PrecureStageON!   作:主氏レム

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当時ここら辺でめっちゃ詰まってました


第34話:心模様は不安定?星空に願いを込めて

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『やはり奴には抵抗されたか……これでは外の様子を眺められんが……その分、前回以上の脅威と化している……』

 

 

 

 ネオフュージョンの世界は、漆黒の城の最深部にて。

 

 分身伝いで自身の力を分けた者達の様子を監視していたが、そのうちの一人が監視に気付き、分身を破壊してしまったようだった。板のような欠片に映る景色は、砂嵐だけが流れている。

 

 

 

『……。しかし、これ以上眺めることができないのは残念だ……』

 

 

 

 前に現れた3人の闇の使者。一人は自分の目的のために、もう二人はその前座や実験のために力を与えた。目的の一人はその力と馴染んでいないのか、意識が回復していないようだが、直に目覚めるだろう。

 

 前回自身の力を使わせた者は、嘯きとほんの僅かな暗示をさせ油断したところで介入したことで、その力を惜しむことなく行使してくれた。しかし、最後の最後で自我が戻って暴走してしまい入る隙ができなかった。一つの体の主導権は、二つもいらないらしい。

 

 今解放させた者は、彼女が抱えていたであろうものを突けば絶望し、勝手に壊れてくれた。目的の相手と似ているところがあるからなのか、その力は随分と使いこなしてくれているようだ。しかし、分身を壊されてしまったらあちらの様子を傍観することも入り込むことも不可能だ。

 

 

 

『しかし、いいものを見せてくれたな……なあ、キュアブラックよ……いや、今はダークネスブラックと呼んだ方が適切か』

 

 

 

 もうすぐ、目的の人物が目を覚ますことだろう。お楽しみは最後に取っておくのがセオリーだろう。欠片に映るヴィジョンには、いまだに目を覚まさぬとある闇の使者がいる。つい先日まで自身の力が馴染まず魘されていたようだが、ようやく大人しくなったらしい。

 

 

 

 

 

────目覚めの時は、すぐに来る。

 

 

 

 ネオフュージョンの嗤い声が、深淵の中で響き渡るのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

第34話:心模様は不安定?星空に願いを込めて

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 目を開けると、コンプリート達は星々が煌めく薄暗い無重力の空間の中に閉じ込められていた。

 無重力のままどこに飛んで行かないようにハッピーウィングを装備し、同じく空間に閉じ込められたブライトとウィンディ、満と薫と離れないように次に来るであろう脅威に備える。

 目の前の闇の使者────ダークネスブルームはその姿を変え、その身に宿す闇の力を過剰に溢れさせながら、コンプリート達と対峙する。前回と同じ、ネオフュージョンによる強制的な介入によって、あの闇の使者が何をしてくるのかがわからないのだから。

 

 

 

 ただ前回と違うのは、ダークネスブルームがまだ自我を力に飲まれないようにすぐ暴れ出さなかったことだろう。彼女は苦しげに表情を渋らせながら、コンプリート達の方を虚ろに不気味に揺れる紅い瞳で睨みつけている。

 

 

 

「だ、れか……っ」

「まずい、来る……っ!!」

『みんな構えて!』

『ウザイナー!!!』

 

 

 

 そんなダークネスブルームの必死の抵抗とは裏腹に、周囲には流れ星のような小型のネオフュージョンの欠片達が大量に出現し、5人の少女達の方へと向かって襲来する。

 コンプリートはすぐにリングを壊して力を解放し、迎え撃つ準備をする。

 

 

 

『その流れ星欠片だったの!?前よりも増えてるって!!』

「……っ、薫!」

「えぇ……っ!」

 

 

 

 しかし、満と薫が前に飛び出し、赤い光のバリアを展開して迫る流星群の被弾を防いだ。どうやら彼女達も、プリキュアではないにしろ、特殊な出自故の味方であることには変わりない。

 5人は降り注ぐ流星の雨を避けながら、闇の使者の方へと向かって飛んでいく。空間が無重力のせいで動くことが少々大変そうに見えるものの、ブライトとウィンディはそもそも空中で飛び回ってたしコンプリートに関してはハッピーウィングの力である程度自由な行動力を得ている。

 

 

 

「PowerCharge!Moonlight!』

 

「……っ!!」

 

 

 

 コンプリートは白銀の月の光を纏い、ダークネスブルームの方へと一気に距離を詰める。彼女達を止めるには今までのパターンと同じ、一度動きを封じてから自身の浄化技をぶつければいい。

