PrecureStageON!   作:主氏レム

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冒頭ちょっと重めです


第25話:相性最悪?なぎさと巡

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ────これは私が闇の使者として目覚めて、何週間か経った後の話。

 

 

 

 

 

 あの人に留守番していてと言われて、一人で城の方で待っていた時に偶然起きた、とあるきっかけのお話。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あれ?これって……」

 

 

 

 部屋のとある扉で見つけたのは、黒いワープホール。あの奥に続く世界へ、あの人は出かけていった。あのワープホールの奥には行くなと、あの人から言われている。

 初めは出来心だった。あの人は一体、ネオフュージョンに何をさせられているのかが、気になってしまったんだ。目覚めてから初めてあの人の姿を見つけた時も、相当やつれた様子だったから。

 あの人は、心配しなくていい知らなくていいと言ってくれたけど、心のどこかでこのまま知らないふりを続けていいのだろうかと、ずっと考えていた。

 

 

 

 かつてのあの人は、あんなにも背負い込んでしまう人だっただろうか。

 

 

 

「……。うん、行ってみよう」

 

 

 

 そして私は、あの人の姿を追うように、その先に続く世界へと飛び込んでいった。今思えば、あの時飛び込む足を止めていれば、何も知らずに済んでよかったのに。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……え」

 

 

 

 

 

 眼下に広がったのは、地獄だった。

 

 

 

 

 

 周囲の建造物という建造物は破壊され、引き起こされた火の手が上がっている。人の気配は一切ない。すでに逃げたか、それとも巻き込まれて……。ところどころ赤い液体が飛び散っていたり鉄の匂いらしきものがするのが、こちらの嫌な想像を掻き立ててくる。

 

 

 

 

 

「何、ここ……一体何が、起きて……」

 

 

 

 真っ黒な雲に覆われた空の下、異様な光景から逃げるように、私はあの人を探す。

 ふと見かけたのは、倒れている少女の姿。見覚えのある子もいれば、全く知らない子もいる。ああ彼女たちは、自分と同じプリキュアではないか。

 

 

 

「え……■■■■……?■■■■……?だ、大丈夫……?」

「……っ」

「うぅ……」

 

 

 倒れている一人に声をかけて、意識を飛ばしてぐったりしているだけだとわかって、ひとまず最悪な状態ではないことに安心する。いや、安心している場合ではない。彼女達がこんなにも追い詰められる状況になっていること自体がおかしいのに。

 

 一体誰がこんなことを?その答えはすぐにわかった。

 

 

 

 

 

「はぁぁぁぁっ!!」

「……!!」

 

 

 

 背後で爆発音と衝撃音が聞こえて振り向けば、いつの間にか上空で戦闘が行われていた。行われていたというより、もつれてここまで飛んできたような雰囲気だ。

 ピンクのプリキュアが黒いプリキュアに拳を喰らわせようとしたようだが、黒い方は颯爽と避けて、背後に迫る青と黄色のプリキュアの攻撃を防いでいる。

 

 

 

「このままじゃ、私たちまでやられてしまうわ!」

「くっ、油断も隙もないとかほんと……!」

「■■■■!■■■■■!うわぁっ!?」

「「■■■!!」」

「……」

 

 

 

 青と黄色のプリキュアに迫る攻撃を、ピンクのプリキュアが全身で受け止める。彼女は地面に叩き落とされてしまうが、ギリギリの状態で体勢を立て直す。相当な時間戦っているのだろう。3人とも立っているのもやっとなほどに削られている。

 一方の黒いプリキュアは疲れている様子を見せず、ピンクの子を後に回して他の二人の方に飛んでいく。真っ黒な闇を纏った拳が、二人に迫る。

 

 

 

「■■■■■!あとはお願い!」

「は……!?」

 

 

 

 青いプリキュアはその拳を、水色のハートのバリアを展開して受け止める。その威力はいくらそのバリアが強力でも相殺しきれていないのか、少しずつヒビが入っていく。

 

 

 

「ぐ……っ、あなたは、どうしてこんなひどいことを……!!」

「……」

「■■■■ばかりに気を取られてる場合?」

「……!」

 

 

 

 青いプリキュアが防ぐ傍ら、黄色いプリキュアが星のチェーンを投げ飛ばし、黒いプリキュアの動きを封じ込めた。ようやく攻撃の手が止み、青いプリキュアがぐったりした様子で地面へと降りてくる。そんな彼女を、黄色いプリキュアが受け止めて、ピンクのプリキュアの元に飛んでいく。

