普通のデュエリスト   作:白い人

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色々ありますが、演出を優先している場面が多々あります。
回覧の時はそこを注意して読んで頂けるとありがたいです。


6 VS九十九遊馬&アストラル

「まずはオレのターン!ドロー!!」

 

 先行を取ったのは遊馬。

 力強くカードをデッキからドローする。

 手札は6枚。しっかりと全てのカードを確認する。

 相手はあの青山遊里。

 シャークやカイトですら勝てなかったデュエリストなのだ。

 慎重に行動しなければならないだろう。

 

『遊馬、まずは』

「ああ、こいつを使おう」

 

 アストラルの言葉に遊馬もまた頷く。

 示されたカードは遊馬もまた使おうと考えていたカードなのだから。

 

「オレは《手札抹殺》を発動!」

「いきなりか!」

 

 お互いの全ての手札を入れ替える強力なカード。

 遊里としても遊馬が1ターン目からそれを使ってくるとは思っていもいなかった。

 お互いの手札は5枚。全てのカードを墓地に送り込む。

 遊里の墓地には《N・グラン・モール》や《サイクロン》、《リビングデットの呼び声》などが落ちて行く。

 逆に遊馬の墓地に《タスケナイト》、《ガガガガール》が落ちて行くのを確認した。

 

(《タスケナイト》か。他に落ちたのは《ダメージ・メイジ》や《投下交換》、《オーバーレイ・イーター》か。序盤ではあまり役に立たないカード達だな)

 

 墓地に落ちた遊馬のカードを見て、そう思う遊里。

 なるほど。

 《タスケナイト》を墓地に送りつつ、あの手札を入れ替えるのは悪くない。

 

『遊里の墓地に落ちたカード、あれは』

「ああ、E・HEROだ」

 

 墓地に送られた《E・HERO オーシャン》と《融合》などを見ながらそう呟く。

 遊里が融合モンスターを使う時によく見たカード達だ。

 E・HEROと特定の属性を持っていればどのモンスターとでも融合するモンスター達。

 そして仮面をかぶる事によりたった1枚で変身召喚もとい融合召喚するM・HERO。

 どれもが強力なモンスター達である。

 

「だけど恐れる訳にはいかないぜ!」

『その通りだ!遊馬!』

「おう《カードカー・D》を召喚するぜ!」

 

 遊馬のフィールド上に召喚されたのは平べったいカード上の車。

 それが激しい音を鳴らして登場したのだ。

 そんな車を見て遊里の表情が変わる。

 OCG環境においてもドロー効果という点では、確かに非常に強力な効果を持つ1枚だが、デメリットが非常に重い存在である。

 しかしそれはあくまでOCGでの話。

 こちらの世界ではそうでもないのだ。

 

「このカードが召喚したターン、《カードカー・D》をリリースしてデッキからカードを2枚ドローできる!」

「ただし、このターンは特殊召喚する事ができない、だったか」

『その通りだ!《カードカー・D》の効果発動!リリースしてカードを2枚ドローする!』

 

 激しい音を鳴らしながら発車する《カードカー・D》。

 遊馬のデッキの元まで走ると、後ろから伸びる2つのロープがカードを2枚掴み引っ張っていく。

 デッキの上から2枚のカードがロープに引っ張り取られると、その2枚のカードは遊馬の手札へと向かっていく。

 しかしその代償に全力で走った車は墓地へと落ちていってしまった。

 

「オレはカードを1枚セットしてターンエンド!」

 

 これこそがOCGよりも強力な効果。

 エンドフェイズに強制的に移行するOCGとは違い、ドローした後も行動可能なのだ。

 

「なら俺のターン!ドロー!」

 

 手札抹殺により入れ替えられた手札を見ながら、どうするべきか考える。

 遊馬のフィールド上にはカードが1枚セットされているだけでモンスターはいない。

 普通に考えれば一気に攻めるチャンスだ。

 だが遊馬とアストラルが何も考えずに場を開けっ放しにしたまま、遊里のターンに回すとは考えにくかった。

 

(間違いなくセットカードは攻撃を防ぐカードか、手札に《ガガガガードナー》などがある筈だ)

 

 あれならば戦闘を経由する攻撃ならば防ぐ事が可能だ。

 そしてそれを突破した上で遊馬のライフを0にする手段は遊里にはない。

 それに何よりも、1つ大きな問題がある。

 

(このデッキって間違いなく『アレ』だよなぁ……)

 

 手札や墓地のカードを見ながらぼやく。

 普段使わないものや使えないカード達があるのだ。

 だがこのカード達を見ればこのデッキがどういうデッキなのかはすぐに理解できた。

 1度だけ作った事はある。しかし絶対に回せない自信があったし、ネタという領域すら突破できないようなデッキだったのだから。

 とはいえ、運がいい事になんとかなりそうなカードはある。

 

「まずはこいつだ。自分フィールド上にモンスターがいない時、発動できるカード!《コンバート・コンタクト》!手札とデッキからそれぞれ1枚ずつネオスペーシアンと名のつくモンスターを墓地に送る事でカードを2枚ドローする!」

『手札交換用のカードか』

「俺は手札の《N・フレア・スカラベ》とデッキの《N・エア・ハミングバード》を墓地に送って2枚ドローする」

 

 遊里の手札とデッキからカードが1枚ずつ墓地に送られると、新しいカードが2枚手札へと補充される。

 

「自分フィールド上にモンスターがいない時、限定なんて使いにくいんじゃないかな」

『いや、そうとも言えない』

「どういう事だ?」

 

 遊馬としては手札1枚をコストにして発動する手札交換用のカードを見ているから、更に制限が多い《コンバート・コンタクト》は使いにくいように見えたのだ。

 だがアストラルの見解としては違った。

 確かに遊馬の言うように制限は多いが、見返りもある。

 

『遊里は墓地にモンスターを増やし、それを使って展開してくる傾向が多い。つまり手札だけではなくデッキのカードを墓地に送れるあのカードは非常に有能なカードなのだろう』

「そ、そうか!」

 

 なるほど、と遊馬は頷いた。

 確かに墓地を使って融合したり、墓地のモンスターを蘇生したり色々してくるのが遊里だ。

 手札を2枚ドローしつつ、墓地にも2枚モンスターを送れるあのカードは確かに見返りも大きいのだろう。

 

「そして俺は《カードガンナー》を召喚!」

 

 戦車のような下半身を持った機械族モンスターだ。

 立派な下半身とは違い、上半身は貧弱そうに見えあまり強いといったイメージはない。

 実際イメージ通り、攻撃力はたった400と低いレベルだ。

 しかしそうだからと言って遊馬もアストラルも油断する様子はない。

 攻撃力400のモンスターをわざわざ出してきたのだ。

 何かあるに違いないと思うのは当然の事であった。

 

「《カードガンナー》の効果発動!デッキの上から3枚まで墓地に送って発動する」

 

 《カードガンナー》のサーチアイが光出すと、大砲のような右手を遊里のデッキに向ける。

 発射された光弾がデッキに直撃すると、デッキの上から3枚のカードが墓地に送られていく。

 

(墓地に落ちたのはブラックパンサーにダンディ、アライブか。悪くない落ち方だ)

 

 効果で墓地に送られたカードを見ながら、そう思う遊里。

 モンスターが二体も落ちれば十分である。

 

「墓地に送られた《ダンディ・ライオン》の効果発動!このカードが墓地に送られた時、自分フィールド上に綿毛トークンを2体、特殊召喚する!」

 

 フィールド上にたんぽぽの綿毛のようなモンスターが2体現れる。

 綿毛トークンである。

 

「そして墓地に送った枚数の数だけ攻撃力を500アップする!」

『これで《カードガンナー》の攻撃力は1900……』

 

 下級モンスターの攻撃力としては十分な数字だ。

 

「バトル!《カードガンナー》で遊馬にダイレクトアタック!」

 

 この攻撃が直撃すれば、遊馬のライフは大きく減る事になるだろう。

 だが遊里が思っていた通り、なんの対策もなく遊馬とアストラルが場を空にする訳がなかったのだ。

 

『遊馬!』

「おう!この瞬間、俺は手札の《ガガガガーディアン》の効果発動!ダイレクトアタックを受ける時、こいつを表側守備表示で特殊召喚できる!」

「だろうな。攻撃中断。バトルフェイズを終了し、カードを1枚セットしてターンエンド。そしてこの時、《カードガンナー》の攻撃力は元に戻る」

 

 攻撃態勢に移っていた《カードガンナー》の目の前に現れたのはガガガの守護者。

 それが遊馬を守るように立ちふさがったのだ。

 その守備力は2000もあり、1900の攻撃では届く事はない。

 なのでバトルを終了し、カードをセットしてターンを終える。

 しかし気になるのはやはり攻撃力400になってしまった《カードガンナー》か。

 遊馬もまた遊里が攻撃力を低いモンスターを対策なしでそのままにしておくとは思えなかった。

 

「よし、オレのターン!……オレは《ゴゴゴゴースト》を召喚!」

 

 ゴゴゴの名を持つ幽霊戦士が現れる。

 攻撃力1900と先程の《カードガンナー》と同じく下級モンスターとしては非常に高い数値だ。

 このまま攻撃すれば十分なダメージを与えられるだろう。

 だがそれで満足する遊馬ではない。

 

