「……コンプリート」
「何どうしたの……、っ!?」
「なぎささんを頼んだよ」
「え、ちょ────」
『えぇ!?』
この『プリキュアオールスターズ』の世界を破壊しようとする、ダークネスブラック改めネオダークネスの企みを阻止するため、彼女が閉じこもる遥か上空の黒い球体を目指して飛翔するキュアコンプリート。
球体が生み出した人型の大きな欠片の妨害を受け、合流したダークネスブルームによって球体の方へと投げ飛ばされたコンプリートは、球体の中へと無理やり突入するために飛び蹴りを喰らわせようとする。
『あそこから入れそう!』
「オッケーそれじゃあ……!コンプリート・キックッ!!」
勢いのまま放たれた蹴りは、球体の壁に大きくヒビを入れ吸い込まれるように球体の内部へとコンプリートを侵入させる。球体の内部は彼女の予想通り、人型の欠片が蠢いている。
コンプリートの姿を見つけるや否や、獲物を狙う野生動物のように唸りながらこちらの方へと襲いかかってくる。
「うわあ入れたのはいいけど……気配は感じる?」
『奥!奥の方にあいつの気配がする!』
「なるほどね。どっちにしろ目の前の欠片達をかき分けていかないとまずいってわけね」
ステフォンの中のプロトキュア達の言葉を聞いて、コンプリートはいつの間にか自身を囲い込み襲おうとする欠片達を見回してにっこりと笑う。
「それじゃあ、一気に走り抜けようか……!」
『────ッ!!!』
「今行くから待っててよ、ネオダークネス!」
コンプリートは彼女達が指差した方向に向けて走り出す。全ては、中で閉じこもっている奴に出会うために。
第45話:世界を照らせ!プリキュア・ステージON!
『CureWeapon!Dream!』
『ブラック〜!いたら返事して〜!!』
立ちはだかる無数の
球体内の欠片達は、先ほど地上の方やコンプリートを妨害するために排出されたあの欠片2体とよく似ているが、こちらの方がサイズは小さく特段攻撃に特化しているというわけでもないのが唯一の救いだろう。この大量の数で先ほどのように荒れ狂う戦い方をしていたら、コンプリートは間違いなく追い詰められていた。
『うーん、やっぱりあの状態だと返事してくれないかぁ……』
『向こうのほうであいつの気配は感じるけど……』
「見つけたらマジで一発喰らわせないと」
『やる気満々なんですが……』
プロトキュアがネオダークネスを探す一方で、コンプリートは欠片達を吹き飛ばしながら何やら殴る気満々ですと言った様子を見せる。
「勝手に逃がされたと思ったら急に世界を壊すとか宣うんだから、手のひら返しにも程があるよね」
『でもそれって、ネオフュージョンを取り込んだせいで歪んじゃっただけじゃないの?』
「それもありそうだけど……うーむ、考えれば考えるほどあの人が恐ろしい」
『とにかく、あの人と話さないと分からないよね……!』
「そうだね」
『CureWeapon!Bloom!』
『……!』
「ああもうだからさあ!!」
『そこを通して!!』
なかなか先が見えないので、ブルームソードを振り回して欠片を薙ぎ払いながら、さらに奥の方へと進んでいく。
走って、走って、走った先に、欠片たちが入って来られないようなバリアが貼られたドームの側にたどり着いた。
「こ、これは……」
『あの奥からあいつの気配がする……!でも、ブラックの気配も……!』
「この中にいるってことだね……この壁も絶対ちょっとやそっとのことじゃ壊せなさそうだし……よぉし」
『CureWeapon!Dream!』
『道がないなら!』
「作っちゃえってね!」
赤い薔薇の花が揺れるドリームランスを構えたコンプリートが、バリアの壁に向かって強く突き出す。希望の光をまとったそれは、闇の力でできているであろうそれに大きなヒビを入れて、中へと突入できる穴を作る。
迷いなく中に入り、中で目にしたのは、真っ黒な何かでできた繭のような物体だった。
「球体の中に繭……?球体も繭みたいな感じだったけど……」
『繭からネオダークネスの気配はするけど……あの奥からブラックの気配もする!!』
「マジで?けど……」
どうやらあの繭の中に、ブラックが閉じこもっているらしい。無論侵入者を許さないのか、繭の周辺で蠢いている黒い何かが触手のように伸び、コンプリートを追い出そうと襲いかかる。
『CureWeapon!Bright!』
『コンプリート!行こう!』
「さっさと連れ戻さないとね!」
ブライトブレードを構え、コンプリートは自身に迫る触手を斬り伏せながら、繭の方へと走り出す。触手は隙を見せずに次々と伸びてゆくが、コンプリートもコンプリートで負けじと繭に近づくチャンスを伺う。
『今なら……!』
「ブラック、やろう」
『ええ!』
『CureWeapon!Black!』
大剣からブラックグローブを両腕に装備したコンプリートが大きく飛び上がり、繭の方に向かって飛び掛かる。
