ヤンデレタグ君「がってん!」
ルーミア
彼女は東方シリーズの1つである『東方紅魔郷』の1面のボスキャラである。
容姿は幼いながらもその中に確かな美しさを持っており、彼女と同年代くらいの男児(と一部大きなお友達)の初恋を奪ってしまうであろうことは想像に容易かった。
そんな彼女だが、実は大きな秘密がある。
それは、彼女が人肉を好物とする人食い妖怪であることだ。
「そぉい!!」
「きゃっ!」
俺はルーミアを突き飛ばし、猛ダッシュする。
傍から見れば幼女を突き飛ばす変質者だが、そんなこと言っている場合じゃない!
ルーミアは可愛らしい見た目だが人を歩く食料としか見てない人食い妖怪なんだぞ!?
しかも二次創作とかだと外来人は真っ先に食われてるイメージあるし、俺とかおあつらえ向きの獲物じゃん!?カモがネギしょってきてるじゃん!?!?
嫌だぁ!おらぁこんな所で死にだくねぇだあぁぁぁぁ!!病院で孫に囲まれて死にてぇだぁぁ!!今だに彼女すらいないけど!
今なら、ルーミアは突き飛ばされて怯んでる。逃げるなら今だ…!
「逃ぃげるんだよおぉぉぉぉぉ“ギュン!”ぉぉぉぉぉぉおぉん!?」
某2部の主人公のごとき俊足でその場から逃げようとしたが、俺の足は止まってしまう。
何故なら、さっきまで少しは見えていた視界が完全に暗闇に閉ざされ、まったく見えなくなってしまったからである。
な、何も見えない!?急にどうして!?
「逃がさないのだー」
俺が戸惑っていると、そんなに遠くない場所からルーミアの緩い声が耳に届いた。
………うわあぁ!?これってもしかしなくてもルーミアの能力じゃんんん!?
俺は頭の中に浮かんだ答えにさらにパニックになる。
東方キャラは、皆それぞれ“○○程度の能力”という固有のスキルを持っている。
空を飛ぶ程度の能力やら冷気を操る程度の能力やら、中には時間やら死という概念すら操るチートスペックの能力を持つ者もいるくらいだ。(毎回思うけど“程度”ってなんだよ…)
もちろんルーミアにも能力はある。その名も“闇を操る程度の能力”だ
簡単に言えば周囲を闇で包み、視界を奪う。さらに闇は魔法の力で出しているためライトなどの光源も意味をなさないというおまけ付きだ。
……大層な名前の割に能力地味過ぎない?という疑問はさておき、これはまずい…どこに逃げていいのか分らなくなった……!?
いま彼女が何処にいて、どこに走ればいいのか皆目見当もつかない…!
……お、落ち着け俺、こういう能力バトル系は冷静さを欠いたほうが負けるってジョジョとかで学んだだろ……!
幸い、この能力の中ではルーミアも視界がまったく効かないということはゲームで予習済み(それでいいのか?)勝機は俺にある!!
まずは落ち着くんだ……素数を数えるんだ…!
「2、3、5、7、11、13、17「捕まえたー!」じゅうきゅ……はへぇ?」
素数を数えている途中だが、俺はまぬけな声を上げてしまう。
何故なら、いきなり何者かに腕を“ガシッ!”と掴まれたと思ったらそのまま闇が晴れ、目の前には俺の腕を完全にホールドしているルーミアが写ったからである。
……なんで捕まってんの俺ぇ!?何も見えないのは一緒の条件だったじゃん!!所詮創作の設定なのか!?
「いやー全く見えなかったけど、おじさんがぶつぶつなんか言っててくれたおかげで場所がすぐに分かったのだー」
ルーミアが独り言のように呟く。
………なんで素数を口に出して数えてしまったんだぁぁぁ!?心の声で数えろよぉ!!俺のバカ!アホ!⑨!
