ううん!?何もされてないよ!!]

「そ、そう……それならいいいけど……悩んでることがあるなら、いつでも相談に乗るからね」

[あ、ありがとう!あはは……]

[ど、ドリーム……]

「……プチシュー買ってくか……あれ?」

 

 

 

 お菓子コーナーへ足を進めていたところ、彼女の視線の先に小さな少年が現れる。小学校低学年くらいだろうか。少年は不安そうな表情でカゴを持ちながら、店内中を歩き回っている様子だ。今にも泣きそうだ。

 

 

 

[なんだろう、迷子かな……]

「ねえ、君!どうかしたの?」

「……!」

 

 

 

 少し気になって、巡は少年に声をかける。突然呼ばれて、少年はさらに警戒して表情を暗くする。突然名前も顔も知らない女子中学生に話しかけらたのだ。警戒もするだろう。

 

 

 

「急に話しかけちゃってごめんね。君が泣きそうな顔してたから、何かあったのかなって……。迷子?」

「え、えっと……その……」

 

 

 

 少年は不安そうに、辿々しく話し始める。

 少年は、お母さんにおつかいを頼まれて、初めて一人でスーパーに来たらしい。迷子じゃなくてよかったが、頼まれた商品がどこにあるのかわからず、店員に聞くのが怖くてずっと歩き回っていたらしい。

 

 

 

「うーむ……話しかけるの怖いもんね。お醤油を探してるなら、あたしも探してたしついてくる?」

「え……でも……」

「お菓子コーナーの一本前の列にあるんだよね」

 

 

 

 そう言って、巡は少年と共に醤油が置かれている調味料コーナーの方へカートを進める。すぐに辿り着いたそこに、少年が求めていた商品があったようだ。

 

 

 

「あ……あった……!ありがとう、お姉ちゃん!」

「どういたしまして。初めてのおつかい頑張ってね」

「うん!」

 

 

 

 ようやく笑顔を取り戻した少年と手を振って別れ、巡はさっきいたコーナーの方へ戻る。あの少年が安心した様子でおつかいをしてくれそうで、他人のことなのにすごく嬉しいと感じていた。

 

 

 

 

 

『巡ちゃんって、やっぱり優しいね!』

「え?そんなことはないんだけど……」

『さっきだって、おつかいに来た子を助けてたじゃん』

『いよいよマナちゃんを超えてきそう!』

 

 

 

 会計を済ませ、家に帰るために自転車を漕ぎながら、ようやく声が出せるようになったプロトキュアに、先ほどの少年とのやりとりを聞かれる。

 学校でも巡は世話焼きで困っている人を見逃せないというところがちょくちょくあったが、見ず知らずの少年にも手を差し伸べるとなるともはや聖人君子なのかと疑いそうになる。

 

 

 

「んー、個人的に、泣きそうな人や泣いてる人を見ると飛び出しちゃうというか、笑顔にしたいって思うんだよね」

『笑顔に……?』

「うん。というのも、そう思うようになったきっかけがあるんだけど────」

 

 

 

 巡が『泣いている人を見ると飛び出してしまう』という話は、プロトラブリーが初めて彼女に出会った時にも一度聞いたことがある。その時は彼女自身も危険を顧みずに飛び出していったため驚いてしまったが。彼女のその性質のきっかけとなった昔話を聞かせようとした時だった。

 

 ステフォンから聞きなれない、けたたましい着信音が鳴り響いた。サイレンとかアラートほどの無機質かんと本能的に恐怖を与えてくるような感じではないが、でかい音で鳴らされたら確実にビビるメロディではある。

 

 

 

『うわわっ!?なになになに!?』

「なんかこの上なくやばい音なってるんだけど」

『ど、どうしようこれ!』

「ひとまず家が近いから先に帰宅を急ごう。荷物も置きたいし」

 

 

 

 想定外の事象にプロトキュア達が慌てるが、巡は驚かず発揮される能天気さに近い冷静な判断を下したために、この時ばかりは彼女の能天気さを尊敬する。

 

 

 

 

 

