とある魔術の機神咆吼(デモンベイン)   作:貴金属

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【第一章:平穏な日々にニトロをひとつ - Master of Necronomicon-】①

 

                    ◇

【side:DEMONBANE】

 

 邪神の手によって弄ばれた、とある宇宙の話は終わった。

 未来永劫、過去永劫。果てることなく繰り返されると思われた、無限螺旋は終わりを迎えた。

 しかして汝ら、かの警句を忘れ果ててはいないだろうか。

 

 ──そは永遠に横たわる死者にあらず。久遠の果ての永劫の後には死すらも死せり。

 

 一度終わってしまったものが再び始まることが無いなどと、果たして誰が言えるだろうか?

 

「そう言うことだよ、皆々様。

 我らが始める交差劇(クロスオーバー)を、いざいざ存分に楽しんで頂こうじゃ無いか!」

 

 

 とある魔術の禁書目録20周年おめでとう

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 斬魔大戰デモンベイン始動応援企画

 

 とある魔術の機神咆吼(デモンベイン)

 

 

                    ◇

 

【side:index】

 

 清々しい朝だった。

 東京西部に広がる学園都市の第七学区、そのアパートの一室で、上条当麻は伸びをした。

 

 数日前にアローヘッド彗星とか『僧正』とかその辺の混乱のせいで通う高校が半壊し、突如降ってきた長期休暇である。

 今までの経験則からこっから『魔神』のボスラッシュとか発生しちゃうんだろうなあ嫌だなぁと身構えていたのだが、一日丸ごとなんにも起こらなければ、幾ら(本人の望まぬことに)百戦錬磨と評される上条当麻でも流石に思う。

 

 ──やった! 平和な日々が帰ってきた!

 

 勿論これは少年の希望的観測であることは言うまでも無いのだが。

 

 ともあれ、何事もない朝である。

 同居している十万三千冊の魔道書を記憶している歩く魔道書図書館インデックスさんはベッドでまだまだぐっすり眠っているし、十五センチのオティヌスもまた然りだ。慌ただしいことになるまではまだ時間の余裕が見えるので、今のうちに洗濯物でも干しておこうと洗濯機の中身をごそっと抱え上げ、足先で行儀悪くベランダに繋がる網戸を開ける。

 

「……つか、雨降ってたりとかしねーだろーな」

 

 クセになってる悲観的予測を口に出しつつ、上条は開いた網戸からベランダに向い、

 と、すでに黒い布団が干してあるのが見えた。

 

「?」

 

 居候のインデックスさんに家事手伝いをやらせると悲惨なことになるし、十五センチのオティヌスは出来る手伝いそのものが限られる。よってそもそもこの部屋でベランダの手すりに布団をひっかけるような人物は上条当麻以外に存在しない。

 なので、よくよく見れば布団なんて干してなかった。

 

 干してあったのは黒い髪をした青年だった。

 

「はぁ!?」

 

 存在しない記憶が既視感を告げている。

 なんかこんなことがかつてのどこかであったような気がして、上条当麻の危機感知センスがレッドアラート。

 終わった。上条当麻の記憶している日々の中では珍しく長かった平穏は、この青年が口をひらくと同時に終焉する。

 

 そもそもこの青年はどこの国の人なのだろう? 住人の8割が学生であるこの学園都市において、教師と研究者以外の成人男性はレアものとして認識される。目の前でベランダの布団ごっこをしている青年は、そのどちらのような感じもしない。

 成人かつ学生なら上条よりも少し年上の大学生のお兄さん程度は見かけないことも無いのだが、目の前の青年はそれよりももう少し上に見える。少なくとも大学を卒業しているぐらいはあるのではなかろうか。

 

「ォ、────」

 

 青年の、なんかだいぶヘルシーそうな声をあげそうな唇がゆっくりと動いた。

 思わず上条はそのまま後ろへ一歩二歩。手に持った洗濯物を取り落とす。

 

「おなかへった」

 

「……………………………………………………………」

 

 一瞬。上条は込み上げてくる怒りを飲み込むことに苦労した。

 

「おなかへった(野太い声で)」

「……、」

「おなかへった(CV伊藤健太郎で)」

「……、」

「おなかへった、って言ってるんだよ?(CV伊藤健太郎の野太い声で)」

 

 無理だった。

 

「だぁぁ!!! なんか存在しない記憶をいきなり汚してくるんじゃありませんそこの成人男性!!

