PrecureStageON!   作:主氏レム

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なんと新章


第3章:巡と世界の過去編
第22話:新学期に急展開?絶好調な闇の使者


 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 青い空と白い雲が広がる朝の海辺の街。

 

 見覚えのある少女が、学校に向かって自転車を全力で漕いでいる。どうせまた寝坊したんだろうということはすぐにわかった。だって彼女は、この世界における『自分』なのだ。自分のことは一番わかっている。あれくらいなら、ギリギリ予鈴が鳴る前に学校には着くだろう。

 

 どこにでもある平和な日常風景を、一人の黒い少女がぼんやりと上空から眺めていた。

 

 

 

「……やっぱり、気が乗らないなあ。別人とはいえ、この世界の舞と敵にならなきゃいけないなんて」

 

 

 

 

 

 彼女は闇の使者・ダークネスブルーム。

 

 ステフォンの持ち主である繋巡/キュアコンプリートからステフォンを取り戻すため、この世界にやってきた。今回はステフォン以外にも、色々とやらなければならいことがある。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『私たちの世界が“崩壊”した理由を話すって……アンタ、何考えてんのよ。それは、まだ言わないでって……』

『こっちのラブリーがちょこっとだけ覚えている感じを見るに、この話を隠し続けるのも限界かなって』

『もしかして、あたしも呼ばれたのってそういうこと?』

『うん。一応ちゃんと言っておかないとって思ってさ』

『……だめよ、それは』

『でも、ブラックだってこのままハートたちに疑われるのは嫌でしょ?』

『……っ』

 

 

 

 先日ダークネスラブリーが目覚めた直後の一件で、こちらのラブリーが自分たちで隠していた『崩壊』の理由を知っていそうな感じがした。もちろん、ステフォンの方と同様に記憶を失っているところが多いが、ドリームとハートが聞いたらしい「どうしてみんな生きているの?(寝起きの言葉)」を放ったラブリーおかげか、他の仲間達────特にハートが混乱してしまっているのだ。

 

 そこでブルームは考えた。こうなったら、自分達の世界の『崩壊』の理由を正直に話すしかないという結論を出した。

 

 

 

『大丈夫だって。隠してたのは私たちもだし、怒られる時はみんな一緒だよ』

『あたしも賛成だよ!それに、ブラックがあいつに何させられてるのかは言わないんだし。なんとかなるなる!』

『……そんな簡単に言わないでよ……』

 

 

 

 暗く視線を下に向けたあの人は全く乗り気ではない。そりゃあそうだ。今更言ったところで自分がどうなるかなんてわかっているのだから。

 このことは、他の仲間たちを傷つけないために言わなかったのに。

 

 あの人は闇の使者として生きるようになってから、仲間を傷つけてしまうことに随分と敏感になってしまったようだ。

 

 

 

『ブラックがみんなを守るためにたくさん背負い込んじゃってるのはわかってる。だからこそ、私達にもいくつか背負わせてほしいの』

『……っ、それ、は……』

『どうせ“できない”って、言うんでしょ?それでも、みんなも私も、あなたに守られてるばかりじゃいられないの』

『う……』

『だからお願い。コンプリート達の方は、私に任せてくれないかな?』

 

 

 

 

 

 どうにかこうにか言いくるめ、闇の使者の仲間達に説明するのは二人に任せることにした。そして自分は責任を持って、巡やステフォンの中にいるラブリー達にも話をしなければならない。……個人的な理由も一応はあるのだが。

 

 自分はまだ、コンプリートがどんな人物なのかはあまりわからない。ブラックを迎えに行ったっきり、顔を見ていない気がする。向こうが自分のことをどう思っているのかは知らないが、話を聞く限りこちらの『事情』を話せば揺らいでくれそうな雰囲気がある。

 

 

 

「……とりあえず、来るまで待ってればいいのかな?」

 

 

 

 巡がこの世界にたどり着くまで、しばらく大空の樹の方で休んでいるかと思い立ち、森の方に飛んでいった。

 

 

 

 

 

 ────やっぱり好きだな、この場所は。本当に、どうしてあんな風に(・・・・・)なってしまったんだろうか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