 一度着信音は電池が切れたように止み、買い出した商品を冷蔵庫にしまい、すぐに自室に戻ってステフォンの『WorldTrip』を確認する。

 赤く点滅するのは、9時の位置にあるハートとリボンが描かれたマーク。そのマークは、ラブリーにとって見覚えしかないものだった。だってこれは、自分たちのチームのマークだもの。

 

 

 

「ハピネスチャージプリキュア……だよね」

『この世界の私たちに何があったの!?』

『でも、ラブリーの姿をした闇の使者は見ていませんよ……!?』

『着信音が鳴るほどって……まさかすでにネオフュージョンが侵攻して!?』

「それはもう大ピンチでは???」

『今までこんなことなかったのに……巡ちゃん!』

「今まで以上に気を引き締めないといけない気がする……準備は、いつでもできてるよ」

 

 

 

 巡はステフォンを操作すると、その足元にワープホールを出現させる。きっと、向こうの世界ではかなり大変なことになっている可能性が高い。それでも、友達を見つけるため、あの世界をどうにかするために、怯んでなんかいられない。

 

 星の様な煌めきが、虹の様なゆらめきが、自室との距離をどんどん遠ざけていく。出口は、すぐ近くに現れそうだ。この先、どんな世界が広がっているだろうか。

 

 視界が、白い光で塗りつぶされる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

<ネオフュージョンの世界 漆黒の城・闇の使者の大広間>

 

 

 

 

 

「ブルームって、ブラックと仲悪いの?」

「ぶふっっっ!?ゲホッ、ゲホッ……!!」

「わわっ!?だ、大丈夫!?」

 

 

 

 ハッピーからの曇りなき純粋な瞳で思わぬ質問を唐突にされ、ブルームは飲んでいたココアを吹き出しそうになる。惨事は回避したものの、反動で咽込んでいる。

 

 

 

「な、何をそんな藪から棒に……」

「だってさっきのやり取り、結構ギスギスしてたっぽいし……」

「ブラックとは普通の仲だよ!?すぐ一人になろうとするのは勘弁して欲しいけど!!そんなふうに見えてたの!?」

「ほ、本当……?」

「ホントホント!!むしろ、起きた順的はブラックのすぐ後くらいだから、付き合いは長い方なんだけど……」

 

 

 

 闇の使者には“起きた順”と言うものがあり、最初に起きたのはもちろんブラックである。ブルームとドリームはその後すぐに起きている。この二人が起きてから周期が開いて、ピーチ達が目覚めたらしい。

 付き合いが長いのと事情を知っている分、現在のブラックのことはある程度理解しているし、慣れ故の突っ込んだことをする時もあるが……どうやら後輩達にはただの不仲に見えているようだった。

 

 

 

「仲悪いように見えてるんなら気をつけないと……」

「変な事聞いちゃってごめんね!?喧嘩してるとかじゃなくてよかったぁ……」

「そんなに……?」

「だって、ブラックのこと一番知ってそうだから……」

「あー」

「あたし達は、ブラックがネオフュージョンに何させられているのかわからないけど、なんとなく嫌なことなんだろうなーって……」

「……」

 

 

 

 

 

『ごめん……やっぱり、これは私の責任だから……これ以上、優しくしないで……』

『……っ!!ブラックの……なぎささんの、分からず屋っ!!どうしてそんな重いものを、一人で全部背負おうとするの!?』

『っ!?』

 

 

 

 

 

 一度だけ、あの人と口論になってしまった時がある。あれはどちらかというと、お互いの思いがすれ違い、爆発したような感じではあるが、あれ以来あの人とは衝突したことはない……と思う。

 あれを経ても、あの人は何も変わっていない。一応自分もドリームも彼女が何をさせられているのかは教えられてるし、自分に関しては実際に見たこともある。

 

 

 

「……本当……大丈夫なのかな、あの人は」

 

 

 

 そんな呟きはあまりにも小さく、ハッピーの耳には拾われずに消えていく。

 

 後で様子でも見に行こうと、心の中で決意するのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

<ハピネスチャージプリキュア!の世界>

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『サイアークッ!!』

 