 しかし彼女の周りにはあの狂気的な紅い月の光のような大量のエネルギー弾を展開し、飛びかかろうとするコンプリートに向かって飛んでいく。本人の意思とは関係なく攻撃が繰り出されている。

 

 

 

『ちょっ……!』

「このまま突っ切ろう!ハッピー、少し耐えてて!」

『お、オッケー!』

 

 

 

 プロトハッピーと共にコンプリートは流星の他に増えた弾丸の雨を間を、臆することなくまっすぐに飛ぶ。障害物に道を阻まれようとも、纏う白銀の光によって相殺されているためか、実質的な無傷に近い状態で彼女の元へと近づける。

 

 

 

「コンプリートがもうあそこまで近づけてる……!」

「ウィンディ!私たちも行こう!」

「ええ!」

 

 

 

 一方のブライトとウィンディも、流星の雨を掻い潜りながら闇の使者の方へと飛んでいく。しかし、闇の使者の意思と反対に放たれた紅いエネルギー弾の嵐が二人の方にも降り注ごうとしていた。

 

 

 

「ああもう大人しくして!光よ!」

「風よ!」

 

 

 

 流石に避けられないと悟り、ブライトが月の精霊の力を操り、黄緑色の光の玉を放つ。光は弾けて無数の流星のように、紅い弾丸を迎え撃つ。相殺した際に生まれる爆風は、風の精霊を操るウィンディが起こした突風で切り裂かれ、中から二人が飛び出しコンプリートと同じ方へと向かっていく。

 

 

 

『はぁぁぁぁっ!!』

「……!!」

 

 

 

 彼女を止めるために飛びかかった3人だったが、ダークネスブルームは両手に精霊の力ではなく真っ赤な光と黒い闇を纏い、周囲のものを薙ぎ払うかのような光線を放つ。自身の身に危険が迫っているのを感じて反射的にはなったのだろう。

 自分を守るかのように飛び交う欠片の流星を巻き込んでいることも気にせず、ただ近づこうとしているプリキュア達を拒むかのように放たれたそれは、3人のプリキュア達の行手を阻んでいる。

 

 

 

「ちょっと待ってうわっ」

「きゃああっ!!」

「ウィンディ!!」

「……っ!?」

 

 

 

 あの破壊光線のようなエネルギー砲が僅かに掠り、その衝撃でコンプリートとウィンディが吹き飛ばされる。ブライトがその手を掴もうとするが間に合わず、ウィンディは満と薫に受け止められ、コンプリートは自力で復帰する。

 振り回されていたとはいえ彼女たちを、特にウィンディをこの手で傷つけてしまったダークネスブルームは、光線を放った震える両手で頭を抱えている。

 

 

 

「あっ、ご、ごめん、舞……っ、わ、私のせい、で……っ!!」

「あ、あの子一体どうしちゃったの!?急に攻撃したと思ったら怖がってるし……」

「……なんというか、心がどんどん不安定になってない?」

『ドリームの時はこうなってなかったのに何が起きて……!?』

 

 

 

 前回とは勝手の違う何かが起きている。前回のダークネスドリームの時は、完全に奴の闇の力に飲まれてコンプリート達を倒そうとしていた。今はどうだ?体は闇の力に飲まれているとはいえ、心は闇の中で染まらないように抵抗しているような感じがする。

 

 

 

「ね、ねえ!しっかりして!あたしのことわかる!?」

「……っ!!!」

 

 

 

 コンプリートの呼びかけに、虚ろな瞳を赤くぼんやりと点滅させて、こちら側を怯えるように凝視している。コンプリートの声が全くと言っていいほど聞こえていない。むしろ、自分の身に起きている異変を誰かに止めて欲しくて手を伸ばそうとするが、闇の力はそれを許さない。

 

 

 

 自分一人だけ(・・)が助けを乞うことなんざ、闇の力も自分自身の心も許してくれない。

 

 

 

 

 

「────ッ!!」

 

 

 

 

 脳裏に流れるのは、引いてしまうほどに壮絶で凄惨な光景ばかり。

 

 自分たちが元いた世界を崩壊させた白いプリキュアと、彼女を前に倒れ伏す相方や仲間達。

 あの人が加担させられている悪事と、あの人の悪事に巻き込まれて力付きたプリキュアの生気のない目。

 あいつの力を使ってしまったあの子が振り回されて傷ついて戦う様子と、解放された直後に倒れ衰弱し切った顔。

 