第22話:新学期に急展開?絶好調な闇の使者

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

<巡の世界 心野宮・繋家>

 

 

 

 

 

「じゃ、じゃあ……あのブラックが全部知ってる感じでいいんだね」

「うん!ブルームとドリームも多分知ってると思う!」

 

 

 

 8月31日の夜9時ごろ。夏休み終了まであと数時間、と言ったところか。

 1ヶ月前に出された課題はとっくの間に終了し、明日からの学校の準備もすでに済ませた繋巡は、この前ステフォンの住人として新たに助けたプロトハートに呼ばれ、彼女の話を聞いていた。他のプリキュア達はすでに就寝している。

 

 

 

 その内容は、彼女達の元々の世界や、闇の使者達がステフォンを狙う理由について。

 

 

 

「やっぱり彼女達は、狙う理由を伝えられてなかったのか……報連相ェ」

「ただ、ブラックがそれを必要としていたし、あの人も色々あるから聞きづらかったっていうのもあるんだけど……」

「……?」

「あっちのラブリーが目覚めた時に、気になることを言ってて、アタシが余計に気になっちゃってるだけかもしれないし……」

「気になること、ねえ……」

 

 

 

 闇の使者達の記憶は、彼女達から飛び出したプロトキュア達にも引き継がれている。だからプロトハートも、その時に起きたことを覚えている。

 

 

 

 

 

『どう、して……みんな、生きているの……?』

『え……?』

 

 

 

 

 

「まるで、アタシ達がいること自体に対して、疑問を持ってた感じの言い方だったから。それがどうしても、つっかえてて……」

「……」

 

 

 

 彼女達が存在していること自体を不思議がるような言葉。そういえばあの世界のプリキュア達も、肉体が消失して魂だけの存在になっていなかったか。そして闇の使者達やブラックの発言からして、あの世界が彼女達が元々いた世界であることは確定でいいだろう。

 『崩壊』のキーとなるのは、大爆発。それが一体、誰が何のために起こしたのか……。

 

 

 

「あぁ、あっちのアタシ、ブラックに突っかかってたりしないかなぁ」

「え?仲悪いの?」

「そうじゃなくて……あっちのラブリーのあれがきっかけで、変に疑っちゃってるままだったから……」

「あぁそういうこと……ハートは、もしその本当の話を聞いたらどうするつもりだったの?」

「アタシは、というよりアタシたちは全部受け入れるつもりだったよ」

 

 

 

 巡にそう問われても、ハートの視線は揺らぐことなく力強く宣言する。

 

 

 

「みんなで決めたの。ブラック達がその理由を話したときは、何があっても受け入れようって」

「……そっか」

 

 

 

 真剣な表情で話す彼女は、体は小さくたって歴戦の戦士の顔だ。闇の使者の中にいた時にも色々あったのだろう。彼女の中でもたくさんの葛藤があったのだろう。

 すごいなとぼんやりと思いつつ、巡はこれ以上の言及をすることはなかった。

 

 

 

「……ハートから見たあのブラックって、どんな感じなの?」

「うーん……とっても優しい人、かな」

「やさしいひと」

「ど、どうしたの?」

「あー、いや、うんなんでもないよ」

 

 

 

 ハートから聞いたあのダークネスブラックの印象が、巡のイメージとは似ても似つかぬ正反対で思わず復唱する。基本的に巡は彼女に痛い目を喰らわされていることから、色々と抱えてるおっかない人というイメージが強く出ている。

 わざわざネオフュージョンと手を組んでまで、ステフォンを狙ってあの世界に関わる何かをしようとしているのだから、余程の事があるんだろうとは何となくわかるが……。

 

 

 

「うーむ……ちゃんとあたしも知りたい事があるし、聞ける日が来るといいね」

「……うん」

 

 

 

 夏の夜が更けていく。夜空に瞬く星は、静かに彼女達を照らしている。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おはよー」

「めぐるん!おっはー」

 

 

 

 翌日、9月1日の朝。

 登校した巡は、1ヶ月ぶりのクラスメイト達に挨拶しつつ自分の席に座る。ちょうど近くに千夏がいたようで、話しかけてきた。

 

 

 

