PrecureStageON!   作:主氏レム

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MH編後半戦
個人的にお気に入り回


第26話:本音を聞かせて!黒い闇の使者の苦悩

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 どこかの世界の上空。今にも雨が降り出しそうな曇天。

 気分もどんよりしそうなこの空の下で、人々は変わらず生活の営みを続けている。ある者は学校帰りだったり、ある者は店番中だったり、またある者は公園で無邪気に遊んでいたり……。

 

 

 

『……騒がしい世界だ。この世界にプリキュアが存在せずとも、特に変わることはない……』

 

 

 

 その上空で、黒い人型の異形の何かが蠢いている。地上の人々がその姿を見れば、空に謎の飛行物体が浮かんでいると大騒ぎになりそうなところだが、彼らは今、そこまでの刺激は求めていないので、注目する者は特にいない。

 異形の手には、真っ黒な液状の球体が浮かんでいる。その中に、真っ白な光の玉が閉じ込められている。汚すことはできないが、こうして力を封じることはできる。

 

 これは、彼が世界の狭間で漂っているところを見つけた、とあるプリキュアの魂。

 自身が仕立て上げた彼女たち(・・・・)の時と同様、光を宿す者に闇の力を与えれば、通常時以上の力を発揮することはわかっている。

 

 

 

 だからこそ異形は考えた。自身の欠片の中に埋め込めば、今までの欠片以上の破壊力を発揮するのではと。

 

 

 

 

 

『……さあ、キュアコンプリートというやらよ。貴様はどう動く……?』

 

 

 

 

 

 現在、この世界には件のプリキュアが別の世界に飛んでいるため不在である。彼女は、彼女が世界を飛び越えた時と同じ時間に戻ってくるらしい。

 

 異形は────ネオフュージョンは、その手のひらの欠片の塊を地上へと落として、再びどこかへ消えていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

第26話:本音を聞かせて!黒い闇の使者の苦悩

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

<ふたりはプリキュアMaxHeartの世界>

 

 

 

 

 

「全くもう、どこにいったんだあのキュアブラックは」

『ま、まあまあ……』

 

 

 

 コンプリートとシャイニールミナスは、この世界に現れた闇の使者・ダークネスブラックによって連れ去られてしまったホワイトとプロトブルームを助け出すため、ブロッサムミラーが指し示す居場所を方へと向かっていた。ブラックはホワイトを連れて行かれたせいでかなり取り乱しているようで、ダークネスブラックを単独で追っている。今のところ彼女の姿を見ていないし合流してもいない。

 

 取り乱しているのは何も彼女だけではない。コンプリートがブラックへの不満を口に出しているが、コンプリートも内心では若干驚いている。ステフォンの中のプロトキュアが連れ去られる事案は過去にもあったのだが、今回に関しては自分が目を離した隙に捕まっていたので、少なからず責任を感じていた。その証拠に先ほど足元不注意で転んだばかりで、コスチュームが土埃で汚れている。

 

 二人は走っていく中、ビルが立ち並ぶ街の中心街的な地点にまでたどり着く。どうやら光は、ここ周辺を指しているらしい。

 

 

 

『この近くに3人がいます!』

「結構遠くまで飛んで行ったんですね……」

「さて、場所はどこにいるのかある程度絞られるけど……」

『ザケンナーッ!!』

 

 

 

 コンプリートは、周囲に集まっているウザイナーの形をした欠片たちを見回す。自分たちを足止めするために欠片を大量に召喚したようだが、この量を素直に相手をするほど暇ではない。

 というより、『ドキドキ!プリキュア』の世界や『ハピネスチャージプリキュア!』の世界の時に、大量に呼び出された欠片以上に数が増えているようにも見える。

 

 

 

『探すにはまずこの数を倒さなきゃいけないなんて……』

「それなら……!」

 

 

 

 と、ルミナスがハーティエルバトンを構え、前方に迫る欠片の波を前に立ちはだかる。

 

 

 

「光の意思よ!私に勇気を!希望と力を!」

 

 

 

 空に放たれたバトンはハートの形から大きく広がり、自分たちよりも大きくなる。

 

 

 

「ルミナス・ハーティエル・アンクションッ!!」

 

 

 

 バトンはぐるりと大きな円を描き、虹色の光を放って欠片たちを飲み込む。飲み込まれた欠片たちは、光の力によってネオフュージョン由来の闇の力を封じこめられその進撃を止めざるを得なくなる。

 

 

 

「なるほど動きを止めればなんてことはないと……それならあたしも」

 

『CureWeapon!Flora!』

『PowerCharge!Felice!』

 

 

 

 動きを封じられた欠片たちの足元に、緑色の光の巨大な魔法陣が展開される。

 

 

 

「それじゃあ行くよ!あまねく命の花吹雪(フローラルリンカネーション)ッ!!」

 

 

 

