PrecureStageON!   作:主氏レム

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第19話:キュアップ・ラパパ!迷路の出口はどこ?

 

 

 

 

 

 

「キュアップ・ラパパ!エメラルド!フェリーチェ・ファンファン・フラワーレ!」

「コンプリート・ステージON!」

 

 

 

 怪物に追いかけられながら、二人はリンクルスマホンやステフォンを構えて光に包まれ、プリキュアの姿へと変身する。

 

 

 

 

 

「あまねく命に祝福を!キュアフェリーチェ!」

「現となりし、12の魂!キュアコンプリート!」

 

 

 

 

 

『ヨクバール!!!』

「なんで迷路の中に怪物が。やけに道幅が広いのはそういうこと……?」

「とにかく出口を見つけましょう!」

 

 

 

 『魔法つかいプリキュア!』の世界に辿り着いた巡は、現れたネオフュージョンの欠片が化けた怪物の中に広がる世界へと投げ込まれてしまった。現在は、巡を追いかけてきたフェリーチェと一緒にこの空間から抜け出すため、怪物の追っ手から逃げつつ出口を探している。

 

 

 

「出口は!」

『西の方を指しています!』

「無理やり飛び込んでも見えない天井があったあたり、簡単に脱出はさせてくれないっぽいね」

 

 

 

 ブロッサムミラーが示す出口の場所へ直接乗り込むため、試しに迷路を無視して壁を飛び越えようとしたが、見えない天井に阻まれ頭をぶつけてしまった。こうなったら素直に迷路を攻略するしかない。

 

 

 

「リンクル・ピンクトルマリン!」

『ヨクッ!?』

 

 

 

 フェリーチェが持つフラワーエコーワンドから放たれる、鮮やかな桃色の光で作られた花形の防壁が、前方に現れた怪物を押し返して道を作る。

 

 

 

「こうなったら“左手法”を使って地道に見つけるしかないか……」

「左手法、ですか?」

「常に左壁に沿って歩いていけば、時間はかかるけ度確実にゴールに辿り着ける理論!」

『聞いたことがあるよ!』

『とにかく、欠片の妨害を交わしつつゴールを目指そう!』

 

 

 

 コンプリートとフェリーチェは、出口を見つけるために規模の分からない迷路の出口を探っていく。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

第19話:キュアップ・ラパパ!迷路の出口はどこ?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「え、えぇぇ!?」

「こ、こんなことってあるの……!?」

 

 

 

 一方、ネオフュージョンの欠片の外である、魔法界のとある浮島にて。大切な仲間と出会ってばかりの少女を閉じ込めた怪物から2人を助けるために戦う、キュアミラクルとキュアマジカル。怪物を使役していた人物の姿を見て、それぞれ驚きの声をあげる。

 

 

 

「別の世界だけど、リコ達の顔が見れて嬉しいな♪やっぱり来てよかった!」

「み、ミラクル!?」

「なんで私がもう一人!?」

 

 

 

 怪物の方にいるのは、なんと黒いキュアミラクル────闇の使者・ダークネスミラクルだ。ダークネスミラクルは、地上にいるこの世界の自分と相方の姿に、ワクワクした様子で見下ろしている。

 

 

 

「こっちのリコは欠片に任せるとして……ひとまず、ここの私たちから邪魔されないようにしないとね♪」

「邪魔されないようにって……きゃあ!?」

「マジカル!うわぁ!?」

 

 

 

 ヨクバールの姿をした欠片が、二人を分つようにマジカルだけを狙って飛んでくる。離れ離れにされたミラクルが相方を助けようとするが、ダークネスミラクルがそれを妨害する。

 

 

 

「あなたの相手は私だよ!」

「ぐ……っ!マジカル!待ってて!」

「ええ!このヨクバールは、なんとか引き止めるわ!」

 

 

 

 欠片を相手を一旦マジカルに任せ、ミラクルは黒い自分にふっかけられた喧嘩を穏便に済ませて相方の助けに入るために少し離れようとする。しかし、ダークネスミラクルはそれを許さないように黒い箒を召喚し、追い続ける。

 

 

 

「あはは♪待ってよ〜!ダークネス・ペリドット!」

「わわっ!?リンクル・ムーンストーン!」

 

 

 

