東方のギャルゲーしてたら幻想入りしただとぉ!?   作:生牡蠣

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流石に年明け早々は初詣で皆気が付かんやろなぁ~
今回は書き貯めない代わりに1万字超えという苦行を強いているで~
暇ならお付き合いよろしくニキ~


あっ、明けましておめでとうございます。


閑話:レミリア・スカーレットの憂鬱

異変

 

それは幻想郷で度々起こる不可思議な事象の総称である。

「常識に捕らわれてはいけない」という格言がある幻想郷だが、様々な原因で通常ではありえない出来事や現象が起こったりするのである。

 

例えば、のちに『紅霧異変』と呼ばれる異変があった。

 

かつて、幻想郷全体が紅い霧に覆われた事があった。

霧は日光を遮り、霧が帯びている強い妖気がその地に住む人々を蝕んでいった。

幸いな事に死者は出なかった様だが、その霧の不気味さや人里の混乱状況は異変が収まった後でも語り草になる程度には人々の記憶に強く残った様だ。

 

さて、ここまでの話でこう疑問に思った者もいるだろう。

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()と。

当たり前の事だが、紅い霧が自然発生するわけがない。いくら幻想郷と言えど、自然の摂理はちゃんとあるのだ。

………何、それではますます発生原因が分からないだろうって?まさか何者かの手で意図的に発生させられたわけでもあるまいし…

………そのまさかである。紅霧はとある人物が意図的に起こしたものであった。

 

自然の理をも曲げる程強大な力を持った存在――――吸血鬼によって

 

 

 

 

 

 

 

 

豊かな自然に恵まれた霧の湖。妖精たちは楽し気に歌い、妖怪たちはありのままの自分をさらけ出してのし歩く。まさに彼らにとっては楽園のような場所であろう。

そんな湖に、どこか場違いな洋館が建っていた。

その洋館は全体的に……というか全体が真っ赤に染まっていた。

右を向いても赤、左を向いても赤…どこを見ても血のように真っ赤っかなのだ。

『…えっ、住んでる人いじめられてるの?まだバキの家の方が温情を感じるんだけど』とドン引きしているそこの君、大丈夫だ。これ、ここの住民(主に1名)の趣味だから。

しかし、こんな悪趣味な……失礼、変わった趣味を持つ住民だと軽く見たり、バカにしたりしてはいけない。

 

何故なら、この紅の館――『紅魔館』の主は、あの紅霧異変を起こした恐ろしい吸血鬼なのだから。

 

 

そんな紅魔館のバルコニーに、複数人の姿があった。

 

「夜の王たる吸血鬼の私が日光の下でアフタヌーンティーを楽しむ…中々妙な絵面ね」

 

外用のティーテーブルの席に着いている幼い見た目の少女が、そう呟いた。

美しい蒼い髪と透き通るような真紅の瞳、小学校低学年くらいの背丈も合わさってまるでフランス人形のように可愛らしい女性。彼女の身に着けているロリータ風の衣服や大きなナイトキャップもマッチしており、彼女を魅力をより際立たせていた。

恐らくすれ違ったら思わず振り向いてしまう様な、同じ学年にいたら少年たちの初恋を奪ってしまいそうな魅力的な少女。しかし、彼女の背には普通の少女ではありえない、巨大な蝙蝠のような羽が生えていた。

 

彼女の名はレミリア・スカーレット

紅魔館の主であり、500年以上の年月を生きる恐ろしい吸血鬼だ。

 

吸血鬼。人間の血を主食とし、西洋では夜の帝王とも呼ばれている妖怪やモンスターの一種。

しかしにんにくや銀、十字架など意外にも弱点が多い事でも有名な妖怪でもある。

その数多くの弱点の中には、日光も含まれていた。

今は日傘を差しているから問題はないが、自分にとって危険な事には変わりはない。

まるで自ら火の中に飛び込むような真似をして、やっていることが優雅なお茶会。冷静に考えると自分はなんて事をしているのだろうと思わず自虐の混ざった笑みを浮かべてしまう。

 