 コンプリートが構えたフローラロッドが煌めくと、魔法陣からは緑色の光と色とりどりの花吹雪が放たれ、下に立っていた欠片たちが次々に浄化されていく。この攻撃のおかげで、少しずつではあるが欠片の数が減ってきたようだ。前のように闇の使者を追い払わない限り無限にかけらが湧いてくるという雰囲気ではなさそうだ。

 

 

 

「ルミナス、後ろの欠片もお願いできる?攻撃はあたしに任せて」

「はい!」

 

 

 

 先に欠片をある程度数を減らしてから探したほうが、後々楽になるだろうという予想で、再び襲い掛かろうとする欠片相手に光を放つのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「────……!ホワイト……!ホワイト!」

「……っ、ん」

 

 

 

 ホワイトの視界が、少しずつ明るみになっていく。連れ去られて意識を失っていたところ、同じく一緒に連れ去られてしまったプロトブルームに呼びかけられてなんとか目を覚ましたようだ。

 コンプリートたちが戦っている中心街からは少し離れたとあるビルの屋上の上に、二人は闇の力でできた黒い縄のような何かで拘束されている。ホワイトは動けないように近くの鉄柱に両腕を括り付けられ、その隣でプロトブルームがぶら下げられている。

 

 

 

「あなた、は……」

「ホワイト、大丈夫?」

「私は大丈夫よ……。ここは……建物の、上……?」

 

 

 

 特に怪我されたというわけでもなく、ただこの場から動けないように闇の力の何かで拘束されているだけだった。ホワイトの視界の先に、自分たちを連れ去った張本人が、地上の様子を窺っていた。

 

 

 

「あいつは……流石にまだ来ないか……」

「ダークネス、ブラック……!」

 

 

 

 その名前を呼ばれて、ダークネスブラックはホワイトたちの方を振り向く。相変わらず光が見えない紅い瞳でこちらの様子を伺うと、二人の方に歩み寄ってくる。しかし視線はホワイトではなくプロトブルームの方に向けている。

 

 

 

「……あんた、コンプリートどころか、ステフォンの中のラブリーたちとも距離を取ってるようじゃない?」

「……ぇ」

「本当のことを話したから、顔を合わせるのが気まずいって思ってるんでしょ」

「それ、は……」

「……それとも、自分がいたところから離れてもなお、私や仲間達のことを心配してくれてるの?本当に、あんたは優しいね」

「……!!」

 

 

 

 まるで図星だったかのように、プロトブルームが彼女の方を凝視する。

 

 

 

「……あんたはもう、闇の使者のあの子から離れた存在でしょ。私たちを気にかけなくたっていいのに」

「……っ!」

「待って、ブラック!」

「……何」

 

 

 

 冷たく突き放そうとするダークネスブラックが無理して言葉を紡いでいるように聞こえて、ホワイトが待ったをかける。ダークネスブラックは、努めて他人でも見るような視線で彼女を見る。

 

 

 

「ホワイトには、関係ないでしょ」

「関係はないわ!けど、あなたを心配してくれている人に、無理に傷つけるようなことを言わなくてもいいでしょう?」

「ホワイト……」

「そんな、ことは……」

 

 

 

 別の世界の存在であれ、ホワイトはダークネスブラックの今の発言は、いやでも突き放さなければならないと思っているようにもなんとなく感じたのだ。彼女も彼女で、自身の心を別の世界の相方のはずなのに見抜かれているような気がして、バツが悪そうに視線を逸らして無言を貫き通す。

 

 

 

「……」

「……あなたも同じブラックなら、どうして、こんなことを……?あなたの世界の私はどこに……」

「!?」

 

 

 

 ホワイトは拘束されて反撃ができないのにも関わらず、何をしてくるかも分からないダークネスブラックに対してそう言い放った。他の闇の使者たちでも絶対に聞けないような、禁句に近い文言を。

 この人はなんの躊躇いもなく聞いたので、プロトブルームはびっくりしてホワイトの方を凝視する。

 

 

 

「ほ、ホワイト!?な、何聞いて……」

「……え?」

「……っ、私の世界のほのかは、もういないの……魂だけなら、世界の外のどこかにいるはずなんだけど……」

 

 

 

 ダークネスブラックは声を荒げることもなく、どこか悲壮感漂う声で小さく呟く。

 

 

 

「……っ!?ご、ごめんなさい!あなたを悲しませるつもりで言ったわけじゃ────」

「……ほのかなら、別にいいよ。……ステフォンさえ、取り戻すことができれば……きっとほのかたちも元に戻る、はず、なの……」

「ブラック……」

 

 

 

 同じキュアブラックの顔で、別の世界の彼女のはずなのに、自分たちが知っている面影はどこにもないのが居た堪れなく感じてしまう。本当ならその背中を支えてあげたいのだが、ホワイトは拘束されているので動くことはできない。最後の言葉は、まるでありもしない希望に縋っているようにも聞こえてしまう。

 

 