 

 

 

 

 真っ暗な雲に覆われたぴかりヶ丘は、ぴかりヶ丘駅前。

 サングラスをかけた怪物の姿をしたネオフュージョンの欠片が、人々が逃げ惑っているにも関わらず暴れて街を破壊しようとしている。

 何もこの怪物騒ぎは、駅前だけで起きているわけではない。学校、住宅街、公園、商店街など、人が集まりそうな場所で同時に出現して、突然暴れ出しているというのだ。

 

 

 

『こちら商店街!サイアークが1体いて、今止めてきた!』

『公園の方もなんとかなったわ!フォーチュンは?』

『それなら、中学校の方の応援が欲しい!こっちに3体くらい現れて、私1人じゃ捌き切れない!』

 

 

 

 この街のプリキュア達が、キュアラインと呼ばれるスマホ型の連絡ツールで連絡を随時取りながら、町中に現れた複数体の怪物騒ぎを収めるために戦っていた。現在、この街にいるプリキュアは彼女達4人だけのため、こうして

 

 

 

「プリンセスとハニーはフォーチュンを助けてあげて!私は駅の方のサイアークを止めてくる!」

『わかったよラブリー!』

『私たちもそっちを片付けたらすぐに行くわ!』

『そっちは任せたわよ!』

 

 

 

 ラブリーと呼ばれたピンクのプリキュアは、背中のリボンで空を飛び、全速力で駅を目指している。光の軌道を描きながら近づけば、駅前の広場で堂々と暴れる数体の怪物の姿があった。

 

 

 

『サイアークッ!!』

「いた!こらーっ、待ちなさーいっ!!ラブリー・ブラスター!」

 

 

 

 腕を組み前に突き出し、上空から熱線を怪物の一体に浴びせる。凍った心すらも熱々に溶かしてしまうほどの愛の熱量に耐え切れず、怪物は飴のように溶けて消滅してしまった。

 

 

 

「皆さーん!早く安全な場所に逃げてくださーい!」

 

 

 

 怪物がまず一体倒れたことで、逃げ道が確保される。呆気なくやられた様子に若干恐れをなして怪物の動きが止まっている間に、逃げ道を封じられていた人々に避難を促す。その上でもう一体の怪物に飛び蹴りを喰らわせつつ、怪物の注目を自分に集めて逃げる人々への視線を逸らせる。

 その一人である女の子が転んでしまい、怪物が女の子を捕まえようとその手を伸ばす。

 

 

 

「わ……っ!?」

「危ない────っ」

 

 

 

「コンプリート・ステージON!」

 

『CureWeapon!Peach!』

『PowerCharge!Peace!』

 

 

 

 ラブリーが気づいてすぐに飛んで行こうとした瞬間、どこからか別の声が聞こえ、その女の子の前に立った。その少女は盾を召喚し、盾に攻撃を与えた怪物に電撃を浴びせて痺れさせてしまう。

 

 

 

「……大丈夫?」

「あ、ありがとう!プリキュア!」

「どういたしまして。今のうちに逃げて」

 

『CureWeapon!Lovely!』

『PowerChage!Aqua!』

 

 

 

 プリキュアらしき少女は女の子を見送ると、すぐに怪物の方に向き合う。痺れた怪物は少女を狙って襲いかかるが、盾から拳銃に持ち替え、銃口から水の矢を数発放って怪物を迎え撃ち、後ろの方に押し返す。

 

 

 

「何も関係ない子供を泣かせるとはこれいかに……」

『なんでこんなに欠片が?!しかも色んなところに気配を感じるし……!』

「本格的にあたしを狙ってきてる?」

「おーい!」

 

 

 

 少女────この『ハピネスチャージプリキュア!』の世界にやってきた繋巡ことキュアコンプリートは、入ってきたと同時に怪物が泣きそうになっている女の子に襲い掛かろうとしたところを目撃し、迷うことなく変身して乱入してきた。

 そんなコンプリートの元に、この世界のキュアラブリーが舞い降りてくる。

 

 

 