「行くぜ、アストラル!」

『ああ!見せてやろう、彼に!』

「オレはレベル4の《ガガガガーディアン》と《ゴゴゴゴースト》でオーバーレイ!」

 

 遊馬の《ガガガガーディアン》と《ゴゴゴゴースト》が光となり、1つの姿へと渦巻いていく。

 それはやがて1つの大きな光へと形を変えて行く。

 

「2体のモンスターでオーバーレイネットワークを構築、エクシーズ召喚!!」

 

 その大きな光はやがて巨大な爆発を起こす。

 そしてその渦から一対の剣のような白き塔が現れる。

 あれこそが始まりの希望。

 九十九遊馬とアストラルの希望の象徴。

 

「オレの……オレ達の戦いはここから始まる!白き翼に望みを託せ!現れろNo.39!!光の使者 希望皇ホープ!!」

 

 純白の鎧を身に纏った騎士皇。

 《No.39 希望皇ホープ》。

 九十九遊馬がもっとも一緒に長く戦ってきた希望の戦士。

 それが今ここに降臨したのだ。

 

「かっこいいな」

「へへ、そうだろ」

「ああ」

 

 その希望の翼は本当にかっこいいな、とかつて自分が使っていた時の事を思い出しながら遊里は小さく呟く。

 だが今はその希望は敵なのだ。

 

「ホープ、攻撃だ!オレはホープで《カードガンナー》を攻撃!」

 

 白翼を広げ、その剣を構えて機械兵へと斬りかかる皇。

 機械兵も必死に後退しながら、その両手の砲で攻撃をしかけるが先程とは違い圧倒的に攻撃力が下がった状態だ。

 攻撃力2500のホープに勝てる筈もない。

 砲撃を軽やかに回避すると、その剣を一閃する。

 

「ホープ剣!スラッシュ!!」

 

 この一撃が通れば、遊里には2100のダメージが通る。

 だが遊馬達がそうだったように遊里もまたしっかりと対策を立てていたのだ。

 

「罠発動!《ガード・ブロック》!!」

 

 希望剣が《カードガンナー》を容赦なく切り裂いていく。

 たちまち切り裂かれた影響で火花を散らしながら爆散していく。

 その爆発は遊里の身を焼き、ライフを削る一撃となる筈だったのだが、遊里の周りには壁のような膜が出来上がっており爆発から身を守っているではないか。

 

「この攻撃の戦闘ダメージを0に俺はカードを1枚ドローする!」

『凌がれたか』

 

 遊里を守った膜は爆発が収まると同時にデッキの頂上に集まり、カードを1枚、遊里の手元に運んで行く。

 だがそれだけではない。

 

「更に《カードガンナー》の効果発動!こいつは破壊された時、デッキからカードを1枚ドローする!」

 

 更に破壊された《カードガンナー》の残骸からカードが1枚飛び出して遊里の手札へと収まる。

 なるほど、とアストラルは頷く。

 デッキを墓地に送りつつ、カードをドローできるカードは間違いなく遊里の戦術とは相性がいいのだろう。

 これで遊里の手札は6枚へと戻る。

 しかしフィールドには2体の綿毛トークンが残っている。

 先程のターンはアドバンス召喚のリリースには使えなかったが、次のターンには使用可能になる。

 他にも単純に壁としての使用も可能だろう。

 二重の意味で厄介な綿毛である。

 

「オレはこれでターンエンドだ」

「俺のターン!」

 

 これで手札は7枚。

 動くには十分すぎるカードの枚数だ。

 そして遊里はドローしたカードを見てこれは、と気づく。

 間違いなくアレを出せと言っているようなものだ。

 手札もフィールドもそれを出させる準備は出来ている。

 しかしこれを使ってもいいものかと思ってしまう。

 だがこれはある意味ちょうどいいのではないか。

 観客は誰もいない夢の世界だと思われる場所。

 ここならばこれを使っても何も言われる心配はない。

 そう決めると遊里は決意した。

 

「遊馬、アストラル」

「どうしたんだ?」

『遊里?』

「お前のナンバーズは凄かった。だから俺もお前達にとっておきを見せてやる」

「とっておき!」

 

 遊里の言葉に目を輝かせる遊馬。

 あの遊里がわざわざとっておき、とまで言うカードだ。

 間違いなく凄いに違いない。

 アストラルも興味深そうに遊里を見る。早く見せろと催促しているようにも見えた。

 

「なら行くぜ!俺はチューナーモンスター、《デブリ・ドラゴン》を召喚!」

「チューナー?」

 

 召喚されたのは小さな竜。

 子供のようなヤンチャそうな雰囲気を持っている。

 しかし1つ気になる事が遊馬達にはあった。

 遊里の言うチューナーとは一体なんなのか。

 だがその答えはすぐに示される事になる。

 

「《デブリ・ドラゴン》の効果発動!こいつが召喚された時、自分の墓地から攻撃力500以下のモンスターを1体、効果を無効にして攻撃表示で特殊召喚する!蘇れ、《カードガンナー》!」

 

 岩屑の竜が小さなゲートをその翼で作り出すと、そのゲートを通って攻撃力400の機械兵が墓地から蘇る。

 しかし攻撃力400で攻撃表示な上に効果は無効化。

 更に《デブリ・ドラゴン》はレベル4に対して、《カードガンナー》はレベル3。

 レベルがあわない為、エクシーズ召喚は不可能。

 一体どうするつもりなのだろうか。

 

「まずは《カードガンナー》の効果発動!デッキからカードを3枚墓地に送る!」

『馬鹿な!効果は無効になっている筈だ!?』

 

 アストラルが驚きの声を上げる。

 それは遊里自身が言った筈なのだ。

 効果を無効にして特殊召喚する、と。

 ならば《カードガンナー》の効果は使えないのではないか。

 だが遊里のデッキから3枚のカードが墓地に送られていく。

 これはどういう事なのか。それに答えたのは遊里であった。

 

「《カードガンナー》のデッキのカードを墓地に送るのは効果処理ではなくコストなのさ。だから効果が無効になっていても墓地に送る事は出来る」

 

 効果モンスターの効果発動は他の魔法・罠・モンスター効果で無効になっていても発動ができる。

 それを利用して、効果が無効化されていても墓地にデッキの上からカードを3枚送ったのだ。

 だが送られたカードを見て遊里は顔を顰める。

 送られたのは《ヒーローアライブ》、《O-オーバーソウル》、《E・HERO フォレストマン》。

 出来れば手札に欲しかったカード達だからだ。

 とは言え、最初に使った時の落ち方が非常に優秀すぎただけな話なのだろうが。

 

「さて、と。見てな、遊馬、アストラル」

「?」

「お前達が見た事のないだろうこの召喚方法を!」

『何っ!?』

「俺はレベル3の《カードガンナー》とレベル1の綿毛トークンをレベル4の《デブリ・ドラゴン》でチューニング!」

 

 空へと高く舞い上がっていく《カードガンナー》と綿毛トークン。

 それに追従するように飛翔していく《デブリ・ドラゴン》が光へと変わり、星を生み出し、リングを作り出して行く。

 

「こ、これは……!」

『一体何が起こっているというのだ!?』

 

 遊馬とアストラルの驚きの声が聞こえてくる。

 そう。これはこの世界にはない召喚方法。

 2人が見た事がある筈がない。

 リングの中を通る2体のモンスターもまた《デブリ・ドラゴン》と同じように星を生み出していく。

 これで生み出された星の数は8。

 そこでアストラルが気づく。生み出された星の数は3体のモンスターのレベルの合計数と同じだと。

 つまりこれは。

 

「集いし願いが新たに輝く星となる。光さす道となれ!」

 

 生み出された星達が1つに集まっていき、輝きをます。

 そこから生み出される大きな光から一体のドラゴンが飛び出してきた。

 

「シンクロ召喚!飛翔せよ!《スターダスト・ドラゴン》!!」

 

 白銀の翼で羽ばたき、天空を舞い飛ぶ星屑の竜。

 本来ならば、この世界に存在する事がない存在。

 それが今、飛翔したのだ。

 

「す、すげぇ……!」

『シンクロ召喚……』

「ああ。重ねあう力ではなく、繋ぎあう力。これがシンクロ召喚」

 

 普段使われているエクシーズ召喚とはまるで違う召喚方法。

 チューナーと呼ばれるモンスターとそれ以外のモンスターのレベルをあわせて繰り出される繋ぎあう力。

 

「チューナーモンスターとそれ以外のモンスターの合計レベルを足した数字と同じモンスターをエクストラデッキが呼び出す方法だ」

『なるほど。そのドラゴンはレベル8。《デブリ・ドラゴン》、《カードガンナー》、綿毛トークンのレベルを足せば確かに8になる』

「エクシーズは同じレベルのモンスター同士だけど、シンクロは足し算なのか」

 

 まさかの算数に遊馬が若干頭を抱える。あまり勉強は得意ではないのだ。

 だがそれ以上に天空を舞う竜を見て、その輝きに遊馬は目を輝かせる。

 一言で心境を表すならばかっこいいだ。

 空を舞っていた《スターダスト・ドラゴン》が遊里の傍に舞い降りる。

 その美しい姿に驚いていたものの、アストラルは再び冷静な目を向ける。

 

『確かに驚いたが、攻撃力は2500。ホープと同じだ』

「ああ。そしてナンバーズはナンバーズでしか破壊できないんだったな」

 