繭に触れた瞬間、真っ黒な雷撃が彼女を拒んでバチバチと弾け飛ぶ。雷撃の勢いに吹き飛ばされそうになりながらも、コンプリートは諦めずに繭を掴み、中に入るために引き裂こうとする。
「ぐぬぬ……いい加減に……入らせて……ッ!!」
両手に黒い雷撃を受けながらも、少しずつ繭の中を見ようと引き裂いていく。繭の中は暗くて何も分からない。それでも、その中にいるブラックを助け出すために、コンプリートは大きく手を伸ばした。
その瞬間、黒と白の光が混ざり合い、眩い閃光に視界が占領される。
「う、眩し……っ!?」
「……、うん……?」
黒と白で点滅するような閃光が収まり、目を開けると一人だけ、先ほどまでいた黒い球体の中心部とはまた違った場所に立ちすくんでいた。辺りは真っ暗で、遠くを見渡しても何も見当たらない。
おまけに自身の変身が解け、ステフォンもどこかになくなっている。
「ここは……まさか、ネオダークネスの中だったりする?……って」
ブラックグローブの力で無理やり繭をこじ開けたせいなのか、それともこの中がかなり特殊な構造をしているのかはわからない。しかし、巡がプリキュアの姿でなくなっている以上、何が起こるかもわからないためにに警戒を強めなければならないのも確かである。
「……あれ?」
『……!』
少しだけ歩いていると、巡の姿を見つけて誰かが近づいてくる。振り向くと、そこには体が半透明で、黒髪の白いプリキュアが、優しく微笑んでいた。
『……』
「君は……もしかして、ネオフュージョンに囚われてた方のホワイトだったりする……?」
『……!』
巡の問いかけに白いプリキュアこと、キュアホワイトがこくりと頷く。話すことはできないようだ。
目の前の彼女は、闇の使者やプロトキュア達と同じ、ネオフュージョンの影響で暴走してしまったキュアクルセイダーによって崩壊を迎えた世界にいたプリキュアである。崩壊して魂だけが世界の外に投げ出された際に、たまたまネオフュージョンによって捕らえられたせいで、今の今まであの世界に集うことができなかった。
彼女の体が透けて見えるのは、あの世界のプリキュア達の例に漏れず魂だけだからなのでだろう。
「君も、ブラックのこと探してるの?」
『……』
「あ、待って」
巡の問いかけに心当たりがあるようで、ホワイトはついてこいと言わんばかりの様子で歩き出す。巡も前を歩くホワイトから逸れないように彼女についていく。
『……』
「……あ」
しばらく歩いていると、後ろを向いて蹲っている誰かを見つける。周囲には誰も近づけさせないと言った様子で黒いリボンのような何かが垂れ下がり、少女と巡達との明確な境界線を作っている。
その後ろ姿はどうみても、ダークネスブラックだ。しかし今の彼女には翼がなく、腕や脚に黒いリボンが巻き付いている。その動きを、封じているかのように。
「……ブラック?」
「……」
巡が話しかけると、ブラックはわずかに肩を動かし、チラリと巡達の方を向いた。しかし彼女はすぐに後ろをそっぽむいてしまう。
「……どうして、ここにあなたがいるの」
「君を見つけて、助けに来た」
「……来ないで」
「え、ちょ────」
随分と覇気のない声で問いかけられ、巡は端的に目的を話す。しかしブラックは、差し伸べようとした巡の手を拒絶する上に、彼女達に向けて衝撃波を放って彼女を突き放そうとする。
襲いかかる衝撃に流されないよう、巡も足を踏ん張って耐え抜く。
『……!!』
「だ、大丈夫大丈夫……これくらいならまだ頑張れば耐えれる……と思う」
吹き飛ばされそうだった彼女を心配した様子で困った顔をするホワイトに向けて、巡は心配するなと笑顔を見せる。再び彼女は、ブラックと向き合うために一歩前に出る。
何度も何度もブラックが衝撃波を放って巡を追い払おうとするが、巡は耐えつつも、一歩一歩近づいていく。
「……っ、来ないでって、言ってるでしょ……」
「何言ってんの。あのやばいネオダークネスから君を引き剥がして連れ戻したいからここに来たの」
「私を置いて……ほのかだけを助ければいい」
『……!』
「それは……できないね。ホワイトが嫌そうな顔してるから」
まさかの自分を置いて逃げろと宣う彼女に対し、ホワイトは「それだけは絶対に嫌」と言った顔で首を横に振る。どっちにしろ、ブラックをネオダークネスから引き剥がさなければ、奴は外側の世界で欠片を産み落とし続けるし、奴を倒したとしてもあのブラックを助けられるかどうかと言われると怪しいものがある。
「……私は、救われちゃいけない。ほのかの隣に立っちゃいけない……アイツの言葉に希望を見出しちゃったから、こんなことになったんだ……」
「ブラック……」
「私のせいで、みんなを巻き込んで……私のせいで、他の世界の子達まで傷ついて……」
「……」
「私はただ……ほのかもみんなも、助けたかっただけなのに……」
『……!』
消え入りそうな声で本音がこぼれ落ちて、巡が立ち止まった。
それは、彼女が一番に望んでいたことであり、彼女が闇の使者として生きることを選んだ理由。