 黒いプリキュアはなんとか自身を縛るチェーンを引きちぎろうと身悶えるが、それをピンクのプリキュアが許さないとでもいうように、ハート型のエネルギー弾を放つ。

 

 エネルギー弾は黒いプリキュアに被弾し浄化しようとするのだが、彼女が持つ闇の力が強すぎるのか、全く効いている様子がない。それどころか、チェーンを壊して自由を取り戻してしまっている。いくらでも攻撃のチャンスはあるのに、黒いプリキュアは立ち止まったまま、3人への攻撃を向けようとしない。

 

 

 

 

 

「教えて!あなたは■■■さんと同じ、優しい心を持っているはずなのに、どうしてネオフュージョンと一緒にいるの!?」

「……っ」

 

 

 

 ピンクのプリキュアに叫ばれて、あの人は虚ろな紅い瞳を僅かに見開く。まるでその言葉だけは聞きたくなかったとでもいうように。しかしあの人は、すぐに無表情を取り繕い、返答する。

 

 

 

「……違う。私は、世界を真っ暗にするために、この世界を壊すためにここに来たの。あなたたちプリキュアは、あいつにとっての邪魔な敵でしかない」

「それなら、どうして苦しそうな顔で戦ってたの?」

 

 

 

 黄色のプリキュアにどこか困惑した風に聞かれ、あの人の取り繕った表情が崩れる。それは多分、あの人が一番聞かれたくなかっただろうこと。

 あの人は3人のプリキュアと戦っている時、倒すべき敵として見ているというより、本心ではあんまりやりたくないなとわかるくらいには、思い詰めた顔をしていた。

 

 

 

「苦しく、なんか……」

「……!もしかして、ネオフュージョンから離れられない理由があるのかも……」

「え……!ね、ねえ!あいつに困ってるなら、私たちと一緒にいた方が……!?」

 

 

 

 青いプリキュアが何かを察し、ピンクのプリキュアがあの人に対して呼びかける。救いの糸のように伸ばされた手は、あの人を地獄の底から招いているようにも見える。

 

 

 

「……っ、それ、は……」

「大丈夫だよ。一人で悩むより、みんなで解決しようよ!」

「それは……」

 

 

 

 伸ばされた救いの手に応えようと、あの人は右腕を伸ばそうとする。

 

 その腕を取ることができれば、ネオフュージョンとの問題も、もしかすると解決できたかもしれないのに。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「────ごめんなさい、私はその手は取れないの」

「えっ────」

 

 

 

 

 

 あの人がその手を取ることはなかった。

 

 ピンクのプリキュアに向かって伸ばした片手を突き出し、そこから放たれた真っ黒な雷撃を容赦無く浴びせたのだ。雷撃に飲まれ叫ぶこともできなかった3人のプリキュアは、圧倒的な闇の力に頽れ、その後動かなくなってしまった。ただ意識を飛ばしてしまっただけならまだいいが、あれだけの威力を喰らってしまったら致命傷は免れないが……。

 

 倒れたプリキュアの一人が、怖くて止められなかった私の近くまで吹っ飛ばされてきていた。わずかに開いた目に光がなく、呼吸も嫌に弱々しい。……だめだ。これ以上の想像は、恐ろしくてできたものじゃない。

 

 

 

 一方、攻撃を放ってしまったあの人は目を見開いていて、取り返しのつかないことをしてしまったかもしれないという後悔の念すらも感じ取れた。

 あの人の攻撃は絶対に本心からやってるわけではないとすぐにわかった。多分、こんなふうに強がってでも悪いふりをしないほどに、あの人の心は壊れそうなギリギリを攻めているんだろう。

 

 あの人は、ひび割れたコンクリートの地面に座り込んで、蹲ってしまう。まるで弱音も吐き気も自身から飛び出そうとしているもの全てを無理やり押さえ込んでいるようにも見えた。

 

 ああ、その姿はどう見ても、自分が目覚めた時に見た彼女の姿と、ほとんど同じじゃないか。あの人はあの時でさえも、何があったのかを言わずに、ただ嗚咽を漏らしていただけだったじゃないか。

 

 

 

 

 

「ブラッ、ク……っ」

「……っ!?ブルー、ム、なんで、ここに……?!」

 

 

 

 震える声で、あの人は私の名前を呼ぶ。

 あの人は、ブラックは、さっきまでの気迫ある様子と一転して、見つかってしまったと悔しげな顔で私を見開いた目で凝視していた。

 

 だってそうだ。私はあの人に「来ちゃダメ」と言われたのだから。

 

 もっと早く止めていれば、もっと早くに気づいていれば、こんなことにはならなかったはずなのに。

 