レミリアはそんな笑みを誤魔化すかのようにカップを手に取り、中に入っている紅茶を飲み干す。

美味い。良い茶葉を使っているという事もあるだろうが、この味と深みは素人では出すことは出来ない、まさにプロの技だ。

ただ、少し置いてしまっていた為か冷めているのが残念であった。こういった紅茶は暖かいうちに飲みたいものだ。

 

彼女がそう考えながらカップをテーブルに置く。

すると、不思議なことが起こった。なんと、カップの中に飲み干したはずの紅茶があったからだ。

しかも紅茶から立ち上る湯気とカップから伝わるほんのりとした暖かさから、淹れたての紅茶である事が分かった。

何もない所から紅茶が現れるという奇妙な光景。しかし、彼女は驚く様子はなく心底楽しそうな笑みを浮かべた。

 

「ふふっ、丁度紅茶のおかわりが欲しかったところよ。主の要望を前もって察せられる。それでこそこの紅魔館のメイドにふさわしい――――流石よ、咲夜」

 

「ありがとうございます、お嬢様」

 

レミリアは自分の後ろに待機していた銀髪メイド服の女性――――十六夜咲夜を褒める。

 

咲夜はレミリアに仕える紅魔館のメイドである。

彼女の事はただのメイドと侮ってはいけない。『完全で瀟洒な従者』と呼ばれるほどにその仕事ぶりはまさに完璧でスタイリッシュ。紅魔館1…いや、幻想郷全体を見ても1、2を争うほどであろう。

さら幻想郷の強者たちに引けを取らない特別な能力も持っているのだが…それは今後機会があれば語る事にしよう。

 

「良い茶葉を仕入れたわね、褒めてあげるわ。それにこの味―――血も少し混ざってるわね?」

 

「はい、先日自称バンパイアハンターを名乗る不審者が侵入してきましたので、後始末ついでに採取しておきました」

 

レミリアの言葉に、咲夜は動揺する様子なく淡々と答えた。

彼女の(レミリア)に対する忠誠心は強い。それこそ、主の為に侵入者とはいえ同族(人間)を簡単に始末してしまう程には。

人里の人間が知ったら「気が狂っている」と思うだろう。しかし、彼女にとってはよく知らない同族(人間)よりも恩義がある主(人の血が好物な妖怪)の方が大事。

それが彼女にとって普通の事なのだ。

 

「ふむ…最高の味、とまではいかないけど悪くはないな」

 

「お気に召したようで何よりです」

 

「まだその血が残っているなら保存しておきなさい。気が向いたら夕食のワイン代わりに味わうわ。…………パチェ、貴方も飲んでみる?」

 

レミリアは自分の向かいに座って本を読んでいる少女に声を掛けた。

 

「………あのねレミィ、忘れているのかもしれないけど私は吸血鬼じゃなくて魔法使いなの。だから血は飲まないわよ。500年も生きてて認知症にでもなったの?」

 

少女―――パチュリーは呆れた表情を浮かべ、少し乱暴に本を閉じながらそう言った。

彼女、パチュリー・ノーレッジはレミリア・スカーレットの友人である魔法使いだ。

魔法についての膨大な知識を持ち、現在は紅魔館の図書館に腰を落ち着け、本を読みながら時々屋敷内の事柄に魔法で助力するなどして生活しているのであった。

ちなみに見た目は可愛らしい少女の様だが、齢100歳を超える長寿。レミリアといい年齢詐称しすぎじゃないですかねぇ…

 

「ふふっ、冗談よ。貴方が図書館から離れてテラスに出ている光景が珍しかったから、もっと珍しいものが見れるかもと思っただけよ」

 

レミリアはカップを置きながらそう答えた。

レミリアの言う通り、パチュリーは滅多に図書館から出てこない。日々魔法の知識を探求しており、彼女にとってそれ以外の事は基本的にどうでもいい事なのだ。あまりに動かな過ぎて『動かない大図書館』という異名が付く程である。(変な異名とかは思ってはいけない)

