PrecureStageON!   作:主氏レム

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お盆なのにクリスマス回です
廻巡に進展か……?


第40話:想いを伝えて!帯刀と氷上のクリスマス

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 あれから、数週間が経った。

 

 『プリキュアオールスターズ』の世界、午前中はぴかりヶ丘のブルースカイ王国大使館にて、数人のプリキュア達による「ネオフュージョンへの対抗策を考える作戦会議」が行われた後であった。

 ネオフュージョンの動きは巡がいなくなった後からぱったりとなくなり、嫌なくらいに平和な時間が流れている。まるで、嵐の前の静けさと表現してもいいだろう。

 

 

 

 

 

「……(本当に、何もしてこないわね……)」

 

 

 

 

 

 雪城ほのかはその帰り道、相方である美墨なぎさと後輩の九条ひかり、同じプリキュアの仲間である日向咲・美翔舞と共に海原市へと訪れていた。本当ならこのまままっすぐ帰ろうとは考えていたのだが、作戦会議終わりの雑談の中でその話が飛び出し、久しぶりに咲の実家であるPANPAKAパンのパンが食べたくなってしまったらしい。

 なぎさもその話に乗っかり、帰るついでにお店に寄って行こうと考えた様だ。

 

 

 

 ────しかし、今のなぎさはほのかが知っている方のなぎさではない。周りのみんなはそのことに気づかず普通に接していたし、違和感も隠し切っていた。

 ほのかはそのことを誰かに相談したいのだが、あいにくひどい脅され方をされて、話すことができない。もちろん、脅されるくらいで屈してたまるかと考えてしまうのが自分なのだが……

 

 

 

 

 

『私とほのかの仲でしょう?約束(・・)、してくれるよね?』

 

 

 

 

 

「……ほのか?どうかした?」

「……!い、え……大丈夫よ……」

 

 

 

 壁に深いヒビが入るような力で壁ドンをされたのが、ほのかが思う以上に、彼女が持つ反抗心に杭を打たれてしまったのだ。

 

 誰かに話さなければならない。しかし話せば自分や周りに何をされるかがわからない。相手は大量の怪物を召喚し、その体に宿す闇の力も馬鹿にならない。なぎさがいないと変身ができないほのかにとって、人知れず人生最大のピンチに陥っていたのだ。

 

 

 

「ごめん、ちょっとお手洗い借りていい?」

「は、はい!場所わかります?」

「一応!」

 

 

 

 ちょうどなぎさがお手洗いに行くため、この場になぎさがいないという、真実を伝えるには絶好のチャンスとなる。ただし、下手に動けばどうなるかはわからない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「咲……」

「ここは任せて、舞」

「……?」

 

 

 

 様子のおかしいほのかを気にしてか、不安げなひかりと舞を制して咲が彼女の方へと歩み寄る。

 

 

 

「ほーのかさん」

「……あ、咲さん、どうかしたの……?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

第40話:想いを伝えて!帯刀と氷上のクリスマス

 

 

 

 

 

<巡の世界 心野宮・繋家>

 

 

 

 

 

「んじゃ、行ってきまーす」

「「行ってらっしゃーい」」

 

 

 

 朝7時半前、繋巡は冬休み前最後の授業に出席するために自宅を出ていった。そんな彼女を、ひと足先に冬休みに入っている姉の幸と、現在元の世界に戻れないために巡の元に滞在している美墨なぎさが、玄関の外で見送っていく。

 冬の冷たい風が吹きつけ、特に上着を身につけてはいない体を震え上がらせる。

 

 

 

「うぅ、寒い……!」

「中に入ろうか……」

 

 

 

 本日は12月24日。クリスマスイブである。テレビの番組も年末色が濃くなってくる時期でもある。

 

 

 

「ああ、巡も冬休みかあ……」

「もうそんな時期ですもんね……」

 

 

 

 温かいお茶を出されて、なぎさはそれに一口つける。冷えた体に温かい飲み物は、心も体もポカポカになる。

 今日が終業式と言っていたので、おそらく彼女が帰ってくるのは1時くらいだろう。午前授業といい大掃除といい、うちの学校よりも割とゆるい感じで若干羨ましい。

 

 

 

「そういえば巡、今日は学校終わったらそのまま遊びに行くみたいだよ」

「え?遊びに?」

「男の子の友達に誘われたんだって、屋外スケート」

「スケート???」

 

 

 

 しかし巡はどうやら、ボーイフレンドに誘われてこれからクリスマスデートの予定が入っているようだった。こっちは大ピンチかつどうにもできない状態が続いているというのに、随分と呑気すぎやしないか。

 ……とかいう自分もかつて、過去のクリスマスで色々あった身なのだが。

 

 

 

「なぎさちゃんも、暇になったら遊びに行ってもいいからね?」

「は、はい……」

 

 

 

