PrecureStageON!   作:主氏レム

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廻巡回ですよ〜
当時はこういうのを書いてみたかった記憶

あと、第2章のタイトルをちょっと変えました


第20話:踏み出せ帯刀!夏祭りデート大作戦!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……え?」

 

 

 ダークネスハートにとあることを聞かれ、ダークネスラブリーは首を傾げる。突然大広間から連れ出されて二人きりになったと思えば、真剣な顔でそれを聞いてきたのだから、ラブリーにとっては何が何だかという感じだ。

 

 

 

 

「どこまで覚えてるって……どういうこと……?」

「あのね、アタシたち……闇の使者になる前のことをほとんど覚えてないの」

「覚えて、いない……」

「うん。ステフォンを狙う理由はその過去に起因するってブラックは言ってるんだけど、知っているはずのブラックは何も教えてくれなくて……」

 

 

 

 闇の使者たちには、一部を除いてかつての記憶の一部を覚えていない。一部というのが、元々自分たちがいたはずの世界が『崩壊』した理由である。自分たちは当事者のはずなのに、その記憶だけがスッポリと抜け落ちているのだ。

 消えた記憶を確実に知っているのがブラックであるのだが、何を思ってかその彼女も詳しく教えてくれない。時が来たら話すとは言われているものの、ハートだけはずっと腑に落ちていなかったのだ。

 

 それに彼女にはもう一つ、消えた記憶について知りたいことがある。

 

 

 

 

 

『どう、して……みんな、生きているの……?』

『え……?』

 

 

 

 

 

「ラブリーが目覚めた時に、気になることを呟いてたから……」

「だから、ハートは私が何か知ってるんじゃないかって思ったんだね」

「うん。それで……」

「……ごめん、私もあんまり覚えていないんだ……」

「あー……やっぱり?」

 

 

 

 ハートの予測とは反対に、ラブリーは小さく首を横に振る。

 あの時、ラブリーは確かに、自分たちが生存していること自体を疑っているような呟きがあった。単なる寝ぼけた際の譫言だった様なそれは、眠っている時に悪夢でも見ていたのを引きずっているのかもしれない。

 

 

 

 

「力になれなくて、ごめん……」

「ううん、気にしないで!やっぱりちゃんと、ブラックを問いたださないと……」

 

 

 

 悲しむ彼女にすかさずハートがフォローを入れる。ダメ元で聞いただけなのでそこまで気にしているわけじゃない。やはりこれは、改めてあの人の口から聞くべきなのだろうと考え直す。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 これが、つい先日の出来事。

 

 今は、次にコンプリートを迎え撃つ世界の街の上空にいる。

 

 

 

「ラブリー、苦しくなったりしたらすぐに逃げてね」

「うん」

 

 

 

 一度はその身に宿した闇の力が暴発したこともあり、ラブリーには自分の身に何かがあったらすぐに逃げろと伝えている。

 

 

 

 

 

「さあ、待っててね、コンプリート……このキュアハートが、あなたが持つステフォンを取り戻してみせる!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

第20話:帯刀大奮闘?夏祭りデート大作戦!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『巡ー!準備できたー?』

「うん、幸姉に着付け手伝ってもらったから大丈夫」

 

 

 

 繋巡の世界は現在、8月23日の午後4時過ぎ。夏休みもいよいよ終盤戦といったところか。

 今日は、待ちに待った心野宮夏祭りの日。一時期雨予報があって開催が不安視されていたが、本日の天候は雲一つない快晴。地球温暖化が問題視される現代においては比較的過ごしやすい気温のままで助かった。

 

 巡は本日、クラスメイトの帯刀廻に誘われ、二人で夏祭りを巡ろうと約束している。どう見てもデートだが、巡が廻の意図と想いに気づいていないので、巡からしてみればただただ楽しい夏休みのボーナスタイム的な感覚である。

 

 そして姉の計らいで、巡は可愛い浴衣を着付けてもらった。白地に桃色と水色の朝顔が描かれたそれは、実は姉のお下がりだったりする。巡も自分の浴衣を持っているのだが、試しに着てみたところ小さかったらしく、慌てて姉のを借りた。ただし、帯やアクセサリーは自分のものなので、姉が着た時とはまた別の印象を持つ。

