PrecureStageON!   作:主氏レム

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※良い子のみんなは、手押しの荷台に人を乗せて下り坂を走ったり、山道を駆け上がらないでね!


第17話:笑顔と想いを レッツ・ラ・まぜまぜ!

 

 

 

 

 

「あ、困ってる困ってる」

 

 

 

 ネオフュージョンの欠片が変化したぬいぐるみの中に広がる空間にて。ここでは1番の目印になりやすい大きな山の中でも、街を眺めることができそうな場所で、黒いウサギの耳を揺らしながら一人の闇の使者がその様子を観察している。

 その彼女の手元にあるケージの中には、中に閉じ込めたこの世界の自分たちの変身アイテムが入っている。彼女達が気を失っている間に、簡単に抜け出せられないように拝借させてもらった。

 

 

 

「コンプリートも珍しく追い詰められてるみたいだし、このままじゃ先に倒れちゃいそうだよね〜。ここにいるんだけどな〜」

 

 

 

 闇の使者────ダークネスホイップは、誰が一番早くここに辿り着けるかなあと、どこか得意げに、どこか呑気に考えるのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

第17話:笑顔と想いを レッツ・ラ・まぜまぜ!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ど、ど、どひゃ〜ぁぁぁぁっ!?!?」

「やけっぱちなゾンビ映画かな???」

『そんな呑気なこと言ってる場合じゃないって!!!』

『追いつかれるよ〜!!!!』

 

 

 

 いちかとコンプリートは、ゾンビの如く迫り来るネンドモンスターの大群から商店街中を逃げ惑う。

 慌てふためくいちかとは反対に、コンプリートは驚くどころか緊迫したムードを吹き飛ばすほどの呑気な発言でプロトキュア達に突っ込まれる。

 ただしここは、あの闇の使者・ダークネスホイップが使役していたであろう、目のない人形によって送り込まれたおかしな空間。無彩色の空の下、出口と奪われたらしい変身アイテムのスイーツパクトを、同時並行で探さなければならない。

 

 

 

『CureWeapon!Blossom!』

 

「鏡!?何をするの?」

「先にいちかちゃんの探し物を見つけよう!取られたままなのは流石にまずい」

『ここは私に任せてください!』

 

 

 

 鏡面から放たれる光は、真っ直ぐに商店街を抜け上空を指し、大きな山の上を指した。探し物は、どうやらあそこにあるらしい。

 

 

 

「山の……上?」

「い、いちご山の上!?知ってる場所だけども……な、なんでぇ!?」

「十中八九闇の使者がそこにいるんだろうなあ」

『というか、あそこまで登るの?!』

 

 

 

 しかし、コンプリートはキュアウェポンの力を使えば一っ飛びでいけるが、いちかを抱えて行きつつネンドモンスターの大群をかわしていかなければならないと考えるとやることが多い。向こうはこちらの体力を削るために色々と仕込んでいるのだろう。

 走っていく中、いちかはとあるものを見つけて立ち止まる。

 

 

 

「ねえ!これって使えないかな!」

「これって……荷台?」

 

 

 

 見つけたものは、大きな荷物を運ぶためによく使われるような、手押しの荷台。それを見たコンプリートは、いちかが閃いたらしい移動方法をすぐに理解する。

 

 

 

 

 

「今の光は……!」

「あれ絶対なんかあるやつだろ!」

「とにかく、いちご山に向かうしかないわね!」

 

「いったい誰が指してくれているのかはわからないけれど……」

「もしかすると、他のみんなもあの場所へ目指しているかもしれない!」

 

 

 

 一方、総合病院付近でネンドモンスターの大群から身を隠していた有栖川ひまり・立神あおい・キラリンことキラ星シエル、高校前まで逃れていた琴爪ゆかり・剣城あきらは、コンプリートがスイーツパクトの在処を探すために指したキュアウェポンの光を見つけ、それぞれ光が差し示したいちご山を目指して走り出す。

 

 

 

 

 

「山への道は?」

「一本下!」

「それなら一度ここを下った方がいいかも!しっかり捕まってて!」

「え???わ、ちょ、うわああああああああ!?!?」

 

 

 一方、手押しの荷台の上にいちかを乗せて、コンプリートはネンドモンスターの追ってから逃げるように商店街中を荷台を押しながら走り抜けていた。

 いちご山への山道へは一本道を間違えていたため、ここが坂道であることを利用して一気に駆け降りる。下り坂による加速効果で、大群から一気に距離を取るつもりだ。案の定車輪は一気にスピードを上げ、どんどん坂を下っていく。