「まずい久しぶりって感じがしない」

「そりゃ休み中もちょくちょく会ってたからねえ」

「……そうだ、お祭りどうだった?」

「どうだったって……楽しかったよ」

「そっか〜それならいいや!」

「???」

 

 

 

 多分千夏は廻とのお祭りデートどうだったと言いたいんだろうけど、鈍感な巡には全く通じていないのか、普通にお祭りの感想を言っている。

 おい全く振り向いてないじゃないか帯刀と突っ込みたい気持ちと、二人が単純に楽しめてて良かったという気持ちが同時に湧き上がり、とりあえず笑顔で返しておく。詳細は二人のためにあえて聞かないのがいいだろう。

 

 

 

「あ、そうだ!めぐるんこの前はありがとね。おかげで昨日は遊び呆けれた」

「そういえばそうだった。力になれたなら良かったよ」

 

 

 

 そういえば彼女は夏休み中、巡の家で幼馴染の希奈子と共に勉強会を開いて一緒に宿題をやっていた。あの時に結構勧めたおかげで、夏休み最終日に大変なことになることはなかったようだ。

 二人が談笑していると、別の女子のグループの会話が耳に入ってくる。

 

 

 

「夏休みは終わっちゃったけど、2学期も行事がいっぱいあるから楽しみなんだよね!」

「そうそう!このあとすぐに10月の初めに学校祭があるし、マラソン大会とか宿泊研修もあるし……!」

「3年の先輩は夏休み終わってすぐに修学旅行みたいだし、来年の私たちもそうなると考えるとワクワクするよね」

「でも受験……」

「あっ」

 

 

 

 彼女達の話を聞いていると、そういえば2学期も行事が盛りだくさんだったことを思い出す。どっちにしろ生徒会的には学校祭の色々が大変なのだが……。

 

 

 

「学校祭か〜……」

「今日の学活の時間、絶対その話するよね。何するかは決めてるけど、具体的なの決めるやつ」

「あたしは生徒会でほとんど手伝えない気がするけどね。あたしだって行きたいよ」

「頑張れめぐるん、負けるなめぐるん」

 

 

 

 夏休みが明けても教室はいつも通りのノリで時間が過ぎていく。

 

 9月だというのにまだまだ暑さが残る朝ではあるが、光星中は今日も元気な生徒達の笑い声で包まれている。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『巡ー!!』

「どうしたラブリー」

『またステフォンが!!』

「え?」

 

 

 

 放課後の学校の屋上にて。ちょっと奥にある物置の後ろで、巡は突然響いたプロトラブリーの声に驚きステフォンを確認する。最初の方も確かここで初めてステフォンの『WorldTrip』を開いた気がする。

 こういう時は大概、どこかのプリキュアの世界に闇の使者が現れたことを知らせているので、落ち着いて対処できるようになったと思う。このところ立て続けに闇の使者関連でステフォンからの呼び出しを喰らっている気がするが、向こうも焦っているのだろうか?

 

 ひとまず『WorldTrip』を確認すると、2時の位置にあるマークが赤く点滅していた。残りの枠もいよいよ2個となっている。シンプルにハートがモチーフになっているようだが、何かあったのだろうか。

 

 

 

『このマークは!』

「あ、これ知ってる。スプラッシュスターだったよね。きなっちが密かに好きって言ってた」

『そうなんだ!と、というかそこってことはやっぱり!』

『知ってはいたけどきちゃうか〜』

「ど、どうしたの?」

『ブラックやドリームの時にチラッと現れたあの子と戦うってことですよ!』

「……あぁ」

 

 

 

 ステフォンの中のプリキュア達に言われてハッと気がつく。

 

 以前、『Yes!プリキュア5gogo!』の世界や『ハピネスチャージプリキュア!』の世界に訪れた際に戦うことはなかった闇の使者がいた。今後彼女とも対峙することになるだろうと予想はしていたが、今がその時らしい。

 

 

 

『行ってこいって言われたのかな……?』

『ブラックに止められてた彼女が出ざるを得なくなってるんだろうなぁ』

「どっちにしろ、向こうも本気を出してきたって感じかな?それでも、油断せずに頑張るよ」

『巡、気をつけて行こうね!』

「うん」

 

 

 