 

「ブラッ……なぎさ」

「その名前で呼ばないで」

 

 

 

  ダークネスブラックは、本来の名前を呼んでくれたホワイトを拒否してしまう。彼女が一番呼ばれたい名前を、呼んで欲しい人に呼んでくれているのに。

 

 

 

「……私は、あなたが知ってるような“美墨なぎさ”じゃない。“闇の使者”のダークネスブラック。ネオフュージョンと手を組んでしまった、どうしようもない人形でしかない」

「あなたがなんと言おうとも、どんな世界であろうとも、あなただってなぎさよ。絶対に」

「……ほの、か」

 

 

 

 別の世界であれ、自分の相方に強い思いをぶつけられ、心が揺らぎそうになる。それでも自分は、彼女の優しさを受け取る資格なんてものはない。受け取っちゃいけない。

 自分の手は、どうにもならないくらいに闇の色に染まってしまっているのに。その手で、関係のない彼女を汚すことはできない。

 

 だからダークネスブラックは、目の前の人物に嫌われなければならないと思ったのだ。彼女になら倒されてもいいと考えたのだ。嫌われる覚悟は、とっくの昔にできている。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「────私ね、ネオフュージョンと一緒になって、これまでいろんな世界を壊してきたの」

「……え?」

「っ!?」

 

 

 

 突然の罪の告白に、二人は目を見開く。ホワイトは、その告白の内容に。プロトブルームは、闇の使者のほとんどに隠していたもう一つの秘密をカミングアウトしたことに対してだ。一度始まった告白は止まらない。

 

 

 

「そ……れは、一体……」

「言葉通りよ。私ね、あいつから、邪魔をしてくる他のプリキュアたちの相手を任されたの」

「……っ!?」

「ねえ、私は一体、何人のプリキュアを、この手で倒しちゃったんだろうね……?」

「ぶ、ブラック……!」

「中にはね、別の世界の私たちとも戦わなきゃいけない時もあったの。あの時は辛かったなぁ本当……ただでさえ、みんなのことを手にかけるのは嫌だったのに……相手はほのかなんだよ?」

「わ、私たちを……?!」

「待って、ブラック」

「だからねほのか、本当なら私は倒されなきゃいけない、あなたの前には現れちゃいけない存在なの。だから、私は────」

「ブラックッ!!やめて!!!」

 

 

 

 何を思っているのかわからない乾いた笑いをこぼしながら、まるで自分で自分の首を締めるように語るダークネスブラックを止めたのは、プロトブルームの悲痛な声だった。ホワイトは今までの話を聞いて動揺しているせいで、なんと言葉をかければいいのか分からない。

 

 震える声で、彼女は問いかける。

 

 

 

「どうして……?どうしてあなたは、そんなこと言っちゃうの……?!」

「……っ」

「ブラックは、他の闇の使者たちにあんなことさせたくなかったんでしょ……?」

「……」

「……私があの時、あいつの悪事に連れ回されてたブラックを見ちゃったから……?闇の使者の私が、あの光景が怖くなっちゃったから……?」

「違う、絶対にあんたのせいじゃない。……最初から、みんなをあいつの悪事で傷つけたくなかった。私だけなら、みんなは私のことなんかより気にせずにステフォン探しができるでしょ……?」

「ブラック、あなたは……!」

 

 

 

 何気に初めて見せた笑みは、やけに寂しそう且つ傷ついているのを無理やり取り繕っているようで、とても笑顔とは言えないようなものだった。長い間、見ていられるようなものではない。

 

 

 

「……っ!!!ブラックの……なぎささんの、分からず屋っ!!」

「……っ!?」

 

 

 

 自己肯定感の低さと極度の自己犠牲、そして自分だけ苦しめばいいというネガティブな方向の傲慢さが合わさったような答えは、闇の使者と共に彼女の事情を知っているプロトブルームをカチンと怒らせるには十分すぎる起爆剤だった。

 

 

 

 ────彼女は、人の気持ちをわかろうとしていない!自分も周りも傷つくのが怖くて見ようとしていないだけだ!

 

 

 

 ホワイトが言い淀んでいた言葉を代弁するように叫んだのだ。

 

 闇の使者の中にいた時の、一度だけ彼女と口論となってしまった時のように。繋巡の元に来てから言えずにずっと抱えていた本音をぶつけたのだ。

 

 

 

「どうして……どうしてあなたは、何もかもを背負おうとするの!?あいつの悪事が嫌だったら嫌って、言いなさいよっ!!」

「言えるわけ……言えるわけないじゃないっ!私はみんなを傷つけたくないし、失いたくない!!何も知らないあの子達に言ったら、あの子達は絶対にネオフュージョンの方にぶつかりにいくのよ!?それでみんなに何かがあったら、そんなの……っ!!」

「ピーチ達は、あなたが何か、嫌なことをさせらてるって察してるよ……あなたの力になりたいって……っ。本当はあなただって、誰かに助けて欲しい気持ちがあったんじゃないの!?」