 ナンバーズはナンバーズでしか破壊できない。

 これがホープをはじめとしたナンバーズモンスター、全てが持っている特性である。

 同じ攻撃力同士であると言っても、ナンバーズではない《スターダスト・ドラゴン》では《No.39 希望皇ホープ》に勝つ事は出来ない。

 

「だけどやりようはあるさ。俺は手札の《チューニング・サポーター》を墓地に送って魔法カード《ワン・フォー・ワン》を発動!デッキからレベル1モンスターを特殊召喚する!」

 

 遊里の手札からまるでフライパンをかぶったようなモンスターが墓地へと飛び込んで行く。

 すると1という輝きが道を開き、デッキからレベル1のモンスターが呼び出される。

 

「俺が呼び出すのはレベル1、チューナーモンスター《アンノウン・シンクロン》!」

 

 呼び出されたのは丸っこい機械。

 レベル1の下級モンスターであり、効果自体も意味をなしていないが故に脅威ではない。

 だが、先程の光景を思い出せば自ずと答えは出ていた。

 

『チューナーモンスター……まさかっ!』

「またシンクロ召喚って奴か!」

「その通りだ!俺はレベル1の綿毛トークンをレベル1の《アンノウン・シンクロン》でチューニング!」

 

 

 再び天空に舞う綿毛トークンと《アンノウン・シンクロン》。

 光は星を生み出し、再び螺旋のリングを生み出し、綿毛トークンを包み込む。

 合計レベルは2。

 

「集いし願いが新たな速度の地平へ誘う。光さす道となれ!」

 

 たった2つの星。

 だがそこから生み出される輝きは先程と比べても見劣りしない力強さを感じ取れる。

 

「シンクロ召喚!希望の力、シンクロチューナー、《フォーミュラ・シンクロン》!」

 

 鋭角なシルエットはレーシングカーを思わせるような姿だ。

 しかしアストラルはある事に気づいた。

 シンクロチューナー。

 それはつまり。

 

『そのモンスターはシンクロモンスターでありながら、新たなシンクロ召喚を可能にするチューナーなのか!?』

「なんだって!」

「さすがアストラル、その通りだ!まずは《フォーミュラ・シンクロン》がシンクロ召喚に成功した時、俺はデッキからカードを1枚ドローする!」

 

 光と共にデッキからカードが1枚、遊里の下へとやってくる。

 これで準備は整った。

 

「さぁ、行くぜ!」

 

 遊里の声に反応して《スターダスト・ドラゴン》が咆哮を上げながら空に再び飛翔する。

 《フォーミュラ・シンクロン》も爆音を鳴らしながら、星屑の竜に追従する。

 さぁ、これがシンクロ召喚を超えた更なる力。

 

「レベル8、シンクロモンスター《スターダスト・ドラゴン》にレベル2、シンクロチューナー《フォーミュラ・シンクロン》をチューニング!」

 

 レーシングカーが新たな光と星を生み出し、星屑の竜を包み込んで行く。

 それは先程と同じような光景。

 だがアストラルは見た。

 遊里の体が光り輝き、大きな風を纏っている所を。

 

「集いし夢の結晶が新たな進化の扉を開く。光さす道となれ!アクセル、シンクロオオォォォ!!」

『遊里が……消えただと!?』

 

 大きな突風と閃光と共に遊里の姿がこの場から消え去る。

 いや、それはアストラルの見間違えだったのかもしれない。

 気がつけば、変わらぬ場所に立っているのだから。

 しかし遊馬にはまるでそれは見えていなかった。

 その視線は空に向いたままである。

 空に漂う雲を切り裂くように、閃珖の輝きと共に一体の竜が落下するように戦場に舞い降りた。

 

「生来せよ、《シューティング・スター・ドラゴン》!!」

 

 流星の如く現れた風の竜。

 その力強さと美しさはカイトの《銀河眼の光子竜》を思わせる。

 いや、それ以上かもしれない。

 

「すげぇ……!すげぇよ、遊里!」

 

 この輝きと美しさに目が離せない遊馬。

 それ程までに凄い衝撃だったという事か。

 同時に遊里もまた圧倒的高揚感に襲われていた。

 この世界にやってきて、デュエルディスクで沢山のモンスター達を見てきた。

 だが慣れていた筈なのに、《シューティング・スター・ドラゴン》が舞い降りた時の凄まじさに目が離せないでいた。

 

(これが……不動遊星が見ていた光景……)

 

 シンクロと共に駆け抜けた決闘疾走者、不動遊星のエースモンスター。

 それを後ろから見上げる光景を見て、やはり高揚感が増してくる。

 だが今はデュエル中。

 美しさに感動している場合ではなかった。

 

「行くぞ遊馬!《シューティング・スター・ドラゴン》の効果発動!」

「!」

「自分のデッキトップから5枚めくり、そこにチューナーモンスターがいた場合、その枚数だけ《シューティング・スター・ドラゴン》は攻撃する権利を得る!」

「連続攻撃!」

 

 遊馬が驚きの声を上げるが、アストラルは別の意味で驚愕していた。

 その説明で効果の本質を理解した為だ。

 

『もし、チューナーモンスターが1枚もなかった場合はどうなる?』

「え?」

「さすがアストラル。気づいたか。もし1枚もなかった場合は攻撃する事が出来ない。1枚もないんだからな。因みにこの効果は強制効果じゃなくて任意効果だ」

「な!」

 

 そこまで聞けば遊馬もようやく理解した。

 これは明らかに博打なのだ。

 めくれる5枚の中にチューナーモンスターがある保障は何処にもない。

 確かに連続攻撃は魅力的だが、もし0枚だった場合、攻撃すら出来なくなるのはあまりにもデメリットが大きいように感じ取れた。

 

「だけどやるぜ!やれってこいつが叫んでいるように思えるからな!」

 

 勿論、遊里にそんな声は聞こえやしない。

 だけどOCGとは違う。

 今、目の前でその姿を見せ咆哮する流星竜を見ていると出来るような気がするのだ。

 だから効果を発動したのだ。

 遊里の記憶が正しければ、このデッキに入っているチューナーモンスターの数は圧倒的に少ない。

 まともに効果を使ってもチューナーをめくれる可能性は低いだろう。

 だが、なんとなく。

 なんとなくだ。遊里にはめくれるような気がしたのだ。

 

「まず1枚目、魔法カード《融合》。2枚目、チューナーモンスター《ジャンク・シンクロン》!3枚目、魔法カード《貪欲な壺》。4枚目、チューナーモンスター《クイック・シンクロン》!」

 

 これで2枚のチューナーをめくった事になる。

 だがそれでは届かない。

 月の盾を持った希望皇には届かない。

 だから最後の1枚。

 

「5枚目……チューナーモンスター、《エフェクト・ヴェーラー》!」

「さ、3回連続攻撃!」

「行くぜ!《シューティング・スター・ドラゴン》の攻撃!スターダスト・ミラージュ!!」

 

 上空へと飛翔すると、流星竜の姿が一瞬ぶれたと思った瞬間、なんと3体に増えている。

 ミラージュ。

 その名の通り、幻影だ。

 だがその一体一体が、遊馬とアストラルを倒す剣なのだ。

 

「まず第一打ぁ!」

「くっ、ホープの効果発動!オーバーレイユニットを1つ使い、相手の攻撃を無効にする!ムーンバリア!」

 

 幻影流星がホープへと向かって突撃していく。

 それを迎え撃つのは月の盾。

 激突した瞬間、凄まじい衝撃が遊里と遊馬に襲い掛かるが先に消滅したのは幻影。

 月の盾は主を見事に守り抜いたのである。

 ただしこの一撃はであるが。

 

「ならば第二打だ!!」

「もう一度だホープ!ムーンバリア!!」

 

 再び激突。

 幻影の盾がぶつかりあうと、盾は確実に攻撃を防いだが、その身に皹が入ってしまう。

 オーバーレイユニットがない以上、もはや防ぐ手立てはない。

 

「そして第三打ぁ!シューティング・ミラージュ!!」

「ぐっ、うわぁぁぁぁ!」

 

 盾を失ったホープにこの攻撃を防御する術はない。

 三度目の正直とばかりに、幻影の一撃はホープを撃ち貫いていた。

 とは言え、ナンバーズはナンバーズでしか破壊できない。

 破壊されなかったホープ、とは言えダメージは相当なものであり、ホープの鎧には多くの皹が入り損傷している部分がある。

 遊馬のライフも3200へと減っている。

 先制の一撃は遊里が取ったのだ。

 

「……俺はカードを1枚セットしてエンド」

 

 何か思案するような表情を見せた後、遊里はカードをセットしてエンド宣言する。

 《シューティング・スター・ドラゴン》も気がつけば遊里の傍に控えるように佇んでいる。

 

「くっそー!先制されたぜ!」

『ああ。シンクロ召喚、凄まじい召喚方法だ』

 

 エクシーズ召喚とはまったく異なる方法で呼び出された星の竜。

 そこから放たれる力は間違いなくナンバーズに匹敵する。

 遊里がどうやってあのカードを手に入れたのか。

 何処であの召喚方法を学んだのか気になる所ではあるが、今は目の前のデュエルだな、とアストラルは気持ちを入れ替える。

 目の前にいるこのドラゴンをどうやって突破するべきか。

 まずはそこを考えなければならなかった。

 

「今の内に説明しておくぜ。《シューティング・スター・ドラゴン》は1ターンに1度、フィールドのカードを破壊する効果を無効にし、破壊する効果がある」

 