 追いかける彼女の手に黄緑色の光の魔法陣が現れると、ミラクルの動きを封じるための葉の吹雪が襲いかかる。しかしミラクルもリンクルステッキを構え、満月のような形をした光のバリアで吹雪の直撃を防ぐ。

 普通に攻撃しても足止めにならないと感じたのか、ダークネスミラクルは紅に燃える黒い闇を纏い、その姿を変える。その姿は黒いコスチュームである以外は、ルビースタイルとほぼ同じ。そのまま箒を飛び降り、ミラクルに向かって拳を振り下ろす。

 

 

 

「わっ!?うそ、姿を変えられちゃうなんて……!」

「こんなことだってできるんだよ!」

 

 

 

 振り下ろされた拳を避け、直撃した地面には大きなクレーターが作られている。力でダメならと、今度は青く煌めく黒い闇を纏い、サファイアスタイルとほぼ同じ姿となって上空を飛び回る。

 

 

 

「ルビーの次は、サファイア……!一体、どこに……」

 

 

 

 動きに翻弄された上に姿を見失ってしまう周囲を見回すミラクルの上空から、金色に弾ける黒い闇を纏ったトパーズスタイルと似た姿のダークネスミラクルが、黒い光のハンマーを構えて振り落とさんとする。

 

 

 

「リンクル・アメジスト!」

「え!?」

 

 

 

 しかし、欠片に妨害されながらもアメジストの力でミラクルを近くにテレポートさせたマジカルのおかげで、ハンマーの重い一撃を喰らわずに済んだ。さらに、ようやくミラクルとマジカルが合流できた。

 

 

 

「さ、最初からこの力を使うべきだったわね」

「ありがとう、マジカル!」

『ヨクバール!!』

 

 

 

 再び二人を離れ離れにさせようと欠片が襲いかかるが、二人はすぐに避けて背面部に蹴りを喰らわせ地面に墜落させる。

 

 

 

「二人で一緒なら!」

「怖いものは何もないわ!」

「むぅ〜……私だっているのに」

 

 

 

 ミラクルとマジカルは真っ直ぐに欠片を見据えて構える。その二人の眩しい姿を見て少し拗ねたようなことを小さく呟くと、ダークネスミラクルは倒れた欠片を魔法で起こし、再びプリキュアたちと対峙する。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「出口に辿り着かねえ」

『なんだか同じ場所をぐるぐる回ってるような……』

 

 

 

 一方、欠片の奥の空間内にて迷路の攻略を行っていたコンプリートとフェリーチェは、ガイドはあるのに出口に辿り着けないでいた。

 

 

 

『……あぁ〜!!もしかしてこの迷路、道の途中に出口があるんじゃないかな!?』

「ま、真ん中に?」

「……ああそういうこと?」

 

 

 

 どうして出口に辿り着けないのかを考えていたのか、ステフォンの中のホイップが何かを閃いてコンプリートたちに告げる。コンプリートもその話を聞いてすぐにピンときたようだ。

 

 

 

 左手法とは、迷路などで困った時に使える攻略法の一つである。「壁に常に左手をつけた状態で前進する事でゴールまでの道を見つける」という極めてシンプルなものだが、地図やマッピングが不要、時間はかかるが長さに問わず確実にゴールができる手法として度々用いられる。

 

 ただしこの方法は、スタートとゴールが壁で繋がっているという条件が必須になってくる。

 壁ではなく内部にスタートやゴールが設置されていたりすると、同じ場所をぐるぐる回ることになるので永遠にゴールに辿り着けない。

 

 

 

「あっっっぶな、その可能性を考慮してなかった」

『じゃ、じゃあどうやってゴールを見つければ……やっぱり道作っちゃう?』

「道を作るとは」

「もしかして、壁を壊してということですか?」

『上から行くのはダメだったけど、壁壊すくらいなら許されるんじゃないかな!』

「許され、ゆる、うーんどうだ」

 

 

 

 ピーチによるもはや強行突破とも言える提案で、上から飛んでダメなら壁を壊して直接ゴールに繋げればいいじゃないか的な考えに至る。むしろ、自分たちは強制的にここに閉じ込められたのだから、ここを大真面目にクリアする道理はそこまでない。

 

 

 

