PrecureStageON!   作:主氏レム

42 / 54
お盆ですね


第39話:水晶の世界へ!闇の使者の守りたいもの

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『え、えぇぇぇ!?投げ出された!?』

『で、今はなぎささん、巡ちゃんの世界にいるんだ!?』

『そういうことが……そっちのあなたもなかなか大変ね……』

「は、はい……」

 

 

 

 ここは巡の世界、心野宮。巡の家の巡の部屋の中。この世界であれば本来なら“アニメキャラクター”としての存在であるはずの美墨なぎさが、眠る巡の代わりにステフォンに映る画面の奥にいるプリキュア達と会話している。

 なぎさにとっては初めましてだが、プロトキュア達にとっては久しぶりの相手だ。相変わらず魂だけの存在になってしまったがために半透明ではあるが、結構元気そうだ。

 

 

 

 どうしてこうなっているのかという詳細をなるべくわかりやすく説明すると、なぎさが本来いるはずの世界で闇の使者が放ったとされる大量の欠片の相手をしていた最中、キュアブラックの姿をした闇の使者によって、巡ごと一緒に本来の世界から追い出されてしまったのだ。

 当の巡は昨日まで引いていた風邪を重めにぶり返して動けない中、どうやって元の世界へ戻ろうかと困っていたところ、ステフォンが突如として『水晶の世界』と呼ばれている別のオールスターズの世界と通話を繋げたようだ。

 

 

 

 なぎさがことのあらましを聞いているとその世界でも何やら不穏な動きがあって、若干荒れ果てた世界になっているらしい。それが原因で闇の使者という存在が生まれたというが……それはまた時間がある時に見返すといいだろう。

 

 

 

「その巡って子も、昨日まで風邪引いてたみたいで……」

「今はとにかく安静に眠ってもらってるよ!」

『そうなんだ……』

『なんや、タイミング悪い時に話しかけてもうたな……』

「ううん。私たちもしばらくそっちに行けなかったから、みんなも元気そうでよかった!」

『一応アタシらは元気っしゅ』

 

 

 

 向こうの世界では、突如12人のプリキュアが眠る水晶が淡い光を放ち、それに触れた時に近くに浮いていたガラスの破片のような光の欠片に、巡の世界に投げ出されたなぎさの顔が映し出されている様だった。

 

 おそらく、ネオフュージョンに力を与えられた2人の闇の使者を止めたことで、ステフォンの中にいるドリームが現在の姿を取り戻したり、ブルームがブライトの力を思い出したりしたことで、あちらの世界でもなんらかの変化はあったようだ。

 

 

 

「あ!よく見るとそっちのルージュ達の見た目も変わってる!」

『ようやく見慣れた姿になれたよ……』

『あっちの姿も好きだったんですけでどねぇ……』

「ということは、イーグレットもウィンディになれたりするの?!」

『多分、ブルームがブライトに変身すると私もつられて変身するみたいで……』

「え、え!?それは結構大変じゃ……使う時気をつけないと……」

『それ多分巡ちゃんの問題じゃないかなー……?』

「あ、あんた達もあんた達で色々あるのね……」

 

 

 

 割と緩やかな空気が続いているが、なぎさは向こうがあの世界への侵入を拒んでいる以上、今の所元の世界に行ける手段が全くないという大ピンチに置かれていることに変わりはない。

 向こうにいるプリキュア達に相談しても対処法はわからず、待つしかないといわれてしまい肩を落として落胆してしまう。

 

 

 

『向こうに帰れなくなっている以上、今は待つしかないわね……』

『ご、ごめんなさい、あんまり力になれなくて……』

「ううん、私こそ無茶言ってごめん……そっかあ待つしかないかあ……」

 

 

 

 待つにはいいとしても、自分がこれからどこに住めばいいのか、とりあえず巡の家にいてもいいのかもわからないため頭を抱えてしまう。

 

 その時、救いの手か更なるピンチか、下の玄関の方で鍵が開いてドアが開く音がした。

 

 

 

「……ただいまー」

『……あら?誰か帰ってきたみたいね?』

「この声は、幸さんだ!学校から帰ってきたかも!」

「さちさん???」

「巡のお姉さんだよ!……そうだ!幸さんに巡ちゃんが風邪ぶり返したって伝えないと!」

「彼女妹だったの!?というか伝えるって、私が!?」

『だってなぎささんだけなんだだもん!面と向かって話せるのが!』

「……あれ?誰か遊びに来てるの……?」

 

 

 

 巡の部屋で起きている珍しい騒ぎを聞きつけたのか、幸が首を傾げながら階段を上がろうとする。さすがに今の服装のままでは変な疑いをかけられる気がして、なぎさは巡の部屋を見回す。ふと、彼女の服やら何やらがしまわれているウォークインクローゼットが開けられていることに気づく。

 自分はちょうど巡よりも少し身長が小さい……巡がほのかよりも少し小さいくらいの身長のため、普段彼女が着ない上着程度であれば上から羽織ることはできる。

 

 

 

 なぎさは、苦しさの峠から乗り越えたのか先ほどよりも少し表情が緩んで眠る巡の顔を見て、頷く。

 

 

 

「……巡、ちょっと服借りるわよ」

 

 

 

 

 

「巡、と巡の友達、今いるのかな……?」

 

 

 

 一方、幸の方は友達と一緒にいる巡の邪魔をしないほうがいいのかなと、巡の部屋のドアを開けようかと迷っていた。しかし巡は病み上がり。急に具合が悪くなって何かあったのかもしれないという心配が勝り、「入るよ」と断りを入れてドアノブに手をかけようとした。

 幸が触れようとした瞬間、部屋側からドアが開けられ、一人の少女が姿を見せる。黒いオーバーサイズのパーカーを羽織った巡の友人(?)が、少し緊張した様子で幸の方に飛び出してきた。

 

 

 

 ……記憶にはないのに、どこかで会ったことがあるような少女の風貌に、幸は驚きを隠せない。

 

 

 

「……!?」

「あ、え、えっと!巡のお姉さんですか!?め、巡が熱出して倒れちゃって……」

「熱出して倒れた……?まさかぶり返し……?もしかして、君が看病してくれたの……?」

「か、看病というか、見つけたというか……」

 

 

 

 少女が慌てた様子で巡の容態について話してくれたために幸はすぐに理解し、気を取り直して巡の方に駆け寄るのだった。

 

 

 

(……ふぅ、これでひとまず大丈夫……なのかな……?)