 足元にワープホールを出現させ、大きく深呼吸する。大丈夫、友達を守るために戦おうとしてるじゃないか。どんな相手でも、自分が抱いた想いだけは譲れない。

 

 星の様な煌めきが、虹の様なゆらめきが、屋上からの景色との距離をどんどん遠ざけていく。出口は、すぐ近くに現れそうだ。この先、どんな世界が広がっているだろうか。

 

 視界が、白い光で塗りつぶされる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

<ふたりはプリキュアSplash☆Starの世界>

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 海原市夕凪。海と山に挟まれる、豊かな自然に囲まれた街。あいにくの曇り空ではあるが、晴れた時の景色は、きっと絵画のモチーフとしても使われてもおかしくない。都会の雰囲気とはまた違ったのんびりとした空気が心地いいような気がする。

 

 

 

 そんな巡が降り立ったのは、山の頂上に聳える巨大な樹の近く。その圧倒的な大きさに言いようもない壮大さを感じて、思わず一歩後ずさる。

 

 

 

「でっ……か」

『大空の樹だ!相変わらずすごいよねここ!』

「いやでっ……か」

『さっきから大きさのことしか言ってなくない!?』

 

 

 

 大空の樹と呼ばれるそれは、夕凪の人たちにとって特別な場所のようで、ステフォンの中のプリキュア達もその場所を知っているようだ。多分後輩のあの子に聞いたら色々と教えてくれそうな気がするが、またの機会に聞いてみることにしよう。

 

 

 

「でも……なんか、すごくいい場所だね。語彙力のない感想だけど」

「あなたにも気に入ってくれるなんて、なんだか嬉しいな」

「……ん?」

『……は?!』

 

 

 

 突然声をかけられて振り向けば、闇の使者が普通に巡とラブリー達との会話に混ざっていたのだ。

 

 その闇の使者の顔はよく知っている。ドリームの時やブラックの時に現れていたのだからよく覚えている。

 

 

 

「待ってたよ、キュアコンプリート」

「だ、闇の使者の回収業者(ダークネスブルーム)……!!」

「せいかーい♪……って、何か変な覚え方してない?」

 

 

 

 巡の前に現れた“闇の使者”はダークネスブルーム。どうやら巡のことを、しばらくこの大樹のある森の中で待っていたらしい。向こうは笑顔で話しているだけなのに、紅く光る虚ろな瞳にはただならぬ緊張感が走り、思わずステフォンを構える。

 

 

 

「まあまあ、そんなに警戒しないでよ。もちろん狙いはそのステフォンだし、みんながやられてきた分の仕返しでもいいんだけどさ……」

「やっぱり狙ってるじゃん。ついでに不穏なワードが聞こえたんだけど……」

『き、気をつけて巡!』

『前もちらっと見たと思うけど、彼女普通に強いからね!?』

「わかってるよ、みんな」

 

 

 

 あのダークネスブラックが放とうとした必殺技をキャンセルさせる程度の力は出していたので、彼女のポテンシャルはブラック同等であると見ていいだろう。

 どんな相手だろうと、巡は諦めないし、ラブリー達を守り切ると決めた身。まっすぐと闇の使者を見据える瞳には、強い想いが輝いている。

 

 

 

「コンプリート・ステージON!」

 

 

 

 ステフォンから溢れる光に包まれ、巡はプリキュアの姿へと変身する。

 

 

 

「現となりし、12の魂!キュアコンプリート!」

 

 

 

 

 

「さあ、君の中にいるらしいラブリーの友達を助けるよ!」

「とりあえず、あの人のためにもステフォンを渡してもらうよ!」

 

 

 

 先手必勝とでもいいたげに拳を構えて飛び上がるコンプリートに対し、ダークネスブルームは片手を翳し、黄金色の光のバリアで受け止める。

 

 

 

「!!」

『やっぱり精霊の力!?あの時見えた光と同じ!?』

「はぁっ!」

 

 

 

 コンプリートとダークネスドリームの間に割って入った時のように、バリアを膨張させてコンプリートを奥の方に吹き飛ばす。それでもなんとか体勢を直す。

 

 

 

「直接がダメなら……」

 

『CureWeapon!Lovely!』

『PowerCharge !Rose!』

 

