PrecureStageON!   作:主氏レム

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物語は佳境へ────


第42話:ネオフュージョン登場?闇の世界へ!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 雲も星も一つもない、真っ赤な月だけが浮かんでいる漆黒の空。地上では真っ黒な岩場と荒野だけが広がっており、世界の中心地では真っ黒な城がポツンと建っているだけの寂しい場所と化している。

 この世界を作り出した“奴”の存在が強く影響しているのか、闇の力が黒煙となり、時折空にかかる虹のように弧を描いている。

 

 世界のどこかで、力を求めて悪意を束ねて彷徨い歩いたかつての存在(フュージョン)から産まれ落ちた一欠片であるネオフュージョンは、かつての存在を打ち破ったという『プリキュア』に対して、異常なほどの興味と憎悪を抱えている。

 

 

 

 ここは、ネオフュージョンと呼ばれる悪意と闇の力で構成される異常存在が作り出した、自らが棲みつく世界。

 

 奴があらゆる世界を壊すのは、全てを真っ暗闇に飲み込もうという自らに刻まれた本能であり、同じく刻まれたプリキュア達への復讐とも言える。

 

 

 

 崩壊させた(・・・)とある世界の一部のプリキュア達を自らの手駒にしたのも、彼女に世界を破壊させて人々を手にかけさせているのも、刻まれた復讐心に則り、本来世界を守る彼女達へ屈辱を味わせるためである。奴に悪意もなければ善意もない。これは、刻まれた仕方のないものなのだ。常人には、奴を理解することも歩み寄ることもできやしない。

 

 

 

 

 

 奴は普段、この世界唯一の建造物である漆黒の城の中────それも、長い長い螺旋の階段を降りた先にある最深部で、自分の胃粒や手駒達の様子を監視している。

 本当なら自身も世界を壊しにいかなければならないのだが、あいにく現在はそれをするつもりはない。奴曰く、まだその時ではないらしい。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『我にはわからぬ……何故、そこまでして貴様は片割れを求める……?』

「求めてるわけじゃない。そもそも別の世界の彼女を奪う趣味なんてないし。……このほのかは言っちゃえば、キュアコンプリートを誘き寄せるための餌でしかない」

『他の者でも代用できただろう……わざわざそいつを選ぶとはな……』

 

 

 

 

 

 奴は、足元にいる黒い翼を生やした自らの手駒の一人に────ちょうどこの前、自らの力の一部を注入したついでに若干の洗脳を施したダークネスブラックに話しかける。ブラックはいつものように自身を敵視しながら雑に会話を終わらせようとしている。彼女の足元には、気絶をしているのか一人の少女が横たわっている。

 自身の手駒である闇の使者達は、ネオフュージョンが闇の力で作り出した人形の体に本来の魂を入れただけの状態に過ぎない。その気になれば彼女達なんざ簡単に操ることも処理することも可能だ。しかし、そんなことをすればブラックが黙っていられない。

 

 ただ、そのブラックは奴に余計な力を与えられたと同時に若干の洗脳が入った影響か、以前よりも奴への抵抗が少なくなり、他の世界を崩壊させることもプリキュア達に攻撃することも躊躇しなくなった。自らに起きている異常に、ブラックは気づいていない。

 

 

 

 キュアコンプリートと呼ばれるステフォンの持ち主への、増幅したドス黒い感情を引きずりながら、彼女は扉の先を見据える。

 

 

 

『貴様……さては、ここで決着をつけるつもりだな?』

「ええ。……手出しは無用だから」

『……いいだろう。貴様の行く末を、貴様の散りようを、この特等席で見届けるとしよう……』

「……嫌な奴」

 

 

 

 

 

 ネオフュージョンの紅い双眸が、怪しげに嗤った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

第42話:ネオフュージョン登場?闇の世界へ!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

<プリキュアオールスターズの世界 みなとみらい>

 

 

 

 

 

『アカンベ〜ェェェ!!』

『ネガトーォォンッ!!』

 

 

 

 

 

 ここは神奈川県横浜市みなとみらい。黒く厚い雲が空を覆い隠し、本来人々が賑わう大通りには、さまざまな怪物達の姿をとったネオフュージョンの欠片達による百鬼夜行のような、傍若無人な破壊行動が行われている。

 

 先日正体不明の怪物騒ぎが起きばかりなのだが、欠片側は明らかにこの前以上の勢力でこの世界を破壊しようとしている。もちろん、こんなことをされて黙っているようなプリキュア達はいない。

 

 

 

 

 

 

『プリキュア・ハピネスビッグバーンッ!!』

 

 

 

 シャイニングメイクドレッサーの力で大きな虹色のハートの大爆発が起こり、周囲に広がろうとしていた欠片達が次々に巻き込まれていく。それでもまだまだ、近くには2桁は確実に欠片達が残っている。

 

 

 

「大丈夫!?」

「ここは私たちに任せて早く逃げて!」

「ありがとうプリキュア!」

 

 

 

 4人のプリキュアの後ろには、逃げ遅れたであろう数人の観光客グループがいた。どうやらこの欠片達は、一般人すらも関係なく襲おうとしていたらしい。

 

 

 

「も〜〜〜〜!!何でこんなに大量にサイアークとか諸々いるの〜〜〜〜!?!?意味わかんなーい!!!」

「それに、なぎささんやほのかさんと連絡が取れないなんて……!」

「ここにきたのは私たちが最初みたいだし……みんなが来るまで持ち堪えないと……!」

 

 

 

 大通りに駆けつけたのは、『ハピネスチャージプリキュア!』の4人だ。

 

 怪物がみなとみらいで出現したと言う緊急ニュースを目撃し、彼女達の出身であるぴかりヶ丘でも出現した欠片を最速で退治してから、クロスミラールームを通じてこちらに向かったのだ。

 逃げる観光客を見送りつつも、頭をかかえるプリンセスの心の底からの絶叫が響き渡っている。

 

 現場に最速で到達したのはいいものの、逆に他のプリキュア達も怪物が出現したことで公共交通機関で移動できなかったり、行く先々で欠片が出現していたりで足止めを喰らっているようで、誰かがたどり着くまで4人で戦わなければならないという、なかなかシビアな状況に置かれていた。

 

 一瞬でも足がすくみそうになるが、ラブリーだけは迫り来る欠片の拳を片手で展開したハート型のバリアで受け止め押し返す。どんなにピンチな状況でも、諦めたくないのが彼女達の本質である。

 

 

 

「一体何が起きているのかわからないけど、これ以上、あなた達の好きにはさせないんだから!!」

 

 

 

 一番大切なものを守るため、自分たちの平和な日常を取り戻すためにも、プリキュア達は戦うのだ。

 