 遊里の説明にあのドラゴンの突破方法を考えていたアストラルは顔をしかめる。

 つまり魔法や罠、モンスター効果での破壊は不可能という事だ。

 しかしそれだけではない。

 

「そして攻撃された時、このシューティング・スターを除外する事で攻撃を無効にする事が出来る。更にエンドフェイズに除外したこいつを場に特殊召喚する」

 

 それは単純に攻撃力を上回っても倒すのは困難という事か。

 やはりあのドラゴンを突破するのは容易ではない。

 そして遊馬の手札にどうにかできるカードは残念ながら存在しない。

 つまりこのドローにかかっている。

 ドローしたカードによっては敗北への一手へと突き進むだろう。

 だが九十九遊馬は恐れない。

 

「かっとビングだオレ!ドロォォォォ!」

 

 迷う事なくカードをドローする遊馬。

 引いたカードは。

 

「来たぜ……遊里!」

「来たか、遊馬!」

「《RUM-ヌメロン・フォース》を発動!このカードはモンスターエクシーズをランクアップさせる!」

「そのカードか!」

 

 掲げられた1枚のカード。

 ランクアップマジック。エクシーズモンスターを更なる高みに進化へ誘う為の切り札。

 

「ランク4の希望皇ホープでオーバーレイ!1体のモンスターでオーバーレイネットワークを再構築!カオスエクシーズチェンジ!!」

 

 その力の恩恵を受けたホープが新たな光を纏っていく。

 ホープがボロボロになった鎧から新たな鎧を身に纏っていく。

 

「現れろ、CNo.39! 希望に輝く魂よ! 森羅万象を網羅し、未来を導く力となれ!希望皇ホープレイ・ヴィクトリー!」

 

 未来に輝く勝利を掴む為に進化した新たなるホープ。

 しかしそれでもその力では《シューティング・スター・ドラゴン》を超える事は出来ない。

 

「ヌメロン・フォースの効果はそれだけじゃない!こいつが発動された時、フィールド上で表側になっているカードの効果は無効となる!」

「くっ!」

 

 ヌメロン・フォースの輝きを浴びた《シューティング・スター・ドラゴン》が苦痛に悶える。

 本来ならば存在する、相手の攻撃を防ぐ異次元へと飛び出す力と相手の破壊効果を無効にする力が全て失われてしまったのだ。

 

「更にオレは《ズババナイト》を召喚。行くぜ遊里!ホープレイ・ヴィクトリーで《シューティング・スター・ドラゴン》を攻撃!」

 

 新たに呼び出されたギザギザになった剣を構えた戦士が現れる。

 そして勝利をもたらす希望の皇が流星の竜に向き直る。

 しかし攻撃力は2800と3300。ホープレイ・ヴィクトリーに勝ち目はないが。

 

「そしてこの瞬間、ホープレイ・ヴィクトリーのモンスター効果が発動!オーバーレイユニットを1つ使い、このモンスターがバトルする時、相手モンスターの攻撃力を自分に加える!ビクトリー・チャージ!!」

「攻撃力6100……!」

 

 その身に宿った力が発動する。

 ホープレイ・ヴィクトリーに新たな腕が現れると、元々あった腕を含めて全ての腕が剣を装備する。

 4振りとなった剣1つ1つに《シューティング・スター・ドラゴン》から奪った力が宿っていく。

 

『そしてホープレイ・ヴィクトリーが攻撃する時、相手は魔法や罠を発動する事はできない!』

「行け、ホープレイ・ヴィクトリー!《シューティング・スター・ドラゴン》を攻撃!」

 

 効果が失われた以上、異次元へ逃げる事も出来ない《シューティング・スター・ドラゴン》が必死に天空へ逃れようとするがもう遅い。

 既に希望皇の攻撃は直前に迫っているのだから。

 

「ホープ剣・ダブルビクトリー!スラッシュ!!」

 

 4振りの剣でVの字に切り裂かれる流星の竜。

 瞬く間に切り裂かれた竜は天空から地にと落ちていった。

 

「ぐっ……!」

 

 遊里のライフポイントが一気に2800も減り、1200になる。

 そして遊馬の場にいる《ズババナイト》の攻撃力は1600、これが通れば遊馬の勝ちである。

 

「行け、《ズババナイト》の攻撃!」

「終わらない!罠発動!《くず鉄のかかし》!相手の攻撃を無効にする!」

 

 攻撃しようとした《ズババナイト》の目の前にくず鉄の寄せ集めで形作られたかかしが現れる。

 剣を振りかぶっていた剣士はそれに気づくも勢いをつけていた為、止まる事が出来ずその顔面をかかしにぶつけてしまった。

 非常に痛々しい音が響き渡ると、剣士が遊馬の元に弾き飛ばされていく。

 

「防がれた……!」

『さすがにあれで決められるとは思っていなかった』

「それもそうだな。オレはこれでターンエンドだ。そしてホープレイ・ヴィクトリーの攻撃力は元に戻る」

 

 4本腕になったホープレイ・ヴィクトリーが元の姿に戻る。

 だがナンバーズ特有の破壊耐性を持った攻撃力2800のモンスターだ。簡単に突破はできないだろう。

 

「俺のターン、ドロー!……よし、俺は《E・HEROエアーマン》を召喚する!」

 

 風を纏い、背中にプロペラが装備された翼を持った戦士が現れる。

 HEROデッキに必須と言っていいHERO、それがエアーマンだ。

 

「エアーマンの効果発動!召喚された時、デッキからHEROと名のつくモンスターを1枚手札に加える。俺が加えるのは《E・HERO プリズマー》!」

 

 大きな風がプロペラから発せられると、その風がデッキからカードを1枚吹き飛ばす。

 吹き飛ばされたカードは遊里の手にゆっくりと収まる。

 

「そして魔法カード《ミラクル・フュージョン》を発動!墓地のオーシャンとフォレストマンを融合させる!」

『墓地融合か!』

 

 墓地から2体のモンスター。

 海の戦士と森の戦士が現れる。

 

「海と森が交わる時、新たな星が生み出される!融合召喚!」

 

 オーシャンとフォレストマンが手を組み合うと、1つの光に交じり合っていく。

 

「来い!プラネットシリーズ!《E・HERO ジ・アース》!!」

「星……地球!?」

 

 海と森が交じり合い生み出した存在。

 一点の曇りなき体。肩と額には青く輝く結晶が、胸の中央には赤い結晶が埋め込まれている。

 これが星であり、地球そのものの存在である。

 とある世界、誰よりもデュエルを愛する男、遊城十代のフェイバリットカード。

 

『プラネットシリーズ……星を司る存在……!』

「だけどそれじゃあ……」

 

 攻撃力は2500と確かに高い数値ではあるものの、2800のホープレイ・ヴィクトリーには届かない。

 

「ああ、そうだな。だからこそこいつだ。ジ・アースの効果を発動!」

 

 傍らに立つエアーマンが大きな竜巻を起こすと、エアーマンが竜巻の中にへと消えていく。

 まるで己の存在を竜巻にしたようだ。

 いや、竜巻になったのだろう。そしてその竜巻はジ・アースの周りに集まると両肩の青の結晶へと吸い込まれていく。

 するとどうだろうか。

 純白の姿は気がつけば赤く灼熱化しているではないか。

 まるで生まれたばかりの星が大量のマグマを噴出しているが如くだ。

 

「自分フィールド上のE・HEROをリリースする事で、リリースしたモンスターの攻撃力をジ・アースに与える!地球灼熱――ジ・アース マグマ!」

「す、すげぇ炎だ……!」

 

 実体を持たないソリッドヴィジョンではあるが、ジ・アースから放たれる炎は凄まじい熱があると錯覚させるレベルだ。

 そして効果により強化されたジ・アースの攻撃力は4300と圧倒的な数字だ。

 

「行くぜ!ジ・アースの攻撃!この時、墓地にある《ブレイクスルー・スキル》の効果発動!」

「墓地からトラップ!?」

「このカードを除外して、相手モンスター1体の効果を無効化する!」

 

 突如、次元をやぶって現れたモンスターの腕がホープレイ・ヴィクトリーの胸を貫く。

 実体がある訳ではないその腕はホープレイ・ヴィクトリーに傷をつける事はなかったが、その身に宿る破壊耐性効果が失われてしまった。

 

「くそっ、これじゃあ!」

 

 ジ・アースの両手から炎、いやマグマの剣が現れる。

 灼熱化したジ・アースが一気にホープレイ・ヴィクトリーの前に飛び込んむ。

 ホープレイ・ヴィクトリーも負けじと両手の剣で対抗しようとするが無駄な事。

 ただの剣がマグマエネルギーに勝てる筈もない。

 

「地球灼熱斬――アース・マグナ・スラッシュ!!」

 

 マグマの剣を一閃。

 剣ごとホープレイ・ヴィクトリーは真っ二つに切り裂かれていた。

 

「うわぁぁぁぁぁ!」

 

 そのエネルギーを諸に受けた遊馬の体が後ろに吹き飛ばされる。

 1500ダメージも受けた事で遊馬のライフは一気に1700まで衰退してしまった。

 

『大丈夫か、遊馬!』

「なんとかな。さすが遊里、すげぇモンスターばかりだぜ」

 