 幸は多分、家出中でも暇だったらこっちのことは気にせず遊びに行ってもいいんだよと背中を押してくれているようだが、遊んでる場合かと色々突っ込みたい。……しかし、元の世界へ戻ること自体に根を詰めすぎるのもあまり良くないこともわかっている。

 もちろん幸は、巡がプリキュアだということも、なぎさがそもそもこの世界にいる存在ではないことは知らない。ただ、姉妹同士の勘で何かしらの隠し事があることや、何かしらの緊急事態の渦中ににいるのにできることが少ないというのは察しているようだ。適度に息抜きをして追い詰めるなとアドバイスしてくれているのかもしれない。

 

 

 

 ひとまず一度巡の部屋に戻ったなぎさは、ひとまずベッドの方に腰を下ろす。

 

 自分がいた世界ではまだ先の話ではあるが、どこの世界でもクリスマスになるとより賑やかになるようだとぼんやりと思い起こす。

 巡の世界に追い出されてから、はや1週間が経とうとしている。今頃他のみんなはどうしているだろうかとか、闇の使者の自分は悪さしていないだろうかと心配になってくる。

 

 

 

「……そっか、もうクリスマスなのか……あいつも呑気にデートですかーって」

『クリスマスデートだなんてロマンチックだよね〜!』

「そうそう。……って、は?」

 

 

 

 本来なら平日のこの時間は部屋の中になぎさ一人のはずなのに、なぜかドリームの反応が聞こえて違和感を感じる。

 巡は基本的に何が起きてもいいように、ステフォンを常に持ち歩いていたはず。しかし今は、巡の机の上にステフォンが放置されている。

 

 

 

『見て〜!巡ちゃんがまたステフォン忘れてっちゃった!』

『ドリームが来る前に1回あったから、これで2回目だね!』

『前にもあったの!?巡ちゃんって、意外と忘れ物しちゃうよね……』

「……あいつ、ステフォン忘れてって大丈夫なの……?」

『あの世界へまだ行くことができないから、一応は大丈夫だと思います……、って、なぎささん?』

 

 

 

 ステフォンの中のプリキュア達と会話しつつも、なぎさはステフォンを操作して『WorldTrip』の画面を開き、本来自分がいるべき世界へつながるワープホールを足元に出現させる。

 試しにもう一度、もしかするとを願って一歩踏みだす。しかし、近づけた瞬間にバチンと黒い電撃が迸り、なぎさを弾き飛ばそうとする。

 

 

 

「うわっ!?やっぱりダメかあ……」

『なぎささん……』

 

 

 

 相変わらず、ワープホールは誰の侵入も許してくれる気配が微塵もなく、なぎさはガックリと肩を落とす。やはりこちらからの干渉は受け付けてくれないようだ。

 

 

 

「どうしたもんかなぁ……けど、落ち込んでばかりじゃあいられないよねぇ……よし、今日はお昼食べたら巡を探しに街に出るわよ!あいつがどんなデートするのか気になるし!」

『な、なぎささん!?』

『興味津々ですね!?』

『巡あいつ、帯刀君って人からの好意に鈍感すぎるしなあ……』

『でもクリスマスだし、帯刀君も気合い入ってそう……!』

「な、何?巡って鈍感なの???」

『めっちゃ鈍感だよ!!!』

『なぎささんも、帯刀さん側を応援したくなりますよ!』

「へ、へぇ……」

 

 

 

 プロトキュアたちは、繋巡に想いを寄せる帯刀廻の恋の行方を密かに追っていたりする。これまで学校でのやりとりや夏祭りデートなどを経て、今日のクリスマスデートでどうなるのか。もはや周知の事実ではあるが、密かに彼女達は気になっていた。

 

 面白そうな情報を聞きつけたなぎさの今日の予定は、心野宮の探索と野次馬根性による巡のデート観察で埋まったようだ。……ついでにステフォンを届けてあげたほうがいいだろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「へぇ、結構賑わってるのね」

『そりゃクリスマスイブだからね!』

『明日のほうがもっと混みそう……』

 

 

 

 その日の午後、前に巡に貸し出されたダウンジャケットを纏い、美墨なぎさはステフォンの中のプリキュア達と共に、心野宮駅前広場屋外スケートリンクに訪れた。

 広場には大きなクリスマスツリーが飾られ、スケートリンクの外ではさまざまなキッチンカーが停まっており、周囲で賑わいを見せている。どうやらただのスケートリンクではないようだ。

 一応この時間帯だと、終業式を終えた学生達も遊びに来ていてもおかしくないのだが、今の所巡達がいる雰囲気はない。まだ下校中なのだろうか。

 

 ふとキッチンカーのエリアを歩いていると、とあるクレープ屋のブースで立ち止まる。『Mucha's Crepe』というオシャレな看板が掲げられたお店では、高校生や大学生といった若い人たちに人気のようだ。

 

 

 