「さてと……そろそろ食べてもいいかー?」
ホールドしている腕を“ギュッ!”と強めながら、ルーミアが舌なめずりをしているのが見えた。
ヤメロー!死にたくなーい!死にたくなーい!!死にたくなあぁぁぁぁぁい!!!
「それじゃあ、いただきま~……?」
………あ、あれっ?まだ食べられてない…?
食べられる恐怖で目を瞑っていたのだが、いつまでも襲って来ない痛みを怪訝に思い、目を開く。
そこには、首をかしげているルーミアが居た。
よく見たら表情もなんかおかしいな……魚の小骨が喉に刺さっている様な、ニラが奥歯に挟まった時のような…忘れている事を思い出せない様な……そんな感じのスッキリしない時の顔の様だ。
「あ、あのぉ…何か……?」
「ッ!な、なんでもないのだ!!……気を取り直して、んあ~~……???」
もう一度大口を開くルーミアであったが、また先程のような何かが引っ掛かっている様な表情になり、口を閉じてしまう。
ほ、本当になんなんだ…?食べる前の儀式的な奴か?相撲の最初の方にやるあれ的な?
「………おじさん、私に何かしたか?」
「……えっ」
ルーミアが少し不快そうな顔をしながら俺に問いかけてきた。
何かって……なに?
「さっきからおかしいのだ!おじさんを食べようとすると『絶対に食べちゃダメ!!』って思ってしまうのだ!絶対におじさんが何かしたのだ!!」
ルーミアが怒った様子で俺に不満を言う。
えぇ…まじで心当たりないんだけど……
で、でも、これワンチャン生存ルート来たかこれ?このまま言い包められたりとかしない?
「思えば最初からおかしかったのだ!おじさんが泣きそうになった時もなんでか『慰めなきゃ!』って思ったり、おじさんの事を絶対に逃がしちゃいけないっていつも以上に思ったり、おじさんに触った時に…胸の奥が“キュンキュン”って変な感じになったし……こうして見つめ合ってるだけで…ドキドキして……なんだか、幸せだし………」
………んん???
な、なんか様子がおかしいぞ?
さっきまで怒りの色を含んでいたルーミアの視線から怒りが完全に消えて、熱っぽいものに変わってるぞ?
顔も若干赤いし……なんかギャルゲーとかで見る“好きな男と一緒にいる女の子”っぽい表情になってる…?
な、なんか心配になってきた…こいつに食べられそうになってるのに……
「あ……あのぉ…大丈夫、でしょうか…?」
「…………ねぇ、おじさん――――」
キス、しよっか
「…………えっ、なん“んちゅ♡”むぐぅ!?」
彼女の言っていることが理解できずに意味を聞き返そうとしたが、その声は途中で止まることになった。
何故なら、ルーミアが俺の口を塞いでいたからだ――――己の唇で
俺の視界一杯に広がるルーミアの顔
唇に当たる柔らかな肉の感触
舌同士が絡み合っている水の音
それら全てが、俺がルーミアと接吻をしているという事実を物語っていた。
…………ファッ!?どういう状況これ!?
なんで俺はさっきまで食べられそうになっていた相手と、東方キャラのルーミアとキスしてるのぉ!?
幻想入りしてからここまで情報量多すぎて頭パンクハザードなんだけどぉ!?
瞬間、俺の頭に激しい痛みが走った。
「ッ!!」
俺は咄嗟にルーミアから顔を離し、痛みに耐える。
顔を離す瞬間、ルーミアもあれと同じように痛みに耐える表情をしたのが見えた。ルーミアにも同じ痛みが走っているのか…?
頭痛に耐える俺。そんな中、頭の中には様々な情報が流れ込んで……いや、記憶が走馬灯のようにフラッシュバックした。
この記憶は……ゲームでルーミアを攻略した時の事か?
