PrecureStageON!   作:主氏レム

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実は終盤戦が近づいてる


第36話:闇を照らせ!想いを乗せた貫く拳

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 乾いた風が、吹き付ける。妙に静まり返った世界に一人の闇の使者が現れたことにより、この場所には一気に緊張感が走る。なぜならその闇の使者は、彼女の仲間達がいなくなったと思っていた人物だったのだから。

 

 

 

 

 

「ダークネス、ブラック……ッ!!」

「……」

 

 

 

 雷撃が飛んできた先にいる闇の使者・ダークネスブラックを真剣な眼差しで見通す巡。今まで彼女からの攻撃を受けることはあったが、生身の相手に問答無用で殺意の高い攻撃をしてくるのはなかったはず。

 前に見た時よりも澱んで憎しみに溢れた紅い瞳で、ダークネスブラックは巡を睨みつけている。

 

 

 

「あれが、闇の使者……?もろ私じゃん……!」

「何かしら、この冷たい感じは……!」

『おかしい……何か変だわあの私……!』

「……」

 

 

 

 この世界において初めて彼女と対峙することとなるなぎさとほのかは、キュアブラックと瓜二つの闇の使者とその異常性に困惑しつつも警戒を緩めない。そして、その彼女から飛び出したプロトブラックは、明らかに何かがおかしい闇の使者を恐れるように、様子を見ている。

 初めて出会った時のような恐怖感を感じつつも、巡はごくりと唾を飲み、おそらく戦わなければならないだろう状況に腹を括る。

 

 

 

 

 

「久しぶりね、キュアコンプリート。……あなたを倒し、この世界を壊しに来たの」

「……っ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……キャラチェンした???」

「!?」

「……」

『巡ぅッ!!!今それどころじゃないでしょ!?』

 

 

 ステフォンの中のブラックに思いっきり突っ込まれながらも、巡は視線の先にいる様子のおかしいダークネスブラックをまっすぐと見るのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

第36話:闇を照らせ!想いを乗せた貫く拳

 

 

 

 

 

「「デュアル・オーロラ・ウェイブ!」」

「コンプリート・ステージON!」

 

 

 

 驚く間もなく、カードコミューンをステフォンを構え、3人はプリキュアの姿へと変身する。こちらへの無差別な攻撃があった以上、生身のままでいれば只事ですまないことが起きそうだったのだ。

 

 

 

 

 

「光の使者!キュアブラック!」

「光の使者!キュアホワイト!」

 

「「ふたりはプリキュア!」」

 

「闇の力のしもべ達よ!」

「とっととおうちに帰りなさい!」

 

 

 

「現となりし、12の魂!キュアコンプリート!」

 

 

 

 

 

「……お腹を出していた時代があったのか」

「な、何よいきなり!?」

「いやそれ言ってる場合じゃないんだよ」

『セルフツッコミ!?』

「……って、いない!?」

 

 

 

 どんなに緊張感漂うヤバい状況でも能天気な発言が飛び出すコンプリートに困惑するが、そんなことやっている場合ではないとコンプリートも持ち直し、すぐに上空にいるダークネスブラックと対峙するために身構える。

 しかし、視線の先にはその人物がどこにもいない。一体どこに消えたというのか。ただ、並々ならぬ殺気を感じてコンプリートがその先へと向き直す。

 

 

 

 

 

「────!!」

「うぐ……っ」

「コンプリート!」

 

 

 

 瞬間、ダークネスブラックの無言の拳が両腕で防御の構えをとったコンプリートに突き刺さる。吹き飛ばされまいと足に力を入れ踏ん張るが、それ以上に向こうの勢いに押されてしまう。

 

 

 

「……」

「……っ、やだぁ向こうもがっつり本気を出してきたよ。前よりも殺意増し増しだし」

『一体あっちの私に何が起きてるのよ!?これもネオフュージョンに力を与えられた影響!?』

「力もらっただけでこんなに治安が悪くなる?……なるわぁ……」

 

 

 

 他の闇の使者からの話でダークネスブラックは眠っていたと聞いていたのに、寝起きとは思えないようなキレキレな動きと殺意の高さにコンプリートが困惑している。

 ネオフュージョンから力を与えられるだけで内面にも影響が出るのかとも疑ったが、前回前々回のときに対峙した闇の使者の暴走具合ならそっち方面にも影響は出るかとすぐに納得する。

 

 

 

『それに、世界を壊しにきたって……!』

『あのブラック、あいつに何か言われたんじゃ……!』

 

 

 

 プロトキュアの中でもブルームとドリームが、先ほどダークネスブラックが言い放った『世界を壊しにきた』という文言が引っかかっているようで、そのことを聞こうとする。その理由はなんとなくだが、ネオフュージョン絡みだろうと察せてしまう。

 しかしダークネスブラックが「お前と交わす言葉はない」とでも言わんばかりの勢いで攻撃を手を緩めない。

 

 

 