『あ!巡ちゃんが好きなところだ!』

「クリスマス限定・ブッシュドノエルクレープ……?いちごのやつも美味しそう……!あいつ結構いいもの食べてんのね……?」

 

 

 

 周りで美味しそうにクレープを食べている人たちの様子が若干羨ましくなったのか、なぎさはブッシュドノエルクレープを注文するのだった。

 ココアを練り込んだクレープ生地に、たっぷりのチョコホイップとイチゴとブルーベリーで彩られたクレープは、口いっぱいに頬張るだけで幸せになってしまう。

 

 

 

「ん〜〜〜!おいしい!こういうのあんまり食べたことないからハマりそう……!」

『なぎささん、口の周りにクリームめっちゃ付いてるよ!』

「ああ嘘!?」

 

 

 

 クリームが思っている数倍詰まっているようで、なぎさの口の周りに容赦なくクリームがつきまくっている。ポケットの中に入れていたティッシュを一枚取り出して、急いでクリームを拭き取る。

 ふと目を向けると、花壇には赤と白のポインセチアやクリスマスローズ、ポインセチアに似た花がたくさん植えられていた。演出的におそらく造花と思われるが、それでもクリスマスシーズンにはぴったりの飾りである。

 

 

 

「ポインセチアと……何これ?これもポインセチア?」

『いえ、こちらはポインセチアの仲間のプリンセチアですね!花言葉は“思いやり”です!』

「へぇ……、流石ブロッサムだね!」

 

 

 

 ステフォンの中のブロッサムが、すぐさまピンク色のポインセチアに似た植物についてを花言葉込みで教えてくれた。自分が知っている仲間とは別世界の子達とはいえ、知っている人物が近くにいるととても安心する。

 

 

 

『ブロッサムの今の話で思い出した!そういえば今のブロッサムはこころの花が見えるんだったっけ?』

『少しだけですよ!?それに限られた人くらいですし……』

『巡ちゃんはなんだっけ?』

『メラスフェルラです』

『め、メフィラスフェルラ……』

『メラスフェルラだよブルーム』

『悪質宇宙人かな???』

「な、なんだ……みんな結構、私の知ってるみんなとそこまで変わらないのね……」

 

 

 

 まあまあ呑気でゆるゆるなプロトキュア達の会話を聞き流しながら、なぎさはふとそんなことを考える。

 彼女達も彼女達で大変なことに巻き込まれていたり壮絶な過去を持っていたりと、今の自分以上のことを経験しているはずなのに、それでも彼女達は変わらず明るくて、不思議と元気が湧いてくる。

 

 ひとまずクレープを食べながら巡を探すかと腰を上げたところ、スケートリンクの方で見覚えのある顔を見つけた。

 

 

 

「……あれ巡じゃない?……もしかしてそこにいるのが帯刀君って人?」

『……あ!本当だ!いつの間に来てたんだ!』

『た、帯刀君大丈夫かなあれ……』

 

 

 

 メインであるスケートリンクのとあるスペースに、巡が氷の上を滑っているのを見つけた。案の定巡は普通に滑れているのに対し、誘った側であろう帯刀廻は、若干転びそうになりながらも巡について行こうと必死さが伺える。

 

 

 

「ま、て、繋」

「あーあー、帯刀君大丈夫……?何か支え持ってきて」

「いや大丈夫、だっ」

「おっと」

 

 

 

 サッカー部で活躍できるほどの運動神経の持ち主である彼でも、氷上というステージではどうも全てが封印されてしまうらしい。震える足で巡にいいところを見せたいとは思っているが、強がった瞬間体勢を崩して尻餅をついてしまう。

 

 

 

「だ……大丈夫?立てそう……?肩貸そうか……」

「……悪ぃ、情けねえところ見せた……」

「ううん、気にしないでよ」

 

 

 

 若干の恥ずかしさで顔を赤くさせながらも一人では立てないと察して、廻は差し伸べられた巡の手とリンクの壁を支えになんとか立ち上がった。今から彼がある程度滑れるようになるまで特訓が続くようだ。

 

 

 

「……デートというか、なんというか……」

『どっちかというと普通に帯刀君のスケート練習になってるような……』

『でもちょっと嬉しそう……』

 

 

 

 デートと聞いて見にきたはずが、単純に楽しいスケート教室になっている気がするものの、廻本人は図らずとも巡と手を繋いで照れているあたり、彼も彼でウブなのだろう。

 

 

 

「巡ー!」

「……あ、なぎさちゃんだ。いつの間に遊びにきてたのかな?」

「知り合いか……?」

「うん。今訳あってうちに転がり込んでる」

「……はぁ???」

 

 

 

 近くを通りそうだったので、なぎさが試しに彼女達の方に呼びかけてみる。すると巡もすぐに気づいたようで、なんでここにいるんだというツッコミは置いておいて手を振り返してみる。廻に知り合いかと聞かれたものの、本当のことは言えないので誤魔化すが、少々雑になっている気がしていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……ふう、やっとろくに滑られるようになった……」

