Fate/war wounds 〜極東聖杯事変〜   作:降雨

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序幕其のニ 日蝕の覇王/アーチャー

 

「はあ〜〜。もう、誰よこんな極東の外れの島で聖杯戦争をやろうだなんて考えたヤツは。遠いし、暑いし、虫は多いしでサイヤクなんですけど。はぁー、今からでも帰ろっかなぁ……」

 

 この島に降り立って早々、その女は愚痴を漏らした。貴族のように美しく飾り立てて、肌を露出させたその格好もこの島では逆効果だ。

 

「でも、霊脈の流れは悪くない。聖杯を設置するには適した場所だった、ってことか。聖杯戦争に勝利した暁には、この地で魔術の研究をするのも悪くない……かも? ま、その時は気候ごとこの島をリフォームする必要があるけど」

 

 ぶつぶつと独り言を呟いている彼女の名は、カーラ・グレネル。魔術を扱い、研究する者――――すなわち、魔術師である。

 

「それにしても、こんな幸運があるだなんて。フユキという場所で行われた聖杯戦争を知ったときには既に全てが終わっていたけど、今回はこんな早くに知ることができちゃった。……やってやるわ。私を落第生と罵った奴らに、一泡吹かせてやろうじゃないの!」

 

 グレネルの家系は、それなりに歴史のある魔術師の家系ではあった。

 しかし、不運により当主であったカーラの父親は若くして不治の病に犯され、魔術の素養がお世辞にもあるとはいえない一人娘のカーラに魔術刻印を譲り渡すしかなくなってしまった。魔術刻印とは、先祖たちが残した魔術の証そのものである。魔術の素養がある養子を取るという選択肢もあったが、まだ若かったカーラの父親にそんなコネは無く――――そして時間も無く、彼はこの世を去った。

 そうして、幼いカーラはグレネル家の当主となった。だが、魔術の才覚は凡庸未満と言わざるを得なく、魔術師たちの総本山である時計塔では、冷遇される日々を送っていた。

 

 

「聖杯戦争に勝利して、聖杯を手にする。そうすれば、時計塔の奴らも私のことを認めるはず。そして、家の再興も! 聖杯戦争は、サーヴァントと共に戦うもの。魔術の実力だけじゃ勝敗は決まらないわ。私にだって、やりようはあるんだから!」

 

 東南アジアに聖杯が出現し、聖杯戦争が行われようとしているという知らせは、時計塔にパニックをもたらした。つい数年前に冬木で聖杯戦争が行われたばかりだというのに、それとは関係なく別の地で聖杯戦争が開催されるという情報には、時計塔の上層部も頭を悩ませた。そして、その情報は一般魔術師の間にも噂話として流れるようになり、それを聞きつけたカーラはすぐさま、この地マラケ島へと向かったのだった。

 

 

 日が沈みかけた夕暮れ。魔術師の拠点である工房を接地し終えたカーラは、いよいよサーヴァントの召喚を行おうとしていた。

 

「工房オッケー、霊脈との接続オッケー、召喚陣オッケー。私の魔力が一番高まるこの時間なら、失敗もしないはず……! 一番の心配だった令呪も、私の手に宿ってくれた。聖杯が私を選んでくれたんだわ!」

 

 カーラは、荷物の中から破片のような何かを取り出す。

 

「サーヴァントを召喚するときの呼び水、触媒。なんと私が入手したのは、あのアーサー王伝説の円卓の欠片! ……まあ、入手経路は怪しかったけど。でも、本物の……はず。円卓の騎士さえ召喚できれば、私の勝利は確実なんだから!」

 

 一抹の不安こそあるものの、カーラはサーヴァント召喚に必要な詠唱を開始した。やがて周囲には光が満ち、風が満ち、魔力が満ち、そして――。

 

「――――抑止の輪より来たれ、天秤の守り手よ――――!」

 

 

 眩き光のその隙間より、人影が姿を現す。

 

 

「サーヴァント、アーチャー。召喚に応じ、参上した次第。貴殿が()(マスター)となる者で、相違ないか?」

 

 現れたサーヴァントは、騎士とはかけ離れた姿をした長身の男だった。皮膚の色はカーラの白い肌とは異なっており、服装は獣の皮から作られたであろう古めかしいもの。手にしている大きな弓矢は東洋風であり、やはり円卓の騎士などではないと推測できる。

 

「あ、え、あ……。私がマスターで間違いないはず、だけど……。一応聞くけど、あなた、円卓の騎士じゃ……ないよ、ね?」

 

「エンタク? よく分からぬが、我はそういった者ではない」

 

「うああああああ!!! なんでぇ!?」

 

「なっ!? どうされた、マスター!?」

 

 

 崩れ落ちてしまったカーラを、アーチャーは介抱する。やがて仔細を語ったカーラの話を聞き、アーチャーは納得する。

 

「なるほど。マスターは別の英霊を召喚しようとし、そして我を召喚したのか。……それはなんとも、本当に申し訳ないっ! 主の意も汲めずにおめおめと現れたとは、我は愚かであったッ!」

 

 頭を下げるアーチャーに、冷静を取り戻したカーラは手をひらひらと振って答える。

 

「いや……落ち着いたし、別にもう大丈夫。でも不思議ね。聖杯とは、我々西洋の概念。だからあなたのような東洋のサーヴァントは召喚されないと聞いていたけど」

 

「ああ、それなのだが。聖杯によって与えられた情報によれば、今回の聖杯戦争なる儀式には、我々日の本の英霊しか呼ばれないのだそうだ」

 

「な、なんですって!? てことは、アーチャーはジャパンの英霊!? ……あーもう、中国やイスラム圏の英霊なら、有名なサーヴァントの真名くらいは分かりそうだったけど……。ジャパンの英霊なんて知らないわよ。しかも敵にジャパンのマスターがいたら、そいつが有利じゃない! はあ、落ち込むわ……」

 

「そう落胆されるな、我がマスター。我は最強であると己を自負している。たとえどんな障壁が待ち構えていようとも、我がマスターを勝利へと導こう」

 

 そう語るアーチャーからは、揺るぎない自信が伺えた。カーラはそんな彼の姿を見て、認識を改め、そして手を差し出した。

 

「そこまで豪語するのなら、私のために勝利を手にしなさい。何があっても、何としても」

 

「当然だとも、我がマスター。貴殿を我の新たな主君と認め、貴殿のために全力を尽くそう。ここに、契約は完了した」

 

 がっちりと握手を交わす両者に、魔力のパスが通じた。ここに、聖杯戦争における二組目のペアが揃ったのだった。





〜アーチャー ステータス〜

【CLASS】アーチャー
【マスター】カーラ・グレネル
【真名】■■■■■■
【性別】男
【容姿】古代日本の服装の男性
【属性】混沌・中庸 地
【ステータス】筋力:B 耐久:C 敏捷:B 魔力:B 幸運:D 宝具:A⁺

【クラス別スキル】
対魔力(B)︰魔術への耐性を得る力。魔術詠唱が三節以下のものを無効化する。大魔術・儀礼呪法などを以ってしても、傷つけるのは難しい。

単独行動(C)︰マスターとの繋がりを絶っても、しばらくは現界していられる力。

【保有スキル】
カリスマ(D)︰軍団を指揮する天性の才能。

戦闘続行(A)︰往生際が悪い。

日蝕の覇王(EX)︰詳細不明。

【宝具】
『■■■■』
ランク:A⁺ 種別:対人宝具 レンジ:5〜50 最大捕捉:1人
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