お久しぶりですあの人の誕生日なので番外編書きにきました
お祝いのつもりが暗くなってしまった
時系列:本編開始前
ここは、ネオフュージョンの世界。ステフォンを狙う闇の使者達の住処となっている漆黒の城の大広間にて、10人の闇の使者達が慌ただしく、とある”準備”に勤しんでいた。
「誰か!これを高いところに飾って〜!」
「ま、待って今脚立持ってくるから!」
「あの人いっぱい食べるかな?大盛りにしちゃっていい?」
「今ってどうなんだろう???何も考えずに作っちゃったかもしれない!」
「チョコケーキめちゃめちゃ大きく作ったけど、みんなも食べるよね!?」
楽しげな会話が繰り広げられつつ、闇の使者達は部屋の飾り付けと料理の準備を進めている。奴の城にさまざまなものがあるのもびっくりだが、基本的に自由に使っていいとは言われているのでありがたく使わせてもらおう。
『ブラックの誕生日をお祝いしたい!』
ダークネスホイップの唐突な思いつきによって、絶賛進められている誕生日パーティーの準備は終盤戦のようで、あとはケーキと部屋の飾り付けで完了する。
果たして今の自分たちがこんなことをしている場合なのかどうかと言われると怪しいところなのだが、ホイップも考えなしで言い出したわけではない。
いつもネオフュージョンに連れ回されているブラックを労わりたい・元気にしたいという純粋な思いからである。彼女自身も周りに疲れを見せないようにしているが、最近の様子を見ていると隠し切れないくらいの暗い顔を浮かべている時が出てきたのだ。
そもそもこの世界だと時間感覚がわからなくなるので、今の時期が10月10日なのかも若干怪しい。それでも、元気にしたい人のために、少女たちは準備を進める。
「準備しているのはいいけど、ブラックって何時ごろ帰ってくるんだろう?」
「いきなりくる訳でもないし、そもそもここに来ない日もあるし……」
「そもそもあの人、自分の誕生日を覚えてるのかな……?」
────問題はただ一つ。ブラックがいつこの大広間に来るのかだ。
「……っ」
漆黒の城は大広間を離れ、闇の使者のそれぞれの個室の一つ。他の世界から帰ってきていたダークネスブラックは、ベッドの上で仰向けになっている。片腕で隠している顔色は、あまりいいとは呼べない。
彼女はネオフュージョンとの取引で、さまざまなプリキュアの世界に現れては、その世界のプリキュア達を手にかけている。長く続けてたせいか何も思えなくなっていたが、今回は精神的にかなりきつい状況下にいたようだ。
『どうして……?どうしてこんなことするの?!』
『……ッ!』
『■■■も■■■も■■も■■も、みんな悪いことしてないよ!』
悲しげな叫びで糾弾された言葉が、今でも頭の中でリフレインする。
主人を再起不能にさせて、怒り心頭で殴りかかってきてもおかしくなかったのに、あの少女は、あの子達は、私に拳を向けることを選ばなかった。戦うことのない少女たちを傷つけるなんてことは、今までほとんどなかったのに。
嫌ならここでやめておけばよかったものの、タイミング悪くネオフュージョンに『貴様の仲間を守りたいのだろう?』と囁かれ、トドメの一撃を放ってしまった。
本来の姿で弱りきった姿を見たからか、いつも以上の罪悪感に押しつぶされ、ブラックの体は鉛のように重く、その場から動けずにいた。
「やっぱり。ここにいた」
「……」
部屋の入り口の方で、ブルームの声が聞こえた。そちらに顔を向けることはない。そもそも返事できるほどの元気がない。しかしブルームは特に気にすることなく、背を向けてベッドに横たわるブラックのそばへと歩き出し、ベッドの上に腰掛ける。
大広間の方で準備する仲間たちの話を耳にして、ブラックのことを呼びにきたのだろう。
「……またネオフュージョン?」
「……」