『なぎささんナイス……!』

「うぅ……お願いバレないで……」

 

 

 

 黒いパーカーの少女────慌てて巡の服を借りて変装している美墨なぎさは一息つくのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

第39話:水晶の世界へ!闇の使者の守りたいもの

 

 

 

 

 

<ネオフュージョンの世界 漆黒の城・闇の使者達の大広間>

 

 

 

 

 

 

 突如として自分たちの前から姿を消したダークネスブラックを探して、おそらく数日経った頃だろう。闇の使者達が大広間の方で集まり、お互いに情報を交換しあっていた。

 

 

 

「とりあえずブラックが立ち寄りそうな世界はあらかた探したけど……どこにも形跡は残ってなかったよ」

「今の所欠片を出したような気配はしなかったし……」

「一応世界は絞ったんだけね……」

 

 

 

 ミラクルが、若干げっそりした様子で何かを想像した。彼女の言葉に何かを察したのか、数人の闇の使者が似たような様子で視線を逸らす。

 世界は、人々が選び取った答えの数だけ無数に存在する。なので、何も考えずに全部の世界を調べようとするとまず途方もない時間が必要になるし、まず体力が続かない。本来ならステフォン探しで別の世界に飛ぶのだが、今回はまた別の用事なので、下手なトラブルなんてものは起こせない。

 

 さらに飛ぶ世界によっては、自分たちが知っているもの以上のズレが生じていたり、ネオフュージョンが介入した時よりも深刻な状況だったりすることもあるので、慎重に行かなければならない。

 

 

 

「それに、ラブリーも帰ってきてないし……」

「ラブリーも?……もしかして、ブラックを見つけたけど何かに巻き込まれて……」

「暴発していなければいいけど……」

 

 

 

 もう一つ困ったことに、一緒にブラックを探しているはずのラブリーが、いまだに帰ってきていないのだ。ブラックを見つけたならともかく帰ってきていないのは、何かのトラブルに巻き込まれている可能性が非常に高い。

 もちろん、探しに行った方が早いのだろうが、ネオフュージョンに監視されている可能性があるということもあり、下手に動くことができないのだ。一応何人かがおそらくいるであろう世界を絞り込んではいるようだが、なぜか妨害されて入れないところがあったらしい。確実に怪しいのだが、入ることができないならどうすることもできない。

 

 

 

「……あとさ、最近になって急にあいつに破壊された世界を目にするようになったというか……」

「メロディの言いたいこと、なんとなくわかります。何というか、そういう場所に行き着く頻度が増えましたよね……」

「……」

 

 

 

 ブロッサムとメロディの会話に、その内容に心当たりのあるブルームが若干考え込む。

 

 世界なんて無数に存在するのだから、いくつかがネオフュージョンに破壊されようとも無限に増え続けるし、その世界に辿り着いても稀な事象なので気にすることはあまりない(というよりも、気にしすぎるとどう足掻いてもメンタルが死ぬほど削られる)。

 ブラックが消えてからというもの、その世界を見掛けることが気持ち多くなったような気がしている。もちろんブラックが強制的に奴に加担させられて世界を壊しているという事実を知っているのはほんの一部しか知らない。しかし、それを知らずとも、自ずと察してしまう。

 

 

 

「……そういえば、さっきからドリームの姿が見当たらないけど……」

「ドリームなら、多分だけど別の世界に行ってるかも……」

「え?動いて大丈夫なの!?」

「まあ、激しく動くわけじゃないし……」

「……その口ぶりだと何か知ってそうだね?」

 

 

 

 そういえばドリームもいないなあとホイップが見回してそのことに気づいた。

 

 ドリームは現在、ネオフュージョンに与えられた力を行使した反動でいまだに怪我が治っていない箇所があったり痛がっていたりしている。そのため絶対安静を言い渡しているのだが、どこかに飛んで行ったらしい。

 そして同じく力を使っているブルームに任せていたのだが、許しちゃっている。さらに、どこに行ったのかもある程度知っていそうな言い方をしている。

 

 

 

「……ドリームは多分、“私たちがいた”世界に気分転換しに行ってるんじゃないかな?」

「へ、へぇ〜……え、“私たちがいた”世界……?」

「待って!?いつの間に見つけてたの!?」

 

 

 

 本当は秘密なんだけどねと今更ながらにぬるっと付け足すが、今まで自分たちが本来いるべき世界が今どうなっているのかについてはブラック達からほとんど言及されていなかったので、その話を聞いて驚きつつも途端に興味を持つ。

 

 以前にも二人はちょくちょくその世界へ足を踏み入れていたようだが、入るたびに感じる懐かしい気配が増えていたり、ちょっとした世界の変化があったりした。おそらくステフォンの持ち主であるキュアコンプリートが何かしている。

 

 

 

「まあ、ちょっとびっくりするものもあったし、ブラックがまだ言わないでってお願いされてたけど……もうみんな崩壊した理由知ってるしいいかなって」

「なんて軽いノリ……!」

「ああでも気をつけて!……私やドリームみたいにネオフュージョンの分身が近くにいたら、あの世界に入り込まれるかも……」

「っ!!」

「な、なるほど……」

 

 

 

 おそらく彼女達が他の仲間達にその存在を伝えなかったのは、ネオフュージョンにその世界の存在を知られたときに再び入り込まれたら困るからだろう。

 せっかく見つけた自分たちが生きていたはずの世界が、せっかく元に戻ろうと良い方向の変化をし続ける世界が、再び奴のような悪い誰かに壊されてしまう。そんなことは絶対にさせたくないと、ブラックならそう言いそうだ。

 

 