 そんな彼女達から溢れる希望と光の力に反応し、欠片達が大波のように一気に押し寄せる。誰がどう足掻いても、4人だけでは到底捌ききれないような脅威。それでも彼女達はそれぞれ攻撃を構え、立ち向かおうとする。

 

 

 

「……っ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ダークネス・ハッピーシャワーッ!!」

「ダークネス・ラブサンシャインッ!!」

 

 

 

 ラブリー達に欠片の攻撃が振れそうになったその時、上空から黒い二つの光が降り注ぎ、欠片の波を打ち破った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

<ネオフュージョンの世界 漆黒の城・闇の使者の大広間>

 

 

 

 

 ここはネオフュージョンの棲家であり、闇の使者達の根城にもなっている漆黒の城の中。

 

 ダークネスブラックと彼女によって連れて行かれた雪城ほのかを助け出すため、ダークネスラブリーの案内の元、繋巡と美墨なぎさがこの真っ暗闇に包まれた世界に突入した。

 

 

 

「……ブラックがいるとしたら、この場所くらいしか思いつかない……」

『久しぶりにこの部屋の感じを見たかも……』

「……意外といい暮らししてたんだね」

「アンタねえ……」

『絶対そういうこと言ってる場合じゃないと思う……』

 

 

 

 敵のアジトに侵入しているというのに、巡はいつも通りのテンションと感性で探索しようとしていたため、なぎさとステフォンの中のフローラが頭を抱える。

 

 しかしコンプリートの言う通り、黒い壁と黒い天井に暗い赤の床で構成された城内は、意外にも一般人が想像するような城の中、というような少々豪勢な雰囲気を感じられる。ここにネオフュージョン特有の嫌な雰囲気さえ立ち込めていなければ、ただの観光名所にもアトラクションにもなっていただろう。

 

 

 

「……あれ?」

「誰も、いない……?」

 

 

 

 闇の使者達が普段集まっているという大広間に出たが、そこに今は誰もいない。今は全員総出で出かけているのだろうか。きっと彼女達なら助けてくれるかもしれないと思っていたダークネスラブリーは、しょんぼりとした様子で肩を落とす。

 

 

 

「ど、どうしよう……」

「……もしかして、あの世界のワープホールが開いたから、ダークネスの方の私を探しに行ったのかも……!」

『そっか!私たちの方で開いたんだからこっちも……!』

「ブラックを、探しに……あ、メモだ……」

 

 

 

 ラブリーがテーブルの上に一枚のメモが置いてあるのを発見し、その文言を確認する。

 

 

 

『ラブリーへ

ブラックがいるかもしれない世界にようやく入れるようになったので探してきます。

ハートより』

 

 

 

 なぎさの言葉やダークネスハートからの置き手紙によって、おそらく自分達は他の闇の使者達と入れ違いでこちらにきてしまったのだろうと推測できた。多分、しばらくの間は入ることができなかった『プリキュアオールスターズ』の世界でブラックを探しにきたのだろう。しかし、ダークネスブラックの気配はずっとこの世界で漂っているようだ。

 

 他の部屋を手分けして見て回ったが、ブラックらしき姿はどこにも見当たらない。

 

 そして残った一つのドアを開けると、先に広がっていたのは、下の階に続く階段と、深淵とも言えるような真っ暗闇。

 

 

 

「……この先は、入っちゃダメって、ブラックに言われてた場所……。けど、この奥からあの人の気配を感じるの」

『……この階段を下った先に、ネオフュージョンが棲みついてる最深部に辿り着くはず』

「……マジで?」

 

 

 

 ステフォンの中のプロトブラックには見覚えがあった。闇の使者から溢れた想いが彼女達(プロトキュア)であるなら、そちらの記憶もしっかりと覚えているようだ。

 彼女の記憶が正しければ、あの長い長い階段を降りた先に奴がいると踏んでいるらしい。

 

 

 

「その奥に、ほのかと一緒にあいつがいるってわけね!」

「さて……変なことされる前に、進んでいかないとね」

 

 

 

 3人とプロトキュアたちは互いに頷き、真っ暗闇が続く階段を降りていく。

 

 先の様子は一才見えず、暗がりの階段を壁に手をつきながら、ゆっくりと歩いていく。少し油断したら段差を踏み外してそのまま落ちていきそうだ。

 この暗がりをダークネスブラックは度々移動していたと思うと、少々気が滅入りそうだ。ただ彼女の場合は翼を持っている分飛んでショートカットしていると思われる。

 

 

 

「く、暗い……!暗いし、なんか怖いし……」

『ほ、本当にこの先にいるわけぇ!?』

「……奥の方で、もっとおかしな気配を感じてるの……」

『嘘でしょ……?!あとどれくらい降りれば……』

『なんとなくだけど、まだ続きそうな感じが……いつも飛んで降りてたから歩いていくとなると時間はかかると思う……』

「うーん、こればかりは地道に進んでくしかないか〜」

「飛んでた……?それなら」

 

 

 

 プロトブラックの何気ない言葉を耳にしたダークネスラブリーは、断りもなしにコンプリートとなぎさを抱えて、背中のリボンを翼にして一気に駆け降りていく。

 

 

 

「きゃ!?ちょ、ちょっと!それができるなら早く言いなさいよ!」

「……というかあたしが今変身してるならキュアウェポンが使えるのでは」

『そうじゃん!!それで周りを照らせば少しは安心できるかもしれないのに!』

 

 

 

『CureWeapon!Miracle!』

『PowerCharge!Magical!』

 

「キュアップ・ラパパ!明かりを灯して!」

 

 

 

 ラブリーに抱えられながらあることに気づいたコンプリートが、ミラクルブレスに宿る魔法の力を使って、ブレスび明るく暖かい光を灯す。これでもまだ周囲は暗いままではあるが、多少は安心できる。

 暖かな魔法の輝きに導かれながら、3人はダークネスブラックが待っているであろう最深部を目指していく。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……っ、ここ、は……」

 

 

 

 漆黒の城の最深部、とある一人の少女が────雪城ほのかが目を覚ます。殴られた際に失っていた意識が回復したようだ。

 

 彼女は、この世界にいる少女ではない。ダークネスブラックによって本来の世界から連れ去られてしまい、偶然にも人質のような立場になってしまったのだ。相方は別の世界に飛ばされ、自分が出したSOSに気づいてくれた他のプリキュア達も今どうなっているのかがわからない。言いようのない不安がほのかの胸の中に広がっている。

 それもそのはず。背後の空間には、この世界の主である真っ黒な生命体────ネオフュージョンが静かに浮いていたのだ。ほのかが目を覚ましても特に何か危害を加えることはなく、奴はただ浮いているだけ。

 

 

 

『……』

「……、まずいわね……早くここから抜け出さないと……」

 

 

 