 倒れた遊馬が起き上がり、そう呟く。

 《シューティング・スター・ドラゴン》もそうだが、《E・HERO ジ・アース》もエースモンスターと言って過言ではない。

 それを簡単に出してくるとは。

 さすがとしか言うしかなかった。

 

「俺はこれでターンエンド。ジ・アースの攻撃力は元に戻る」

「負けるかよ、オレのターン!ドロー!」

 

 と威勢よく言ってみたものの、この手札ではジ・アースを撃破しライフを削る事は不可能。

 だがやりようはある。

 

「オレは《ズバババスター》を召喚!」

 

 棍棒の両脇に鉄球がつけられた武器を持った戦士が現れる。

 《ズババナイト》と同じズババモンスターだ。

 だがどちらもジ・アースには届かない。

 しかしどちらのモンスターもレベル3なのだ。

 

「来るか!?」

「行くぜ!オレはレベル3の《ズババナイト》と《ズバババスター》でオーバーレイ!2体のモンスターでオーバーレイネットワークを構築、エクシーズ召喚!!」

 

 2体の戦士から生み出される新たなモンスター。

 深海の底から現れるように、蒼色のその姿はドラゴン。

 

「現れろ、No.17!渦巻く海底からその姿を現せ!リバイス・ドラゴン!!」

 

 始まりの日。

 遊馬が初めてモンスター・エクシーズを呼び出した時、対戦相手であった神代凌牙が使ったナンバーズ。

 それは今、遊馬の手に渡りこうして召喚されているのだ。

 

「リバイス・ドラゴンの効果発動!オーバーレイユニットを1つ使って、自身の攻撃力を500アップする!」

「そういう事か!」

 

 オーバーレイユニットの光を喰らうと、リバイス・ドラゴンの攻撃力が500アップする。

 リバイス・ドラゴンの攻撃力はこれで2500とジ・アースと並ぶ事になる。

 これだけならばジ・アースと戦闘した場合、相打ちで終わるだろう。

 そう、それだけならばだ。

 

「ナンバーズはナンバーズでしか倒せない!」

「その通りだ!行け、リバイス・ドラゴン!ジ・アースを攻撃、バイス・ストリィィィム!!」

 

 リバイス・ドラゴンから放たれる螺旋の咆哮がエネルギーとなり、ジ・アースへと襲い掛かる。

 攻撃力は同じだがナンバーズではないジ・アースのみが破壊されるだろう。

 防御体勢を取るジ・アース。

 だが1つ忘れている事がある。

 

「罠発動!《くず鉄のかかし》!」

「なにっ!?」

「忘れたのか、こいつは発動後、再びセットされるって事をな!」

 

 すっかり忘れられていた《くず鉄のかかし》の第二の効果。

 1ターンに1度しか使えないが、破壊されない限りは何度でも使える不屈の盾だ。

 放たれた螺旋の咆哮の前に現れるジャンクのかかし。それが一身に咆哮の一撃を受け止め防ぎきっていた。

 

「ちくしょう、すっかり忘れてたぜ。言ってくれよな、アストラル」

『言った所でやる事は変わらなかったさ。一先ずこれで凌ぐしかあるまい』

 

 結果は変わらないとの事。

 アストラルの言う通り、現状はこれでどうにかするしか手がない状況であった。

 

「これでターンエンドだ」

「俺のターン!」

 

 そして遊里もまたリバイス・ドラゴンを破壊する術は現状ではない。

 ジ・アースでは相打ちでも出来ないのだから仕方ないが。

 だがダメージは与えられるのだ。

 

「俺は魔法カード《ミラクルシンクロフュージョン》を発動!このカードはフィールドか墓地にあるシンクロモンスターを素材として融合召喚する事が出来る!」

『シンクロモンスターを利用した融合だと!』

「俺は墓地にいる戦士族のエアーマンとドラゴン族でありシンクロモンスターである《シューティング・スター・ドラゴン》を素材として融合召喚する!」

 

 墓地に眠りし、風の戦士と流星の竜が浮かび上がると、一体化するように融合していく。

 

「波動を操りし竜の騎士よ、その力を宿した槍を携え光臨せよ!融合召喚!《波動竜騎士 ドラゴエクィテス》!!」

 

 不動遊星が対シンクロモンスターのモンスターに対抗するべく導き出した1つの答え。

 シンクロモンスターを使った融合モンスター。

 巨大な槍を構えたドラゴンナイトが降臨したのだ。

 確かにナンバーズはナンバーズでしか破壊できない。

 だがダメージは与えられるのだ。

 

「行くぜ、ドラゴエクィテスでリバイス・ドラゴンを攻撃!」

 

 竜騎士がその巨大な槍を手足のように回すと、その槍にエネルギーが溜まっていく。

 間違いなく強大な一撃。

 その力と自分との差に気づいたのか、怯えを隠すように咆哮を上げるリバイス・ドラゴン。

 だがその程度で竜騎士が止まる筈もない。

 

「スパイラル・ジャベリン!!」

 

 勢い良く放たれる槍は螺旋を描きながら一気にリバイス・ドラゴンへと突撃していく。

 リバイス・ドラゴンも必死に反撃を試みる。

 螺旋と螺旋。

 それが勢い良く激突。

 勝負は一瞬でついた。

 螺旋の槍が咆哮を撃ち払ったのだ

 そのまま勢いを落とす事なく、一気にリバイス・ドラゴンを貫いた。

 勿論、ナンバーズでしか破壊できない。

 だがその一撃による衝撃は隠せるものではなく遊馬達に襲い掛かっていく。

 

『罠発動!《ダメージ・ダイエット》!このターン、我々が受けるダメージを半分にする!』

 

 これ以上のダメージは危険と判断したのか、アストラルが罠を発動する。

 スパイラル・ジャベリンの一撃による衝撃を半減していく。

 だがそれでもダメージにより1350にライフが減ってしまう。

 

「これでターンエンド。忘れていたが、ドラゴエクィテスが表側攻撃表示で存在する限り、効果ダメージは全て相手に跳ね返るから気をつけろよ」

 

 つまりバーンダメージで遊里のライフを削ろうとすれば、ダメージを受けるのは自分達という事である。

 積極的に効果ダメージを与えるカードは多くないが、間違っても使おうとすればただでさえ少ないライフがもっと減ってしまうという事だ。

 

「オレの……ターン!」

 

 今の遊馬の手札にこの状況を打開する手はない。

 リバイス・ドラゴンで粘る手もあるが、あの遊里が突破する手段を用意出来ないとは思えない。

 

「オレは魔法カード《セブンストア》を発動!モンスター・エクシーズをリリースしてデッキからカードを1枚ドローする!更にリリースしたモンスターにオーバーレイユニットが存在する場合、その数だけ更にカードをドローする事が出来る!」

『リバイス・ドラゴンをリリース。更にリバイス・ドラゴンにはオーバーレイユニットが1つある。つまり2枚ドローする!」

「ドロォォォ!」

 

 光へと消えて行くリバイス・ドラゴンがいた場所に残された2枚のカード。

 それを見て遊馬の表情が変わる。

 

「アストラル」

『ああ、行くぞ!』

「いいカードを引いたみたいだな……」

 

 攻勢に出んとする遊馬達を見て、遊里の表情も変わる

 かかってこいと言った表情だが、その表情からは笑顔が零れている。嬉しいのだろう、デュエルする事が。

 

「魔法カード《ガガガ学園の緊急連絡網》!デッキからガガガモンスターを特殊召喚する!来い、《ガガガマジシャン》!!」

 

 緊急連絡を受けて、デッキからやってきたのは学園番長こと《ガガガマジシャン》。

 

「そして《ドドドウォリアー》を召喚する!このカードは攻撃力を500ポイントダウンさせる事でリリースなしで召喚する事ができる!」

『更に《ガガガマジシャン》の効果を発動する!このカードのレベルを6に変更する!』

 

 《ドドドウォリアー》のレベルは6。

 これでレベル6のモンスターが2体揃った事になる。

 

「オレはレベル6の《ガガガマジシャン》と《ドドドウォリアー》でオーバーレイ!2体のモンスターでオーバーレイネットワークを構築、エクシーズ召喚!!」

 

 新たな光から生み出されるのは、巨大な大陸のようなモンスター。

 

「現れろ、No.6!人智を超えた神秘の大陸よ。古代の知識と共に浮上せよ!先史遺産アトランタル!!」

「で、でかすぎだろ……」

 

 顔を引きつらせる遊里。

 しかし初見の人間が見れば、大体似たような反応をするだろう。

 遊馬の友、かつては敵対したが共に戦った少年、IIIの切り札。

 洪水で滅亡し、水の底へと沈んでいったと言われる神秘の大陸が人になったと言わんばかりの巨大なモンスター。

 その威圧感は半端なものではない。

 

「アトランタルはエクシーズ召喚された時、墓地のナンバーズ1体を装備しその攻撃力分だけ攻撃力をアップする!蘇れ希望皇ホープ!!」

 

 墓地から蘇ったホープはそのままアトランタルの腹の部分へと収まっていく。

 すると、アトランタルから光があふれ出す。

 他のナンバーズの力を得て、その攻撃力は5100へと跳ね上がったのだ。

 

「更にアトランタルの効果発動!オーバーレイユニットを1つ使い、相手のライフを半分にする!」

『そしてこの効果はダメージを与えるものではない!』

「チッ、ドラゴエクィテスじゃ防げないって事か……!」

「いけぇ!アトランタル!オリハルコン・ゲート!!」

 