 

 

 

 

 これは私が、ブラックがネオフュージョンにさせられている“悪事”の全容を理解した瞬間で、ブラックがあんな風になってしまった大部分の理由を理解した瞬間だった────

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『────っ!?』

 

 

 

 ステフォンの中で眠っていたプロトブルームが、何かに驚いて勢いよく起き上がる。

 

 

 

『……夢……?』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

第25話:相性最悪?なぎさと巡

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

<巡の世界 心野宮・繋家>

 

 

 

 

 

 現在時刻は午前6時前。ここは繋巡の自室。

 

 闇の使者の中から飛び出したプロトブルームは、闇の使者の中にいた頃に見たあの光景が、嫌に鮮明な夢として思い出して目を覚ました。目覚めた今も、その時に抱いてしまった名状し難い不快な塊が、胸の中に渦巻いている。

 周りには誰もいない。ステフォンの外に出てみると、他の子達はみんな、巡が眠る布団の上やら枕のそばなど、まあまあ思い思いの場所で、安心しきった顔で眠っている。最近の彼女たちは、巡の知り合いたちが見ていないところではこうして、外に出ていることが多くなっているらしい。

 

 現在のステフォンの持ち主である繋巡もまた、こんな早朝の時間では流石にまだ夢の中なのか、小さなメロディとホイップが乗っかっている布団の中ですやすやと寝息を立てている。まあまあ警戒心がなさすぎる。

 

 

 

「……そっか、私は……」

 

 

 

『きっと、君たちとの戦いは意味ないものなのかもしれないし、もっと別の方法が探せばあるのかもしれない……それでも、あたしにだって、譲れない思いがある……、ラブリー達のことも、あの世界も、……君たちのことも、助けたいっていう、思いがある……っ!!』

『……!!』

『あたしは、ステフォンに宿るこの力が……壊すため傷つけるためだけのものって、思ってない……っ!!』

 

『……そっか』

『!?』

 

 

 

 あの時、闇の使者は自ら自分を切り離した。そして、切り離された自分は今、ここにいる。

 

 正直な話、プロトブルームは闇の使者の中から出るつもりがなかった。なかったというより、自分がラブリーたちと顔を合わせられる気がしていなかった。

 

 あの闇の使者は、巡やステフォンの中のラブリーたちに、あの世界で起きた『崩壊』の話を全て話した上に、記憶のない彼女たちを、特にラブリー深く傷つけてしまったという自覚がある。彼女にとっての真実は、あのダークネスブラックとの秘密であり、ドリーム以外の闇の使者たちへはまだ知らせる時期ではなかったはずの、本当の話。自分たちの世界を元に戻すために必要なステフォンを、巡から奪い取るための大義名分にもなりうる大きな理由。

 

 そして、闇の使者と記憶を共有している自分は、そのことを全て知っている。

 

 衝撃走る記憶の話をされて混乱し、深い悲しみを背負ったラブリーの表情。ステフォンが秘める恐るべき力と闇の使者の言葉に珍しく狼狽えてしまった巡。

 

 そして、自分のせいで闇の使者と巡との対立構造が、もしかするとより深いものになってしまったことに対する責任と罪の意識。その二つが、彼女の心の大部分を支配している。

 

 

 

(私の、せい……?私が、全部言おうって言い出したから……?)

「……?おーはよ」

「……うわっ」

 

 

 

 突如巡に話しかけられ、ブルームが小さく驚く。彼女が立てた物音に反応し、寝ぼけ気味に巡が目を覚ましたらしい。

 

 

 

「朝早いね……君って確か、朝起き弱いんじゃなかったっけ……」

「は、早起きは苦手だけど……ちょっと、嫌な夢見て目が覚めちゃって……」

「嫌な夢……それは災難な……」

 

 

 

 巡はブルームと話しているが、肝心の彼女が目を合わせてくれない。もしかすると、閉じ込めていた闇の使者が言っていた秘密の話を言ったことを気にしているのだろうか。

 

 

 

「……そんなに気にしないでよ。あたしも知りたかったことだったし」

「……うん……」

 

 

 

 気にするなという方が気にするものなのかもしれない。目の前のプロトキュアは、巡と特に目を合わせずに窓の外の景色をぼんやりと眺めている。ぐっすり寝てた割に、普通にまだ眠そうに見えるのは気のせいではないだろう。

 窓の外では、巡にとってはいつも通りの住宅街の景色と、朝方の淡い色の空が映るだけ。時折、車が通る音と雀の囀りも聞こえる。

 