「……っ!?」

 

 

 

 確信をついたような言葉に、ダークネスブラックが思い詰めた顔で驚く。散々言いたいことを吐き散らして、ブルームが少し呼吸を置いて再び話し始める。

 

 思い出すのは、初めて彼女がネオフュージョンの悪事に加担していることを認知した時のこと。

 

 

 

 

 

『大丈夫だよ。一人で悩むより、みんなで解決しようよ!』

『それは……』

 

 

 

 

 

「あの時だってそう……。あなたは、伸ばされた手を取ろうって思ったんだよね……自分を助けて欲しいって、思ったんだよね……?けどそうしたら、闇の使者のみんなを、あの世界のみんなを裏切るかもしれないから……あの世界のプリキュア達を巻き込みたくなかったから、取れなかったんでしょ……?」

「……っ、それ、は……」

「巡は、あなたのことを優しい人って言ってたんだ……。私には、あなたが自分も周りも傷つくのが怖いって思ってるだけの人に見える……優しい人とは、到底思えない……」

「ブルーム……」

「……それ、なら……」

 

 

 

 さっきから反論もできなかったダークネスブラックは、今にも泣きそうな顔でぽつりと呟く。

 

 

 

「それなら……私はどうすればよかったの……?」

「ブラック……っ!」

「私だって、やりたくない……これ以上、壊したくないよ……みんなのことも、世界のことも……っ」

「なぎ、さ……」

「もう、どうしようもないくらいに壊しちゃったのに……今更、助けを求めることなんてできるわけ────」

 

 

 

 ぼんやりと、胸の紅いクリスタルから淡い桃色の光が灯る。その中に、プロトキュアが入っている。コンプリートの技を喰らっていないのになぜ勝手に?

 

 

 

「……え?」

「何、これ……や、やだ……だめだって……っ」

 

 

 

 

 

 その答えを知ろうとしたその時、この場所に黒い影が飛んできた。

 

 

 

「!?」

「何!?」

「ま、まさか……!!」

 

 

 

 黒い影に即座に反応し、ダークネスブラックがすぐにその場を離れる。黒い影はホワイト達がいることに気づかず、ダークネスブラックの方に飛んでいく。

 

 

 

「今のって、ブラック?!私たちはここにいるのにどうして……!?」

「まさか、私のために怒って……」

「あーホワイトたちいた!」

「ホワイト!」

 

 

 

 上空から翼を展開して現れたのは、二人を探していたコンプリートとルミナスだった。ルミナスはコンプリートに抱えられている。二人の元へ着地し、拘束をすぐに解いた。

 

 

 

「ホワイト!だ、大丈夫ですか!?」

「私は大丈夫よ!けど、あのダークネスブラックは……」

「よ、よかったぁ……!」

「……え」

 

 

 

 ホワイトとルミナスが再会に喜ぶ傍らで、コンプリートは連れ去られてしまったプロトブルームを見つけて心底安心したのか、ぺたんと座り込んでしまった。

 コンプリート自身は主にスカート部分が汚れているのに、特に怪我がなくてよかったと心底安心した様子で自身を抱きしめたのだから、拘束を解かれたプロトブルームは困惑してしまう。

 

 

「……ああ、なんでこんなに汚れてるかって?ここにくる前に転んじゃってね」

『何もないところで急につまづいてたんだからびっくりしちゃった!なんで!?』

「なんでだろうね。気付かぬうちに焦ってたのかな」

「ど、どうして……私が外に出てたから、こうなって……」

「仕方ないよ。あたしも周りを見てなかったのも悪かったし……その様子だと、言いたいことは言えたっぽいね」

「……うん、少しはすっきりしたよ」

「そっか、それならいいや」

 

 

 

 連れ去られたことが懲りたのか、それともなんらかの蟠りが解決したのか、プロトブルームは素直にステフォンの中へと入っていった。

 

 

 

『あぁ!ブルーム!無事でよかった!』

『怪我してない!?何もされてない!?大丈夫!?』

『ブラックと何話したの!?』

『あー、えっと……』

 

 

 

 中に入ればドリームをはじめとするプロトキュアたちに安堵の声と一体ブラックと何があったんだという心配の声をかけられている。

 とりあえずこちらも会話に入るかと思っていたその時、遠くの空で爆発音らしき大きな音が聞こえてそちらの方を向く。

 

 

 

 そこではちょうど、ブラックとダークネスブラックによる乱闘が繰り広げられていた。

 

 

 

 

 

「はぁぁぁぁぁっっ!!!」

「……っ」

 

 

 

 ブラックから放たれる拳を、ダークネスブラックは心底嫌そうな顔で避け続ける。恨みはないのに、過去の自分を見ているようで自己嫌悪に陥ってしまいそうになってしまうらしい。

 

 

 