「お疲れ様、帯刀君」

 

 

 

 数十分後、スケートリンクから降りてきた廻と巡は普通の靴に履き替え、クリスマスツリー周辺のキッチンカーのあたりまで戻ってきた。廻はなんとか、支えなしでも滑られるようにまでは滑られるようになったらしい。

 あとでなぎさを見かけたら会いに行こうと思ったのだが、なぎさたちは二人の邪魔をしないために別の場所に移動している。

 

 

 

「たくさん動いたし、何か買って食べたいよね〜」

「そうだな。……このホットドッグとかいいんじゃないか?」

「あ、確かに。出来立て熱々っぽそうだしお手軽だし」

 

 

 

 そんな平和なやりとりをしながら、ホットドッグ屋のキッチンカーの列に並ぼうとした。

 

 

 

 

 

 その時、駅の方から人々の悲鳴が劈き、平和な時間に終了を告げる。

 

 

 

「……なんだ今の悲鳴」

「……あっ」

 

 

 

 逃げ惑う人々の奥から出てきたのは、何度も見覚えのある真っ黒で液状の姿をした、本来この世界にいてはいけない怪物が、周囲の建物や車を破壊しながら近づいてきたのだ。

 それは人間よりも一回り大きい、限りなく人型ではあるが、その分動きは俊敏だ。一度学校祭前にも話題になったあの怪物騒ぎの元凶によく似たそれは、廻達の記憶に新しい。そして巡は、そいつの正体を知っている。

 

 

 

 怪物が巡の姿を見つけた瞬間、彼女の前から姿を消した。

 

 

 

(嘘、こんな時に欠片……?またネオフュージョンが妨害に……?)

「巡、あぶねぇっ!!!」

「え……」

 

 

 

 唐突に廻に名前を呼ばれて振り向いた瞬間、彼に抱えられたまま一緒に投げ出される。いつの間にか巡の背後に回って迫っていた欠片の腕を、彼が身を挺して守ってくれたのだ。

 

 

 

「……っ」

「た、帯刀君……!?」

 

 

 

 幸い、欠片が腕を振り翳した際の風圧に煽られ転んだだけで、思いっきり大怪我をしたとかの外傷はない。ただ、地面にまあまあ強くぶつかったせいで気を失ってしまっている。巡に迫る危機に気づいた彼の勇気に、明らかなピンチだというのに巡の心のどこかが熱を帯びている。

 欠片はそんな彼女の心情なんぞ知る必要はない。欠片は再び標的を巡に変え、彼女に襲い掛かろうとする。

 

 そんな中、突然の怪物騒ぎに巡のピンチを悟ったなぎさが、ステフォンを持って駆けつける。

 

 

 

「巡!」

「なぎさちゃん!帯刀君のことお願い!」

「は!?あんたまさかここで変身するの!?」

「前にも同じことあったし……帯刀君に守られた分、あたしも頑張らないと」

「……わかった。これ、忘れてったでしょ?」

「うわいつの間に、ごめんねみんな」

『大丈夫だよ!』

『巡!行こう!』

 

 

 

 幸いこの怪物騒ぎで、周囲の人間は巡と廻以外はすでに避難している。今なら存分に、変身できる。

 家に忘れていったステフォンと引き換えに、気を失った廻の避難をなぎさに託して、巡は元凶である欠片の前に一歩踏み出す。

 

 ここが自分の世界で、その場所を壊そうとしているなら……関係のない友人に手を出した罪は、とても重い。巡はなんの躊躇いもなくステフォンを片手に構える。

 

 

 

 

 

「コンプリート・ステージON!」

 

 

 

 

 

「……!」

 

 

 

 なぎさに担がれた廻が、うっすらとだけ意識を取り戻す。離れゆく広場の真ん中には、先ほどの真っ黒な人形の怪物と、真っ白な光を纏った少女が対峙している。ただし彼の視界はぼやけている。

 

 

 

「現となりし、12の魂!キュアコンプリート!」

「きゅ、あ……?」

 

 

 

 何か、本来テレビアニメでしか聞かないような名乗りを聞いた気がするが、再び廻は意識を落としてしまう。彼が意識を手放す中で、コンプリートと名乗った白い天使のような少女が、巡のように見えた気がしていた。

 

 

 

 

『……!!!』

「さてどうやって……、おっと」

 

『CureWeapon!Bloom!』

 

 

 

 コンプリートはというと、自分の世界に出現した欠片を追い払うために身構えるが、先に欠片がその腕を刃のように変形させ、振り回して周囲を切り裂こうとしていた。しかしコンプリートはすぐさまブルームソード片手に応戦する。

