PrecureStageON!   作:主氏レム

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新章です!!!


第4章:巡と怪しい闇の力編
第30話:怪しいリング?もう一つのプリキュア5


 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あれ?首のそれはどうしたの?」

「えっと……ネオフュージョンにつけられた……」

「えぇ!?」

 

 

 

 漆黒の城の大広間。自身に巻かれた怪しげな黒い首輪をミラクルに指摘されて、ドリームは簡潔に説明する。

 

 先日、ネオフュージョンに掛け合ったダークネスブラックが、奴によって真っ暗闇の凶悪な力を注がれたついでにつけられてしまった枷は、まるでいつでもお前を見ているぞとでも言っていそうだ。

 

 

 

「ネオフュージョンのところに行ったって聞いた時はびっくりしたけど……もっとびっくりしたのは、そのブラックが大変なことになってたから……」

「うん……ごめん……」

「ど、ドリームが謝ることじゃないでしょ!」

「ブラック、やっぱりあいつに狙われてたのかな……」

 

 

 

 ブラックのことを聞かれて表情を曇らせるドリームに、周りの闇の使者達がフォローを入れる。

 

 あの強い闇の力を受けた反動か、ブラックは気絶し、再び自分たちの元に現れたときはブルームによって抱えられていた。現在の彼女は自室でずっと眠ったままで、目覚める気配はない。時折どこか苦しげな呻き声を挙げているのだが、自分たちではどうすることもできない状態である。

 奴とのやり取りの中で一体何があったのか、ブラックについてきていた二人も奴によって良からぬ黒いリングをつけられている。

 

 

 

「このリングに、ブラックほどじゃないけど強い闇の力を閉じ込めてるって言ってて、大切なものを取り戻したいなら力を解放しろって、アイツは……」

「……」

「……つ、使わないよ!?」

「いやわかってるから!」

「ネオフュージョン、今までこちらに介入することはなかったのにどうしたんでしょうか……?」

「あいつも、ステフォンを狙ってるのかな……」

「絶対に渡さないようにしないと……!ね!」

「うん……!」

 

 

 

 ブロッサムとラブリーが、なんとなくではあるが奴の狙いを予想付け、その考えにハートが鼓舞するように声をかける。まとめ役が動けない今、自分たちで守っていきたいと強く感じたのだろう。

 彼女たちならきっとネオフュージョン相手でも大丈夫だろうと思い、ドリームはブラックの様子を見に行くために広間を一度後にする。

 

 

 

 

 

 そんな彼女の元に、不穏な影が揺れ動く。

 

 

 

 

 

『貴様はそれでいいのか?』

「!!」

 

 

 

 ドリームの影の中から現れたのは、ネオフュージョンの分身らしき物体。いつの間にか話を聞かれていたのであろうか。ドリームは警戒しつつ、彼の方を向く。

 

 

 

「ネオフュージョン……!あなたが無理やり力を与えたせいで、ブラックがまだ眠ったままなの」

『そう焦るな。直に目覚める……それよりも、貴様はいいのか?貴様にも僅かではあるが力を与えたというのに……力は使わないと意味がない……』

「あたしは、あなたの力を使わない。そもそもこれは、あなたが無理やり与えたものでしょ!こんなの、使わなくたって……!」

 

 

 

 啖呵を切るドリームに対してのらりくらりとかわしながら、分身はにたりと嗤って彼女の背後に立つ。

 

 

 

『貴様もあのブラックと同じように、仲間のことが大好きだろう?助けたいとは思わんのか?諦めが悪いのが貴様の本分ではなかったのか?』

「助けたいよ。助けたいし、あたしも他の世界のみんなと戦うことになるのは十分割り切ってるつもり。でも……」

 

 

 

 それでも、無理やり奪うという手段に出ることへの躊躇の心がどこかで出てしまう。もうずっと闇の使者として存在していても、自分の心だけは真っ暗な闇に染まらないように努めていた。そんな高潔な心をどん底に突き落とそうと、分身は耳元で囁く。

 

 

 

『……ならば仕方がない。無理に強いるのも酷というからな……しかし忘れるな。貴様なら確実に、その力に頼ることになると……』

「……っ」

『そして貴様自身の動きによっては、貴様の仲間にも力を与えることになるだろうな……』

 