この様にパチュリーが図書館から離れる事は夏場に雪は降るくらいに珍しいのだ。

そして今回はさらに珍しい事に――

 

「だって、しょうがないじゃない――――貴方がお茶会を提案してくるなんて、他にも何か起こるんじゃないかって期待しちゃうわよ」

 

―――今回の茶会は、パチュリーから提案してきたのだから。

レミリアが何度も誘ってやっと外に出るパチュリーが自分から『少し、お茶しないかしら?』と誘ってきたのだ。毎回誘っているレミリア自身でさえ『えっ、なんて?』と素で聞き返したし、どこぞの獏が夢を創っているのではないかと疑いもした。

しかしそれが夢ではなく現実と解かり、レミリアは茶会を了承したのだ。

正直、最近異変や宴会もなく退屈していたので刺激に飢えていた所だ。そんな中で友人に小さいが変化が見られた。少しぐらいわくわくするのも無理はないだろう。

…………それに、最近()()()が気がかりであまり気が休まらない時も多い。何か気晴らしが欲しいと思っていた所なのであった。

 

「それで、本の虫である貴方がお茶会に誘うなんてどういう風の吹きまわし?私に協力して欲しい事でもあるのかしら?」

 

「…………それはねレミィ、()()()()()()()()よ」

 

パチュリーの言葉に、レミリアは一瞬だけ思考停止した。

しかしすぐに思考を取り戻し、何も動じていないかのようにふるまう。

 

「私が?………病弱な貴方に心配されるほど身体は弱ってないと思うのだけど」

 

「……この際はっきり言うわ。レミィ、最近の貴方おかしいわよ」

 

レミリアの言葉に少し“ムッ”とした様子でパチュリーが続けた。

 

「おかしい?…何の事かしら?」

 

「最近、ボーっとしてる事が多くなった。始めは考えをしているだけかと思っていたけど、もう何週間も続いてるのよ?流石に貴方らしくないわ」

 

パチュリーの言葉に、レミリアは内心舌打ちをする。

周りに悟られぬように振舞っていたはずだが、どうやら長年の親友は誤魔化せなかったらしい。

 

「あら、誰だって長年生きていれば物思いに耽る事だってあるわよ。それをおかしいだなんて酷いじゃない」

 

「………ねぇ、レミィ」

 

突き放すような言い方をしたレミリア。

それに対してパチュリーは彼女に寄り添う様な、優しめの口調で語り掛ける。

 

「貴方が私達の事を大切に思ってることは分かってるし、正直嬉しい。でも、それと同じくらい私も貴方の事が大切なの。…いいえ、私だけじゃない。咲夜や美鈴、フランと…小悪魔だって形は違えど同じ気持ちよ」

 

パチュリーの言葉に、レミリアは思わず後ろを振り向く。

そこには、自分から露骨に視線を外している咲夜の姿があった。

どうやら咲夜にもバレバレだったようだ。想像以上に自分は大根役者だったらしい。

………しかしまぁ、なんだ。自分の事をこんなに心配してくれているとは、良い友人や使用人、妹に囲まれている。その事実が気恥ずかしいが、確かに嬉しかった。

そう感じたからであろうか、「ふぅ」と深く息を吐くとレミリアはため込んでいたものを一気に吐き出すように言葉を吐きだした。

 

 

 

 

 

「――――最近、私の能力がおかしいのよ」

 

 

 

 

『運命を操る程度の能力』それがレミリア・スカーレットの能力であった。

生きとし生けるものは、それぞれに決まった運命があるとされている。彼女は自他を含めたその運命を視認し、それを捻じ曲げる事ができる。

聞いただけで分かると思うが、世界そのものを一変させてしまえる強大な能力である。

 

「能力がおかしい?…………どういう事?」

 

レミリアの言葉に、パチュリーは疑問の言葉を投げかけた。声はなかったが、咲夜も同じように疑問に思っていた。

レミリアは幻想郷全体で見ても強者の部類。個性が濃い紅魔館の面々を束ねるカリスマ性も兼ね備えているチートの塊みたいな人物だ。(カリスマに関しては偶に…いや、割と頻繁にブレイクするが…)

