ハイキュー!!に転生した転生者(女転生者)たちが原作に存在しない女子高に行き、原作キャラと世界大会で戦うまで   作:春さん

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お久しぶりです。難産でした。




青葉城西VS烏野高校の観戦 と、彼から彼女への見解。

 

インターハイ予選、三回戦。

伊達工を破った烏野高校は今青葉城西を相手している最中だ。

現在、第三セットの中盤。突然、青城がタイムをした。

 

青葉城西のタイム…流れを断ち切るってよりかは及川中心の作戦会議って感じね、あれは。……洞察する限り9番と10番の速攻について、かしらね。それ以外のタイムは現時点で考えられないわ。

 

「もしかして気付いたのかしら」

 

チームメイトになにかを話している及川を見ながら蜆は呟く。すると、優菜が補足を始めた。

 

 

「前試合を観察して実際に見て確信したってところでしょう。でないとこんな早くに気が付く訳がないですから」

 

 

普通の速攻と変人速攻では日向の言う合図が違う。

普通の速攻では「来い」。

変人速攻では「持って来い」。

烏野10番(日向)の言っている言葉が絶妙に違うのだ。そして烏野9番(影山)は2つの合図が気付かれたことに気付き、青城1番(及川)は気付かれたことを放置している。そうした方が最適だと考えたからと考えるのが妥当ね。

まあ、それでもさすがに烏野が対策案を用意してない筈がないし他の合図に切り替えるでしょう。多分大丈夫よ。

 

 

 

(合図、してない?!)

ほら。もう対策してきた。

気付かれたらやるのは早い。

なんせ、烏は対応が早いから。

 

 

 

 

それに__と、彼女が目を向けたのは烏野背番号2番。

 

「大地ー!ナイッサー!!」

 

原作で識っている。指示なしを合図したのは彼だと。

__三年のセッターは頭が回る。影山みたいな天才ではないし、意図的にボールを操作することなど出来やしない。けれども彼はコツコツと鍛錬をしているし、出来た者は褒める。それがあるからこそ彼に褒められた者は伸びるのだ。

彼女は経験者だからこそ確信して言える。こういう者は、土壇場でも強い。

 

「来いよ、烏野1番」

 

対して青城の主将はサーブでの威圧感が強めだ。

おちゃらけた部分はあるが引き締める所は引き締めるし、やる時はやる。それが彼。彼のお陰で青葉城西は成り立っているといっても遜色ないだろう。

及川は原作でも見ていたけれど、それぞれの個性を纏め上げるのが上手い。全ての力を利用してこそのセッターだと思っている。

 

「…行くぞ」

 

今彼が言った烏野1番…澤村 大地も、存在を知っているし知識として身につけている。

烏野の主将は縁の下の力持ち。大黒柱って奴かな。

実際見ただけの感想ではあるけれど、後ろにいるだけで心強い。それだけの安心感が彼には存在しており、それだけの安心を出来るほど彼もバレーをしている。リベロとちょっとよく似てる気もするけれど彼の強みもある。

 

どちらの主将も強いのは変わらない。

主将と名乗るだけのことはある。まあ、それだけやらないと1番を背負いはしないわね。*1

 

 

 

第三セット、31-33。

烏野と青葉城西。

 

セットカウント1-2。

青葉城西の、勝利である。

 

 

「良いものを見させて頂きましたね、監督」

「…ふふ。そうですわね、優菜」

 

 

バス停近くで彼女らは会話する。

ちなみに今日は平日なので先日まで来ていた主将は勿論、来蘭の高校生はいない。

彼女らは原作を見れないと嘆いていた。当たり前だ、平日は授業の時間帯である。欠席しようと足掻いていた者もいたにはいたが結局蜆たちにバレて今は授業を受けている。彼女たち泣いてるよきっと。

だがしかし。蜆たちとしては授業なのに欠席をさせるわけにはいかないのである。学校終わりならまだしも、学生は勉学が領分なのでね。

……まあ、前世の記憶を持って二度目の人生を歩む彼女らが学生と言えるかどうかはまた別の話なのだが。

 

 