 今までの欠片とは違って、コンプリートよりも一回り大きな人型の姿をしているため、ほぼ人間と同じ動きでコンプリートを倒そうとしている。それでも、コンプリートがやることは変わらない。

 

 

 

『PowerCharge!Beauty!』

 

「おりゃ」

『!!!』

 

 

 

 刀身が冷気を纏う氷の剣で、欠片と鍔迫り合いとなる。刃先に触れた欠片の腕がじわじわと凍りつき、欠片は一度距離を取るためにスケートリンクの方へと逃げ込む。コンプリートも後を追うが、普通の靴ではツルツルの氷上を歩くこともままならず、意図せぬ方向へと滑り出してしまう。

 

 

 

「おっとっとっと……?!」

『スケート靴じゃないから動けない……!?』

『……!!』

 

 

 

 一方の欠片はさまざまな形になれることをいいことに、足をスケート靴のようなブレード状に変形させて、まともに動けていないコンプリートの周りを走り回る。

 

 

 

『ちょっとそれずるくない!?』

「待って、この靴って滑り止めとかないのねって、うわっ」

『コンプリート!?』

 

 

 

 周囲を飛び交う欠片を捕捉するために周囲を見回すコンプリートは、奴の風圧に煽られて尻餅をついてしまう。一度滑る氷の上で転んでしまうと、慣れていなければ立ち上がるのもままならない。スケートリンクの外側では、廻をベンチの上に寝かせてきたなぎさが様子を見に戻ってくる。

 

 

 

「コンプリート!大丈夫!?」

「立てないんですけど」

「ま、待ってて!すぐ靴履き替えて……って!?」

 

 

 

 復帰に手こづっているコンプリートを見ていても立ってもいられなったのか、なぎさが近くに散乱していたスケート靴を見つけて助けに行こうとする。しかしそんな彼女の気配に気づき、欠片がそっちの方向へと滑ってくる。

 なぎさは、雪城ほのかがいなければ変身することができない。生身の自分が奴に対抗できる手段が見当たらず、純粋な恐怖心を抱いてしまう。

 

 

 

『……!!』

「しまっ……なぎさ逃げて!」

「ひっ……!!」

 

 

 

 コンプリートに叫ばれてもなお、足が震えてその場から逃げ出すことができない。このままではなぎさが欠片に襲われてしまう。

 何かすぐに欠片に追いつける且つ、ツルツルな氷上を自由に移動できそうな手段はないかと脳みそフル回転で考えを巡らせる中、ふととある光景が思い浮かんだ。

 

 

 

 ────オールスターズの世界に行った時、スケートでなくバレエではあるが、凍った地面をめちゃめちゃ優雅に動き回っている技を放っていた子がいなかったか?それも氷属性で。

 

 

 

 

 

『CureWeapon!Happy!』

『PowerCharge!Princess!』

 

 

 

 キュアプリンセスの力を纏わせたハッピーウィングは、コンプリートの背中ではなく両足に装備される。横側に小さく翼が揺れ、足裏にはフィギュアスケート用の靴のような、丸みを帯びた光のブレードが装着されている。

 

 これなら、自由に氷の上を滑ることができる。

 

 

 

『こ、こんなこともできるの!?』

「これなら……!」

 

 

 

 コンプリートはすぐに立ち上がり、氷上を優雅に滑りながら、なぎさに迫ろうとする欠片との距離を一気に詰める。彼女はジャンプし、回転する勢いで欠片の後頭部に鋭い蹴りを一発入れる。

 

 

 

「相手はあたしだよ!」

『!!』

「……!」

 

 

 

 蹴られた勢いで、なぎさに迫っていた欠片が大きく横に滑っていく。一時的に彼女に助けられたなぎさは、安堵から膝から崩れ落ちてしまった。

 

 

 

「だ、大丈夫じゃなさそうだけど、大丈夫……?」

「な、なんとか……ありがとう、コンプリート……!」

『ちょっと私!今はなるべく離れてて!』

「わ、わかった……!」

 

 

 

 コンプリートに逃されたなぎさを追おうと立ち上がる欠片ではあったが、奴の前にようやく氷上での移動手段を得たコンプリートが立ちはだかる。

 

 

 

「ここから先へは行かせないよ!」

『……!』

 

 

 

『CureWeapon!Miracle!』

『PowerCharge!Twinkle!』

 

 

 

 先に邪魔者を排除したほうがいいと判断し、欠片が猛スピードで迫ってくる。しかしコンプリートも負けじと星型の光の壁を出現させて妨害しながらスケートリンクを滑り回る。

 途中彼女の行手を阻んでやろうと、後ろから黒い闇のエネルギー弾を放ってくるが、コンプリートが放った魔法で放たれた流星群で相殺される。

 

 

 

『プリキュアァァ……!!』

「ようやくなんか喋ったね……!」

 

 

 

 

 

『CureWeapon!Whip!』

『PowerCharge!Lemonade!』

 

 

 