そんな自分たちの王が不調。あまり“ピンッ”とこないのも無理はないだろう。

 

「そうねぇ…運命とは本来、形のないものだけど『運命の赤い糸』なんて言葉もある事だし、糸で例えるわよ」

 

「その方が私も説明しやすいし」とレミリアは続け、紅茶を一口含む。それはまるでこれから自らの“弱み”を話す覚悟をしているかのように咲夜の目には映っていた。

 

「私にはね、運命と言う名の糸が何本も見えているの。それは個人から出ているものだったりその辺に無造作に浮いているものだったり色々あって、真っすぐに張り詰めていたり、複雑に絡み合ったり、今にも切れてしまいそうだったり…状態もまちまちね。私はそんな運命たちを少し弄くったり、絡み合わせたりすることで運命を操っているの」

 

レミリアの説明に、咲夜は内心驚いていた。

咲夜はレミリアの能力については名称だけは知っており、具体的にはどの様に運命を操っているのかは詳しく知らなかったからだ。

今回、偶然とはいえレミリアの能力について知る事ができ、彼女は自らの主の強大さを改めて実感した。

 

「………それで、能力がおかしいというのは?」

 

レミリアの言葉を聞き、パチュリーは本題を話すよう促す。

彼女は自分の能力がおかしいと言ったのだ。言葉にすればたやすいが、これは想像以上にまずい事かもしれないとパチュリーは考えていた。

彼女は500年の時を生きるヴァンパイアだ。その長い年月の中で、他者の恨みを買う事も少なくはなかった。中には国一つが彼女に敵意を向けたこともある。

しかし、その敵意のほとんどが彼女の持つ『運命を操る程度の能力』に恐れをなし、特に危害を加えてくることはなかった。言ってしまえば能力が一つ抑止力になっていたのだ。

そんな彼女の能力が不調。この事が紅魔館以外の者に知られたらどうなるだろうか?

これを好機と思い攻め込む輩や組織が絶対に現れない。パチュリーには断言が出来なかった。

外とは切り離されている幻想郷とはいえ、レミリアに強い恨みを持った者が絶対に入れないわけではない。ここは条件を満たしていれば簡単には入れてしまうのだ。

では、レミリアの命を狙う者を撃退すればいい。ここには彼女にも引けを取らない強者が集まっているのだから。…しかし、それも絶対ではないだろう。

紅魔館も含めた幻想郷は、一度実質的に月の民に敗北したという前例がある。もし彼らと同等の力を持つ者が現れたら――

 

「大丈夫よパチェ。貴方が考えているようなことではないから」

 

パチュリーが“ハッ”として顔を上げると、そこには自分の考えを見透かしている様な表情を浮かべたレミリアがいた。

…どうやらレミリアに負けず、自分も大根役者だったらしい。不安な気持ちが見え見えだったようだ。

レミリアはパチュリーを見据えて静かに笑う。

力強い、余裕も感じられる笑み。それだけで自分が考える最悪な状況ではないと確信する事ができた。

良かった。パチュリーは静かに胸をなでおろした。

……しかし、疑問が晴れたわけではなかった。

 

「…………じゃあ、おかしいって何なのよ?」

 

そう、結局「能力がおかしい」という言葉の意味は分からず仕舞いだったからだ。

自分の考える最悪な状況ではない。では、何がおかしくて、彼女を悩ませているのか。パチュリーは益々分からなくなっていた。

 

「………最近、変な(運命)が見えるのよ」

 

するとレミリアは視線を落としながらポツリと消え入りそうな声で呟いた。

 

「その糸はね、見た目は他の糸と何ら変わりない、言ってしまえばよくあるつまらないものなの。………でも、どうしても気になってしまうの。どこに居ても、何をしていても視界に入ってくる…いいえ、多分私が()()()()()()()()()()()()()

 

パチュリーは最初、レミリアの言っている意味が分からなかった。

 

「………と言うと?」

 

「多分、私も知らないうちにあの糸を意識してるんだと思うわ。そう、例えるなら発情期の雄が無意識的に雌を視線で追うかのように」

 