 

「ドリームに会いに行ってもいいけど、本当に気をつけてね?」

「わかったよ!……って、あれ?ブルームは行かないの!?」

「先にコンプリートのところに行ってくる。ブラックに一番会ってそうなの、彼女くらいだし」

「え、えぇぇぇ!?今の完全に一緒に行く流れだったじゃん!?」

 

 

 

 雰囲気的に一緒に行くのかな思っていたが、当の本人はブラックに一番会っていそうだらか話を聞きに行ってくるという理由で、別の世界に行くようだった。そのまま彼女はハートに件の世界への行き方を描いたメモを渡して、一人そそくさとワープホールの方へと向かっていった。

 

 

 

「ああ待って!……行っちゃった……」

「ネオフュージョンに何かされたというか……怪我して戻ってきてから、肩の荷が降りて本調子が戻ってきたというか……」

「なんというか、無理して笑うこともなくなってきたよね!」

「だとしてもマイペースすぎませんかね……?元気なのはいいことなんですけど……」

 

 

 

 ……他の仲間達も、ブラックが意識を飛ばして眠っていた以降からブルームが若干無理をしていたことに気づいていたようだ。しかしそれについて聞こうとしてもうまくはぐらかされてしまっていた。まあ、本人が元気そうならいいが……

 

 

 

 

「……と、とりあえず巡ちゃんはブルームに任せて、アタシ達も準備しよう!」

 

 

 

 気を取り直してハートがそういい、全員移動の準備を始めるのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

<巡の世界 心野宮・繋家>

 

 

 

 

 

「大変お騒がせいたしました」

「も〜、本当にさあ……」

『ま、まあまあ〜!!』

 

 

 

 巡が熱をぶり返してから3日が経ち、ようやく完全復活を果たし自宅へと帰ってきた巡。ひとまず元の世界へ帰る方法が見つかるまでは繋家にお邪魔することになったなぎさに対して、非常に美しいフォームの土下座で謝る。

 巡が熱で倒れたところを受け止めてくれた挙句、姉が学校でいない間の看病を手伝ってくれたとも聞いていたので、闇の使者の最大の被害者であるなぎさに対して非常に手をかけさせてしまって申し訳なくなったのだ。

 

 なぎさはなぎさで理不尽に巻き込まれたことに対して不満げな声は出しているが、巡が元気になって良かったとどこか安心した笑顔を見せている。

 

 

 

「……まあでも、巡の調子が戻ってくれたならそれで……」

「幸姉から色々聞いたよ。……悲しいことに何も覚えていないけど」

「マジで?結構頑張ったのに……」

『本当にやばかったんだね……』

 

 

 

 ぶり返した発熱が相当ひどかったようで、巡は熱を出していた間の記憶が割と曖昧である。もっと詳しくいえば、あの世界でダークネスブラックに『プリキュア・ブレッシングキッス』を何とか当てた後からの記憶が怪しい。それくらい、自分の体調が思っていた以上に終わっていたのだろう。

 

 

 

「……幸姉もよく許したね。なぎさちゃんの滞在(仮)を」

「それは本当にそう。……どう見たって怪しい奴にしか見えなかったよね……」

 

 

 

 飛ばされたのはともかく、今のなぎさが住むところはどうするんだという問題は案外早く解決した。

 巡の姉である幸になんとか誤魔化し、『嫌なことがあって家出したけど、帰るには気まずいからしばらく逃げたい巡の知り合い』という体で、しばらくの滞在を許された。幸も幸で、巡が倒れ自分も帰れなくなったなぎさの切羽詰まった様子に何かを感じたようで、「なぎさちゃんが落ち着くまでいていいよ」と優しい笑顔で言われたようだ。

 

 ひとまずなぎさは、巡のクローゼットの中にあったお下がりを着てこの世界に馴染んでもらうようにしている。本当ならすぐに帰るべきだが、諸事情でワープホールに飛び込むことができず帰れないのでこうするしかない。

 

 ついでに巡の記憶が若干曖昧だということを初めて知ったなぎさとプロトラブリーは、彼女が寝込んでいる間に起きたとある大きな変化────ステフォンがあの『水晶の世界』と連絡を取れるようになったことを話した。

 

 

 

「え?いつの間に……?」

『でも、こっちからいつも連絡できる訳じゃないけど……』

「調子いい時と悪い時があるんだろうなーって感じ」

「とりまデカめのアップデートが入ったのね」

『あっちの世界のみんなも元気そうだったよ!』

「そう……それなら一安心」

「画面の中見ても、だいぶファンタジーな世界になってるけど、あれが滅んだ世界って本当?」

「本当だよ〜」

 

 

 

 楽しそうだが何かがぶっ飛んでる。なぎさがステフォン越しで見たあの世界の第一印象だ。

 

 光が差し込む大地と、泉に花畑やバラ園、小鳥が飛んでいたりお城に教会が建っているならまだ理解できる。浮遊するステージに楽器、お菓子のお家やら動くぬいぐるみやらが登場してから何か楽しい(カオスな)ことになっているが、多分大丈夫だろうということで放置はしている。

 

 

 

 これからどうしようかと考え込んでいると、窓の外から誰かの視線を感じてそちらの方を向く。ここは2階だが、前にも似たようなことがあったような気がしていた。

 

 

 

 

 

「もしかして取り込み中だった?……というか何で巡の世界に別の世界のなぎささんがいるの」

「……ってぇ!?」

『いる!?』

「わあそんなぬるりと現れるの?」

 

 

 

 浮きながら窓から巡達の方を覗き込んでいたのは、闇の使者のダークネスブルームだった。多分前のメロディとミラクルの時のように、用事があって巡の世界に訪れたのだろう。ただし今回は夜ではなく夕方。まだ姉は帰ってきていなければ、奇跡的に家の前の人通りがない。この闇の使者、誰にも見られない前提でここにきている。

 なぎさは他の闇の使者の姿を見るのは初めてなので、「私の知り合いに似た黒い子がいるんだけど!?」とわかりやすく動揺しているし、プロトキュアも巡から聞いていたが実際にこの世界で闇の使者と相見えるのは初めてなのでしっかりとびっくりしている。