 

 

 

「次の道右行ってそこからまっすぐ駆け上がってぇぇ!!」

「オッケーいっちゃん!」

 

『CureWeapon!Happy!』

『PowerCharge!March!』

 

 

 

 キュアマーチの力を纏った翼を展開し、風を巻き起こしながら全力で右に曲がり、一本別の道へと辿り着く。そのままコンプリートは風の力でさらにスピードを上げ、いちご山への山道を目指す。いちかもいちかで振り落とされないように手すりを掴み、前から押し寄せる風圧にも負けないように、コンプリートへ道順を全力で教える。

 

 押し出す勢いのまま、どんどんと山道を登っていき、その先にある開けた場所へと辿り着く。

 

 

 

「ここは……!」

『あそこにいるのは……!』

 

 

 

 その場所は、コンプリートがこっち側の空間に来る前に降り立っていた『キラキラ⭐︎プリキュアアラモード』の世界の、大きな山の上のとある場所とほぼ同じ景色。その場所に大きなぬいぐるみ型のネオフュージョンの欠片がない代わりに、一人の黒いウサギの耳を揺らした闇の使者らしき人物がいた。

 

 

 

「あれ!?私っぽいのがいる!?」

「その子絶対闇の使者」

「しかも、あのケージに入ってるのって、スイーツパクトだよ!こ、こらー!!」

「……え?」

 

 

 

 その人物が手荷物ケージには、スイーツパクトと呼ばれる小さなアイテムが6つほど入れられている。案の定、闇の使者が事前に彼女達の手元から奪っていたらしい。

 二人が彼女の元に勢いのまま突撃してくることに気づいた闇の使者────ダークネスホイップは、驚きの声をあげる。

 

 

 

「えぇぇぇ!?ちょっとくるの早くない!?」

「そりゃこれで全力疾走してたからね」

「そういう問題!?とにかく来ないで!ダークネス・デコレーション!」

 

 

 

 ダークネスホイップはその手にロッド状のアイテムを手にもつと、イチゴが添えられた大きいホイップクリームのような形をした黒いエネルギー弾をコンプリート達の方に向けて数発放ってくる。

 

 

 

『撃ってきた!?』

「ちょ、ちょっといっちゃん振り落とされないでね」

「うぇ!?」

 

 

 

 いちかに向けて忠告した瞬間、コンプリートは飛んでくるエネルギー弾をかわしながら蛇行していく。右に左に避けるために、荷台に乗っているいちかが若干目を回している。

 しかし、周辺に着弾した際の爆風に煽られ、二人は2台ごとダークネスホイップの方に向かって吹き飛ばされてしまう。

 

 

「わぁぁぁ!?」

「いっちゃん!!」

 

 

 

 コンプリートは風の力を纏った翼で俊敏に動き、前方に大きく吹き飛んでいったいちかをすぐに捕まえて抱える。ただ、その勢いのままにダークネスホイップの方に突撃する。

 

 

 

「あ、ありがとうコンプリート!だけど何するの!?」

「ちょっと頭守っててね」

 

『CureWeapon!Scarlet!』

 

 

 

 疾風から一転して深紅の炎を纏い、炎は不死鳥のような形を取りながら、ダークネスホイップの方へと果敢に飛んでいく。その構図はまさに、小動物を狙う肉食の野鳥。

 

 

 

希望の不死鳥(ホープフルフェニックス)ッ!!」

「えぇぇぇぇ!?」

 

 

 

 このまままっすぐ飛んでくるとは思っていなかったのか、ダークネスホイップは思わずケージを手放してしまう。炎を纏ったコンプリートの突進を防ぐために、黒いクリーム状のエネルギーを集めてバリアを作って応戦する。

 この力は、キラキラルやクリームエネルギーではないとまともに打ち破ることができないのはすでに知っている。予想通り、コンプリートはそのバリアを打ち破ることはできず、後方に吹き飛ばされる。

 

 

 

「ぐぐ……やっぱり効かないのか……いっちゃん大丈夫?」

「なんとか……」

 

 

 

 しかし、ずっと抱えていたいちかに怪我はなかった様でひとまず安心する。

 

 

 

「なんでそんなに早くきたのかわからないけど、ステフォンを渡してくれるまではここから出してあげないんだからね!」

「だからと言って、そう簡単に渡すとでも思ってるの?」

「だから、コンプリートがこの世界の私たちと協力できないように、スイーツパクトを奪ったのに……って、あれ?!どこに投げ飛ばしたんだっけ!?」

 

 

 