 

 

 そして、それを見ていることしかできなかった、気づくのが遅すぎた、止められなかった自分を責めるように響く、あいつの嗤い声────

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『貴様がもっと早くに気づけていれば、彼奴もあそこまで壊れなかったのになぁ……』

 

 

 

 

 

「う、ぁ……う゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛ああああああぁぁぁぁァァァァ゛ァ゛ァ゛ァ゛……ッッッ!?!?!?」

 

 

 

「うぐ……っ!?」

『コンプリート!!』

 

 

 

 咆哮にも似た声も枯れてしまうほどの悲痛な絶叫が、歪な星空の空間に響き渡る。

 

 何を思い出してしまったか、纏わりついてくる嫌な記憶を振り払うように、伸ばされた手を取ろうとしたコンプリートを思い切り突き飛ばし、その腕の黒いヒビがバキバキと一気に広がる。

 自身の肉体に激痛が走ろうがコンプリートが吹っ飛ばされようが関係ない。抵抗しようとするダークネスブルームの抵抗する意思と、まだ残っている自我を砕くかのように流れたフラッシュバックは、確実に彼女を闇の力で支配しようとしている。先ほどよりも、体から溢れ出す黒い闇の力の濃度が増えている。

 

 

 

「な、なんだあの闇の力は……!あれだけの力を秘めていたなんて……」

「けれどこのままでは、あのブルームが危ない……っ!」

 

 

 

 そのあまりの異常性に、満と薫が警戒を緩めない。それもそのはず。ネオフュージョン由来の闇の力は、彼女達が知っている滅びの力以上の凶悪さと刺々しさを持ち合わせているのだ。下手に近づけば、自分たちも傷ついてしまう。

 

 

 

「ご、ごめんなさい、誰か……誰か止めて、来ないで……っ、いたい、やめ、て、こわれる……っ!!」

「ブルーム……!きゃあ!?」

「うわっ!?これじゃ全然近づけない!!」

 

 

 

 譫言のように放たれるブレブレの言葉からして、持ち堪えるのがもはや限界なのは誰が見てもわかる。

 痛々しくて泣きそうで苦しそうで辛そうな姿に耐えきれず、ウィンディが駆け寄ろうとする。しかし彼女の周囲には大量の紅い光弾が展開され、そこから縦横無尽に放たれるビーム光線が、距離を縮めようとする彼女達を寄せ付けてくれない。

 

 まるで、こちらの干渉を全て拒絶しているかのように。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ちょ、っと、わぁ……っ!?」

「……ぁ……」

 

 

 

 背中に生えたのは、もう一対の黒い翼。黒いヒビのような傷が全身に広がり、ギリギリの理性と人の形が緩やかに失われていく。

 このままでは誰がどう見ても、彼女自身の体も心も限界を迎えそうだった。壊れそうな体で、自分の意志だけでは止められなくなった闇の力を放出しようと、あのエネルギー方を四方八方に放っている。

 

 なんとかして近づきたくても、あのビームによってまたしても吹き飛ばされたコンプリートは、それでも諦めずに前を向く。

 

 

 

 

 

「それでも、あたしは……っ、あの子を……っ!!」

 

『CureWeapon!Bloom!』

 

 

 

 展開したブルームソード片手に、コンプリートは体勢を直しながら大きく地面を蹴り飛ばし、滅茶苦茶な方向に闇の奔流を放っているダークネスブルームの方へと飛んでいく。

 黄金色の精霊の光を纏う刀身は、キラキラと輝きながら迫る闇へと立ち向かっていく。コンプリートはあの末恐ろしい闇の力を切り開いてやろうとしているのだ。先ほどはあの光線が被弾して吹き飛ばされてしまったが、それでも諦めたくないという彼女の意思が、「目の前で苦しんでいるあの子を助けたい」という思いを強くしている。

 

 

 

「あの子を、助ける……っ!まだ、あの子達を助けたい理由、言えてないからね……!」

『そうだよ……っ、全部を抱え込む必要はないって……しっかり教えてあげないと……!』

 

 

 

 

 

『Cureweapon!Bright!』

 

 

 

 握っていたブルームソードが突如光だし、その形状を変化させる。満月の光の力を宿したそれは、一つの『大剣』となって輝きを強くさせ、あんなに手間取っていた闇の奔流を、振り下ろしただけで薙ぎ払ってしまう。