 

 

 そう嗤って、分身は再びドリームの影の中に消えていった。後味の悪い空気だけが廊下に立ち込めている。

 

 首元の怪しい黒いリングが、きらりと煌めいた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

第30話:怪しいリング?もう一つのプリキュア5

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「うーん、やっぱりないよね……」

 

 

 

 学校祭が迫る、10月の心野宮は繋巡の自宅内にて。時刻は夜の10時半前。普段であれば巡はすでに眠っている時間帯ではあるのだが、気になることがあって自前のノートPCを使って調べ物に耽っていたところこんな時間になっているだけである。

 

 

 

『あの本にも“ブレス公国”についての言及もあったし、もしかすると巡の世界にもそれっぽい場所があるんじゃないかなーって思ったんだけど……』

『プリキュアが関わってる時点で、こっちの世界にあの国っぽい場所があるとは思ってなかったけどね』

「……実は大昔に滅んでて、そういう文献とかがほとんどないってだけなのかな?」

 

 

 

 巡が調べているのは、宿泊研修の時の就寝中で見た夢の中で訪れたという“ブレス公国”という不思議な国。

 あの世界で出会った元首である騎士『ジュン・ソヴァール=ブレス』という少女が、本来のステフォンの持ち主であり『キュアクルセイダー』と呼ばれる救世主を体現したような戦士。

 

 ────そして、『水晶の世界』と呼んでいるプロトキュアや闇の使者達が本来住んでいた世界を崩壊させた、張本人である少女。

 

 プリキュアとしての経歴を除けば歴史上の人物の中でも類稀な名君な気がしたかつ、名前を聞いたことがなくても似たような国が歴史上に存在していたのではと思っていた。しかし現実はそう甘くなく、それっぽい国らしき情報はどこにも書かれていなかったようだ。

 一応、宿泊研修から帰ってきた後に魔法学校の校長から譲り受けたあの本を確認をした。あの国の言及も少しだけされていたようだが、書かれているのは伝説の戦士達の寓話や逸話が流れ着く場所とだけで、それ以上の目ぼしい情報は特に出てこなかった。

 

 

 

『巡ちゃんが見たっていう場所が、巡ちゃんの世界にも似たような場所があってもいいはずなのに……』

「やっぱ崩壊しちゃったから、その存在も無かったことになっちゃったとか……?」

『えぇ……?』

 

 

 

 崩壊の影響か、はたまた単純にこの世界には存在し得ない国だったのか、ブレス公国やその国に似た雰囲気の情報がない理由も想像が容易い。

 

 

 

『……にしたって、どうして突然巡があの世界の夢を見たのかしら?』

「あたしが見たというより……ステフォンに見せられたような感じがした」

 

 

 

 ブラックが若干怪しむ中、巡は彼女達が住んでいるステフォンを持ち上げる。マゼンダ色の、スマホであってスマホではない異質で不思議なアイテム。画面上にはステフォンの住人であるプロトキュア達が心配そうな様子で真剣な表情の巡を見つめている。

 

 

 

「……一体、ステフォン(これ)はどこまで知っているんだろうか……」

 

 

 

 この謎を紐解く鍵であり崩壊の理由などさまざまなことを一番多く知っているであろうステフォンを見つめながら、巡はそんな素朴な疑問を投げかけるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 翌日の学校、午後の移動教室中にて。

 

 巡は小さなあくびを手で押さえながら廊下を歩いている。

 

 

 

(……まずい、遅い時間に寝たからか眠気が……)

「めぐるんがあくびなんて珍しい……学校祭系?」

「まあそんな感じ……」

 

 

 

 あくびしているところを見られ、日南千夏がそんな彼女の姿に珍しがりつつも彼女に声をかける。

 ブレス公国について調べていただけだったのだが、千夏には学校祭関連の準備で寝る時間が遅くなっていると思ったのだろう。まあ、実際学校祭に関してもやることはまだまだ盛りだくさんなのだが。

 

 

 

「去年以上に色々やるからね。クラス以外にも部活や有志での出し物にステージイベント、今年は一般参加OKの仮装コンテストやスタンプラリーもあるし……」

「ひぇっ、去年よりもボリュームありまくりじゃん……」

 