 そんな中巡は特に驚くことなく、窓を開けてブルームを部屋に迎え入れる。

 

 前に会ったのは彼女が暴走して以来だが、相変わらず怪我した後はまだ消えていないようで、全身包帯やら絆創膏やらで手当てされた跡がある。そして、力を与えられた証拠である黒いリングが右腕に嵌められたままである。

 

 

 

「……ひび割れてるとことか大丈夫?」

「ちょっと痛いけど、動けないほどじゃないから大丈夫だよ」

「なになに、あんたら一体何があったのよ」

『色々あったんだよ〜!』

「……やっぱこの世界、プリキュアが本当にいたりするの???」

「そんなわけないでしょ。この前大変なことが起きて……」

 

 

 

 この二人の間で何があったのかを知る由もないなぎさを差し置いて、二人の間で会話が繰り広げられる。その中で、巡は彼女にダークネスブラックに出会ったことと、そこで起きたこと全てを話す。

 

 

 

「ブラックに、締め出された……?そっちにいるなぎささんを追い出して……?……えぇ???」

『なんというか、雰囲気も前見た時よりもおかしかったし……』

 

 

 

 巡達の話にピンとはきているものの、どこか信じられないと言った様子で話を聞くブルーム。無理もない。彼女は生き残った他の闇の使者を大切に思っているのだから、急に冷たくなってしまうのはありえないと思っているんだろう。

 

 

 

「でも、締め出されたならもう一度入ればいいんじゃ……」

『それを試したんだけど、向こうに妨害されて入れないんです……』

「は、入れないって……」

 

 

 

 試しにもう一度あの『プリキュアオールスターズの世界』へつながるワープホールを展開する。巡がその穴へ手を伸ばすと、バチンと黒い電撃が走り、触れようとした巡の手を弾いた。

 

 

 

「いてっ……ほら」

「本当だ……そういえば、他の世界に行こうとした時、一個だけ全く入れなかった世界があったって、ブロッサムが言ってたかも……もしかしてこれのこと……?」

「仲間っぽいあんた達でも入れないって……」

『なんというか、絶対に誰も入れないぞって感じがするね……』

 

 

 

 ブルームもその穴の中に入ろうとするが、同じように電撃が走って弾かれてしまう。

 

 

 

「本当だ、入れない……なんでぇ……?」

「闇の使者も締め出されるレベルって、随分と警戒されてない……?」

「その先の世界で、ブラックに出会ったんだよね?そ、そう、ブラックが……」

 

 

 

 実際に触れてみて自分たちまで入れなくなっていると知ってもなお、やはりどこか信じきれないといった様子。あのブラックのことだから、他の闇の使者までそちらの都合で悪さをするような人物だっただろうか。

 

 

 

「ブラック、まさかとは思うけどあいつに……」

「……まあ、ありえない話ではないよね」

「ちょ、ちょっと!置いてかないで私にもわかりやすく説明して!」

『ネオフュージョンに気付かぬうちに操られちゃってるかもって事!?』

「な、なんですってぇ?!」

 

 

 

 ネオフュージョンに力を与えられたと同時に、なんらかの洗脳が施されている可能性がある、と、二人は感じたのだろう。

 

 

 

「操られているとしたらいろいろ不味くない?正気に戻った時とか特に」

「うわあ……私より酷いことになると思う」

「アンタたちねえ……勝手に話進めないで!?一応ここに私いるからね!?」

『というか、私への印象ってなんでそこまで大変なことになってんの……?』

 

「「『そりゃあ、あのブラックだからでしょ!/でしょうに……』」」

 

 

 

 さっきからダークネスブラックへ彼女たちが持っている印象がまあまあ酷い気がして、別世界のなぎさと共にプロトブラックがツッコミを入れる。しかしすかさず納得だよというツッコミと周りから入れられてしまう。

 

 

 

「まあ、あっちの世界に出入りできなかったら何もできないんだけどさあ……」

 

 

 

 そう言いながら巡は『WorldTrip』の画面を眺めながら一人ため息をつく。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 その瞬間、ステフォンが突如真っ白な光を放ち、巡の部屋を包み込む。

 

 

 

「……え?」

「は?」

『ねえこれって!!』

「まさか久しぶりに……?」

 

 

 

 巡やプロトキュアたちにとっては久しぶりの事象だったために特に驚くことはなかったが、初めてステフォンの事象に立ち会ったダークネスブルームや、完全に巻き込まれたなぎさまでもがその光に飲み込まれ、あの世界へと────水晶の世界へと誘われていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

<水晶の世界>

 

 

 

 

 

 巡の元に、ダークネスブルームが現れる数十分ほど前のこと。

 

 

 

「……あら?」

 

 

 

 この世界は、ステフォンに宿る光の力に振り回され暴走したキュアクルセイダーことジュン・ソヴァール=ブレスによって引き起こされた光の大爆発によって『崩壊』したとされている世界。そしてそこは、プロトキュアや闇の使者が本来いるべきはずの世界。

 最初は灰色の荒野に真っ黒な雲、12人のプリキュアの肉体が眠る水晶の柱だけがポツンと立っている寂しい場所であった。しかし、現在のステフォンの持ち主である繋巡のおかげで、最初の頃とは見間違えるほどに綺麗な場所になり、爆発のせいで世界の外に散らばってしまったプリキュア達の魂が集ってきた。……ただ一人を除いて。

 

 ふと、誰かこの世界に来たような気配がして、この世界のエコーがその場所へと歩いていく。

 

 

 

 

 

「気づかないうちにとっても賑やかになってるね……、寂しくないからいいけども……」

「……!」

 

 

 

 キュアドリームが眠る水晶の前にいたのは、見慣れぬ黒いプリキュア────ダークネスドリームだった。……見た目だけならドリームなのだが、装束は黒く瞳は虚ろな紅。さらにどこか怪我をしているのか、体の所々に絆創膏や包帯が巻かれている。首元には、怪しげなリングまで。

