ガンパレで普通の第一世代って   作:スティレット

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 難産でした。正直これでいいのかどうか迷いましたが、これで挙げてみようかと思います。


2話

 あれから俺は、図書館へ行ってこの世界のプログラミングの勉強をしていた。

 

 この間襲った学兵さんの懐は意外と暖かかったが、それでも今後のことを考えると金が必要になる。そして、多目的リングの中身も書き換えなければいけないと思ったからだ。自分だけで出来るのならそれに越したことは無い。だが、できないのならばそれ相応の金などが必要だ。

 

 この世界のOSに窓やりんごと言った親切なものは無い。それだけ敷居が高いと言う事もあって、多目的結晶を埋め込んでいる割りに情報スキルを持ってるキャラクターは案外少なかった。それに『攻撃型電子妖精』や『情報収集セル』などは裏マーケットで売れたはず。だからこちらに需要があると思い、こうして勉強しているのだ。

 

 幸い俺はパソコンは一通り出来たのでそこまで苦手意識は無かった。プログラミングをやっていたので勉強に支障は無い。ただ、OSが旧式すぎて非常に面倒なのだ。

 

 何しろプログラミングをするにも10年以上開きがあると過去全て手打ちでやっていたことや、フリーソフトにすらあった、記述の間違っていたところなどにエラー文が出るなどと言った機能が無いに等しい。そもそもここには『コンピュータ』はあっても『パーソナルコンピュータ』は無いんじゃないか?多目的結晶やリングが普及してるおかげか、『ネットワークセル』でPDAや時計も兼ねてるようだし。ガンパレやガンオケで記憶に残ってる限りでもプレハブの1階や学校に備え付けられてたものだけだったし、俺ガンオケは白しかやってないけど。

 

 これならスマホをしかるべきところに売れば金になるんじゃね?って話になるんだが、出所を探られると結局困るのは俺なわけで、それならば多目的結晶やリングにアプリとしてセルを追加する形がベターなのかもしれない。

 

 そんなことを息抜きに考えながら勉強している。財布の中身は減っていく一方で、一刻も早く何か金になるものを、それも足の着きにくいものを作らなければ戸籍すら用意できないのだ。

 

 戸籍がないのに何で図書館に入れるかだって?借りないでずっと勉強してるからな。基本顔を覚えられないよう間隔を置いて勉強しに行き、空いてる日はひたすら筋トレなどの肉体強化やコンピュータの部品漁りだ。裏マーケットを発見した勢いで『熱血飲料ファイト』と『機動飲料ムーブ』を買って飲んだら何故か死に掛けた。考えてみたら第六世代の非戦闘員がHP100無かったりする世界で、俺は鍛えていた頃の体とは言え第一世代。つまり数値にするとHP50も無いんじゃないか?にも関わらず熱血飲料ファイトはHPの最大値を50も上げるのだ。初期のプレイヤーはこれを飲むだけでHPがブルーになったりする。

 

 ちなみに寝床は幻獣共生派と間違われても困るので、廃墟とかではなく廃墟手前の地区で疎開したりして管理がゆるくなってるアパートを借りている。幻獣が浸透してくる危険地域だけあって敷金も礼金も無かった。前の借り主が家具などをそのままにしてあったので、ありがたく使わせてもらってる。管理人も疎開しているので、契約した後は振り込んでおけばなんとかなる。

 

 

 

 そんなこんなで勉強が終わった。先ほども言ったが平行して家でセルなどを作る用のコンピュータも調達しなければならなかったので、度々戦場跡や廃墟へ行ってパーツの調達をしなければいけなかった。とにかく金が無いんだ。多少のリスクを考慮しても住むよりは漁りに行くだけの方が滞在時間的に安全だと思う。

 

 足りない細々としたものは裏マーケットなどに顔を出してパーツ集めを終わらせ、作ったプログラムの第一号は『ブレインハレルヤ』だった。ネットワークセル?あれは俺の中でプロバイダみたいなもんだからノーカン。

 

 これは魔界探偵風に言うと電子ドラッグで、戦場でも使われてるとか使われてないとか。確か地味にヨーコさんが持ってたはず。

 

 これを幸薄そうな兵隊さんや、何もかもが嫌になった感じの人に格安で提供しようとも思ったけど、これって売却値が25万なんだよね。危ない橋渡るより素直に売ったほうがいいだろう、常識的に考えて。

 

 ただ、それだけだと戸籍とか買えないからね。そのためにも物々交換した。とある情熱の枯れてしまった愛好家達と。

 

 この世界には『ソックスハンター』と言う者共が居る。所謂臭いフェチだ。ただ、度し難いのは、常人だったら嘔吐するようなビンテージ物の靴下の臭い、いや、匂いを嗅いで戦闘力に転化し、限定的にとはいえ生身で幻獣すら屠れる。どこに出しても恥ずかしい変態共だが、意外に勢力が大きく馬鹿に出来ないので金以外に通用するものとして集めている。ちなみに裏マーケットの店主や偉い人もソックスハンターだったりする。

 

 ただし、ある意味無敵なソックスハンターにも敵が居ないわけではない。それは『風紀委員』だ。字の如く、説明不要。ただし、幻獣相手に生身でやりあうような連中相手に手段を選んでられないらしく、実銃ブッパも奴らの日常である。

 