 

 

「(……結構な悪夢だったんだろうなこれ)眠かったらもう少し寝てていいからね」

「う、うん……」

 

 

 

 巡に心配されて、プロトブルームはステフォンの中に戻って再び眠りにつく。

 

 

 

 

 

 どうやら巡と彼女との心の距離は、まだ縮まりそうにないらしい。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

<巡の世界 心野宮・私立光星中学校 生徒会室>

 

 

 

 

 

「……では、部屋割りの変更などの連絡が特になかったので、これでよろしいですか?」

『はい!』「問題ないですよ〜」

「もし部屋関連でのトラブルとかがあったら、生徒会か先生に相談してね!」

 

 

 

 光星中では、1週間と3日後に迫る学校祭の準備が推し進められていた。ここしばらく、放課後はずっと学校祭の準備で生徒たちが一生懸命準備している。基本的に生徒会が学校祭全体の運営や裏方仕事に携わることになるため、生徒会長である巡もかなり奔走していた。

 本日は、各クラスや部活動、個人有志での屋台やイベントなどを行う教室の割り当てを決める会議を行っていたが、議長の円滑な司会によって滞りなく進めることができた。

 

 

 

「巡先ぱ〜い!今空いてます?」

「あ、恋華ちゃん」

 

 

 

 会議が終わり、一人残って作業をしていた巡の元に後輩の柑崎恋華がプリントを持って生徒会室に現れる。学校祭ではダンス部のステージもあるので、多分それ関連のプリントだろう。

 

 

 

「これ、ダンス部で使う備品一覧です!」

「ありがとう、早いうちに出してくれるの助かる」

 

 

 

 恋華からプリントを受け取り、他の備品リストが置かれているカゴの中に入れておく。ここに入れておけば備品管理担当の先生が確認しやすい。

 このまま恋華が帰るかと思ったが、まだ練習まで時間があるのかしばらく巡の会話相手になっていた。

 

 

 

「それで、先輩のクラスはお化け屋敷をやるんですね!」

「うん。あたしも時間があったら手伝いに行ったりするつもりだけど……きなっちのクラスのプレイハウスも楽しそうなんだよなぁ……恋華ちゃんのところは?」

「うちはゲームカフェをやるんです!お菓子とジュースも出して、持ち寄ったアナログゲームで遊べる感じにするんだ〜」

「へぇ〜?そっちも楽しそうだね」

「はい!巡先輩もぜひ遊びに来てくださいね!」

 

 

 

 後輩たちも後輩たちで、なかなか楽しみな出し物を用意しているらしい。恋華は明るくそう言いながら、生徒会室を後にした。これからダンス部の練習だろう。

 そういえば恋華は、クラスでの出し物やダンス部のパフォーマンスの他に、1年生有志で集まってワークショップも行うと、この前の個人出店希望届出の中に名前が入っていた気がした。とんでもない体力と積極性の持ち主である。

 

 

 

「……いやあ、恋華ちゃんはすごいなあ」

『────巡』

「ん?……いやちげえステフォンからだ」

『……出てきていい?』

「うん、今はあたし一人だけだから大丈夫だよ」

『ブルーム!?』

『あ、待ってよ!』

『……行っちゃった』

 

 

 

 恋華が去った後少しして、近くに置いていた巡の鞄の中から声が聞こえてくる。一瞬驚くがステフォンの中から聞こえてくる声だとすぐにわかって了承すれば、鞄の中からステフォンから出てきたであろうプロトブルームが顔を覗かせる。中のプロトキュアたちに止められている気がする。

 

 

 

「……へぇ。巡の世界は、学校祭の時期なんだね」

「まあね。色々頑張ってる」

『え、そうなの?なんだか楽しみだね!』

「……?」

 

 

 今朝の様子とは打って変わって、明るい様子で巡の学校の学校祭について気になって話しかけている。やはり彼女が見たという嫌な夢のせいで寝足りなかったらしい。

 そういえば彼女はこのところ、他のプロトキュアがいるときはステフォンの外に出ていたり逆にステフォンから出てこなかったりと、彼女たちと距離を置いていることが多い気がする。

 

 おそらくだが、ラブリー伝いであの世界についてを闇の使者が話していて、その記憶を共有しているからこその気まずさを感じているのだろうと巡は推察する。

 

 

 

「うーん……何があったのかはともかく、どうにかできないものか」

「……え?」

「君のことだよ。どうすればみんなと打ち解けられるかな〜って」

「わ、私が?そ、そんなことないよ〜!あはは〜……」

 

 

 