『ヨクバール!!』

「追いかけるどころか前からも?ちょうどこの先を示してるのに」

「試してみましょう!」

 

 

 

 ちょうど出口の在処を指す方向から、怪物が迫ってきていた。フェリーチェが前に飛び出し、フラワーエコーワンドが煌めく。

 

 

 

「キュアー・アップ!」

 

 

 

 ワンドに唱えられた彼女の声が数回反響し、大地に咲き誇る花々のエネルギーがフェリーチェの方に集まっていく。描かれるのは(無限大)

 

 

 

「プリキュア・エメラルド・リンカネーションッ!!」

 

 

 

 怪物に向かって放たれた桃色の光線と、緑色の光のリングが怪物を包み込みながら、大きく後ろへと吹き飛ばしていく。浄化されながら迷路の壁にぶつかった怪物は、そのまま壁を突き破って抜け道を作り出していく。

 

 

 

『ああ!?やっぱり!』

「プリキュアの力もあるんだろうけど、迷路の壁脆くない???」

『そっち!?』

「ですが、これで一直線にゴールに行けますね!」

「ちょっと遠いけどこれならとんでも問題ないか……。ハッピー、行けそう?」

『うん!任せて!』

 

『CureWeapon!Happy!』

 

 

 

 フェリーチェは背中の妖精の羽を、コンプリートはハッピーウィングを背負って、怪物のおかげで作られたゴールまでの道を一直線に飛んでいく。

 視界の先に見えるのは、あの時自分たちを閉じ込めた怪物の胴部分で見た扉。どうやらここが、示された出口らしい。その出口には絶対に活かせないというように、前方から突然現れた怪物が、勢いよく二人の方に向かって飛んでくる。

 

 

 

「ちょ、邪魔すぎるってばこれは……!!」

『コンプリート!私も手伝うよ!』

 

 

 

 

 

『CureWeapon!Whip!』

「お」

 

 

 

 ホイップの声と共にステフォンの中から光が飛び出し、コンプリートの手に握られる。それは、キュアホイップの姿を模したような装飾が施された『鞭』の形をしたキュアウェポン。

 

 

 

「なるほどホイップだからホイップウィップ……綴りが同じだ、まあいいや」

『えぇ!?こんな感じになるの!?』

「大丈夫、これならなんとか……!」

『ヨクバール!!』

 

 

 

 迫り来る怪物のツノ部分に、クリームエネルギーを纏った淡い桃色のウィップの紐が巻きつく。怪物はそのまま通り過ぎてコンプリートを引きずり回そうとするが、コンプリートも負けてはいられず出口の方に向かって飛んで行こうとする。

 

 

 

「ぐぐ……っ、結構重い……!」

「コンプリート!」

 

 

 

 フェリーチェも駆けつけて、引きずられそうなコンプリートを掴んで共に支える。最初は向こうの勢いに飲まれそうだったが、徐々にコンプリート側と拮抗して彼女たちの方へと怪物がズルズルと引きづられていく。

 

 

 

「こ、の……っ、えーい!」

『!?!?』

 

 

 

 まあまあ気の抜ける掛け声とは裏腹に、コンプリートの強力な腕力で怪物はウィップに巻かれたまま釣り上げられ、出口に向かって投げ飛ばされる。投げ飛ばされた怪物は、固く閉じられた扉に激しくぶつかり、鍵ごと破壊して消滅する。

 

 ギィ、と、扉がゆっくりと開き、外の世界への光が差し込んでくる。

 

 

 

「あの先へ行けば!」

「外に出られる!」

 

 

 

 二人は、みらいたちが待つ外の世界へと全速力で飛び出す────

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「────あああああ」

「ミラクル!マジカル!」

「え!?」

 

 

 

 ちょうど、ダークネスミラクルたちとの戦闘中だったのだろう。欠片の扉が勝手に壊れ、そこから飛び出したコンプリートとフェリーチェは、ミラクルとマジカルの元に舞い戻ってきた。まさか出られるとは思わず、ダークネスミラクルが驚愕の声をあげている。

 

 

 

「フェリーチェ!」

「それにあなたも、無事だったのね!」

「ちょっと迷子になったけどなんとか帰ってこれたよ」

「さあ、今度は私たちの番ですよ!」

 

 

 