「これならどう?煌めく愛吹雪(ピンキーラブブリザード)ッ!!」

 

 

 

 銃口から放たれる煌めく青い薔薇の花吹雪がブルームに向かって飛んでいく。標的にされた側は喰らうまいと逃げるように駆け抜け、コンプリートとの距離を一気に詰める。その手には闇の力が宿り、振り下ろせば黒い闇が斬撃のように放たれる。

 

 

 

「うわ……っ!?」

 

 

 

 突如として放たれたそれに驚いて避けるものの、間髪入れずに精霊の光を纏ったパンチを喰らいそうになり、両腕を組んで守りに入る。その威力がなかなかのものだったようで、コンプリートはさらに後ろに押し出されてしまう。

 

 

 

「ぐう……!?ちょ、ちょっと待って、ブラックとは別のベクトルで厄介では……?」

「あはは、褒めてくれるんだ〜」

『褒めてない褒めてない!!』

『と、というか、この世界にいるはずのプリキュアは!?』

「あー、舞達ならまだ来ないと思うよ。今頃欠片と出逢ってるんじゃないかな?」

『な……っ!?』

「あらやだこの子先手打ってるわ」

 

 

 

(二人には悪いけど、コンプリートとは二人きりになりたいから、そう簡単にはこっちに来れないんだよね……)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『ウザイナー!!』

「「はあああ!!!」」

 

 

 

 

 

 一方、トリネコの森を降りた海辺にて。

 

 ダークネスブルームが放ったという欠片は、この世界由来の怪物の姿となって咆哮を上げながら、二人組のプリキュアに立ち向かっていた。

 

 

 

「なんでウザイナーがいるワケぇ!?」

「ダークフォールの気配もしないラピ!」

「でも、おかしな闇の力を感じるチョピ……!」

「一体、何が起きて……きゃあ!?」

「イーグレット!このっ!」

 

 

 

 欠片の猛攻によって吹き飛ばされてしまったイーグレットと呼ばれるプリキュアへ、さらに欠片は追い打ちをかけようと詰め寄ってくる。しかし、彼女の元へは近づけさせないと言わんばかりの、精霊の光を纏った渾身のパンチが飛び、欠片の動きを食い止める。

 

 

 

「大丈夫?」

「ありがとう、ブルーム……!」

 

 

 

 ブルームと呼ばれたプリキュアが差し伸べる手を掴み、イーグレットも再び立ち上がる。

 彼女達はこの世界のプリキュア。突如として出現した怪物を追い払うために、数分前から変身して戦っている最中だった。

 

 

 

「いきなり現れて、一体なんなのか全然わかんないけど!」

「あなたの好き勝手にはさせないわ!」

『ウザイナーッ!!!』

 

 

 

 再びプリキュアに向かって襲い掛かろうとする。二人は光を飛び散らせながら大ジャンプし、欠片の頭上へと移動する。

 

 

 

「やぁぁぁっ!!」

『ウザッ!?』

 

 

 

 上空に飛んだプリキュアを振り落とそうと暴れるが全て避けられ、イーグレットが繰り出した踵落としにより、一瞬にして沈められてしまう。欠片が再び動き出そうと立ち上がるよりも前に、二人は手を繋ぎ、その手に光を集める。

 

 

 

「大地の精霊よ!」「大空の精霊よ!」

「今、プリキュアと共に!」

「奇跡の力を解き放て!」

 

 

 

 黄金色と白銀色の光が、流れる水のように尾を引く。

 

 

 

「「プリキュア・ツイン・ストリーム・スプラッシュッ!!」」

 

 

 

 両手を突き出し、二つの光は交差しながら、欠片を包み込んでいく。

 このまま浄化されるところではあったが、欠片は何かを思い出して光の渦から脱出し、大空の樹が聳える森の方へと逃げ帰ってしまった。

 

 

 

「逃げられたらラピ!?」

「は、早く追いかけないと────」

 

 

 

 ブルームがすぐに気づいて走り出そうとしたその時、欠片が飛んでいった森から何かしらの衝撃音が響き渡った。

 

 

 

「今のは何チョピ!?」

「何か、大変なことが起きているのかしら……!?」

「急ごう!」

 

 