彼女の時は、『ダークネスブラック』となった瞬間から止まったままだ。
本当は助けて欲しいと、背中ではわかりやすくこちらに向けて叫んでいる。
しかしネオフュージョンという存在が、抱き続けた罪の意識が、
「私はもう、元に戻れない……許されちゃいけない……あいつを止めようとしても、体は動かせなくなっちゃったし……」
『……』
「いっその事、あんたが私ごとあいつを倒してしまえばいいのに。私なんて、いなくなった方が……みんな、幸せだったかもしれないのに……」
「……」
ダークネスブラックは、ネオフュージョンを取り込んだ結果ネオダークネスを生み出してしまった。奴は世界を壊そうとしているが、本人は奴を止めようと頑張っていたようだ。しかしネオダークネスの意思が強すぎたのか、全く止めることができずに自棄になってしまったようだ。
『……!!』
「……はぁぁぁ……」
明らかにまともに話を聞いてくれそうな雰囲気ではない彼女に困惑してしまうホワイトだが、巡は話を聞いてもなお表情を変えることなく、ただただ大きくて、心底面倒臭そうなため息を一つ付いて、額に手を当てる。
「……君ってさ……面倒臭いって言われたことない……?」
『!?』
「……!!」
なんとここまでの話を聞いた巡は、とうとうダークネスブラックに対しての本音を漏らしたのだ。流石のホワイトも驚いていれば、ブラックも肩を動かして反応している。そして彼女は、若干呆れた様子でブラックの方へと普通に歩き出す。
もちろんブラックは彼女を拒否して衝撃波を放つが、最早効いていないぞと言わんばかりに無視して歩いている。自身に直撃しそうだったものは生身にも関わらず片腕で受け止め、遠くの方に弾き飛ばす。
垂れ下がるリボンをくぐり抜け、ようやく巡はブラックのそばに立つことができた。
「……聞こえなかったの?来るなって、言ったのに」
「君がなんと言おうと、あたしは君を見つけて連れ戻すだけだからね。拒否権はないよ」
「私はここから出ちゃいけない。……許されないことをして、居場所もないのに」
「許すとか許さないとか、君が決めることじゃない。……君を待っている人たちが決めること」
「待ってる、人……」
「君のこと、色々任されちゃったからねえ……その子たちに対しても失礼になっちゃうし……」
『あの中に、私たちの世界の方のなぎささんとほのかさんが……』
『なんであの人はこうなるまで放っておいたわけぇ……?』
『助けたら後でたっくさんもみくちゃにしないとね!』
『……先にこの周りの欠片達をどうにかしないといけないけど……』
『おーい!ブラックー!なんとかそっちに辿り着いて見せるから待っててねー!』
『巡!私もここが落ち着いたら絶対に助けに行くから、あの中にいるブラックのことを助けに行って!お願い!』
『なぎさささんを頼んだよ』
巡はここに来るまで、闇の使者やラブリーによって、目の前で顔を見せてくれないダークネスブラックを連れ戻してくれと頼まれてきた。
待っている人と聞いてブラックの脳裏に映るのは、今までずっとついてきてくれた闇の使者の面々の姿だ。本当なら彼女達だって、今すぐ駆けつけたいという想いがあったはず。
それでも彼女達は巡を信じて、今はネオダークネスが落とし続けている欠片達が世界に溢れかえらないよう、地上に残って戦い続けている。
想いを託された以上、巡にはその想いを代わりに果たす義務がある。
「……みんな、こんな私なんかのために、どうして……」
「私
「……!」
待ってるのは彼女達だけじゃないよと、巡はいつの間にかブラックのそばに歩み寄れたホワイトの方に顔を向ける。
ホワイトは、やれやれと言った様子の笑顔を見せるやいなや、蹲っていたブラックの小さな背中を包み込むように抱きしめる。
ブラックには彼女の姿が見えているのか、少々驚いた様子を見せる。その瞳は、もともと何色だったのかがわからないくらいに澱んでいる。
「ほの、か……だめ、だよ……ここにきちゃ……」
『……』
「ホワイトがここに残っていたのって、君と一緒に帰りたかったからじゃないかな?」
「……!ほのかぁ……!」
『!』
「……ごめんなさい……ごめんなさい、みんな……!」
『……!』
「お願い……誰か、……誰か、助けてよぉ……!!」
澱んでしまった瞳から、穢れることはなかった大粒の透明な雫がとめどなく溢れ出す。おそらく彼女が久しぶりに流したであろうそれは、床に落ちた黒いリボンを濡らし、消滅させていく。
心からの悲鳴に、彼女を縛る
「やっと言ってくれた……さ、みんなでここから抜け出そうか」
『!』
「……ぅん……うん……っ!」
静かに雫を流し続けるブラックの前で視線を合わせるために膝をつくと、巡はその手を彼女の前に差し伸べる。
ようやく帰る気になれたブラックが、伸ばされた巡の救いの手に触れた瞬間、辺りが眩い光で包まれる。
巡の視界が、明転する。
『……あ!繭が光ってるよ!』
『本当だ!もしかして巡ちゃんが……!』