「だれかはわからないけど、その女の子を助けてくれてありがとう!あなたもプリキュアなんだね!」

「あたしはキュアコンプリート。一体何が起きてるの?」

「それがあまりわからないの!突然、ぴかりヶ丘の色んな場所にサイアークが現れて、他のみんなと手分けして止めてるの!」

「なるほど……その怪物を操ってるっぽい人に用があったんだけど……まずはこの怪物をなんとかしないとね」

「うん!」

 

 

 

 コンプリートとラブリーは、出会って数秒だというのに背中を合わせて、まだ2体残っている怪物と対峙する。

 

 

 

『いったい誰がこの騒ぎを……』

『まさか……ブラックが……?』

『ぶ、ブラックが!?』

 

 

 

 ドリームが何かを察して表情を強張らせる。尋常じゃないほどに青ざめて、何かまずいことでもあるのだろうか。まあ、その話はまたの機会に聞いた方がいいかもしれない。

 

 

 

『サイアークッ!!!!』

「「はぁぁっ!!」」

 

 

 

 二人のプリキュアはほぼ同時に飛び上がり、拳を叩き込む。

 

 

 

「ラブリー・パンチングパンチ!」

 

 

 

 ラブリーが放つ光の拳が怪物の胴体を殴り、大きく上空に吹き飛ばす。まさか上空に飛ばされるとは思わなかったのか、怪物は拳から抜け出そうとするもののどうにもすることができず、怪物が消滅する。。

 

 

 

『CureWeapon!Blossom!』

『PowerCharge!Lemonade!』

 

 

 

 ブロッサムミラーの能力により分身し、分身達が持つ鏡面から放たれた光の鎖が、怪物の四肢を縛り動きを封じる。鎖を抜け出そうと暴れ出すが、動けば動くほど鎖の締め付けは強くなる。とうとう体がその圧力に耐え切れずに消滅してしまった。

 

 

 

「サイアーク自体は、そんなに固くない……?」

『やっぱりどこかにいる闇の使者を探さないといけないのかな……?』

「……?」

 

 

 

 駅に現れた怪物は全て消滅したものの、この場の緊迫感は拭えない。

 

 ふとコンプリートが上空を見上げると、黒い翼をはためかせて横切った何かを見た。

 

 

 

『コンプリート……?』

「今誰か……もしかして……!!」

 

『CureWeapon!Happy!』

 

「わ、待って!!」

『ラブリー!!』

 

 

 

 妙な胸騒ぎを抱えて、コンプリートは翼を展開してその何かを追いかける。ラブリーも追いかけようとするが、キュアラインからの連絡でそれは遮られる。

 

 

 

『中学校の方、なんとかなったよ!』

『駅の方は!?』

「わ、私も大丈夫!コンプリートっていうプリキュアがきて一緒に戦ったの!」

『コンプリート?だ、誰よそのプリキュア!』

「でも、すぐに別の何かを追いかけていって……ど、どうしよう!助けに行った方がいいよね!?」

『お、落ち着いてラブリー!まずはこっちの合流を急ぎましょう!』

『さっき神様から連絡があって、大使館の近くにも現れたみたいなの!』

「え、えぇぇ!?また!?わ、わかった!一度大使館の方で合流しよう!」

 

 

 

 コンプリートの方も気がかりだが、まずは仲間との合流と現れたサイアークの相手をしてから考えようと、ラブリーは安全になった駅を後に、大使館の方に向かっていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 コンプリートが飛んでいったのは、どこかの河川敷らしき場所。そこにいたのは、先ほどの怪物と、追いかけていた黒い翼を生やした何か……闇の使者の一人。

 

 

 

 一度だけ姿を見た、恐ろしい闇の使者。

 

 

 

 

 

「“StageON!System Smartphone”────ステフォンを持っているのはあなたね?」

「君は……この前の、ダークネスブラック……だったっけ」

『え……えぇぇぇ!?』

 

 

 