 ようやくプリキュアたちが揃い、4人はそれぞれのアイテムを構え直す。

 形成逆転されてもなお、元凶であるダークネスミラクルは笑顔を絶やさずワクワクした様子で、コンプリートの方を見据える。

 

 

 

「あはっ♪なーんだ、私の方から行きたかったけどもうゴールしちゃったんだね!ステフォンを取り戻しに行く手間が省けてよかった〜!」

「フェリーチェたちは欠片の方をお願い!あの黒い子はあたしが相手だよ!」

 

 

 

 コンプリートが指差すまもなく、ダークネスミラクルは黒い箒に乗って彼女の方に突っ込んでくる。よっぽどコンプリートからステフォンを取り返したいらしい。

 ダークネスミラクルは早速姿をルビースタイルに変え、箒から飛び降りコンプリートに殴りかかってくる。コンプリートはリングを外して秘められた力を解放し、その力で立ち向かおうとする。

 

 

 

「気をつけて!この子、いろんな姿になるの!」

「ツインテールだとパワーが上がるのか……ピーチ、行けそう?」

『が、頑張る!』

 

『CureWeapon!Peach!』

『PowerCharge!Mint!』

 

 

 

 闇の黒い炎の魔力を纏った拳が、コンプリートが咄嗟に出したピーチイージスで受け止める。キュアミントの力を纏い、緑色の光の円盤が、ばちばちと拳の威力を相殺しようとしている。

 

 

 

「純粋のパワーなら、純粋な防御で!真愛なる安らかな怒り(ラブサンシャインソーサー)ッ!!」

「っ!!」

 

 

 

 殴られた分の威力が、緑色の光の砲撃としてダークネスミラクルを吹き飛ばそうとする。しかしすぐにトパーズスタイルの姿となって、黒い闇のエネルギー体を無数の弾丸を弾けさせてコンプリートの攻撃の隙を与えないようにする。

 

 

 

「なるほどこの姿だと手数が多いと……それなら、ドリーム!」

『オッケー!』

 

『CureWeapon!Dream!』

『PowerCharge!Rhythm!』

 

 

 

 キュアリズムの力を纏ったドリームレイピアを構え、弾丸の雨を交わしながらステップを合わせて標的へと一気に距離を詰める。

 

 

 

「多彩な技には硬派に決めるよ!たおやかなる希望の曲(ファンタスティックシュート)ッ!!」

 

 

 

 白と黄色の炎を纏った細い剣先が、危機を察知して黒い光の盾を生み出したダークネスミラクルに迫る。剣は盾を貫かん勢いで勢いよく穿ち、ダークネスミラクルは大きく吹き飛ばされる。

 

 

 

「きゃあっ!……ダークネス・タンザナイト!」

「う」

『眩しっ!?』

 

 

 

 さらに距離を詰めようとするが、星の煌めきの様な目眩しの閃光で動きを止められる。その隙にダークネスミラクルはサファイアスタイルに変身し、素早い動きと空中浮遊を駆使して、コンプリートを惑わせる。

 

 

 

「まだまだやるよ〜♪」

「おっと、スピードで翻弄するつもりだね?……ホイップ、出番だよ」

『任せて!』

 

『CureWeapon!Whip!』

『PowerCharge!Honey!』

 

 

 

 キュアハニーの力を纏ったホイップウィップの紐部分が、光のリボンの様になる。リボンは動き回るダークネスミラクルを追ってどこまでも伸びてゆく。リボンは執念深く追い続け、とうとう彼女の片足に巻き付いた。

 

 

 

「うわっ!?」

「さあ、覚悟はいい?甘い笑顔の応援歌(ハニーチアフルデコレーション)ッ!!」

 

 

 

 そのままコンプリートはホイップウィップを大きくぶん回し、ダークネスミラクルを上空に打ち上げる。彼女は動けない様に、黄色の光のリボンで拘束されている。抜け出そうとしても、力を抑えつけられているのかうまく抜け出すことができない。

 

 

 

「ぐ、うぅ……っ!」

「これで決めるよ!暗闇に飲まれたその心、撃ち抜くよ!プリキュア・ブレッシングキッスッ!」

 

 

 