 

 

 

『……って!姿が変わった!?』

『もしかして、ブライトとしての力を取り戻したの!?』

『そもそも私、こっちの力を無くしてたの!?』

「あー、つまり『ブライトブレード』になったってこと?」

 

 

 

 ドリームが見慣れた姿に戻ってキュアウェポンの形状が変化した時と同様、コンプリートが抱いた強い思いと同調して、プロトキュアおよびキュアウェポン側に影響を与えたようだ。

 

 そして彼女は確信する。この暗闇を照らせる力であれば、溢れ出す闇の力を切り開いて突き進んでいけると。

 

 

 

「ぅ、っ……ぃや、見ないで……近寄らないで……っ!!来ないでッッッ!!!」

「そんな顔されたらできるわけないでしょうに!」

 

 

 

 拒否されてもなお諦めず、プリキュア達は闇の力に振り回されて暴走するダークネスブルームの方へと飛んでいく。

 彼女の気持ちに応えるように飛び交う黒い欠片の流星群と対をなすように、満と薫が放つ赤いエネルギー弾の嵐とぶつかり合い相殺する。爆風が舞う中、撃ち落としきれずに飛んでくる流星を避けながら、逃げるように飛び回る闇の使者を追いかける。

 

 

 

「ブライト!」

「うん!」

 

 

 

 ブライトとウィンディはその手を繋ぎ、一気に飛び上がる。繋いでいない方の手に、月と風の精霊の光が集まりだす。しかしその意図に気づいたダークネスブルームは、その手に有り余る闇の力で再びあの巨大で真っ黒なエネルギー砲を二人に向けて放とうとする。

 

 

 

「精霊の光よ!命の輝きよ!」

「希望へ導け!二つの心!」

 

「「プリキュア・スパイラルスター・スプラッシュッ!!」」

 

「来ないでって、言ってるでしょぉぉぉ……ッッ!!?」

 

 

 

 光と闇の力が同時に放たれ、コンプリートも光をまとってブライトブレードを構えながら、目的の人物の元へと飛び掛かる。

 相反するエネルギーがぶつかり合い、とてつもない衝撃と煌めき、爆風が同時進行でやってくる。その爆風が味方をしてくれたのか、コンプリートを押し出して距離を一気に縮めていく。

 

 

 

 

 

『PowerCharge!Windy!』

 

「……っ!?」

「ちょっと大人しくしていなさい!薫風月華(ツインハートスプラッシュ)ッ!!」

 

 

 

 振り落とされた刃から放たれるのは、黄緑と桃色の精霊の光が混ざりあう光波。押し寄せる光を止めようとバリアを張るが、誰よりも身知っているはずの光を止めることができず、ダークネスブルームは精霊の光に押し出されてしまう。そのおかげか、先ほどまでの暴れっぷりを強制的に止められてしまう。

 

 今なら、彼女にまとわりつく過剰な闇の力を払える。

 

 

 

「うぅ……っ」

「コンプリート!」

「今よ!」

「OK任せて」

 

 

 

『CureWeapon!Complete!』

 

 

 

 

 ステフォンから光が飛び出し、ピンク色のスタンドマイクの形をしたスタンドロッドを召喚する。この力であれば、確実にあの量の闇を浄化できる。

 

 

 

 

 

Dear around the world(巡り巡る世界へ),with light of salvation(救いの光を込めて)────♪」

 

 

 

 スタンドロッドに向かって、綺麗な歌声が響く。コンプリートの声に呼応し、彼女の背後に12個のハートが出現し、神々しい光が放たれる。全ては、凶悪な力に飲まれてもなおこちらを拒絶するあの闇の使者に手を伸ばし、引き上げるために。

 

 

 

「プリキュア・セーブ・ユア・ハートッ!!」

 

 

 

 声と共に放たれた12個のハートは重なり合い、一つの桃色の光線となってダークネスブルームへと向かって伸びていく。光に飲まれて動きを封じられている彼女に抵抗する手段もなく、光は紅く輝く胸のクリスタルを穿つ。

 

 

 

「────っ」

 

 

 

 取り囲んでいた空間が砕け、元の海原市の青い空が見えてきた。やはり自分たちは密室のような空間に閉じ込められていたらしい。

 体に飛び込んできた光の力によって自分を狂わせていた闇の力が抜け、傷だらけの体のままゆっくりと地上の方へと落下していくところを、飛んできたコンプリートによって抱えられる。流石に抵抗できるほどの体力は残っていなかったようだ。

