番外編1:こころの花はなんでしょう
ステフォンの中の住人となった、”キュアブロッサム”の姿をした2頭身の精霊・プロトブロッサム。
彼女はステフォンの中に入ったことが影響してなのか、『ハートキャッチプリキュア!』の世界における概念の一つで、人間一人ひとりの心の中に咲いている花────こころの花を、特別なアイテムを介さずとも見えるようになったらしい。
ただし、巡や巡周辺の人物以外は見えなかったりと、ある程度の制約は課せられるようだが。
これは、そんな彼女がステフォンの中にきてから少し時間が経ったお昼の出来事である。
(巡は授業中)(ステフォンはミュート中&カバンの中)
ラブリー「ねえねえブロッサム」
ブロッサム「どうしましたか?」
ラブリー「ブロッサムってこの前、今ならこころの花っていうのが見えるって言ってたよね」
ブロッサム「は、はい!ただ、巡さんや彼女周辺の一部の人たちしか見えないんですけども……」
ラブリー「他には誰のが見えたりするの?」
メロディ「あ、それ私も気になった」
ラブリー達がふと気になったこと。それは、巡や彼女の姉以外の人物のこころの花は見えているのかどうかということだった。
答えを出すなら『イエス』なのだが、どうやら巡周辺の人物に限られているらしい。彼女の姉である繋幸の花が紫色の『胡蝶蘭』であることはわかっているが、彼女達以外もわかるのだろうか。
ブロッサム「そうですね〜……例えば、後ろで居眠りしている人は……」
ハッピー「千夏ちゃんって子だね!」
ピーチ「わあ、ぐっすり眠ってるね」
日南千夏。巡のクラスメイトでダンス部に所属している少女。少し前にスランプで悩んでいた子である。国語の授業内容に楽しさを見出せていないのか、10分ほど前から諦めて居眠りを決め込んでいる様子。
ブロッサム「あの人は『オハイアリイ』と言う花です」
ピーチ「オハイアリイ?」
ブロッサム「ハワイの方で古くから栽培されていて、日本では沖縄でも親しまれています。沖縄三大名花の一つにも数えられているんです」
ラブリー「へえ〜!」
ブロッサム「花言葉は“自分らしく”です!」
ハッピー「自分らしく……!なんだか千夏ちゃんっぽいね!」
ブロッサム「あと、あの男子は……」
ラブリー「あ!帯刀君だ!」
メロディ「巡ちゃんのことが好きかもしれないと噂の?」
帯刀廻。千夏と同じく巡のクラスメイトでサッカー部に所属している青年。巡を密かに好いているようで、さりげなく彼女にアタックしているようだが、能天気で他人からの好意に疎い彼女が気がつくのは、もう少し先の話になりそうだ。
ブロッサム「あれは……『カンギク』、でしょうか。名前道路、冬に見頃を迎える花ですね」
ハッピー「わぁ〜!ちっちゃくてかわいいね!」
ブロッサム「花言葉は“健気な姿”です!」
メロディ「健気な姿、ねえ……」
ピーチ「へぇ〜!」
ラブリー「言われてるよ帯刀君」
ハッピー「???」
ブロッサム「へ?……あ、あぁ……」
花言葉を聞いて、どうして彼の花が随分と可愛らしいものなのかという理由に気づいて、思わずニヤついてしまう。
ブロッサム「そういえば、お昼休みに巡さんと話していた長い髪の人は……」
メロディ「希奈子ちゃんかな?」
七星希奈子。巡とは別クラスだが幼馴染である中学2年生。巡が『きなっち』と呼んでいたら大体彼女のことを指している。心優しい気配り上手のようだが、少々心配性な面もあるようだ。
ブロッサム「あれは……『エゾギク』?」
ラブリー「エゾギク」
ブロッサム「アスターって言えば伝わりますかね……?」
メロディ「聞いたことあるような……」
ブロッサム「星のような形をしているから、ギリシャ語で星を意味する言葉が付けられたんです。花言葉は“変化”や“追憶”があるんですけど、青い花は“信頼”や“あなたを信じているけど心配”というのもありますね!」
ハッピー「ああ〜、なんかわかる気がする……!」
ラブリー「そうだ!この前遊びに来た後輩の子の花もわかる?」
ブロッサム「えっと……確か恋華さんでしたよね?」
