ハイキュー!!に転生した転生者(女転生者)たちが原作に存在しない女子高に行き、原作キャラと世界大会で戦うまで   作:春さん

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ユース合宿 (前)

 

 

時は過ぎ。現在、11月。

影山飛雄の全日本ユース強化合宿。

周りには稲荷崎高等学校、梟谷学園高校学校、森然高校と名校連なる学校が練習をしている。

主に此処に居るのは才色兼備なセッターで、どこを切り取っても異次元。だから学べる。

普段通りの練習をしていると、ぞろぞろ、と大きな音を立ててて来た者たちがいた。その者たちはちゃんと正面の玄関から入ったようで、靴を履き替えている。

 

(あれが武田先生が言っていた来蘭女子高校か)

 

そう思う影山。

先頭にいるのは監督である『蜆 凛華』、その後ろを歩いているのは一、二年生。三年生はいないようだ。

 

「凄いわね。ここまで大きいだなんて思いもしなかったわ」

「そうですね、同感です」

 

彼女らは練習している彼らを背に、緊張感もなく喋っている。合宿先の高校筆頭とする顧問らは冷や汗をかき、ただ観察する。来るとは聞いていたが、ここまで大世帯で来るとは思ってもいなかったのだ。他の監督はただ彼女らを見ているだけなので使い物にならないと言っても過言ではなかった。

彼女らは見学だ。見学だけ。ただ見ているだけ。

けれど、どうしてか遠くからあの圧はこちらにも熱気として伝わってくる。暗にお手並み拝見とでも言っているのだろうか?

 

「…なんや、見てるだけか?」

 

ユースに呼ばれた宮治の言葉に彼女たちは応答しない。応答する価値もないと言われているのだろうか。彼女らはただマネージャーに視線を送っている。それこそ、異常な程に。

そうして目線を送られてくる中、代わりに答えたのは表舞台(人前)に立たないというこの業界では稀有なマネージャーだった。

 

「はい。私達が申請したのは見学だけですので」

 

三年を除く個性的な人物たちがこちらを見つめている。

二年、一年。髪の毛が違う、瞳が違う、装いが違う、個性が違う。当たり前の事だ。

多種多様なる人物がこちらを見ている。

二年と一年もこのまま努力をし続けるならば、必然的に今の三年のようになるだろう。そんな彼女らが、今ここで、男子全日本ユースの見学をしている。

それを簡潔に説明されただけでもバレーをしている人間は異常を感じ取ることが出来るだろうことは容易に想像できた。

 

 

 

「俺はやってもええで」

 

 

 

彼女らと対等に覇気を出し、真剣な様子でバレーボールを持ちながら来蘭女子高の面々を見る北信介。

治と侑を含むメンツの稲荷崎高校は目を点にした。あの北さんが喧嘩を売るなんて珍しいと思ったからだ。

 

__北信介が喧嘩を売った理由。

それは、ただただ単純に、自分自身の能力向上の為である。

今はまだ実力が足りないと頭で理解している。だからこそ、彼は彼女たちから技術を学びたい。できることなら目で見て盗みたい。そう思ったのだ。

一個一個丁寧にしっかりと現在もサボる事なくやり続けている北信介には見当が付いている。

見た限り、筋肉のつき方に隙のない洗練されたバレー技術。どれを取っても自分にとって不足はない。得しかないのだ。

 

「どうする? 6 対 6 でやるか?」

 

提案をしたのは影山。

彼女ら…主にマネージャーと話し合いをして、試合をすることになった。

全日本ユースチームと来蘭女子高校のチーム。

来蘭高校が時間がないとのことなので、1セットのみの試合。この条件で、対決をすることになった。

 

準備運動時間。それぞれがストレッチをしている中、彼女たちは違うコートでサーブとブロックをしていた。

飛ぶ姿とブロックの姿が、教科書に載っている模範のようだった。背と腕は伸びていて手もしっかり上に向いている。

 

正に、完璧。

 

 

 

 

 

 

そうして、そんなことを思っていた時。

彼らは、彼女らの実力を、改めて目にする。

 

 

 

 

 

 

 

また一つ、得点板が捲られる。

途中経過 20-21。来蘭高校の方が若干優勢であった。といっても、1点差だが。

 

「あぁ……やっぱり、」

 

今はリベロである彼女は、ボールを上げた。

 

──このワクワクは、高揚感は、楽しさは、誰にも何にも止められない。唯一止めることが出来るのは、同じ同業者(バレー選手)の彼らだけ。

 

「たのしいなあ、バレー」

 

そう言うは1年を纏める彼女。

周囲の(まなこ)はキラキラと輝いていた。

それは彼女を支える周りであったり、敵として向かい入れる彼らであったり。

 

信頼は尊敬、信頼は信用、信頼は脅迫。

バレーの人間なら誰でも知っていることだ。

 

 

「これもあげるらしいよ」

「みたいだね、篶」

 

 

キュッキュ、

トン、

ダンッ!!!