「コンプリート!大丈夫!?」

「一応……!!」

 

 

 

『CureWeapon!Lovely!』

 

 

 

 全く相手にされていなかったブラックに心配されつつも、コンプリートは後ろ手にラブリーショットガンを構え、ピンクの光の弾丸を数発放つ。弾丸はすぐに避けられてしまうも彼女の隙を作ることには成功し、コンプリートは反撃のチャンスを掴むことになる。

 

 

 

『CureWeapon!Dream!』

『PowerCharge!Marine』

 

 

 

海風に揺れる希望(クリスタルダイナマイト)ッ!!」

 

 

 

 ショットガンからドリームランスへと持ち替え、水色の光を纏った鋭い剣先をダークネスブラックの方に突き出す。向けられた側は防御の構えを取るが、剣先は彼女の目の前で止まる。

 瞬間、水色の光が急速に集約され光の大爆発を引き起こす。まるでパイルバンカーのような岩石をも砕く勢いで放たれた爆発に、ダークネスブラックもコンプリートも大きく吹き飛ばされる。

 

 

 

「こ、コンプリート!?」

「あー大丈夫!……あたしも勢いに押されちゃった」

「……っ」

 

 

 

 爆風による土煙が立ち込める中、両者ともに体勢を直して再びお互いに対峙する。しかしダークネスブラックは助けに行こうと身を乗り出していたブラックの方に標的を変えると、そちらの方へと飛んでいく。

 

 

 

「……っ!!きゃあ!?」

「ブラック!!……っ!?」

 

 

 

 自分が突然標的にされたことに油断し、ブラックが同じ顔をした闇の使者の拳の勢いを相殺しきれず、追撃の回し蹴りを喰らって大きく吹き飛ばされてしまう。ホワイトが助けに入ろうとするが、彼女の相方でもあるというのに容赦無く黒い雷撃を放ち威嚇する。

 

 

 

「しま……っ!?」

「……」

 

 

 

 ダークネスブラックは、先ほどの重い蹴りによって意識を飛ばしてしまったブラックを担いで、二人の元から飛び去ってしまう。

 

 

 

「ブラック!!」

『嘘!?連れて行かれた!?』

「まずい前と逆のことが起きてる……」

 

 

 

 前回はホワイトが連れ去っていったが、今回はブラックが連れて行かれたためにコンプリートが若干の焦りを見せる。

 何しろ今のダークネスブラックは『世界を壊しにきた』とかネオフュージョンに力を与えられたとか、明らかな不穏要素が散りばめられているのだ。今の彼女なら、この世界のプリキュアにどんな危害を加えようとするのかが想像できてしまう。

 

 

 

『CureWeapon!Blossom!』

 

 

 

 連れて行かれたブラックを探し出すため、ブロッサムミラーの力で居場所を捜索する。鏡面から光が溢れるが、その光は枝分かれしてあらゆる方向を指している。

 

 

 

「!?」

『ぶ、ブロッサム!?どうしたの!?』

『おかしい……あの人の気配じゃなくて、ネオフュージョンの気配しか感じられないんです……!』

「そ、それってつまり……!」

『ザケンナーッ!!』

「!!」

「上……!?」

 

 

 

 ブロッサムが異変を訴えた直後、上空からはザケンナーの姿をした欠片たちがこちらに向かって降ってくる。

 

 

 

「嘘!?どうしてあんなに大量のザケンナーが!?」

「あっちの方に飛んでいったなら、ひとまずあっちに向かって走ろう!」

 

 

 

 どうやらあまりの気配の多さとダークネスブラックが何かを仕掛けたせいか、本来の彼女達の気配をたどれなくなっているようだ。

 二人は欠片の攻撃を避けながら、おそらく彼女達が飛んでいったであろう方向へと走り出す。

 

 

 

『そんな、どうして……!!』

『お、落ち着いてブロッサム!』

『他のプリキュアの力を纏わせたら、もしかすると……!』

『でも誰の力を!?』

「こういうのが得意そうな子というか、……あ」

 

 

 

 焦るブロッサムを落ち着かせつつ、プロトキュア達はいつものように他のプリキュアの力を纏わせて強化すれば、一直線にあの人たちの居場所を探せるのではと思いつく。しかし、肝心の誰の力なのかは思いつかない。

 コンプリートは欠片の攻撃を避けつつ、一緒になって考える。今自分たちは、ダークネスブラックによって連れて行かれたこの世界のブラックを探し出すためにこうして走っている。

 

 

 

 ふと、コンプリートの頭の中にとある白いプリキュアの姿が思い浮かぶ。

 

 

 

 

 

『PowerCharge!Echo!』

 

 

 

『え……!?』

「エコー、お願い。ブラックがいる場所を見つけて!」

 

 

 

 ブロッサムミラーが、真っ白な光を纏う。さまざまな方向を指し示していた光は一つの柱となって重なり合い、一つの方向を指した。それは、今自分たちが向かっている場所よりも東に逸れた方向。学校から少し離れた場所。おそらく、ビルが立ち並ぶ市街地の方だ。