 それでも、ここから逃げなくてはという防衛本能だけはしっかりと働いてくれているようで、起き上がったほのかは、すぐさまこの空間から脱出するための出口を探そうとする。

 

 

 

 

 

 

 

「────どこに行くの、ほのか」

「っ!!その声は……!」

 

 

 

 しかし、目の前に現れたダークネスブラックに行手を阻まれてしまった。彼女は本来の姿で、虚ろで澱んだ紅い瞳でほのかを逃がさないと言った様子で見つめている。

 湧き上がる違和感と気味の悪さと、僅かな恐怖心を悟られないように、ほのかは真剣な眼差しで彼女をきっと睨みつける。

 

 目の前の少女は、別の世界の人物とはいえ自分が知っているはずの『美墨なぎさ』とはあまりにもかけ離れているのだ。

 

 

 

「……私を、どうするつもり?」

「別に連れてったからってどうもしないよ。これなら、キュアコンプリートもやってくるでしょう?」

「コンプリート……というより、私が知っているなぎさも助けに来るわよ」

「……ふぅん」

 

 

 

 反論するほのかに、どこか冷めた様子で軽くあしらう。別の世界の自分には興味がないどころか、何らかの嫌悪感を抱いているようだ。

 

 

 

「……自分が、嫌いなの……?」

「大嫌いよ。……ほのかも、誰も守れなかった自分を見るのは」

「私を……?あなたは一体、何があってネオフュージョンの元にいるの……?あなたの身に、一体何があったの……?」

「好きでいるわけじゃない。私は……ステフォンの持ち主から、この手で……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「────あたしが何だって?」

「……っ!!」

 

 

 

 ブラックが言葉を続けようとした瞬間だった。その持ち主の声が聞こえた。

 

 ネオフュージョンの居場所に繋がる扉を開け放ってやってきたのは、あの暗くて長い螺旋の階段を降りて辿り着いたキュアコンプリート達だった。一緒についてきたなぎさは、ダークネスブラックに迫られそうな立ち位置にいるほのかをようやく見つけ、声を上げる。

 

 

 

「ほのか!遅くなってごめん!助けに来たよ!」

「なぎさ……!絶対に来るって、信じてたわ!」

 

 

 

 ほのかの方も、ようやく本物のなぎさに会えて安堵する。しかし、再会を喜んでいる場合ではない。

 なぜならコンプリートとダークネスブラックの間で、火花以上の熱くて痛い何かがバチバチとぶつかり合っていると言っても過言ではないほど、両者間で緊張の糸が張り詰めているのだ。

 

 憎悪が混ざった虚ろな紅と、ただ彼女を咎めて助けたいと願う赤と桃色の視線は、一才混ざり合わない。

 

 

 

「来たわね、キュアコンプリート……」

「うん。……君が何をしようとしているかはともかく、今の君を止めにね。……あそこにいるのがネオフュージョンってやつ?ただの塊かな?」

『いやコンプリートなんてもの見つけてるの?』

 

 

 

 辿り着いたコンプリート達を、ダークネスブラックは不機嫌そうなオーラを隠さずに、低い声で嫌そうに迎え入れる。コンプリートは特に気にすることなく、こちらの様子を伺っているだろうネオフュージョンの方に注目を向けている。、

 連れ去られたほのかは、コンプリート達についてきたなぎさの方に手を伸ばす。

 

 

 

「なぎさ!」

「ほのか!待ってて!すぐ助けるから!」

 

 

 

 なぎさもまた、ようやく会えた相方に声をかけ、変身はできないものの一応身構える。

 キュアコンプリート、あの世界のなぎさを順に見やり、もう一人、この世界に導いたとある闇の使者の方を向いて、本当に嫌そうに睨みつけながら問いかける。

 

 

 

「……ラブリー、あなたまで私の邪魔をするの……?」

「邪魔じゃ、ない……!これ以上、あなたが苦しんでるのを、見たくないから……!」

「……っ、ラブリーまで……!」

 

 

 

 コンプリートとダークネスブラックを二人きりにするように真っ黒な光のドームが出現し、なぎさたちが分断されてしまう。助けに行こうとすぐに駆け寄るが、なぎさたちを阻むように欠片が何体も出現する。よほどコンプリートを自分の手で倒したいらしい。

 

 しかし今までの怪物の姿をした欠片とは違って、人の形をした黒い塊が、目の部分を赤く怪しく光らせているだけの見た目に妙な恐ろしさを感じる。

 

 

 

『……!!』

「もう!!こっちはほのかと合流できたところだったのに!!」

「なぎささん、ほのかさんのところに行って」

「え、あ、ちょ、ラブリー!?」

 

 

 

 ダークネスラブリーはなぎさを置いて、出現した欠片の方に飛び込んでいく。ネオフュージョンとは不本意ではあるものの、一応闇の使者の主人のような立場であるはずなのに、そんなことは関係ない。こっちはダークネスの方のブラックを助けに立ち向かっているのだから。

 

 

 

『……いいのか?ブラックの助けに行かなくて』

「うるさい。あなたには関係ないでしょ」

『……』

 

 

 

 この状況に対して何かするわけでもなく傍観しているネオフュージョンに問いかけられようが、ラブリーは周囲に黒いエネルギー弾を複数個展開して、数体の欠片に被弾させる。そんな中、なぎさは弾道に気を付けながらもほのかの方に駆け出していく。

 

 

 

「ほのかぁぁぁ!!」

「なぎさ!!」

 

 

 

 片手にはハートフルコミューン、もう片方の手はお互いの手の方に伸ばして。この状況から抜け出すには、こうするしかないのだ。

 なぎさの行動に気づいた欠片の一体が気づいて襲い掛かろうとするが、ダークネスラブリーが放った黒い光線に邪魔をされ、爆発が巻き起こる。その際の爆風に背中を強く押され、なぎさは一気にほのかとの距離を縮めた。

 

 

 

 

 

 手と手が触れ合い、繋ぎ合えば、暖かく眩い光を放つ。

 

 

 

 

 

「「デュアル・オーロラ・ウェイブッ!!」」

 

 

 

 

 

「光の使者!キュアブラック!」

「光の使者!キュアホワイト!」

 

「「ふたりはプリキュア!」」

 

「闇の力のしもべ達よ!」

「とっととおうちに帰りなさい!」

 

 

 

 

 

「……!」

 

 

 

 闇の世界に、黒と白の光の使者(プリキュア)が降臨する。強い光の力を感じ取ったのか、ラブリーを追い詰めようとしていた欠片数体が二人の方へと流れ出し、すぐさま囲い込む。

 

 

 

「ホワイト、行くよ!」

「ええ!」

 

 

 

 背中合わせで対峙していた二人は同時に飛び上がり、足の裏を合わせて同時に蹴り出すことで、殴り掛からんとする欠片達の方へと飛びかかっていく。

 

 

 