 

 そこではちょうど、別の戦いが巻き起こっている場所。まだ何も知らないブルームとイーグレットは、大切な場所を守るためにも先を急ぐのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はぁ……はぁ……」

「へぇ……みんなが言ってる通り、結構強いんだね!」

『め、めぐるん!大丈夫!?』

「ピーチがいなかったら詰んでた……」

 

 

 

 一方のコンプリートはいうと、ダークネスブルームが放った精霊の光を纏った拳をピーチイージスで受け止めて、それでも相殺しきれなかった勢いに押し込まれ、追い詰められていた。先ほどの爆発はそれだ。

 おかしい。コンプリートのリングはすでに外していて力は解放しているはずなのに、それでも息切れする程度に追い詰められているのだ。

 

 それもそのはず。向こうはネオフュージョン由来であろう闇の力に上乗せするように、自身由来である精霊の力を使っているのだから、純粋に強かったブラックの時以上に厄介さを極めているのだ。向こうだって、ただ力任せに戦っているわけでもないのがまた厄介さに拍車をかけている。

 

 

 

「それじゃあもう一発……あなたには話したいことがたくさんあるから、大人しくついてきてもらうよ!」

「ちょ……っ」

 

 

 

 大人しくついてきてもらうためになぜ殴られなくてはならないのかというツッコミはさておき、ダークネスブルームは再びあの爆裂する勢いの攻撃を喰らわせるため、コンプリートの方に精霊の光を纏わせた拳を振りかぶって飛びかかってくる。

 

 

 

「はぁぁぁっ!!」

「っ!!」

 

『CureWeapon!Blossom!』

 

 

 

 拳を喰らったコンプリートは、まるでガラスが砕けるように崩れ去った。

 

 

 

「……!?偽物……?」

 

 

 

『PowerCharge!Beauty!』

 

真実映す美しき花(トゥルーフォルテブリザード)ッ!!」

 

 

 

 先ほど彼女が殴ったのは、ブロッサムミラーの力で分身したコンプリートの幻影だったようだ。幻影を殴ったことで砕け散った光の破片は、彼女の動きを封じるように降り注ぎ、身動きできないように凍らせる。

 

 

 

「え……っ!?」

「これで決めるよ!プリキュア・ブレッシングキッスッ!!」

 

 

 

 目の前に現れたコンプリートによって撃たれたハートの弾丸は、ダークネスブルームの胸の紅いクリスタルめがけて放たれる。流石に避ける手段は持ち合わせていなかったようで、弾丸は紅いクリスタルを貫かん勢いで被弾しようとしていた。

 

 

 

「……!?」

『あれ!?』

「……っ!」

 

 

 

 しかし、弾丸はそれを完全に貫くことはなく、精霊の力のバリアで弾こうと受け止められていた。ジリジリとダークネスブルームを後ろに押し込んでいたが、勢い任せに無理やり振り払われ、弾丸は弾かれてしまう。

 

 

 

『嘘!?』

『ブレッシングキッスが、弾かれた!?』

「効かないとかそんなことあるの???」

『ねえなんでこんな時まで平常運転!?』

「え、えぇぇ……?何で防げたの?」

「いやあたしに聞かれても」

 

 

 

 弾き飛ばしたこと自体が初めてで、プロトキュアは当然のように驚き、コンプリートは驚きを通り越していつものような呑気な反応でしか返せなくなっている。何よりも一番驚いているのは、標的にされて弾いた本人であるブルームの方だった。彼女も一か八かでバリアを張ったようだ。

 

 

 

「な、何が何だかわからないけど、チャンスってことでいいよね!ダークネス・ストリーム……」

 

 

 

 すぐに気を取り直して氷の束縛から抜け出し、右手に黄金色の精霊の光、左手にネオフュージョン由来の闇の力を集めて、逃げ出そうとしてよろめいたスタミナ切れかけのコンプリートに突き出す。

 

 

 

「───スプラッシュッ!!」

 

 

 

 放たれた二つの力の激流は一つの奔流となり、コンプリートを突き飛ばすかのように放たれる。

 

 

 

「うわっ」

『危ない!!』

 

 

 