「顔色がいつも以上に悪かったし、今回は相当ヤバかったのかなって」
「……」
「本当は、みんな揃ってるし顔でも見せたらって呼びに来たんだけど……やめとく?」
「ん……行く……でも、もう少し待って……今の顔は、みんなに見せられない……」
「わかった」
それでもみんながいると聞いて、ブラックはようやく返事らしき言葉を返した。このところ周りを避けているような雰囲気があったが、気のせいだったらしい。
数秒の静寂ののち、ブラックが顔を向ける。
「……聞かないんだ」
「え?」
「何があったんだとか、そういうの」
「……それを聞いても、ブラックは余程のことがないと言わないじゃん」
「……それもそっか」
「いや、そこは否定しなよ」
特に何があったのかを聞かないブルームに、ふとした疑問を投げかけるものの、非常にあっさりとした理由ですぐ投げ返される。
ダークネスブラックは、自身のことをあまり話さない。特にネオフュージョンの悪事周りに関しては、限られたごく少数の人物しか知らない。それを話してしまえば皆に幻滅されるだろうし、話した自分もダメージを喰らう。特に今ベッドに腰掛ける少女は、その悪事の一部始終を目撃してトラウマになっているようなので、下手に切り出すことができない。
いずれこちら
「……本当に忘れてるじゃんこの人……」
「?」
「こっちの話ですよ〜……何度も言ってるけど、辛かったら私たちのことも頼ってね」
「……わかってる」
「全く、わかってるのかないのか……」
「……あんたも、あんまり背負わないでよ」
「……え」
思わぬカウンターを喰らい、ブルームは口をぽかんと開けたまま呆気に取られる。
「人のこと言えてないのはわかってる。……あんたも結構、無理するんでしょ?」
「無理ってそんな……ブラックとかドリームじゃあるまいし」
「……」
軽口を叩きつつも視線が若干狼狽えているのが隠せていないあたり、図星だったようだ。彼女の場合は隠すのが上手いのもあるのか、周りに自身の不調
誰かと話して気が紛れたのか、先ほどよりも顔色のよくなったブラックが起き上がり、ベッドから立ち上がる。
「……」
「もう大丈夫なの?」
「ええ。少しは楽になったから。」
「……そっか」
これ以上の詮索は野暮だと判断し、ブルームも「早く行きましょ、お腹ぺこぺこだし」と言って、ベッドから降り、そそくさと大広間の方へと向かっていった。
彼女なりにブラックのことを心配してくれているのだろう。一番知っていて、嫌っていてもおかしくないようなことを見ているというのに。それでも彼女は、守るべき仲間たちと共に自分を引き留めてくれている。あの子だって守る仲間の中に入っているのに。自分は、彼女たちの手を取ることすら怖くなってしまったというのに。
「……今はこれ以上、考えるのはやめよう」
再び悪くなりそうな顔色を少しでも悟られないよう、大きく息を吸い、いつも通りの顔を取り繕って大広間の方へと歩き出す。仲間たちのの声でも聞いて、少しでも胸の中に渦巻く嫌な苦しみを紛らわせるためにも。
────大広間の扉を開けた瞬間、クラッカーの音と楽しげな声に囲まれて、自身の誕生日を理解するまであと────
番外編5・おしまい
<超おまけ>
一方巡の世界では
※ステフォンの中のプロトキュアたちとの会話
※時系列:本編第31話後
巡「君、今日が誕生日らしいね」
ラブリー『10月10日、そうじゃん!!』
ドリーム『わ〜!ブラックおめでと〜!』
ブラック『ありがと〜!って、なんであんたが私の誕生日を知ってんのよ!?』
巡「今日学校で恋華ちゃんが、『今日はキュアブラックの誕生日なのでアクスタとチョコパフェを並べて写真撮ります!』って言ってて思い出した」
ハッピー『……なんて???』
ホイップ『すごいお祝いの仕方だね?!』