 

 

 今年は時期がズレた分、学生達の準備期間が伸びてより完成度高く楽しめる内容となっている。

 

 仮装コンテストは、学祭参加者の学生や教員の他に、訪れた客も仮装して参加できるものとなっている。いくつか賞があり、賞ごとに景品もあるらしい。ちなみに学校祭に仮装で訪れるといいことがあるとのこと。こちらの管轄は他の生徒会のメンバーに任せているので、若干内容がふわっとしているのは仕方がない。噂だとコスプレイヤーの人も訪れるらしいが……?

 巡の管轄はスタンプラリーの方だ。生徒側が出店しているお店やイベントを回ってスタンプを集めると、さまざまな景品が当たる福引きに参加できるというものだ。こちらは台紙のデザインが完成して、今日あたりに業者から完成品が届く。

 

 

 

「めぐるんもちゃんと休みつつ頑張りなよ?学校祭前に風邪引いたら笑えないよ〜」

「今の時期本当に健康には気をつけないと……うぅ……」

 

 

 

 学校祭時期というのに心野宮内の学校では風邪が流行っているようで、別のクラスでも生徒一人が風邪で熱を出して欠席という話も出ている。10月にもなって肌寒くなってきているので、冗談抜きで体調管理に気をつけていないと、学校祭の日に欠席というもったいないことをしでかしてしまう。

 

 再び出そうなあくびをなんとか堪えつつ、巡たちは次の授業の教室である理科室へと向かうのだった。

 

 

 

 

 

 巡達が授業中の頃、誰もいない教室に置かれた巡のバッグの中に突っ込まれているステフォンの中では……

 

 

 

「ねえねえブラック、そういえば聞かなきゃいけないことがあったんだけど……」

「私に……?」

 

 

 

 昨日のブレス公国のことでふと思い出したのか、ラブリーがブラックにしか聞けないことを思い出して彼女に話しかける。一応ステフォンはミュート中なので、こちらの声が外に漏れることはまずない。

 

 

 

「ステフォンの中にいた私に話しかけたのって、やっぱりブラックなの?」

「え?」

「多分、ブラックがネオフュージョンに接触される前だと思うんだけど……闇の使者の方のブラックに聞いた時は何も知らないって返されちゃったから……」

「……あー……」

 

 

 

 ラブリーにそう聞かれて、ブラックは記憶を遡って思い出してみる。ネオフュージョンに声をかけられる前というのだから、世界の崩壊に巻き込まれた直後のことだろう。

 

 

 

 

 

────『ステフォン』の中に入って、『ここじゃない別の世界』に逃げるのよ

 

────……多分、『奴』は私たちを簡単に返そうとは思ってないみたい

 

────だから、せめて無事なあなただけでも、今は『奴』の手から逃げてほしい

 

────だからお願い。……できれば、あんたの中で全てが落ち着いたら、私たちを助けに来て欲しい。

 

 

 

 

 

 思い出されるのは、流れついてきたステフォンの中で眠っていた小さなラブリーの姿。

 

 彼女の魂がなんらかの衝撃でステフォンに閉じ込められた(逃がされた)のだろうと思って、わずかな希望を託してアイツの手の届かないところへ投げ飛ばした記憶────

 

 

 

 

 

「……それ私だ」

「や、やっぱり!?」

「そっか……本当に、助けに来てくれたのね……」

 

 

 

 思い出した記憶の中で心当たりのあるものしかなく、ラブリーが唯一はっきりと覚えている状況を作り出したのがブラックということが明らかになった。

 

 

 

「え、既に会ってたの!?」

「それ知らないんだけど!?」

「あたし達は多分ネオフュージョンに捕まってた説があるし……」

 

 

 

 他のプロトキュアはまるで何も知らない様子だが、ブラックの話と照らし合わせると、その時既にネオフュージョンによって人質(?)として魂が捕えられていた可能性があるので仕方ない。

 ようやく自身の記憶と繋がる人物と再会できて、努力が報われた時のような笑顔を見せる。

 

 

 