ネオダークネスが閉じこもっていた真っ黒な繭が暖かな光を放ち、パラパラと砂のように消滅していく。
中からは、紅いクリスタルを一つ抱えた巡がゆっくりと降りてくる。
『巡/巡ちゃん/巡さん/めぐるんッ!!!』
「……」
ステフォンの中にいたプリキュア達が、ステフォンごと床に着地した巡の元へと駆けつける。巡があの中に入ってから、何の変化もなかったのだ。まさかステフォンも弾き飛ばされてしまうとは思わなかったが。
「……あー、やっぱりステフォンを落としてたんだ」
『巡ちゃん!ブラックは!?』
「体はともかく、魂は無事。ホワイトもいるよ」
『ああああああよかったぁぁぁ〜!!!』
『ま、待ってホワイトも!?』
『もっとよかったぁぁぁ〜!!!』
巡が持っていた紅いクリスタル。それは、闇の使者達のリボンの飾りであり、魂が閉じ込められている大事なパーツ。よく見てみると、クリスタルの中では二つの光の玉が浮いている。
闇の使者の体はネオダークネスに取られてしまったが、中の魂はホワイトと共に無事だったようだ。
「多分、ネオダークネスに魂だけは飲まれないように、一緒に取り込まれたホワイトが守ってくれてたんだろうね」
『ホワイトが……そっか……ありがとう、ほのか』
「……まあ、連れ出すまでが面倒くさかったんだけどさあ……」
『え゛ッッッあの私何したの……?』
「色々と」
『えぇぇ……?何があったの……』
目的は果たし、ステフォンの中のプロトキュア達に何があったかを呑気に話そうとしたところだった。
崩れ落ちた繭の残骸が液体状となり、周囲にいた欠片達を取り込んでどんどん膨張していたのだ。それの中から大きな腕のようなものが伸び、巡を握りつぶそうとする。
「……
『と、というか……巡も取り込もうとしてない……!?』
『なななな、なんですとーっっ!?!?』
『大ピンチじゃないですかっ!?』
「話は後でするとしてここから逃げよう」
巡は、魂の入ったクリスタルとステフォンを落とさないように握りしめ、元来た場所へと走り出す。そんな巡を逃さぬよう、大きな腕は津波のようにスピードを上げて彼女を追いかける。
「うぐっ」
『うわぁぁっ!?』
叩き潰そうとした大きな腕は、床を強く叩いて地を揺らす。その衝撃で床が崩落し、巡達はそれに巻き込まれて、球体の外から地上に向かって落とされてしまう。
「……!?今のって……!!」
『!?』
ダークネスブラックを取られたと同時に、球の形を維持できずに、崩落した場所から少しずつ崩壊してゆく黒い球体付近の上空。
人型の欠片と交戦していたダークネスブルームの真横を、巡が猛スピードで地上へと生身で落下しているのを目撃した。彼女を助けるために欠片を崩壊する黒い球体の方に吹き飛ばし、力を解放した影響で痛む体のまま、巡を追いかける。
「だめ、このままじゃ間に合わない……!!」
一方の巡は、ステフォンと二人分の魂を決して落とさぬように抱きしめている。そんな彼女に対して、黒い腕は執念深く巡を狙って迫ってくる。
しつこい黒い腕に対し、巡は初めてプリキュアになった時のまま変わらないまっすぐな瞳で、迫り来る黒い腕を、ネオダークネスの腕を睨みつける。
「せっかく『助けて』って言ってくれた人を、あなたみたいな訳の分からない存在たちが弄ぶために、取り戻されてたまるかっ!!」
そう、啖呵を切った。
「巡ーーーーっ!!!!!!」
その時、地上からロケットのように飛んできたラブリーの声と共に、巡の体がふわりと宙に浮いた。
「……あれ……助かってる……?」
「巡!!大丈夫!?」
「……え」
聞き覚えがある声を耳にして顔を上げれば、さっきまで地上で戦っていたはずのプロトラブリーが心配そうに顔を覗き込んでいた。彼女は本当に、巡たちのことを助けにこちらへ飛んできたのだろう。
「よ、よかった……!」
同じく、落ちゆく巡を追いかけていたダークネスブルームも巡の無事を確認して気が抜けたのか、元の姿に戻りながらそのまま地上の方へと降りてゆく。
「言ったでしょ!絶対に助けに行くって!」
「……ありがとう、信じてたよ」
「えへへ……!そうだ!ブラックは?!」
「この中。ホワイトも一緒」
「……!ということは……!!」
「そう。あとはネオダークネスをどうにかすればいいってこと」
プロトラブリーに抱えられてゆっくりと地上に戻りながら、巡は崩壊していく黒い球体の方を見上げる。いつの間にか自分を追いかけていた黒い腕は引っ込んでいる。また何かを仕掛けようとしているのかもしれない。
しかし、宿主というより彼女を生み出した存在を失ったネオダークネスは、何をしようとするのだろうか。
「おーい!」
「……あ!!」
欠片が生まれ落ちていた原因となっていた黒い球体が崩壊したことで、残りは地上にいる欠片たちとなったプリキュアオールスターズたちの元へ、プロトラブリーに抱えられた巡が戻ってきた。
欠片たちは、ネオダークネスの居場所が崩れたことで動揺しているのか、動きを止めている。
「巡!!」
「大丈夫だった!?ブラックは!?」