 

聞き慣れた体育館シューズの音の筈なのに、どこか重厚感を感じる彼女たちの踏み込み力。

序盤に得点を稼がれ、どんどん引き離された彼らは点数をどんどん取られていた。それから追うだけになってしまった。仮にも彼らは男子だ。身長も、体重も、生物としてなにもかもが違う。

卑下をしている訳ではない、ただ事実を言っているだけ。

男子と女子には体格の差もある。なのに、それでも足りない。いつの間にか、自分のコートにボールが叩きつけられている。

20点取った。だがまだ20点。まだ、勝ってはいない。

1点の差。されど、その1点が途方のない道のように感じられる。

 

 

 

 

さらに10分が経過した。

現在 25-26

 

 

 

「麗」

 

冷静に前方へトスを上げるのはセッターの依千野。返事をせず移動したのはアタッカーの涼凪麗。彼女らが今やろうとしているのはBクイック*1だろうと予測してブロックをしようと行動しているのは宮治。

そして。彼らの意識が自然に涼凪へ向き、ブロックをしようとした時だった。

 

 

__ぬりゅり、と足音もせず彼女が飛んだのは。

そう、依千野は彼女が言った涼凪ではなく、別の人物へボールを渡していたのだ。

 

涼凪は、囮だった。

 

それを察知して「なんやねんッ!!」と言いながら急いでブロックしようとする宮治。しかし残念、もう遅い。遅すぎる。

 

 

 

───そう。彼女は今、飛んでいた。そして、依千野から来たボールが手に触れる。だからもう彼のブロックは間に合うことはない。

 

 

なんせ、ボールがそこに"在る"と、絶対の自信を置いている彼女がそこに居るから。

その人物は、オポジットの橋口瀬奈であった。彼女はユニバーサルではあるが、スーパーエースになれる程の実力を持っている。

しかし、壁は2つ在る。そんな彼女は優しい手つきでボールをトッ、と押し相手コートへ。

それに気付いた星がボールを上げようとして、間に合わず。ボールが地面へ落とされる。

 

 

そうして。試合は、終了したのだった。

 

 

ここで少し解説を入れよう。

依千野がしようとしていたのはBクイックではなくAクイック*2だった。Bクイックと勘違いさせるように、少し前方に錯覚させるようなボールを依千野が仕掛けていたのだ。

名前を呼んで涼凪へ視線を集め誰からもBクイックになるだろうと思わせ、その間に横から橋口が飛ぶ。すると、橋口が飛ぶとは思わなかった彼らは急いでブロックしようとする。付いてきたのは二人だったのでストレートなどで締められるのは容易と考えた橋口は、ならば強打ではなく優しく下へ落とす作戦に出た。そして、それに直前に気付いてしまった星は取ろうとするが間に合わない。だから点数を取られてしまった、と言うわけだ。

 

彼らが判断を間違えるほどの実力(それ)はものすごいものなのだと実感できるだろう。

バレーは思考の読み合いだと、一秒が命取りになるのだと。これでお分かり頂けただろうか。

 

 

 

そうして、一セットが終わり。

25-27。来蘭女子高校バレー部の勝利であった。

 

 

ボールが捕れない。差は、埋まらない。

俺らはもうとっくに体力が消費されていて、息が上がっていた。当たり前だ、この一セットだけでも2時間半動きっぱなしだったのだから。

けれど、彼女たちはまだまだ余裕とばかりに笑っている。息もしていない。ここで体力の差を分からせられる。

まだできると思っていた。まだまだ動けると思いこんでいたのだ。

それでも。彼らは身体が動かない。身体が付いていかない。

けれど、彼女らは動ける。身体と脳が付いていくのだ。

そして、なんと言っても世界大会出場者がいる。出てきていないとしても、此処に居る。

それだけでこちらとあちらの実力は明白だった。

 

__言われるまでもなく、化け物(バレー馬鹿)だ。

 

 

 

「「「「「「ありがとうございました」」」」」」

 

 

 