膝をついた烏野。

インターハイ予選で烏野は負けた。

けれど、それでも彼らにとって糧となるものはあっただろうと思う。確実に経験は手に入った。

最強の囮と大王様の初めての敗北。初めての、負け。

蜆は思い出す。過去、まだ来蘭高校が有名になるもっと前。1回だけ連勝が途切れた試合……簡潔に言うと、負けた試合があったことを。

けれど、それから沢山練習させて、また持ち直させて。絶対に勝たなければならないという意識を芽生えさせて、今の今まで来たのだ。

それがあって、今に繋げているのだ。

敗北は勝利への道に過ぎない。今負けても、彼らにはまだ次がある。ならまた次を歩めばいい。次、挑めば良い。

これで影山飛雄は傲慢な大王様を抜け出せるだろうか。いいや、彼ならば抜け出せるだろう。原作の彼ならば、絶対に抜け出せる筈だ。柔軟な考えを取り戻せるはずだ。

元々の本質は、それだから。

 

収穫もあった。原作も観れた。彼女ら的にはウハウハな気持ちである。

 

「それにしても実際見ても青城の1番の動体視力は凄いわね〜…」

「ですね。さすが青葉城西を背負っているセッターなだけはあります」

 

…それはさておき、と。改めて及川の動体視力半端ないことを自覚した彼女たちであった。*2

 

 

 

 

「春高までに烏野は青葉城西に勝てますかね?」

「さて、どうかしら」

 

 

 

 

未来(原作)のことは知っていても、本当にそうなるのかは正直分からない。

だからこそ、もっとバレーをしてほしい。

もっと力を付けてほしいのだ。____彼女たちに、追いつくまで。

 

 

 

 

 

 

〇●〇●〇

 

 

 

インターハイ予選が終わってから。

烏野に勝利した彼は今またとあるビデオを観ていた。

 

 

それは、2年前。

県大会での予選だ。

 

 

目の前に映るのは当時1年生の現在3年生、及川と同じ主将 佐崎彼方である。

彼女は"完璧"すぎて、怖い。

それが彼女のバレーを観た、彼からの印象だ。

コート外に行くことはなく、コート上で収める。コートを出るようなものでも、必ずギリギリになるようになっている。

 

これだって、そうだ。

 

彼はビデオを見ながら目を細めた。

この過去のビデオは何本目だ?もう数すら分からなくなってしまった。観察をしすぎて、わからなくなってしまった。

このビデオでの彼女は相手選手がボールを見定めて取らなかったボールを、ギリギリでコート内に入れている。それも、一度の偶然ではなく数度の故意に。

恐ろしい程の精密性に見定めて相手がボールを取らずにいるのに焦りもしないその精神力。見切りを付けた相手の判断力にも冷静で、彼女は平然とコートで熟すべきことをしているように見える。まだ1年生なのにも関わらず、だ。

2年3年は顔色をビデオの端々で伺う限り、佐崎よりもっとずっと冷静であった。

セッターである者の空間把握能力に演算能力、ミリ程度のコートの位置や跳ね返りに音、そしてボールを持った感じ(・・)の解析と微細な修正、そして誰に出すか優先順位を決めながら次の行動を決める。

それら全てが合わさって、初めて"セッター"と名乗れる(成れる)

来蘭高校のバレー部は性格ごとに様々なことをしている。しかし、あの高校は本来の性格とは裏腹に全員が全員、冷静に物事を対処するのだ。

例えばレフトからボールが来たとしよう。すると、後方に居る誰かがボールを取ろうとする。大抵は大体が決まってリベロだがあの高校はそういうことはなく、リベロ以外でも余裕で取ることができる。

二人が動いてしまうということもない。

ただ誰かが取るだろうと誰もが確信していて、それに誰かが絶対応えている。

 

 

 

そしてなにより。

 

 

ボールを、次の人へ繋ぎ続けている。

 

 

 

単純なことだが、この単純なことがとてつもなく難しいのを及川は知っている。感情に動くことがなく、機械のように恐ろしい練度で淡々と点数を重ねる。

冷静の皮を被った獣は恐ろしいものだ。まだ冷静でない方がやりやすいと言っても過言ではない。だから相手選手は心が折られやすいのだろう、と推察する。なんせ攻撃をしても誰かが取る。そこに絶対の信頼を置けている。だからあんなに悠長と構えていられる。