「は、発情期…」

 

レミリアの言いように、咲夜は少し動揺した。

まさか自分が慕う主から、急にそんな俗っぽい言葉が出るとは思わなかったのだから仕方がないだろう。

 

「……それは、何者かの能力で“魅了”されてるということ?」

 

「いや、それにしては周りくどい。それにいくら魅了されていようが能力に干渉できるはずはないだろうさ」

 

パチュリーはサキュバスやインキュバスが使う“魅了”の魔術の類を疑ったが、レミリアは「否」と答えた。

そもそも吸血鬼の中でも高位な存在の自分が魅了にかかるなどよっぽど相手が格上でないとありえないし、彼女の言う通り能力そのものに影響するはずがないのだ。

 

「それでね、こちらに危害を加えるわけでも無し放って置いても問題ないと思うのだけど…流石に鬱陶しいからその運命を弄くって消そうとしたの」

 

レミリアは、何かを掴もうとするかのように虚空に向かって手を伸ばし、そのまま握りしめると―――

 

「でも、触れないのよ」

 

「ほら、また駄目だった」と言うような残念な表情を浮かべた。

そこで、パチュリーと咲夜は彼女が運命を握りつぶそうとして失敗したという事に気が付いた。

 

「お嬢様の能力で干渉できない運命…そんなの、あり得るのですか?」

 

「あら咲夜、この世に絶対なんてありえないわ。だから面白いんじゃない。…………でも、初めての事だから動揺してるのは確かね」

 

驚きのあまり思わず呟いた咲夜に、レミリアは力なく笑って見せる。

直接的な被害があるわけではないが、視界にチラつき、しかも避けることができない邪魔なもの。それが日常的に見えるのであれば意外と精神的ストレスは大きい。

これが、レミリアを不調にさせている悩みの種だった。

 

「うーん……何とも言えない状況ね、それ。一応図書館でそういった本がないか探してみるけど…」

 

パチュリーは困った表情を浮かべた。

彼女に悩みがあるならば自分の魔法が役に立つかもしれないと思っていたが、想像とはかけ離れた斜め上の回答が返ってきたため、自分にどうにかできるものかと悩んでいるのだ。

 

「いいのよパチェ。貴方の専門外なのはわかるし、これは私しか解決できないと思うから」

 

「気持ちだけ受け取っておくわ」とレミリアは続けた。

実際、レミリアも周りに相談したとしても解決しない問題という事が分かっていた。その為、無暗やたらに周りに心配をかけてしまうだけと胸の内に仕舞っておくつもりだったのだ。

 

パチュリーと咲夜は自分たちが力になれそうにないと、無念そうにしながらもこれ以上追及してくることはなかった。

解決はしなかったが、レミリア自身は話をして良かったと思っていた。

一人で抱えるよりは周りに共有したほうが良いと誰かが言っていたが、まったくその通り。レミリアの心は晴れやかな気持ちであった。

友人達は力になれずに気落ちしているがそんなことはない。彼女達は十分に自分の助けになってくれていたのだ。

…だが、せっかくのお茶会の空気が少し悪くなってしまったのはいただけないな。何か明るい話題はないものか……

 

「お姉様~!」

 

そんな事を考えていると、レミリア呼ぶ甲高い声が聞こえて来た。

その声が聞こえた瞬間――――

 

 

 

 

 

「ドーン!」

 

―――レミリアの腹部に、人型の何かが突き刺さった。

 

レミリアは“ごふっ!”と淑女が出してはいけない声を吐き出したが、何とか受け止めることに成功した。

衝撃にしばらく耐えた後自分の腹部を見ると、そこには自分と同じ格好をした金髪の少女があどけない笑みを浮かべている光景があった。

 

「――――フラン、今日も元気ね」

 

「うん!」

 

レミリアの言葉に金髪の少女――――フランドール・スカーレットは上機嫌に答えた。

 

フランドール・スカーレット。

名前から察せられる通りレミリアの妹である吸血鬼だ。

レミリアよりも見た目も性格も幼いのだが、最低でも495年生きているというロリB…合法ロリである。

 

