PrecureStageON!   作:主氏レム

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最終決戦


第41話:世界再突入!闇の使者を追いかけて

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふと思ったんだけどさ……」

「何」

「なぎさちゃんって、パートナー妖精的な存在がいなかった?投げ出される時に変身したままなら一緒についてきてるんじゃない?」

「……もしかして、メップルのこと?」

「そう」

「……いるけど……」

 

 

 

 なぎさが、自身の変身アイテムであるハートフルコミューンを見せる。しかしそれは閉じたままだ。少し断りを入れて巡はそれを開こうとするが、なぜか開けることができない。

 

 

 

「……あれ?」

「こっちにきてからずっとこんな感じで……」

『……もしかすると、巡ちゃんの世界の影響で動けなくなっちゃってるのかも!』

「巡の世界の?」

 

 

 

 プロトハート曰く、巡の世界では“プリキュア”という存在が、アニメや漫画などの“創作物”の中での話となる。

 以前巡が『キラキラ☆プリキュアアラモード』の世界に来た際に、ホイップ達の扱うクリームエネルギーでの攻撃でないと攻撃が通用しないことがあった。要は“郷に入ったら郷に従え”ということで、世界ごとに適用される設定(ルール)があるという。

 当時はフローラロッドの力でゴリ押したのだが、今回はまずプリキュアや敵の能力に関わるものでなく、巡の世界がまずファンタジーな世界ではないことや、プリキュアの概念そのものに関わるものである。そもそも怪物が出て大騒ぎになるくらいだ。この前のクリスマスだって、まあまあ大きく取り上げられていた。

 

 

 

 おそらくメップルがずっと喋らないのも、この世界の影響でただの玩具になってしまっているのだろう。

 

 

 

「そ、そっか……あ〜、せめてメップルが起きてくれれば心細くないのに……。ん?それならなんでアンタ達は普通に動けるの?巡もガッツリ変身してたし……」

「……そういえば考えたことなかったね」

『それに関してはアタシたちも分からないかな……』

『ステフォンは特別なものだったりして……!ほら、巡が夢で生まれるところ見たって言ってたし!』

「夢だから確証はないけど……」

 

 

 

 巡は一応、夢の中で本来の持ち主が生み出したものだったということを見ていた。だからと言って、それがステフォンの例外性を高める理由になるかと言われれると、素直に首を縦に振ることはできない。

 

 

 

「……はぁ、私は一体いつになったら帰れるんだろう……」

「……帰れると、いいね」

「こ、怖いこと言わないでよ」

 

 

 

 心野宮の屋外スケートリンクからの帰り道、二人しかいない路地でそんな会話が繰り広げられていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

第41話:世界再突入!闇の使者を追いかけて

 

 

 

 

 

<巡の世界 心野宮・繋家>

 

 

 

 

 

 12月26日。クリスマスも終わり、街の年末年始の色が一段と濃くなる今日この頃。

 

 そんな真冬の午前7時半。冬休み中でのんびりしている繋巡と、引き続き元の世界に帰ることができずに巡の家に滞在している美墨なぎさは、お休みだと言うことで、それぞれの布団の中でぐっすりと眠っている。巡はベッドの上だが、なぎさは滞在中と言うことで、敷かれた布団の上にいる。自室においての巡の行動範囲が狭まるが、仕方がない。

 

 

 

 

 

「……」

「……」

「……マジで?」

 

 

 

 二人が夢の中にいる頃、ステフォンの中から飛び出したプロトキュアたちが、ある物体を前に険しい表情を浮かべていた。特にブラックは、「マジかよ」と言いたそうな様子だ。

 

 

 

「……触っても、何にも起きないね」

「それならそれで全然いいんだけどさ……あまりにも唐突すぎない……?」

「でもそれって、絶対向こうで何かが起きてるってことですよね〜?」

 

 

 

 彼女たちが囲んでいるのは、とある世界につながるワープホールだ。

 それは、今巡の家にいるなぎさがいるべき『プリキュアオールスターズ』の世界につながるものだ。以前、闇の使者であるダークネスブラックによって投げ出され、外側から入ってこれないようにされてしまったのだ。