 投げキッスの要領で右手の指を銃口のように、ダークネスミラクルの胸のリボンに輝く紅いクリスタルに向ける。無数の桃色のハートが集まり、一つのハートのエネルギー弾に凝縮され、それは合図とともに彼女めがけて撃ち出される。

 

 

 

「きゃああっ!?」

 

 

 

 ハートの弾丸に撃ち抜かれたダークネスミラクルは、一時的な無力化を受けてそのまま落下していく。しかし、黒い箒が彼女を受け止め、どこかへと逃げていく。そのまま元の世界へと戻っていくのだろう。

 コンプリートは特に追うことはなく、代わりに彼女から飛び出した光の玉をステフォンでキャッチする。

 

 

 

『!?』

「今なら……マジカル!」

「ええ!」

 

 

 

 使役するはずの闇の使者がいなくなってしまいオロオロしだす欠片に向けて、ミラクルとマジカルがリンクルステッキを構える。

 

 

 

「「永遠の輝きよ、私たちの手に!フル・フル・リンクル!」」

 

 

 

 ステッキを振りながら詠唱を唱え、欠片はダイヤモンドのような輝きを持つ透明なゲージの中に、闇の力ごと閉じ込められる。

 

 

 

「「プリキュア・ダイヤモンド・エターナルッ!!」」

 

 

 

 ダイヤモンドの中に閉じ込められた欠片はそのまま宇宙へと放出され、光の大爆発として消滅する。

 

 

 

 

 

「あの黒いキュアミラクルは、どこに行ってしまったのでしょう……?」

「あの調子だったらしばらくは出てこないと思うけど……」

「少しだけ……寂しそうな感じがしたわね……」

「なんというか、リコたちの顔を見て喜んでる気がしたような……」

 

 

 

 技を放ったことで変身が解けてしまった巡は、自分が欠片の空間に閉じ込められていた時に起きたことをミラクルとマジカルから聞く。やはりあの闇の使者たちも、あの世界と関係がありそうな気がする。

 そんな若干しんみりした空気を読まず、光の玉を吸い込んだステフォンから光が放たれ、巡達を水晶の世界へと誘う。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……あれ!?」

『まただ!』

「だろうね」

 

 

 

 ステフォンから溢れ出した光が収まると、変身が解けたみらい達ごと、巡はあの水晶の世界へと飛ばされていた。動いて様子を確認するが、あれからそこまでの変化はない。今度はどんな変化が訪れるというのか。

 

 

 

「うわ〜!お花畑にお菓子の家!いろんなものがあって面白そう!」

「ちょ、ちょっとはーちゃん!あんまり遠くにいっちゃダメよ!」

「はーちゃん、フェリーチェの時と雰囲気違くない?あれがデフォ?みらいちゃんとリコちゃんがお母さんみたいな?」

『はーちゃん基、ことはちゃんは元気いっぱいなんだよ!』

『そうそう!あとまあまあ近いところ当てたね!』

 

 

 

 はーちゃんこと花海ことはのギャップに驚きつつ、今回自分が近くに立った水晶の柱で眠る人物を確認する。

 

 

 

「……あ!みらいが眠ってるよ!」

「ほ、ほんとだ?!なんで!?」

「というか、キュアミラクルの状態、よね……?」

 

 

 

 ことはが気づき、みらいとリコが驚きの声をあげる。水晶の柱の中で眠るのはキュアミラクルだった。

 

 彼女が眠る水晶の柱からは、淡く優しい桃色の光が溢れ出し、厚い雲が覆う天へと伸びていく。

 

 光が収まった後に周りを見渡すと、建物続きだった世界の変化の流れをぶった斬る様に、犬やら猫やらクマやら、動物の姿をしたぬいぐるみがさまざまな場所に出現していた。

 

 

 

「あれ!?ぬいぐるみ!?」

「めっちゃあるんだけど……あたしの目がバグってなければ動いてない?」

『私にも見えるよ!ぬいぐるみが動いてるよ!』

 

 

 

 しかもそのぬいぐるみが一人でに動いているというのだから、能天気な巡でも流石に困惑する。逆に魔法界で慣れているみらいとリコは普通に受け入れているし、ことはに関してはいつの間にか打ち解けて一緒に遊んでいる。

 

 

 

「どうしよう、もっとカオスなことに……」

「賑やかなのはいいことだと思いますけどね」

 