 わかりやすく目を逸らしているが、自分の中でもこのままじゃ気を遣われてしまうと思っていたのだろう。本人的にも、ステフォンの中のプリキュアたちと普通に会話したいと思っているけど、どこかでそれを阻んでいるのだろう。

 

 

 

「……あれ?ステフォンが……」

「え?あ」

『あ、あれ?!画面が勝手に!?』

 

 

 

 何か露骨に話を逸らされたような気がするが、ステフォンがいつの間にか『WorldTrip』の画面に切り替わっていた。

 

 今回は1時の位置にあるマークが赤く点滅していた。おそらくこれが埋まれば一応は画面上にある世界は全てコンプリートしたことになる。こちらもシンプルにハートがモチーフになっているようだが、何かあったのだろうか。

 

 

 

「これは初代?それとも2期の方?」

『え、ど、どういうこと?!』

「あー……なんか2人か3人かっていえば伝わるかな?」

『そういうこと?ど、どうだろうマークだけじゃわからないかも……』

『というかこのマークが点滅しているってことは、ブラックが来るってことなのかな?』

「ブラックが……」

「え、あの人また来るの?確かにあの時はノーカンな気がするけど……」

 

 

 

 おそらくダークネスブラックと再び邂逅することになると考えると、いつも以上に気を引き締めていかなければならない。そして、プロトブルームもあのブラックに対して何か思うところがあるのか、少々思い詰めた顔をしている。

 もしかするとと考えたのか、巡がすかさず話しかけてみる。

 

 

 

「もしかして、闇の使者の方のブラックに何かされてた?」

「っ!?そんなわけない!!そんな、ことは……」

『ぶ、ブルーム……』

「即答だねぇ……ついでに何か気になる感じだし……。ねえねえ、もしブラックに出会ったら、これを機に思ってることを色々ぶつけてみない?」

「……え、私が……?で、も……」

「闇の使者の中にいるわけでもないし大丈夫だよ。何かがあったら、ちゃんとあたしが守るからさ」

「……、考えてみる」

「よしっ」

『え、何今のやりとり?!』

 

 

 

 

 

 足元にワープホールを出現させ、大きく深呼吸する。前回彼女と対峙した時よりも、ステフォンに宿る力との付き合い方は上手くなったし、過去を聞いたからこそできることも増えた。もしかすると、戦う以外の別の道を見出せるかもと淡い期待を抱く。

 

 星の様な煌めきが、虹の様なゆらめきが、生徒会室との距離をどんどん遠ざけていく。出口は、すぐ近くに現れそうだ。この先、どんな世界が広がっているだろうか。

 

 視界が、白い光で塗りつぶされる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

<ふたりはプリキュアMaxHeartの世界>

 

 

 

 

 

『ザケンナーァァァ!!!」

「え???」

『え???』

 

 

 

 この世界に舞い降りて早々、ザケンナーと咆哮を上げるいかにも怪しい怪物が出現していた。どうやら怪物の目の前にステフォンは巡たちを召喚したらしい。

 

 

 

「何コイツ……またステフォンに嫌われてる?」

『おかしいですね、あのザケンナーからネオフュージョンの気配を感じません』

『闇の使者が繰り出したってわけじゃなさそう!』

 

 

 

 目の前で暴れている怪物を見て、ブロッサムとラブリーとこの怪物が欠片ではないことを察知したようだ。

 

 

 

「そ、そんなこともあるの?まあでも、やっつけておくことに越したことはないよね」

『ザケンナーァァァッ!!!』

「ふざけてるのは……おわっ」

 

 

 

 巡の姿を認識し、ザケンナーは彼女に向かってその腕を振り下ろす。しかし巡が構えたステフォンから光が溢れ出しプリキュアの姿へと変身させると、その拳を両手で受け止める。そして、コンプリートはそのまま軽々と持ち上げてザケンナーを弾き飛ばす。

 

 

 

「ふう……、ふざけてるのは、急に襲いかかってきたそっちでしょうに。最後まで言わせてよね」

『お、おぉ〜!』

『コンプリート、リングを外さなくても強くなってる気がする!』

「まじ?これも成長ってやつ?」

 

 

 

 いとも簡単に弾き飛ばされたザケンナーは怒り、もう一度コンプリートを叩き潰してやろうと飛びかかる。

 

 

 

『CureWeapon!Melody!』

『PowerCharge!Lemonade!』

 

 

 

 しかしコンプリートは冷静にホイップウィップを構え、クリームエネルギーの紐が変化した黄色い蝶たちが繋がった光のチェーンをザケンナーの胴体に巻き付ける。

 