 一日一回以上はこれを開いて触れようとしたのだが、毎回弾き飛ばされてしまっていた。そして今朝、開いてゆっくり触れてみると、黒い雷撃が走って弾き飛ばされることなく覗けたのだ。

 

 

 これで、晴れてなぎさは元の世界に帰ることができる。しかしそれは同時に、ダークネスブラックが何かを仕掛け終わったことを意味する。

 

 

 

「……これ、どうする?」

「どうするも何も、まず巡たちに話さないと!おーい巡ー!起きてー!」

「なぎささんも起きてくださーい!もう朝ですよー!」

 

 

 

 プロトキュアたちはまだ寝ている二人の上に飛び乗って目覚めを促す。手のひらサイズなので特に重くて根をあげることはないが、ワラワラと体の上で動かれると何かしらの違和感を感じたのか、流石の巡もぱっちりと目をさます。

 

 

 

「うーん、よく寝た……あ、ラブリーおはよう」

「おはよう巡!聞いて聞いて!」

 

 

 

 とりあえず自分の体の上で動き回るラブリーを諫めつつ、巡がベッドの上から降りてくる。一方のなぎさは、ホイップたちの呼びかけに応じているのかいないのか、寝返りを打って起きる気配がない。

 

 

 

「起きてくださいよ〜!」

「君、休みだからってゆっくりしすぎじゃない……?」

「うぅ……後5分寝かせて……」

「ダメだよ〜!」

「先輩が起きる気配がなさすぎる」

「ど、どうしよう!この人に一番関わる話なのに」

「みんな、ここは任せて」

 

 

 

 巡の世界に滞在してはや1週間。プリキュアとはほぼ無縁の生活が続いたためか、なぎさはこの世界の営みになじみかけていた。そもそもしばらく家の中ですることがほとんどなかった上に、巡の姉である幸にかなりもてなされてしまったことで、彼女の気がかなり緩んでいるのも事実。

 

 ほぼ大学生みたいな生活だったなぎさが全く起きず困ったプロトキュアたちだったが、彼女たちの中で自分なら起こせるかもとブルームが手を上げた。

 眠るなぎさの耳元で、ブルームはこう囁いた。

 

 

 

 

 

「なーぎささん、せっかく元の世界に帰れそうなのに、のんびりしてていいんですかー?」

「んぅ……もとのせかい……は、はぁっ!?!?元の世界!?本当に!?」

「……マジ???入れるようになったの?」

 

 

 

 元の世界に帰ることができるという話を聞いて、なぎさが勢いよく飛び起きた。ついでに巡もその話を聞いてやったねと言った様子で声をあげる。

 

 

 

「帰れそうには帰れそうなんだけど……」

「な、何?何か問題があるの……?」

「……ああ、もしかするとダークネスブラックが何か仕組んだかもしれないのかな?」

「そ、そういうこと……?!」

 

 

 

 ハートが渋ってなぎさが困惑するも、巡もどうして突然ワープホールが開いたのかがわかったらしい。

 ダークネスブラックが侵入できないようにしていたのなら、その間に何かを仕掛けていてもおかしくないと、巡もプロトキュアたちが最初に抱いた懸念と同じことを考えたようだ。

 そしてなぎさもまた、巡の呟きにその可能性を思いついてしまった。

 

 今自分たちの目の前で渦巻いているワープホールを通れば、巡たちは再びあの世界へ入ることができる。しかし、何をされているかは誰も知らない。知る由もない。

 

 

 

「……どうする?」

「どうするって……私は帰りたいよ、元の世界に。ほのかたちが待っている世界に。例えあいつに何かされてようとも、私の帰る場所はあっちなんだから関係ないわ」

「……そっか、それなら準備しないとね」

 

 

 

 一度巡は問いかけるが、なぎさは特にブレることなく帰ることを選んだ。

 巡にも、あのダークネスブラックには言いたいことはたくさんあるし、彼女を助けたい。それならいっそあの世界へ行って彼女を捕まえるのが手っ取り早いと考えていた。

 

 

 

「……でもまずは」

「うん」

「……?」

 

 

 

 

 

 朝ごはん食べないとなあ。二人は声を揃えて呟いた。

 