「…………私の可愛いフラン、貴方が元気がいいって事はね、お姉さまとっても嬉しい。でも、出来れば毎回頭から突進してくるのやめてくれないかしら…」

 

レミリアは腹部を抑えながら、フランを叱りつけた。

いくら幻想郷内最強格の彼女でも、毎回腹部にロケットずつきを食らうのは堪えるらしい。

レミリア自身はフランの事は目に入れても居たくない程には愛しているが、それはそれ。ここはしつけと言う意味でも姉の威厳(カリスマ)を見せなければ――――

 

 

 

 

 

「ご、ごめんなさい…でも、こんな激しい事お姉さま以外には出来ない、姉妹同士の特別な事だから…」

 

「――――これからもバッチ来い!!」

 

――――威厳(カリスマ)姉妹愛(シスコン)の前には無力でしょうよ。

 

(((チョロい)))

 

この場にいるレミリア以外の者の心が一つとなった。

 

「ふふっ、私の可愛いフラ~ン♡これからも遠慮なくぶつかってきなさい。お姉様、いくらでも受け止めるから♪」

 

「あっ、うん…。そ、それよりお姉様。今から美鈴と出掛けて来るからお小遣い欲しいなぁ~♪人里で話題のスイーツ食べに行きたいんだ~」

 

フランは(レミリアに内心ドン引きしながらも)猫なで声で最愛の姉におねだりをする。

 

「ええ、もちろんいいわよ!咲夜ッ!!」 パチンッ!

 

「もう用意しております。妹様、どうぞ」

 

レミリアが指を鳴らすと、いつの間にか丸々太ったガマ口財布を手に持っていた咲夜がフランに財布を手渡す。

“ジャラリ!”と音を鳴らした財布は重く、その中には少なくない金額のお金が入っているのは想像に容易かった。

 

「わーい!ありがとうお姉さま!」

 

「ふふっ、良いのよフラン♪……でも、気を付けていくのよ?何度も言うけど私達吸血鬼にとって日光は猛毒そのもの。ちゃんと日傘と日光遮断のクリームを全身に塗ってから行きなさい。な、なんなら、私が全身に丁寧に塗って――」

 

「もぉ!そんなことわかってるよぉ!!それじゃあお姉様、いってきま~す!」

 

「お土産買ってくるね~」と上機嫌に走り去っていくフラン。

そんなフランの背を名残惜しそうに見つめながら、レミリアは小さく笑った。

……内心フランの全身にクリームを塗れなかったことは残念がっていない。…………いないったらいないッ!!!

 

「………相変わらずシスコンね」

 

そんなレミリアを、パチュリーは冷めた目で見つめた。

姉妹の仲が良い事は喜ばしいと思うが……彼女の場合は度が過ぎてると思う。

フランに対して甘い…いや、甘いを通り越している。例えるならばショートケーキの上から練乳と粉砂糖をトッピングし、それを原液のカル〇スで流し込むくらいには甘いと思う。

…想像したら胸焼けしてきた。しばらく甘いもの食えないわこれ。

 

「あら、知らないのパチェ。姉っていう者はね……9割9分9厘シスコンなのよ」

 

まるで悟りを開いたかのような面持ちで語るレミリア。

そんな事で悟りを開くな。謝れ。ブッダに謝ってくれ。

 

「―――それに、たった一人の妹なの。大切にするなんて当たり前じゃない」

 

誰に聞かせるでもなく呟いたレミリアの姿に、パチュリーと咲夜は優しく笑う。

まったく、ずるい(吸血鬼)だ。そんな事を言われたら、何も言えなくなってしまうじゃないか。

ただ強いだけでなく、優しさや慈愛も持っている吸血鬼。そんな彼女だからこそ、自分たちは彼女の元に集まってきたのだ。

パチュリーと咲夜は、何とも言えない暖かな気持ちに包まれた。

 

 

 

 

 

(えぇ、本当に愛おしい子)

 