「大丈夫大丈夫。魂はホワイトと一緒に助けたから」
「ほ、本当だ!!ブラックとホワイトがいる!!」
「あなたたち認識できるの!?私たちには光の玉がクリスタルの中に二つ入ってるだけに見えるけど……」
「よ、よかった……!」
闇の使者や数人のプリキュアたちが、あの球体の中に入っていたブラックとホワイトの魂が無事なことを確認して、安堵した様子を見せる。
先ほどまで闇の力を解放して先ほど欠片を撃破したらしいダークネスドリームが、彼女たちの無事の知らせを聞いて、元の姿に戻りながら地面に倒れ込んだ。急に力を使ったために疲労が襲いかかってきたようだった。
「ドリーム!?」
「あはは〜、平気平気……」
『全然平気に見えな〜い!』
「そっちのドリームが倒れたってことは……!」
何かに気づいたイーグレットが声を上げたと同時に、上空で戦っていたダークネスブルームが元の姿に戻って地上へと猛スピードで急降下し、地上に着地した。ドリームほどではないようだが、こちらも相当激しい戦闘を繰り広げていたようで、肩で息をつぎながら巡の方へと歩き出す。
「ああほらやっぱり!」
「だ、大丈夫じゃなさそうだけど、大丈夫だった……?」
「一応……二人のこと、連れ戻してくれてありがとう……!」
『む、無理しないで!?座ってていいから……!』
それでもようやく彼女が救われたんだという事実が身に染みたのか、ダークネスブルームがゆっくりと腰を下ろす。
「……でも、安心してる場合じゃないんだよね……」
「まあ、ネオダークネスが消滅したってわけじゃないから……」
安心するのはまだ早い。まだ、ダークネスブラックが生み出した異常存在は放置したままだ。いずれ巡たちを狙って目の前に現れるのは確かだ。
「キュアコンプリートォ……!!」
「ほら噂をすれば……!」
地響きのような恨みのこもった声がして見上げれば、恐ろしいくらいに巡の方を睨みつけているネオダークネスが出現した。彼女は、魂を失ったことで輝きを無くした胸の紅いクリスタルを押さえつけながら、今にも飛びかかりそうな勢いで睨みつけている。
「返せ……私は、彼女の望みを、叶えるのに……!」
「……。ブラックは、あの世界のみんなを助けたいだけ。ただ純粋にそれだけを願ってきた、不器用で優しい人だよ。それだったからめっちゃ抱えてたしまあまあ説得が面倒くさかったけど」
『ねえ』
「ま、まあ……」
あの中で起きたことに対する本音がポロリと溢れてプロトブラックに突っ込まれつつも、巡は気を取り直してネオダークネスをまっすぐ見据える。
「ネオダークネス、これ以上あなたの思うがままにはさせないよ!」
「……っ!!まあいい……これから立て直せば……!」
と言って、彼女は真っ黒なワープホールを出現させて逃げていく。この世界から逃げ出したのだ。巡は追いかけようとするが、ワープホールはすぐに閉じてしまう。
『閉じられた!?一体どこの世界に……!』
『……あいつ、まさか私たちの元々の世界に行ったんじゃ……!』
「え?」
『私の中から生まれた存在で真っ先に壊そうとするなら、あの世界しか思い当たる場所がないの!』
プロトブラックによる推察が正しいなら、ネオダークネスによって確実にむちゃくちゃにされる未来が待っている。そこには、せっかく集まったプリキュアたちだっているのにだ。
あの異常存在。ダークネスブラックが一瞬だけ抱いてしまった『ほのかがいない世界はいらない』というほの暗い想いを、歪んだ方向性で実現させようとしている。
そして、彼女の声に呼応するようにステフォンの画面が突如真っ白な光を放つ。この光は知っている。いつも巡たちをあの『水晶の世界』へ誘う光だ。
「……もしこの世界に逃げ込んだのなら、あたしたちで止めないとね」
「行こう、巡!」
「残りの欠片はみんなに任せたよ!」
「ええ!任せといて!」
光は周囲を包み込み、巡たちをあの世界へと誘う。
「……あら!?黒いドリームたちもいなくなってるわよ!?」
「本当だわ……!あの子たちも、呼ばれたのかしら……?」
光が収まると、ミルキィローズの声で闇の使者たちも一緒になっていなくなっていることに気づいた。
コンプリートたちがいなくなったことがきっかけか、周囲に残った欠片たちが動き出し、残ったプリキュアたちを倒そうと襲いかかる。
『ザケンナー!!!』
「みんな!一気に決めて……って、まだこんなにいたの!?」
ブラックがみんなで行こうと意気込んだところ、残っていた欠片の数が想像よりも多くて驚きの声をあげる。ざっと100体以上は残っているようで、流石に攻撃を合わせるにしても量が多すぎるる。
ただし巡に任された身。ここは焦らず冷静に、必殺技を放って一掃しようと指示を飛ばそうとした。
「プリキュア・ハートフルエコーッ!!」
その時、上空から飛んできたもう一人の白いプリキュア────キュアエコーが放った光が、歪な色をした雲を晴らし、降り注ぐ日の光と浄化の輝きが、残りの欠片達を一気に消滅させてゆく。