 偶然が生んだ1週間の共同生活の中で、二人の間で不思議な絆が育まれていったようだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「それじゃあ、なぎさちゃん送ってくるね」

「お世話になりました!」

「うん。またいつでも遊びに来ていいからね」

 

 

 

 朝の支度を終えた二人は、急になぎさがいなくなって怪しまれないように、外でワープホールを開くことにした。そのため、巡の姉に別れを告げてとある場所へと向かっていく。

 

 

 

 

 

 電車に乗って、通学路を歩いて辿り着いたのは、巡が通う私立光星中学校の校舎だった。今は冬休み中。一応年末年始の閉鎖期間にはギリギリかかっていないので、校舎内やグラウンドでは運動部や吹奏楽部が普通に学校で練習をしている。

 

 裏口からなぎさを連れてこっそり校舎内に侵入し、階段を登ってやってきたのは屋上だ。屋上のちょっと奥にある物置の後ろに隠れ、あの世界へつながるワープホールを展開する。

 

 

 

「ここって……あんたの学校?」

「まあね」

「私が勝手に入っても大丈夫なの?」

「いざという時は会長権限でどうにでもなるよ」

『それでいいのか繋巡』

『そういえば、初めて世界を巡った時もここからだったよね』

「わあ懐かしい……あれから8ヶ月もたってるの……?」

 

 

 

 巡が初めて変身したのを覗けば、この場所から巡は初めて様々な世界へ飛ぶようになっていった。あの時は、闇の使者の事情もステフォンのことも知らないことばかりで、ただ純粋にステフォンの中にいるプリキュアたちを助けたいと思って戦っていた。

 色々と知った・知ってしまった今だからこそ、巡はステフォンが宿す力を持って、ダークネスブラックと対峙しなければ、助けなければならない理由があるのだ。

 

 

 

「……怖い?」

「とっても」

「……同じ気持ちでちょっと安心した」

「何それ。……じゃあ、そろそろいくよ」

『二人とも、気をつけて行こう!』

 

 

 

 

 

 ラブリーからの言葉に頷きながら、二人は同時に踏み出し、ワープホールの中へと飛び込んでいく。

 

 星の様な煌めきが、虹の様なゆらめきが、一瞬にして通り過ぎ、冬の屋上から見た空がどんどん遠ざかっていく。足元の出口には、なぎさの帰る場所であり、巡が目指す世界が広がっているのだろう。

 ほんの少しの恐怖と、胸一杯の勇気を抱えながら、その先へと突入していく。

 

 視界が、白い光で塗りつぶされる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

<プリキュアオールスターズの世界 海原市>

 

 

 

 

 

『ザケンナーァァァッ!!!』

『ウザイナーァァァッ!!!』

「おおやってるねえ」

『やってるねえって言ってる場合じゃないってば!!』

『こんな時にもド安定すぎるよ!?』

「しかもここって、咲ちゃんたちが住んでるところじゃない!?なんで!?」

 

 

 

 ようやく突入できた『プリキュアオールスターズ』の世界の海原市に、怪物たちの姿をしたネオフュージョンの欠片の大群が押し寄せていた。

 どう足掻いても緊急事態という状況にもかかわらず、巡はもはや安定感ある通常運転をかましている。いや、むしろこうなってるだろうという予想はある程度立てていたからこその冷静な反応だ。

 

 

 

『多分だけどこの近くに闇の使者がいるとか!?』

「ちょ、ちょ、ちょっと!!どうすんのよ!」

「どうすんのって……そんなの、これ(・・)しかないでしょ」

 

 

 

 変身できないなぎさは混乱する一方、巡は反対に堂々とステフォンを構える。そっちから襲いかかってくるならこっちだってプリキュアになって突っ切るしかない。

 

 

 

「なぎさちゃん、少し下がってて。コンプリート・ステージON!」

 

 

 

 コンプリートはステフォンから溢れる光によってすぐにキュアコンプリートの姿に変身すると、迫り来る欠片たちをその拳で一気に押し返す。後ろには生身のなぎさがいるため、彼女を守りながらの戦いになる。

 

 

 

『CureWeapon!Heart!』

『PowerCharge!Egret!』

 