 コンプリートの直撃回避に集中して、スイーツパクトを入れたケージをどこに投げ飛ばしたのかを忘れて周囲を見渡して探している。

 

 

 

「────あなたの探し物はこれかしら?」

「そう!それ!!……って!!!」

 

 

 

 どこからかまた別の声が聞こえてダークネスホイップが強く頷くが、その声の主の姿を見た瞬間、またしても彼女が驚きの声をあげる。

 投げ飛ばされたケージは、コンプリートがいる場所とは反対の方向へ。それは、ここに辿り着いた2人の人物によって受け止められていた。おまけにその衝撃で鍵が壊れたようで、中のスイーツパクトは全て取り返されている。

 

 

 

「やっぱり、ここにあったらしいわね」

「ゆかりさん!あきらさん!」

「君たちも大丈夫かい?」

 

 

 

 現れたのは、琴爪ゆかりと剣城あきら。コンプリートがスイーツパクトを探すために差し示した光に導かれて、この場所に辿り着いたようだった。到着したと同時にケージがそちらに飛んできたようだ。コンプリート達も二人の方に走り出す。

 

 

 

「嘘!?なんでここがわかったの!?」

「誰かさんが放った光を追いかけたのよ」

「光……?ああ、あたしだわそれ」

「君が見つけてくれたんだね。ありがとう」

 

 

 

 あきらからスイーツパクトを手渡され、奪われていたアイテムが手元に戻ってくる。

 

 

 

「あ、おい!あそこにいるのって!」

「いちかちゃん!みなさん!」

「あの黒いホイップもいるわ!」

「ひまりん!あおちゃん!シエル!」

 

 

 

 さらにそこへ、有栖川ひまり、立神あおい、キラ星シエルも到着し、離れ離れになっていた仲間達も集結する。これでようやく、目の前の彼女と戦える様になった。

 

 

 

「むむむ、パクトは取り戻されちゃったけど……!」

 

 

 

 全く悔しがっていないような声で、ダークネスホイップがロッドを掲げると、そこに黒いキラキラしたものと黒い液状の物体が集まり、周囲に飛び散っていく。光はすぐに成長し、先ほど商店街の方で見たネンドモンスターの様な姿となって大量に召喚される。

 

 

 

「出口までは行かせないんだから!」

「あのマスコット、あんなふうに作られてるんだ」

「感心してる場合じゃないですよ!」

『ネンーッ!!』

「みんな、行くよ!」

 

 

 

 いちか達6人は、スイーツパクトを構えた。

 

 

 

 

 

『キュアラモード・デコレーション!』

「元気と、笑顔を!」『レッツ・ラ・まぜまぜ!』

 

 

 

 パクトから放たれた光のクリームを纏いながら、彼女達は可愛らしいぷりきゅあの姿へと変身していく。

 

 

 

「キュアホイップ!できあがり!」

「キュアカスタード!できあがり!」

「キュアジェラート!できあがり!」

「キュアマカロン!できあがり!」

「キュアショコラ!できあがり!」

「キュアパルフェ!できあがり!」

 

『キラキラ⭐︎プリキュアアラモード!』

 

 

 

 

 

「……あたしもとりあえず名乗っとくか……、現となりし、12の魂!キュアコンプリート!」

『とりあえずで名乗っていいものでしたっけ?』

『いやわかんない……』

 

 

 

 コンプリートは既に変身しているが、名乗ってはいなかったので、この場に乗じて念の為名乗りをあげておく。

 

 

 

「彼女、出口がある的なことを言ってたよね」

「この周辺にありそうだよな……」

「周りのモンスターを止めながら、出口を探そう!」

 

 

 

 7人はそれぞれ動き出し、この空間からの出口を探すために走り回る。

 

 

 

「コンプリートの相手は私だよ!」

「おっと」

 

 

 

 コンプリートに向けて放たれた黒いクリームが鞭の様にしなり、彼女を捕らえようと振り回される。現状自身の力がほとんど通用しない以上、コンプリートは避ける手段しか選べない。

 避け続けて反撃の隙を窺う中、いつの間にか片腕がクリームに巻き取られる。

 

 

 

「え?」

「捕まえた!!えーいっ!!」

 

 

 

 そのままダークネスホイップは、ロッドごとコンプリートを大きく振り回す。遊園地のコーヒーカップを全力で回されたかのようにぐるぐるに目を回され、近くの木の方に投げ飛ばされる。

 

 

 

「うぅ……し、視界が……三半規管は強い方だけどこれは流石に……」

『目が回る〜』

 

 