 

 

『!?』

「三半規管の準備はいい?弾ける乙女の甘い輝き(プリズムデコレーション)ッ!!」

 

 

 

 鞭をぶん回し、ザケンナーを上空へと打ち上げる。光のチェーンに拘束された怪物は、ウィップの力によってその力を押さえつけられ抜け出すことはできない。

 

 

 

「それじゃあ久しぶりに決めるよ!プリキュア・ポップンロケットシャワーッ!!」

 

 

 

 さらにコンプリートは、両手から無数のハートを放ち、打ち上げられた怪物を浄化せんと包み込んだ。久しぶりにはなったそれは威力を失うことなく怪物を浄化する。光に包まれた怪物は小さな星型の何かとなり、「ゴメンナー」と弱々しく、俺たちは無害ですよオーラ満載のまま、どこかへ逃げ帰っていった。

 

 

 

 

 

「……怪物は浄化したのはいいけど、なんだったんだろあれ」

『もしかすると、本来この世界にいる人たちを邪魔するために現れたのかも……』

「なるほど……あたしもしかしなくても、その人たちの役割を取っちゃったってこと?怒られないかな」

『怒られないと思うよ!?』

『そんなことで怒られてたまるか』

 

 

 

 一応一件落着したのはいいが、この世界のプリキュアの役割を奪ってしまった気がしたコンプリートは周りにつっこまれつつも変身を解いて、元のプリキュアたちを探すために歩き出そうとした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「────ぁぁぁあああああっっっ!?!?!?」

「!?」

『今度は何!?』

『この声ってまさか!!』

 

 

 

 悲鳴にも近い絶叫が背後から聞こえて、何事だと思って振り返る。

 巡の視線の先にいたのは、3人の少女たち。叫んだのは、茶髪でショートヘアの子だ。その少女の後ろで困惑した様子で見ているのは、黒髪でロングヘアのお淑やかそうな少女。もう一人の金髪で三つ編みの不思議な雰囲気のある少女は首を傾げている。

 茶髪の少女は近づいてきて、巡の方をまじまじと見る。居心地が若干悪いと思いつつも、巡も不思議そうに聞いてみる。

 

 

 

「あのー、何か……」

「あ、あんた、“繋巡”でしょ!?それに、プロトキュアって子達も一緒!」

「……え?」

『……うぇ!?』

 

 

 

 初対面のはずの茶髪の少女に、彼女は知らないはずの巡のフルネームを呼ばれて、今度は巡が驚く番だった。驚いているのだが、あんまりそういうふうには見えない。さらにプロトキュアたちまで認知していたようで、ステフォンの中のラブリーたちも混乱する。

 まさかダークネスブラックが擬態している?とも思ったが、ラブリーたちの反応を見るに、そういうわけでもなさそうだ。

 

 

 

「な、なんであたしの名前を……」

「覚えてないの!?ほら私!美墨なぎさ!」

「いやいやいやあたし君と初対面のはずなんだけど……」

「そんなわけないでしょ!?だって去年(・・)色々あったじゃない!」

「きょ、去年???」

「な、なぎさ!巡さんが困ってるからそれくらいにしましょ……?」

『ほ、ほのかさんも知ってるの……?』

 

 

 

 まるで久しぶりに会って遊んだ友達の如く次々に話しかけてくる美墨なぎさに、若干の混乱を隠しきれない巡の間に黒髪の少女こと雪城ほのかが止めに入ったことで、巡は一方的な会話攻撃(マシンガントーク)から解放される。

 

 一体どういうことやら。この世界のなぎさとほのかは、巡が知らないところで巡に出会っているらしい……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「巡さんは、本当に知らないのね……」

「そうだよさっきからそう言ってるよ。この世界へはさっき来たばっかりなんだって。…。君らもしかして、集団幻覚を見たのでは……?」

「あれが幻覚とは思えないんだけど……」

『うーん、おっかしいなあ……』

「よくわからないことが起きてるけど……」

 

 

 

 

 

 ここは、移動販売のたこ焼きのお店であるTAKO CAFEのテラス席。ひとまず4人はそこで話という名の情報整理をすることになった。例に漏れず、プロトブルームはステフォンの外から出ている。

 

 

 

『なぎささんたちが中学2年生の時にはまだ行ってないし呼ばれてないはずなんだけど……』

「え、えぇ〜!?ラブリーたちなら話がわかると思ったのに」

「それどういうこと……?まさかなぎさちゃんから何もかも信用されてないの?」

「信用はしてるから!というかちゃん付けって……一応年上なんだけど」

「別に学校関係ないし大丈夫。君にいきなり呼び捨てされるよりかは全然」

「ハァ〜〜〜ッ!?」

「ま、まあまあ二人とも……」

「め、巡さんはどうしてここに現れたんですか?」

 

