『……る!巡!巡ってば!起きて〜!!』
「う、うぅ……」
『あ、起きた!大丈夫!?』
「なんとか……硬い地面に落ちた気がするんだけど……」
身体中の鈍い痛みが引いてきた頃に、ようやく巡の意識が暗闇から戻ってくる。自分たちが倒れていたのは、硬いフローリングの上だったらしい。
『あたしたち、ネオフュージョンの欠片に吸い込まれちゃったけど、ここはどこなんだろう?』
「世界飛んできたのにまた世界移動ってこと?重複しとるが」
『Go!プリンセスプリキュア』の世界で遭遇した闇の使者・ダークネスフローラが使役するネオフュージョンの欠片の体内に吸い込まれてしまったプリキュア達だが、目を覚ましたのは薄暗くて広いどこかの空間。直前に「移動するだけ」と言っていた気がするので、欠片を通じて別の世界に来てしまったのだろう。
「みんな、大丈夫……?」
「なんとか、無事よ……」
「ったく、ここどこ……?」
少しずつ暗闇に目が慣れてきて、なんとなくの全貌がわかるようになってくる。かなり大きな空間、床はフローリングのようで、高い天井にはたくさんの電球と、いくつかのシャンデリアらしき物体が吊り下がっている。
「学園のパーティーホールのような場所ね……」
「言われてみれば確かに……なんか見たことある空間だと思ったら」
「ぱ、パーティーホール?」
『そういえばノーブル学園にあるって言ってたね!』
パーティーホールがある学校なんて、巡の世界でもあまり聞いたことがない。というかパーティーホールとはなんだ。多分私立系の学校だからこそ、そういう施設が作られていたりするんだろう。面白そうだが少々羨ましいと思いつつ、こんな暗い中で離れ離れになるのは危険と判断し、巡ははるかたちが集まっている方から離れないように警戒する。
突然、天井のライトとシャンデリアが灯り、ようやく周囲の景色がはっきりと確認できるようになる。
「……は?」
「ゼツボーグ……!?それも、あんなにたくさん……!?」
ある程度明るくなったことで、自分たちが置かれている状況に気づくことができた。なんと巡達は、鎧を纏ったゼツボーグの姿をした欠片達に囲まれているのだった。大きさは成人男性ほどの欠片達は皆、剣と盾を構えている。
「危ない……さっき動いてたら斬り刻まれてた……?」
『うわぁサラッと怖いこと言わないでよ』
第15話:戦場はダンスホール お覚悟はよろしくて?
「ふふっ、驚いた?」
「……あ!ダークネスの方の私!」
騎士型の欠片達の前に現れたのは、自分たちをこの世界に飛ばした張本人である闇の使者・ダークネスフローラ。相変わらずプリンセスの優しげな微笑みで、こちらに話しかけてくる。
「欠片に“細工”してくれたおかげで、この世界の私の世界を変に壊さずに済むのって、素敵だと思わない?」
「被害はあたしに行くんですけど???」
「なんなら、あたし達まで吸い込まれてったんだけど???」
巡ときららが同時に突っ込む。彼女達もどこかで他の世界の自分の仲間に手を出すことに躊躇していたところもあったが、この場合どっちも吸い込まれて別の場所に移動するのは本末転倒しかけている。
「大丈夫だよ、きららちゃん。どこかに出口を作ってあるの」
「あら優しい」
「けれど、そう簡単には探させないけどね……?」
そう言った途端に、ダークネスフローラの背後にいた騎士型の欠片達が、剣先を構えて一斉にこちらに向かって駆け出してきた。
「ああもうですよね〜そんな気はしてたんだよね〜」
『巡ちゃん!今はあっちのフローラを止めよう!』
「私たちも!」
巡はステフォンを、はるか達この世界のプリキュアはプリンセスパフュームとプリンセスキーを構える。
『プリキュア・プリンセスエンゲージ!』
「コンプリート・ステージON!」
光に包まれた少女達が、プリキュアの姿へと変身する。
「咲きほこる花のプリンセス!キュアフローラ!」
「澄みわたる海のプリンセス!キュアマーメイド!」
「きらめく星のプリンセス!キュアトゥインクル!」
「深紅の炎のプリンセス!キュアスカーレット!」
「強く!」「優しく!」「美しく!」「Go!」
『プリンセスプリキュア!』
「現となりし、12の魂!キュアコンプリート!」
「……やっぱりいいよね、プリンセス」
『一体彼女はプリンセスの何に惹かれてるんだ……?』
『そういう年頃なんだよ見守ってあげようよ!』
『ラブリーがいよいよツッコミを放棄してきた』
ステフォンの中のプリキュア達の会話をよそに、迫る欠片の侵攻を5人は大きく跳んで避ける。