「……ありがとう、助けに来てくれて」

「お礼なら、巡にちゃんと言ってね!あの子がいなかったら、私はずっと彷徨ってたか逃げ回ってただけかもしれないし……」

「忘れないうちに言っておくわ……」

「あー!これ絶対忘れるやつ!」

 

 

 

 闇の使者の件もあるのか、巡とブラックの間での会話(主にブラックから一方的なのだが)で一枚壁が挟まれたようなよそよそしさを感じる時がある。キュアウェポンを覚醒できていないあたり、まだ彼女は巡のことを信頼しきれていないか、単純に自分が彼女と一緒に戦う資格があるのかどうかで悩んでいるのかもしれない。

 そこまで気にすることはないと巡は言うのだが、それができないのが彼女であることはなんとなくわかっている。

 

 

 

「……」

「うーん、どうすればいいものか……あれ?」

 

 

 

 ラブリーがふとステフォン内の部屋の奥で、ランプが赤く明滅しているのが目に入る。それは、なんらかの『世界』で『異常』を検知するとこちらへ知らせてくれる『WorldTrip』の機能ではなかったか。最近は他のプリキュアや巡が先に気づいたり、アラームで教えてくれる時が多かったが、今回はラブリーの方が先に気づいたようだ。

 

 

 

「確か闇の使者は全員一応退けたはずなんだけど……もしかして2巡目?」

「どうしたの?ラブリー」

「あ、うん。あとで巡呼ばないと……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「お」

 

 

 

 放課後、ステフォンの中のプリキュア達に呼ばれた巡は、生徒会室に寄ってから学祭準備手伝いに行くとだけ告げて、まだ誰もいない生徒会室の中でステフォンの画面を確認する。

 

 久しぶりの『WorldTrip』の画面は、12個のマークが金枠で飾られて埋まっていた。もう別の世界が増えることはないだろうと思っていたが、『Yes!プリキュア5gogo!』のマークが赤く点滅していた。

 しかし、マークは前に見たバラモチーフのものではなく、彼女達の大きなシンボルにもなっているであろう蝶のマークに変わっていた。

 

 

 

「……あれ?あたしの知ってるマークじゃない……?」

『……もしかして、ナイトメアと戦ってた時のかな?』

「ナイトメア?」

 

 

 

 不思議がる巡をよそに、ドリームが心当たりのあるような言い方をする。ナイトメアという言葉は以前チラッと聞いただけではあるが、多分1期のやつだろうということだけはすぐにわかった。後輩のレポート様様である。

 

 

 

『また闇の使者が何かしてきたのかな?本当に懲りないね!』

『この前巡さんの世界に現れた欠片のように、ネオフュージョンが仕掛けてきた可能性もありますよね……』

「どっちにしろ、大事にさせないためにも行くしかないよね」

 

 

 

 アプリを操作して、足元に出現させたワープホールの中に飛び込んだ。

 

 星の様な煌めきが、虹の様なゆらめきが、無人の生徒会室との距離をどんどん遠ざけていく。出口は、すぐ近くに現れそうだ。この先、どんな世界が広がっているだろうか。

 

 視界が、白い光で塗りつぶされる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『コワイナー!!!』

「ああもう!倒してもキリがないんだけど!?」

 

 

 

 放たれた炎がコワイナーと咆哮を上げる怪物の仮面を破壊し、消滅させる。しかし、次から次へと同じような姿をした怪物が出現して、5人のプリキュア達をじわじわと追い詰めてゆく。

 

 

 

「ナイトメアの奴らよりも異様な気配を感じるミル……ッ!!」

「え?それって、まるであのコワイナーが全く別の悪い人たちによって生み出されているというの?」

「一体誰がこんなことを……」

「それでも、ココ達やピンキーには、手出しさせないんだから!」

 

 

 

 明らかに自分たちが知っている怪物の雰囲気ではないことには気づいているが、だからと言って放置するなんてことはできないのが彼女達プリキュア5。ピンク色のプリキュア────キュアドリームを中心に、再び襲い掛かろうとする怪物たちに向けて啖呵を切って立ち向かおうとする。

 

 

 

 

 

「ねえまた上空から?いよいよ飽きてくるよ」

『感想を言う前にまず変身しなさいっ!』

「お母さんかな?まあいいや。コンプリート・ステージON!」

 