 

 若干の気持ち悪さを抱えながら立ちあがろうとするが、足がふらついて思う様に動けない。そこをチャンスと踏んで、ダークネスホイップがクリームのエネルギー弾を彼女に向けて放つ。

 なんとか吐き気を抑えたコンプリートはそれを避けようとするが、一歩遅く両足に被ってしまう。それは一気に固まってしまい、動きを封じられてしまった。

 

 

 

「わあまじか……」

『外せそう?』

「無理だ……これどうやって……」

 

 

 

 現状でこの力を相殺できる手段を持っていないコンプリートは、自力でこのクリームの束縛から抜け出すことができない。

 

 

 

「コンプリート!今助けに……」

『ネンー!』

「ああー!もう邪魔すんなよー!」

「これじゃあ近くにもいけない……!」

「地上がダメなら空から……!」

 

 

 

 コンプリートを助けようとホイップ達も駆けつけようとするが、何度浄化しても次々に湧いて出てくるネンドモンスターたちに阻まれて先に行かせてくれない。

 地上がダメならと、パルフェが空を駆けて近づこうとするが、モンスター達も空を飛んで妨害に徹する。

 

 

 

「ごめんねパルフェ!取るもの取ったらすぐに助けてあげるからね!」

「ちょ、ちょっと!待ちなさい!!」

 

 

 

 パルフェが行手を阻むネンドモンスターたちを相手している間に、ダークネスホイップは動けないコンプリートからステフォンを取りに近づいてくる。

 

 

 

「ま、まずいまずいまずい」

『ど、どうしよう!カスタード達の力があれば私たちでも壊せそうなのに……!』

『それなら、私が……!』

 

 

 

 

 

『CureWeapon!Flora!』

「お?」

 

 

 

 ステフォンの中のフローラが声を上げた瞬間、コンプリートを守るようにステフォンから光が飛び出し、彼女の手に長い杖となってその姿を表す。

 キュアフローラの姿を模したような装飾が施された鍵のような『長杖』は光を放ち、コンプリートの動きを封じていた黒い光のクリームを完全に消し去る。

 

 

 

「あれ?なんともなくなった……」

「な、なんですと!?キラキラルじゃないと太刀打ちできないのにどうして!?」

 

 

 

 自分が扱うキラキラルの力に対抗できる手段が突然コンプリートの手元に現れ、優勢だったダークネスホイップがわかりやすく動揺する。

 どうやらプロトフローラが変化したキュアウェポンは、コンプリートを縛る世界の概念を無視してその力を行使することができるようだ。

 

 

 

「……鍵みたいな形してるし、あたしを縛ってた制限を解除(なく)してくれたって感じなのかな」

『あらやだすごい冷静に判断してる』

『これで、私たちも一緒に戦えるかも!』

「オーケー、フローラロッドってことにして、闇の使者を止めるよ!」

 

 

 

『PowerCharge!Gelato!』

 

 

 

 勢いのままに髪留めのリングを外して力を解放し、フローラロッドを掲げる。

 杖の先に青いキラキラルの輝きが集まり、氷でできた大輪の花が現れ、冷たく煌めく花吹雪となって周囲のネンドモンスターや、ホイップ達の行手を阻んでいた黒い光のクリームを凍らせて一掃する。

 

 

 

「……あれ?前よりも苦しい感じがしない……?」

『もしかしてコンプリート、慣れてきてる???嘘でしょ???』

「す、すげえ!!ありがとうな、コンプリート!」

「あの量を一瞬で!?私たちも負けてられないわね!」

「一気に片付けるわよ!キラキラキラルン・マカロンジュリエンヌ!」

 

 

 

 3回目のパワー解放だが、体が慣れてきたのかコンプリート自身の精神的な成長なのかはともかく、前以上に力に振り回されている様な形跡がない。ともかく、これで変に暴れることもなく戦闘に集中できる。

 

 ようやく動けるようになったホイップ達も、反撃開始と言わんばかりの勢いで、キャンディロッド・レインボーロッドを構え飛び出す。

 マカロンがロッドから放つ、お菓子のマカロンの様な楕円状のクリームエネルギーを飛ばし、周囲のモンスター達を蹴散らしていく。

 

 

 

「キラキラキラルン・ショコラアロマーゼ!」

 

 

 

 マカロンの背後に迫るモンスターを、ショコラが放つチョコレートのような螺旋を描くエネルギー波が包み込む。

 

 

 

「また助けられたわね」

「背中は守るよ」

「ジェラート、私たちも!キラキラキラルン・カスタードイリュージョン!」

「おう!キラキラキラルン・ジェラート・シェイク!」

 