「ゼツボーグ達を使役しているのは、黒いフローラで間違いないのですね!?」
「うん!そっちはあたしに任せて、君たちはそのゼツボーグというやらと出口を頼んだよ!」
スカーレット達にそう言い残して、コンプリートはダークネスフローラの元へ一直線に降りていく。そんな彼女を邪魔するように、欠片達が行手を阻んで剣を振り落としてくる。
「うわわっ、ああもう近づかせないってこと?こっちは近接戦、拳と蹴りと突撃だけなんだから手加減してよね!」
『ゼツボーグッ!』
『向こうが手加減すると思えないくらい容赦ないんだけど!!』
「そっちがその気なら、無理矢理にでも道を切り開くよ」
『CureWeapon!Peach!』
『PowerCharge!Beat!』
頭上に展開したピーチイージスからは、コンプリートを守るように球体上の光のバリアが出現し、欠片が振り落とした剣の直撃を防ぐ。鳴り響くギターの音色と共にバリアは膨張し、周囲を取り囲んでいた欠片達を押し返す。
ようやく、欠片達の陰に隠れていたダークネスフローラと対面する。闇の使者側は、待っていたと言わんばかりにコンプリートの方に駆け出し、鋭い蹴りを喰らわせようとする。反射的にコンプリートも振り上げた脚で受け止める。
「うおっと」
「避けてるばかりじゃ、何もできないよ?」
ダークネスフローラの素早く華麗な動きに翻弄され、コンプリートは防戦を強いられる。せっかく近づくことができたのにこれでは反撃の余地がない。
「プリキュア・フローズン・リップル!」
「プリキュア・ミーティア・ハミング!」
マーメイドが放つ大量の氷塊が、周囲の欠片達を凍らせて動きを封じる。その隙にトゥインクルが放つ流れ星のような無数のエネルギー弾によって一掃される。しかし、次から次へと欠片が現れて、現状維持へと引き戻される。
「なんでこんなに大量に現れてんのよ!キリがないんだけど!?」
「まさかとは思うけど、私たちを取り込んだ方のゼツボーグを浄化しないと止まらないのかしら……?」
「えぇぇ!?それなら早くここから出ないとまずいんじゃ!」
再び欠片達に取り囲まれてしまい、マーメイドとトゥインクルが互いに背中を合わせ、クリスタルプリンセスロッドを構えつつ、再び技を放とうとする。
そこへ、どこからか優雅なバイオリンの音色が響き渡る。
「羽ばたけ、炎の翼! プリキュア・フェニックス・ブレイズ!」
スカーレットが放つ鳳凰の姿を模った灼熱の炎が、二人を取り囲む欠片達を一気に消滅させる。ドレス姿から戻った彼女が、二人のもとに駆けつける。
「大丈夫?」
「ありがとう、スカーレット!」
彼女達は、欠片の襲撃に立ち向かいつつ、この空間から脱出するための出口を探し回っていた。空間はなんらかの大広間のような場所のため、壁に沿って探せばありそうだが、いかんせん広すぎる。
「……!あれは……!」
仲間達から逸れて、一人このだだっ広い空間で出口を探していたフローラは、壁にいくつもある扉のうちの一つに、重い南京錠がかけられているのを見つける。明らかにここが出口ですよと言っているようで怪しい。さらに、この場所に向かってたくさんの欠片達がフローラの方へ走り出していく。
「も、もしかして……!みんなー!出口っぽいのあったよ!!」
『ほ、本当にあったの!?』
「あーあ、見つかっちゃった……」
「これで、この世界から脱出する手段は手に入ったよ。あとは君たちだけだね」
ダークネスフローラの攻撃を避けながら、コンプリートがそう言い放つ。
「それなら……私だって、まだ負けられない!ダークネス・フローラル・トルビヨンッ!!」
「え、ちょっ、うわぁっ」
それでも笑顔を絶やさず、黒い闇を纏ったダークネスフローラの両手から放たれた彩度の低い色の花吹雪が、コンプリートを大きく吹き飛ばす。せっかく鋭い蹴りを避けて近づけたと思った途端、再び欠片が密集するダンスホールの中心地点にまで戻されてしまう。
そして、現れたコンプリートを狙って欠片達が迫り来る。この欠片達の無限湧きは、どうやら大元の欠片を倒さない限りどうにもならないようだ。
「くっ、仕方ない……キリがないなら、この力を借りるよ!」
『コンプリート!?』
『まさか、自分で!?』
「やばそうだったらみんなで呼びかけて!何とか戻ってくるから!」
コンプリートはなんの躊躇いもなく前髪のガラスのリングを掴み、自らそれを破壊する。