銀翼の矢(フェザーハートシュート)ッ!!」

 

 

 

 上空に放たれたハートアローの銀の光の矢は分裂し、鳥の羽のような形となって雨のように降り注ぐ。コンプリートたちを囲む欠片たちが一気に消滅し、見晴らしが良くなった。

 

 そんな中、コンプリートたちが向いた別の方から爆発音が聞こえ、誰かが吹き飛ばされてきた。

 

 

 

「ぐっ……!」

「……!!」

 

 

 

 欠片の攻撃に吹き飛ばされてきたのは、キュアブルームとキュアイーグレットだった。土煙の中から飛び出した彼女たちは、体勢を整えて着地し次に迫ってくるであろう攻撃に備えて構える。その二人の姿を見つけ、ようやく帰ってきたんだと安堵したなぎさは二人の方に駆け寄っていく。

 

 

 

「二人とも〜!無事なのね!?」

「……え、な、なぎささん……っ!?なぎささんなの!?」

「嘘、本当に……!?」

 

 

 

 駆けつけてきたなぎさに対して、ブルームとイーグレットはどこか困惑した様子で信じきれていない。先輩に対してかなり失礼な反応ではあるが、無理もない。

 この二人は、なぎさと入れ替わったダークネスブラックを見ているのだ。

 

 

 

「ちょ、ちょっと!私よ!美墨なぎさ!!」

「それは存じてるんですけど!!」

「……もしかして、君ら怖い方のなぎさちゃんに出会ってる?」

「怖い方の……?ま、まさか……」

 

 

 

 コンプリートがその話を聞いてすぐに察して聞いてみると、二人も心当たりしかなくて、目の前のなぎさが自分たちが知っているこの世界の美墨なぎさだとようやく一致したようだ。やはり、何かされている。

 

 

 

「なぎささん!?本物のなぎささんだ!?一体どこに行ってたんですか!?」

『お、落ち着いてそっちの私!!』

「そうだほのかは……!?ここにザケンナーもいるってことは、ほのかも近くに……」

「そ、それが、大変なことになって───「きゃあぁぁ!?」……今の声は!」

「私たちが吹き飛ばされたからルミナスが……!」

 

 

 

 奥の方で、ルミナスの悲鳴が上がった。

 

 

 

「……話は走りながら聞くよ」

「ルミナスを助けないと……!」

『……って、なぎささん生身で行くの!?』

「ひかりのピンチに駆けつけないわけないでしょ!?」

 

 

 

 3人のプリキュアの後ろをなぎさが追いかける形で、ルミナスの方へと急ぐ。その間に、コンプリートたちはこの世界でいったい何が起きているのかの詳細を耳にする。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ────それは、コンプリートがこの世界に辿り着く数十分ほど前にまで遡る。

 

 

 

 

 

「……はあ。隙を見てほのかだけを連れていくつもりだったけど……先にあんた達の相手をしないといけないようね」

 

 

 

 今まで自分たちが『美墨なぎさ』だと思って接していた人物は、彼女にとっての一番の親友であるはずの雪城ほのかを打って気絶させた。明らかに女子中学生ともプリキュアとも思えないような乱暴さに混乱しつつも、その人物は突如としてその姿を『真っ黒なキュアブラック』────ダークネスブラックへと変えた。

 その時点でほのかがあのブラックに脅されて本当のことを言うことができなかったことも知ったようだ。

 

 

 

「……っ!?」

「……!」

「やっぱりなぎささんじゃない……!?」

「失礼ね……いいわ、キュアコンプリートを呼ぶ前に、先にこの世界のプリキュアを────「ダメェェェ!!!」……!」

 

 

 

 自分たちはまだ何も変身していないのに、ダークネスブラックが攻撃を放とうとした時、彼女達の間に一人の少女が割って入ってきた。

 

 

 

 

「え、えぇ……?」

「……ラブリー、どういうつもり?」

「それだけは……それだけは、絶対にダメ……!」

 

 

 

 ダークネスブラックの前に立ちはだかったのは、真っ黒なキュアラブリーだった。確実にあのブラックの仲間のようだが、黒いラブリーはあのブラックに対して黒い光の剣の剣先を向けていたのだ。