 

 

 

「どうしたのエコー……って」

「あ、あそこにいるのって、前に巡さんが言ってた闇の使者……?」

「ほ、本当にドリームそっくり……ということは……」

 

 

 

 彼女達も、闇の使者=プロトキュア=この世界のプリキュアという事実を理解したのはつい最近の出来事である。彼女が目の前にいる水晶の柱に眠るのは、彼女と同じ顔をした少女。自分が本来いるはずの肉体。

 

 

 

「ごめんね、しばらく来れなくて。……あたし今結構怪我しちゃってて、全然治りそうもないの……」

「ドリーム……のぞみ?あなたのぞみなのよね……!?」

「あ、ミルキィローズ!」

 

 

 

 その様子を見ていたミルキィローズが、ダークネスドリームの方へと走っていき、彼女に触れようとした。しかしその手は彼女の体をすり抜け、何も触れることなく通り過ぎてしまう。

 

 

 

「……はぁ!?」

「ちょ、ちょっと!?触れないの!?」

「……?」

 

 

 

 どうやら魂だけとなってしまった自分たちは、生身の人間を触れることができないらしい。さらに悲しいことに、闇の使者には自分たちの姿が見えていない。

 ドリームはローズの姿を見えずともなんらかの違和感は感じたようで、振り向いて周囲を見渡す。

 

 

 

「今、誰かいたような……最近になってまた気配は感じるようになったのに、何も見えないなんて……」

「のぞみ!私はここにいるのよ!?」

「気づいてくださいーい!」

 

 

 

 一緒になってプリキュア5の面々も彼女の前に立って呼びかけるが、ドリームは多少の違和感を感じるだけで、見えているような雰囲気はない。

 せっかく本来の彼女に再会できたのに話せないという歯痒く悔しい気持ちを抱えようとしたその時、この水晶の世界にさらなる来訪者が次々に現れた。

 

 

 

「ああいたよ!ドリームいた!」

「……えぇ!?みんな?!なんで!?」

「……!?他のみんなも……!?」

 

 

 

 そこに現れたのは、ブルームからこの場所を教えてもらった他の闇の使者達だった。ドリームはもちろんそのことを知らないので、彼女達が目の前に現れたことに驚きを隠せていない。さらに他のプリキュア達も、おそらくこの世界出身だろう闇の使者達の出現に困惑している。

 

 

 

「……ここが、私たちがいた世界なんだね……こんなになっちゃって……」

「見て!中で私たちが眠ってるよ!?……もしかして、本当の私たち……?」

「……なんだか、近くに誰かいるような気がする……」

 

 

 

 

 混乱するドリームをよそに、ピーチ達は初めて訪れる崩壊後の世界を自由に探索する。何か明らかにおかしな変化はあるものの、誰かが頑張って良い方向に戻そうとしているのがわかるような雰囲気がある。

 

 

 

「……そっか、完全に無くなったってわけじゃなかったんだね……よかった」

「だ、誰からこの場所を……」

「ブルームからだよ」

「あ〜……」

 

 

 

 情報元をすぐに教えられて、彼女ならもう言ってもおかしくないかあとすぐに察した。おそらく彼女は「このことは言ってももう大丈夫だろう」という信頼から託したのだろう。

 

 

 

「……黙っててごめんね」

「そんな、気にしないでよ!」

「むしろ、ちゃんと残っていて安心しました」

 

 

 

 自分たちが隠していたことにも特に怒ることなく、むしろ本来の世界が残っていたことへの喜びと安堵の気持ちがあったのだろう。少々変な変化もあるが、本来いるべき世界だからなのか、建物も知っているものも何も残っていないのに心のどこかで不思議な懐かしさを感じていた。

 

 

 

 ふと、足元に目をやると、ドリームの足元の影が不気味にゆらめいたような気がした。

 

 

 

「ドリーム……?なんか影が……!」

「……え?」

 

 

 

 

 ハートがその異変に指摘した瞬間、彼女の影からは音もなく黒いモヤのようなものが爆発するように溢れた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 彼女の影から溢れ出すように出現したのは、真っ黒な液体のような幽霊のような、ネオフュージョンの姿をした“分身”。

 

 それは、ダークネスドリームを追い詰め暴走させた根本的な原因であり、力を与えた者たちを監視する、絶対にこの場所へ連れてきてはいけない存在。

 

 

 

『……!!!』

「い、いつの間にあたし、一緒に連れてきてたの……!?」

「多分、完全に振り払えてなかったんだよ!!」

 

 

 

 おそらく以前暴走した際に出現したネオフュージョンの分身は、気付かぬうちにドリームの影の中に再び潜んでいたようだ。散々気を付けていたネオフュージョンの介入を許してしまい動揺してしまうが、せっかく教えてもらった本当の居場所を荒らされるわけにはいかないと、闇の使者達は一斉に飛び立つ。

 

 相手がネオフュージョンだろうと関係ない。自分たちの世界を荒らされてたまるかという、強い意志での行動である。

 

 

 

「まずは奴の気を逸らせないと!」

「なんとか私たちだけでも……!」

 

 

 

 そう言って、ハッピーが黒い光の光線を、ホイップが黒い光のクリームを放ち、分身の視線を自分の方に集中させる。案の定ハッピーを追い払おうと、液状の肉体から触手のように腕を伸ばす。

 

 

 

「あなたの好きには!」

「させないんだから!」

 

 

 

 ブロッサムとフローラが放つ花吹雪が、ハッピーを叩き落とそうとする分身の大きな黒い腕に直撃し、その動きを妨害する。しかし分身は、口らしき部分を開けて真っ黒な闇のエネルギー弾を撃ち出す。狙いは、自分たちの体が眠る水晶の柱だ。

 

 

 

「ハート!」

「オッケー!」

 

 

 

 ピーチとハートが放つ黒いハートのエネルギー弾が、水晶を壊そうとする闇のエネルギーに被弾し相殺させる。硝煙が立ち込める中、分身が今いる場所から動き出そうとしている。