『CureWeapon!Heart!』

『PowerCharge!Custard!』

 

 

 

 ドリーム達の頭上から呑気な漫才が聞こえてきたと思ったら、光を纏って一人の少女がこちらに向かって舞い降りてくる。少女は弓矢らしきアイテムにさくらんぼのような赤い光の矢を怪物達に向かって放とうとしている。

 

 

 

知恵の矢(イリュージョンハートシュート)ッ!!」

 

 

 

 放たれた矢は無数の光の雨となって無尽蔵に降り注ぎ、周囲に出現していた欠片達を一気に消滅させる。ようやく地上に降りてきた少女は、ドリーム達の姿を見て何かに気づいたかのように驚きの声をあげる。

 

 

 

 

 

「あれ?……って、ドリーム?それにみんなも?見た目違くない?」

「あたしのこと知ってるの!?」

「あの、どちら様でしょうか……?」

「……え???」

『も、もしかしてここって……』

 

 

 

 空から舞い降りてきた少女はドリーム達のことを知っているらしく純粋な疑問をぶつけているが、ドリーム達にとっては彼女は初対面であるはずだ。

 お互いに抱いた疑問が、何も噛み合わずに首を傾げる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

<Yes!プリキュア5の世界>

 

 

 

 

 

「へ、へぇ〜!巡ちゃんは別の世界から来たんだ〜!」

「ちょっとのぞみ!?簡単に信じちゃっていいの!?……ま、まあ上から降ってきたり色々見たことないものばっかりだから、疑いようがないんだけどさ……」

「なんだか、不思議な出会いって感じですね!」

「まさかあたし達も、この前来たところとはまた別の世界だとは思わなかったけど」

『こう言う時もあるんだねえ』

 

 

 

 サンクルミエール学園のカフェテリアにて。お互いに変身を解いたプリキュア達は、ひとまずの情報交換という名の簡単な交流会を行っていた。

 

 ステフォンの中のプロトドリーム達の推察で、前回訪れた『Yes!プリキュア5gogo!』の世界とはまた別の世界。過去の世界とかそういうわけでもなく全く別の世界に飛んでしまったらしい。

 こんなこともあるのかと感心している場合ではないのだが、とりあえずこの世界に闇の使者orネオフュージョンが出現したのは確かなことのようだ。現に、先ほど彼女達に襲いかかっていたコワイナーという怪物にネオフュージョンの欠片と同じ気配を感じた。

 

 

 

「中のプリキュア、のぞみさんにそっくりの人もいますね」

『あ、うららだ!』

「はーい春日野うららですよ〜」

「……呑気か???」

『呑気というか、いつも通りというか……』

 

 

 

 ステフォンの中のドリームを特に警戒することなく会話を試みるうららに、一部始終を見ていたりんと中のメロディがツッコミを入れる。ある意味ではいつもの空気感があるような気がする。

 

 

 

「みんなの見た目がちょっと違ってたり、くる……ミルクちゃんがあたしが知ってるタイプじゃなかったり、こうしてみると色々違うんだね」

「み、ミルクが知らないミルクとはどういうことミル!?」

「まあ、そのうちわかるんじゃない?」

「ミルゥ……」

『雑に言いくるめたわね……』

 

 

 

 かれんの近くで座っている妖精体の美々野くるみことミルクは、まだ人間に変身することができない時の頃の話だったようで、小生意気なところも可愛いなと思いつつこの先のネタバレには気をつけておこうと考える。

 

 

 

「巡さんは、ステフォンの中にいるプリキュア達の世界を元に戻すために、色々頑張っていたのね……」

「そう。でも、向こうも目的が同じみたいで……敵対するよりも一緒に頑張った方がいいと思うんだけど……」

「きっと向こうにも、向こうの事情があるのよ。……どうしても、敵対しなきゃいけない理由が……」

「あー……」

 

 

 

 年長組であるこまちやかれんの言葉を受け、巡もそういえば闇の使者もそんな感じだったよなあと思い浮かべる。彼女達も彼女達で、ステフォン=恐ろしいものと思っているようだが、巡にしてみれば使い方の問題でしかない。

 

 