 彼女たちの間で何かがあったのか、とてつもない緊張感が走っている。しかしブラックは特に気にすることもなく、気絶して動かないほのかを抱えてどこかへいなくなろうとする。

 

 

 

「ほのかさんをどこへ!!」

「言ったでしょ?連れていくだけだって。……それでラブリー、あなたまで邪魔するの?」

「違うよ……!なぎささんしっかりして!あなたがこんなことしてどうするの……?」

「……何を言ってるの。私は正気だよ」

「ううん。あなたは、元の世界を戻すためにステフォンを狙ってたんでしょ……?なのにどうして、関係ない世界まで壊そうとするの……!?」

「……ほのかがいない世界なんて、いらない」

「え────」

 

 

 

 瞬間、二人の黒いプリキュアはほのかごとどこかに消えた。いや、人一人抱えたブラックが、ラブリーの方に飛びかかっていったようにも見えた。

 

 その後すぐに追いかけようとしたところに大量の欠片が出現し、行手を阻まれてしまっていたようだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『CureWeapon!Melody!』

『PowerCharge!Luminous!』

 

「「プリキュア・ツイン・ストリーム・スプラッシュッ!!」」

 

 

 

 リィン、澄んだ音と共に虹色の光がどこかから放たれ、シャイニールミナスを取り囲んでいた欠片達の動きが一気に封じられる。

 そこへ、吹き飛ばされた先から戻ってきたブルームとイーグレットが放つ二つの光の奔流が包み込み、周囲に出現していた欠片を巻き込んで浄化させる。

 

 

 

「ルミナス〜!大丈夫だった!?」

「……!二人とも!それにあなたは前の……」

「久しぶりだねえルミナス」

「ルミナス〜!!」

「きゃあ!?……って、な、なぎささん!?」

 

 

 

 ようやく自分と仲のいいルミナスの顔を見ることができ、なぎさは安堵から彼女に抱きついた。ルミナスもダークネスブラックを見ているために一瞬警戒と驚愕をしていたものの、その人物が自分たちの知っている方のなぎさだとわかってくれた。

 

 

 

「で、ブラックとラブリーはどこに?」

「大空の樹の方に飛んで行ったよ!そっちにいく途中で欠片を放たれて!」

「オッケーつまりあそこにほのかちゃんもワンチャンいるかもってことで妨害されてたんだね」

 

『CureWeapon!Happy!』

『PowerCharge!March!』

 

「ちょっと探してくるから、なぎさちゃんのこと頼んだよ!」

「あ、ちょっとコンプリート!?」

 

 

 

 コンプリートはハッピーウィングに疾風を纏って、ダークネスブラックがいるであろう大空の樹の方へと飛んでいく。なぎさのことは3人に任せた。

 そこに彼女がいるということは、今のブラックでは絶対にコンプリートは攻撃される。それなら生身のなぎさをわざわざ危険な目に遭わせるわけにもいかなかったのだ。

 

 もちろんなぎさも追いかけようとするが、周りには再び湧き上がってきた欠片達が行手を阻もうとしている。

 

 

 

「……なぎささん、コンプリートを追いかけて!」

「ここは私たちが引き受けます!」

「ほのかさんを助けに行ってください!」

「みんな……!わかった!」

 

 

 

 相方を連れ攫われてしまったなぎさの心情を察してかブルーム達に背中を押された彼女は、先に上空へ舞い上がったコンプリートを追いかけるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 彼女たちの言葉通り、コンプリートは最速で大空の樹の元へと辿り着く。そこでは案の定、誰かがとんでもない量の闇の力を放出しながら明らかに不穏な様子で佇んでいた。

 嫌な気配が、彼女から放たれている。

 

 

 

「あれって、ダークネスラブリー……?ブラックとほのかちゃんがいない……?」

『嘘でしょ……!?あいつどこに……!!』

『というかあのラブリーの様子おかしくない!?あれってどう見ても────』

 

 

 

 

 

 ステフォンの中でラブリーが声をあげる。

 

 それは『ドキドキ!プリキュア』の世界で初めてダークネスラブリーと対峙した時に起きた事故。あるトリガーを引いてしまったことで、彼女の中にある闇の力を制御できずに暴発してしまったあの出来事。