ガラスの破片は光の粒子となって飛び散り、彼女の体とステフォンから強く眩い光の力が溢れ出す。あの時のように意識が遠くの方に吹き飛ばされそうになるが、こんなところで振り回されてたまるかという絶対的な意志で持ち堪える。
「ぐ……っ、おっ、も……っ!!」
『こ、コンプリート!しっかり!』
「だい、じょう、ぶ……ッ!おりゃあ!」
迫り来る騎士の姿をした欠片達を、光を纏った素早い蹴りで吹っ飛ばしていく。前回と違って、完全に力に飲まれずに自我を保ち続けて戦っている。それでもどこか意識が吹き飛ばされそうで苦しげにも見える姿はぎりぎりな状態なのは丸わかりで、プロトドリームは途端に不安になってしまう。
『……』
プロトドリームの脳裏にノイズのようにチラつくのは、無慈悲で冷たい紅の光を瞳に灯してしまった、あの白い誰か。世界を壊した誰か。
今戦っているキュアコンプリートも、下手をすればあんな風になってしまうのではと、ゾワゾワとした嫌な不安感が心を埋め尽くそうとしている。
『コンプリート!ほ、本当に大丈夫なの!?』
「ありがとう……まあ、目の前も自分もどうにかしなきゃいけないから大変だけど……名前を呼んでくれる君たちがいるから、あたしも、力に振り回されずにいられる……!」
『……!』
「大丈夫。あの子の中にいる君たちの友達も、ちゃんと助け出すから……っ!」
『ゼツボーグッ!!!』
立ち止まるコンプリートに、欠片達の魔の手が迫る。奥の方で相手取るフローラ達でも間に合わない。
コンプリートはそれでもこの力で、切り抜けるつもりだ。剣と拳では圧倒的にコンプリートが不利だ。このまま剣が振り落とされてしまうと覚悟を決めたその時だった。
『CureWeapon!Dream!』
光り輝くステフォンからさらに光が飛び出し、それは剣状の細長い形をとりながら、欠片一体を鋭く突いて吹き飛ばす。
「え?」
『あたしだって……あたしだって、ただ待ってるだけじゃいられないのっ!』
「ドリーム……!」
『あなたが頑張ってるんだから……あたしにも、あなたの想いに応えさせて!』
コンプリートの前に現れたそれは、彼女が掴んだことでその姿をあらわにする。剣にしては細い刀身を持つそれはキュアドリームの姿を模したような装飾が施されている。持ち手部分には、まだ開くことはない赤いバラの蕾が揺れている。
「剣、にしては刀身細いような……なんだっけ、すっごい見たことあるんだよ……」
「もしかして、『レイピア』ではないかしら!」
「レイピア……ああレイピアだ!」
マーメイドがその剣の全貌を見て呟き、その形の名前がパッと思いついた。
刀剣の一種であり刺突用の武器であるそれは、中世のヨーロッパで護身用や決闘用に用いられたとされている細剣。このダンスホールのような空間における決闘においては一番雰囲気がピッタリとハマるキュアウェポンで、コンプリートが密かに待ち望んでいた近接戦で活躍できるリーチの長い武器だった。
「なるほど……それなら、『ドリームレイピア』だね。すごい、いろんな武器を使えるようになってきたよ」
『コンプリート、行くよ!』
「Yes!……ってね」
早速レイピアを構え、自分に斬りかかろうとする欠片の懐に潜り込み、鋭い突きを放つ。光を纏った突きの一撃は、コンプリートがリングを外したことで威力倍増していることもあって、一撃で消滅してしまう。
「おお、これは強い」
『つ、突いただけで……!?』
「これはマジのプリンセスならぬ、マジの騎士だね」
『マジの騎士とは』
「さあ、一気に行くよ?覚悟はいい?」
「……!よろしくてよ!」
コンプリートが凛々しくそう言い放つと、ダークネスフローラはどこか楽しそうにコンプリートの元に走り出していく。コンプリートもまた、彼女の方に駆け抜ける。
欠片の隙間を縫いながら、途中その煌めく一撃で蹴散らしつつ、ダークネスフローラとの距離を詰めていく。
『PowerCharge!Mermaid!』
「「はぁぁぁぁっ!」」
激流を纏った細剣と、少女のキレのある足蹴りが交差する。隙を潰すように繰り出される拳や蹴りを避けつつ、コンプリートはそのレイピアをダークネスフローラの喉元スレスレで振り回し、自分との距離を取らせる。水飛沫がきらりと跳ねる。
「!?」
「流石に近すぎるからね、ちょっと距離置いてもらうよ?」
『PowerCharge!Berry!』
細い刀身に纏う青い光が、先ほどよりも強く輝く。どうやらキュアベリーの力がドリームレイピアとのいわゆるベストマッチな組み合わせらしい。
「相変わらずどういうチョイスなのかはわからないけど!