巡「恋華ちゃんなりに誕生日おめでとうの気持ちと、生まれてきてくれてありがとう的な気持ちが入っているらしい」
ミラクル『め、巡ちゃんの世界のアタシたちって、アニメのキャラクターなんだよね???』
ブロッサム『え、えりかから聞いたことがあります!好きなアニメや漫画のキャラクターの誕生日を、イラストやグッズでお祝いする人たちが一定数いるって!』
フローラ『へ、へぇ〜!色々なお祝いのやり方があるんだね!』
ブルーム『……あ!ということは私たちの誕生日の時もお祝いしてたりするの?』
巡「やってるよ。というか、あたしの周りだと恋華ちゃんは確実にやってる。誕生日わかってる子もわかってない子も全員等しく祝ってるらしいって話をどこかで……」
メロディ『す、すごい……!』
ハート『キュンキュンするねぇ』
ピーチ『なんだか嬉しいような、恥ずかしいような……?』
巡「全員照れてる……なかなかないよこの絵面」
巡「……で、その話を聞いていつも君には手を焼いてばかりだけど頼ってもいるから、何かお祝いしないとなと思いまして」
ブラック『一言余計なの入ってない???』
ラブリー『まあまあ〜』
巡「君確かチョコレート好きだって言ってたから、中学生の財力だとコンビニスイーツぐらいしか用意できなかったけどこれをおやつに……」
レジ袋から小さめカップのチョコレートパフェを取り出す巡
ブラック『ちょ、チョコパフェ!?これ本当にいいの!?』
ブロッサム『こ、コンビニスイーツのクオリティとは思えない……!?』
巡「今のコンビニはすごいからねえ……ほら、ブラックにあげるよ」
ブラック『あ、ありがとう巡!』
巡「喧嘩にならないように君たちにもプチシュー買ってきたから、一緒におやつパーティーしよ?」
ホイップ『やった〜!』
ブラック『……けど、本当にいいの?私がもらっちゃっても……』
巡「いいよいいよ。君確かチョコパフェ食べたいってぼやいてたって、何人かから聞いてたし」
ブラック『誰よリークした奴』
ブロッサム『誰でしょうね〜』
ホイップ『シラナイデスネ〜?』
ドリーム『巡の思い違いじゃないかな?』
ブルーム『……』(視線を逸らしている)
ピーチ『ラブリーじゃないかな?』
ラブリー『え!?私!?』
ブラック『あんた達ね……すっごい白々しいし』
巡「ははっ。それにしても、君にしては好物を躊躇するの珍しいね」
ブラック『気持ちはとっても嬉しいんだけど……心のどこかで、“幸せになってもいいのかな”って考えちゃって』
ハート『え……?あ、あぁ……』
ブラック『闇の使者の中にいた時から、巡にもみんなにも酷いことしたのに……素直に喜んでいいのかな、私……』
ブルーム『ブラック……!それは闇の使者でここにいるあなたは……』
ドリーム『そうだよ!ステフォンの中にいるあたし達は彼女達から溢れた“想い”だって、巡やみんなも言ってたじゃん!』
ブラック『でも、それまでの記憶は“ちゃんと”あるから……』
巡「うーむ……前々から思ってたけど、ブラックって……
悩むと結構引きずる方の面倒くさいタイプだね」
ブラック『……はぁ!?!?』
フローラ『めっ、巡さん!?!?』
メロディ『何を言い出すんだと思ったら!!』
ブラック『ひ、引きずるのは仕方ないでしょ!』
巡「そうだね。仕方のないことだけど、あんまりズルズル引きずってると、疲れすぎて倒れちゃうよ。ハッピー風に言えばハッピーが逃げちゃう的な感じで」
ブラック『ぐっ』
巡「過去に起きたことはどう頑張っても変えられないんだし、考えるなら今と明日のことにしたほうが、ちょっとは前向きになれるんじゃないかな?」
ブラック『巡……ごめん、ありがと』
巡「……ま、あんまり君も気負いすぎないでね」
ブラック『うん……あ、これ美味し』
巡・ラブリー((食べるの早っ))
超おまけ・おしまい