 アトランタルが右手に火山の力を宿すとその力ごと遊里を一気に叩き潰してくる。

 

「ぐああっっ!」

 

 遊里のライフが一気に半分の600へと減る。

 だがまだこれで終わりではない。

 攻撃力5100のアトランタルの攻撃が待ち構えているのだ。

 

「これで終わりだ!アトランタルでドラゴエクィテスを攻撃!」

 

 アトランタルの左肩の火山が盛大に噴火を起こすと、そこから発生されるエネルギーが巨大な竜巻を巻き起こして行く。

 その熱い竜巻は一直線にドラゴエクィテスへと襲い掛かる。

 この一撃が通れば、残りライフ600など一発で吹き飛ぶだろう。

 

「罠発動!《くず鉄のかかし》!」

 

 再び現れるジャンクのかかし。

 例えゴミだろうと、いかなる攻撃をも防ぐ盾だ。

 だが対策もなく攻撃する遊馬ではない。

 

「その瞬間、手札から《チャウチャウちゃん》の効果発動!相手の罠カードの効果を無効に破壊する!」

「くっ!」

『これで遊里を守るものはない!』

「行け、アトランタル!ホープ剣・クロス・アトランタル・スラッシュ!!」

 

 《くず鉄のかかし》が破壊され、灼熱の竜巻が、いや装備されている希望皇がその身を焔に変えて竜騎士へと一気に襲い掛かる。

 これが通れば遊里の負けである。

 だが、それでも負けないと遊里もまた手札からカードを発動する。

 

「俺は手札の《クリボー》を発動!この戦闘ダメージを0にする!」

 

 遊里の目の前に増殖した小さな悪魔達が壁のように現れる。

 それだけではない。

 攻撃を防ぎきれないと判断した竜騎士はその手に持つ槍を遊里の目の前に投げ捨てる。

 それはまるで盾のように遊里の目の前に突き刺さった。

 その次の瞬間、灼熱の竜巻は竜騎士をあっという間に飲み込み、灼熱の希望皇がその剣で滅ぼしていった。

 だがそこから放たれ、遊里を襲う筈だった衝撃は竜騎士の槍と小さな悪魔達によって防がれていった。

 戦闘ダメージは0。

 つまりライフは600のままである。

 

『仕留めそこなったか……!』

「簡単にはやられないぜ!」

「さすが遊里だぜ。オレはカードを1枚セットしてターンエンド!」

 

 必殺の一撃だったのだが、それすらも回避されるとは。

 さすがと賞賛するしかない。

 しかしそれでもライフは残り600。

 何かあれば一瞬でライフは0になるだろう。

 そして遊馬の場には攻撃力5100のアトランタルが残ったままである。

 

「俺のターン、ドロー。……俺は魔法カード《アドバンスドロー》を発動!フィールド上にいるレベル8以上のモンスターを1体リリースしてデッキから2枚カードをドローする。俺はジ・アースをリリース!」

 

 後は任せた、と言った様子でジ・アースが光の中に消えて行く。

 ジ・アースが残していった2枚のカード。

 そしてこの状況を打開出来るだけのカードを引く事が出来た。

 

「よし、魔法カード《コクーン・パーティ》を発動!墓地に存在するネオスペーシアン1種類につき、コクーンモンスターをデッキから特殊召喚する!」

 

 墓地に眠っているネオスペーシアンは4種類。

 《N・グラン・モール》、《N・フレア・スカラベ》、《N・ハミング・バード》、《N・ブラック・パンサー》の4枚。

 宇宙の戦士達から放たれる光は、フィールドに新たなる繭を生み出して行く。

 

「デッキから《C・モーグ》、《C・チッキー》、《C・パンテール》、《C・ラーバ》を特殊召喚する!」

「大量展開された!」

「更に永続魔法《コクーン・リボーン》を発動!フィールド上にいるコクーンモンスターをリリースして、それに対応するネオスペーシアンモンスターを墓地から特殊召喚する!」

 

 フィールドにある繭達が震えるように光出す。

 まさに羽化しようとしているように見えた。

 

「蘇れ、《N・グラン・モール》、《N・フレア・スカラベ》、《N・エア・ハミングバード》、《N・ブラック・パンサー》!」

 

 繭を破り、成長した姿で現れる宇宙の戦士達。

 とは言え、そのステータスは低い。

 全員守備表示で特殊召喚される事になった。

 

「まだ続くぜ、魔法カード《スペーシア・ギフト》を発動!フィールド上のネオスペーシアンモンスター1体につきカードを1枚ドローする!俺の場には4種類いるから4枚ドローだ!」

『なんという大量ドローだ……!』

 

 4枚という連続ドローに加え、ステータスが低いとは言え4体のモンスターを展開したのだ。

 驚くなという方が無理である。

 しかし一番驚いていたのは遊里本人であるだろう。

 普段ならばこんな流れるような展開を出来た試しがない。というかよく事故らなかったな、と褒め称えたい気分である。

 

「まずは《N・エア・ハミングバード》の効果発動!相手の手札1枚につき、俺はライフを500回復する!ハニー・サック!!」

「なっ、花ぁ!?」

 

 遊馬の手札から突如として花が咲き誇る。

 するとその花に飛び込んできた《N・エア・ハミングバード》が蜜を吸い込んで行く。

 遊馬の手札は2枚。つまり1000ポイントの回復である。

 600しかなかった遊里のライフが1600まで回復する。未だにデッドラインではあるが、《ガガガガンマン》の効果で死亡という事態から免れた。

 

「そして《E・HERO プリズマー》を召喚!」

 

 美しい水晶の結晶と言うべき体を持った戦士が現れる。

 

「プリズマーの効果発動!エクストラデッキにある融合モンスターを1体見せ、そこに書かれている融合素材モンスターをデッキから1枚墓地に送る事が出来る。そしてプリズマーはそのカードと同名カードとして扱う!」

『融合モンスターの素材に変わるというのか!』

「俺が見せるのは《E・HERO マグマ・ネオス》!送るのは《E・HERO ネオス》だ!」

 

 デッキからカードが1枚送られると、プリズマーもその姿を変えて行く。

 気がつけ宇宙の戦士、正義の闇の波動を受けた遊城十代の新たなるエースモンスターだ。

 

「そして俺はフィールド上にいる《E・HERO ネオス》!《N・フレア・スカラベ》!《N・グラン・モール》!この3体をデッキに戻して、融合モンスターを召喚する!トリプルコンタクト融合!!」

「融合なしで融合モンスターを特殊召喚するだって!?」

 

 ネオスを中心にフレア・スカラベとグラン・モールが宇宙の中心へと飛び込んで行く。

 正しき闇の力を浴び、その姿を新たな形へと変えていく。

 

「宇宙の戦士が新たな仲間と共に新たな姿へと進化する!トリプルコンタクト融合!来い、融合召喚!《E・HERO マグマ・ネオス》!」

 

 炎と岩。

 その力を浴びたネオスはマグマという大自然の力の鎧を手に入れていた。

 まるでマグマの力を使うアトランタルに対抗するように。

 

「マグマ・ネオスはフィールド上に存在するカード1枚につき攻撃力を400アップする!」

「な、なんだってぇ!?」

『お互いのフィールド上に存在するカードは合計7枚……2800アップ!?』

 

 その上昇値に驚きの声を上げる2人。

 攻撃力はこれで5800。アトランタルをあっという間に抜いてしまったのだ。

 

「まだだ!ネオスにはネオスの戦場がある!俺はフィールド魔法《ネオスペース》を発動!《E・HERO ネオス》やネオスを融合素材とする融合モンスターの攻撃力は500アップする!」

『それだけではなく、フィールドにカードが1枚増えた……!』

「更に900ポイントアップかよ!?」

 

 マグマ・ネオスに力がみなぎって来る。

 ネオスがやってきたという星の力を受け、その攻撃力は6700。

 圧倒的と言っていい数字だ。

 

「行け、マグマ・ネオス!スーパーヒートメテオ!!」

 

 頭上に灼熱の塊が集中する。

 凄まじいエネルギー量のそれはアトランタルすら上回る熱量だ。

 これが直撃すればただではすまないだろう。

 まともに直撃すれば遊馬のライフは一気に吹き飛ぶ。

 だがアストラルにはある可能性を思い浮かべていた。

 もしそれがあるとすればこの一撃で負けるかもしれない。

 

『まずい……!遊馬、トラップだ!』

「おう!罠発動!《エクシーズ・ピース》!モンスターエクシーズが攻撃された時、その攻撃を無効にする!」

 

 放たれたマグマの一撃がアトランタルに直撃する直前に消滅する。

 

「更に攻撃対象に選択されたモンスターエクシーズをリリースし、レベル1モンスター2体を効果を無効にしてデッキから特殊召喚する!《クリボルト》と《ダークロン》を特殊召喚!」

 

 アトランタルが墓地へと消え去り、遊馬のデッキから2体のモンスターが特殊召喚される。

 しかしどちらも効果が無効となったレベル1モンスターだ。

 マグマ・ネオスを相手にするには厳しいだろう。

 

「……俺はカードを1枚セットしてターンエンド」

「オレのターン!ドロー!」

『遊馬、気をつけるんだ。あのリバースカードは《禁じられた聖杯》の可能性が高い』

 