 

 

 ぬいぐるみを抱えながら現れたのは、この世界のマジカルとフェリーチェだ。例に漏れず半透明ではあるが、彼女たちもまた、先ほどの光に導かれてここへ辿り着いたらしい。

 

 

 

「え!?リコとはーちゃんがもう一人!?」

「あ、あなたたちは……!」

「この世界のあなたたちよ。色々あって透けてるし、ミラクルは眠っているけど……」

「何かあったの……?」

「あまり、覚えていないのですが、少々トラブルがあって……」

 

 

 

 やはり彼女たちにも、ここで何が起きて世界の『崩壊』につながってしまったかの記憶が曖昧のようだ。そういえばと、巡が思い出したようにマジカルにあることを聞いてみる。

 

 

 

「マジカル、魔法界出身の君にぜひ聞きたいことがあるんだけど……」

「私に?」

「うん。実は、この世界の図書館で、ステフォンのこと言ってるっぽい感じの本のページを見つけたの」

「す、ステフォンのことが……?」

「なんか、この画面っぽい感じの挿絵も出てきて……」

 

 

 

 と、巡はいつも世界の移動に使っている『WorldTrip』の画面と、あの時ステフォンで撮ったあの本の挿絵などを見せる。

 

 

 

「これって、魔法界の文字だよね?」

「しかも、画面と絵がそっくり!」

「“世界を繋ぎ巡る者降り立ち、絆を結び心を通わせた時、世界に光をもたらす”……?プリキュアの伝説とはまた違うもの、なんでしょうか……?」

「魔法学校の図書館に、こんな本が置いてあったなんて……ごめんなさい、私も初めて見たわ……」

「あらそうなの?まあなんか本がめっちゃ保管されてる場所から見つけたものだし……」

「多分それ、知識の森のことを言ってるのね?あなた、どうやってあそこから……もしかして、さっき校長先生と一緒にいたのって」

『迷いそうだったから助けてもらったの!』

「あら、ラブリーたちもいたのね!」

「でも、君たちの姿も声も見えてないみたいで……」

「そんな……ミラクルもいるのね……」

 

 

 

 プリキュアの伝説とはまた別の記述だと分かった以外に特に収穫はなし。

 ふと画面を動かすと、ダークネスミラクルから飛び出した光の玉から変化した猫耳で2等身のキュアミラクルの姿をした精霊────プロトミラクルが眠っている姿を確認した。

 そして、いつものように景色が白く淡くなっていく。元の世界に戻される時が近いようだ。

 

 

 

「あ、れ……目の前が……!」

『もしかしてもう帰されちゃう!?』

「うーむ、この前マカロンから聞いた、“世界を繋ぎ、救いをもたらす光となる”言葉も気になるし、さっきの“繋ぎ巡る者”という言葉とも関連しそうだし……」

『このステフォンの謎がどんどん深まるばかり……』

「この世界のプリキュアたちが戻ってくるまでにわかればいいんだけど……」

「ミラクルのこと、あなたに託したわよ!」

「うん、任せてね」

 

 

 

 マジカルにプロトミラクルを託され、4人は元の世界へと引き戻され、視界が明転する。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「“異空の闇が現れし時、世界を繋ぎ巡る者が舞い降りる”って、巡ちゃんのことだったのね」

「え?」

「そういえば……!私たちも巡ちゃんと合流する前に、校長先生からそんな予言の話を聞いたよ!」

 

 

 

 どうやらみらい達は、あの校長と呼ばれる男から巡がくるかもしれないという情報は聞いていたらしい。予言の形とはいえ、ここでも“繋ぎ巡る者”という文言が出てくるのはただの偶然で片付けていいのだろうか。

 

 

 

「あの世界は、巡ちゃんが少しずつ良くしていったんだね!」

「よくしたというか、まあまあカオスになってきたけど。ラブリー達のためにも、あの世界を変えてるから」

「すごいね巡ちゃん!私、巡ちゃんの夢が叶うように応援するね!」

「……!ありがとう」

「そうだ!巡ちゃん!今から一緒に魔法界の探検に行こうよ!」

「え?あ、ちょ、ちょっと、この子結構わんぱくでh」

『めぐるんが振り回されてる!?』

「はーちゃん!?」

「ま、待って!!モフルンも行くよ!」

「モフ〜!」

 