 

 

 

『巡ちゃん、とっても似合ってるよ!』

「ありがと。幸姉の借りたとはいえ、帯とかが変わるだけで写真のより雰囲気変わるね」

『というか幸さん何者?着付けも手早くできてたし……』

「華道部でごく稀に和服を着る時あるって聞いて練習したらしいよ」

 

 

 

 まだ外に出る時間には早いので、とりあえず自室にいる感じだ。巡は自分の椅子に座り、とある本を手に取る。

 それは鮮やかな桃色の背表紙の本で、日本語どころかこの世界のどこにも存在しない文字でタイトルが書かれている。

 

 

 

「……まさか、魔法学校の校長がこの本をくれるとは……」

『”君が持つ力や秘密の解明に役立ててほしい”って、なんだかラッキーだよね!』

 

 

 

 この本は、『魔法つかいプリキュア!』の世界から帰る際に、あの世界の校長から譲られたものだ。知識の森で見つけた本であの世界由来のものとはいえ、これを読み解いてステフォンの謎がわかるならとお土産として持たされた。

 新しくステフォンの住人として入ってきたプロトミラクルの手伝いや、後輩の柑崎恋華の『魔法文字はローマ字と英語が元になって組み合わさってる!』というアドバイスを元に解読していけば、魔法文字全く読めない問題がすぐに解決した。

 

 

 

「ミラクルがきてくれたおかげで、少しずつ読める箇所が増えてきたよ。“救いをもたらす光”っていう文言もあったし」

『それならよかった〜!』

『けど、それが一体何を意味しているのかは全く読めないんだけどね……』

「もうちょっと回りくどさがないと助かるんだけどなあ……お、そろそろ出るか」

 

 

 

 時計を見るとそろそろいい時間だ。待ち合わせ場所は決めてあるので、電車の時間を考慮するとそろそろ出たほうが相手を待たせずに済むだろう。

 巡は手提げバッグにお財布やら小物を入れ、ステフォンを隠し持って部屋を出る。

 

 

 

『楽しみだね!巡ちゃんのデート!』

『帯刀さんは巡ちゃんを振り向かせられるでしょうか……?』

『うーん、巡次第だろうなぁ……』

 

 

 

 ステフォンの中のプリキュア達は、超絶能天気で鈍感な巡を、クールさの裏に純情を隠し持った男・帯刀廻は夏祭りにどう動くのかが楽しみでやまなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 心野宮駅前の広場にて。夏祭り目当てなのか、いつも以上に人の出入りが激しいこの場所で、帯刀廻は待っていた。

 

 

 

「……来ちまった」

 

 

 

 廻にとって、今日の巡との夏祭りは当日を迎えた今でさえも実感が湧いていなかった。

 

 夏休み前に知り合い伝いで聞いた話で、巡は夏祭りを幼馴染と楽しんでいると聞いてダメ元で一緒に行かないかと誘ったところ、快く行こうと言ってくれてから、ふとした瞬間に上の空になることが多々あった。

 俺今日変な事言わねねえよな、嫌われるようなことしないよなと内心とても焦って不安がっていると、駅に到着した巡が彼の姿を見つけて駆け寄ってくる。

 

 

 

「おーい、帯刀くーん!待ったー?」

「……!!お、おう、さっき来たばっかりだ……っ?!」

 

 

 

 駆け寄る浴衣姿の巡を目撃し、廻の脳がフリーズする。まさか浴衣を着てくるとは思わず普通に似合っていてびっくりしたのだろう。それでもなんとか言葉を紡ごうと、口をパクパクさせる。

 

 

 

「に、似合ってんじゃねえか……」

「そう?姉から借りたんだけど……ありがと」

「ああ……」

「じゃあ、行こっか!」

「ん」

 

 

 

 早速巡にリードを許されてしまったが、気を取り直して夏祭りが行われている噴水公園の方に向かうことにした。

 会場へ行く道中、二人は夏休み中に起きたことなどで話が盛り上がった。海に行っただの、宿題を終わらせるのが大変だっただの、他愛のない話ばかりが続く中、祭囃子が奥の方から響いていく。

 