「本当、自分()戦うのって嫌……っ!!」

「はぁ!?……っきゃあ?!」

 

 

 

 そんな自分を振り払うかのように放たれた一撃は、ブラックを地面へと墜落させる。すぐに体勢を立て直し、ブラックは地面へと足で着地する。そこへ、ホワイトたちと合流したコンプリートとルミナスがようやく追いついた。

 様子を見にダークネスブラックも舞い降りてくるが、そんな彼女をブラックは親の仇のように怒りを目線でぶつけている。睨まれている方も、どこか冷めたように、しかしこの世界の自身への嫌悪だけは隠さずに目を細めて強い眼差しを送っている。両者の間でばちばちと黒い電撃でも走っているかのようだ。

 

 

 

 

 

「ぐ……、また……」

「……!」

 

 

 

 しかし、ダークネスブラックの方では胸の紅いクリスタルが淡い桃色の光を灯し、睨むのをやめてそれを少し苦しげに押さえつける。その中からは確かプロトキュアが飛び出してくるはずだが。やはりコンプリートの技は喰らっていない。

 光はすぐに収まり、4人の方にもう一度向き直る。

 

 

 

「……この世界の私は、随分と沸点が低いらしいわね。ホワイトがいないと何もできないのね」

「な、なんですって────」

「おっとちょっとごめんよ〜」

「───あだっ!?な、何すんのよ!!」

 

 

 

 と、煽られて今にも飛び出しそうなブラックの額めがけて、コンプリートはデコピンをなんの躊躇いもなく放った。無理やり尻餅をつかせる程度の威力のおかげか、ブラックの意識は流石にコンプリートの方に向く。

 

 

 

「少しは落ち着いてよね、“なぎさ”。ホワイト助けたんだから。乗せられちゃあダメよ」

「……!ご、ごめん」

『……あれ?今呼び捨てで……』

『今の絶対痛かっただろうなぁ……』

 

 

 

 今の痛みの一瞬で、怒りで沸騰していた気持ちが急速に温度を下げて、彼女に冷静さを取り戻させたようだ。コンプリートは無意識のようだが、今彼女のことを呼び捨てで呼んではいなかったか。

 

 

 

「……ブラック、あなたは怪我していない?」

「なんとか……ホワイトも無事でよかった……!」

「おかげさまで……!」

 

 

 

 座り込んだままのブラックに、ホワイトが手を伸ばして立ち上がらせる。そのまま、視線の先のダークネスブラックに対して身構える。

 その光景に、ダークネスブラックは心底居心地が悪そうに睨んでいる。ある意味ではこちらへの敵対心に近い感情にも見えるが、ホワイトにはこちらへの嫉妬の炎を向けられているようにも見えていた。

 

 

 

「コンプリート、あのブラックは……」

「大丈夫。彼女たちの過去はある程度わかってる。だからこそあたしは、悪いことをしなきゃいけなくなった君たちを、止めるために戦うよ」

「止めるために、ですって……?ふざけたことをそう簡単に、言わないでッ!!!」

 

 

 

 ダークネスブラックは右手をコンプリートの方に向け、あの黒い雷撃を放つ。どう見てもこの前よりも威力の高いとすぐにわかる。喰らえば確実に、コンプリートを消し飛ばしてしまう。

 3人が呼び止めるも、コンプリートはその場を動かないどころかどんどん歩みを進めていく。その代わり、無言でガラスのリングを壊してその力を解放する。

 

 

 

『コンプリート!?』

「────大丈夫だよ。一緒にあの人を止めよう、ね」

『……!うん!』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『CureWeapon!Bloom!』

 

 

 

 

 

 ステフォンから飛び出した光をコンプリートが右手で握りしめ、自身に迫る黒い雷撃めがけて振り落とす。放たれた黄金色の光の斬撃は、明らかにコンプリートを倒すために放たれた雷撃を切り裂きながら、ダークネスブラックの方へと向かっていく。

 

 

 

「……っ!?」

「今のは?!」

『もしかして……!』

 

 

 

 迫る斬撃を避け、地面には抉られた跡が作られている。それくらいの破壊力のある光と闇のぶつかり合いだったのだろうと推測できる。

 

 自身に迫っていた脅威を汗一つかかずに相殺したコンプリートの右手には、キュアブルームの姿を模したような装飾が施された一本の『片手剣』がしっかりと握られていた。黄金色に輝くの精霊の力を纏い、刀身が淡く光を放っている。

 剣型のキュアウェポンは既にドリームレイピアが存在しているが、あちらが刺突攻撃に特化しているなら、こちらは私たちが想像する斬撃特化の武器である。

 

 

 

「……おぉ普通にかっこいい……『ブルームソード』と名付けよう」

『コンプリート!』

「オッケー!」

「……っ!」

 

 

 

 ブルームソードを構えたまま迫るコンプリートを吹き飛ばすため、ダークネスブラックは彼女に向かって雷撃を数発放ちながら後方へと走り抜ける。この前とは違って、近づいてくる彼女を拒んでいるかのように。