 コンプリートの目の前に現れたのは、以前『フレッシュプリキュア!』の世界にて、ダークネスピーチを回収して一瞬だけ現れた、翼の生えた闇の使者。

 リーダー格らしきその少女は相変わらず、コンプリートを鋭い目つきと険しい表情で睨みつけている。この前は柄にもなくフリーズしてしまったが、今回はまだ大丈夫だ。

 

 

 

『ブラックが!?本当!?』

「というかステフォンの正式名称ってそれだったんだ」

『おっかしいなあもっと注目すべき点があるはずなんだけどなあ』

『コンプリートだから仕方ない』

 

 

 

 明らかな強敵が現れようが、コンプリートが注目していた点が全く違う箇所だったがために、ステフォンの中のプロトドリームが頭を抱える。ラブリーはここは絶対拾うだろうなと予想していたがために反応は周りよりも薄い。

 

 

 

「……そのステフォンの中に、ラブリー以外の子達も入っているのね?……そっちは別にいいわ。あまり関係はなさそうだし」

「えぇぇ?(やっぱり、あの世界のプリキュアの魂とは別物なのか……?)」

『狙いは何?ネオフュージョンに何か(・・)頼まれたの?』

「アイツじゃない。自分の意思できたの」

『そ、そっか……』

 

 

 

 ダークネスブラックとプロトドリームの間で何か意味深なやり取りがあったようだが、ドリームが想像していた方でなかったのか、彼女はどこかほっとした様子を見せる。そんな場合ではないのだけど、彼女にとってはそれはかなり大事なことだったらしい。

 

 

 

「ステフォンとその中のラブリーを渡せば、あんたのことは見逃してあげる」

「君は、何のためにそれら二つを狙っているの?」

「……それが、『世界』のためになるから」

『世界の、ため……?』

『初めて直接聞きましたが……結構ざっくりしてる……?』

「あの……なんかもっと詳しく……」

「あんたにはそれくらいしか言えないわ」

「えぇ……?」

 

 

 

 乾いた風が吹き付ける。

 

 ダークネスブラックはあっさりと、ステフォンを狙う理由を教えてくれた。闇の使者の中にいたときもその理由を知らなかったプロトキュア達も、困惑した様子を見せる。……唯一、ドリームだけは目を逸らしているのだが。

 

 

 

「……なるほど。君たちがステフォンを狙う理由は割と真っ当、と……真っ当かなこれ?……でも、あたしを囲んでる欠片はどう説明するの?」

「あんたが渡さなかった時の奥の手よ」

「脅しだねえ……いやあ、渡したいのは山々だけど、ラブリーの友達を君たち闇の使者の中から助け出さないといけないし、あたしも世界をどうにかするために使ってるところもあるし、ちょっと難しいかな」

『コンプリート……!』

 

 

 

 本当に困った様子で、コンプリートが謝る。

 狙う理由がそれこそ敵側の発言っぽかったら問答無用で渡さないと言えたのだが、『世界のため』というどちらとも受け取れる答えを出されてしまい、若干の迷いが生じてしまったようだ。

 

 しかし、闇の使者の中にラブリーの友達が閉じ込められている可能性がある以上、そう簡単に「はいどうぞ」と渡せるかはわからない。だってラブリー達は友達である。

 彼女達の友達を助け切るまで、あの世界をどうにかするまでは、闇の使者には渡せない。ましてや未だ詳細が不明だが確実に敵側であるネオフュージョンと繋がっている以上、奴の手に渡れば大変なことになるのも確実だ。

 

 

 

「渡さないのね?」

『い、いいの……?』

「君たちにも事情はあるんだろうけど、あたしにも退っ引きならない事情がある。……そう簡単に、君に譲ることはできない。ましてや、誰かを泣かせるような怪物を操る君たちには、絶対に渡さない」

 

 

 

 コンプリートは珍しく勇ましく、啖呵を切った。

 きっと不毛な争いになりそうだが、こんな中途半端なところで諦めるわけにもいかないのだ。

 

 コンプリートにとって、操った怪物で子供を泣かせるような相手には、一言文句を言ってやりたかったし、思い通りになるわけにもいかなかった。

 