 心野宮夏祭りは、噴水広場から少し離れた心野宮神社までの通りにお祭りの屋台が並ぶ夏の一大イベント。特設ステージでは芸能人や地元の学校のパフォーマンスが、夜には花火大会が行われる。

 煌びやかな電灯と提灯の灯りと、さまざまな屋台から漂ってくる美味しそうな匂いに、ガヤガヤした客達の話し声と足音。この楽しい雰囲気が、心野宮の人間にとっての大切な夏の風物詩だ。

 

 人混みから逸れないように、二人は通りの屋台を巡っていく。

 

 

 

「お、りんご飴だ」

「好きなの?」

「まあな。繋もなんか食うか?」

「じゃあいちご飴にしよ」

 

 

 

 早速二人はフルーツ飴を購入し、食べ歩きしながら目についたものを買ってみることにした。串に刺さったいちご飴を噛もうとする巡の横で、廻は特になんの躊躇もなくりんご飴をガリッと噛み砕く。りんご自体も大きめだったが、音を立てながら飴を食べていたので、「あれってこんな感じに食べるもんだったっけ?」と巡が脳内で疑問符を浮かべる。

 

 

 

「……どうした」

「い、いやなんでも。……あ、そうだ。夜ご飯も屋台ので済ませたいし、色々買って向こうで食べない?」

「だな。たこ焼きはどうだ?一つ買っとけば分け合えるし」

「いいね。あ、じゃああたし焼き鳥とか買おうかな」

 

 

 

 さっきまでの廻の緊張はどこへやら、二人は賑わう通りで手分けしながら、ほしい屋台メニューを買ってゆく。ふと歩いていくと、射的の屋台が見えてくる。

 

 

 

「射的か〜、小学校のときは全然できなかったっけ」

「そうか……」

 

 

 

 五発あるコルク銃で的を落とし、落とした的が多いほど豪華な景品が取れるシステムのようだ。目玉の景品は、全部の的を撃つと選べるまあまあ大きなぬいぐるみや、普通に普段使いできそうなアクセサリーやキーホルダーなどのハンドメイド系の物品だろう。

 ただ、的と撃つ場所の距離は少々遠く、大人でも確実に狙うのは難しいらしい。子供のために頑張っているどんなに凄腕のお父さんでも、的を1、2枚外してしまっている。

 

 

 

「……やってみるか……」

「お、じゃあ後であたしも」

 

 

 

 廻は巡にいいところを見せたいため、一度射的に挑戦してみることに。しかし、3枚目の的までは順調に撃ち落とせたが、最後の2枚は残念ながら外してしまった。店主の罠に見事にハマっている。

 

 

 

「ぐ……思った数倍難しいな……」

「でもすごいよ、大健闘じゃん!それじゃあ帯刀君の仇でも討ちに全制覇しますか」

「敵討て」

 

 

 

 巡もまた、お金を払って早速射的に挑戦する。おもちゃの銃にコルク弾を詰め入れ、狙いを少し遠くの的に定める。

 射的自体は随分と久しぶりにやったはずなのだが、プリキュアしている時にラブリーショットガンをよく握っているおかげか、おもちゃの銃がやけに手に馴染む。

 

 

 

 

 

 バアンッ!と共に放たれた一発目は、見事1枚目のマトのど真ん中に当たり撃ち落とした。

 

 

 

「!?」

 

 

 

 廻でも真ん中を穿てなかったのに、この生徒会長は最も簡単に真ん中を撃ち抜いたことに驚いている。その後も巡は流れるような手つきでコルク弾を全て的の真ん中に当てて撃ち落としている。最後の1枚すらも真ん中で決め、一瞬の静寂の後、一部始終を見ていた客や店主から拍手が上がる。

 

 

 

「……っと、あれ、マジで?(まずいコンプリートの時の弊害がこんなところで)」

「……すげえ」

 

 

 

 まさか巡が宣言通りの全制覇をこなすとは思わず、廻はあんぐりと口を開ける。先に越された上にいいところが見せられなくてわずかに落ち込みながらも、やっぱこいつは只者ではねえと改めて思わされるのだった。

 当の巡は、ラブリーショットガンを使っている癖がこんなところで見せることになるとは思わず、内心では非常に焦るのであった。

 

 

 