「だだだだだだだだッッ!!!」

「はぁぁぁぁぁっっ!!」

 

 

 

 殴り飛ばそうとする欠片にはブラックの拳の嵐が、掴み掛かって動けなくしようとする欠片にはホワイトの手刀と投げ技が繰り出されて、すぐに追い払われてしまう。

 

 

 

「ふっ、はぁっ」

 

 

 

 反対側ではダークネスラブリーが黒い光の剣を振り回しながら、押し寄せる欠片達をバッサバッサと斬り伏せていく。その剣戟には一切の迷いがない。

 

 3人の暴れようをネオフュージョンは全て目撃しているのに、彼は特に干渉する様子がない。ダークネスブラックに何か言われているのか、それとも単純に趣味が悪いだけなのか。干渉しないならしないで別にいいのだが、逆に何もしてこないというのも妙な恐ろしさを感じてしまう。

 

 

 

 

 

「……分断してまであたしをやっつけたいの……?まあ、あたしも頑張るよ。君と話をしたいから」

「あんたと話すことはない……!!」

 

 

 

 一方、分断されたコンプリートはすぐに髪留めのリングを壊して力を解放すると、殴りかかってくるダークネスブラックを迎え撃つために両腕で拳を受け止める。

 長い間コンプリートとして戦っていたおかげか、ステフォンに秘められた光の力を制御しながら戦うことは慣れたもんだ。さらにコンプリート自身が成長したこともあって、彼女は初期の頃よりもうんと強くなっている。

 

 

 

「……っ!」

「あんたを倒して、ステフォンを……!」

『この私目的と手段が入れ替わってない!?』

『ネオフュージョンに力を与えられたついでに何かされたんじゃないの!?』

『操られてるってやつ?』

 

 

 

 『ふたりはプリキュア』の世界で再会した時にも感じたが、今のダークネスブラックは何かがおかしくなっている。明らかに、“コンプリートを倒す”ことに気を取られている。

 プロトキュア達が警戒する中、ダークネスブラックはキャリーに入ったステフォンに手を伸ばそうとする。ステフォンの危機にすぐに気づいて、コンプリートは攻撃よりも避けに集中することを強いられる。

 

 

 

「おわっ……!?ちょ、ダメだって」

「動くな……!!」

「今の状態の君には渡せないってば……!うぐ」

 

 

 

 狙われ続けるコンプリートは体勢を崩してしまい、尻餅をついてしまう。そんな不利な状況のコンプリートにも容赦無くブラックが捨てフォンを奪い取ろうと飛び掛かるが、床を転がって振り切り、すぐに立ち上がってブラックとの距離を取る。

 

 油断も隙もどこにもない。最初の頃のように、一方的に攻撃をされている。

 

 

 

「こ、このままじゃ本当にステフォン取られちゃう」

『ど、どうしようキュアウェポンも出させてくれないし……!』

「早く……倒れなさいよ!!」

 

 

 

 苛立ちを隠さずにダークネスブラックが吐き捨て、その右腕に真っ黒な雷を纏わせる。あの雷撃を放とうとしているようだが、この前以上に闇の力がまとわりついてる。

 

 

 

「ダークネス・マーブルスクリュー……マックスッ!!!」

「ちょ────」

 

 

 

 絶対に食らったらまずいことになるとすぐに悟り、コンプリートがすぐにその場を離れた。

 

 コンプリートがいた場所は、ダークネスブラックの右腕から放たれた漆黒の雷撃が放たれ、地面を深く抉った。あれを食らってしまうと、大怪我どころの話で済まされない。

 

 

 

「……うわぁ、えっっっぐ、この前よりも威力上がってない???」

『コンプリート!前!!!』

「!!」

 

 

 

 あまりの惨状にコンプリートがわかりやすくドン引きしているが、そんな感想を呑気に言っている場合ではない。ステフォンの中のメロディに叫ばれて気づいた時には、ブラックが拳を振り上げてこちらに飛びかかってきていたのだ。

 

 流石にこれを避けられる自信はないと悟り、吹き飛ばされる覚悟でキュアウェポンでピーチの力を借りようとした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……!!」

「全く……こんなところで本当に何してるのこの人は……っ!!」

『……え!?』

 

 

 

 コンプリートに攻撃が入ることはなかった。なぜなら目の前に、ブラックの拳を受け止めた人物が現れたのだから。

 

 その人物は、初めて出現した時のように、黄金色の精霊の光のバリアで、黒い雷を纏ったブラックの拳を受け止めたのだ。少々押し込まれそうではあったものの、目の前の少女はバリアでブラックを弾き飛ばす。

 

 

 

「……っ、どういうつもり……」

「大丈夫?コンプリート」

「き、君は……ブラック関連で一番抱えてた子(ダークネスブルーム)……!?」

「せいかーい♪……やっぱり変な覚え方してない?」

 

 

 

 まるで彼女と対峙した時のようなやり取りが交わされているが、間に入ってくれたのは闇の使者のダークネスブルームだった。この前見た時よりも包帯が外れている箇所が増えているため、少しずつケガの方も治ってきたのだろう。果たして彼女はどこから現れたのか。おそらくワープホールを使って直接現れたか、それとも無理やりここに穴を開けて入ってきたかのどちらかだが……彼女の場合は後者を選びそうだ。

 

 まさか邪魔をされるとは思わず、コンプリートへ抱いていた苛立ちをそのままブルームの方に向ける。向けられた彼女はそんなこと気にせず、いつになく真剣な表情で彼女を見据える。

 

 

 

「別にコンプリートの味方をする訳じゃない。ブラックを見つけて様子がおかしかったから、止めに来ただけだよ。……それに、来たのは私だけじゃない」

「ダークネス・シューティングスターッ!!」

 

 

 

 コンプリート達を閉じ込めていたドームの外で、同じく闇の使者のダークネスドリームの声が響く。瞬間、闇で形成されたドームが、黒い光を纏ったドリームの突進が貫いて、一気に崩れ去る。

 

 

 

「……あんたまで……!」

「ドームが崩れた……!?コンプリート!無事!?」

「あたしは何とか無事だよ!助けてくれたの!」

「二人とも……!?怪我は大丈夫なの……!?」

「ああこれ?ちょっと痛むけど、変なことしなければどうってことないよ」

 

 

 

 ドームがなくなったことで外で欠片達と戦っていたブラックとホワイト、ダークネスラブリーとようやく合流することができた。

 

 ダークネスラブリーにとってはブルームとドリームがガッツリ戦闘に混ざっているのが久しぶりすぎたので怪我を心配しているが、二人は特に大丈夫そうな様子を見せる。

 この怪我は、彼女達に与えられたネオフュージョンの力を使ったせいでついてしまった傷のため、普通よりも治りが遅いらしい。

 

 

 