「エコー!」
「みんな!遅くなってごめんね!」
「ううん!ナイスタイミング!」
晴れ間は急速に広がってゆき、やがてみなとみらいが青い空の色を取り戻す。太陽の光が街を照らす中、最後の1体が光に包まれ天へと昇っていく。
これにて、『プリキュアオールスターズ』の世界におけるネオフュージョン及びネオダークネスの侵攻は、プリキュア達の活躍により食い止められたのだった。
「あとは、巡だけだよ。……頑張ってね」
おそらく別の世界へ移動してネオダークネスを追っているであろう巡へ、ブラックが小さく彼女の無事を祈るのであった。
「……!」
ここは、水晶の世界。
かつて心優しい誰かの暴走によって崩壊を迎え、今も彼女によって生まれ変わる時を待ち続けている、とある『プリキュアオールスターズ』の世界。闇の使者が本来いるべき世界。今は、魂だけの存在となったプリキュア達が集まっている不思議な場所となっている。
世界の中心部に、12人のプリキュア達が眠る水晶が伸びているから、巡によってそう呼ばれるようになった世界。
「水晶が……」
「光ってる……?」
ふと、水晶の方を見上げたエコーが、水晶の柱が淡い桃色の光を一人でにはなっているのを見つける。いつもなら、巡がこの世界に辿り着いた時に光り出すはずの水晶。一体、何が起きているのだろうとざわつくプリキュア達だが、見知らぬ誰かがこの世界に突如現れたと同時にそちらへと注目する。
「……ここ、は……思わず別の世界に逃げたのだが……」
「……誰?あれ……」
「ブラックと似ているような気がするけど……絶対まずいやつだよねこれ……」
全身が真っ黒で、紅い瞳をギラギラさせているキュアブラック似の誰か────巡達に色々と奪われてしまったネオダークネスだ。繋巡によってブラックの魂を奪われたせいで、今の姿を維持するのも一苦労しているようだ。一度立て直すために別の世界に逃げ込んだのだが、偶然この世界へと辿り着いたらしい。
おそらくあのブラックが抱いていた想いの残滓が、この世界へ繋がったのかもしれない。
「あれ、放置してるのやばいんとちゃうんか」
「こっちの姿は見えていないみたいだけど……」
「というかアタシらこれだと触れなくないどうすんの!?」
「……誰かの気配……?まあいい……どっちにしろいらない世界は私の手で壊して────「させないッ!!」……!!」
先ほどいた世界のように、この地上を欠片で埋め尽くしてしまおうと黒い闇の球体を出現させるために、真っ黒な片腕を天に向けて伸ばした。無論どう見たって嫌な予感がしてプリキュア達が止めようとするが、相手に彼女達の姿が見えていない上に何かしらに触れることができない自分たちにできることがあるのだろうかという疑問がその手を躊躇させる。
しかしそれは、突如響いた誰かの声とハート型のエネルギー弾によって阻止された。
ネオダークネスが振り向くと、そこにはこの世界へと呼び出された巡と、プロトラブリーと、闇の使者達が、いつの間にか対峙していた。
「……いつの間に……!」
「巡ちゃん!みんな!」
「やっほーみんな。ブラックとホワイト見つけてきたよ」
「そのクリスタルの中に入ってるの!?ホワイトも!?何で!?」
『色々あったんだって!』
巡達の到着に、プリキュア達が安堵の息をつく。逆にネオダークネスは、邪魔者が入ったというような様子で露骨に嫌そうな顔をする。
巡が持つ紅いクリスタルの中に、この世界のブラックとホワイトの魂が入っていたり闇の使者といつの間にか仲良くなっていたりと、この世界のプリキュア達にとっては色々と聞きたいことはたくさんあるのだが、今はそれどころではない。
「……ってあれ?あたし達のクリスタルが……!」
「水晶の柱と反応して光ってる……?」
『待って!私たちのも光ってるよ!?』
そしてもう一つ。闇の使者達の胸のクリスタルと、巡が持つ二人分の魂が守られるクリスタル、そしてステフォンの中のプロトキュア達の胸のリボンの飾りが、この世界の水晶の柱と呼応するように光を放っているのだ。
この世界にいるはずのプリキュアがようやく勢揃いしたことで、何かが起ころうとしている。
「気になることは色々あるけど……まずはこの世界を、ネオダークネスから守らないと」
「守る、だと……?いいだろう……まずは貴様らと世界を消してから、ゆっくりと彼女が望む世界を創ってあげねばなあ……ッッッ!!」
ネオダークネスが地面から浮いた瞬間、自身から迸る闇の力を纏い、その体を黒くさせて一回りも二回りも大きくさせる。もはやダークネスブラックのシルエットが若干わかる程度となって、紅い瞳をぎらつかせながら巡達の方を睨みつける。
「……知らない?巨大化は敗北フラグだって話」
『貴様に負ケル……?私が……?戯言を、
抜カスナァァァァァァッッ!!!!』
「これがあながち嘘じゃないんだよなあ……」
『巡!』
「変身だよ!」
プロトブラックとラブリーにそう呼ばれ、巡はエコー達にブラック達の魂を託すと、ステフォンを構えてネオダークネスに立ち向かう。