 

 

 

『PowerCharge!Eaglet!』

 

 

 

 二色の精霊の力を纏った刀身を振り回し、コンプリートは自身に迫る雷撃を弾き飛ばす。

 

 

 

「『はぁぁっ!!』」

「……っ!!」

『ザケンナーッ!!!』

 

 

 

 迫るコンプリートを阻むように、数体の欠片が出現する。しかし、コンプリートの後ろから飛び出してきたブラックとホワイトによって同時に殴り飛ばし蹴り飛ばされ、ダークネスブラックの向かう方へと弾き飛ばされる。

 

 

 

「ブラックサンダー!」「ホワイトサンダー!」

 

 

 

 手を繋ぎながら、もう片方の手に黒と白の稲光が落ち、彼女たちに力を与える。

 

 

 

「プリキュアの美しき魂が!」

「邪悪な心を打ち砕く!」

「「プリキュア・マーブル・スクリュー・マックスッ!!」」

 

 

 

 突き出されたその手からは黒い稲妻が走る真っ白な雷撃が放たれ、弾き飛ばした欠片たちを飲み込み消滅させていく。圧倒的な浄化の光の奥から、剣を振り上げたコンプリートが上空から跳んで現れる。

 

 

「コンプリート!」

「任せて!」

 

『PowerCharge!Chocolat!』

 

 

 

 剣には精霊の光ではなく、真っ赤なクリームエネルギーを纏い、逃げ場がなくなりこちらにむけて再びダークネス・マーブルスクリューを放とうとするダークネスブラックに向けて振り落とす。

 

 

 

愛刃月花(ショコラッテスプラッシュ)ッ!!」

「ダークネス・マーブルスクリューッ!!」

 

 

 

 振り落とされた赤い光の斬撃はチョコレートのように溶け出し、同時に放たれる真っ黒な雷撃から溢れる邪悪な闇の力を包み込みながら突き進んでいく。

 今のコンプリートは、初めて力に振り回されて暴走しかけた頃のままではない。その証拠に、今までコンプリートの攻撃を物ともしなかったダークネスブラックが押されているのだから。

 

 

 

「ぐ……っ、うぅ……!」

「こんのぉ……!」

 

 

 

 結局最後まで両者とも優勢を譲れず、いつの日かのように相殺されて大爆発を起こした。土煙と光と闇でできた粒が弾け、視界は閉ざされる。

 

 

 

 

 

「はぁ……はぁ……っ」

「ぜぇ……ぜぇ……タフではこの人」

「……っ!?」

 

 

 

 互いに体力が削られ、どちらかが先に攻撃の態勢に入れば勝利を掴めるところ、ダークネスブラックの胸の紅いクリスタルがまたしても光を放つ。それは先ほどよりも明らかに強い光を放っている。

 

 

 

「ぅ、あ……だめ……!」

「……?」

『あの光は、さっきの……』

『あのブラックに何が……?』

 

 

 

 ダークネスブラックがその光を押さえつけようとするが、光はどんどん強くなるばかり。

 コンプリートたちも何が起きているのか分からず混乱する最中、光はクリスタルの中から飛び出し、そのままコンプリートが持つステフォンの画面の中に吸い込まれていった。

 

 

 

『あだっ!?』

『え!?』

「え?」

 

 

 

 声が聞こえて驚いて画面を覗く。そこにいたのは、なんと二頭身で猫耳を生やしたキュアブラックの姿したプロトキュア────プロトブラックがガッツリ起きてその姿を見せていたのだ。

 

 

 

『いったた……!あれ?ここってステフォンの中?ラブリー以外にもたくさんいるんだけど……』

『ぶ、ブラック〜!?!?』

『何か気になること言わなかった?!』

「起きてるし、あたし技まだ繰り出してないのに何故」

「あ、あのさ、ダークネスの方の私は放っておいていいの?」

『あ』

 

 

 

 気になることはたくさんあるが先にプロトキュアが飛び出してしまったダークネスブラックの方が気になっていた。彼女はプロトキュアが飛び出した影響で脱力したのか、胸を押さえつけながら座り込んでいる。

 

 

 

「……っ、どう、して……」

「だ、大丈夫……?あ……」

 

 

 

 ホワイトが心配して駆け寄ろうとしたと同時に、ダークネスブラックは苦虫を潰したような表情で立ち上がりどこかへと消えていく。

 初めて出会った時の威圧感は何処へやら、その姿があまりにも傷ついているようにも見えた。

 

 

 

「だ、大丈夫なんでしょうか、あの人は……」

『ブラック……』

「ホワイト、連れ去られた時にあいつに何かされたの……?」

「されたというより……彼女の本音を聞いたような気がするの」

「本音……?確かに、あいつ色々考えてそうだけども────」

 

 

 