「あ、あなた達は……もしかして、あのブラックの知り合い……?」

「知り合いというか、何というか……」

「あ!ラブリー!ここにいたんだね!私たちが来たからもう大丈夫だよ!」

「二人とも……!」

「あと、ブラックがそっちのなぎささん達のいる世界に放ったっぽい大量の欠片も心配いらないよ」

「……あぁぁぁ!!そうだった!!私たちのいる場所に欠片が現れてて……!」

「な、何ですって……!?けれど、心配いらないって……?」

 

 

 

 ダークネスブラックは、他のプリキュア達がホワイトのところに行かせないために、大量の欠片をさまざまな街に放っているようだった。

 

 しかし、二人の闇の使者は特に慌てる様子もなくダークネスブラックを煽るように話しかける。

 

 

 

 

 

「……コンプリート、戦える?」

「もちろん」

「今のブラックは、やっぱりネオフュージョンの力で何かおかしくなってるかも」

「うん。だから、正気に戻すために二人が来てくれたんだよね?」

「まあ、そういう感じ」

 

 

 

 コンプリートとブルームが小声で話す中、突然形成逆転されて表情をいっそう険しくさせるダークネスブラックは、虚ろで澱んだ瞳で睨みつけながら攻撃しようと身構えるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

<プリキュアオールスターズの世界 みなとみらい>

 

 

 

 

 

 ────闇の使者が「心配しないで」と言った理由。それは……

 

 

 

 

 

「やっぱりさ、みなとみらいって特異点すぎない?」

「何でこうも変なのに狙われちゃうんだろうね……?」

「え、えぇぇ……!?」

 

 

 

 ラブリー達は、突如目の前に現れた二人の黒いプリキュアらしき少女達に驚きを隠せない。彼女達は、自分たちが知っているはずの人物の顔によく似ているのだ。ただ差異があるとすれば、コスチュームが真っ黒なのと瞳が鮮やかな紅になっているところだろうか。

 

 ラブリー達は一瞬だけだが、ブラックに似た同じような黒い見た目のプリキュアを見たことはあったが、彼女の仲間なのだろうか。しかし、嫌な雰囲気は一切しない。

 そもそも、先ほど迫ってきていた欠片を彼女達は蹴散らしたのだ。多分味方なのだろう。

 

 当の本人達は、欠片に狙われまくっているみなとみらいに対してのツッコミを入れるほどに呑気な会話を繰り広げているのだが。

 

 

 

「あ、あなた達は……!」

「アタシ達?うーん、説明するのが難しいけど、この怪物達を出したっぽい人の友達なんだよね」

「……え!?」

「でも、流石にやりすぎちゃってるから、一緒に止めに来たの!他のところにもあたし達の友達が飛んでってるから大丈夫だよ!」

 

 

 

 ラブリー達の前に舞い降りたのは、闇の使者であるダークネスピーチとダークネスハッピーだった。コンプリート達がこの世界に入れるようになったことで、同じように彼女達も突入できるようになったのだ。

 しかしいざ踏み入れてみれば、ブラックはいないわ、欠片が大量発生しているわ、この世界のプリキュア達だけでは処理しきれないほどに追い詰められかけているわで探しているどころの話ではないとなり、本来関係のないはずの世界が崩壊してしまうのを防ぐために、手分けして欠片を退治することにしたのだ。

 

 ここにいるのはネオフュージョンの世界に残った二人を除いてピーチとハッピーの二人だけではない。他の闇の使者達もまた、この世界のプリキュア達の助けに入るためにみなとみらい中に散らばっている。

 

 

 

「つまり、味方でいいんだよね!?あの量のサイアークとかを何とかするために、何とかしてくれるんだよね!?」

「お、落ち着いて〜!」

「……でもさ……ちょっと多くない???」

 

 

 

 ダークネスピーチが見据える先には、数えきれないほどの欠片たちが道路を埋め尽くさんとする勢いで、自分たちの方へと向かっている。このままでは本当に自分たちが踏み潰されてしまう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「────お願い、力を貸して……!」

 

 

 

 

 ふと、上空から真っ白のな光が、ランドマークタワーの頂上の方に降り注ぐ。光の中からは、真っ白なプリキュアが現れる。

 

 その少女の瞳は淡い金色に煌めき、希望の光を灯している。

 

 

 

 

 

 

「想いよ届け!キュアエコー!」

 

 

 

 

 

「キュア、エコー……!」

「もしかして、あゆみちゃん……!」

 

 

 

 彼女達は、その人物の正体を知っている。坂上あゆみは────キュアエコーは、地上に群がる怪物の姿をした欠片の百鬼夜行の惨状を見下ろし、煌めくリボンのブローチに想いを込めるように両手を添える。

 

 

 

「世界に響け、みんなの想い!プリキュア・ハートフルエコーッ!!」

 

 

 

 エコーの胸のリボンのブローチから暖かな光が溢れ出し、上空へと飛んでいく。光は弾け、強い浄化の輝きとなって空を覆い隠していた黒い雲を吹き飛ばしながら広がっていく。降り注ぐ日の光と浄化の輝きが、道路を埋め尽くしていた欠片達に降り注ぎ、一気に消滅していく。

 

 キュアエコーは他のプリキュアとは違い、戦う力を有していない。その代わり、抱いた思いが光となり、その光で友達や大切な人を守ることができる。

 

 

 

「欠片が一気に……!」

「これなら、欠片も簡単に近づけないよね!ありがとうエコー!」

「ひとまず動きやすくなったし、他のプリキュアのみんなを探しに行こう!」

「もしかするとさっきみたいに、逃げ遅れた人たちがいるかも!助けに行かなきゃ!」

 

 

 

 ランドマークタワーの上にいるエコーに、ラブリーや闇の使者達が大きく腕を振る。彼女達に気づいたエコーは微笑みかけるが、これは一時的な足止め・怖い怪物達が近寄れない安全地帯にしかならないかもと彼女は頭の片隅ではそう考えていた。

 

 光が降り注ぐ晴れ渡った青空の範囲は、あくまでもランドマークタワーを中心に桜木町駅やパシフィコ横浜がギリギリ収まる程度。かなりの広範囲であるが、範囲外ではまだまだ欠片が出現しているので油断もままならない。

 

 

 

(きっとこの光の外には、まだたくさんの欠片がたくさん動いてる。……怖いけど、みんながいるから、大丈夫……!)