「コンプリート・ステージON!」
ステフォンから溢れ出す光が彼女の体を包み込み、天使を思わせるようなプリキュアの姿へと変身させる。
「現となりし、12の魂!キュアコンプリートッ!!」
「あなたにこの世界は、花一本も壊させないよ」
『〜〜〜ッ!!まずは貴様からダ!!!』
ネオダークネスは胸の紅いクリスタルから真っ黒な光線をコンプリート達に向けて解き放つ。狙われた彼女達は散り散りになりながら、ネオダークネスの方へと走り出す。
一番狙われているコンプリートは、放たれる光線を手刀で弾き返して奴との距離をどんどん詰めていく。しかもコンプリートは、今回リングを外していない。
『何故だ!何故避けナイ!!』
「光線をぶっ放されたままなのは怖いからね!」
『グ……ッ!?!?』
そのままコンプリートは、ネオダークネスの巨大な図体に向かって綺麗なフォームの飛び膝蹴りを食らわせる。有効なダメージとまではいかないものの、ネオダークネスが体勢を崩しかける。
しかし、ネオダークネスも大きな黒い拳でコンプリートを大きく吹き飛ばした。
「どわっ」
『コンプリート!!』
「私が……!」
『コノまま二人ごと……!!』
「させない!!」
吹っ飛んだコンプリートめがけて光線を放とうとするが、今度は後ろから飛び跳ねながら近づいてきていたホイップによるクリームエネルギーが胴体に巻きつき後ろの方へと引っ張られる。その隙に、ラブリーがコンプリートを追いかけ飛んでいく。
「ふぬぬぬぬぬ……どりゃぁ〜!!!」
『!?』
そのせいでネオダークネスは仰向けに倒れてしまい、光線は空を覆い尽くす雲を穿った。
ちらりと久しぶりに覗かせたこの世界の空は、どの世界とも変わらない青さを灯していた。
『この程度デ……ッ!!』
「花一本も壊させないって!」
「さっき言ったでしょ!」
すぐに拘束を振り解いてホイップの方に手を伸ばそうとするが、その手はフローラとミラクルの蹴りで弾き飛ばされてしまう。上の方に弾かれたまま見上げると、いつの間にかハッピーとハートが両手を構えて黒い光を灯していた。
『何……ッ!?』
「ハート!一緒に決めよう!」
「久しぶりに使うけど……あなたに届け!」
ハッピーの両手からは黒い光波、ハートの胸のクリスタルからはキラキラした黒い光のシャワーが放たれ、光線を放とうとしていたネオダークネスの紅いクリスタルを照らし出す。
彼女達は闇の使者であり、その体では闇の力しか出せない。それでも彼女達は、今はこの世界の“プリキュア”として戦おうとしている。
『クソぉ……ッ!貴様ラも彼女と同罪……!貴様ラだって、誰かが欠ケタ世界を望マナイはずダロウ……!?』
「そうだよ!何度みんなに会いたくなったって思ってるの!?」
「その願いを叶える前に、みんながいるはずの世界を、あなたから守るんです!!」
闇の使者達にも漬け込んでその手を止めようとするが、ブロッサムとメロディが一蹴して攻撃を続ける。彼女達は止まらない。立ち止まるわけにはいかない。胸の輝きが、さらに増していく。
「コンプリート!大丈夫!?」
「なんとかね……!」
ネオダークネスに吹き飛ばされたコンプリートは、宙に浮かぶステージの上に着地したようだ。追いかけてきたラブリーに支えられながら立ち上がる。
『行けそう?』
「全然行ける!」
「もう一度、近づこう!」
プロトキュア達の励ましもあり、二人はすぐにステージを降りてネオダークネスの方へと飛んでいく。
一方のネオダークネスは、彼女の攻撃を喰らってたまるかと再び光線を放とうとする。しかし、先ほどの攻撃で異常を来したのか、うまく力が集まらない。
『グ……この……早ク……!』
「あのクリスタルが弱点なの!?それなら……!」
ピーチがネオダークネスの体を飛び上がりながら、クリスタルに目掛けて直接自身の手に宿った黒い光をぶつけた。クリスタルにヒビが入ると、ネオダークネスの動きが一瞬だけ止まった。
「やっぱり!みんな!クリスタルに攻撃を集中させて!」
「オッケー!」
『サセルカ……ッ!!』
奴のクリスタルを狙って、ドリームが光を纏った突進するが、流石に悟られて片手で阻まれてしまう。しかし、ドリームの表情は特に揺らぐことはない。
「……!!」
『……ドウシテ余裕を見せて……!!』
「狙ってるのがドリームだけなわけないでしょ!」
と、ネオダークネスの死角に潜り込んでいたブルームが、その手から黒い闇と黄金色の精霊の力が混ざり合う奔流を放ち、クリスタルの方へと命中させた。
闇以外の力が入り込んだ影響で、クリスタルのヒビは一気に広がっていく。そんな状態のそれに目掛けて、コンプリートとラブリーが飛び込んでくる。
「「せーの……っ!!」」
『ッ!?』
二人分の拳がクリスタルに突き刺さったのが決め手となり、光線を放っていた紅いクリスタルが音を立てて崩れ落ちていく。崩れ落ちるクリスタルは色を失い、やがて風に吹かれた砂のように消えていく。