 

 今目の前で佇んでいる彼女はコンプリートの存在に気づくと、すぐさま黒い光の剣を構えて飛びかかってきた。その目は、鮮やかな紅い光をギラギラと輝かせている。

 

 

 

「ぅあ゛あぁぁぁっっ!」

「……っ!!」

 

『CureWeapon!Peach!』

『PowerCharge!Beat!』

 

 

 

 ピーチイージスから青い光のバリアがすぐに展開され、ダークネスラブリーの突撃を直前で防ぐ。ビリビリと火花が散る中、バリアの方から弾かれたギターの音色で一度弾き飛ばす。

 それでもダークネスラブリーはすぐに体勢を直し、周囲に大量の黒い闇のエネルギー弾を展開して、コンプリートの方へと集中砲火する。

 

 

 

「ねえこれ前と同じこと起きてるって」

『な、なんとか近づいて暴発を止めないとうわわっ!?』

 

 

 

 誰も近づけさせないと言いたげに放たれたエネルギー弾の嵐を掻い潜りながら、コンプリートは必殺技を放つための隙を窺う。しかし無差別に周囲に攻撃を放っていた前回とは違って、ダークネスラブリーはコンプリートだけを狙っている。ある程度は使いこなせるようには落ち着いてきたのかどうかはともかく、このまま狙われ続けられている状況も良くない。

 

 それに前回と違う点は、今この場にいる味方が誰もいないという点だろう。他のプリキュアたちは欠片に阻まれて後から来るだろう。

 前回はハートも巻き込まれていたからこそなんとかなったところもあり、一人で彼女を止められるかもわからない。

 

 

 

「……っ、……!!」

「……大丈夫、あのブラックとの間で何があったのかわからないけど、自分でも止められないならあたしも手伝うよ!」

 

『CureWeapon!Black!』

『PowerCharge!Princess!』

 

 

 

 降り注ぐ弾丸の雨を走り抜けて、プリンセスの力をまとった拳を構えて一気に距離をつめる。蒼風を纏う拳からは青い光の弾丸が連続で放たれ、コンプリートに集中するダークネスラブリーの方へと飛んでいく。

 

 

 

「え……ひ、め……」

 

 

 

 苦しそうな顔でコンプリートを狙っていた彼女だが、その攻撃に対して一瞬だけ正気を取り戻した。しかしあの攻撃には威力はない方だと気づいて、すぐに衝撃波を放って相殺させる。しかし、その一瞬でコンプリートの姿を見失ってしまう。

 

 

 

「……!いない……」

 

 

 

 

 

『CureWeapon!Blossom!』

『PowerCharge!Rouge!』

 

「!!」

 

 

 

 ステフォンの音声が聞こえて見上げると、いつの間にか飛び上がったのか、ブロッサムミラーの力で分身したコンプリートが、鏡面から溢れ出そうとしている炎を向けている。

 

 

 

真実映す純情の花(トゥルーフォルテストライク)ッ!!」

 

 

 

 分身たちが放った真っ赤な火球が周囲の地面に被弾し土煙を舞い上がらせ、ダークネスラブリーの視界を閉ざしてしまう。

 

 

 

「前が……っ」

「一旦落ち着いてね!プリキュア・ブレッシングキッスッ!!」

 

 

 

 舞い上がる土煙を切り裂いて、ダークネスラブリーめがけて放たれたのはハートの形をした桃色の光の弾丸。コンプリートの想いがこもったそれは猛スピードで放たれ、ダークネスラブリーが気づいた時にはもう目の前まで迫っていた。

 

 もちろんそれを被弾させないためにも彼女はバリアを張ろうとした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『はあ……はあ……、私は、もう助からない……。いや、助けを乞う筋合いなど、ない……』

『■■■!そんな……!』

『せめてもの償いだ……私は、この命を賭しても……君たちが再びこの場所へ集えるように……』

『ダメだよ!そんなことしたら■■■が……!■■■がやるなら私も……!!』

 

 

 

 

 

『■■■……せめて、君の心だけでも────』

『■■■!待って────』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「────ジュン……ッッ」

『え……?』

 

 

 