 ブラックが詳しくその話を聞こうとしたところ、ステフォンが光を放って彼女たちをあの世界へと誘おうとする。巡たちは光に飲まれ、あの世界へと飛ばされていく。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……え!?」

『あれ!?』

 

 

 

 ステフォンから溢れ出す光が収まると、巡は変身が解けたひかりと共にあの『水晶の世界』に飛ばされてしまったようだ。なぜかブラックとホワイトの姿が見えないのは、おそらくこの世界へ誘われなかったらしい。

 

 

 

『ブラックとホワイトがいない!?』

「まさか私だけ……?」

「そんなこともあるんだ……」

「あ!巡ちゃんだ!今回も来たんだね!」

「今日はひかりちゃんもいる〜!」

『……あれは』

 

 

 

 この世界のプリキュアたちに迎えられつつ、ステフォンの中のブラックが、巡が今回近くに立っていた水晶の柱の中で眠るプリキュアを指差す。

 

 その中で眠るのは、キュアブラック。自分がいるべき体で、本来の自分であるべき姿。その体は、瞼を開くことはない。

 

 彼女が眠る水晶の柱からは、淡く優しい桃色の光が溢れ出し、厚い雲が覆う天へと伸びていく。

 

 光が収まった後、暗く厚い雲間から、光が差し込んできていた。雲が完全に晴れることはないが、薄暗かった世界が多少明るくなり、陽の光の暖かさと、遠くの景色の見通しも良くなったような気がする。

 

 

 

『光が……!』

「空は晴れてないけど、少し明るくなったね」

「こういう変化もあるのね……」

「ま、まあ、今までが斜め上の変化が多かったしこれくらいじゃ驚かないわよ」

「皆さん!そこにいたんですね!」

 

 

 

 と、巡たちの方にこの世界に辿り着いたルミナスが駆け寄ってくる。この世界における自分が現れてひかりが少し驚いているが、こういうものなのだろうとなんとか理解する。例に漏れず魂だけなので半透明だが、元気そうだ。

 

 

 

「ルミナス!ルミナスも戻って来れたんだね!」

『ルミナス……?そこにいるの……?』

『ブラックごめん、私たちにはみんなのことが見えないみたいなの……』

『え、えぇぇ!?』

「そっちからは見えてるし声も聞こえるけれど……」

「そうなんですか……」

『ありえない……』

 

 

 

 やはりこの世界のプリキュアの姿を認知できないのか。プロトキュアは、特にブラックはがっくりと肩を落としている。

 

 

 

 

 

「ステフォンの中のブラックたちは……この世界の皆さんでいいんですよね?」

「うん。でも、みんなみたいに魂って感じでもないみたいで……ブラックに関しては勝手に飛び出してきたようなもんだし……」

『か、勝手に飛び出したって』

「あのブラックは、自分の胸の中に閉じ込めた“何か”を押さえつけていたようにも見えました」

「“何か”、か……もしかすると、ステフォンの中のプリキュアは、厳密には彼女たち本人ではないんじゃないかな?」

「……???」

「もしかして、みんなが持っていた“想い”、とか?」

 

 

 

 プロトキュアの正体について、ショコラが言及する。コンプリートはなんのことだかさっぱりの様子だが、何か勘づいたサンシャインが捕捉するように呟く。

 

 

 

「“想い”……?」

「そういえば闇の使者って、こっちのハッピーたちの魂が、ネオフュージョンに体を与えられて生まれたって言ってたよね?」

「その闇の使者────この世界のドリームたちが抱いていた想いが、巡さんの力によって引き出されたとしたら……?」

「……あー……」

 

 

 

 ピースやミントの言葉を聞いて、巡は今までのことを思い返してみる。

 

 闇の使者に向けて『プリキュア・ポップンロケットシャワー』や『プリキュア・ブレッシングキッス』を食らわせた時、彼女たちから光の玉が飛び出してきた。時に力が溢れ出して強いものをぶつけたり、二発目を食らわせたり、何なら勝手に飛び出してきたり……。

 飛び出してきたのは紅いクリスタル────胸のリボンや飾りから。胸に心に抱いていた想いが溢れてきたとも考えられる気がしなくもない。

 

 巡によって引き出されたプロトキュアは、巡と共に戦うために『キュアウェポン』へと姿を変える。……抱いた想いを、まだ隠している闇の使者たちへとぶつけるように。

 

 

 

『……巡?』

「あの闇の使者たちが、君ら自身が抱いていた想いが“精霊”として形になった存在────それが君たち、プロトキュア……」

『……えぇ!?』

『私たちが、この世界の私たちの想い……?』

「かつての記憶や闇の使者の時の記憶があるのも、その想いがリンクしているのかもしれませんね」

『な、なるほど……』

『よく分からないけど、分かった気がする』

「わかってないんかい」

 

 

 