 

 

 

 

 

「……落ち着いた?」

「ぐ、ぅ……どうして……そこまでして、私を助けるの……?」

「いつも笑ってるような人が泣きそうな顔してたら、誰だって心配になっちゃうでしょ?」

「……」

 

 

 

 ほら、あたし誰かの涙見たら体が動いちゃうからと、コンプリートはさも当たり前だと言ってのけるように笑って返す。あんなに吹き飛ばされたり拒否されていたのに、彼女はもう能天気にけろっと笑っている。

 与えられた分の余計な闇の力と引き剥がされ、それでもリングはつけっぱなしではあるが、ようやく自我を取り戻し元の姿に戻れたダークネスブルームは、そのままコンプリートに抱えられながら、大空の大樹が聳え立つ大地へ降りていく。

 

 

 

 

 

「……ありがと」

「え?」

 

 

 

 小さく呟いた感謝の言葉は、コンプリートはうまく聞き取れていなかったらしい。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「えぇ〜!?もう行っちゃうの!?」

「逃げろって言われていたなら、まだ戻らないほうがいいんじゃないの?」

「同じ世界に()が二人いたって仕方ないでしょ」

「そ、そんなこと言わなくたって……」

 

 

 

 大空の樹の下、少し動けるようになった途端、「流石にもう帰っても狙われないでしょ」という謎の確信から、ダークネスブルームは元の世界への帰還を決めたようだ。

 

 そう言って、ダークネスブルームは痛む傷を抱えながらどこかへ去ろうとする。そう言いつつ足を引きずっていた彼女を咲と満は引き止めようとするが、あえて刺々しく言い放ってやんわりと拒否する。やはり自分たちとは分かりあうことはできても共に戦う道は選べないようだったが、その瞳に翳りも裏もなく、むしろ何かを決意したような色が滲み出ている。

 

 

 

「……どうやって全員であいつから逃げるかとか、ブラックをどう説得しようか、やらなきゃいけないことができたの」

「そ、そっか……」

「本当にいいの?」

「……うん」

 

 

 

 薫からの念押しのような言葉にも甘えることなく、彼女は元の世界へ帰る決断をする。こうなると絶対に動かないことを知っているのか、舞は特に何もいうことはなかった。

 

 

 

「また危なくなったら迷わず逃げるんだよ。いいね?」

「……お母さんかな?」

「さ、流石にあたしも君を産んだ覚えはないよ」

『そういう意味で言ったんじゃないと思うよ!?』

 

 

 

 先ほどの緊迫した状況下からの反動か、巡の能天気さに若干の天然(?)が入った発言にギアが入っている。

 

 ダークネスブルーム────というよりも闇の使者全員に当てはまることではあるのだが、彼女達は皆仲間意識が強い。闇の使者達から見れば、崩壊した世界で唯一の生き残りが目の前にいた彼女達だけなのだ。一人でも欠けるのは、絶対に嫌なのだろう。さらに巡は、世界崩壊に一役買っているステフォンを持っている人物。今更手を組むのは少々気が引けているのかもしれない。

 

 だからといって巡も特に突っ込むことなく、彼女の意思を尊重しようと思ったのだろう。最初に会った時よりも表情は重苦しいものではないので、多分もう大丈夫なのは本当のことだと感じたのだ。

 

 もう行こうかとした時、舞が思い出したように彼女を呼び止めた。

 

 

 

「……何、どうしたの?」

「また、遊びに来てもいいからね」

「……!……ありがと、でも、もう来れないかも」

 

 

 

 そう告げて、彼女はどこかへ消えてしまった。笑顔でまあまあ酷なことを言って帰ったがために、なんだこいつはと咲が不満を漏らしているが、舞は特に気にすることなく優しげな笑みを浮かべた。

 

 

 

 穏やかな天気の中、一陣の風がそよいだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

<ネオフュージョンの世界 漆黒の城・ワープホール前>

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『また、遊びに来てもいいからね』

 

 

 

 

 

 別れ際にあの世界の舞から告げられたお誘いは、きっと叶うことはないだろう。

 ヒビのようなやけに痛む傷を引きずりながら、ダークネスブルームはそう考える。それでも、別の世界ではあれ相方にあそこまで心配されたのは久しぶりかもしれない。

 