 アストラルの言葉にハッと気がつく遊馬。

 小鳥も持っていた速攻魔法。あれは攻撃力を上げる代わりにモンスター効果を無効にする強力なカード。

 確かにあれならばナンバーズを倒す事が可能だ。

 そしてアトランタルの効果が無効にされていたら、装備されていたホープは破壊され攻撃力がダウン。

 そうなればあのマグマ・ネオスの一撃を耐える事なんて出来なかっただろう。

 

「となると、アレを出しても厳しいか……?」

『いや、出すべきだ』

「アストラル?」

『既に我々は後がない。ここで攻める手段があるならば攻めるべきだ』

 

 そんな言葉に本当に驚きの表情を見せる。

 普段のアストラルならば、そんな無茶な事は言い出さないだろう。

 

「なんだよ、アストラル。普段ならもっと慎重にとか言うんじゃないのか?」

『ふ、君達に影響されたのかもな』

 

 からかうような遊馬の言葉に笑みを浮かべるアストラル。

 よし、と遊馬も覚悟を決める。

 

「なら行くか!オレは《マツボックル》を召喚!」

 

 これでレベル1のモンスターが3体。

 

「オレはレベル1の《クリボルト》と《ダークロン》、《マツボックル》でオーバーレイ!3体のモンスターでオーバーレイネットワークを構築、エクシーズ召喚!!」

 

 3体のモンスターが光へと変えて行く。

 それは新たなモンスター。勇敢な心を持った獅子。

 

「現れろ、No.54!熱き闘志の雄叫びが眠れる魂すらも震わせる!反骨の闘士!ライオンハート!!」

 

 反骨の獅子。

 遊馬の友、アリトの記憶のモンスター・エクシーズだ。

 

「行くぜ、バトルだ!ライオンハートでマグマ・ネオスを攻撃!」

 

 獅子が一気にマグマ・ネオスに殴りかかる。

 ライオンハートの攻撃力は100しかないというのに、攻撃力6300のモンスターに攻撃するというのか。

 

「罠発動!《攻撃の無力化》!攻撃を無効にし、バトルフェイズを終了する!」

『《禁じられた聖杯》ではない!?』

「バトルを無効にされた!?」

 

 マグマ・ネオスに殴りかかろうとした、ライオンハートの拳が異次元の穴に吸い込まれる。

 その隙に、マグマ・ネオスは一気に距離を離していく。

 

『バトルは無効になったが、遊里の手札に聖杯がない可能性が高いな』

「ああ。遊里なら聖杯で返り討ちにしてきた筈だからな」

 

 それを確認できた意味でもこのバトルは十分に意味があった。

 

「カードを1枚セットしてターンエンド」

「……俺のターン、ドロー」

 

 遊里はエンド時に数秒考えるが、そのまま自分のターンに入る。

 一体なんだ、とアストラルは遊里の様子に気がつくが現状、理解する手段はない。

 

「……」

 

 その手札にライオンハートを打倒する手段はない。

 むぅ、とライオンハートを睨みつける。

 ライオンハートはバトルした時、自身は破壊されず、発生する戦闘ダメージをお互いのプレイヤーに与える効果を持つ。

 マグマ・ネオスと戦闘すればそのダメージは遊里にも襲いかかる。

 逆に遊馬はライオンハートの効果でライフが100だけ残るという。

 つまり効果を無効にしない限り、ライオンハートとの戦闘は不可能だ。

 遊里の手札は数枚。

 これだけあるというのに手立てがないとは思わなかった。

 

「俺は《N・エア・ハミングバードの効果発動!ライフを回復する!」

 

 ライフが500回復し、2100になる。

 だがそれだけだ。

 

「これでエンドフェイズに移行する!」

「え?」

「そしてこの瞬間、エンドフェイズにマグマ・ネオスの効果発動!」

『このタイミングで!?』

 

 マグマ・ネオスから光が放たれる。

 それは灼熱の焔。一気にそれが拡散していく。

 すると大地が跳ね上がり、そこにあるカード達が吹き飛ばされていく。

 ライオンハートも噴出する大地に巻き込まれていく。

 

「ライオンハート!?」

「マグマ・ネオスはエンドフェイズにエクストラデッキに戻る。さっきは《ネオスペース》の効果で戻さなくても大丈夫だったが、あえて戻すぜ」

『くっ、《ネオスペース》にはそのような効果まで……!』

「そしてマグマ・ネオスが戻る時、フィールドのカードは全て持ち主の手札に戻る!ライオンハートもな!」

「しまった!?」

 

 悲鳴のような咆哮を上げて、ライオンハートが戻っていく。

 しかしモンスター・エクシーズが戻るのは手札ではなくエクストラデッキ。実質除去と変わりがない。

 遊馬のフィールドからは全てのカードが消え去ってしまった。

 だがそれは遊里も同じだ。

 そしてエンドフェイズである為、新たなカードを出す事が出来ない。

 

「俺の手札は7枚。《N・エア・ハミングバード》を墓地に送る。ターンエンド」

 

 過剰に増えた手札を墓地に送る遊里。

 手札は多いが、フィールドにカードはない。

 だと言うのに焦るような様子はない。

 となれば遊馬も使う《ガガガガードナー》などのモンスターが手札にある可能性が非常に高い。もしくは先程の《クリボー》か。

 

「オレのターン!ドロー」

 

 ドローしたカードを見るが、攻め手がない。

 生半可なモンスターを出せば、逆に敗北するのはこちらである以上、出せるモンスターは慎重に出さなければならない。

 

「くっ……カードを2枚セットしてターンエンド!」

 

 今、使えるカードを全てセットする。

 これで時間を稼ぐしかなかった。

 

「俺のターン、ドロー。攻めさせてもらうぞ遊馬!俺は《サイクロン》を発動!魔法、罠カードを1枚破壊する!」

「くっ、ミラーフォースが……!」

 

 魔法の竜巻が遊馬のカードを1枚破壊する。

 攻撃された時、攻撃表示のモンスターを破壊するバリアはあっさりと破壊されてしまったのだ。

 

「俺はカードを1枚セットし再び《ネオスペース》を発動。そして《手札抹殺》を発動!お互いのプレイヤーは手札を全て捨てて、その枚数だけカードをドローする」

 

 遊馬は1枚、遊里は手札4枚入れ替える。

 

「そして今セットしたばかりの魔法カード、《ミラクルコンタクト》を発動!《E・HERO ネオス》を融合素材にするE・HEROと名のつくモンスターを手札、フィールド、墓地からデッキに戻してエクストラデッキから特殊召喚する!」

 

 墓地で眠っていた《E・HERO ネオス》、《N・ブラック・パンサー》、《N・エア・ハミングバード》。

 そして《手札抹殺》で捨てられた《E・HERO プリズマー》と《N・フレア・スカラベ》が光となり、デッキへと戻っていく。

 光臨するのは神の光。

 

「星の光を1つに束ねる神の輝き!これがネオスの最終進化系!《E・HERO ゴッド・ネオス》!!」

 

 黄金の光を纏ったネオスの新たなる姿。

 遊城十代がダークネスを倒した最後の切り札。

 

『なんと輝きを持ったモンスターなのだ……!』

「もう驚くしかできねーや」

 

 アストラルと遊馬も驚くしかリアクションを取れないレベルである

 

「そして《ネオスペース》の効果により攻撃力は500アップ!更にゴッド・ネオスの効果発動!墓地に眠るE・HEROかネオスペーシアンと名のつくモンスターを除外して攻撃力を500アップし、除外したモンスターの効果を得る!」

『なんだと!?』

「墓地のモンスターの効果を得るだって!?」

「ああ。俺が除外するのは《E・HERO ジ・アース》!」

 

 地球という星のエネルギーが神の戦士へと集まっていく。

 それはまるで本来交わる事がない遊城十代の輝きが1つになっていくようで、遊里は感動を覚えていた。

 しかしジ・アースの効果を得たとは言え、手札にE・HEROは存在しない以上、効果は使えそうにない。

 それに効果を使わなくてもこの状況ならば問題はない。

 

「ゴッド・ネオス、攻撃だ!」

 

 その黄金の鎧が光を収束させていく。

 虹色の光だ。

 

「レジェンダリー・ストライクぅぅ!」

 

 虹色の7つの光が遊馬を貫かんと一気に殺到する。

 

「俺はこの瞬間、罠発動!《エクシーズ・リボーン》!墓地の希望皇ホープを蘇らせる!舞い戻れ、ホープ!!」

 

 一筋の光に導かれた希望の皇が再び戦場に舞い戻る。

 

「ならゴッド・ネオスの攻撃をホープに変えるまでだ!」

 

 放たれた7つの光は寸分の狂いもなくホープへと殺到する。

 《エクシーズ・リボーン》の効果により、ホープにはオーバーレイユニットが1つ復活している。

 これがあれば月の盾を使用する事が可能だが。

 

「ぐぅぅぅ!?」

 

 なのだが、あえて遊馬は効果を使わなかった。

 ホープはその手にもつ剣で攻撃を防いで行くが、ダメージはしっかりと発生する。

 これで遊馬のライフはついに350となる。

 瀕死だ。何かあれば即0になるだろう。

 

「……俺はターンエンドだ」

「へへ、今のは効いたぜ……オレのターン、ドロー!」

 

 遊馬とアストラルの視線が一瞬だけ重なる。

 これから何が起こるのか。

 遊里は大体を察していた。

 そうでなければ、わざわざライフを削った理由が見当たらないからだ。

 