 

 

 

「奴の動きを止めよう!」

「うん!」

 

 

 

 メロディが放つ黒い光のリング、ミラクルが放つ葉っぱの吹雪が、暴れ出そうとする分身の下半身にぶつかり、その場所から固定する。

 

 

 

「今だよ!」

「ダークネス・シューティングスターッ!!」

『!!!』

 

 

 

 黒い光を纏った流星のような突進と、分身が薙ぎ払おうと振り翳す腕のような器官がぶつかりあう。二人は互いに鍔迫り合いのように膠着するが、分身が力任せに振り下ろしたせいで、ドリームが吹き飛ばされてしまう。

 分身の腕に薙ぎ払われたドリームは、自身の体が眠る水晶の柱にぶつかり、そのまま地面の方に落とされる。

 

 

 

「ぐ、ぅ……」

「ドリーム!!」

 

 

 

 立ちあがろうとするダークネスドリームの元に駆けつけるルージュだが、自分には彼女の体に触れることができないことに気づいて、触れようとした手が止まる。それでもドリームは気付かぬまま、自身の影に潜んでいたネオフュージョンの分身に対して立ち向かおうとする。

 

 

 

「絶対に諦めないんだから……!!」

「ドリーム……!」

 

 

 

 その姿が変わろうとも、ドリームたち闇の使者が持つ本質は何も変わっていない。無自覚に連れてきてしまったドリームは責任を強く感じているかもしれないが、その虚ろな紅い瞳には、かつてより変わることのない揺るがない意志が宿っている。

 彼女達は今までだって、大切なものを守るために戦ってきたのだ。その姿を見て、ああやはり彼女達は自分たちが知ってる彼女達だと、この世界のプリキュア達は改めて思わされる。たとえ彼女達に姿が見えずとも、その体に触れることはできなくとも、

 

 

 

 あんな大きな分身に薙ぎ払われようとも立ち上がり、再び攻撃をしようと身構えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 その時だった。闇の使者達が抱いた意志に反応するように、光が差し込むもののまだまだ薄暗い世界の一点に、12本の水晶の柱が囲う地面に、虹色の光が天から降り注いだ。

 

 

 

『……!?』

「今度は何!?」

「あの光は……!」

 

 

 

 分身が、闇の使者が、魂だけの少女達が、その誰もが光が照らす場所に注目した。その場所に向かって、光の中から誰かが落ちてくる。その声には聞き覚えがあったし、何よりもその姿は、久しぶりに生で見るあのステフォンの持ち主だったのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「だからさあステフォンさあ、上から落とすのやめようよ。いよいよあたしがステフォンに嫌われてることが確定しちゃう」

「そんなこと呑気に言ってる場合じゃないでしょ〜!?私まで落とされるとかありえな〜い!!」

「いいから早く変身して!二人担いだままだとうまく着地できないんだって!」

「ちょ、ちょっとそんなにイライラしないでって……よぉし行くよ〜。コンプリート・ステージON!」

 

 

 

 空より落ちてきたのは、ダークネスブルームに担がれた別の世界のなぎさと、ステフォンの持ち主である巡だ。先ほどのステフォンから溢れ出した光に飲まれたと思ったら、久しぶりに『水晶の世界』に呼び出されてしまったようだ。

 ステフォンが突如光り出した時は「久しぶりのいつものだな」と油断し、天空から落とされるとは思わなかったようだ。さらに、相方がいなければそもそもプリキュアに変身できないなぎさまでもが巻き込まれている。

 

 

 

「……って、あれってネオフュージョンの分身!?どうしてこの場所に……?」

「事故で一緒に入ってきちゃったとか……?」

「ちょっとなぎさちゃんお願い」

「嘘でしょここから……!?」

 

 

 

 巡はブルームに担がれつつも変身してキュアコンプリートの姿となると、彼女から離脱して分身の方へと飛んでいく。分身も対抗するように、液状のような体から拳のような器官を伸ばし、コンプリートを吹っ飛ばそうとする。

 

 

 

『CureWeapon!Black!』

『PowerCharge!Moonlight!』

 

 

 

「この場所で暴れられたら困るよ!白銀月光拳(シルバームーン・パンチ)ッ!!」

 

 

 

 コンプリートも対抗してブラックグローブを装備するや否や、月の光のような白銀の光を纏った拳を分身の拳に向かって突き出す。コンプリートの拳は、分身が伸ばした拳のような器官を貫き、分身を怯ませる。

 

 

 

『……!?』

「嘘!?前見た時より強くなってる!?」

 

 

 

 そして、水晶の柱が見守り虹色の光が降り注ぐ大地の上に、コンプリートがゆっくりと舞い降りる。

 

 その姿は、さながら苦しむ民衆を導くために、天空より降臨した天使のよう。

 もしくは、暗闇に閉ざされた世界を救うべくして顕現した救世主のよう。

 

 

 

 

 

 

「現となりし、12の魂!キュアコンプリート!」

 

 

 

 

 

 しかし、繋巡は天使でもなければ救世主でもない。

 

 誰かの涙が見過ごせないほどに優しい心と勇敢さを併せ持つだけの、ごくごく普通の中学2年生である。

 

 そんなことしら知る由もない分身は、その身に宿す真っ暗闇の力を放ち、コンプリートを取り込もうと蠢き出す。

 

 

 

「コンプリート!」

「これくらいなら大丈夫」

 

『CureWeapon!Flora!』

『PowerCharge!Muse!』

 

輝く女神の花吹雪(フローラルサークル)ッ!」

 

 

 

 しかしコンプリートは冷静にフローラロッドを召喚し、分身の足元に五芒星のような光の魔法陣が出現し、泡のような光と花吹雪が同時に放たれ蠢く分身の身動きを封じた。

 

 

 

『!?!?』

「ここは、彼女達が取り戻そうとしている本当の(・・・)居場所なの。そんな大切な場所を滅茶苦茶にしようもんなら、あたしも少し怒っちゃうよ?」

「……!」

「コンプリート……」

 

 

 