 コンプリートに暴走を止められたお陰なのかどうかはともかく、逃げ出す前に抱えていた重いものが少しだけ軽くなり、動きやすくなったかのように思える。あの子達の言う通り、自分でも気付かぬうちに色々と抱え込んでしまったのだろう。

 

 さあ、帰ってきてやる事はたくさんある。まずは自分を逃がしてくれたドリームに色々と謝らなければならないし、本格的にネオフュージョンをどうするかを考えないといけない。それよりもブラックが目覚めなければこちらも下手に動けないのだが……

 

 色々と考えながら歩いていると、ある人物とすれ違った。

 

 

 

 

 

「────」

「……っ!?」

 

 

 

 今、確実にここにいて起きているのがおかしい人物とすれ違ったような気がして、全身に滲む痛みすら気にすることなく思わず振り返った。

 しかし、背後には誰もおらず、暗闇が立ち込めてしんとした静寂が広がっているだけ。後ろは、別の世界へつながるワープホールぐらいがポツンと浮いているだけ。しかし、あの黒い翼といい、短い髪といい、特徴で当てはまるのがあの人しか思いつかない。

 

 

 

「……今のは……」

「……ブルーム?か、帰ってきてるし、怪我してるし……!!」

「ネオフュージョンに襲われかけたって聞きましたが大丈夫だったんですか!?」

「あ、二人とも……うわっ」

 

 

 

 気になって追いかけようかと迷っていたところ、無事に戻ってきた彼女を見つけたブロッサムとラブリーが駆け寄ってくる。巡の世界で話したことを伝えたり、自分がどこに逃げ込んでいたのかは全く告げていなかったり、追いかけたら逆にネオフュージョンに居場所を割られてもっと酷い目に遭わせてしまうと思われ、彼女達も下手に動いて逃げたブルームを迎えに行くことができなかったようだった。

 

 

 

「ぶ、無事でよかった……!」

「……ブロッサム」

 

 

 

 行きたくてもいけなかった歯痒さからか、ブロッサムは相手が怪我人にもかかわらず、彼女を目一杯抱きしめる。よほど自分を心配してくれていたのであろう。

 一方のラブリーも安心した様子を見せていたが、ふと自分が別の方向を向いていたのが気になっていたようだ。

 

 

 

「……そういえば、さっきブラックらしき人とすれ違ったんだけど、あの人起きたの?」

「え?いえ、まだ起きてませんけど……」

「えぇ……?さっきのは見間違いだったのかな……痛っ」

「す、すみませんっ!?って、ドリームと同じような傷……や、やっぱり無理やりあの力を使われて……あ、ら、ラブリー!」

「……、まさか……っ!!」

 

 

 

 

 

 ブルームの話を聞いて何か嫌な予感がしたのだろう。表情を変えたラブリーは、怪我人をブロッサムに任せ、今は眠っているはずの人物の部屋へと走り出す。あの人の部屋は、廊下を右に曲がった突き当たりだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「────なぎささんッ!!……っ!?」

 

 

 

 勢いよくドアを開け放ち、彼女本来の名前を叫ぶ。返事は返ってこない。

 

 それもそのはず。そこで眠っているはずの彼女のベッドはもぬけの空。部屋の中には誰一人の気配を感じない。……いや、ほのかに残る乱雑に置かれた掛け布団の温もりからは、先ほどまでは人がいたことを物語っている。

 

 

 

「ラブリー!何かあったんですか!?」

「ブロッサム……あんまり無茶しないで……流石に歩けるから……」

「そんなこと言ってる場合ですか!?」

「二人、共……ブラックが……!」

「え……?!」

「う、嘘でしょ……?」

 

 

 

 突如走り出したラブリーを追いかけるため、ブルームをおんぶしてやってきたブロッサムもまた、その部屋の様子を確認して驚愕する。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 先ほどすれ違った人物は、ブルームの見間違いでもなんでもない。正真正銘、ネオフュージョンにより力を与えられた反動で昏睡し、そんな深い眠りから覚めたダークネスブラック本人のようだった。しかも、誰にも何も言わずに目を覚まして、さらに出歩いてどこかにいなくなっているという事実が突きつけられている。

 

 

 

 紅い月の光だけが、誰もいないブラックの部屋に無慈悲に差し込んでいる。

 

 

 

 

 

続く…

 




次回更新日:7月27日(土)
消えたブラックは何処へ
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