 

 

 カスタードが放つ無数の黄色のエネルギー弾に、ジェラートが放つ氷の礫の嵐が、無限に湧いて出てくるネンドモンスターたちを一掃する。これで一気に敵の数が減った。

 

 

 

「わ、わ、わっ!?」

 

 

 

 ダークネスホイップは過剰に驚きつつも、無策ではない。黒いキャンディロッドのようなアイテムに黒い光のクリームを放ち、鞭のように操る。再びコンプリートを捕まえるつもりだ。クリームに足を取られないようにコンプリートも避けるが、向こうの鞭捌きもそれを許さぬ素早さで迫ってくる。

 

 

 

「ぐ、このままだとまた足縺れて一気に引きずられそう……」

『それなら、一度動きを封じちゃえばいいんだよ!』

「なるほど?……それなら」

 

『PowerCharge!Muse!』

 

 

 

 今度は黄色の光が灯り、先ほどよりも強い輝きを見せる。どうやらこの力とベストマッチの組み合わせらしい。ふとみれば、ダークネスホイップの足元には五芒星を模した魔法陣らしきものが出現している。彼女はコンプリートに夢中になっているのか、魔法陣の出現に気づけていない。

 

 

 

「ちょ、ちょっと、そんなにあたしに夢中になってて大丈夫?」

「……え?」

「そこ、離れてないと危ないよ?輝く女神の花吹雪(フローラルサークル)ッ!!」

 

 

 

 ロッドを振り落としたと同時に、ダークネスホイップの足元の魔法陣からは、泡のような光と花吹雪が同時に放たれ、彼女の動きを封じた。

 

 

 

「うわぁっ!?か、体が……!」

「一気に決めよう!暗闇に飲まれたその心、撃ち抜くよ!プリキュア・ブレッシングキッスッ!」

 

 

 

 投げキッスの要領で右手の指を銃口のように、ダークネスホイップの胸のリボンに輝く紅いクリスタルに向ける。無数の桃色のハートが集まり、一つのハートのエネルギー弾に凝縮され、それは合図とともに彼女めがけて撃ち出される。

 

 

 

 

『ネンーッ!!』

「させない!キラキラキラルン・ホイップデコレーション!」

 

 

 

 ダークネスホイップを守ろうと、モンスター達が弾丸を受け止めるが、ホイップが放ったイチゴが乗ったホイップクリームのようなエネルギー弾が彼らを引き剥がす。

 

 完全に動きを制限されたダークネスホイップは、なす術もなくその胸を撃ち抜かれる。

 

 

 

「うわっ!?」

 

 

 

 衝撃だけで痛みはなく、撃ち抜かれた紅いクリスタルからはあの桃色の光の玉が飛び出し、すぐにステフォンの中に吸い込まれていった。一方、喰らってしまったダークネスホイップは、今までの闇の使者と同様、一時的に力を奪われて座り込んでしまう。

 

 

 

「あとは出口だけだよ!」

「それなら、さっきそれらしき割れ目を見つけたわ!そこに力をぶつければ……!」

 

 

 

 パルフェが見つけたという空の一部分に、ガラスが割れたような模様が見えた。おそらくそこが、この空かからの出口だ。出口の場所を悟られて、ネンドモンスター達は一つの巨大な怪物となって、プリキュア達に襲いかかる。

 

 

 

「合体してくれて助かったわ!」

 

 

 

 パルフェはレインボーリボンの星を回し、虹色に輝く光のリボンを振り回す。

 

 

 

「行くよ!アン・ドゥ・トレビアン!」

 

 

 

 掛け声と共に巨大なグラスとクリームに包まれ、怪物は光の中に閉じ込められる。パルフェによって、クリームが乗ったグラスにアイスやワッフル、色とりどりのフルーツが飾り付けられ、大きなパフェが完成する。

 

 

 

「キラクル・レインボー!」

 

 

 

 虹色のリボンが回れば回るほど、グラスの中にはキラキラルが溜まり、中に閉じ込められた怪物が持つ闇の力を浄化していく。

 

 

 

「ボナペティッ⭐︎」

 

 

 

 その掛け声と共に虹色の爆発が起こり、中の怪物が完全に浄化されて消滅する。瞬間、周囲に白い光が放たれる。爆発の勢いで出口が開き、元の世界に引き戻されるようだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『……!?』

 

 

 