 射的屋で選んだ景品をとって、途中見つけたかき氷屋でかき氷を食べながら神社の方に進んでいると、特設ステージの方にやってくる。ちょうど自分たちの中学校のダンス部がパフォーマンス中だったらしく、二人は彼女達のステージを観覧する。

 

 センターは千夏で、相変わらず彼女らしさの出るキラキラしたダンスで、観客達を沸かせている。あれからスランプから抜け出せたようで、前見た時以上にダンスの腕に磨きがかかっている。

 

 彼女達のパフォーマンスに盛大な拍手を送った後、後片付けを終わらせた千夏が二人の存在に気付いたようで、すぐさま駆け寄ってくる。

 

 

 

「めぐるんに帯刀!来てたんだ!」

「千夏ちゃん!ダンスかっこよかったよ!」

「まあ、いいんじゃねえの」

「へへっ、ありがと〜!……帯刀も頑張りなよ?」

「……おぅ」

 

 

 

 これから千夏はダンス部の友達と夏祭り会場を巡ってくるらしい。廻に何かを囁いた後、千夏は友達が待つステージ裏の方に戻って行った。

 千夏と別れて少し歩き、ようやく神社の方が見えてきた。階段の上を上がった先で見る花火が一番綺麗なのは知っている。花火大会まではまだ時間があるので、ここでひとまず時間を潰そうと近くのベンチに座り、買った食べ物を食べようということになった。

 

 

 

「おいしいね、このたこ焼き」

「おいしい店のだしな」

 

 

 

 少し歩きつかれて休憩がてら座っていたが、神社からも屋台通りからも近いのでかなりいい場所をとった気がする。

 

 

 

「まさか、繋があんなに射的が得意とは……」

「い、いやあれは偶然だよほんとマジで」

 

 

 

 全部の的を落としてもらった景品は、スマホやバッグにつけるようなキーホルダーだ。ハートとリボンの飾りがアクセントだ。あとでステフォンにつけておこう。

 

 

 

「今日は誘ってくれてありがとう、帯刀君。いつもきなっちと行ってたから、なんだか新鮮な気持ちでお祭りを楽しめたよ!」

「……そうか、それなら誘った甲斐があった」

 

 

 

 何はともあれ、巡が楽しんでくれてよかったと安堵し、廻は大事なことを伝えるために覚悟を決める。

 

 

 

「それでだ、繋」

「うん」

「お前が良ければでいいんだが、その……来年も────「あ!帯刀じゃん!」!?」

 

 

 

 大事なことを言おうとした直後、彼の名を呼ぶ男子の声が聞こえる。びっくりしてその方を見ると、彼と同じサッカー部の別クラスの同級生がそこにいた。彼らも彼らでお祭りで遊んでいたようだが、女子と、しかも生徒会長と一緒にいる彼が珍しいのと同時に若干の冷やかしを含めて呼んでみたらしい。

 まさか見られているとは思わず、廻は頬を赤く染めながら俯き、彼らの方にゆっくりと向く。

 

 

 

「……悪ぃ、先にあいつら黙らせてきていいか」

「お、穏便にね」

 

 

 

 廻はひとまず冷やかしてきた悪友達を黙らせにいくために、一度巡の元を離れる。

 彼が離れたことで、巡はステフォンの中のプリキュア達と会話できるようになり、一度ステフォンを確認してみる。

 

 

 

「やあ」

『巡〜!楽しんでる?』

「うん。男子と行くのは初めてだけど、結構楽しいよ」

『そっか〜!それならよかった!』

 

 

 

 早速声をかけてきたラブリーと会話しながら、お祭りであったことを話してみる。

 

 

 

『千夏ちゃんって子、なんとかスランプを抜け出せたんだね!』

『声だけ聞いてたけど、射的すごいことになってない!?』

『このアクセサリーかわいいね!』

『わーん帯刀君の邪魔をしないであげて〜!』

「屋台で買った焼き鳥とベビーカステラ、多めに買ってるからあとで家帰ったら食べようね」

『やった〜!』

『花火も見れたらいいね!』

 

 

 

 和やかに会話している中、ステフォンからあのけたたましい着信音が鳴り響いた。今度は周りに人がいるために音圧はそこまでない。

 この音が鳴ったのは、ダークネスブラックがいた時の1回だけだ。まさか、彼女がまたどこかの世界に現れているということなのだろうか。

 