『サイアークッ!!』

「……え……っ」

 

 

 

 範囲の外に出て他のプリキュア探しや救助に向かったプリキュア達を見送るエコーの元に、光に焼かれながらも襲い掛かろうとする欠片が迫っていた。しかし、欠片は飛んできたダークネス・ハッピーシャワーの黒い光波に飲まれて消滅した。

 エコーのそばに、いつの間にか飛んできたダークネスハッピーが現れていた。

 

 

 

「大丈夫だった?」

「黒い、ハッピー……?うん、大丈夫だよ。助けてくれてありがとう」

「どういたしまして!」

 

 

 

 ダークネスハッピーは、エコーに迫る欠片を迎え撃つために一人この場所に残ったようだ。今回の欠片は、誰かさんのようにいつにも増してしぶといらしい。

 

 

 

 

 

 プリキュアオールスターズおよび闇の使者達の反撃は、始まったばかりだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

<ネオフュージョンの世界 漆黒の城・最深部>

 

 

 

 

 

「このっ」

「はぁっ!」

「……っ!!」

 

 

 

 コンプリートやブラックとホワイト、さらに闇の使者のブルームとドリームの反撃を許さないと言わんばかりの苛烈さで、ダークネスブラックは攻撃の手を緩めない。増えて5対1という、明らかにダークネスブラックの方が不利な状況だというのに、全くそんな感じに見えないほどに渡り合っている。

 

 その戦い方は、複数の人間と戦うことに慣れているような動きだ。皮肉にもその時の経験がこの乱闘に生かされているのだから、事情を一番理解しているブルームが、少々複雑な気持ちを抱いている。

 

 

 

 ブラックとホワイトの世界のプリキュア達は、他の闇の使者達が介入しに行ったことで、あのオールスターズの世界が欠片で溢れかえるという心配はしなくていいらしい。それだけが今の安心できる要素だ。

 

 

 

「ぅぐっ」

『うわっ!?』

 

 

 

 ダークネスブラックの蹴りを避けきれず、コンプリートの手を掠め、構えていたラブリーショットガンを手放してしまう。ショットガンはすぐにプロトラブリーの姿に戻ってしまい、遠くの方に投げ出される。

 

 

 

「わぁぁぁっっ!?」

「危ない……っ!」

 

 

 

 投げ出されるプロトラブリーを、ダークネスラブリーが抱えて受け止める。しかし襲いかかる欠片の腕に吹き飛ばされてしまい、彼女は体勢を大きく崩してしまう。

 

 

 

「ぐ……」

「大丈夫!?」

「私は、何とか……」

 

 

 

 プロトラブリーの心配の声に応えつつ、すぐに立ち上がって攻撃を放とうとする。先ほどの欠片との戦闘で体力を消耗しているというのに、それでも彼女はブラックから視線を逸らさない。

 

 

 

「私は……あの時何が起きたのか、ちゃんと思い出したいし……ブラックが、みんなが、これ以上苦しまないように……あの人を、引き留めなきゃいけない……」

「……!それが……あなたの想い……?」

 

 

 

 真っ直ぐにブラックを見据えるダークネスラブリーの口から溢れたのは、プロトラブリーがずっと抱えていた本心と、ダークネスラブリー本人が抱く願いだった。

 

 

 

 

 

『どう、して……みんな、生きているの(・・・・・・)……?』

 

『お願い……!ブラックを……あのなぎささんを止めるのを、手伝って……!今のあの人は……っ、私たちが知ってるなぎささんじゃない……っ!!私たちじゃ、あの人を引き止められない……ッッ!!!』

 

 

 

 

 

 ダークネスラブリーが、戦わなければならないと思っている理由。それは感情と記憶が欠けながらも、純粋な気持ちがあってこその行動だった。

 

 思えば彼女は、目覚めた時から知らないところでおかしな状況に立たされていた。

 目覚めたら何故か自分たちはネオフュージョンという仇の元にいて、何故かステフォンを狙うためにコンプリートや他の世界のプリキュア達と戦わなければならなくて。気づいた時にはブラックがブラックらしくない行動をとっていたり。

 

 だから彼女は、他の闇の使者がどこかで感じていた『あの人を引き留めたい、闇の底から連れ出したい』という気持ちを、誰よりも強く感じていた。

 表情が曇る彼女の話を聞いて、プロトラブリーは安心させるように声をかける。

 

 

 

「よかった……、私も、同じなんだ」

「……え」

「私もね、覚えていることが少ないし、言われてもあんまりピンときてなかったりするのもあるから、ちゃんと思い出さなきゃって思ってるの。それに……」

 

 

 

 

 

 ────あの人が自分と同じ世界にいたブラックなんだから、あの人を助けたいって思うのはいけないことじゃないよね?

 

 

 

 

 

 そう、茶目っ気たっぷりに笑いかけた。そんな彼女の様子に、ダークネスラブリーはポカンと口を開ける。一緒に過ごしているうちに、どこかで巡の能天気さと明るさに当てられ若干の影響を受けているようだった。

 

 

 

「だからさ、私。一緒に行こう」

「一緒に……」

 

 

 

 プロトラブリーが、闇の使者の自分に向けて手を伸ばす。その瞳は、誰も曇らせられないような桃色の輝きが灯っている。

 

 ダークネスラブリーは、あの崩壊した世界の愛乃めぐみ(プロトラブリー)が残した力の残滓と彼女の想いから生まれた闇の使者。言うなれば、ステフォンの中にいる他のプロトキュアと逆の存在である。

 魂と想いが再び一つになろうとしているのか、プロトラブリー自身とダークネスラブリーの胸の紅いクリスタルが、強い輝きを放っている。

 

 

 

 

 

「……私、行かないと……あの人を止めるために……!」

「巡と一緒に、あのブラックを助けよう!」

 

 

 

 

 

 二人の手が重なり合った時、真っ暗闇の空間に強い輝きが満ち溢れた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……!?」

「何……!?」

「ら、ラブリー!大丈夫ー!?」

 

 

 

 これ以上暴れさせないために掴み掛かっていたプリキュア達と闇の使者二人、掴まれて動けなくなっていたダークネスブラックが、その光に気づいて視線を向けた。

 しかしダークネスブラックは邪魔はさせないという勢いで全員を振り落とし、真っ黒な雷撃をラブリーの方に向けて放つ。

 

 

 

 

 

「やめてって……」

「……っ!?」

「言ってるでしょ〜!!」

「あ……!」

「え、えぇ!?」

 

 

 

 ラブリーを狙った漆黒の雷撃は、輝きの中で立ち上がったダークネスラブリーが展開した黒い光のバリアによって防がれた。

 

 しかし、その近くにプロトラブリーの姿はない。それでもコンプリートたちは、彼女がどこ(・・)にいるのかはすぐにわかった。

 

 

 

 

 

 胸の紅いクリスタルは愛が溢れる桃色に変化し、虚ろだった瞳には光が宿っている。

 

 プロトラブリー(記憶の欠けた魂)ダークネスラブリー(笑顔が欠けた想い)

 

 バラバラになっていた二つの存在が一つになったことで、姿に差異はあれど自分が元からいた世界の『キュアラブリー』としての姿を取り戻したのだ。

 