 ダークネスラブリーの脳内に流れたのは、消えているはずの自分が見た記憶。まだあの世界でプリキュアだった頃の、あの白いプリキュアによって世界が崩壊した()に見た何か。

 

 

 

 あの白いプリキュア(キュアクルセイダー)によって、自分が逃がされた時の記憶を、思い出してしまったのだ。なぜかはわからない。しかし自分の分身()が捨てフォンの中に入ってしまった理由が彼女にあったのだ。

 

 訳も分からぬまま知らないはずの名前を呼んでしまったことで、自分に迫っていたコンプリートの攻撃を防ぐことができず、彼女の胸にそれは貫くように撃ち込まれてしまった。

 放たれた想いの力に溢れ出す闇の力は浄化され、ダークネスラブリーに纏わりついていた余分な闇の力が振り払われ収束していく。

 

 

 

「……っ、ぅ、……!!」

 

 

 

 ようやく闇の力が収まり、力が抜けたダークネスラブリーが膝から崩れ落ちる。今のフラッシュバックで、冷静さを取り戻したようだ。

 コンプリートに支えられながらも、彼女は何かを思い出したように表情を曇らせる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『ラブリーならわかってくれるよね?』

『え……?』

『ほのかが……みんながいない世界なんていらない……壊さないと……』

『それは、違う……!!』

『違わないよ。ラブリーだって、自分を、仲間を殺したあいつが憎いでしょう?』

『に、憎いだなんて……!やっぱりなぎささん、何かおかしいよ……!そもそも、あなたは本当に────』

『───理解してくれないなら、ラブリーには足止めしてもらおうかしら』

『足止め……?!ま、待ってブラック、何をして……あ……』

 

 

 

 ブラックとの間で何かあったのだろう。ダークネスラブリーが暴発するまでの最後の記憶は、怪しげに紅く輝いたダークネスブラックの冷たい瞳だった。その光を見た瞬間、体の中から闇の力が溢れ出してしまったのだ。

 制御できぬ量の闇の力を押さえ込んでいた隙に、あのブラックはほのかを抱えてどこかに消えてしまったようだ。

 

 

 

 

 

「……ぅ、ひぐっ……!!ごめん、なさい……っ!!」

「どうしたの……?さっき聞いたけど、あなたの知ってるブラックを止めようとしてくれたんだよね……?」

「……っ」

 

 

 

 コンプリートの優しげな問いかけに、ダークネスラブリーはうんうんと嗚咽を堪えながら小さく頷いて肯定する。

 

 他の闇の使者の中で今の状態のブラックに出会っているのは、現状では彼女だけのようだ。ブラックを探してようやく見つけたのに、その彼女の様子がおかしいことに気づき、誰にも相談できないまま大混乱を起こしてしまった彼女の心労は計り知れない。

 そして、いざ止めようとしたら彼女に攻撃されて、何もわからないまま暴発してしまい、またしてもコンプリートによって鎮められてしまった。

 

 心配しつつもラブリーを安心させるため、コンプリートは彼女の背中を優しく摩りながら声をかける。ポタポタと、鮮やかな紅い瞳から大粒の涙が溢れ出している。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「お願い……!ブラックを……あのなぎささんを止めるのを、手伝って……!今のあの人は……っ、私たちが知ってるなぎささんじゃない……っ!!私たちじゃ、あの人を引き止められない……ッッ!!!」

「……」

「あの人は、ここだけじゃない……。他のプリキュア達がいる町にも、欠片を沢山放ってる……。このままじゃ、みんなやられてしまう……っ!」

 

 

 

 嗚咽も苦しみも堪えながら、絞り出すように溢れたダークネスラブリーの言葉は、自分じゃどうすることもできないと悟ってしまった、静かな悲鳴と虚しい絶望だった。

 

 

 

 

 

 ────たった一人で抱えた、救世主(繋巡)救い(助け)を求める声だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……いいよ。あのブラックを止めに行こう」

「……っ!なん、で……」

「あのブラックにやられっぱなしもいい気分じゃないし、何よりもあの人を説得しにいかないとできないことがあるしね。あと、なぎさちゃんを連れてきたと思ったら、今度はこの世界のほのかちゃんもいなくなってるようだし……」