大きく突き出したレイピアの先が、ダークネスフローラの元に迫る。しかし完全に突き刺すというわけではなく彼女の手前で止まり、同時に放たれた青いダイヤ型のエネルギー弾が彼女を大きく吹き飛ばした。
「きゃ……っ!?」
『今ならいけるよ!』
「オッケー!暗闇に飲まれたその心、撃ち抜くよ!プリキュア・ブレッシングキッスッ!」
投げキッスの要領で右手の指を銃口のように、ダークネスフローラの胸のリボンに輝く紅いクリスタルに向ける。無数の桃色のハートが集まり、一つのハートのエネルギー弾に凝縮され、それは合図とともに彼女めがけて撃ち出される。
ダークネスフローラもそれの直撃を防ぐために、あの花吹雪で応戦するが、彼女が解放した力には太刀打ちできず、ハートの弾丸は彼女の胸を撃ち抜いた。
「きゃあっ!?」
モロにくらった紅いクリスタルからは、あの桃色の光の玉が飛び出し、すぐにステフォンの中に吸い込まれていった。一方、喰らってしまったダークネスフローラは、今までの闇の使者と同様、一時的に力を奪われて座り込んでしまう。
その隙に、コンプリートは動けない彼女を抱え、フローラ達がいるであろうこの空間の出口付近まで走る。
「な、何を……!」
「何って、ここを出るんだよ!」
「どうして私まで!?」
「動けないのに残して帰るだなんてできないからね!」
『理由がすっごくコンプリートらしい!』
多分闇の使者だからテレポート的な力は使えて、単独でここから脱出することも可能だが、コンプリート的に動けない誰かをここに置いていってしまうのは、どうにも嫌なことらしい。
ダークネスフローラを抱えたまま、出口を閉ざしている扉の南京錠に向かって、さっきのレイピアの先を向ける。
「コンプリート!」
「任せて!」
『ここから出るよ!』
突き出したレイピアの先が南京錠を穿ち、辺りを照らすほどの眩い光で包まれる。視界が、明転する。
『ゼツッ……!?』
プリキュア達を取り込んたネオフュージョンの欠片の大口が開き、眩い光と共にコンプリート達が一斉に吐き出される。コンプリートは力を最大解放した反動か、帰ってきたと同時に変身が解けてしまう。
『ああ!また解けちゃった!』
「あとはあの欠片だけなのに!」
「今度は、私たちに任せて!」
巡はスカーレットに抱えられ、フローラ、マーメイド、トゥインクルの3人が前に出る。
『エクスチェンジ!モード・エレガント!』
「リリィ!」「バブル!」「シューティングスター!」
前に立つ3人の姿が、ドレス姿の本来の意味でのプリンセスの姿に近くなる。ドレスアップキーが刺さるロッドに、眩い光が灯り、リボンが揺れる。
「輝け、3つの力!プリキュア・トリニティ・エクスプロジオンッ!」
光のリボンで描いたティアラからは虹色の光の波が放たれ、動揺する欠片を包み込む。なす術もなく、欠片はとうとう消滅してしまった。そんな哀れな怪物に、プリンセスは告げる言葉はたった一つ。
「ごきげんよう」
「まさか、こんなに早くやられちゃうなんて……でも、あなたのレイピア捌き、悔しいけど綺麗って思っちゃった」
「まさかの褒めが入った」
「……この世界の私は、素敵なプリンセスを目指してね?」
「え……う、うん!」
それではごきげんようと言い残し、ダークネスフローラはどこかに消えていった。
「……なんだろう、試合には勝ったのに勝負には負けたようなこのなんとも言えない気持ち」
『あのフローラ、巡に抱えられた時以外はほとんど表情崩してなかったね……』
「これが、どんな時でも笑顔でいるっていうプリンセスの心得的な?」
「間違ってはいないけれど、当たってもいないような……」
巡の若干ズレた考察にトワが真面目に考えてくれるのも束の間、彼女から飛び出した光の玉を吸い込んだステフォンから光が放たれ、巡達をあの世界へと誘う。
「……あれ?」
「こ、今度はどこに……って、えぇぇ?」
「またか……」
ステフォンから溢れ出した光が収まると、巡はあの水晶の世界に飛ばされていた。
変身が解けてしまったはるか達も一緒にこの世界に飛ばされたようで、一体何が起きたのか混乱している。そして巡も前回と同じように、自由に動き回れるようだ。
「寂しい場所のような、どこか美しさのある景色のような……」
『なんというか、いろんなものがごちゃついてるって感じがします……』
「個性が混ざり合わずに爆発している的な?」
『うまく調和できてないって感じ……なのかな』
「けれど……ここに咲いている花、とても綺麗だね」
『それはわかる』
今回巡が立っていた近くの水晶の中で眠っていたのは……。
「そこで眠っているのは……フローラ?」
みなみの言葉通り、そこで眠るプリキュアはキュアフローラだったようだ。
彼女が眠る水晶の柱からは、淡く優しい桃色の光が溢れ出し、厚い雲が覆う天へと伸びていく。