 

 

 

 

「何!?何が起きてそうなったの!?ラブリー!?ラブリーだよね!?」

『雰囲気はステフォンの中にいたラブリーっぽいけど……?』

「……え……?……えぇ……!?」

「コンプリート!みんな!行くよ!」

「何が起きたかわからないけどいいよ!」

「待って何ですぐ受け入れたの!?」

 

 

 

 予想外の事象に動揺するダークネスブラックや周りのプリキュア達にプロトキュア達を差し置いて、とりあえずすごいことが起きたんだなと理解したコンプリートがラブリーと共に駆け出す。

 

 

 

「これあたしキュアウェポン出せるかな?」

『そういう問題!?ラブリーは大丈夫なの?!』

「私は大丈夫だよ!久しぶりに全力で動いてるから、感覚忘れかけてるけど!」

「……、っ!?」

 

『CureWeapon!Lovely!』

 

 

 

 ラブリーが本来の姿に戻ろうとも問題なくキュアウェポンは発動するようで、胸の桃色のクリスタルから光が飛び出し、コンプリートの手の中にラブリーショットガンとしてその形を変える。

 気を取り直してダークネスブラックが再び黒い雷撃を浴びせようとするも、コンプリートが手にした拳銃から放たれるハートの光の弾丸が大量に放たれ、視界を奪われてしまう。

 

 

 

「……っ!!」

「ブラック!!私がいたステフォンの中で言ってくれたこと、覚えてる!?あなたから飛び出した方のブラックは、ちゃんと覚えてていてくれたよ!!」

「……それ、は……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

────『ステフォン』の中に入って、『ここじゃない別の世界』に逃げるのよ

 

────……多分、『奴』は私たちを簡単に返そうとは思ってないみたい

 

────だから、せめて無事なあなただけでも、今は『奴』の手から逃げてほしい

 

────だからお願い。……できれば、あんたの中で全てが落ち着いたら、私たちを助けに来て欲しい

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ラブリーの中で想起されるのは、かつてステフォンの中で耳にしたブラックの言葉。その後彼女は、ネオフュージョンに接触されてしまったからこうなってしまったのだ。

 

 

 

「少し遅くなっちゃったけど……これで言葉通り、あなたも助けられるよ!」

「別に、助けなんて求めてなんか……ない……ッッ!!!」

 

 

 

 ラブリーの言葉を強く否定するブラックに呼び起こされ、先ほどまで溢れていた欠片達よりも一回り大きな欠片が2体出現し、コンプリート達を攻撃しようと動き出す。そんな欠片の進撃を止めるかのように、ブラックとホワイトとダークネスドリームが一斉に飛び上がる。

 

 

 

「ぐぅ……!!アンタちょっと頑固すぎない!?もう少し誰かを頼りなさいよ!!」

 

 

 

 迫る2対の腕を、ブラックは一人で受け止める。

 図体が大きくなっただけで、力は通常の欠片よりもほんのわずかに強くなった程度。それくらいなら特に一人でも問題なく対処できたと踏んだのだろう。ブラックは闇の使者の自分への向けて言葉を吐きながら、欠片を押し返す。

 

 

 

「ブラックしっかりして!!」

「あなたが望んでいるものは、本当にそれでいいの!?」

 

 

 

 押し返されてもなお反撃に出ようとする欠片に、ホワイトの鋭い回し蹴りが炸裂する。さらにダークネスドリームが黒い光を纏いながら追撃に出てきたために、欠片は一瞬にして消滅してしまう。

 

 

 

「……っ、邪魔しないで……ッ!!」

 

 

 

 欠片を倒され、ダークネスブラックは再びダークネス・マーブルスクリュー・マックスを放って、自分を止めようとするブラック達を消し去ろうとした。

 しかし迫る漆黒の雷撃は、ダークネスブルームが放つ黄金色の精霊の光と真っ黒な闇の力が混ざり合う一つの奔流とぶつかり合い、その先へと進ませてくれない。

 

 

 

「アンタまで……どうして……ッッ!!」

「“間違ったことをしていたら、殴ってでもいいから止めろ”って、私に言ったのはそっちでしょ……ッッ!!」

「違うッ!私はステフォンの力で世界を、みんなを……ほのかを、取り戻したいだけ……ッッ!!間違ってなんか……!!」

 

 

 

 悲痛さと怒りが混ざったブルームの言葉に揺さぶられ、ダークネスブラックの澱んだ瞳が、一瞬だけ鮮やかな色を取り戻した。ネオフュージョンによって掛けられた洗脳が、一瞬ではあるものの解けたようにも見えた。しかし、思い出すのは、自分たちが暴走したあいつにやられて、世界を崩壊させてしまった時の記憶ばかり。

 さらに、今までダークネスブラックがずっと抱えていた一番の望みも一緒に吐き出されたようだ。

 本心を曝け出したことで若干力が入ったのか、膠着していた力のぶつかり合いで、ブラックの方が押し込みそうになっている。若干後ろに押されたブルームを、ドリームが吹き飛ばされないようにと支える。

 

 

 

「ブラックサンダー!」「ホワイトサンダー!」

 

 

 

 手を繋ぎながら、もう片方の手に黒と白の稲光が落ち、ブラックとホワイトに力を与える。少しずつ優勢に立とうとしているダークネスブラックを大人しくさせるために、彼女達もその力を、想いをぶつけるつもりだ。

 

 

 

「プリキュアの美しき魂が!」

「邪悪な心を打ち砕く!」

「「プリキュア・マーブル・スクリュー・マックスッ!!」」

 

 

 

 突き出されたその手からは黒い稲妻が走る真っ白な雷撃が放たれ、ブルームが放つ光と共に漆黒の雷撃に衝突する。ダークネスブラックが押し込む形で膠着していたパワーバランスが、ブラックとホワイトが助太刀したことで崩れ、再びダークネスブラックが窮地に立たされる。

 

 

 

『PowerCharge!Echo!』

 

 

「さあ、あたしも君に話したいことはたくさんあるし、いい加減大人しくしてもらうよ!」

「待っててね!すぐに終わらせるから!」

「……ッ!!いつの間に……っ!」

 

 

 

 いつの日かのように、コンプリートがぶつかり合う光の奥から、ラブリーショットガンを構えたコンプリートと、両手に桃色の光を纏わせているラブリーが上空から飛んで現れた。その銃口には、想いが宿る真っ白な光が溢れ出している。

 

 

 

「「スパークッ!!」」

「プリキュア・ピンキーラブシュートッ!!」

想いを込めた愛の弾丸(ハートフルラブショット)ッ!!」

 

 

 

 虹色の雷撃と共に放たれたハート型のエネルギー弾と、一発分の光の弾丸。それらは黒い雷撃を貫きながら、ダークネスブラックの胸のクリスタルめがけて真っ直ぐに飛んでいく。