柑崎恋華。巡の後輩に当たる中学1年生。千夏と同じダンス部に所属している。お調子者のムードメーカーらしいが、話によると自作のレポートやら何やらを書き留めるほど、プリキュアに対しての熱意が強いようだ。
別の世界に行く時に困らないようにプリキュア達の名前を覚えるため、巡が彼女からレポートを借りていたのも記憶に新しい。
ブロッサム「あの花は『フリージア』ですね!」
ハッピー「聞いたことある〜!!」
ブロッサム「フリージア自体は黄色のイメージが強いんですけど、彼女の紫の他に白やピンクなどもあり、色ごとに花言葉がありますよ」
ピーチ「さっきのエゾギクみたいな感じかな?」
ブロッサム「はい!全体の花言葉は“親愛の情”や“友情”、“感謝”なのが挙げられます。紫の花だと“憧れ”です」
ラブリー「憧れ……!」
彼女がプリキュアが大好きだという話と相まって、彼女達の胸の奥がどこか熱くこそばゆくなる。
巡の世界はプリキュアという存在が『アニメキャラクター』として確立されており、おそらく彼女が好きなのはアニメの方だ。自分たちは別の世界の存在でここの世界の自分たちとは全く関係がなくなるのだが、それでも嬉しいものは嬉しい。
ハッピー「花一つ取るだけで、巡や巡の周りの人たちの人となりがわかるから面白いね!」
ラブリー「うんうん!……あ、そう言えば巡ちゃんの花って……」
メロディ「なんだっけ?メイガスファイト?」
ブロッサム「『メラスフェルラ』ですよ!なんで魔法使いの格ゲーみたいになっちゃったんですか!?」
ピーチ「ブロッサム、なんでも知ってるねえ」
※メイガスとは、魔法や魔法使いを意味する単語である。
メロディ「そうそうそれそれ!……というかこの言い間違い、咲ちゃんもやりそうな気が……」
『あぁ〜……』
ラブリー達は誰かさんの花の名前の言い間違いで盛り上がっているが、メラスフェルラは南アフリカが原産である、アヤメ科の球根植物である。カスミソウのように小さな黄色の花をたくさん咲かせ、押し花の素材によく使われている。
花や植物に詳しいブロッサムも、最初は自信なさげに首を傾げていたので、知名度的にはマイナー寄りの花なのだろう。
ブロッサム「巡さん、珍しい花を持っていますね」
ハッピー「あんまり見たことがないって言ってたもんね」
メロディ「やっぱり花言葉が関係してるのかな?」
メラスフェルラの花言葉は“幸福が飛んでくる”ともう一つ、”光のさす方へ”というものがある。
どうして巡がその花言葉を持つこころの花を持っているのかはよくわからないものの、彼女の性格や今までの行動を振り返ってみると、その言葉が当たっている箇所もいくつか垣間見えるような気がする。
ラブリー「……?」
一瞬だけ、ラブリーの脳裏に一人の少女の背中が映った。誰かの白い背中はすぐにいなくなったものの、どうして顔を知らない
少しだけ表情を硬くさせたのが見えていたのか、ピーチが少しだけ不思議そうに問いかける。
ピーチ「ラブリー?」
ラブリー「ううん、なんでもないよ!……今の私たちだと、キュアウェポンとして一緒に戦うことしかできないけど……いつも頑張っている巡ちゃんを守れたらいいなって」
メロディ「……!そうだね」
ハッピー「巡ちゃんだけじゃなくて、闇の使者の中にいるみんなのことも助けないと!」
ブロッサム「果たして、次は誰が来るんでしょうか……?順当にいけばハートやフローラあたりがやってきそうな気がしますが……」
ピーチ「ブラックは別のことしてるみたいだし、ブルームとドリームはブラックにまだ出るなって言われてるみたいだし……」
ラブリー「そうなの?」
ピーチ「巡ちゃんからステフォンを取り戻せなかった時の切り札みたい」
ハッピー「あれそうだったの!?二人もてっきりネオフュージョンに何かさせられてるんじゃないかって……」
ラブリー「一体何があったの……!?」
話題はやがて、闇の使者達の現状や他のプリキュア達の話へと移り変わっていく。
平日午後の授業中、巡のバッグの中にあるステフォンの中で繰り広げられる女子会のようなおしゃべりは、巡の授業が終わるまで続いたという。
番外編1・おしまい
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