 交渉決裂だと勘づいたダークネスブラックは、どこか悔しそうに表情を歪め、大きくため息をつく。そして、全てを決意してコンプリートに対して敵意全開に睨みつけた。その圧倒的な威圧感に、プロトキュア達が息を呑む。

 

 

 

「……いいわ。あんたを倒してでも、取り返して見せる……!」

『来る……っ!』

「……っ」

「手加減なしよ、覚悟なさい!」

 

 

 

 

 

 一瞬にしてコンプリートと距離を詰めたダークネスブラックの拳が迫る。

 コンプリートが両腕で受け止めるが、その威力は段違いに強く、大きく後ろに弾き飛ばされそうになる。さらに間髪入れず何発も拳で殴ろうとしてくるため、コンプリートはキュアウェポンを出す暇もなく防戦を強いられることになる。

 

 

 

「はぁぁぁぁっ!!!!」

「ぐ、うぅ……っ!」

 

『CureWeapon!Lovely!』

 

 

 

 しかしコンプリートも一旦飛び上がって、拳の嵐から離れる。ブラックの後ろに回り込み、ラブリーショットガンからエネルギー弾を数発放つ。

 しかし避けられた挙句片腕で弾かれ、さらに距離を詰められもう一発拳を喰らいそうになる。 何とか両腕をクロスしてガードするが、よろけて大きく体勢を崩すことになる。その隙を逃さず、ブラックによる拳のラッシュが彼女を襲う。

 

 

 

「うぅ……っ!?」

 

 

 

 ほぼ全てを避けきれずにまともに喰らってしまい、地面に叩きつけられるように墜落する。

 満身創痍に近いコンプリートはそれでも立ち上がり、ブラックのことを強い輝きを持つオッドアイで見据えている。

 

 

 

「まだ立ち上がれるんだ。……流石にやめておかないと、痛い目を見るわよ」

『コンプリート!!』

『大丈夫!?』

「平気……ではないけど……。でも、一緒に戦ってくれる、一緒にいてくれるラブリー達を、守りたいから……まだ立ち上がれる」

『コンプリート……私たちの、ために……』

 

 

 

 コンプリートのまっすぐな瞳に嫌気がさしたのか、ブラックの表情はさらに険しくなる。その右手に、漆黒の闇がバチバチと弾けながら集まりだす。

 

 

 

「そう……なら、その心ごと壊れなさい。ダークネス・マーブルスクリューッ!!」

 

 

 

 彼女の右手から放たれたのは、真っ黒な雷撃。本来なら二人で放たれなければならないそれは、破壊するためだけの凶悪な光と闇を纏いながら、コンプリートを飲み込まんと突き進む。

 コンプリートはそれに対抗するために、なけなしのパワーで必殺技を構える。

 

 

 

「負けてたまるか……!プリキュア・ポップンロケットシャワーッ!!」

 

 

 

 無数のハートの奔流が、真っ黒な雷撃とぶつかり合う。火花と光と闇を弾けさせながら、二つの輝きはせめぎ合う。少しずつコンプリートが放ったものが押しているが、満身創痍の彼女の体は後ろに押されている。

 

 

 

「……あんたのその、諦めない気持ちだけは認めてあげる。でも……甘いっ!」

 

 

 

 その一言だけで雷撃の威力が突然上がり、一瞬にしてコンプリートの放つハートを飲み込みコンプリートに衝突した。

 爆風と土煙だけが、周囲を満たしている。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 土煙が収まった後に見えたのは、ボロボロになって倒れた繋巡の姿だった。変身が解けて意識を飛ばしてしまうほどのダメージを喰らってしまったようだ。

 ブラックが近づき、死んでいないよなと確認する。彼女自身は呼吸をしているが、目を開ける気配がない。

 

 それならもう二度とステフォンを使えないようにと、その手に再び力を溜めようとする。

 

 

 

「ダメェェッ!」

「!!」

 

 

 

 トドメを刺そうとしたブラックの前に、ステフォンの中から飛び出したラブリーが技を構える。その手からは小さな『プリキュア・ピンキーラブシュート』が放たれ、巡に向けていた右手のひらに当たる。

 

 

 