『ナ……ッ!?』
「今なら邪魔されないよ!」
「コンプリート!」
「任せて……!」
『CureWeapon!Complete!』
「想いを届けて!スタンドロッド!」
ステフォンから光が飛び出し、ピンク色のスタンドマイクの形をしたスタンドロッドを召喚する。この力を使って、ネオダークネスを浄化するつもりだ。
「
スタンドロッドに向かって、綺麗な歌声が響く。コンプリートの声に呼応し、彼女の背後に12個のハートが出現し、神々しい光が放たれる。
同時に、地上の水晶の柱も、闇の使者やプロトキュア達の胸の飾りも、その輝きを一層強くし、コンプリートの方へと伸びていく。
今のコンプリートは、天から差し込む光の筋に照らされているのと相まり、本当に空から舞い降りてきた救世主のようにも映った。
纏う光は彼女の頭上に浮かぶ天使の光輪となって、具現化している。
全ては、歪んだ形で願いを叶えるために壊そうとしている存在から、彼女達にとって一番大切な場所を守るために。
「……クリスタルが!」
エコーに託された紅いクリスタルが光り出し、コンプリートの方へと飛んでいく。
「……!いいよ、一緒にあれを止めよう」
『この……サセルカァァァァッッッ!!!!』
コンプリートの攻撃を阻止するため、ネオダークネスが彼女を握り潰そうと、鋭く大きな手を猛スピードで伸ばす。
「プリキュア・セーブ・ユア・ワールドッ!!!」
声と共に放たれた12個のハートと彼女の元に集まった光達は重なり合い、一つの虹色の光線となってネオダークネスの方へと伸びていく。光はネオダークネスが伸ばした手のひらにぶち当たるが、コンプリートの方の威力が強いのか、完全に受け止めることができずに貫きかけている。
『グ……ッ、プリキュアァァァァッッッ!!』
「うぅ……!」
ネオダークネスも圧倒的な想いの輝きに負けることなく、コンプリートを徐々に押し込んでいく。このままではコンプリートは握り潰されるどころか取り込まれてしまいそうだ。
「コンプリート!」
「……っ、誰かに伸ばすために、手はあるんだよ……壊すために使う奴になんか、負けない……!」
「しっかりして!」
押し出されそうなコンプリートの背中をラブリーが支える。さらに闇の使者達が集まり、これ以上彼女が押し出されないようにと支えてくれる。
いや、彼女達だけではない。魂だけのプリキュア達も、コンプリート達を支えるために飛び上がる。
「みんな……!」
「触れなくたっていい!見ているだけじゃ、守りたいものも守れないのに……!」
「私たちにも、手伝わせて!」
「巡、お願い……!」
『私たちも行こう!!』
近くで浮いていた紅いクリスタルがいつの間にか弾け、中にいたブラックとホワイトの魂が実体化し、コンプリートを支えてくれる。さらに、ステフォンの中のプリキュア達も画面を飛び出して、コンプリートに力を与えてくれる。
たくさんの人たちの想いに支えられ、コンプリートが一歩踏み出した。初めて彼女がネオダークネスを押し返したのだ。
虹色の光は、徐々にネオダークネスの動きを鈍くさせる。
『な、ニ……!?』
「あなたも相当想いが強いみたいだけど……あたしやみんなの想いに比べると、こっちの方が大きかったみたいだね……!」
『はぁぁぁぁぁぁぁっっっ!!!』
『……!?!?』
全員の声が重なり合い、放つ光は強く太いものになり、伸ばしていたネオダークネスの手から溢れ出していく。そして奴は、どんどんとその体が光で包まれていく。
やがて光はその腕を穿ち、ネオダークネスの胸のクリスタルがあった部分にハートの穴を開ける。
『!!!!』
「さあ、これで終わりにしよう。もう、何も壊さなくていいんだよ」
『コンプリー、ト……』
光の中に閉じ込められたネオダークネスは、いつの間にか飛んできていたコンプリートに抱きしめられていた。このまま彼女に慈愛深く救済してくれるのかぼんやりと思っていた。
しかし、コンプリートが向けたのは、これもまたいつの間にか握っていたラブリーショットガンの銃口だった。
人に害を為す悪意には容赦なく攻撃を向ける姿に、ネオダークネスはこの世界を滅ぼしてしまった
今のコンプリートにネオダークネスを許す気配は、一切ない。
「ブラック達のようなことが二度とと起こらないよう、ここであたしが終わらせる」
『や、ヤダ……まだ、まだ消エタクナ────』
澄み渡る銃声と共に放たれたハート型の光の弾丸が、崩壊しかけているネオダークネスの身体を穿った。
『ヤダ!!ヤダァァァ!!私マダ消えラレナイ!!消エタクナイノニ!!私はァァァァァァaaaaaa……ッッッ!!』
誰かさんの未練がましい断末魔と共に、ネオダークネスの身体は虹色の想いの輝きに包まれて消滅していく。
チリ一つ残さずに消滅した瞬間、辺りはさらに強い光に満ち溢れ、何も見えなくなる。意識が、遠くの方に飛んでいく。
エピローグへ続く……
次回更新日:9月1日(日)
気になるところで切れたねえ