 コンプリートはただ、この良い方向の変化が起きている水晶の世界を再び荒らそうとする存在が許せないだけである。世界にネオフュージョンが入り込んで大変なことになったのは経験済みだ。その苦労がわかるからこそ、困っていた闇の使者を助けたに過ぎない。

 

 

 

『CureWeapon!Complete!』

 

 

 

 ステフォンから光が飛び出し、ピンク色のスタンドマイクの形をしたスタンドロッドを召喚する。これを使ってあの分身を浄化するつもりだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

Dear around the world(巡り巡る世界へ),with light of salvation(救いの光を込めて)────♪」

 

 

 

 スタンドロッドに向かって、綺麗な歌声が響く。コンプリートの声に呼応し、彼女の背後に12個のハートが出現し、神々しい光が放たれる。全ては、大切なものを壊そうとするあの闇の塊を追い出すために。

 

 

 

「プリキュア・セーブ・ユア・ハートッ!!」

 

 

 

 声と共に放たれた12個のハートは重なり合い、一つの桃色の光線となって分身の方へと向かって伸びていく。光に飲まれて動きを封じられている奴に抵抗する手段もなく、光はその真っ黒な塊のような肉体を穿つ。

 

 

 

『────!!!』

 

 

 

 分身は光の中に閉じ込められ、すぐに飛んできたコンプリートによって抱きしめられる。光はさらに強く輝き、真っ黒な図体は急速に崩壊していく。

 

 欠片がチリ一つ残さずに消滅した瞬間、辺りはさらに強い光に満ち溢れ、世界は再び静寂を取り戻す。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『みんな、大丈夫だった?』

「私たちはなんとか!……まさか、触れることができないとは思わなかったけど……」

「闇の使者のみなさん────基、この世界から飛び出していったハート達が食い止めてくれたおかげで、こちらの被害も最小限におさまりました」

「そっか……守れて良かったよ」

 

 

 

 ようやく平穏が訪れ、コンプリートはこの世界のプリキュア達の方に駆け寄っていく。彼女達にも世界の何かが壊されることもなくて良かったと心底安心する。

 

 

 

『……あ、そうだ。ホワイトは見つかった?!』

「ううん。この場所には全く……」

『そ、そう……』

「ああ、ブラックが落ち込んだ……」

「な、何かあったんか?」

「こっちも色々あってねえ……」

 

 

 

 

 

「……う、嘘でしょ……あんなでかいのを一瞬で……?」

「なぎささん、びっくりするのはいいけどそろそろ降りてくれません……?」

「ああごめんごめん……」

 

 

 

 コンプリートの一部始終を見ていたなぎさは、地上に着地してからもずっとブルームに捕まっていたようで、流石に重いと怒られて彼女から降りる。

 コンプリートのところへ行きたいが、彼女はなぜか誰もいないはずの空間に向かって何かを話しているように、闇の使者達にはそう見えていた。ステフォンの中のプロトキュア達と話している……というわけでもないし、彼女にしか見えない何かがいるのだろうか。

 

 

 

「……さっきからコンプリートは誰と話しているんだろう……?」

「え?見えてないの?」

「まさか幽霊?」

「ヒェ」

「いやいや、あの子がそんな怖いことするかな〜……?」

「えーでもありえそうじゃん。……というかなんで別の世界のなぎささんと一緒にいるの???」

「……そういうのって分かるものなの……?」

「雰囲気でだいたいわかるよ〜」

「あ、あ、そう……」

 

 

 

 闇の使者達も闇の使者達で集まりながら、コンプリートの奇行(?)らしき様子を伺いつつヒソヒソと話している。そしてまたしても自分の知り合いとよく似た闇の使者の姿を見てもはや驚けないなぎさは、ひとまずコンプリートの方へ向かうことにした。一応なぎさもこの世界のプリキュアの姿が見えている。

 

 

 

「コンプリート!」

「……あ、なぎさちゃん。それに全員勢揃いじゃん」

「ね、ねえねえさっきから誰と話してるの!?」

「誰って……」

『ムーンライト達とですけど……?』

「む、ムーンライト!?こ、ここにいるんですか!?」

「誰かしらの気配はたくさん感じてるけど……」

『あれ?もしかして闇の使者には見えてないってやつ!?』

『私たちも最近まで見えなかったけども……』

「さっきドリームに話しかけても気づいてくれなかったから、闇の使者達には見えていないらしくて……」

『うっそでしょ……!?ここにベリー達がいるんだよ!?』

「君らの友達ほぼ勢揃いしてるのに……」

「そうですよミラクル!私たちは目の前にいますよ!」

「見えてないのをいいことにお調子者タイプの子達に遊ばれてるよ君ら」

「え!?ちょ、誰かわからないけどやめて!?」

 

 

 

 闇の使者にはネオフュージョンの元にいた分の、なんらかの制約(ペナルティ)があるのだろう。困惑する双方を繋ぐように、コンプリートが間に立ってひとまず会話を続ける。

 

 

 

「と、とりあえずここがあたし達がいた世界なんだね!?」

「あと、みんなもここにいるんだよね!?私たちが見えないだけなの!?」

「そういうこと。『ステフォンに想い、壊れた世界に私たちが集まれば、世界に変化が訪れる』って、前に教えてもらった」

「私たちが、集まる……?」

 

 

 

 “想い”をプロトキュアとするのなら、“私たち”というのはこの世界におけるプリキュアオールスターズのことを指しているだろう。おそらくではあるが、今この場所に闇の使者を含めたこの世界出身のプリキュア達が勢揃いし、ステフォンには闇の使者達からこぼれ落ちた具現化した想い(プロトキュア)もいる。

 

 

 

『この場所に、闇の使者の私と、まだどこかにいるはずのホワイトが集まれば……もしかすると……』

「この世界が元通りになるかもしれないって事?」

「『声』を信じるなら、ね」

「?」

 

 

 

 バラバラになった彼女達が聞いたとされる『声』。声の主は未だ判明はしていないものの、悪い奴というわけでもなさそうなのがコンプリートの見解である。

 