光が収まった後に周りを見渡すと、この水晶の柱が集まる場所から少し離れた場所、ちょうど教会のような建物とは向いになるようなところに、少し大きめのお城が目に入った。
『あ!お城だ!!』
「本当だお城増えてる……おもしろ」
「あ、あの一瞬でお城が……?一体何がどうなって……」
「近くまで行けそうだけど……」
多分建物よりも先に増えるべきものや省エネモードで光の玉として周囲に浮いている先に集ったプリキュア達をどうにかすべきな気がするが、順番ならばもう仕方がないとしか言えない。
そして例に漏れず、光に導かれて、新たにこの世界へと辿り着いたプリキュア達が、半透明の状態でこちらに向かってくる。
「やっと帰って来れた〜!」
「やはり、大きく変化しているようね……」
「え?……えぇぇぇ!?」
「私たちが、もう一人……?!まさか、ドッペルゲンガー……!?」
『あーまた私たちが見えないやつ!』
『そこにいるの、この世界のみんなだから大丈夫だよ!』
まさかの遭遇にホラーが絡んでしまい怯えかけるみなみに、プロトキュア達がすかさずフォローを入れる。
『色々あって魂だけになっちゃったみたい!』
「け、結局幽霊みたいな存在じゃない……あなた達は、どうしてそうなってしまったの……?」
「何かしらの爆発が起きてバラバラになって、誰かの声を聞いてここに集っていう話は聞いたんだけど、それ以外で何か覚えてることってないかな?」
「ば、バクハツ?なんでそんな不穏なことが起きたの!?」
「本当それ!でも、ほとんどあなたが言った通りだよ!」
みなみの問いかけやきららの引き気味の反応、さらにこの世界のトゥインクルたちの頷きによって、今まで聞いてきた話の信憑性がさらに高くなった気がする。やはりこの世界が『崩壊』した大元の原因に、何かしらの爆発が関わっているらしい。
「あと、このステフォンを持ってた人がいるって聞いたんだけど……」
「あら……あなたが持っていたのですね……。確かに、あなたではないステフォンの持ち主を、わたくし達は知っています。まるでその部分の記憶が切り取られてしまったかのように、顔も名前も思い出せないのですが……」
この世界のスカーレット曰く、実際に巡の前にステフォンを持っていた人物がいるのも本当らしい。しかし、不思議なことにその人物の顔や名前を思い出すことができないらしい。
「その、持ち主さんってどういう人だったかはわかる?」
「どういう人って……まあ、結構気難しかった気がする……」
「そうだったかしら……?ふわふわしていた人だと思うけれど……」
「無口なイメージもあるのよね……」
「イメージが割れすぎていますわ……」
「君たち的にはどう?前の持ち主ってどんな感じ?」
『前の持ち主?えー……集中している時はあんまり笑ってなかったような……』
『ドジっ子みたいな感じがした!』
『ドリームに言われたらおしまいでは』
『えぇ!?』
元々の持ち主の印象が人によって大きく変わっているようで、思わずトワも突っ込んでしまう。ただ、クセの強そうな人だなあとなんとなく思ってしまう。ただ……、と、マーメイドが少しだけ微笑んでこう話す。
「ただ……私が覚えている中の彼女は、とても優しい人だったわ」
「優しい人……」
「確かにそう言われると、そんな感じだったよね」
そのタイミングで、いつものように景色が白く淡くなっていく。元の世界に戻される時が近い。
「視界が……!」
『え、また戻されるの!?』
「ごめん、話せるのここまでみたい……また他のプリキュアを呼び戻すときに会えたら話そうね!」
「ええ!あなたも、フローラやそのステフォンの中のプリキュア達のことを守ってあげて!」
二人はお互いに言葉を交わした直後、景色が明転する。元の場所に、勝手に引き戻される。
「……巡さんは、あの世界を元に戻そうとしているんだね」
「うん。戻したいというか、あそこからどうやって戻るんだろうっていう疑問はあるけど……」
元の世界に戻ってきたあと、やることは終わったので自分の世界に戻ろうとしたところ、はるかに呼び止められてこんな言葉を投げかけられる。
巡は答えながら、持っているステフォンの画面を確認する。ステフォンの中で新しく現れ眠っていたのは、耳と二頭身の、キュアフローラの姿をした精霊────プロトフローラだった。
「この子達が、あの世界にいるはずのみんなが見えないみたいだから、せめて彼女達はあの世界の友達の姿を見てちゃんと話せるようにしたいんだ」
「そ、そうだったの!?」
『巡……!』
「そのために、闇の使者の中にいるっぽいこの子達の友達を助けたり、あの世界で何があったのかを知りにいったり、とにかく自分にできそうなことはしているんだけど……」
現状の目標がそれだからこそ、自分も不定期に現れる闇の使者達とぶつかったり、ステフォンやラブリー達を守り切る。狙ってくる闇の使者にどんな理由があろうが、自分の想いだって彼女達に負けたくはない。