 

 

 

『私はね、あなたに、大切なものを失ってほしくないなって思うの』

 

『止めるために、ですって……?ふざけたことをそう簡単に、言わないでッ!!!』

 

 

 

 現状プロトキュア=闇の使者達は、ステフォンの元々の持ち主であるジュン=キュアクルセイダーによって、本来の世界を『崩壊』させられている。その原因が、ステフォンに宿る強い力によって暴走したクルセイダーが起こした爆発。

 そして、あの世界に辿り着いたプリキュア達の話を混ぜると、世界を変えるにはあの世界のプリキュア達とステフォンの力が必要になってくるらしい。

 

 

 

「……やっぱり、あたしにはあの彼女が簡単に暴走するとは思えない」

『巡……でもジュンは……』

「わかってるよ。爆発の実質的な張本人はジュンさん。だけど、なんであの人暴走しちゃったんだろうって」

『そ、そっか……そこだけが誰も覚えてないんだっけ……』

 

 

 

 どこをどう考えても、巡にとってのあの民思いの優しい騎士王が迂闊に力を解放して振り回されるような人には見えなかった。夢の中ではあってもやけに現実めいた光景の中では、プリキュアが持つ光の力を暖かいものと捉えると同時に、恐ろしいものとも認識していた彼女が、だ。

 

 

 

「こっちもまだやることは多いし、世界を元に戻すとかいう壮大なもの、あたしにできるのかな」

「規模が大きくてよくわからないところもあるけど……諦めないで信じていれば、きっとなんとかなるよ!」

「おおすごい希望的観測……でもありがとう。君に応援されると、できるって思える気がする」

 

 

 

 知りたいことやらなければならないことが大きくて重いものばかりのため、巡にしては珍しく若干狼狽えた様子で苦笑をこぼす。しかし、話を聞いていたのぞみに励まされて再び気を持ち直す。

 さすがは夢の名を持つプリキュアというべきか、それとも彼女元来の前向きな性格からか、彼女に励まされると不思議と自分なら大丈夫と思えてしまう。ファンが多いのは、きっと彼女が諦めが悪くていつでも前向きに頑張るところがあるのだろう。

 

 そんな中、突如ステフォンの中のプリキュア達が表情を変える。何か嫌な気配でも感知したのだろうか。

 

 

 

 

 

『……!?』

『何今の気配!?』

「今度はどうしたの!?」

『今の、何?闇の使者……?何か変なの混ざってない!?』

 

 

 

 随分と困惑した様子で闇の使者の気配を感じ取ったようだが、自分たちが感じたことのないような異質な何かも混ざっているらしい。

 どっちにしろさっきのように大量の欠片を放って向こうからやってくるのだ。巡とのぞみ達は無言で頷き合い、気配をたどりながら現場へと向かうのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あそこにいるのって……ドリーム!?」

『あの子よ!あの子が闇の使者!』

「なんで立ってるまま?」

「……?」

 

 

 

 辿り着いたのは、時計塔のある広場。その中心地に、真っ黒なキュアドリームが────ダークネスドリームが一人ポツンと立っていた。まるで、コンプリート達を待っていたかのように。

 

 

 

『プリキュア・メタモルフォーゼ!』

「コンプリート・ステージON!」

 

 

 

 警戒しつつピンキーキャッチュとステフォンが光を放ち、彼女達をプリキュアの姿へと変える。

 

 

 

 

 

「大いなる希望の力!キュアドリーム!」

「情熱の赤い炎!キュアルージュ!」

「弾けるレモンの香り!キュアレモネード!」

「安らぎの緑の大地!キュアミント!」

「知性の青き泉!キュアアクア!」

 

「希望の力と!」『未来の光!』

『華麗に羽ばたく五つの心!Yes!プリキュア5!』

 

 

 

「現となりし、12の魂!キュアコンプリート!」

 

 

 

 

 

「……そういえばあの世界のルージュ達もこっちのプリキュア達と同じ姿をしていたような……」

『はっ……!!』

『いやそこはいいのよ!!』

 

 

 