体育館に響き渡る声に楽しそうな笑顔のままニコリと笑い手を差し出す来蘭女子バレー部。 そうして影山たちは差し出された手を合わせた途端__驚愕する。

バレー部の女子の手はこんなに硬かったか?と思う程の()に、洗練された──ブロッカーとして十分働くことの出来る手の()()()

特に凄いのが反射神経だ。

一瞬で反応する力。バレー部にとってそれは特に重要なことだ。反応が遅れると行動が遅れてしまう。行動が遅れてしまうと次のやることが阻まってしまう。バレー部員にとってそれは致命的なことなのだ。

 

さっき。

一度だけ、ボールがマネージャーに当たりそうになった。

しかしそれを察知した女子バレー部の部員は、そこに即座に生き、ギリギリでボールを取った。

超剛速球のボールを、助走をして取ったのだ。

だからこそあの感じだとそれが全員にあるのだろう、と察することができる。

 

一部だけじゃない。一人だけでもない。()()()、だ。

セッター、リベロ、ミドリブロッカー、オポジット、アウトサイドヒッター。

6人いて、全員がいて、バレーを繋げる者達の手。

こんなに硬くはならないだろうと思うのに、異様なほどに硬過ぎる手。バレーを極めている者の、努力をしている者の、手。

仮にもバレーボール選手ならば握っただけでわかる。彼らは握っただけでも力量の差を分からなければならない。

それが、彼らの意識向上にも繋がる。「次は」という意気込みに繋がる。それだけ。

 

 

彼女たちが普段どんなことをしているのか、彼らは知らない。当たり前だ、まだ彼女たちのことを知らないから。

けれど、それでも。一つだけ明確に分かることがある。

 

 

 

彼女は、彼女たちは、努力の秀才だ__と。

 

 

 

さて。視点は代わり。

彼女たちが心の底から楽しいと笑っている時、影山たちが彼女たちの手に驚愕をする前__監督とマネージャーは、それら全てに笑みを浮かべながら試合を観ていた。

相も変わらずキラキラしっぱなしで技を一通り試すような意気込みをしている1年生らと早くここ(補欠)から出て早く出たい、早くやりたい、と───バレーをしたいとばかりにこちらを睨んでいる残りの二年生。

 

 

「相変わらず、楽しそうにやるわね〜」

「……そうですね」

 

 

その言葉で血が出るほど力強く爪が食い込んでいたことに気付いた優菜は手を自分の出来る限り緩め、遠くから彼女らを見守る。

唯一マネージャーである優菜の過去(前世)を本人から知らされた監督はそれらを横目に見ながら優菜に話しかける。

 

「参加しないのかしら〜?」

 

たった数秒の静寂。

それは本人にとって何秒、何十秒と短かったのかもしれないし、逆に長かったのかもしれない。監督__蜆からの言葉に彼女がどう思っていたのかも分からない。しかし、監督は《やりたい》という意志がもしあるならば、彼女に参加してほしいと思っていた。

彼女になにがあったのかは知らない。けれど、彼女になにがあろうとも、彼女は…来蘭高校のマネージャー。蜆にとって信頼するたった一人の人物、それが彼女。

 

「結構です。私はもうここでバレーをしないと決めましたので」

 

優菜は、目を瞑る。

 

(今彼女らは過ぎ去ってしまった青春を楽しんでる。私がそれを邪魔する権利は、ない。だから私のことは関係ない)

 

───彼女は彼女について自分で決めた。とっくに決心していたのだ。だから、言葉に一切の迷いはなかった。

 

「……そ。楽しそうねえ〜」

「そうですね」

 

どこか眩しく、そして成長期の彼らを半歩引いた場所で温かく見るマネージャーと監督。

彼女らが眩しく目を細めたのは窓から光る太陽が普段より強く感じられただけなのか、それとも。

 

 

*1
セッターから2~3m前方に低く速いトスをあげるクイック攻撃のこと

*2
セッターがほぼ真上に近い位置にトスを上げ、スパイカーがそれを打つ攻撃





1年使ってて初めて「ここすき」を知りました……あったんですね「ここすき」。
さらに文字を別のフォントに変えてみました。
気分上がりますね!

【お知らせ】
目次で気付いたかと思いますが、前回のは諸事情につき削除させて頂きました。


次回。
ユース合宿 (中)


お気に入りとしおり、そして「ここすき!」をしてお待ちくださいませ。

2025.6.25-6
大幅な加筆をしました。
言葉の補足を追加しました。
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