 情報収集セルで調べたリストには載っているが、狩人として再起不能な為優先順位が低い方々に再び蘇ってもらうため、ブレインハレルヤに多少の改良を加え、彼らの靴下と交換した訳だ。改良内容はブレインハレルヤを使用中に靴下の匂いを吸うと、脳が徐々に靴下の匂いで得られる多幸感を思い出すと言うものだ。その代わり脳が慣れてくると多幸感が薄れる。再び情熱が得られるか依存症になるかはそいつ次第。改良のヒントのレシピは情報収集セルを使った。きたかぜゾンビ(ヘリ寄生型幻獣)1機より高い発言力を引き出す情報端末マジパネェ。

 

 ちなみに今日で2週目の終わり、ようやく目星を付けた額に到達した。ジョギング中公園のゴミ箱に山吹色のお菓子が捨てられてたのも大きかったな。靴下の貯蔵も十分だ。ただし、裏マーケットの主人の嗜好が分からないので靴下1組ずつジップロックもどきに入れ、それをアタッシュケースに入れてある。金は懐の財布。色々間違っている。でも仕方が無い。持って行くしか無いか。

 

 

 

「何の用だ」

 

 相変わらず無愛想である。ただし、調達する腕は本物で、焼きそばパンから人型戦車『士魂号』用バズーカまで売ってる。

 

「単刀直入に言う。戸籍が欲しい。それと、尚敬高校に5121小隊ってあるだろ?あそこで学兵をやりたい」

 

 一店主がなんで軍に口出し出来るかだって?この人さっき言ってた偉い人と繋がりがあるんだよ。主に靴下で。

 

「帰れ」

 

 即答である。

 

「こちらとしてもはした金で請け負ってもらおうとは思ってない」

 

 あくまで感情を込めず、まずは小さめの鞄を取り出す。

 

 主人の鼻がぴくりと動く。そりゃそうだ。こっちはジップロックに入れてないからな。

 

「安く見られたものだ」

 

 そう言いつつも視線の端には鞄が入っている。

 

「それは前金代わりだ」

 

「倍持って来い。ちゃんと選別してからな」

 

「ならば話は早い」

 

 こう言って先ほどの鞄の3倍程の大きさのアタッシュケースを出す。熱心な人は毎日欲しがったからな。特製ブレインハレルヤ。上官の靴下だろうが持って来たよ。代わりに上官の靴下は新しい靴下と交換だけど。

 

 そうして男女無差別だが、年齢性別履いた日にちが別々の靴下を丁寧に1セットずつジップロックもどきに梱包してあるのだ。その分スペース食ってるが、ヤクのように寿司詰めしている。非常にシュールか、理解すれば常人にはとても汚らわしく思えるだろう。

 

 それを見た主人はーーー。

 

「いいだろう。交渉成立だ」

 

 ニヤリと笑った気がした。

 

「それで、お前は今からソックスーーー」

 

「あ、すいません。人それぞれフェティシズムはあると思いますけど、俺は違うんで」

 

 さっきより目に見えて無愛想になった。殺意すら篭ってそう。

 

「ものの良し悪しはあなた方の反応を見て判別しますんで、ビジネスライクにお願いします」

 

 裏切られた気分なのだろう。だがしかし、俺は売る。お前らは買う。売買内容が金じゃなくても正当な取引だし言質は取ったし仮にも店の主人なので文句は受け付けない。

 

 ここで口調を戻す。

 

「一応素養のあった者からの物だからそれなりの品だとは思う。余剰分は口止め料とでも思ってくれ」

 

 あいつら10日ものをすごく興奮してまくし立ててくるからな。ブレインハレルヤ欲しさに必死にも見えたが、逆に言うと10日ものの靴下でも多幸感が味わえなくなってた狩人たちへの電子ドラックの効きがやばい。戦場の前線だとそこら辺ゆるくなるのかね?ヒロポンももともとは戦争中「疲労がポンと取れる」から来たとか、正露丸の元の名前は露西亜を制すると書いて「制露丸」だったとか。「靴下の芳しさが蘇った!」とか最初ドン引きしたけど。靴下の為に靴下を売る狩人ェ……。

 

「まあ、いい。分かった。用件はそれだけか?」

 

「出来るだけ早く頼む。可能ならば小隊が顔合わせする前くらいまでに」

 

「無茶を言ってくれる」

 

「聞いてくれれば金銭的な意味でもひいきにする」

 

 死にかけたけど一日気絶した後の2本目はなんとか耐えたから今後も熱血飲料ファイトは入荷次第買う。無いと詰むし。ちなみにゲーム内では牛乳でもHPは少しだけ上がるけど、この世界の牛乳は第一世代の舞ちゃんが飲んでも無害な強化プラスチック入りだが、流石に食品は無理だと悟った。飯食っても体力は即回復しないんだよ。

 

「やるだけやってやる。間に合わない場合は諦めろ」

 

「構わない。では、失礼した」

 

 んじゃ、一段落済んだしぼちぼち『テレパスセル』の試作とついでに買った互尊をパワーオフにしたまま動けるか試してみるかね。出力上げると複雑骨折するらしいからリミッターかけて少しずつ動かさなきゃいけないし、装着するとすごくかゆいらしいからそこも改良案出さないといかん。あとブレインハレルヤメインでしか調べてないから他の作れる自信ない。情報にメタ張り過ぎた。いい情報なのはおそらくブータと思われる赤いちゃんちゃんこ来たデカイ猫を餌付けしながらこう、一緒に瞑想の真似事してたらいつの間にか虚空から花束出せるようになってた。これで「テレポートセル」と組み合わせながら注意してれば5121小隊にもぐりこむまではなんとかごまかせるだろう。武功を立てたらおいそれと手出しできなくなると思うし。




くさい(確信)

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