 

 

「音がこの前より小さくなってる。まさかうるさいと思われて学習した?」

『そんなことよりも!』

「まあ、とりあえず今までのパターンとは違うことが起きてるってことなんだよね」

『一体どの世界で……!』

 

 

 

 すぐに着信音を切って『WorldTrip』を確認する。

 金枠に囲まれたマークは9つに増え、残りが3つといよいよ最後の方になってきた。新たに増えたのは、その残りである1時・2時・8時の位置にあるマーク。そのうち8時の位置にあるマークが赤く点滅していた。

 翼と矢をモチーフにしたそれは、天使の弓矢のようにも見える。

 

 

 

「わあ全部揃ってる。えっと確か、ドキドキ!プリキュアだったよね。ドキドキ……?」

『多分だけど、巡ちゃんとマナちゃんって気が合いそうな気がする!』

『わかる!すごくわかる!』

「そんなに?……よし、さっさと解決してさっさと戻って、花火大会までに間に合わせますか」

『巡!いつものことだけど気をつけて行くよ!』

「うん」

 

 

 

 星の様な煌めきが、虹の様なゆらめきが、暗い夜空との距離をどんどん遠ざけていく。出口は、すぐ近くに現れそうだ。この先、どんな世界が広がっているだろうか。

 

 視界が、白い光で塗りつぶされる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

<ドキドキ!プリキュアの世界>

 

 

 

 

 

『ジコチュ〜!!!』

 

 

 

 ここは大貝町。この世界のプリキュア達が暮らす街である。本来なら平和な場所であるはずだが、ある日突然、その平和を崩す存在が現れた。

 

 現在大貝町は、突如出現したジコチューと咆哮を上げる怪物達が大量に出現していた。周辺地域の住民達は、ある財閥の手回しや人々の助け合いによって、迅速な避難が完了している。

 

 

 

「みんな、行くよ!」

『ええ!』

 

 

 

 今この場所にいるのは、5人の少女達だけ。彼女達はラブリーコミューン・ラブアイズパレットを構え、怪物から街を守ろうとしている。

 

 

 

『プリキュア・ラブリンク!』

「プリキュア・ドレスアップ!」

 

『L・O・V・E!』

 

 

 

 光に包まれた彼女達は、プリキュアの姿へと変身していく。

 

 

 

 

 

「みなぎる愛!キュアハート!」

「英知の光!キュアダイヤモンド!」

「ひだまりポカポカ!キュアロゼッタ!」

「勇気の刃!キュアソード!」

「愛の切り札!キュアエース!」

 

『響け!愛の鼓動!ドキドキ!プリキュア!』

 

 

 

 

 

「セバスチャンによると、大貝町一帯にジコチューが出現しているようですわ!」

「一体どうしてこんな大量に?」

「とにかく街の外に出ないよう、手分けして相手をしましょう!」

 

 

 

 ロゼッタの解析から街全体に満遍なく怪物が出現していると知るや否や、5人のプリキュアはそれぞれ離れて別々の場所で怪物を浄化しに飛んでいった。

 一人広場の方に残ったハートは、襲いかかる怪物の攻撃をかわし、慣れた手つきで手刀を食らわせる。

 

 

 

『ジコッ!?』

「一体誰が出したかはわからないけど、みんなに迷惑をかけるなら、このアタシが相手だよ!」

 

 

 

 そう言いながら、背後に迫るもう一体の怪物の突進にすぐに対応し、足蹴りで阻止する。後ろに倒れる怪物に向けて、胸のハートが光を放つ。

 

 

 

「あなたに届け!マイ・スイートハートッ!!」

 

 

 

 放たれた光は、怪物に宿る闇の力を浄化し、消滅させる。どうやらいつもの感じではないことに勘づき、胸の奥で嫌な予感だけが妙に燻っている。

 なぜならこの怪物は、ジコチューが操っている訳ではなく、ネオフュージョンの欠片が姿を変えた模造品なのだから。その証拠に、怪物を倒したはずなのに、まだまだ湧いて出てくるのだから。

 

 

 

「まだこんなに……っ!」

 

 

 

 大量に降ってくる怪物に対して、ハートは一人で立ち向かおうと身構える。

 