 渦中にいた巡や話を聞いていたひかりの言葉に、プロトキュアたちはなんとなく頷く。現実味は全くないが、ここは巡の世界の常識が効かないプリキュアの世界の話。何となくあり得る話かもしれない。

 

 しかしそうなると、一人だけその理論で説明がつかない人物が出てくる。

 

 

 

「……待てよ、そしたらラブリーは?最初からステフォンの中に入っていたけど……もしかしてラブリーだけが、この世界のラブリーご本人様ってこと?」

『え、私だけ!?』

『そ、それじゃああのダークネスラブリーは……』

「ステフォンの中のみんなの逆……それこそ、ラブリーが抱えてたっぽい想いの何かが動かしてるってこと?」

『私の想いが……な、何だろう?』

 

 

 

 ステフォンの中のラブリーが考えている中、ひかりは周囲を見回してある違和感を抱くことになる。一人、足りない。

 

 

 

 

 

「……あの、ホワイトは……この世界のほのかさんは……?」

「……え?」

「あ!本当だ!?ホワイトいないんだけど!?」

『は?ホワイトがいない!?』

 

 

 

 気がついた。この世界のホワイトの姿がどこにもないのだ。いつもなら助けたプロトキュアに関連する仲間たちがこの世界に辿り着く。例に倣って、ブラックを助け出せばホワイトとルミナスが戻ってくるはずなのだが、戻ってきたのはルミナスだけ。

 ステフォンの中でブラックが、わかりやすく慌てている。

 

 

 

「ルミナス、ホワイトは近くにいなかったの!?」

「い、いえ……私の近くにはいませんでした……あの爆発の時には、近くにいたはずなのにどうして……」

「そ、それって結構まずいんじゃ……」

 

 

 

 ドリームを助けた時も、ルージュたちのコスチュームが別のものになっていたりと、度々バグみたいなことが起きるのは、何か別の問題でもあるのだろうか。

 もしかするとで周囲を探そうとするが、巡たちの体が光りだし、元の世界へと引き戻そうとしていた。

 

 

 

『も、もう!こんな時に戻されるなんて!』

「そ、そんな!?」

「私たちも探してみるから、気にせず戻って!」

「ブラックのことお願いします!」

「わ、分かった!」

 

 

 いないホワイトの捜索をあの世界のプリキュアたちに任せ、巡たちは元の世界へと戻されていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……も、戻ってきた……?」

「巡!ひかり!」

「二人とも、無事!?」

 

 

 

 元の世界に戻され、おそらく突然目の前から消えて何があったのか混乱していたであろうブラックとホワイトと再開する。何もなかったよと告げて安心させようとした次の瞬間、ステフォンからあのけたたましいアラーム音が鳴り響いた。

 

 

 

「!?何の音!?」

「やっべステフォンだ、こんな時に何なの……って、え?」

 

 

 

 急いで『WorldTrip』を確認すると、赤く点滅していたのは周りの12個のプリキュアのマークではなく、それが囲んでいる真ん中のハート────巡の世界を指し示すマークだった。

 

 

 

『め、巡ちゃんのところの世界!?』

『まさか闇の使者!?でも、ブラックはさっきここにいたし……』

『何が起こってるの……?』

「……もしかして、巡の世界に何かあったんじゃ?」

「あたしの?」

 

 

 

 バカを言うなあたしの世界のプリキュアはアニメの中の話だぞとすかさず突っ込むが、ここにきて自身の世界の緊急事態を知らせるのもおかしな話だ。ステフォンのバグの可能性もあるが、胸の中に渦巻く嫌に不穏な気配が拭えない。

 

 

 

「……巡、行って来なよ」

「……!」

「私たちなら大丈夫。それよりも、あなたの大切なものを守るためにも戻ったほうがいいわ」

「……二人とも」

 

 

 

 ブラックとホワイトに背中を押され、ひかりにゆっくり頷かれ、巡は元の世界へ帰ることに決めた。

 

 

 

「巡!またたこ焼き食べに来てもいいからね!」

「何その別れ文句」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

<巡の世界 心野宮・私立光星中学校 生徒会室>

 

 

 

 

 

「……戻って来たのはいいけど、何も起きてなくない?やっぱバグ?」

『でも、外こんなに暗かったっけ────』

 

 

 

 戻ってきて再び生徒会室に舞い降りたが、部屋には自分だけ、時間は自分がここからあの世界へ行った時と同じ時間。特に変わっていることはない。

 しかし、空はなぜか真っ暗な雲に覆われ、あの嫌に不穏な空気が流れている。

 

 

 

「……あれ?」

『あそこに見えるのって……』

 

 

 

 この生徒会室は、教室が3階にあるお陰で、少しだけ街の景色が見やすい。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 窓の奥の景色、少し遠くの方で、明らかに建物でもない真っ黒で超巨大な物体が佇んでいたのだ……。

 

 

 

 

 

続く…

 




次回更新日:6月30日(日)

巡の世界で何かが起こっているようだ……
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