 

 

 悪気のない煽りのような発言に喧嘩腰のなぎさと、一体何が起きてるのか分からず混乱したまま珍しく不満気な様子の巡の両者をほのかがまあまあと諌める。

 そこで、もう一人の少女である九条ひかりが話題を変えようと、巡にここへ訪れた理由を聞く。

 

 

 

「ここまで来ると色々知ってそうだから端折るけど、闇の使者がこの世界にいるみたいで」

「闇の使者って……なんか私の姿した奴でしょ?前に追い払ったんじゃないの?」

「ここで起きた前のことは全く知らないけど、いるみたいだよ」

「えぇ……?」

「何度来たって、ほのかやひかりにアンタがいるならきっと大丈夫よ!」

「わあすごいまるで何が起きるかわかってるかのように頭数に入ってる」

 

 

 

 果たしてこの世界が過去に何があって自分やダークネスブラックと邂逅していることになっているのかは分からないが、どんな状況であれ頼りにされているのは悪い気はしない。

 だが、その闇の使者がこの場に現れていない以上、ひとまず待機していた方が良さそうだと、容器に入っている最後のたこ焼きを頂きながら、巡たちはひとまず移動しようとした。

 

 

 

 

 

 その瞬間だ。空が急に暗くなり出したのは。

 

 

 

「!?」

「何!?」

「空が暗く……?」

「おっとこれは……」

 

 

 

 空が急に暗くなるのは、闇の使者が行動を起こした証拠になる。まさか、近くに現れているのかと思って周囲を見回す。特に誰かが増えたとかの異変は起きていない。

 

 

 

『巡!上!』

「……はっ」

 

 

 

 ラブリーに言われて上を見上げると、ちょうど巡の頭上に一人の黒い翼を生やした少女────ダークネスブラックが現れていた。巡たちの方を、相変わらず冷たく虚ろな紅い瞳で見下ろしている。

 その姿になぎさとほのかはやはり見覚えがあるのか、特に驚くことなく変身アイテムを構えている。

 

 

 

「ダークネスな方の私!!!まだ懲りてなかったの!?」

「……は、はぁ?」

 

 

 

 声と共に頭上に現れたダークネスブラックに対し、なぎさは特に臆することなく知っているふうに指を指す。いきなり指を刺された挙句、まるで前に出会ったことがあるような言い方をされて、ダークネスブラックが訝しむようになぎさたちのほうを見下ろす。

 

 

 

「なんで私のことを知ってるの、ここに来たのは初めてなんだけど……」

「あ、あんたまでそんなこと言うの!?」

「ダークネスブラック、そっちは一旦気にしなくていいよ。あたしもプロトキュアもよく分からないことが起きてるみたいだし」

「ちょっと!?」

 

 

 

 これ以上の混乱を避けるために、一度巡はダークネスブラックと1体1での対話に持ち込む。

 

 

 

「で……何しに来たの?またステフォン?」

「私はそれしかないんだけど。……ブルームから聞いたでしょ、私たちがステフォンを狙う理由を」

「……っ」

「うん。その上で渡さないって言ってる。あの世界も君たちのことも、助けたいからね」

「……そう」

 

 

 

 迷いのない眼差しで、巡はビシッと言い放つ。

 初めて出会った時は何も知らなかったからかなり酷いことを言っていた気がするが、彼女も彼女で大変な目に遭っているのだろうと知ると、一概に彼女たちの行動を責められなくなる。

 

 だからこその巡の答えだ。こうなったらあの世界も闇の使者たちもみんな助けるしかないと。

 

 どんなに大層な決意を聞いてもなお、ダークネスブラックはこちらを睨みつけたまま。

 

 

 

「……私は、あんたに助けられる筋合いなんてない。私の手で、あの世界を取り戻すの。だから、邪魔をしないで」

「ブラック……っ」

「それに……私の仲間たちをずいぶん可愛がってくれたみたいだし……アンタだけは絶対に……」

「……えー……、これって交渉決裂?随分と嫌なお礼参りだけど……」

『そ、そんなぁ!?』

「……」

 

 

 

 ステフォンの外にいるブルームにも、ダークネスブラックに対してやはり何か思うところがあるのだろう。少々渋い顔で闇の使者の方を見据えている。

 周囲には、ザケンナーの姿をした欠片たちが次々に現れている。戦う以外に対話を続ける方法がないようだった。

 

