Fate/war wounds 〜極東聖杯事変〜   作:降雨

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開幕其のニ 凶徒乱入/バーサーカー強襲

 

「アーチャー!?」

 

 突然、乱入してきたバーサーカー。彼は太刀をアーチャーへと、全力で振り下ろした。

 

「…………」

 

 しかし。

 

「……なに?」

 

 アーチャーの肉体に、太刀の刃が通ることはなかった。

 

「ふん!」

 

 太刀を振り払ったアーチャーは、バーサーカーに強烈な蹴りを食らわせる。押し飛ばされたバーサーカーは、背負っていた己のマスター、ゼクスを放り投げて倒れた。

 

「ふん、後世の武者風情が、今の我に敵うとでも思ったか、間抜け。そこの神性を持つセイバーならともかく、貴様程度の攻撃など通るものか」

 

 アーチャーは、目の前で立ち上がるバーサーカーを見下ろし、煽るように言った。

 一方、立ち上がったバーサーカーはアーチャーに再び斬りかかるかと思われたが――しかし。くるり、と彼に背を向けた。

 

「……なんのつもりだ、貴様?」

 

「やはりだ。少しばかりお前たちの戦いを見物させてもらったが、やはりアーチャー。お前は英雄でもなければ天才でもない。英雄に敵対した反英雄であり、そして英雄に抗った男だ。なら、オレがお前と敵対する理由はない」

 

 そう言ってバーサーカーは次に、セイバーへと視線を向ける。

 

「オレの狙いは、お前だセイバー」

 

「え。……俺?」

 

「お前は英雄で、勇者で、天才だ。 それなら、オレの宿敵だ!」

 

「何言ってんだオマエ!? オマエみたいなヤツ、俺は知らねえよ!」

 

「問答無用だ。死ぬといい」

 

 あくまで、冷静に。まるで当然であるかのように、狂った行動をするバーサーカー。太刀を振り回す彼に、セイバーは応戦する。

 

「オイオイ待てよバーサーカー! 遠距離から俺らを一方的に攻撃できるアーチャーをほっとくのはマズいって! 今は共闘しようぜ? な?」

 

「ふむ。ぺちゃくちゃと喚きつつも、オレの刃を難なくしのぐとは、やはり天才の剣! お前はオレが殺すに値する男だ、セイバー!」

 

「駄目だこいつ聞いてねぇ!」

 

 剣戟を繰り広げる二騎。

 そんな彼らを眺めていたアーチャーだったが、再び弓を構え直した。

 

「好機だな」

 

「あっ。ばっ、やめろよアーチャー! 正々堂々と戦おうぜ? な?」

 

「我は主に忠誠を誓い、勝利を捧げるだけだ。そのためなら、如何様な汚い手であろうと構わず使うとも」

 

 アーチャーの手から、弦が離れる。

 そうして、乱戦中のセイバーとバーサーカーに向けて矢が放たれた。

 だが、その矢は空中で撃ち落とされた。

 

「させませんよ、アーチャーのサーヴァント」

 

「貴様は……バーサーカーのマスターか。ふっ、何だ? まさか貴様が、我の相手をすると言うのか?」

 

 ゼクスが、魔力を放出して矢を撃ち落とした。

 そして、手首から刃物を突出させ、アーチャーと睨み合う。

 

「私は、この戦争のために調整された身。英霊の戦いも、先日この目でデータを取った。アップデートは完了しています。――サーヴァントであろうと、数分ならば戦える」

 

「舐めた口を叩くなよ、小娘!」

 

 アーチャーは、ゼクスに向けて矢を放った。

 しかし、ゼクスはその矢のことごとくを薙ぎ払い、そしてアーチャーの目の前へと迫る。

 

「チぃッ!」

 

 アーチャーは弓を捨て、ゼクスと肉弾戦を開始した。

 ……驚くべきことに、ゼクスはアーチャーに引けを取らず、それどころか互角の戦いを繰り広げていた。

 アーチャーは、そんな彼女の性質を看破する。

 

「なるほどな。……貴様、命を燃やし尽くしているな!?  贋造の生命か、貴様。妖術と絡繰より生まれた、人ならざる生物!」

 

「そうです。私は、ホムンクルス。寿命は、僅か一月ばかりしかない。ですがその代わりに、瞬間的ではありますがサーヴァントともやり合える力を引き出している」

 

「その戦闘力は瞬間的なもの、か。ふっ、残念だったな。バーサーカーが使い物にさえなれば、我はセイバーとバーサーカー、そして貴様を相手にしなければならなかった。いくら我でも、それは流石に辛いというものよ」

 

「……それは、本当にそうですね。ですが、そうなってしまったことは仕方ない。それにですね、アーチャー。たった一瞬の時間でも、稼げたことは私には意味がありました」

 

「何?」

 