 プリキュア達を取り込んだネオフュージョンの欠片の大口が開き、眩い光と共にコンプリート達が一斉に吐き出される。相変わらず技を放つと変身が解けてしまうようで、巡の姿に戻ってしまう。

 しかし、残りは元凶であるあのぬいぐるみだけだ。

 

 

 

「あとはあのぬいぐるみだけなら、任せて!みんな!」

『うん!』

 

 

 

 ホイップ達がキャンディロッドを構える、ポッドを回しながら飛び上がる。

 

 

 

『キラキラキラルン・フルチャージ!』

 

 

 

 カスタードとジェラートが放つクリームエネルギーが混ざり合い、マカロンがそれを5枚に切り分け、ショコラが焼き上げる。

 出来上がったスポンジに、ホイップがクリームとイチゴで飾り付け、5段の巨大なケーキがぬいぐるみの姿をした欠片を包み込む。

 

 

 

『スイー、ツー、ワンダフルアラモードッ!』

 

 

 

 ポッドを回せば回すほど、カラフルなキラキラルが欠片を包み込み、その身に宿すネオフュージョンの力を弱らせて浄化されてゆく。

 ケーキが光となって弾け、欠片は完全に浄化されて消滅する。

 

 

 

 

 

 

「うぅ……あともうちょっとだったのに〜!今度会った時は負けないからね!!」

 

 

 

 ダークネスホイップは一時的に無力化されているにも関わらず、ウサギの如く片足をだんだん踏み鳴らしながらどこかに消えていった。

 久しぶりに明るい寄りの性格をした闇の使者に出会ったせいか、巡は少しだけホッとした表情を浮かべる。

 

 

 

「フローラを挟んでるとはいえ、ブラックだったりドリームだったりまあまあシリアスな感じの子と戦ってたから、あのホイップ見るとなんか安心するよね」

『安心……安心!?』

『確かにあんな感じに明るい闇の使者は久しぶりな気がするけど……』

「普段何と戦っているのか気になるわね……」

 

 

 

 マカロンが巡から話を聞き出そうとしたが、光の玉を吸い込んだステフォンから光が放たれ、巡達を水晶の世界へと誘う。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……あれ?ここは……」

『またこの世界?』

 

 

 

 ステフォンから溢れ出した光が収まると、変身が解けたいちか達ごと、巡はあの水晶の世界へと飛ばされていた。相変わらず自由に動き回れるし、この世界にあるものがまあまあカオスさを醸し出している。

 

 

 

「綺麗には綺麗な場所だけど……何だか騒がしそうな世界ね……」

「向こうのほうにお城も見えますよ!」

「ごちゃごちゃはしてるけど、楽しそうな感じがするわね」

『本当にこの状態からどうなるんだろう……?』

「今の所調和が生まれてる気配はないからね……あ」

 

 

 

 今回巡が立っていた近くの水晶の中で眠っていたのは……。

 

 

 

「あ!私だ!?」

「ホイップか……」

 

 

 

 いちかと共に見つけたのは、水晶の柱の中で眠るキュアホイップだった。

 

 彼女が眠る水晶の柱からは、淡く優しい桃色の光が溢れ出し、厚い雲が覆う天へと伸びていく。

 

 光が収まった後に周りを見渡すと、水晶の柱が集まる場所からそう遠くない場所に、お菓子でできた家が出現していた。壁はクッキー、屋根はチョコレート、ホイップクリームやアイシング、アラザンなどで飾り付けられた家からは、美味しそうな甘い香りが漂ってくる。

 

 

 

「教会に、お城に……今度はお菓子の家?いよいよ混沌を極めてきたよ」

「でも、何だか美味しそう……!」

 

 

 

 ひとまずドアが空いていそうだったので、スナック菓子のドアノブを回して中を覗いてみる。

 

 

 

「お邪魔しま────」

「あ、あなたが呼んでくれたんですか!?」

「びっくりしたこっちからくるじゃん」

 

 

 

 巡がドアノブに手を伸ばし掴む前にドアは開き、中からこの世界のカスタードが飛び出してくる。室内には他4人も揃っている。例に漏れず半透明ではあるが、元気そうではある。

 

 

 

「あ、アタシらがもう一人いるんだけど!?」

「一体、何がどうなって……?」

「もしかして、別の世界のアタシ達か!?」

「色々あってこの状態なんだけど、そこまで気にしないでね」

「いやいや割と気にするよ???」

『私たちには見えていないけど、みんな魂だけになっちゃって……』

「魂だけになっちゃって……???」

 

 

 

 プロトキュア達の説明を受けても気になることしかないが、ひとまずはここにいる半透明の自分たちはこの世界のプリキュアだということは納得してくれた。

 