 

 

 

『エコーの力で、こんなことができるんだ……!』

『これなら、すぐに見つけられますね!』

「ホワイト!あっちにいるみたいだよ!」

「わかったわ!……待っててね、ブラック……!」

 

 

 

 ブラックの無事を願いながら、二人はビル街の方へと駆け出していくのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「────……っ」

 

 

 

 コンプリートとホワイトが走り出した一方、連れて行かれたブラックが目をさます。妙に肌寒さとコンクリートの固く冷たい感触で、落とされた意識が戻ってきたらしい。

 辺りを見回しても何もなく、真っ暗闇だけが包み込んでいる。ここには、ブラック一人しか存在していないようだった。急な孤独感が、彼女の心を不安にさせる。

 

 

 

「ここは……、っ、そうだ……メップル!メップル!」

「無駄よ。いくらメップルでもこんな闇の空間の中じゃ起きていられないわ」

「その声は……!」

 

 

 

 キャリーの中の妖精に呼びかけても反応しないところ、誰かの声と共にもう一人現れる。その人物は、自分を連れ去っていった張本人である闇の使者・ダークネスブラックだった。

 

 

 

「アンタは確か、闇の使者よね!?アンタ一体、私だけ連れ去ってどうするつもり!?あのキュアコンプリートっていう子が目的なら、なんで私やほのかも巻き込まれなきゃいけないのよ!」

「うるさい。一気に喋り倒さないで」

「う、ご、ごめん……」

 

 

 

 混乱するブラックに対して苦言を呈しつつも、ダークネスブラックは澱んだ紅い瞳で淡々と彼女に答えを告げる。その目は確かにブラックを見ているはずなのに、虚ろで本当に彼女を見ているのかが怪しく思えてしまう。

 

 

 

この世界(・・・・)を壊してしまえば、キュアコンプリートだって絶望してしまうでしょう?」

「せ、世界を壊す……!?アンタ、一体何を言って」

「あなたにはわからないでしょ?わかるわけがないよね。それに私は……」

「っ!?」

 

 

 

 いつの間にかダークネスブラックが顔を近づけていた。やはり虚ろな紅色の瞳が、払拭しようとしていた不安感を煽り、ブラックを余計に怖がらせている。

 

 

 

「────自分自身(アンタ)が一番、大っ嫌いなの」

「うぅ……っ!?」

 

 

 

 吐き捨てるように放たれた一言は、ダークネスブラック自身の内情に秘めていた自分への真っ黒な感情で研がれた、まさに鋭利な言葉のナイフ。相方も仲間も世界も何も守れず、諸悪の根源に縋ることしかできなかった弱い自分への恨み言。この世界のブラックには全く関係がないことなのに、この闇の使者は彼女への八つ当たりのように突き飛ばす。

 

 言いたかったものを吐き出してもこの苛立ちを完全に払拭することはできず、そのまま彼女はその場を離れていく。

 

 

 

「……っ!?どこへいくの!?」

「こんな暗い場所でひとりぼっちにされたら、怖がりな私なら耐えられないでしょうね」

「ま、待って!……ああもう!」

 

 

 

 ブラックの呼び止めも虚しく、ダークネスブラックは暗闇の奥へと消えていった。

 再び一人取り残されてしまったブラックは、心に積もり続ける不安感を拭うためにも、この真っ暗闇の空間の出口を探し回るのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『と、止まってください!』

「……!」

 

 

 

 欠片の追跡を振り切り、連れて行かれたブラックを捜索中のコンプリートとホワイト。禍々しい色をした曇り空の下。ビル群が立ち並ぶ市街地の中を走り抜けていた途中、プロトブロッサムの声で立ち止まる。何かを見つけたようだ。

 

 よく見ると、ブラックの居場所を指しているブロッサムミラーからの光が、緩やかに下を向いているのだ。なんとなく地の下へ潜れと言っているようにも見える。

 

 

 

『光が地下の方に伸びてます!』

「本当だ。もしかして地下鉄に乗った?」

『そんなゆるい感じだったっけ……?』

「地下鉄?西急電鉄の駅なら近くに……」

『ザケンナー!』

 

 

 

 ホワイトが何か心当たりがあったようで、地下鉄というよりも、もぐら駅とも呼ばれる地下に存在する通常の電車の駅の方へと潜れそうな出入り口へと向かう。しかしそれを見越していたのか、足止めのために出現させたであろうザケンナーの姿をした怪物達が目の前に現れコンプリート達の方へと向かって襲いかかってくる。

 

 

 

「嘘じゃんもう」

「そこを……どいてッ!!」

 

 

 

 反撃に出ようとしたコンプリートを差し置いて、ホワイトは大きく前に出て、一体の欠片に対して鋭い蹴りを喰らわせる。吹き飛ばされた欠片をよそに、もう一体の欠片がホワイトを叩き落とそうと大きな腕を振り落とす。