 まさかの事実に驚きつつも、コンプリート達は先ほどの欠片を繰り出していたであろうダークネスドリームの方に向き合う。彼女の首元には、見覚えのない黒いリングが増えている。蝶の形をした赤いクリスタルが怪しげに煌めいていて、異質な力はおそらくこのリングからだろうと推察できる。

 

 

 

「あなたがさっきのコワイナーを放ってたのね!」

「……そうだよ。こうでもしないとコンプリートは来てくれないもん……」

「……あれ?」

『何か、様子が違うような……?』

 

 

 

 いつもであれば元気に答えてくれそうだが、今回は特にそういうのがない。むしろ少し元気ではなさそうだ。その違和感に気づいたのは、ステフォンの中のホイップだ。どう見ても黒いリングを気にしているような感じがしているらしい。

 

 

 

「ど、どうしたの?もしかして、まさかとは思うけど、特に何も考えずに来ちゃった感じ……?」

「え、そんなことあるの?」

「いやわかんない」

「それは、その……」

「……ぽいわぁ」

 

 

 コンプリートが試しに口に出した予想は図星だったのか、ダークネスドリームが困惑した様子でわかりやすく目線を逸らす。本当にそうだったとは思わなかったようで、若干コンプリートが困惑した声をあげる。しかしこれは、対話のチャンスでもあると踏んだのか、コンプリートは言葉を続ける。

 

 

 

「それなら都合がいいかも……ねえ、ネオフュージョンってやつと何かあったの?」

「……っ!」

『ドリーム……?あんた、アイツに何かされたの……?!その首輪は何……?』

「ブラック……!ち、違うの、あたしは……」

 

 

 

 ステフォンの中から様子を伺っていたブラックが、ダークネスドリームに対して問いかけるが、肝心の彼女は何かを言い淀んだ様子で対話を拒む。それでも諦めずに言葉をかけ続ける。

 

 

 

「もし、もし何か協力してる側に嫌なことされてるなら、わざわざいう事を聞かなくたって……」

「それは……その……」

『……アイツに何か脅された?』

「!!」

「脅されていそうね……」

「君ちょっと対話ロールでクリティカル出し過ぎじゃない???」

『一応、ドリームは私のことを“知ってる”側だから。私だって彼女達のことはよくわかってる』

 

 

 

 ステフォンの中のプロトブラックの問いかけに全部わかりやすい反応を示している闇の使者に対して色々突っ込まなければならないことがあるが、ネオフュージョンが本格的に闇の使者達に対して介入してきているようだった。

 何か言いたそうにしたがっているダークネスドリームに対し、コンプリートは変に警戒されないように優しい表情を保つ。

 

 

 

「大丈夫。目的が一緒なら戦わない道だってあるよ。君自身も、わかってるんじゃないかな」

「コンプリート……!あ、の────」

 

 

 

 

 

 やっとの思いでコンプリートの方に駆け寄ろうとしたダークネスドリームだったが、彼女の足を彼女自身の影から伸びた黒い何かが行手を阻み、その道を閉ざしてしまう。

 

 

 

「……!?」

「な、何あれ……!」

「嫌な気配がするミル……!!」

『あれは、ネオフュージョンの力……?!なんであんなに強く……!?』

 

 

 

 妖精であるミルクは黒い影の異様な何かに怯え、プロトキュア達も最大限警戒を強めている。どう見ても怪しい黒い影は、ダークネスドリームに纏わりついて何かしようとしている。

 

 

 

 

 

『貴様の敵だろう?耳を傾けるな……』

「……っ!でも……」

『貴様とて、仲間やブラックのために役に立ちたいだろう?世界やアイツの心を壊した犯人が憎いだろう……?』

「……っ!!」

『さあ……貴様が助けたいもののために、我の力を解放するがいい……』

 

 

 

 黒い影は何かを囁いてそのまま消滅する。それはまるで大地が唸るような響で何を囁いたのかはコンプリート達には全くわからない。

 しかし、ダークネスドリームには聞こえるような音声だったのだろう。影に何かを焚きつけられたのか、目を見開いた彼女の右手は、自然とあの黒いリングの方に伸びる。ぼんやりと、紅い瞳が輝きを増しているような気がする。なんというか、無理やり操られているような────

 

 

 

「あたしが、やらないと……」

「……?」

 

 

 