 

 

「あたしの知ってることは、ステフォンには元々の持ち主がいて、ここで何らかの爆発が起きてこんなことになったって聞いたんだけど……他に何か知ってることはない?」

「大体はあなたが言ってることと同じだけど……」

「そうね、あなたが持っているステフォンについてなら、昔前の持ち主からこんなことを聞いたのよ」

「……え?」

 

 

 

 と、この世界のマカロンがステフォンを覗きながらそういった。

 

 

 

「“世界を繋ぎ、救いをもたらす光となる”。……彼女は昔、そう言っていたわ」

「救いをもたらす光……このスマホが?」

 

 

 

 言い方的に古くから伝わっているアイテムの様だが、見た目は完全にスマートフォン。どう見ても科学力が発展した世界で生み出されたアイテムが流れ着いた様な気がするが、前の持ち主も巡と同じように、偶然ステフォンを持つことになったのだろうか?

 

 

 

「それに……その中に他のプリキュア達がいるみたいだけど、前に見た時は誰もいなかったような……」

「え?誰もいない?」

「見た目通り、フツーにケータイみたいに使ってた!」

 

 

 

 さらに、前の持ち主の時にはステフォンの中にラブリー達のようなプロトキュアはいなかったらしい。

 またしても謎が増えた所で、いつものように景色が白く淡くなっていく。元の世界に戻される時が近いようだ。

 

 

 

「め、目の前が……」

「あーまた引き戻されるパターン?」

『えぇ〜!?もう!?』

「あら、もう帰ってしまうの?寂しいわね」

「あの!魔法界に行ってみるのはどうでしょうか?!」

「ま、まほーかい?」

「あの世界の大きな図書館には、さまざまな伝説が記されている書物があるって、リコさん達から聞いたことがあるんです!もしかすると!」

「そこにワンチャン、ステフォンについて書かれてるかもしれないんだね!わかった!タイミングがあったら行ってみるよ!」

 

 

 

 カスタードのアドバイスを受けながら、巡達は再び元の世界に引き戻され、視界が明転する。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「魔法界、か……忘れない様にしておこう」

 

 

 

 元の世界に戻ってきて、魔法界に訪れる機会があれば図書館へ足を向けようと考える。ステフォンの画面を確認すると、中では新しく戻ってきたであろう、ウサ耳と尻尾と割とそのまま二頭身のキュアホイップの姿をした精霊────プロトホイップが眠っていた。

 しかし、考えているとふと、巡のお腹から空腹を知らせる音が鳴った。

 

 

 

「そういえば海だから水着だったんだっけ。危ない、忘れるところだった」

『そ、そういえば!』

「だから随分と涼しそうな格好なんだね!?」

『あのモンスターから逃げるのに必死になってたから、頭から抜け落ちてたよ〜!』

「ついでにラムネ飲んで以降飲み食いしてないからか若干小腹が……」

 

 

 

 あの水晶の世界で見たお菓子の家の甘い香りの刺激で、空腹感が余計に襲いかかってくる。これはすぐに元の世界に帰ったほうがよさそうだなとステフォンを操作しているところだった。

 

 

 

「めぐるん!このあと時間ある?」

「え?」

「これから新作の試食しようと思っていたんだけど……よかったら巡ちゃん達もどうですか?」

「え、いいの?」

 

 

 

 と、いちかたちに偶然な提案をされ、巡は二、三度瞬きする。申し訳なさよりも空腹が優ったのか、速攻で頷いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

<ネオフュージョンの世界・漆黒の城 闇の使者の大広間>

 

 

 

 

 

「ただいま〜!あと一歩だったのに負けちゃったよ〜……って、うえぇぇぇっ!?!?」

「ホイップおかえり!相変わらず声が大きいね!」

「あ……ホイップ……」

 

 

 

 コンプリートに負けて帰ってきたダークネスホイップが大広間を訪れると、なぜかブラックを含めた他の闇の使者が勢揃いしていてさらに今まで“目覚めていなかった”ラブリーの姿までいて驚きの声を上げる。

 

 

 

「ら、ラブリー!起きたんだね!!よかった〜!!」

「う、うん……」

 

 

 

 喜ぶホイップに対し、当のラブリーは困惑した様子で反応する。何かあったのだろうか。自分たちが知っているラブリーは、ここまで笑わない人だっただろうか。

 

 

 

「あれ……?」

「ラブリー、ずっとこんな感じなの」

「中に入ってるのが本人じゃないから、何かが欠けちゃってるんじゃないかって」

 