 しかし、ホワイトはそれを両手で受け止め掴み、なんの躊躇いもなく大きく投げ飛ばしたのだ。

 

 

 

「……こっちはブラックを探している最中なの、邪魔をしないでくれるかしら?」

「わぁ……」

『ほ、ホワイトが、ものすごく怒ってる……!』

 

 

 

 ────ああ、この人が一番冷静そうに見えて、全然ちゃんとブチギレてら。

 

 

 

 前に『ふたりはプリキュアMaxHeart』の世界へ訪れた際にはホワイトが連れ去られたことがあったのだが、その時はブラックが一番わかりやすく取り乱してすぐに探し出しにいった覚えがある。

 今回は逆になったパターンではあるが、ブラックが連れ去って行かれてもなるべく冷静に対応して一緒に探している。しかしてその戦い方は、内心ではとても驚いてもいるしとても怒っているのがよくわかるくらいの爆発力であった。

 

 

 

 コンプリートは「一番怒らせちゃいけないタイプの人を怒らせたな」と、一番相方のことを理解しているはずのダークネスブラックを若干哀れに思いながらも電車の乗り場の方へと前を走るホワイトを追いかけるのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 改札口を飛び越え、階段を下っていけばそこは電車を待つホームが続いている。まるで時でも止まっているかのような静けさの中、ブラックの居場所を指す光は、トンネルの向こうを指している。

 

 

 

「あの奥に……!」

「行こう!」

 

 

 

 二人は躊躇せず線路の方に飛び降り、光が指しても遠くが見えないトンネルの奥の方へと走り出す。目的の場所が近づいているのか、プロトキュア達の表情が先ほどよりも険しい。

 

 

 

『……その奥でネオフュージョンの気配をたくさん感じる……!コンプリート!ホワイト!気をつけて!』

「やっぱりこの奥?奇跡的に電車が止まっているとはいえ随分と危険すぎない?」

「ブラック……ブラック!」

『目の前に何かあるよ!!』

 

 

 

 しばらく走っていると、トンネルの中にしては不自然な広い空間にたどり着く。まるで自分たちの到着を待ち侘びていたかのように広がるそこには、数えるのも億劫な夥しい数の欠片と、中心地点の大きく真っ黒な闇のドーム。ブロッサムミラーからの光は、ドームを指している。

 

 

 

『あの中です!』

「ウッソでしょ?あの中に閉じ込められてるの?」

「あら、随分と早かったのね」

「その声は……!」

 

 

 

 真っ黒なドームの前で自分たちを待っていたのだろう。欠片達が道を開けた先、真っ黒な翼を生やしたダークネスブラックがその姿を現す。相変わらずこちらを敵意溢れた虚ろな瞳で睨みつけている。

 

 

 

「その中に、ブラックがいるんだね?」

「ええ。……でも今頃、誰もいない真っ暗な空間に耐えきれずに弱ってる頃でしょうけど」

「……!」

 

 

 

 やはり連れて行かれたブラックは、欠片の海を乗り越えた先にあるドームの中に閉じ込められているようだ。このダークネスブラックは、自分の存在に対して並々ならぬ嫌悪感を抱いているようだ。

 相方の居場所を知ったホワイトは、今すぐ助けに行きたい思いで先走りそうになるが、このまま突っ切ればどうなるかわかっているので冷静に身構える。

 

 

 

「この世界の私()、ほのかがいないと何もできないのね……」

「そんなの、誰だってそうよ!……私だって、独りではできないこともたくさんある。けれど、なぎさがいるから……大切な誰かがいるから、一人の時より、何倍も強くなれるの!」

「あたしも、ラブリー達ありきで戦えてるようなもんだしねえ」

「綺麗事を……!!」

『ザケンナーッ!!!』

 

 

 

 ダークネスブラックの言い分に反論するも綺麗事とバッサリ切られ、同調するように欠片達が咆哮を上げる。

 

 この際、綺麗事でもなんでもいい。人間は皆、誰かの支えがあって生きていられるのだ。本当の意味での独りで、生きていられないのは世の常。そのことは、ダークネスブラック自身が一番(・・)理解しているはずだ。

 

 

 

「そんなにこの世界の私を助けたいなら、やってみせなさいよ」

『ザケンナーァァァッ!!!』

 

 

『CureWeapon!Bloom!』

『PowerCharge!March!』

 

 

 

 剣を振り回して放たれた風を纏った光の刃が、迫る欠片達を吹きとばし、あの真っ黒なドームへの道を作る。

 

 

 

「ホワイト、ブラックを助けに行って!この欠片と闇の使者は、あたしが相手するよ」

「!!、けどあなたは……」

「大丈夫。あの闇の使者にとってあたしは因縁の相手みたいだし。……ほのかちゃんは、ほのかちゃんの友達を助けてあげて!」

「わ、わかったわ!あなたも気をつけてね!」

 

 

 