 

 

 このまま感動的な流れになりそうだったが、ことはに強く腕を引っ張られ、そのまま箒の後ろに乗せられて一緒に本島の方へと戻っていく。急に飛び出したことは達を追いかけ、みらいとリコもまた彼女達を追いかけて箒を飛ばす。

 このまま帰るつもりだったが、どうやらまだ遊び足りていないらしい。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……“繋ぎ巡る者”、か……予言による異空の闇は去ったとはいえ、繋巡自身の方はただ事ではない様じゃな……」

 

 

 さてワシも微力にはなってしまうが力になろうと、欠片の襲撃を避けていた校長が、箒で飛んでいくプリキュア(生徒)達の方を見上げるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

<ネオフュージョンの世界 漆黒の城・闇の使者の大広間>

 

 

 

 

 

「うぅ……悔しいなあ、せっかくリコたちに会えたのに、コンプリートにやられちゃうなんて……」

「ミラクルは頑張ったわよ。お疲れ様」

「うぅ……」

 

 

 

 コンプリートの元から帰ってきたダークネスミラクルは、少し寂しそうな様子で悔しがる。そんな彼女を、ブラックが励ます。彼女が帰ってきて12人揃ったところで、話し合わなければならないことがある。

 

 それは、次は誰がコンプリートの元へ行くかどうかだ。

 

 

 

 

「まだコンプリートのところに行ってない人〜」

「はーい!」

 

 

 

 今のところ元気な状態で戦えるのが、いよいよ少なくなってきてしまった。

 今の所、乱入があったブラックを除いてコンプリートには全敗だが、まだ彼女と激突していない人物は、ブルーム・ハート・ラブリーの3人である。むしろここまで人数がいて全戦全敗なのもなかなか珍しい。

 

 

 

「この場合は誰が行く事になるんですか?」

「はいはーい!アタシ行きます!」

 

 

 

 元気よく堂々とダークネスハートが手をあげる。何かしらの考えがあるのか、やけに自信満々だ。

 彼女の優秀さと安定感は全員の共通認識のため、ハートへの信頼度は高い。

 

 

 

「それでブラック、相談があるんだけど……ラブリーも一緒に連れていっていい?」

「え」

「……それはどうして?」

 

 

 

 突然名前を出されて、ラブリーが呆気に取られたような声をあげる。と言うより、この場にいる全員がハートの方を凝視した。ハートの中で何か考えがあって二人で出ると言ったようだが、あまりにも唐突すぎる。

 ブラックは冷静に、彼女の考えを聞こうとする。

 

 

 

「単純に、二人の方が心強いって思っただけだよ。今までは一人で行ってたから、コンプリートも苦戦するだろうなーっって」

「……そう」

「う、裏はないからね!?」

「わかってるわよ、ハートは余計なことしない子だってことは信じてるから」

「よ、よかったー……」

「ラブリーは大丈夫?」

「私は大丈夫だけど……うん、頑張る」

「ラブリーからもOKもらえたし、みんなの分も、生徒会長に任せてよね!」

「わ〜頼りになる〜!」

 

 

 

 会話が盛り上がる中ふと、ブルームがあることに気づいて手を止める。

 

 

 

「……あれ?もしかして私が実質的な最後になるの?」

「あ、そういえば」

「ブラックには止められてるから仕方ないとはいえ」

「ほら、もう一人は勝手に行っちゃったから」

「か、代わる!?」

「ああいや別に大丈夫だよ!ハートとラブリーは気にせず行ってきてね」

「う、うん……」

 

 

 

 慌てて順番を代わろうとするハートを手で制し、さして気にしていない様子で行くように進める。

 もしも彼女たちがコンプリートに追い返されてしまった時は自分が出ることになるから別になんでもいいのだが、本当に最後の方まで残ることになるとは思っていなかったらしい。

 

 おそらくブラックは、自分たちが全員コンプリートにやられた時に飛び出してくるんだろうと全員が薄々勘付いている。1回目の時は例外だが、2回目は絶対に容赦なくやるつもりだろう。

 

 

 

「さぁーて、頑張ろうね、ラブリー!」

「うん」

 

 

 