 自分が空から降ってくる系のヒロインにでもなったつもりかテメエはぁぁぁぁぁ!!!」

「いやー、俺どっちかというと空から降ってくる系のヒロインを受け止めた方の主人公だし?」

「しーるーかー!!! そもそも主人公なら初対面の相手に向ける第一声がメシをたかる言葉でいい訳あるか!! 何が悲しゅうてどっかで既視感のあるようなシチュエーションをおっさんと繰り広げねばならんのだ!!」

「アイムまだ二十代!! おっさんと呼ばれるにはもう少しダンディになってからにしたい所存であります!!」

「うるせえそんな野太いヘルシーボイスを聞いて若人判定下せるか!!」

「そんなぁ中の人だって20年前の原作が出た頃はまだギリギリ二十代だったんだぞぉ!?」

 

 そろそろメタネタに入りつつある会話を男二人が繰り広げているとこで、上条の後ろからピンポンとドアチャイムの音が聞こえた。

 

「ええと……インデックスー、代わりにお客さんの相手を……させたらマズいんだったええっとどうすりゃいいんだ!?」

 

 前門の不審者と後門の客人のどっちに応対したものか悩む少年の背後で響くチャイムはピンポンピンポンピンポンピンポーンと失礼なまでに連打されていく。

 流石にこっちを優先しないとやかましさで目覚めた女子のどっちかに怒られると危機感を覚えて振り向く上条。

 そうした瞬間、急にチャイムの連打が止んだ。

 

「邪魔するぞ!!」

 

 ドアを貫通して少女の声が響いたその直後、爆発が起きた。

 景気のいいどっかーんという音と共に、強引に開くべきで無い方向に学生寮の扉が開かれる。

 

「うぁぁぁぁ何してくれてんですかお客さん!?」

 

 もうもうとする煙の向こう、ドアを吹き飛ばした主犯の姿を見ようと上条は目を凝らす。

 そこにいたのは少女だった。ピンクがかった銀髪を伸ばし、ショートケーキのクリームを塗りたくったかのようなひらひらした服に身を包んでいる。

 ポーズは堂々とした仁王立ち。その態度から浮かぶ言葉は天上天下唯我独尊。

 

「そこの人間、聞くがこの部屋はカミジョウトウマ様のお宅でよろしいか?」

「そうですが敬語を使う気ならもうちょっと真面目に使え! あとドアを吹き飛ばす前にしろ!」

 

 つっこみながら上条当麻は思う。

 終わった。平穏な日々はここに終了。いつも通りの狂乱な日々が始まったのだ。

 

「ならばよい。妾達(・・)は米国アーカムシティ、ミスカトニック大学隠秘学部からの使いだ」

 

 上条の怒りをどこ吹く風と受け流して、ピンク銀髪の少女は己の所属を口にする。

 達、ということはつまり、と思って、ベランダの青年の方へ目を向けると、彼はどうもうちのツレがすみませんと語るような苦笑いをしていて。

 

「妾の名前はアル・アジフ。そっちのうつけ顔の名前は大十字九郎。

 妾達はイギリス清教との正式な共同依頼として、禁書目録への取次を要求する」

 

 ──魔道書図書館と最強の魔導書が交差する時、物語は始まる。

 




【TIPS】
・時系列は新約13巻終了時からのパラレル。ざっくりいうと上里編が始まらずこっちが始まっている。
・原作デモンベインは1930年代を舞台にしている話だが、クロスオーバーなので特に説明なく21世紀に居てもらっている。
・禁書では「魔道書」、デモベでは「魔導書」表記なので、禁書の方で原作登録しているこのSSでは「魔道書」表記を採用。
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