「あなたのステータスと真名は、だいたい絞り込めました」

 

「!!」

 

 ゼクスは、戦闘と並列して思考を行い、そしてアーチャーのサーヴァントとしての性質を分析していた。

 アーチャーの表情に、動揺が浮かぶ。

 

「服装から、あなたが古代日本の英霊であろうことはだいたい絞り込んでいました。その身に宿る神秘からしても、古き神代の英霊であるのは間違いない」

 

「やめろッ!」

 

 激昂するアーチャーから、ゼクスは距離を取る。彼女の戦闘パフォーマンスにはそろそろ限界が来ていたため、彼女は撤退を始めようとしていた。

 

「そして、あなたのその頑丈な肉体。私の攻撃はともかく、狂化でパワーアップしているバーサーカーの攻撃を防げたのは異常としか言いようがない。それは、何らかの技能(スキル)による恩恵ですね?」

 

「やめろ、我が正体を明かすなァ!」

 

「……いえ、残念ながらそのスキルの全容は掴めていません。あなたの真名も、確信に至ってはない。しかし、一晩ほど思考を整理すれば、答えは必ず出せるでしょう」

 

「きさ、ま――――!」

 

 アーチャーが放った矢を、ゼクスは背から展開したジェットパックの噴射で空を飛び回避する。そして、その手に宿った令呪を天高く掲げ、叫んだ。

 

「令呪を以って命じます。バーサーカー、私を連れて撤退しなさい」

 

「っ!」

 

 セイバーと交戦していたバーサーカーの手が止まる。そして無言のまま、ゼクスを拾い上げると爆速でその場を後にした。

 

「……おのれ、あの小娘――! 我が真名を、絞った、だと――!?」

 

 憤怒の形相を浮かべたまま、アーチャーもその場を立ち去る。そして、その場にはセイバー陣営だけが残された。

 

「何だったんだよ、あのバーサーカー……。さて、マスター。どうする? このままアーチャーを追うか?」

 

 ジャックにそう尋ねたセイバーだったが、ジャックは地面に膝をついていた。そして、苦しそうに答える。

 

「すまん。さっきはあんな啖呵を切ったが、やっぱり限界だ。あのサーヴァントが襲来してきたとき、俺は何もできなかった。クソッ!」

 

「ま、しゃあねぇわな。さっきは俺が悪かったよ。でも、そのおかげでオマエの限界を知ることができた。たぶん、一つの戦いにつき、宝具使用可能回数は一回。そんでもって、一回使えば数日は使えなさそうだな、こりゃ。うんうん、それをあらかじめ知ってりゃ、やりようはあるってもんさ。さ、帰ろうぜマスター。初陣はこれで終いだ!」

 

 

 

 

 

「あ、アーチャー! どうしたのよ、急に引き上げて――」

 

 一方、マスターであるカーラの元へと帰還したアーチャーは、彼女と会うやいなや――

 

「すまぬ、マスター!!!」

 

 勢いよく、その額を地面に叩きつけた。

 

「あ、アーチャー!?」

 

「……バーサーカーのマスターに、真名を看破された。あやつ、己を贋造の命――ほむんくるす、と言っていてな。人ならざる情報の解析により、我が素性が明かされてしまった」

 

「ホムンクルスですって!? いや、それよりも、真名がバレた!? ……マジか、確かにそれは痛いわね」

 

「セイバーもバーサーカーも仕留めきれず、この有様。マスター、本当に申し訳ない。いかなる罰であろうと、受ける所存にて」

 

「いやいやいや、別にしょうがないでしょ。……それに、戦闘で何の役に立たなかったのは私なんだもの。謝りたいのは、むしろ私のほうだわ……」

 

 黙り込んでしまうカーラ。アーチャーも、一言も発さず、マスターからの罰を待つ。そうして、気まずい時間が流れる中。

 

「では、君たちはあのバーサーカーから倒すべきだね。ウン、それがベストアンサァ、というやつだよ」

 

「!?」

 

 突然、見知らぬ男の声が聞こえた。

 アーチャーは、迅速に声の主が潜む木の陰に弓を向ける。

 

「オオッと、待ってくれ待ってくれ。私は君たちの敵じゃない。先程の戦いは拝見させてもらった。その上で、君たちに害意はないんだよ、本当に」

 

「気配を消してここに現れたくせに、害意がないだと? 何者だ、せめて名を名乗れ」

 

「ああ、失敬失敬」

 

 両手を上げたまま、男は姿を現した。と、同時に霊体化を解除し、巨大な鎧武者のサーヴァントも現れる。

 男は開口一番は、こんなことを口走った。

 

「私は手塚龍之介。そしてこっちのサーヴァントはライダーだ。……アーチャーとそのマスター。あのバーサーカー退治のために、私たちと同盟を結ばないかい?」

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