 

 

 

 もはや懇願に近いような嘆きの声は、コンプリートがしっかりと掬い上げた。コンプリートにとっては自分たちは敵のはずなのに、どうして彼女はその声に応えようとしたのかがわからない。

 

 しかしコンプリートは、さも当たり前だというように笑顔でこう言ってのけた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「それに、泣いている人を見ると体が動いちゃうのがあたしだからね。相手が闇の使者だろうと関係ないよ」

「……っ、ありが、とう……!!」

 

 

 

 キュアコンプリート────繋巡にとって、敵だとか味方だとかは関係ない。泣いている人に駆け寄り何かできることをしたいという、幼い頃からの憧れの影響を受けた思考回路からである。

 彼女にとって今やるべきことは、あのブラックをなんとかして説得することと、今泣いている彼女の力になることだ。

 

 ダークネスラブリーの涙が落ち着くまで、コンプリートは彼女の背中を撫でながら、ずっと彼女の嘆きを静かに聴いていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ようやく落ち着いたラブリーが、コンプリートたちの足元に真っ黒なワープホールを出現させる。いつものようなオーロラと星空を思わせるような神秘的な雰囲気よりも、深淵をのぞいているような、じわじわとした恐怖感を煽らせてくるような禍々しい色をしている。

 

 

 

 これが、ネオフュージョンが棲みつく世界に繋がる固有のワープホールらしい。

 

 

 

「……この先に、攫われたほのかちゃんもいるんだね?」

「うん。……ブラックも、きっとそこにいる」

 

 

 

 今いる世界に無限に出現しているネオフュージョンの欠片の処理はこの世界のプリキュアたちに任せ、この場にはコンプリートとダークネスラブリーだけがいる状態だ。

 

 

 

『待っててほのか、すぐに助けに行くからね……!……そういえばこっちの私は……』

「生身で巻き込むわけにもいかないからルミナスたちに任せてるよ……「ちょっと待った!!!」……あ」

 

 

 

 二人を追いかけて現れたのは、この世界に帰ってきたばかりのなぎさだった。息を切らしてまで二人を追いかけてきたようだ。

 

 

 

 

 

「……私も、連れて行って」

「……!」

『なぎささんも!?』

「3人が背中を押したのよこっちも……!私がほのかのところに行かないでどうすんのよ……!」

「本当は待ってて欲しいけど……うん、そうだよね。なぎさちゃんも一緒に行ってあげたほうがいいよね」

 

 

 

 でも無茶だけはするなと釘を刺し、急遽なぎさもネオフュージョンの世界へ突入するメンバーに加わった。もちろん、変身はできないために責任を持って自分たちが守ることになる。危険な目に遭おうとも、それ以上に攫われた相方を助けに行きたいという思いは、この場にいる誰よりも強い。だからこそ、コンプリートは無理に止めることはできなかったのだろう。

 

 

 

 

『……いよいよだね。アイツの世界だなんて』

「十中八九奴が何かを仕掛けているとしか思えないし、もしかするとこれが最終決戦っていうのかもしれない。……それでもあたしは、あのブラックを助けるために戦うよ」

『アンタなら、そう言うと思った』

「あれ察せられてる?」

『いつからアンタに付き合ってると思ってんの?』

「そうだった。……でも君、みんなの中だと短いほうだよね」

『う、うるさいわね揚げ足取らないでよ』

「はいはい。……それじゃあ、行きますか」

 

 

 

 一度深呼吸をし、コンプリートは深淵へと足を踏み入れる。

 

 

 

 

 

 ここか新崎は未知の領域。巡の世界では元ネタとなるべき存在自体がない、アイツの世界へと飛び立つ。

 コンプリートの胸には、不思議と恐怖という感情は湧き上がることはなかった。恐怖以上に、助けたい人に手を伸ばすという純粋な強い意志が、彼女の中で渦巻いていた恐れを上書きしているのだ。

 

 

 

 この先、どんな世界が広がっているのだろう。コンプリートたちは、ワープホールの奥につながる奴の世界を目指して、穴に飛び込むのであった。

 

 

 

 

 

続く…

 




次回投稿日:8月18日(日)
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