それが、全バレーボール部にとって一番怖いものなのだ。圧を掛けなければならないのに、いつの間にか掛けるどころか掛けられる事態になっている。

 

だからこそ彼は───及川は、来蘭女子高校女子バレー部のことを、恐ろしいと思うのだ。

 

 

 

 

そんな彼女らバレー部から青葉城西へ強化合宿の招待が来て青城の顧問が驚愕で手紙を落とすのは、また別の話である。

 

 

 

 

 

さて。そんな及川が佐崎彼方が恐ろしいと思っていたその試合、内心の彼女はどのように思っていたのだろうか。

彼女の内心を見てみよう。

 

 

高から一セットを取った来蘭女子高。時は遡り、彼がビデオを観る2年も前の話。

彼女──ただの1年でしかない彼方は、今とてつもなく焦っていた。

 

 

(ヤベェあれ加減間違えたから入らんかも)

 

 

焦る彼方。それを感じ取り、彼方から伝染して緊張が迸る彼女ら。

これ落としたら今までのものが全て途切れるのだ。そんな死ぬ覚悟でいるので、背中は冷や汗が伝っていた。

 

(どうか取ってくれ、頼む)

 

誰が思ったその心の声。

しかし、その願いは通じることがなく。

 

(ア、おわた)

 

先輩たちごめんと思いながら自分が放ったボールを見る。世界が、スローモーションに見えた。

そのボールはコート外に───行くことはなく。相手コート内ギリギリに入り。旗が上げられることはなく。

そうして、自コートから歓声が上がった。

 

(あっぶねぇぇぇぇ…運さん味方してくれてありがどゔ!!!!!!)

 

入学したばかりであり、しかし後ろを預けられている立場のまだ未熟な佐崎彼方は、普段居もしないと思っている神に感謝をしたのであった。

 

 

 

 

「なーんてこと、思ってるんだろうなぁ…」

 

 

ふと、その試合を近くから観ていた彼女は小さく声を漏らす。

 

来蘭高校、下側の観客席。

横断幕と応援が途切れぬ中、一人かの高校を観察している者がいた。

灰色のフードに伊達眼鏡。これで隠せるとは思っていないが、彼女にはこれくらいが十分だろう。

実際有名だった彼女に周囲が気付く様子は1ミリもない。

 

 

「ホント、なんであんなに表情に出ないのかねぇ。転生者七不思議だよ」

 

 

過去そこにいた彼女は、コート上を見ながら呆れた表情を隠しもしない。

彼女が既に経験したが故の言葉だった。

 

 

「やっぱり変わんないなぁ…」

 

 

あの雰囲気も、監督も、マネージャーも。

全てが変わらない。

懐かしい雰囲気が、そこに在る。

 

「それに、観客席(ここ)にいるとバレーがやりたくなる」

 

目の前のバレーを見ながら全国大会を思い出して、熱の籠もった息をゆっくりと吐き出す。

やけに明るい照明と視線を注がれている私たち、そして何処まででもやれると思っていたあの時。

確かにあの瞬間私は青い春を送っていた。

最初から全力ではなかったものの段々本気になれていたし、だからこそ負けなかった。負けられなかった。監督からの言葉もあったから。

 

「監督、今どうしてるかな〜。まあ、連絡したら絶対バレーやるってことになるしまたあの呪縛が来るからやりたくはないんだけどさ。」

 

でも確かに、あの日々は青春だった。

思い出されるのは阿鼻叫喚の地獄。楽しいこともあったにはあったが、高校時代で印象に残っているのはそれしかない。

きっと今の彼女らも鬼畜メニューを熟していることだろう。まあフェードアウトした彼女にはもう関係のない事柄だが。

呪縛から解き放たれた__来蘭高校を卒業し、大学に入学したばかりの彼女は、呪縛が始まってしまった彼女らを見ながら薄っすらと笑みを浮かべた。

 

 

 

 

 

「地獄へようこそ。ここからの道のりはまだまだ長いよ、後輩(・・)

 

 

 

 

 

 

*1
やっぱりバレー好きは化け物揃いであった。

*2
及川が見ていたら絶対にてめぇらが言うな案件である





なんか誰かいましたね。
次回、ユース合宿見学。
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