「巡さんなら、きっと大丈夫だよ。夢も願いも、きっと叶えられる」
「……うん」
花のプリンセスの優しい鼓舞が、世界を巡る少女の心に強く響く。
夢ヶ浜の青い空に、どこかの原っぱから飛んできたであろう花びらが数枚舞い踊っている。
<巡の世界 心野宮・ステラモール>
「お待たせ!待った!?」
「いえ全然、結構早かったわね」
元の世界に戻ってきて、すぐにお手洗いから飛び出した巡は、待っている希奈子のところに向かった。希奈子は特に待ちくたびれた感じでもなく、笑顔で巡を出迎える。時間経過がない分、すぐに戻ってきて怪しまれるそうだったので2〜3分ぐらい待ってからきたのが効いているらしい。
「巡は何食べるの?」
「あたし?そうだな、ドーナツにしようかな」
「ドーナツ?珍しいわね」
「今日は甘いもの食べたい気分だから」
そう言って、巡はドーナツの店がある場所に向かっていく。先ほどあちらの世界で食べたドーナツが美味しくて、どうせならお昼はドーナツを食べようと思ったらしい。
どこか楽しそうな様子の巡に一体何があったんだろうと首を傾げつつ、元気そうだなと希奈子は思うのだった。
お昼を済ませたら次は何をしようか。買い物は終わらせたから、ゲームセンターや他のお店を見にいくのもありだし、ステラモールを出て駅前をぶらぶら歩いたり、カラオケで歌いまくるのもありかもしれない。
「巡、お昼食べたらどこいく?」
「あー、そうだね。……そうだ!駅前のスイーツカフェに行かない?前に帯刀君と行ったんだけど、あそこのパンケーキすっごく美味しかったから!きなっちにもぜひ食べてほしい!」
「帯刀君と本当に行ったのね?!……そこまで言うなら、後で行きましょ?」
「やったあ。さ、流石にお昼食べた後に行くのは早すぎるから、その前にどこかで時間潰したいよね……」
「そ、それなら────」
その夜、プロトドリームは巡の部屋の窓から見える星を眺めてぼーっとしていた。十中八九彼女自身の隠し事のことについて考えているのだが、結局巡たちには言い出せずにいた。他のプロトキュア達はぐっすりと眠りについている。
そんな彼女の姿を見つけて、お風呂上がりの巡が彼女のそばにきて、一緒に星を眺める。
「やあ、星が綺麗だね。天の川もはっきり見えるし、織姫と彦星もすぐ見つかりそうだよね」
「そ、そうだね……七夕はとっくに過ぎちゃったけど」
「まあそうだけどもロマンだよ……いやあ、今日は楽しかったね。君らほとんど聞いてるだけだったけど、楽しんでた?」
「うん!巡、歌うのとっても上手だね!」
「そ、そうかな?往年の人気曲ばっか歌ってるけど……あ、でも“ヒロここ”の主題歌歌えたのは嬉しかったな」
「巡が言ってたドラマの?」
「そう。あのドラマ結構おもしろくってさ。原作小説も買っちゃって……」
他のプロトキュア達とも会話するが、ドリームとここまで長々とおしゃべりするのは何気に初めてのことかもしれない。
今まではどこか巡と距離を置いているような雰囲気もあったから、心を許してくれたのだろうか。キュアウェポンとして共に戦ってくれたことがきっかけになったのかもしれない。
……ひょっとして、今なら自分が気になっていたことを聞けるのではないかとも思えた。お昼は闇の使者の出現に全てが持っていかれてしまったので、聞くなら今だ。
「……ねえ、ドリーム」
「ど、どうしたの?」
「ドリームって……本当は何か、隠していることがあるんじゃないかな?」
「……!!」
意を決して、巡は他の子が眠っている間に聞くことにした。そしてドリームは、わかりやすく目を見開く。この反応は、確実に何かある。
「リングが壊れた時も、誰よりも心配していたみたいだね。まるで前にも似たようなことがあったみたいに」
「それ、は……」
「まあでも……今はまだ、言えないならそれで良いよ。急かしてるわけじゃないし。ドリームも心の準備が必要なら、あたしはいくらでも待つよ」
「……!」
しかし、本人が言いたくないというなら仕方がない。隠した真実は、必ずしも良いものではないことが多いというのはよくある話であり、巡もわかりきっている。だからこそ、彼女は『待つ』という選択肢をとった。きっとそれが、今のベストな選択だろう。
「もしドリームが言いたくなったら、その時は教えて欲しい」
「……うん、ごめんね、巡……本当は、ちゃんと言わなきゃいけないのに」
「ううん、君が謝ることじゃないよ。……海、楽しみだね」
「……うん」
夏の夜空に、満天の星が煌めいている。ちょうど天の川が、夜空を繋ぐようにかかっている。
夏休みは、これからだ。
<ネオフュージョンの世界 漆黒の城・安置部屋>
「うーん……あれから全然起きないね」
「やっぱり、本人じゃないとダメなのかな」