 ホワイトをドームの方へ行かせ、コンプリートは大量の欠片を一人で相手することになる。いや、彼女にはステフォンの中のプリキュア達がついているので、厳密には一人ではない。コンプリートは髪留めのリングを壊してその力を解放すると、自分を押し潰そうと襲いかかる大量の欠片の波を見上げ、キッと眼差しを鋭くする。

 

 

 

『CureWeapon!Bright!』

『PowerCharge!Fortune!』

 

「一気に飛ばすよ!星屑月華(スターライトスプラッシュ)ッ!!」

 

 

 

 ブライトブレードに持ち替えたと同時に紫色の星の光を纏わせ、星屑のような小さな流星と共に光の斬撃が放たれ、迫り来る欠片達を一掃する。そんな中で、ダークネスブラックはコンプリートに向かって飛びかかり、黒い雷を纏った拳を叩き込もうとする。

 

 

「!!」

「……前よりも強くなったわね?」

「それは君もじゃないの……?」

 

 

 

 迫り来る拳を大きな刀身で受け止め、ブラックからの攻撃の直撃を防ぐ。ネオフュージョンから力を与えられている影響なのか、少し前に交戦した時よりも手応えが明らかに違う。いくらコンプリートも強くなってきたと言っても、油断をしていれば彼女にリードを取られてしまう。

 このままではずっと膠着したままだと気付いたのか、ダークネスブラックは距離をとり、再び勢いをつけてコンプリートの方へと向かっていく。

 

 

 

「ちょっとごめんね……」

「────ッ!?」

 

 

 

 しかしコンプリートはホワイトのところへ合流したいと思ったため、ブラックの拳をかわして走り出す。攻撃をかわされた彼女は勢いのままに通り過ぎてしまうが、すぐに振り向いてコンプリートに向けて黒い雷撃を数発放つ。

 コンプリートに向けて放たれた雷撃は周囲を破壊しつつ、時折弾かれつつもコンプリートを追い詰めようとする。

 

 

 

 一方のホワイトは黒いドームの方にたどり着き、その中へと入ろうとする。

 

 

 

「……っ!?」

 

 

 

 しかし、ドームは外側からの侵入を許さず、ホワイトが触れようとした瞬間、バチバチと静電気のような黒い稲妻を走らせながら抵抗する。

 

 

 

「ブラック!ブラックいるの!?返事をして!!」

「ホワイト!ちょっとよけてて!」

 

 

 

 そこへ、フォーチュンの力を纏ったままのブライトブレードを構えたコンプリートが向かってきた。彼女は星の光を纏った大剣をドームに向かって振り落とすが、先ほどよりも強い稲妻が、ドーム破壊を拒んでコンプリートを吹き飛ばす。

 

 

 

「うぐぅ……!?」

「コンプリート!」

『そんなぁ!?これでも穴が開かないの!?』

「無駄よ。内側からしか出られないようにしたんだから。……この世界の私は、この中から出るのを諦めたのかしらね」

「そんなことは……!」

「君ちょっと自分のこと舐めすぎじゃない???……君がなんと言おうとも、こっちからの干渉は諦めないよ!」

 

 

 

 そう言いながら、コンプリートは諦めずに大剣をドームに振り落として、ホワイトは自分の手が傷つくのも気にせず無理やり出口をこじ開けようとする。それでもドームは彼女達の干渉を嫌い、何度も飛び掛かる2人を何度も弾き飛ばす。

 

 

 

「ぶ、ブライト大丈夫……?何度も一緒に弾き飛ばされてる気がする」

『私たちも変わるよ!無理しないで!』

『私は大丈夫!大丈夫だけど、どうやったら穴が開くの……?!』

『……せめて、私もキュアウェポンとして戦えたら……!』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『CureWeapon!Black!』

 

 

 

 その時、ステフォンの中で悔しげに呟いたプロトブラックが光り輝き、画面の中から溢れ出す。

 光はコンプリートの両手にまとわりつき、ピンクのハートが煌めく黒いアームカバー────それこそキュアブラックのものと同じようなものに変化する。

 

 

 

『……え?嘘!?私、本当にキュアウェポンとして召喚されちゃったの!?』

「……!?アームカバー?」

「……この力で助けたい人の手を掴めってこと?……やってやろうじゃない?」

 

 

 

『PowerCharge!Echo!』

 

 

 

 一度ブライトをステフォンの中に待機させた黒い両手には、白く優しい光が溢れ、コンプリートは真っ直ぐに真っ黒なドームの方へと歩き出し、手を伸ばす。

 相変わらず黒い稲妻が干渉するもの全てを弾き飛ばそうとするが、先ほどよりも両手は痛くない。むしろ弾き飛ばされることなくドームに触れることができた。

 

 

 

「……!?」

「これなら……!」

 

 

 

 驚くダークネスブラックをよそに、コンプリートは迷いなく両手でドームを掴み、無理やり引っ張って切り開こうとする。ドームを包んでいる闇の力は優しい光によって浄化され、ビリビリとそこに穴を広げていく。