 ミラクルブレスからホイップウィップに持ち替え、奴がコンプリートにしか目に入っていないことをいいことに、奴の両脚に光のチェーンを巻き付ける。

 

 

 

弾ける乙女の甘い輝き(プリズムデコレーション)ッ!!」

『!!』

 

 

 

 ウィップを勢いよく引っ張り上げると、欠片はおもちゃのコマのように高速で回転させられた。ひたすら回されている欠片はコンプリートに反撃できるはずもなく、そのまま目を回して動けなくなってしまう。

 

 

 

「ちょっとこの欠片、人間味強くない?酔うってあるんだ」

『でも今ならチャンスだよ!』

「そうだね!」

 

 

 

『CureWeapon!Complete!』

 

 

 

 ステフォンから光が飛び出し、ピンク色のスタンドマイクの形をしたスタンドロッドを召喚する。これを使って目の前の欠片を浄化するようだ。

 

 

 

 

 

Dear around the world(巡り巡る世界へ),with light of salvation(救いの光を込めて)────♪」

 

 

 

 スタンドロッドに向かって、綺麗な歌声が響く。コンプリートの声に呼応し、彼女の背後に12個のハートが出現し、神々しい光が放たれる。全ては、自分を守ってくれた彼を、今度は自分が守るために。

 

 

 

「プリキュア・セーブ・ユア・ハートッ!!」

 

 

 

 声と共に放たれた12個のハートは重なり合い、一つの桃色の光線となって分身の方へと向かって伸びていく。光に飲まれて動きを封じられている奴に抵抗する手段もなく、光はその真っ黒な塊のような肉体を穿つ。

 

 

 

『────!!!』

 

 

 

 分身は光の中に閉じ込められ、すぐに飛んできたコンプリートによって抱きしめられる。光はさらに強く輝き、真っ黒な図体は急速に崩壊していく。

 

 欠片がチリ一つ残さずに消滅した瞬間、辺りはさらに強い光に満ち溢れ、破壊されかけた周囲の建物や車を修復していく。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 時刻は午後5時前。すでに日が沈んで暗くなった心野宮に、珍しく雪が降っている。電飾で飾られたクリスマスツリーと相まって、まさにホワイトクリスマスを演出しているのだが、これくらいなら翌日降り積もることはないだろう。

 白くてふわふわでとても冷たいそれが、眠っている彼の頬に落ちて、ゆっくりと体温で解け出している。

 

 

 

「……っ」

「あ、起きた」

 

 

 

 欠片によって気を失っていた廻が目を覚ますと、広場のベンチの上で横にされていた。その隣には、彼のことを待っていた巡も一緒に座っていた。

 

 

 

「……ここ、は……」

「広場だよ。帯刀君、あの化け物に吹き飛ばされて気を失ってたんだよ」

「そ、そうか……すまん。繋は怪我してねえか」

「あたしは大丈夫。君が守ってくれたおかげで無傷だよ」

 

 

 

 そう言って笑いかける巡の笑顔に一安心しつつも、さすがにベンチの上で眠ったままはまずいと感じてすぐに起き上がる。

 

 

 

「……さっきみたいに名前で呼ばないんだね」

「あ?名前……?……あ」

「……?」

 

 

 

 

 

『巡、あぶねぇっ!!!』

『え……』

 

 

 

 先ほど彼に腕を引かれた時、普段苗字で呼ぶ彼は、確かに巡を名前で呼んだ。その感覚が新鮮で面白くて、無意識に心地いいと巡は感じているのだろう。

 彼女にそれを指摘され、思い出した廻の顔は途端に真っ赤に燃え上がる。彼も彼で緊急事態な上に好きな人に危機が迫っていたからこそ、ほぼ無意識に巡を名前で呼んだのだろう。

 

 廻は両手で顔を覆って赤く染まった顔を隠していたが、気持ちを切り替えて彼女と向き合う。

 

 

 

「……め、巡」

「?」

「あの、その……来年もまた、一緒に遊びに行きたいな……」

「……!そうだね、今度はあたしも、風邪ひかないように体調に気をつけないと!」

「……ああ」

 

 

 

 告白の言葉ではなく、来年遊ぶ約束に留まってはいるものの、中学生で抱いた好きという感情を彼なりの表現で伝えたつもりだ。相変わらず巡に伝わっているのかどうかは全くわからないが、普段より少しだけ嬉しそうな声色だったような気がした。

 

 

 

「……あ、そうだ。今日幸姉がクリスマスイブだから色々作ってるんだった」

「……」

 

 

 

 そういって巡は駅の方に向かおうとするが、廻がついその腕を掴んでしまう。巡も思わず振り向いてキョトンとした顔を彼に晒す。

 

 

 