ベッドが並ぶ薄暗い部屋の中。マゼンダの大きなポニーテールと黒いコスチュームを纏うとある闇の使者は、いまだその閉じた瞼の奥に眠る瞳の色を見せてくれない。今はブルームとドリームがこの部屋にいるのだが、他の仲間達が代わり代わりに様子を見にいくことになっている。今のところ、著しい変化は見当たらない。
彼女の胸には、ダークネスブラックが『ハピネスチャージプリキュア!』の世界に行った時に、一度はステフォンの中のラブリーを閉じ込めていたという紅いクリスタルが輝いている。中で彼女が抵抗した際の残滓程度でも動けるらしいのだが、情報のソースはネオフュージョンのため、信ぴょう性は薄い。
「フローラもやられちゃって、次はホイップが行くんだって」
「そういえば、やる気満々だったような……ドリームは、あれから体調悪いとかない?」
「全然元気だよ!結局、あたしの体から飛び出した光はなんだったんだろうね」
「正直、みんなが問題なく動けてるから普通にコンプリートに渡しちゃったし、ブラックに関しては何も起きてないし……」
他愛のない話が続く。内容はコンプリート対策や光の玉、ステフォンに増えるプリキュアの謎に関してばかりではあるが、こういう精神が擦り切れそうなことをしている中での日常的な会話が精神安定剤並みに恋しくなってくる。
しかし、彼女達の心配事はもう一つある。
「ブラックは、またネオフュージョンに連れてかれたの?」
「そうらしいよ。今度は年中夏みたいに暖かい世界だって言ってたよ」
「……世界の支配とか破壊とか、同じプリキュアを力で絶望させるとか、したくもないことさせられてるんだろうな……ネオフュージョンに壊されてるみたいで、なんか嫌」
「うん……この前も“慣れた”なんて言ってたから止めるべき、なんだよね……でも、」
「ブラック自身が、それを許してくれない」
心配事は、主にダークネスブラックのことである。
今自分たちは、ステフォンのために不本意しかないが、ネオフュージョンと一緒に行動をしている。自分たちが動きやすくしてくれる代わりに向こうの破壊行為に加担しろといい、ブラックは自分たちを庇って一人で奴のいいように地獄を背負わせられている。
ブラックがさせられている所業を本人から教えられているのはこの二人であり、二人以外には念の為その事実を隠している。ただ、碌でもないことをさせられているとは察せられているが。
「もう……何で相談してくれないのかなぁ……辛い時は頼ってくれたっていいのに……っ」
「……うん……」
ブルームが珍しく表情を険しくさせているために、ドリームはどう声をかけていいか分からず頷くことしかできない。多分、彼女にしか分からない何かがあるんだろうと察する。
自分は、ブラックが奴に連れられどんなことをしているのか知っているが、実際に見たことがない。見たことがあるのは、自分より先に目覚めているブルームただ一人。見ているからこそ、それが原因で衝突しかけたことがあったと言っている。一度他の子に『不仲』を疑われたらしいが、そんなことはない。
一体彼女達の間で何があったのか、ドリームには分からない。それでも、同じ『真実』を知っている者同士、相談し合えることはあるかもしれないと話しかけようとした。
「二人とも〜交代しにきたよ〜……って」
「……あれ、ハートだ」
「そ、そんな顔してどうしたの?」
タイミングがいいのか悪いのか、見守りの交代としてハートが部屋に入ってきた。しかし、その表情は驚きで引き攣っている。
「ちょ、ちょっとまって。嘘……!!」
「え、なになになになに、何その反応、怖いんだけど」
「二人とも後ろ見て気づいて!ラブリーが!!!」
「ら、ラブリーがどうしたの────」
「はぁ……はぁ……っ」
「……」
真っ黒な雲に覆われたどこかの世界。
周囲の建造物は、激しい戦闘によってか、それともその混乱によって引き起こされてしまった悲劇によってか、都会の街にしては随分とボロボロな廃墟と化してしまっている。人の気配は、感じられない。街を抜けた先の浜辺では、波の音だけが妙にはっきりと聞こえるほどに、それ以外の音が鳴りやんでいる。
コンクリートで舗装されていたはずの道路は大きく地割れ、そこら中に顔も名前も知らない『プリキュア』らしき少女達が何人も頽れている。みんな、一人の闇の使者にやられてしまったのだ。
それでもたった一人だけ、カラフルなプリキュアが満身創痍でも立ち上がっていた。仲間を再起不能にさせた黒い少女に、絶対に諦めない強い光を灯した瞳を向けて。彼女の中での今一番やりたいことは、やられた仲間達のためにも黒い少女に一矢報いることと、黒い少女が何を考えてこんなことをしているのかを聞くことの二つだろう。
そんな勇敢に立ち向かおうとするプリキュアに対し、黒い翼を生やした闇の使者は「これ以上はやりたくない」等といった弱音を隠しきり、それでも隠しきれない悲しみを滲ませて、虚ろにゆらめく紅い瞳で見下ろす。