 

 

「よ、要はホワイトを見つけて、あっちのブラックを説得して連れてくれば全てがわかる……のかな?」

「多分」

「……ブラックは、ステフォンがあれば世界を戻せるって言ってた。ブラックも『声』を聞いていたのなら、今までステフォンを求め続けたのは……」

『そういうこと、なんでしょうね……』

 

 

 

 おそらくブラックがステフォンがあれば世界を戻せると言っていた理由も、ここからきているのだろう。……もちろん、彼女が『声』を聞いていたらという前提ではあるが。

 何はともあれ、これであのダークネスブラックがネオフュージョンに力を与えられる()までの思惑がすべてつながったかのように思えた。魂だけになってしまうと、幽霊のように物に触ることができなくなるということは、この世界に集ったプリキュア達で証明済みだ。奴の手を借りるしかなかったというのも頷ける。

 

 だが、今の彼女はステフォン重視というより、どちらかといえば奴の介入ありでコンプリート狙い・別世界の破壊で動いている。……奴に操られているという悪い方向の可能性が濃厚になってきた。

 

 そこまで考えて、コンプリートの体が淡く光り出し、彼女の視界が白く滲み出してきた。……どうやら、コンプリートがこの世界にいられる時間は変わらず限られているらしい。

 

 

 

「やばい、また帰される」

「え、えぇ!?私も!?」

『一応ステフォン越しに連絡はできるけど突然すぎるよ〜!』

「……とりあえず、あの世界にまた入れるようになったらブラックのことを説得してみるよ。できるかどうかはわからないけど!君らもネオフュージョンに悟られないように慎重に動いてね」

「わかった気をつける。私たちも私たちで、いろいろ動いてみるし、なんとかしてあの世界に入れるようにしてみる」

「みんなも、ホワイトが見つかったり何かあったらいつでも連絡してね!」

「は、はい!」

 

 

 

 白い光に視界が包まれる中、闇の使者達とようやく、事実上の『協力関係』が築かれたようだ。

 

 

 

 

 

 世界が、明転する。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

<プリキュアオールスターズの世界 小泉学園>

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ブラック!ここにいたんだね……!」

「……その声は」

 

 

 

 この世界の『美墨なぎさ』を追い出して彼女と入れ替わったダークネスブラックは、今の所この世界で悪さをすることなく、心のどこかで望んでいた平穏な日常をおとなしく受け入れて過ごしていたところだった。

 

 しかしそれは、明らかに自分を知っているであろう人物に声をかけられて現実に戻される。

 

 上空から舞い降りてきたのは、同じ闇の使者であるダークネスラブリーだ。

 ラブリーは、突如として自分たちの前から姿を消したブラックを探してこの世界に飛び込んだ。この世界にネオフュージョンの欠片が大量に出現したり、彼女の気配があると知って探し回っていたのだが、ようやく見つけたようだ。

 

 

 

「ラブリー」

「よ、よかった……!ブラック、元気になったんだね……!ずっと眠っていたのにいなくなって、みんな心配していたんだよ……?」

「そ、う……」

 

 

 

 みんな────闇の使者達はみんな心配してブラックを血眼になって探し続けていたのだ。

 泣きそうな顔で安堵するラブリーに対し、ブラックは虚ろで澱んだ紅い瞳を僅かに細め、彼女に声をかける。

 

 

 

「心配かけてごめんね。私はもう大丈夫だから……」

「うん……あ、でも、どうしよう。欠片が急にいなくなったと思ったら、なぜかこの世界から出られなくって……」

「ああ、大丈夫よ。私がやったから」

「……え?」

 

 

 

 ラブリーは一度引き返してから出直そうと考えていたようだが、欠片が突如としていなくなったあたりから、ワープホールを開けなくなってしまい、ここ数日この世界を彷徨っていた。

 その原因が目の前のブラックが起こしたと聞いて、ラブリーの表情が若干こわばる。うっすらと口元に笑みを浮かべて平然と言ってのける彼女に、何らかの違和感を感じたのだ。

 

 まるで、目の前で話している相手がブラックでない別の誰かのような雰囲気を感じ取ってしまったのだ。

 

 

 

「大丈夫よ。時が来たらちゃんと出入りできるようにするから」

「え……?そ、それってどういう……」

「ごめんねラブリー。私、今友達待たせちゃってるから行かなきゃいけないの。また後でね」

 

 

 

 何か意味深なことを告げられ詳しく聞き出そうとするが、ブラックは話を切り上げ、再び街の方へと走り去ってしまう。自分が待ってと呼び止めても、ブラックは聞く耳を持たない。

 

 

 

「……あれは……私たちが知っているなぎささん……?」

 

 

 

 結局彼女を呼び止めることはできず、ラブリーはその背中を見届けることしかできなかった。

 

 久しぶりに彼女の声を聞いたのに、目の前の彼女が本当に本人なのかを疑ってしまうかのような言動だった。いくらあの人でもここまで自分たちに無関心なことがあっただろうか。

 あの人は確か、同じ壊された世界出身である闇の使者達を大切に思い、自分たちを守るためなら自分が手を汚すような人だった。しかし、今自分が話した相手は、どこか嫌な冷たさを孕んでいる気さえした。

 

 

 

「……なんだろう、明らかに何かおかしな気配を感じるし、嫌な予感もする……」

 

 

 

 ダークネスブラックは、ネオフュージョンから力を与えられた反動でつい最近まで眠り続けていた人物。もしかすると奴に嫌なことをされて自暴自棄になってしまったりとか、自分たちの知らないところでやつに操られてしまったとかなど、何か不穏な想像がついてしまったようだ……。

 

 元の世界に帰れない以上、他の仲間達の助けを得ることもできない。こうなったら、自分がなんとかするしかないのかもしれないと理解し、ダークネスラブリーはひとまず彼女を遠くから見守ることにした。

 

 

 

 

 

 この世界の友人達の方へ歩く彼女の影が、不気味にゆらめいた。

 

 

 

 

 

続く……

 




次回更新日:8月11日(日)
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。