 

 

 

 

「コンプリート・ステージON!」

 

『CureWeapon!Melody!』

『PowerCharge!Sunny!』

 

 

 

 

 

 突如声が頭上から降り注ぎ見上げる。

 上空から浴衣姿の少女が見たことのないプリキュアの姿となり、両手にオレンジ色の太陽のような炎を宿したハンドベルを構えながら、ハートの方に向かって急降下してきたのだ。

 

 

 

「上から失礼![[rb:情熱の即興曲>パッショナートアンプロンプチュ]]ッ!!」

 

 

 

 澄んだベルの音色と共に振り落とされたオレンジ色の炎が、ハートに迫ろうとした怪物達を燃やし尽くして浄化する。ようやく地上に降りてきた少女は、すぐに体勢を整えて名乗りあげる。

 

 

 

 

 

「現となりし、12の魂!キュアコンプリート!」

 

 

 

 

 

「……なんで上空に落とされたんだろうね」

『知らないよ!?本当になんで!?』

『この前の魔法界といい、時々変なところに私たちを飛ばすよねこのステフォン』

「ステフォンもしかしてあたしのこと嫌いだったりする?」

「キュア、コンプリート……あなたもプリキュアなの?」

 

 

 

 少女こと、この世界で異常事態が起きていることを知り、夏祭りの隙を見計らってやってきた巡ことキュアコンプリートの姿を見て、ハートは自分たち以外にもプリキュアがいたんだと驚く。コンプリートも話しかけられて、この世界のプリキュアの一人とダイナミック合流したことを知る。

 

 

 

「そうだけど……、この大量に出現してる怪物を使役してる子に用があってね」

「そうなの!?それなら一緒に!」

「もちろん、そのつもりでここにきたよ」

『ジコチュー!!ターゲット、ハッケン!!』

「……え?」

 

 

 

 ジコチューの姿をした欠片はコンプリートを見つけるや否や片言の人語で喋り、その目を赤く光らせる。真っ赤な光は二人の視界を奪い、彼女達を欠片の奥に続く空間へと強制的に転移させる。

 

 広場に欠片以外の人物がいなくなったことを確認すると、他のプリキュア達を妨害するために移動し始めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はぁぁぁっ!!!」

 

 

 

 エースの攻撃が急所に入り、残りの怪物が消滅する。これで、小学校周辺に出現した怪物は全て処理し切ったはずだ。

 

 

 

「エース!そっちは大丈夫?」

「わたくしは無事ですわ!」

 

 

 

 向こうでの怪物騒ぎを収めてきたロゼッタとソードがエースと合流し、束の間の休息を取る。しかし、まだ全て終わったわけではない。明らかにジコチューの仕業のはずなのに、違和感だらけの騒ぎなのだ。

 

 

 

「どうしてあのジコチュー達は、ジャネジーを除去されていないのに消滅していったのでしょうか……?」

「それに、奴らの姿もどこにもないのもおかしいわ……」

「まるで、わたくし達をただ足止めしているだけのように見えて……嫌な胸騒ぎがしますわね……」

「3人とも!無事!?」

 

 

 

 3人が抱える違和感を話し合う中、ダイヤモンドが彼女達の方へ飛んでくる。

 

 

 

「わたくし達はなんとか!ダイヤモンドは?」

「私も一応、中学校の方をなんとかしたけど……ハートは?」

 

 

 

 しかし、ここにキュアハートの姿はない。まだ戻ってきていないらしい。

 彼女に限って追い詰められている、ということは考えつかないが、ここまで姿を表さない彼女が不安である。

 

 

 

「みんなでハートを助けに行こう」

「その必要はないよ、まこぴー」

「……え?」

 

 

 

 ソードの呼びかけに対して別の方から声が聞こえ、思わず彼女達は振り向いた。その声は、いつも聞いているキュアハートのはずなのに、嫌な冷たさを感じてしまう。

 そこにいたのは、大量のジコチューを引き連れた黒いキュアハート。その虚ろな紅い瞳は、向こう側にいる4人を愛おしそうに映している。

 

 

 

「は、ハート……!?いや、あなたは……」

「やだなあ六花、アタシもキュアハートだよ。訳あって黒くなっちゃったけど」

 

 

 