「……え?」

「わ、悪ぃ。……何というか、巡がどこか、俺たちが知らないところに行きそうで……」

「な、何言ってんの……あたしはどこにも行かないよ。年明けの学校にも行くし……」

「だよな……すまん。寝てた時に見た夢で、お前がどんどん手が届かないところに行ってて、今離れたら、もう会えないかもしれないって気がして……」

「……」

 

 

 

 うっすらと意識を失う前に見た、黒い化け物と戦う巡によく似た白い天使のような少女の姿と重なり、言いようのない不安が廻の心を支配する。

 

 そんな彼の心情を察したのか、巡はふんわりと優しく微笑む。

 

 

 

「大丈夫だよ、廻君。あたしはいなくならない」

「……ッ!」

「そうだ!来月の元旦、初詣に神社行こうよ。いつも君に誘ってもらってばっかりだし、次はあたしにも誘わせてよね」

「……あ、あ」

 

 

 

 

 そう微笑んで、「友達待たせてるんだった」と言って、今度こそ彼と別れた。巡の腕を掴んでいた自身の手を見つめ僅かに頬を赤らめる。

 

 

 

「……巡からお誘い、か……」

 

 

 

 巡本人は単純に、自身への心配からかけた言葉だったろう。しかし忘れない。巡の顔も、ほんの僅かに赤く染まっていたことを。

 

 

 

 きっと本人は何もわかっていなそうな雰囲気はあるものの、それでも彼女からそんな言葉を引き出せてたのが嬉しかった。いつも仏頂面な廻の顔が、嬉しそうに緩んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……あぁぁぁこれどっちだと思う!?」

『おおおおお互いに名前呼びだよ!?絶対伝わってるって!!』

『えぇ〜でも巡だしなあ……!!』

『きゅうぅぅ……』

『あぁ〜!?ブロッサムとハッピーとホイップがあまりの甘々空間で頭がパンクしてる〜!』

『ちょっと早すぎたか〜』

 

 

 

 駅前の隅、巡と廻のやりとりをこっそり覗いていたなぎさとプロトキュアは、二人の(主に廻の)恋の進展に勝手に盛り上がっている。

 彼の想いはちゃんと伝わった派閥と、巡だからまだわからないぞ派閥でなぜか票数が割れている上に、まあまあお熱い現場に慣れない子も若干名いるようで、現場は勝手に混沌と化している。

 

 

 

「いいなあ、あんなやりとり……恋愛ドラマか漫画でしか見ないのに……」

『私たちの存在もこの世界だとアニメなんだよなあ一応……』

『事実は小説よりも奇なりとはこのこと……?』

「いたいたなぎさちゃん、それにみんなも!」

『うわぁっ!?』

「っ!?巡!?あんたいつの間に!?」

「???」

 

 

 

 いつの間にか巡が後ろに立っていたため、なぎさとプロトキュア達が小さく悲鳴を上げる。今の会話は聞かれていないようだが、もし聞かれたとしたら色々と気まずい。

 

 

 

「というか遊びに来てたんだ」

「ま、まあ、幸さんに遊んできてもいいよって言われたし……流石にずっと家の中にいるのも体が鈍るっていうか……」

「な、なるほどそれは切実な……んじゃ、帰ろっか」

「……うん」

 

 

 

 今日はクリスマスイブ。幸姉が色々と料理を作って待っている。巡となぎさは早くお家に帰るために、駅の改札口へと向かうのだった。

 

 

 

 夜空からは小さな贈り物のように、真っ白な雪がしんしんと降っている。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

<プリキュアオールスターズの世界 海原市>

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ほのかさん、なぎささんと何かあったんですか?」

「……!」

「……って、先に気づいたのは舞なんけど……」

 

 

 

 自身の異変に気づいてか、店の裏に連れ出してくれた咲にそう問われて、ほのかはほんの少しだけ目を見開く。

 

 なぎさとの間で若干距離のあるようなやりとりをしてしまったためか、ひかりや咲と舞にも、何らかの違和感を抱かせてしまったらしい。

 彼女に相談するべきなのだろうか、あのなぎさが近くにいる以上、下手に全てを話してしまえば聞かれてしまう可能性もある。だからこそ、ほのかはなるべく平常心を繕いながらも聞き返す。

 

 

 

「ど、どうしてそう思ったの……?」

「だって、なぎささんずっとほのかさんと目線合わせてなかったし……喧嘩、しちゃったのかなって……」

「か、喧嘩というわけじゃないけど、その……」

 

 

 

 ……どうやら咲は、自分たちが喧嘩してしまったと思って心配してくれているようだ。おそらく舞はまた別の意味で不穏な何かに勘付いたのだろうけど、友達想いだからこそできる非常に彼女らしい答えだった。

 ただ、咲的にはあんなに仲のいい二人が喧嘩するとは何事だと本気で心配しているようで、ここまで思われているとなると本当のことを言わなければならないような気がした。脅しがなんだ、彼女に怯えている場合じゃないだろう。

 

 

 

 