 

 

 

「!!」

 

 

 

 二つの弾丸は紅いクリスタルを穿ち、ダークネスブラックを大きく吹き飛ばした。放っていた漆黒の雷撃は途切れ、軌道が逸れた二つの光に押し出され、壁際に衝突する。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 数秒の静寂ののち、息を切らしたダークネスブラックがゆっくりと立ち上がり、コンプリート達の方へと歩いていく。

 ボロボロで、足取りは覚束なく、震えている。プリキュア達の光の力を一気に受けすぎて、ネオフュージョンに強化された分の力もほとんど使い切ってしまったのだろう。

 

 

 

「はぁ……はぁ……」

「ブラック……まだやる気なの……?」

「やらない、と……やらないと……!私が、わた、しが……みんなを、助けないと……!」

『ブラック……』

 

 

 

 彼女は、世界が崩壊しネオフュージョンと接触ののち、闇の使者になってから今日までの長い間、ずっとステフォンが世界を元に戻せると信じ続けて戦っていた。

 どうしてステフォンが世界を元に戻せると思ったきっかけは、ずっと『ダークネスブラック』として生きていたせいで忘れてしまった。もう自分がその名前で呼ばれない限り、『美墨なぎさ』だったということが頭の中から抜けてしまうくらいには、長く生きすぎてしまった。

 

 哀れなほどに信じ続け、それでもまだ戦おうとするダークネスブラックに、コンプリートが一歩前に出る。

 

 

 

 

 

「そっちがまだやるなら、あたしももう少し頑張るよ。……君の気が済むまで」

「……!!」

「でも、これだけは信じてほしい。……君たちがいた世界に、ホワイト以外のみんなの魂が集ってるの」

「……っ、……ぇ……」

 

 

 

 コンプリートが彼女に話したかったのは、あの『水晶の世界』のことだった。

 あの世界は元々、12人のプリキュアが眠る水晶の柱だけが存在する荒野だった。その中で、コンプリートが彼女達の想い(プロトキュア)をステフォンの中に集めるたびに、何かしらの変化とバラバラになっていたプリキュア達が出現していた。

 

 闇の使者も一緒にあの世界にいた時に、闇の使者達には気配はわかるけど姿は見えないという、かつてのプロトキュアのような悲しい状態になっていた。そこから、元々その場所を知っていたブラックも見えていなかったのではと推測したらしい。

 今まで元通りにするために戦っていた彼女のことだから、コンプリートが話したないようにわかりやすく食いついた。こうなる前にも話すタイミングはあったのだが、大抵はダークネスブラックがすぐに攻撃を仕掛けるのとすぐに帰ってしまうせいで、機会を失い続けていたのだ。

 

 

 

「……嘘よ……!あの世界には、眠ってる私たちの肉体以外は、誰もいなかったのに……?」

「嘘じゃない。……まあ、おかげで何で君がステフォンを狙っているのかがわかった気がするけど。ただ、今はホワイトを探してる最中なんだけどね……」

「……」

「……ブラック」

 

 

 

 コンプリートがそう言っても、ダークネスブラックは信じる素振りを見せてくれない。そんな彼女の態度を崩すように、ダークネスドリームが声をかける。

 

 

 

「あのねブラック、これ以上あなたばかりが、苦しいものを背負わなくっていいんだよ」

「……」

「ブラックも見てるよね。ステフォンは確かに、あの世界に何らかの影響を与えているんだよ」

「……」

「それに……あなたも気づいてるでしょ。あの世界に、みんながいるってことを」

「……っ」

 

 

 

 その言葉に何も反論できず、ダークネスブラックが目をそらす。

 

 あの世界の存在を闇の使者で最初から知っているのはちょうどこの3人。2人で気配を感じていたなら、ブラックにも気付けていたはずだと言っているのだろう。

 わざわざ彼女が「嘘だ」という理由は、その事実を認めてしまったら、自分がステフォンを求める理由が────ネオフュージョンと手を組んで闇に染まった意味がなくなってしまうのだ。何となくそういうことなんだろうと、コンプリートは推察する。

 

 

 

「私が……私は……」

「大丈夫だよ。一緒に……巡や闇の使者になったみんなとも一緒に、あの世界を元に戻す方法を見つけようよ!」

「らぶ、りー……」

 

 

 

 悩み苦しむ少女に向けて、ラブリーが手を差し伸べる。その手は救いの手で、昔は取ることがきなかったその(救い)を、自分の前に伸ばしているのだ。

 しかし彼女は、その手を取ることを拒んでいる。自分には資格がないと、その手を汚してはいけないと、思い込んでいる。

 

 

 

「……その、手は……私に、取る資格なんか……」

「資格も何も、関係ないわ!」

「これからやり直していけばいい、そうでしょ?」

「あなたも私たちもこれまでたくさん傷ついたんだから、今更汚れたって気にしないよ」

「……」

 

 

 

 話を全て聞いていたブラックとホワイトにも背中を押され、さらにダークネスブルームも困ったように笑われ、伸ばしかけて止まった手を、再び伸ばそうとする。

 

 

 

 

 

 自分が行きたい場所へと、光が差す方へと、手を伸ばした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 刹那、静寂を打ち破るように、風を切る音が通り過ぎた。

 

 

 

 

 

「……え?」

「……!!」

 

 

 

 

 

 ダークネスブラックの瞳の澱みがなくなり、元の鮮やかな紅を取り戻した瞬間だった。

 

 誰もがその状況に、呆気に取られ、数秒後にその事実がじわじわと現実だと思い知らされる。

 

 

 

 

 

 ラブリーが伸ばした手を、ダークネスブラックが取ることはなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 彼女の腹部には、真っ黒な闇でできた槍が貫いていたのだから。腹部貫通による激痛で、動くことができなかったのだ。

 肉体は作り物らしく、血も何も流れていない。魂が貫かれているわけではないので、それで死ぬというわけでもなさそうなのだが、いかんせん絵面が衝撃的すぎる。

 

 

 

 

 

 槍を放ったのは、誰?それは、すぐにわかった。それを今の状況で放てるのは、奴しかいない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『興醒めだ……簡単に分かり合えるようではつまらないだろう……』

「……ネオフュージョン……お前、やったな」

 

 

 

 

 

 引き攣った顔で、コンプリートが槍が放たれたであろう方向に投げかける。怒りやら驚きやらの前に、何が起きたんだと混乱している。

 

 ラブリーの悲鳴が響く中、槍を放った人物────ネオフュージョンの双眸が、衝撃的なものを見て何も言えなくなってしまったコンプリート達を、救いを求めてしまったダークネスブラックを嘲笑うかのように歪んだ。

 

 

 

 

 

続く…

 




次回投稿日:8月24日(土)

やばいねえ
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