 ハートはラブリーを連れて準備しに大広間を出ていく。自室に行くのだろうとラブリーは付いて行ったのだが、少し部屋を離れたところでハートが足を止める。

 

 

 

「……ねえ、ついでにちょっと聞きたいことがあるんだけど、今いい?」

「え?」

 

 

 

 そして、ハートは振り向いて、やけに真剣な表情でラブリーに問いかけた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「────ラブリーは、どこまで(・・・・)覚えてる?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

<水晶の世界>

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ステフォンの持ち主が、ハッピーたちを連れてきてくれたおかげで、少しずつですがこの荒れた世界に活気が戻ってきましたね」

「ええ、前よりも随分と賑やかになってきたようね」

「みんなもいっぱい集まってきたし、まだ辿り着いてない人たちの方が少なくなってきたわね!」

 

 

 

 ここは、巡たちがたびたび訪れることになるとある世界。とあることが起きて『崩壊』してしまった世界。

 

 中心地には、12人のプリキュアが眠る桃色の水晶の柱が聳え、相変わらず空には灰色の雲が厚くかかっている。

 しかし、巡たちの活躍により、元々この世界にいたプリキュアたちがたくさん集い、少しずつではあるが明るい雰囲気が漂い始めている。ついさっき、マジカルとフェリーチェがここへ辿り着いたばっかりだ。

 

 この世界へ最初の方で集ったビューティとムーンライト、最近ここへと辿り着いたパルフェの3人がしみじみとした様子で語り合う。

 側から見ると、色のついた光の玉が漂っているようにしか見えないが、どうやらこの世界で起きたある出来事によって魂だけの存在になっているだけである。

 集まる3人の元へ、マリンとサニー、マカロンが話を聞きつけ近づいてくる。

 

 

 

「鳥やら浮遊ステージやら花畑やら、それくらいならまだわかるけどさ〜」

「お菓子の家とか教会とか、挙げ句の果てに動くぬいぐるみたちまで現れるのは予想外やったがな」

「『声』の通りであれば、ステフォンが鍵を握っているみたいだけど……次はどうなるのかしらね」

「マカロン、まさか楽しんでる?」

「フフッ」

 

 

 

 今の所、この世界のプリキュアがこの場所にたどり着くたびに、世界には花畑やらお菓子の家やら、関係あるものからどうしてこうなったものまでさまざまなものが出現している。

 果たしてここからどうやって世界が変わっていくのか、ある意味では楽しみではある。

 

 

 

「……あら?あれは……」

「あの黒ローブは!」

 

 

 

 会話に花を咲かせていると、いつの間にか巡ではない知らない人物がこの世界へと踏み込んでいた。顔は黒いローブで隠れてわからないが、どう見ても怪しい雰囲気がある。

 あの黒ローブに、サニーとビューティは見覚えがあった。確か一度だけ、この世界にもう一人を連れてやってきていたことがあったのだ。

 

 

 

 

 

「あれ?ちょっと見ないうちに色々ものが増えてる……一体誰が……寂しくはないけどカオスすぎじゃない?」

 

 

 

「だ、誰あいつ、って言いたいけど、この声に覚えがあるような……」

「まさか、あの子が言ってた闇の使者……?」

 

 

 

 黒ローブは周囲を見渡している。ここにいる魂だけのプリキュアの存在に気づいたのだろうか。しかし、その姿は一切見えていないようにも見える。

 

 

 

「……おっかしいなぁ、誰か近くにいるような気がしたんだけど……」

 

 

 

 少しだけ寂しそうな様子で、黒ローブはどこかに消えていった。一体なんだったんだろうと思っていたが、声的には自分たちが知っている人物のように聞こえたのだ。

 

 

 

「な、なんだったんや、今の……しかも、あの声って……」

「……まさか、ね」

「一回聞いた時も思いましたが……やっぱりあの人物は……」

 

 

 

 一部始終を見ていたプリキュアたちは、薄々気づきそうな黒ローブの正体のとある可能性が浮かんできてすぐに否定する。もしそうだとしたら、ここ(・・)にいる彼女たちはなんなのかということになってしまう。

 

 

 

 

 

 どうかその可能性は当たらないで欲しいと、叶いそうもない願望を抱く他なかった。

 

 

 

 

 

続く…

 




次回更新日→6月8日(土)
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