 

 

 

「ほのかちゃん!しばらく開けてるから、なぎさちゃんのことお願い……!」

「……!わかったわ!」

「させない……!」

 

 

 

 ホワイトはコンプリートに促され、目の前に広がる黒い闇の中へと飛び込んでいく。逆にまさか開けられるとは思っていなかったダークネスブラックはすぐに気を持ち直し、ドーム内のブラックが救出されるのを阻止するためにコンプリートの方へと飛んでいく。

 

 

 

 

「……!?ああもう今それどころじゃないのに!」

『コンプリート!行くわよ!!』

「オッケー!」

 

 

 

『PowerCharge!Rosetta!』

 

 

 

 迫り来るダークネスブラックの拳を、コンプリートはアームカバーを纏った両手をクロスさせて防御の構えをとる。瞬間目の前に四葉の形をした光の壁が展開され、ブラックの拳の直撃を防いだ。

 

 

 

「……ッ!この……ッ!!」

『カッチカチのロゼッタウォールだ!』

「ハートがこう言ってるんだから、いくら強化されたとはいえ、カチカチの壁までは打ち破れないでしょ……!」

「〜〜〜ッ!!」

 

 

 

 無理やり壁ごと押し切ろうとするが、ブラックのキュアウェポンの影響なのかはともかく全く打ち破られる気配はない。このままでは埒が開かないと思ったのか、ダークネスブラックは一度距離を取り、拳と蹴りの連撃でコンプリートを追い詰めようとする。

 それでもコンプリートは彼女の攻撃を喰らわないように、攻撃を避けたり受け止めたりして渡り合う。

 

 

 

「とりあえずこれはブラックグローブと名付けよう。……二人とも、大丈夫かな……」

『大丈夫。あそこの二人に任せましょう。あんたは目の前の相手に集中して!』

「随分と信じてるじゃん」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……っ」

 

 

 

 真っ暗闇の彷徨って、どれくらいの時間が経ったのだろう。景色も変わらず、何も聞こえずの空間の中、閉じ込められたブラックは出口を探して彷徨い続けていた。歩みを止めたらその瞬間、自分の中で膨らみ続ける言いようのない不安感で押しつぶされそうなのだ。

 

 しかしその歩みも、余計な疲労感で脚がもつれ転んだことで止まってしまう。

 

 

 

「誰か……」

 

 

 

 立ち上がりたいのに、疲れと不安と孤独感が錘となって、全く力が入らない。真っ暗な空間の中で虚しく響いたつぶやきも、誰も拾ってくれない。寂しさが心を支配して、これ以上頑張らせてくれない。

 私は、このままここから出ることができなくて、ここで一人死んでしまうのではないだろうか。寂しくて死ぬだなんて、兎じゃあるまいし。

 

 

 

「……ほのか……っ」

 

 

 

 相方の名前をポツリと呟く。今彼女は、コンプリートと一緒に連れて行かれた自分を探している途中なのだろうか。

 向こうが必死に探しているというのに、ここで立ち止まったままでいたくない。まだ、諦めちゃいけない。ほのかたちが待っているのに、自分が先に諦めてしまってどうするんだ。

 

 ……そう思っていないと、体に力が入らない。

 

 ふと遠くの方で、一瞬だけ外の光が見えた気がする。恐怖感から幻覚まで見え始めているのだろうか。

 

 

 

 

 

「───!なぎさ……!!」

「……?」

 

 

 

 自分の名前を呼んでいる相方の幻聴まで聞こえてきた。それも、どんどん近くで聞こえてくる。流石に何かおかしいと思って、ブラックは倒れたまま、ゆっくりと顔を上げる。

 

 光が見えたところには、真っ白な姿の見覚えのある人物がこちらへ向かって走ってくる。ああ、その人物こそ、自分を助けにきた相方じゃないか。幻覚でも、なんでもない。正真正銘のキュアホワイト(雪城ほのか)が、目の前にいる。

 

 

 

「……ほの、か……!ほのかぁ……!!」

「なぎさ……!よかった、無事だったのね……!」

 

 

 

 息を切らして現れたホワイトは、転んだままのブラックが伸ばした手を握りしめ、彼女を支えて立ち上がらせる。気が狂いそうな真っ暗闇の中で、ようやく希望の光とも言えるような相方が目の前に現れ、ブラックはほっとして彼女を抱きしめる。

 

 

 

「……怖かった……!」

「なぎさ……私も、やっと会えてとても安心したわ……!」

 

 

 

 ずっと堪えていた涙が溢れ出し、感動の再会となっているが、ここから彼女達は脱出しなければならない。コンプリートは現在、ダークネスブラックからの妨害を受けて向こうの出口を気にしていられない状況になっていることを、ホワイトは知らない。

 もちろんホワイトも、ダークネスブラックに妨害されていそうだとなんとなく察していた。しかしホワイトは、その状況を打破できる方法をなんとなく察していた。彼女がヒントになり得るようなことをこぼしていたのだから。