 

「……実は、折り入って言わなきゃならないことがあって────」

「……!?ほのかさん後ろ!!」

「……っ!?」

 

 

 

 ほのかは何かされるのを百も承知で、今のなぎさがなぎさではないことを告げようとした。しかしそれは、ほのかに何かしらの危機が迫っていることに気づいた咲の声によって遮られる。

 

 

 次の瞬間、頭部に重い衝撃と激痛が走り、ほのかは意識を手放し地面に倒れ込んでしまう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「────あーあ、だから言ったでしょ。いくらほのかでも手加減できないかもって……」

「……っ!!あ、あなたは……!」

「咲!何があったの!?」

「……ほのかさん!?」

 

 

 

 声と張り倒されたような重い音が聞こえ、テラス席の方にいたひかりと舞が駆けつけ、その状況を初めて目視することになる。

 誰かに殴られ意識を飛ばし倒れてしまったほのかと、ほのかの方に駆け寄りつつ殴り飛ばした相手を警戒して睨みつける咲。そして、彼女が睨む先にいるのは、真っ黒な闇のオーラを僅かに纏った拳を握りしめたまま、虚ろで澱んだ紅い瞳を揺らすなぎさの姿が、そこにいたのだ。

 

 

 

 どう見てもおかしな状況かつ、なぎさの様子が明らかにおかしく、二人もすぐに警戒する。特に舞は、先ほどから隠しきれていなかった彼女の僅かな違和感の正体に気づいたようだ。

 

 

 

「……あなた、なぎささんじゃない……!」

「ひどいなあ、私はまだ何も出していないのに……」

「ほ、ほのかさんを打ってるのに何言ってんの……!?」

「……それは悪かったわよ。でも、ほのかも悪いのよ?言うなって言ったのにバラしちゃうんだから……」

 

 

 

 なぎさらしき人物は、特に悪びれる様子もなく3人に対して堂々と話を続ける。特に咲は、目の前で一連の状況を目撃してしまったかつそれを止められなかったために、一番警戒している様子だ。周囲には、不穏で暗くて嫌な気配が立ち込めている。

 本来なら妖精や異世界の人間が一番感じ取りやすいその気配を、生身の人間である彼女たちでさえもビリビリと伝わっているあたり、目の前の少女が明らかに“ここにいてはいけない異常な存在”というのが嫌でもわかってしまう。

 

 

 

 それなら、自分たちが知っている本来の『美墨なぎさ』はどこへ消えたのだろう?

 

 

 

「あなたは誰?私たちの知っているなぎささんはどこにいるの……?」

「ひかり達にまでそんなふうに言われちゃうなんて、ちょっと傷ついちゃうわよ」

 

 

 

 戯けるようにそう言っても、3人の警戒は緩まない。

 

 

 

「……はあ。隙を見てほのかだけを連れていくつもりだったけど……先にあんた達の相手をしないといけないようね」

 

 

 

 とうとう化けの皮が剥がれたのか、不気味な笑みから一瞬で顔から感情を消したなぎさが黒い闇に包まれ、本来の姿を見せる。

 

 

 

 真っ黒なコスチュームに紅く煌めくクリスタル、背中に生えるは一対の黒い翼で、その瞳は澱んだ紅い色にゆらめいている。

 

 

 

 ひかりは一瞬ではあるものの、その姿に見覚えがあった。

 

 

 

 

 

「……っ!?」

「……!」

「やっぱりなぎささんじゃない……!?」

「失礼ね……いいわ、キュアコンプリートを呼ぶ前に、先にこの世界のプリキュアを────「ダメェェェ!!!」……!」

 

 

 

 相手はまだ何も変身していないのに、なぎさは────闇の使者のダークネスブラックが攻撃を放とうとした時、彼女達の間に一人の少女が割って入ってきた。

 

 

 

 

 

「え、えぇ……?」

「……ラブリー、どういうつもり?」

「それだけは……それだけは、絶対にダメ……!」

 

 

 

 

 

 ダークネスブラックの前に立ちはだかったのは、彼女と同じ闇の使者であり、この世界でブラックのことを探しにきていたはずのダークネスラブリーだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『邪魔は入ったようだが……そろそろ“頃合い”のようだな……。キュアコンプリートの足止めにも成功している……』

 

 

 

 どこかの世界の最深部。

 

 ネオフュージョンの手の中には、決して闇に染まろうとしない小さな一つの輝く光の玉が浮いている。

 

 これは、自身の元にいる闇の使者達、引いてはダークネスブラックにすらも一切知らせていない、ブラックを確実にこちら側へ引き込むための交渉材料である。

 

 

 

 

 赤い双眸をギラギラと怪しく光らせながら、自身の力を分け与えた者の動向に笑みを浮かべた。

 

 

 

 

 

続く…

 




次回更新日:8月17日(土)
お盆なので実家でゆっくりします
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