 

 

 フローラとミラクルが、今知ったばかりのホイップに小声で伝える。

 

 この場にいるラブリーの姿をした闇の使者────ダークネスラブリーは、以前『ハピネスチャージプリキュア!』の世界に訪れたダークネスブラックが、ステフォンの中のラブリーを捕らえた際に残ったクリスタルに残った彼女の力によって目覚め、今こうして動いている。

 しかし、中にラブリー本人が入っていないためか、元々の彼女から何か大事な部分が欠けているらしい。

 

 

 

「兎にも角にも、やっとみんな揃ってよかったよね!」

「うんうん!これからパーティーしようって話してたんだよね!」

「ホイップ、帰ってきてすぐなんだけど、一緒にお菓子作りしない?」

「え〜!やるやる〜!」

「なにも、私まで誘わなくても……」

「だーめ、全員参加なんだよ!」

「ネオフュージョンに呼ばれていない今らゆっくりできますし」

「でも、私が……」

「大丈夫。ブラックがどこかに行こうとしたら、引きずってでも連れ戻すから」

「わあ、頼れる〜」

 

 

 

 闇の使者達が思い思いに準備しに行ったりする中、ハートだけは別のことを片隅で考えていた。

 

 

 

 

 

『どう、して……みんな、生きているの……?』

 

 

 

「……」

「ハート、どうかした?」

「あ、ううん!大丈夫!さ、アタシも張り切って準備するぞー!」

 

 

 

 ラブリーが目覚めてからの第一声が意味深な言葉だったので、それが嫌に胸に引っかかっていた。何か、自分たちには教えられていない消えた記憶についてを知っていそうな感じだった。

 

 

 

(……二人きりになった時に、聞いてみるか)

 

 

 

 確実に何かを知っているブラックにも、彼女から何も教えられていない仲間達には悟られないようにしなければと、ハートは考えるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

<キラキラ⭐︎プリキュアアラモードの世界>

 

 

 

 

 

「じゃーん!アニマルシャーベット、出来上がり!」

「おぉ〜!」

 

 

 

 ここはキラキラパティスリー。通称キラパティの厨房内。いちかたちプリキュアのスイーツ工房兼スイーツショップである。

 彼女達は持ち運びができるお店で、単純に自分たちが作りたかったり、ここにスイーツを食べにくるお客さん達に喜んでもらえるようなスイーツを提供し、人々に笑顔を届けている。

 

 今回は冷たいスイーツということで、シャーベットを作っていたようだ。前に訪れた子供連れの母親から、「子どもと楽しく作れるものがあると助かる」と言うリクエストがあったようだ。

 

 作り方も簡単で、氷水の入った袋にジッパー付きの袋に入れたジュースやサイダーを入れて、全力でシェイクしていた。昔ボール上のアイスクリームメーカーが販売されているのを見たことがあったので、これなら小さな子供でも楽しくスイーツ作りができそうだ。

 そうしてできたシャーベットを丸く盛り付け、チョコペンやフルーツ、小さなお菓子で飾りつけ、器の上にうさぎ、リス、ライオン、猫、犬、ペガサスなど、可愛らしい動物達が並んでいる。

 

 

 

「い、いただきます」

「召し上がれ!」

 

 

 

 巡は早速、イチゴ味のうさぎシャーベットを食べてみる。ひんやりとした味といちごの風味が口いっぱいに広がっていく。

 ちなみに巡は、パーカーを羽織っているものの水着のままなのも可哀想だということで、キラパティの制服を借りている。

 

 

 

「あ、美味しい」

「でしょ?」

「しかも作り方も簡単だし、デコレーションを工夫したら、いろんな動物が作れそう!」

「やっぱプロってすごいや」

 

 

 

 プロトキュア達もシャーベットを食べてご満悦な様子。彼女達から笑顔が溢れて、キラパティの面々も喜んでいる。

 

 

 

『う、ん……美味しそうな匂いが……あ!シャーベットだ!』

「あ、ホイップが起きた!」

「そっちのホイップも目覚めたようね!」

「あなたも一緒に食べる?」

『た、食べる!』

 

 

 

 スイーツの甘い香りに誘われて、ステフォンの中にいたホイップがすぐに目覚めて中から飛び出す。

 どうやら、もう少しだけこの世界に留まることになりそうだ。

 

 

 

続く…

 




次回投稿日:6月1日(土)
え、来週からもう6月???

ちなみに最後のシャーベットの作り方は、雪印メグミルクさんのお料理レシピを参考にしています。
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