「もう、諦めなさい。あなた一人で何ができるというの」
「嫌だ……っ!私は……絶対に諦めないっ!!!」
「……そう」
完全な敵意と曲げられない意思が含まれた瞳で啖呵を切られ、無傷の少女に向かって飛び上がる。無駄だとわかっているのに、自分を鼓舞するように叫んだ言葉が虚しく響いているだけなことに気づいていないらしい。
そして闇の使者は、立ち向かうプリキュアに向けて真っ黒な雷撃を容赦無く放つ。
意思を砕くためだけに放たれたそれは、無慈悲にも少女を飲み込み、今度こそ地面に叩きつけた。これで二度と立ち上がることはないだろう。
「……ごめんなさい。こうすることしかできなくて」
ぽつりと溢れた謝罪の言葉は、手にかけたプリキュア達に向けてか、それともこんな酷いことをする自分自身に向けてか。それとも、この事実を言わずに心配をかけている仲間達に向けてなのか。
自分が地面に伏している彼女達と同じ立場なら、先ほどの少女のように何度でも立ちあがろうとしただろうか。
ポツリ、ポツリ。彼女の中の消えない苦しみと苛立ちを余計に積もらせるような雨が降り出してくる。
『随分と酷い有様だな……流石とも言うべきか』
「……っ」
彼女の背後に現れるのは、一回り大きな人型の異形────ネオフュージョン。あの仏頂面からは想像できないような愉快そうな声色で、ネオフュージョンは彼女に近づく。
『……この惨状は、キュアコンプリートを仕留めきれなかった苛立ちも含まれていそうだな』
「!!……そんなことは……っ」
『そう焦るな、ブラックよ。貴様らには時間は無限にある』
「なんで、あんたに言われなきゃならないのよ……っ」
闇の使者────ダークネスブラックは、ネオフュージョンに弄ばれるように煽られ、余計に苛立ちそうになる。しかし、ここで奴の煽りに乗ってしまうのもよくない。奴の嫌味に変に乗せられてしまわないよう、なるべく冷静さを保つ。
『しかし……随分と手練れてきたようだな』
「何度も言ってるでしょ、私はやりたくてやっているわけじゃない。……他のみんなに、こんなことさせるわけには行かないからやってるだけで」
『そう怒るな。全てが元に戻った時に、貴様自身にも影響が出るぞ』
「……それは」
ネオフュージョンにそう言われ、息が詰まる。
自分が目覚めてからずっと、奴に言われるがままにやれさまざまな世界への侵攻行為、やれさまざまな少女達を手にかけてきて、何も思わないなんてことはなかった。
今でこそ我慢はできるが、初めの頃は倒れゆく彼女達の姿や向けられる敵意に耐えきれず、根城に戻って吐いたり寝込んだりとにかく精神的なダメージでやられることが多かった。今でも自身がやったという事実が悪夢として蘇り、辛くなることだってある。
もういっそ、何も考えずにいれば楽なのかもしれない。しかし、そうすればネオフュージョンにどんどん毒されて人形のようになってしまうのも嫌だ。
奴も奴なり心にも思っていなさそうな言葉をかけているが、実際に自分がこのまま続けていると精神的にも何かしらの悪影響が出そうなのは本当のことだ。
常人では絶対に耐えきれない、業にも似た負担を、自分の仲間達には背負わせたくない。今の自分にとっては、仲間達は深淵の淵に立っている自分の心を支えている一本のロープのような存在となっている。
もし、彼女達に自分の所業を告げたら────
「……そう、よね……アンタの元についてるわけじゃないのに……」
『貴様が庇っている仲間や、探している友というやらを捨て、こちらの元に来てもいいのだぞ?』
「どうしてそうなるの。私は、みんなが元いた世界を“戻す”ためにステフォンを探してる。あんたにも、あのキュアコンプリートにも譲れない」
『……まあいい。貴様はいずれ強い絶望を抱き、我に縋るようになる……』
「……はぁ?それはどういう意味で────「あ、いた!ブラック!!!」……え?」
奴の意味深な発言を聞き返そうとしたところ、本来なら聞くはずのない声を聞いて振り向く。崩壊寸前のこの世界にやってきたのは、ネオフュージョンの根城にいるはずのブルームだった。
「ぶ、ブルーム?なんでここに……というかあんたこういうところは
「た、確かにダメだけど!今それどころじゃなくて!とにかくきて!ラブリーが!」
「ラブリーが?一体何が────」
そのまま彼女は一緒にこの世界からいなくなる。一人残されたネオフュージョンは、ずっと地面に伏して動かないプリキュアを見下ろす。
『……実に愚かだ……プリキュアも、あやつらも……。あのブラックは、まだ心が壊れていないらしい。まあいい。まだ
ひとりぽつりと不気味な嗤い声をあげながら、異形の身体を液状化させ、この世界のプリキュアごと自らの糧として取り込んでいく。
こうしてまた一つ、世界が『崩壊』した。
続く…
次回投稿日:5月25日(土)