人間と人食い妖怪の垣根を超え、愛し合う事を誓い合ったトゥルーエンド
彼女の血を取り込み、同じ種族となって永遠の愛を誓い合うハッピーエンド
どうあがいても結ばれない苦しみの中、ルーミアに食べられることで真の意味で一心同体になるビターエンド
他にも、彼女と迎えたイベントやエンディングの内容が俺の頭にどんどん溢れてくる。
あ、頭が情報の濁流にのみ込まれる……!
しばらくすると、激痛が段々と和らいできたのを感じた。
どのくらいの時間が流れただろうか?数分?数時間?……いや、体感では長い時間痛みに耐えた感覚だが、数秒間の出来事だったのかもしれない。
頭を抑えながら顔を上げると、ルーミアも俺と同じように頭を抑えながら息を荒くしているのが見えた。
様子から察するに、ルーミアも同じ痛みを感じたのか?
痛みが抜けきっていない“ぼーっ”とした頭では何も考えられず、しばらく彼女を見ていると――――
「――――あは♡」
突然襲ってきた衝撃に俺は後ろに倒れ込み、俺は寝転んで空を見る様な体制となった。
しかし、俺の視界には夜空は映っていない。
俺の視界には、顔を赤らめて愛おしい物を見る様な表情をしたルーミアしか映っていなかった。
「あぁ、なんで今まで忘れてたんだろう?あなたと永遠の愛を誓った時も、あなたと一つになった時も、全部全部ぜぇ~~んぶ大切な思い出なのに……でも、そんなの関係ないよね♡だって、あなたはこうして私の目の前に居るんだもの♡」
目にハイライトのないルーミアが囁くように言葉を紡ぐ。
言っている意味はよく理解はできないが、その言葉に何か嫌なものを感じ、全身の毛が逆立つのがわかる。
「やっと、やっと会えたね♡今までは、なんか邪魔な壁みたいなもの越しにしかあなたと会えなかった。おかしいよね?何度も言葉を交わしているはずなのに、触れ合っているはずなのに、それが本当の事じゃないって感じてたんだよ?でも、今は違う♡あなたの言葉、感触、熱、心臓の鼓動まで全身で感じることができる♡……あぁ、恋人同士のふれあいって、こんなにも幸せだったんだぁ…♡♡♡」
ルーミアがその小さい身体を“すりすり♡”と動かし、全身で俺を感じようとしてくる。
さっきまで俺を食おうとしていたルーミアが、突然発情期のメス猫のように媚びて来る光景に混乱しながらも、俺の頭の中ではとある考えが浮かんでいた。
愛し合ったり、一つになった
壁みたいなもの
何度も言葉を交わし、触れ合った
彼女から発せられた不可解なワード
先程の頭痛と、浮かんできたビジョン
そして、彼女も同じく痛みを感じていた様子
…………もしかして――――
(ルーミアも、
「―――ねぇ」
思考の海に潜っていた俺は、ルーミアの声に意識を現実に戻す。
よく見ると、彼女の視線は俺ではなく、俺の身体の下の方―――主に
「私達、何度も互いを求め合って、愛し合ったけど、それも多分本当じゃないんだよね。だからさ――――」
本当の意味で、交わろ♡♡♡♡♡
そう言ってルーミアは俺に覆いかぶさり――――
おっと、体験版はここまでだぜ!
この先のヤンヤンムフフな展開は製品版を買って自分の目で確かめてくれよな!!
……冗談はさておき、1話目で予告した通りこれで打ち止めなんよ
こっからの展開が思いつかなくてお蔵にした小説なんだけど、こうして供養デキて良かったと思う
なんか続き待ってる人もいるみたいだし、気が向いたら東方勉強し直して続き考えてみるけどあんまり期待しないでねー…
何なら続きは誰かが書いてくれてもいいし、ネタ的には東方以外の作品でも流用できるから他作品でもやってみて欲しい……
ここまでご拝読ありがとうございました