 光と闇の奔流に飲まれ、吹き飛ばされたコンプリートのキャリーからステフォンが落ちてしまう。ラブリーは変身が解けてしまった友達を守るために一緒に飛び出していったが、いつの間にか背後に控えていた欠片の腹部の裂け目より広がる空間へと一緒にぶちこまれてしまった。

 

 

 

「あれ?ラブリーだけついてっちゃったの?……置いてかれちゃったけど大丈夫?」

『え、うそ!?』

『いつの間に……』

 

 

 

 吹き飛ばされたステフォンを見下ろしながら、ダークネスブルームは一応心配そうに中のプロトキュアたちに声をかける。巡を守るためとはいえ一人で飛び出してしまったラブリーが心配すぎる。それよりも、巡がいないままではステフォンは闇の使者たちの手に渡ってしまう。

 しかし、ダークネスブルームはそのステフォンを拾う素振りを見せない。

 

 

 

「……ごめんね。このまま取っていきたいんだけど、今はステフォンを取るつもりはないんだよね」

『と、取るつもりはない!?』

「用があるのはステフォンじゃなくて、その持ち主の方。ちょっと“お話”してみたくって」

『お、お話……?』

『……っ!?ブルーム!一体何する気なの!?』

「何する気って……ちょっとあの巡って子、あまりにも私たちのことを知らなすぎるからなあ。話し合ったら案外、簡単にステフォンを手放してくれるかなーって」

 

 

 

 ドリームならわかるでしょと言いたげな笑顔を見せて、彼女もまた、欠片の腹部の裂け目に広がる空間の方へと向かっていく。その笑顔で全てを察したであろうドリームは、思わずステフォンの中から飛び出して彼女に待ったをかける。

 

 

 

『ま、待って!まさか、全部(・・)言う気なの!?』

「もう決めたことだし、そっちのドリームにはもう関係ないでしょ。ああでも、変に疑われる前に腹括っといてよね」

 

 

 

 それだけ告げて、ブルームが巡を追いかけ欠片の奥の空間へと飛び込んでいった。空間への入り口は閉じて、再び欠片が動き出し、ステフォンにロックオンする。

 

 

 

『ど、ドリーム!?今のやりとりは一体!?』

『やっぱり、何か知ってて……お願い!ちゃんと教えて!!』

『そ、それは……』

『大丈夫だよ!?どんなに悲しいことでもちゃんと信じるから!』

『ウザイナーッ!!』

『ああもう!今大事なところなのに!!』

 

 

 

 闇の使者の意思と反して、欠片は腕を伸ばして、草の生える地面に転がり落ちたステフォンを奪おうと手を伸ばした。

 

 

 

 

 

「「はぁぁぁぁっ!!!」」

『ウザッ!?』

『こ、今度は何!?』

 

 

 

 ステフォンを奪おうとした怪物の手に、上空から降りてきた二人の少女の光を纏った攻撃が決まった。怪物は後ろによろけ、動きを止める。

 

 

 

「ウザイナーはこのおもちゃみたいなのを狙ってたのかな?何か、声が聞こえたような気がしたんだけど……」

「それに小人みたいな子も……あのー、大丈夫ですか……?」

『そ、その声は!!』

『ブルームとイーグレット!!』

「……って、私たちのこと知ってるの!?」

 

 

 

 落ちていたステフォンと飛び出していたプロトドリームを拾い上げたのは、先ほど浜辺から逃げた欠片を追いかけてここまで飛んできた、キュアブルームとキュアイーグレット────正真正銘の、この世界のプリキュアだった。

 

 

 

 

 

『お願い助けて!あたしたちの友達があの怪物の中に閉じ込められちゃったの!』

「な、なんですって!?」

「確かに、あのウザイナーの体に裂け目みたいなのはあったけれど……閉じ込められているなら大変だわ……!」

「イーグレット、助けに行こう!」

「ええ!」

 

 

 

 再び怪物が動き出し、プリキュアを始末してからステフォンを奪おうと身を乗り出す。そんな怪物を前に、二人のプリキュアは勇敢に立ち向かう。

 

 欠片の奥に続く空間に投げ込まれた巡とプロトラブリーの命運はいかに。

 

 

 

 

 

続く…

 




次回更新日:6月16日
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