 

 

「まずい囲まれてる。ちょっとこれは致し方ないか……うーむ話し合いがうまくいかないよ」

『あの人は、私たちを見逃すつもりはないみたい……っ』

「ほのか!ひかり!」

「ええ!」

「はい!」

 

 

 

 結局戦闘になるのは避けられないと悟り、巡はステフォンを、なぎさとほのかはハートフルコミューンを、ひかりはタッチコミューンを構える。

 

 

 

 

 

「「デュアル・オーロラ・ウェイブ!」」

「ルミナス・シャイニング・ストリーム!」

「コンプリート・ステージON!」

 

 

 

 

 

 放たれる光は、4人をプリキュアの姿へと変える。

 

 

 

 

 

「光の使者!キュアブラック!」

「光の使者!キュアホワイト!」

 

「「ふたりはプリキュア!」」

 

「闇の力のしもべたちよ!」

「とっととお家に、帰りなさい!」

 

 

 

「輝く生命!シャイニールミナス!」

 

「光の心と光の意志、総てをひとつにするために!」

 

 

 

「現となりし、12の魂!キュアコンプリート!」

 

 

 

 

 

「……やっぱかっこいいなあその決め台詞。あたしも使っていい?」

「え、えぇ!?前にも似たようなこと言ってなかった!?」

「いやあたしは知らん」

 

『ザケンナーッ!!』

 

 

 

 言い合いかけてる二人を邪魔するように欠片の一体が襲いかかってくるが、欠片は二人が同時にはなった拳をぶつけられて大きく吹き飛ばされる。

 

 

 

「今ちょっと取り込み中なんだから後にして!」

「いやあたし取り込んでないよ巻き込まれただけだよ」

「巻き込んではないでしょ!?」

「いや割と巻き込んでる」

 

 

 

 能天気な割に稀に常識人らしさが垣間見えるコンプリートと、活発さと一緒に慎重さを持ち合わせるブラックのそりが合っていない割に、襲いかかってくる欠片たちを見事なコンビネーションで往なしては拳や蹴りで吹っ飛ばしている。そのコンビ性は、向こうで別の欠片と相手するホワイトが密かに羨むほど。

 

 

 

「あの二人、なんだかんだで仲が良さそうね」

「仲良くはない!!」

「多分それ見間違いだよ」

「息ぴったり……」

 

 

 

 ホワイトに言われて、ブラックとコンプリートがほぼ同時に反論する様子にルミナスが、若干の感心を含んだ声で呟く。

 しかし彼女たちは気づいていない。さっきまで頭上にいたはずのダークネスブラックが消えていることに。そのことに気づいたのはなんと、一番気づかなそうなコンプリートだった。

 

 

 

 

 

「……あれ?ダークネスのブラックがいない……」

「えぇ……!?一体どこに……!?」

「うわっ!?」

「きゃあ!?」

『今の声って!』

 

 

 

 ステフォンの外に出ていたプロトブルームと、ルミナスのそばにいたホワイトの悲鳴が聞こえた。気配を感じた方を向くと、そこには二人を捕まえて担いでいるダークネスブラックの姿が……。

 

 

 

「ほ、ホワイトッ!!」

「まずいステフォンの外にいた弊害が」

「うぅ……」

「……っ!?」

 

 

 

 二人が逃げられないように捕らえたまま、ダークネスブラックはその黒い翼を広げ、無言へどこかへ飛び去ってしまう。これは、プロトラブリーが一時的に捕まってしまった時と同じだ。

 

 

 

「ホワイト……ッ、ホワイトッ!!!」

「ブラック!」

「待って勝手に動かないで……って行っちゃったし……」

 

 

 

 冷静にブロッサムミラーの力を使って彼女の行方を追おうとしたが、相方を連れ攫われたブラックにはコンプリートの声が届いていなかったのか、若干狼狽した様子で彼女のことを追いかけていった。

 

 

 

『ホワイトどころかうちのブルームも連れてかれちゃったし、どこに向かってるのかも分からないのにブラックはどっかに行っちゃうし……!』

「なぎさちゃん、ほのかちゃんのことがとても大切なんだね……いやまあそれはそれなんだよ」

「ぶ、ブラックたちを探さないと……!」

 

 

 

 一人追いかけていったブラックが心配だが、今はとにかく向こうのほうへ飛んでいった方のダークネスブラックの行き先を突き止めなければと、取り残されたコンプリートとルミナスはそう決意した。

 

 

 

 

 

続く…

 




次回更新日:6月29日(土)
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