 にっこりと、キュアハートの代名詞でもある笑顔を浮かべているが、目は全く笑っていない。沸々と湧き上がる違和感と不気味さに困惑しつつも、この異常事態を引き起こしているのは彼女だと気づいてすぐに構える。

 

 

 

「こっちのキュアハートを探してるなら、今は邪魔しないほうがいいよ?」

「どういうこと!?」

「今頃、ステフォンの持ち主さんに巻き込まれてるところだから。本当は、六花たちは巻き込みたくなかったんだけど、持ち主さんが来ないから張り切っちゃったんだ」

「ステフォン……?何が何だかわかりませんが、この状況を引き起こしているというのなら、今すぐジコチューたちを引き下げなさい!」

「まあまあ、そんなに怒らないでよ。用が済んだらすぐに帰るし」

 

 

 

 この黒いキュアハートは、ステフォンと呼ばれるものを求めているようだが、あいにく自分たちは聞いたことも見たこともない。

 エースの忠告もをのらりくらりとかわし、ずっと笑顔で彼女は話し続ける。

 

 

 

 

 

「────でも、コンプリートを助けに行くつもりなら、アタシだって容赦しないよ」

 

 

 

 黒いキュアハート────“闇の使者”であるダークネスハートの啖呵と共に、彼女が使役するジコチューの姿をした欠片達が、4人のプリキュア達に飛び掛かる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……!?」

「ここは……」

『もしかして、また欠片の中の世界?』

『今までのものと違って、何もない……』

 

 

 

 コンプリートとハートが目を開けると、真っ黒な地面と真っ黒な空で構成された単調で寂しい何もない空間の中に閉じ込められていた。周りを見回しても本当に何もない。

 

 

 

「また出口見つけなきゃ出られないなら、ブロッサムの力で────」

「ダークネス・ライジングソード!」

 

 

 

 突如声が響き、歩き出そうとしたコンプリートに向かって黒い光の剣を構えた少女が飛んでくる。驚いて二人はすぐに避けて直撃を避けるが、彼女達が立っていた場所には、攻撃を仕掛けてきた少女の姿が土埃の中から見える。

 

 

 

「……え」

『え、えぇぇ!?』

 

 

 

 

 

 コンプリートとプロトラブリーには、その姿には見覚えがあった。

 

 他の闇の使者とは違ってリボンとスカートは赤色だが、それ以外は今までの彼女達とそっくり。マゼンダの大きなポニーテールを揺らし、本来の彼女とはかけ離れたような落ち着いた表情で、コンプリート達の方を虚ろな紅い瞳で見据えている。

 

 

 

「え……これってつまり、そういうこと?」

『ダークネス、ラブリー……!?』

『ああああああ!言い忘れてた!!』

 

 

 

 ラブリーの言葉を聞いて、ステフォンの中でプロトミラクルが悲鳴を上げる。完全に伝え忘れたことを思い出したようだ。

 

 

 

『そういえば最近、あっちのラブリーが起きたの!!』

『えぇ!?うそ!?』

『お、起きたんですか!?』

『もしかして、こっちのラブリーがブラックに捕まった時のクリスタルが……?』

『私なんかした!?』

『したというより利用されたとしか!!』

「な、何か慌ててるみたいだけどもしかして、アタシたち……」

「まあまあ油断してるとまずいやつだったりする?」

 

 

 

 慌てるプロトキュア達と、話が全く読み込めずにとりあえずラブリーの姿をした闇の使者が現れたということは理解したプリキュア二人。温度感は全く違うが、予想外のことが起きたのはすぐにわかった。

 

 

 

「あなたが、キュアコンプリート。ブラック達がいう、ステフォンの持ち主さんだね」

「そうだけど……だったら何?」

 

 

 

 話しかけられたコンプリートは、すぐさま構える。

 先ほどの奇襲といい、ここにくる前のステフォンのアラーム音といい、油断したらブラックの時のように手も足も出ずにやられることはすでに学習している。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「────みんなのために、あなたからステフォンを取り戻すよ」

 

 

 

 静かにそう告げた闇の使者・ダークネスラブリーは、再び黒い光の剣を構えてコンプリートの方に走り出した。

 

 

 

 

 

続く…

 




次回更新日:6月9日(日)
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