「……っ」

 

 

 

 小さなハートのエネルギー弾でも威力はまあまああるようで、放とうとしていたものを止められてしまった。

 

 

 

『ラブリー!?』

「友達に手を出したらダメ!」

「……」

「ねえ!あの時私に『助けて』って言ったの、ブラックなんでしょ?」

「……」

 

 

 

 ラブリーの記憶の中には、ステフォンの外から自身に語りかけるキュアブラックの姿がいた。闇の使者の中に自分と同じ世界のプリキュア達がいるのなら、きっとダークネスブラックは、あの時語りかけていた彼女に違いないはずなのだ。

 ダークネスブラックは彼女の言葉に反応することなく、その右手でプロトラブリーを捕まえる。

 

 

 

「きゃあ!?」

『ラブリー!!』

「ドリームに伝言を託すわ。“ラブリーを助けたいなら、私を見つけてステフォンを渡せ”と」

『っ!どうして、あたしに……』

「あっちのドリームから溢れたものなら、私が何をしているか、何を求めているかはよく知ってるでしょう?そんなあなたにしか頼めないの」

『それ、は……』

『ま、待って!!』

「けど、この欠片達が逃がしてくれるかは知らないけど」

 

 

 

 そう告げて、ダークネスブラックはプロトラブリーを紅いクリスタルの中に閉じ込めてどこかに飛んで行った。閉じ込められた彼女は、何かを叫んでいるが音が遮断されている。

 彼女達が去った後、待機していたサイアークの姿をした欠片が動き出し、気を失ったままの巡を襲おうとする。

 

 

 

『ま、まずいこのままじゃ!!』

『ラブリーで何か出せたなら、あたし達も出せるよね!』

『……っ!み、みんな!ひとまず時間稼ぎを────』

 

 

 

 ラブリーが先ほどのように技を放てるのなら、自分たちも彼女が動けるようになるまでの時間稼ぎ程度でしかないが、欠片と応戦できるのではと思いつく。ブラックに伝言を頼まれて何も言えなくなっていたドリームが我に返り、仲間達に指示を出して戦おうとしていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ラブリー・ライジングソード!」

「プリンセス・急降下ダイブ!」

 

 

 

 その瞬間、上空から光の剣を構えたプリキュア────キュアラブリーが、欠片に向かって刀身を叩きつけた。さらにもう一人のプリキュアが足裏での蹴りを与えたことにより、欠片の動きが怯む。

 

 

 

「ハニー・リボンスパイラル!」

「フォーチュン・スターバースト!」

 

 

 

 怯んだ隙に黄色い光のリボンが欠片の体に巻きつき身動きを封じ、その上で叩きつけられた拳から放たれる衝撃波で体勢を大きく崩す。

 

 

 

「いたよ!あの子がコンプリートだよ!」

「ど、どうしてこんなことに!?」

「一体何が……とにかく、今は目の前のサイアークを!」

「オッケー!プリンセス!」

「一気に決めよう!」

『も、もしかして!』

 

 

 

「「プリキュア・ツインミラクルパワーシュートッ!!」」

 

 

 

 ラブリーが放つピンクのハートと、青いプリキュアが放つ青いリングのエネルギー弾が合わさり、黄金色の光を放ちながら欠片に衝突する。強い光の力を受けた欠片は容赦なく浄化され消滅する。

 

 

 

「おーい!だいじょーぶー?」

『あ、あなた達は……!』

「ラブリーと一緒に戦ってくれたのはあなた達だったのね。ありがとう」

「でもこれって……」

『じ、実は大変なことがあって!!』

「ひとまず、大使館の方に運ぼう!」

 

 

 

 ラブリーの一声によって、巡とステフォンは運ばれていく。

 

 

 

 彼女達はハピネスチャージプリキュア。この世界のプリキュアである。

 

 駅前で起きた一連の怪物騒ぎを収めたコンプリートを追いかけた彼女達は、その先で闇の使者によって満身創痍の状態になってしまった巡を助けることにした。

 

 

 

 

 

続く…

 




次回更新日:5月12日(日)
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