レミリアもまた、心の中に暖かい物を感じながらそう思っていた。

レミリアは心の底からフランドールの事を愛していた。

この世に生を受けて早数百年、もう血のつながりだけならば家族と呼べるのは自分たちしかいない。そんな家族を愛さないなんて出来るわけがなかった。

そして自分が思っている様にフランドールも自分の事を慕ってくれている。これを幸せと呼ばずに何を幸せと呼ぶのだろう。

 

(あんないい子に慕われるなんて、私はなんて幸せ者だろう)

 

そう、レミリアは幸せだったのだ。

 

(…でも、何故かしら)

 

しかし…いや、だからこそ不安になるのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(私は、()()()()()()()()()()()()()()()()

 

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()…と。

 

 

レミリア・スカーレットは妹であるフランドール・スカーレットを屋敷内に監禁していたことがある。

…最初に言っておくと、別にレミリアが妹を手元に置いておきたくて監禁していた狂愛の持ち主と言うわけではない。監禁していた理由はフランドールの能力にあるのだ。

この能力の内容については割愛するが、その能力は自他問わずに何者でも傷つけてしまう恐れがあった。

そんな能力を持っていては周りの者に被害が及び、やがてフランドールを危険視した者達が行動を起こす事は目に見えていた。

 

だからこそ、レミリアはフランを屋敷に幽閉したのだ。他の誰でもない、フランの為に。

 

現在、幻想郷に移住してから色々あってフランの幽閉は必要なくなっていた。

それ自体は喜ばしい事なのだが、幽閉していた事実は変わらない。

数百年単位でその者の自由を奪っていたのだ。理由はどうであれ、監禁していた相手を殺したいほど恨んでいる事はあるだろうが、その相手を慕うなんて正気の沙汰ではない。

だからこそ、レミリアは不安なのだ。フランが何故自分を慕ってくれているのかと。

 

そして奇妙な事に、フランが自分を慕っている事について()()()()()()()()()()()()

 

紅魔館の面々はもちろん博麗の巫女や普通の魔法使い、監禁の事実を知っているはずの者達も自分たち姉妹の仲が良い事に誰も驚いてはいないのだ。

誰か一人ぐらいは自分たちの仲を「狂っている」と評価してもおかしくはないのだが、誰もそうは言って来ない。

誰もが「あの姉妹は昔から仲が良い」と言うのだ。レミリアはそれが不気味であった。

 

果たして、自分たちは本当に昔から仲が良かったのか?

忘れているだけで、昔はもっと憎まれていた時があったのではないか?

もしそうだとして、何故今はこんなにも仲が良いのか?

…………あぁ、そういえば―――――

 

 

 

 

 

 

 

 

私達の仲を取り持ってくれた、()()()()()がいたのではなかったか?

 

 

 

(……バカバカしい)

 

レミリアは頭の中の考えを振り払う。

どうやら能力の不調の事もあり精神状態も不安定になっている様だ。

フランとの仲?過去に何があったとしても、今は良好なのだからいいじゃないか。それを考えた所で時間の無駄なのだ。

はぁ…せっかくの茶会だが、今日はこの一杯を飲んだら自室で休もう。疲れている時はそれが一番いい。

そう考えながら、レミリアはまた冷め切ってしまった紅茶を一気に飲み干した。

 

 

 

(…………そう言えば、こう考えるようになったのと変な運命が見えるようになったのは同時期だったかしら?)

 

………これもきっと、疲れから来る気のせいだ。そう頭の片隅で思いながらレミリアは考えるのをやめた。

 




ワイ「ふっふっふ…フランと言ったら幽閉ネタ。これ書いとけば間違いないやろ…」

智霊奇伝「フランは好き好んで引きこもってるだけだよ~」

ワイ「」

…ひ、人の数だけ幻想郷があるからっ!(便利な言い訳)

本当は書く気はなかったんだけど、あんなに続き求められてたら書くしかないでしょ…
まぁ本編と言えるかは怪しいけど…
さて、頑張って書いたし、後数年は失踪してもいいよね!


ここまでご拝読ありがとうございました
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