Fate/war wounds 〜極東聖杯事変〜   作:降雨

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序幕其の三 朱き稲妻武者/ライダー

 

「ふうむ」

 

 その男は、廃墟の屋根の上に腰を下ろし、眼下に広がる大自然を眺めていた。一陣の風が彼の頬を撫でる。

 

「良い島だねえ。東京では、こんな風景は見られない。ここに長く留まることはできないけれど、良き思い出は作れるかもしれないなあ」

 

 穏やかに呟いたその男は、つむじ風のようにひらひらと屋根を蹴って大地へと降り立つ。そして、廃墟の中へと入っていった。

 

 その廃墟はかつて、この島が大日本帝国の支配下にあった際に軍によって作られた兵舎であった。この島では大日本帝国と連合国の戦闘は発生せず、帝国軍はこの島を捨てていったために、廃墟とはいえそれなりに綺麗な設備が残されていた。

 

「魔術、か……。得意分野ではないが、私の見立てが正しければ――――」

 

 床に描かれた召喚陣の紋章を手でなぞり、そしてメモ帳を取り出す男。それに目を向けつつ、口を開く。

 

「素に銀と鉄。礎に――――あーいや、これは必要ない。で、降り立つ風には壁を――――」

 

 適当ながら、つらつらと呪文の詠唱を続けていくその男。やがて、召喚陣は発光し、風が周囲に満ちていく。

 

「――――抑止の輪より来たれ、天秤の守り手よ」

 

 風と光が視界を覆い尽くし――。そして再び目を開いたとき、そこには甲冑に全身を包んだ武者が立っていた。

 

「ここに問おう。汝は我がマスターか?」

 

 その巨体の武者は、自身を召喚したであろう男に尋ねた。面頬を付けているためか、声がくぐもって聞きとりづらい。

 

「マスターか、と? そうだね。私は手塚龍之助。魔術師ではないが、君を召喚し、聖杯戦争に挑まんとする者だ」

 

 ふむ、と武者は顎に手を当てる。朱き鎧が、がしゃがしゃと揺れた。

 

「魔術だとか呪術だとか、そういった妖術を操る者ではないと汝は言うのか。なればなぜ、汝は俺を召喚できたのだ?」

 

「これは憶測だけどね。たぶん、この聖杯戦争は何らかの調整が加えられている。魔術師でなくとも、魔術の素養があれば参加ができるように。ま、そんなことは今はいいよ。それより、君のクラスと真名を教えてほしい。それで契約完了としようよ」

 

「相分かった。……だがマスターよ、俺のクラスがライダーだということは伝えよう。しかし、真名は教えられない。無礼かもしれないが、汝が俺の主に相応しいと認めたとき、その真名を改めて伝えよう。これは武士としての、俺なりの信条なのだ」

 

「ああ、分かったよ。構わないさ。それじゃあ、よろしくね、ライダー」

 

「ああ。ここに契約は完了した」

 

 両者の契約は完了し、魔力のパスが通る。そこでおや、とライダーはあることに気が付く。

 それは、魔術師でないと語ったはずのマスターである手塚龍之助から、己の身へと問題なく魔力が注がれていることだった。やはり、手塚が語ったように、この聖杯戦争には裏があるのか。ライダーは改めて気を引き締める。

 

「あ、そういえばライダー。一つ約束してほしいことがある」

 

 契約を終えたところで、手塚はライダーに一つの提案をした。

 

「何であろうと申し付けよ、マスター」

 

()()()()()()()()()。敵サーヴァント以外の、あらゆる人間を私の許可なく殺すな、ライダー」

 

「なっ――――!?」

 

 令呪。

 マスターに宿るその赤き紋章は、聖杯戦争の参加者である証であり、そしてサーヴァントへの絶対命令権である。これがあるからこそ、マスターは強大な力を持つサーヴァントの反逆を防ぎ、己の命令に従えることがてまきる。

 とはいえ、その命令権には当然ながら上限がある。令呪は全部で三画。つまり、サーヴァントに下せる命令は三回限りだ、ということだ。

 

 そんな重要なものをあっさりと使ってしまった手塚に、ライダーは驚きを隠せない。しかも、『敵サーヴァント以外は殺すな』だなどと言った。

 

 

「マ、マスター。令呪をそんなことに使うとは――。……いや、今問題なのはそこではなく――。汝、己の言葉の意味を理解しているのか!? 確かにこの聖杯戦争に関わる者以外へ危害を加えることを憚るのは、まだ理解できる。無辜の民を傷付けることを嫌悪するのは何もおかしなことではない。だが、敵のマスターの殺害も縛っているのだぞ、その命令は!」

 

 サーヴァントというのは、強大な存在だ。

 だが、マスターが死ねばサーヴァントも敗退する。故に、敵マスターを狙うのは戦法として当然のことだと言える。だが、その行為を手塚は真っ先に禁じたのだった。

 

「ああ、分かっているとも。私は平和主義者、血を見るのは嫌いでね。元より死者であるサーヴァントはいいとしても、たとえ敵であろうともマスターは殺したくはないんだよ」

 

「…………」

 

 ライダーは、何と言っていいのか分からなかった。開いた口が塞がらない、とはこのことである。しかし、その前に自分が『マスターを認めるまで真名は告げない』と我儘を言ってしまった以上、手塚の命令を聞かないという訳にもいかなかった。

 

「……分かった。その命令、確かに従おう。しかしマスター、令呪というのは有効活用すれば戦況を変えうる一手になることすらある。無駄遣いは控えてくれ」

 

「うん。これ以上何かを命令するつもりはないさ。それに、これは令呪の動作確認も兼ねて、だったからね。ウン、なるほどなるほどね」

 

 己の腕に刻まれた令呪に目を向け、頷く手塚。手塚の令呪は風にたなびくマントのような形をしていた。

 

「さて、それじゃあ頑張ろうライダー。全ては聖杯を手にするため、ね?」

 

「ああ。必ず、俺は汝に聖杯を授けて見せよう」

 

 

 ここに、聖杯戦争三組目の参加者が揃った。残るは四組、折り返し地点である。





〜ライダー ステータス〜

【CLASS】ライダー
【マスター】手塚龍之介
【真名】■■■または■■■
【性別】男
【容姿】肉体の全身を朱色の鎧に覆った武者
【属性】中立・悪 地
【ステータス】筋力:B⁺ 耐久:B 敏捷:C⁺ 魔力:B⁺ 幸運:B 宝具:B

【クラス別スキル】
騎乗(B)︰乗り物を乗りこなす能力。大抵の乗り物なら人並み以上に乗りこなせるが、幻想種あるいは魔獣・聖獣ランクの獣は乗りこなすことが出来ない。

対魔力(D)︰魔術への耐性を得る力。。一工程(シングルアクション)による魔術行使を無効化する。魔力避けのアミュレット程度の対魔力。

【保有スキル】
魔力放出(雷)(EX)︰器、ないし自身の肉体に魔力を帯びさせ、瞬間的に放出する事によって能力を向上させる。

変化(雷)(D)︰肉体を変化させる。雷が取りうる形であれば、どのようにでも肉体を変身させることが可能。

鎌倉■■■(A)︰詳細不明。

【宝具】
『■■■■・■■■■』
ランク:B 種別:対人宝具 レンジ:10 最大捕捉:1人


『■■■■・■■■■』
ランク:B 種別:対軍宝具 レンジ︰1〜50 最大捕捉︰50人
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