 

 

 

「……ブラック、ここから出るわよ!」

「出るって、どうやって……」

「このドームは、外側からじゃ干渉できないって言っていたの。コンプリートのおかげで入ることはできたけど……内側からなら、何をやっても許されるわよね?」

「……そういうこと!?でもできるの……?……いや、やるしかないよね!」

 

 

 

 ようやく元気を取り戻したブラックは、ホワイトの言い分を信じる。そして、その手を繋いでもう片方の手を点高く掲げる。

 

 

 

「ブラックサンダー!」「ホワイトサンダー!」

 

 

 

 手を繋ぎながら、もう片方の手に闇を貫いて黒と白の稲光が落ち、彼女たちに力を与える。

 

 

 

「プリキュアの美しき魂が!」

「邪悪な心を打ち砕く!」

 

「「プリキュア・マーブル・スクリューッ!!」」

 

 

 

 放たれた黒と白の螺旋の雷撃は、闇に満ち溢れた真っ暗な空間を天高く貫き、内側からドームを破壊しようとする。

 

 

 

「「はぁぁぁぁぁぁッ!!!!」」

 

 

 

 突き刺さった光は、ドームの天井にバキバキとヒビを入れていく。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はぁっ!!」

「このっ!」

 

 

 

 一方のコンプリートは、ダークネスブラックとの一騎打ちに巻き込まれて、闇のドームの中に入って行ったホワイトどころの話ではなかった。新たなキュアウェポンであるブラックグローブの力で、比較的苦手としていた肉弾戦の荒さをカバーできているものの、ダークネスブラックの方が若干上手だったようでうまく決定的な攻撃を与えられずにいた。

 

 

 

『!?今の音は!?』

「……!?」

「まさか」

 

 

 

 ドームの方で何かが壊れる音がして、二人は攻撃の手を一度止めて振り向いた。

 

 ドームの天井からは黒と白の螺旋の雷撃が放たれ、ヒビが入りドームが音を立てて崩壊していく。その中から現れたのは、ブラックとホワイトの二人であった。

 

 

 

「残念だったわね!なんとか脱出できたわよ!」

「……ッ!?」

「…巡、あんたが手伝ってくれたんだね。ありがとう」

「なぎさ……!!やっと苗字呼びから直してくれたんだね」

「そ、そっち拾っちゃうの!?」

『まあ巡ちゃんだし……』

「……ッ!!」

 

 

 

 なんとか二人の間の謎の壁が取っ払われたことで、プリキュア側がようやく優勢に立つことになる。それでもダークネスブラックはすぐに気を取り直し、コンプリートの方に向かって攻撃の手を強める。

 あのブラックの手には真っ黒な雷撃がまとわりつき、またしてもあの雷撃を放って終わらせるつもりだ。

 

 

 

「この……っ!!ダークネス・マーブルスクリュー────」

「コンプリートッ!!」

「大丈夫。あたしもこれでやられてるほどのメンタルじゃない……!」

 

 

 

『PowerCharge!White!』

 

 

 

 ブラックグローブに、向こうとは反対の真っ白な雷撃が拳にまとわりつき、コンプリートも拳を構えて飛び出す。

 

 

 

「────マックスッッ!!」

黒白雷光拳(マーブルパンチ・マックス)ッッ!!」

 

 

 

 ダークネス・マーブルスクリューの時よりも威力の高い真っ黒な雷撃に向かって、コンプリートが雷光を纏った拳を叩きつける。もちろん砲撃に拳が叶うはずもなくコンプリートが押されてしまうが、それでもコンプリートが少しずつ押して突き進んでいく。

 

 

 

「……ッ、が……ッ!?」

「うぅ……このぉ……ッ!!」

 

 

 

 コンプリートは黒い闇の雷撃を弾きながら、真っ白な光の拳を振り翳してダークネスの方へとどんどん向かっていく。いよいよ彼女の雷撃を振り切り、その拳を振り下ろそうとした。

 

 

 

「────えいっ」

「!?」

 

 

 

 しかしコンプリートは、その拳をダークネスブラックに叩きつけることなく、猫騙しのように顔面スレスレで外して彼女の攻撃の手を強制的に止めさせる。

 放たれていた雷撃は止まってしまい、ダークネスブラックは拳を避けたせいで尻餅をついてしまう。

 

 

 

「……ふぅ」

「……どうして攻撃を外したの」

「……」

「この世界を壊そうとした相手よ?この世界の自分にも酷いことして、あんただって腹わた煮え繰り返って……」

「別にあたし、今は君たちと戦う道理がそこまでないんだよね。それに、君の仲間が君のことを探しているって言ってたし」

 

 

 

 なぜ自分に攻撃を当てなかったと不満を垂らしているが、コンプリートにとっての今のダークネスブラックは、彼女の仲間が探していた重要人物でしかない。やっていることはネオフュージョンに言われてやらされているのだろうとなんとなくわかっていたし、戦う理由がないならわざわざ攻撃を当てる必要もないのだ。