 とても小さな声で、ダークネスドリームがそう呟いた気がした。触れた首元の黒いリングが、怪しく煌めく。

 初めて出会った時の無邪気さは何処へやら、まるで何かに差し迫られているような不自然な焦りを隠し、コンプリートたちの方を見据える。

 

 

 

『なんだろう……あのリングから、とてつもなく嫌な気配がする』

「え……」

 

 

 

 ステフォンの中のドリームが警戒する中、思い悩む様子のダークネスドリームは意を決して口を開く。ピキッ、と、リングにヒビが入る。

 

 

 

「あまり、アイツの力は使いたくない。でも、それでも……あの人の力に、みんなのためになるというのなら……!」

 

 

 

 ヒビはどんどん広がり、リングから溢れ出したドス黒い闇が、彼女の体にまとわりつく。体の中に明らかに外部からの干渉のように入り込む闇の力に、呼吸が乱れるほどの苦しさがあるのだろう。

 

 

 

「ちょ、ちょっとあれ大丈夫なの!?」

「絶対まずいやつだよこれ……」

「ね、ねえ!」

『────ッ!?ドリーム!今近づいちゃダメ!』

「え、でも……きゃあ!?」

「う……!?」

 

 

 

 突如襲いかかってきた敵とはいえ、ダークネスドリームのあまりにも苦しげな様子のために、ルージュが困惑している。幼馴染の顔と同じ人物がこうして苦しんでいるのだ、無理もない。

 蹲る闇の使者を心配して、ドリームが駆け寄ろうとするが、プロトブラックに止められる。

 

 次の瞬間、ダークネスドリームを中心に、闇を纏った強力な衝撃波が広がるように放たれ、周囲にいたプリキュア達が吹き飛ばされそうになる。吹っ飛ばされないように両腕と足の踏ん張りで衝撃波による突風を耐える。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……収まった……?」

「待ってください!ここは、さっきまでの場所、なんですか……?!」

 

 

 

 アクアの声でようやく衝撃波の心配がなくなったことがわかったが、次に放たれたレモネードの言葉で、周囲の景色の変化に驚く。

 気がつけば、今までいたはずの街ではなく、怪しげな色をした水晶によって構成されたフィールドとなっていた。よく見ると周囲の建物が結晶化の波に飲まれて覆われているだけだったりするようで、場所自体は変わっていないようだ。

 

 

 

「さっきまでの場所、だよね……?」

『な、なんでこんなに……、っ!ドリームは!』

「あたしは無事だよ!?」

『そっちじゃなくて闇の使者のあたし!……えぇ!?』

 

 

 

 

 

 問題はそこだけではない。中心にいたダークネスドリームも姿も大きく変化していた。

 

 見た目だけなら『シャイニングドリーム』という姿に近いのだが、本来であれば純白のコスチュームや翼であるはずが、漆黒に染まっている。伸びたマゼンダの毛先も黒く、両手首と両足首、頭上の光輪が嫌な紅い光を放っている。

 光輪はそこだけでなく、首元でも輝いているようだ。……それは彼女達の裏で動くアイツの支配の象徴でもあり、下手なことでもしたらすぐにでも落とせるのだぞと脅されているような雰囲気も垣間見える。

 

 

 

「あれ、は……!」

「……っ、これが……あはは……」

 

 

 

 苦しげに揺れる紅い瞳が、困惑するコンプリート達を映す。闇の力に飲まれかけている影響か、力を得たダークネスドリームが、にっこりと笑う。

 周囲では、水晶から変化した蝶の姿をした欠片達が次々に生み出されていく。

 

 

 

「まずい……!何が起きたのかさっぱりだけどこれは普通にまずいのでは」

「みんな!!」

『yes!』

 

 

 

 

 

「早く……早くステフォンを取り戻さないと……」

「ドリーム!!ああもうぶつかり合いは避けられないってこと?」

 

 

 

 明らか外部からの干渉のせいで闇の力が強まったダークネスドリームを止めるため、コンプリートは覚悟を決めて襲いかかってくる欠片の蝶たちを交わしながら彼女の元へと走り出すのだった。

 

 

 

 

 

続く…

 




次回更新日:7月14日(日)
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