 それよりもどうしてブラックがここにいるのかが気になっていた。

 

 

 

「……ねえ、君が眠っている間に色々大変なことがあったんだよ?」

『そうそう!あんたの仲間二人くらい、ネオフュージョンに力を与えられたせいで大怪我したって言ってるし!』

『闇の使者の私たちも、あなたのことを探してるんだよ!?』

「ブラック!お願いだから帰ってきてあげて!」

「……そう」

 

 

 

 プロトキュア達の言葉にも表情を歪ませないどころか、どこか鈍い反応だけを返して、いまだに残っていた欠片と共にダークネスブラックはどこかへと消えていった。

 消える前に手を伸ばそうとしたコンプリートだったが、その手は虚空を掴んでしまう。

 

 

 

「……あの私、なんか様子おかしくなかった?」

『おかしいってか、何か目つきも感じるものも変だったし……』

「何かしらね、この嫌な予感は……」

『……あっちの私たちみたいにネオフュージョンの力で変なことになってるんじゃ……』

「……」

 

 

 

 果たしてダークネスブラックに、何があったというのだろうか。

 

 

 

 どこか不穏な嫌な予感だけが残ってしまい、コンプリートは彼女の手を繋ごうとした自身の手を見て、少しだけ悔しそうな顔をするのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『……追い返されてしまったが、前哨戦(・・・)としては上出来だな……』

「……」

 

 

 

 ネオフュージョンの世界の漆黒の城。その最深部にて、ダークネスブラックはネオフュージョンによって呼び出されていた。世界を壊せなかったことを咎められると警戒していたが、特にそんな様子もなく奴は淡々と話を進める。

 まだ、仲間の元に姿を見せていない。

 

 

 

『まあいい。……これは貴様の為の戦いなのだから……。それに目的は、あの世界ではない』

「……」

 

 

 

 ネオフュージョンの脳裏に過ぎるのは、真っ白な装束と桃色の瞳を持つ忌々しき騎士のプリキュア。あのプリキュアのせいで自身は深傷を負っていまだに本調子ではないのだ。だからこうして、闇の使者の一人であるダークネスブラックにも手伝ってもらっている。

 様々な世界を壊し、暗闇に陥落させれば、その世界は絶望や苦しみといった負のオーラで包まれる。その負の力を喰らいながら自身の力を取り戻そうとしているという。

 

 あのキュアコンプリートという人間が暮らす世界も、”気になったから欠片を放った”という口実で、あわよくばその世界すらも真っ暗闇にしてやろうという魂胆だった。しかし、キュアコンプリートが自身が思っている以上の光の力で追い払ってしまった。

 あれほどの力は、おそらくあの時の騎士と匹敵する程度であろう。さすがはあのステフォンも持ち主というべきか。

 

 

 

 それでも、ネオフュージョンにとっては今はどうでもいいことだ。やられてしまったものは仕方がない。

 

 

 

『かなり前に、とある世界に我の欠片を放ったのだが……その欠片は一瞬にして潰えてしまったのだ。その世界で、どうやらキュアコンプリートが誕生したようだな』

「……」

 

 

 

 ダークネスブラックは答えない。正確に言えば、自身の力を分け与えたついでに、口答えできないように少々洗脳のようなものを施したのだ。余程のことがなければ目覚めることはないだろうし、目覚めたとしても自身が犯した所業を思い出して勝手に絶望してしまうだろう。

 

 答えない代わりに、虚ろな紅い瞳を僅かに細める。その微弱な反応に好意を示しつつ、ネオフュージョンは話を続ける。

 

 

 

『貴様には是非、その世界へと向かってほしいのだ……世界を壊すために、貴様にとっての仇を討つために……』

「……そこで決着をつけろってこと?」

『ほう……話が早いじゃないか……』

 

 

 

 ようやく発したブラックの第一声は、あんなに自身へのストレスとなっていた世界の破壊をまるでものともしないような言葉だった。ブラックの目の前に出現したのは、真っ黒な闇が渦巻くワープホール。

 

 

 

『……他の奴らはいいのか?』

「いいの。あの子達は危険な目に合わせたくないから」

 

 

 

 そう言って、ダークネスブラックは早々にワープホールの奥に続く世界へと進んでいった。ワープホールが消えた後、ネオフュージョンは顔らしき部分で不気味な笑みを浮かべる。

 

 

 

『……あそこまで(・・・・・)してもなお、仲間思いの意識は潰えなかったか……しかし、これはこれで楽しみになってきたな……』

 

 

 

 

 

 ────奴が目覚めた(・・・・)時、どんな顔をするのだろうか?

 

 真っ暗闇の空間内に、一人の怪物の嗤い声が響き渡るのであった。

 

 

 

 

 

続く…

 




次回更新日:8月3日(土)
え?来週から8月なんですか???
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