「オレはホープをエクシーズ素材としてカオスエクシーズチェンジ!」

 

 希望皇ホープが塔のような姿に形を変えると光になり雄たけびを上げて、上空に駆け上っていく。

 これこそが一番最初のエクシーズチェンジ。

 新たなホープが再誕するのだ。

 

「現れよ、CNo.39!混沌を光に変える使者!希望皇ホープレイ!」

 

 白き鎧は黒が交じり合ったグレーのものへ。

 背中には巨大なパーツが装備されている。

 これこそが遊馬とアストラルが生み出した友情のカード。

 

「ホープレイの効果を発動!オーバーレイユニットを一つ取り除き、ホープレイの攻撃力を500アップさせ相手モンスターの攻撃力を1000ポイント下げる!オーバーレイ・チャージ!」

 

 ホープレイから放たれる混沌の光がゴッド・ネオスを浸食していく。

 オーバーレイユニットの数は2つ。

 それを両方使った事により、ホープレイの攻撃力は3500に上昇。

 逆にゴッド・ネオスの攻撃力は1500へとダウンする。

 

「行くぜ、ホープレイの攻撃!ホープ剣・カオススラッシュ!!」

 

 背中から現れる巨大な剣。

 それがゴッド・ネオスを一刀両断した。

 

「ぐっ、ああああっ!」

 

 必殺の一撃。

 これにより遊里のライフはギリギリ100残る。

 《N・エア・ハミングバード》による地道なライフ回復がなければ負けていただろう。

 

「やるな……!」

「へへ……オレはこれでターンエンドだ」

 

 遊里のライフは100。

 遊馬のライフは350。

 もうお互いに簡単な一撃で倒されるだろう領域。

 決着は近い。

 

「俺のターン、ドロー!」

 

 手札を見て暫く悩む遊里。

 既に終盤。彼も慎重になるのは当然だろう。

 

「かっこ悪いが、ここは守りの手を取らせてもらう。そしてもう1つ、新しい召喚方法を見せてやる!」

「なんだって!?」

『シンクロ召喚の他にまだあるのか!?』

「俺はスケール1の《星読みの魔術師》とスケール8の《時読みの魔術師》でペンデュラムスケールをセッティング!」

「な、なんだ!?」

 

 突如、遊里の上空に2人の魔術師が光の柱に登って現れる。

 今まで見た事がない反応だ。

 これが新たな召喚方法だと言うのか。

 

「揺れろ魂のペンデュラム、天空に描け光のアーク!」

 

 まるで振り子のようなものが空で揺れ動く。

 それは新たな光を生みだしていく。

 

「ペンデュラム召喚!疲れを癒す眠りし龍よ!今ここに目覚めよ!!《オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン》!!!」

 

 遊里の手札から新しく呼び出されたドラゴン。

 これこそエンタメデュエルを行う榊遊矢のエースモンスター。

 

『ペンデュラム召喚……!』

「ああ。ペンデュラムモンスターをペンデュラムスケールと呼ばれる場所にセットし、そのスケールに書かれた数字の間のレベルのモンスターを同時に手札やエクストラデッキから特殊召喚する方法だ」

 

 つまりスケール1とスケール8のモンスターがペンデュラムスケールにセットされている為、レベル2から7までのモンスターを特殊召喚出来るという事か。

 シンクロやエクシーズとも違う新たな方法。

 しかも同時展開できるならば新たな活用方法を見出す事も出来るかもしれない。

 

「とは言っても今、ホープレイを倒す手段がないからな。カードを1枚セットしてターンエンドだ」

 

 オッドアイズは守備表示の体勢だ。

 攻撃力はお互いに2500。相打ちすら出来ないのだから当然か。

 

「オレのターン、ドロー!」

 

 新しいモンスターを出せば勝てる状況だがこない。

 先程から、遊里を倒せるタイミングあるというのに上手くいかないものである。

 

「ホープレイで《オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン》を攻撃!」

「くっ、悪いなオッドアイズ……!」

 

 壁にされた破壊されてしまったオッドアイズに謝る遊里。

 だが時間は稼げた。

 

「オレはカードを1枚セットしてターンエンドだ」

「この瞬間、罠発動!《融合準備》!」

『このタイミングでの罠!?」

「エクストラデッキの融合モンスターを見せて、その素材となるモンスターをデッキから手札に加える事が出来る。俺が見せるのは《超魔導剣士-ブラック・パラディン》。そして手札に加えるのは《ブラック・マジシャン》だ」

「ブ、《ブラック・マジシャン》!?」

 

 遊馬が驚きの声を上げるのは無理もない。

 《ブラック・マジシャン》と言えば伝説の決闘王のエースモンスターとして名高い。

 それを遊里が持っているとは思わなかったからだ。

 

「更に墓地に《融合》がある時、手札に加える事が出来る」

『序盤に落ちていたカードか!』

「そして俺のターン!再びペンデュラム召喚だ!」

「レベル7の《ブラック・マジシャン》を召喚するのか!」

「ふ……揺れろ魂のペンデュラム、天空に描け光のアーク!」

 

 再び天空の振り子が揺れ動くと光に導かれてフィールドに新たなモンスターが特殊召喚される。

 

「王に仕えし、黒き魔導師。いでよ、《ブラック・マジシャン》!!」

 

 初代決闘王、武藤遊戯のエースモンスター。

 古代エジプトの王、アテムの臣下である黒魔導師が降臨したのだ。

 だがそれだけではない。

 

「再び参られよ!世にも珍しき二色の瞳を持つドラゴン。《オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン》!」

「な、に!?」

『馬鹿な!《オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン》は破壊された筈だ!?』

 

 黒き魔導師の横に現れた、二色の瞳を持つ竜を見て驚愕の声を上げる。

 先程、間違いなくホープレイによって破壊されたというのに何故?

 

「ペンデュラムモンスターは破壊された時、墓地ではなくエクストラデッキに戻る!」

『くっ!そうか!ペンデュラム召喚はエクストラデッキからも特殊召喚できるとはこういう事だったのか!!』

 

 一瞬にして理解したアストラル。

 先程、エクストラデッキからも特殊召喚できるという遊里の発言をようやく理解したのだ。

 つまり破壊されても何度でも特殊召喚する事が出来るという事だ。

 

「それって何回破壊しても蘇るって事かよ!」

『だがそれはあくまでペンデュラムスケールがセッティングされている時だけだ。しかしそれを含めてもなんという効果だ……!』

「くぅ!遊里の奴、どんどんオレ達の知らないものを見せてくれるぜ!」

『ふ、君という奴は……』

 

 危機が目の前に迫っているというのに、こんな笑顔を出せる遊馬に苦笑するしかないアストラル。

 だがそれでこそ九十九遊馬という存在だ。

 

「レベル7のモンスターが2体揃っているが……俺の選択する答えはこれだ!魔法カード《融合》を発動!」

「エクシーズじゃなくて融合か!」

「その通りだ!俺はフィールド上にいる、《オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン》と《ブラック・マジシャン》を融合する!」

 

 《ブラック・マジシャン》が《オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン》の上に乗ると、その姿が1つに融合されていく。

 

「神秘の力操りし者、眩き光となりて龍のまなこに今宿らん!融合召喚!出でよ!秘術ふるいし魔天の龍!《ルーンアイズ・ペンデュラム・ドラゴン》!!」

 

 《オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン》の背中に巨大なリングのパーツが加わり、その瞳には神秘の力が宿る。

 これこそが、ペンデュラム召喚の先の答えを探した榊遊矢の新たなエースモンスター。

 

「《ルーンアイズ・ペンデュラム・ドラゴン》はペンデュラム召喚されたモンスターを使って融合した時、このターンの間、いかなる効果も受け付けない!」

「な、なんだって!?」

 

 それはつまりモンスター効果も魔法も罠の効果も受け付けず、止める手段がほぼないという事だ。

 そして遊馬のフィールド上にいるのは攻撃力2500の《CNo.39 希望皇ホープレイ》。

 遊里が融合召喚した《ルーンアイズ・ペンデュラム・ドラゴン》は攻撃力3000だ。

 その攻撃が通れば一撃で倒されるだろう。

 

「だがそれだけじゃない!ルーンアイズは融合素材に使った魔法使い族モンスターのレベルによって攻撃回数が変化する!《ブラック・マジシャン》はレベル7!これによりルーンアイズは3回攻撃する事が出来る!」

『3回攻撃だと……!?』

 

 効果を受け付けないだけでは飽き足らず、3回攻撃もする事が可能とは。

 状況によってはこれを出すだけで一撃必殺になっていただろう。

 背中のリングにつけられた装飾部分に光の球が3つ浮かび上がる。

 

「行くぞ!ルーンアイズでホープレイを攻撃!閃光のシャイニーバーストォォォォ!」

 

 その球の1つの光が最大限に光った瞬間、そこから光線が放たれた。

 狙いはホープレイ。これが通れば遊里の勝ちである。

 

「まだだぁ!罠発動!《ホープ1》!」

「馬鹿なルーンアイズにいかなる効果も受けないんだぞ!」

「こいつはルーンアイズに効果を与える効果じゃない!ライフが0になる攻撃を受けた時、オレのフィールドに存在する希望皇ホープと名のつくモンスターを墓地に送って、ライフを1にして踏ん張る!」

 

 光となったホープレイが墓地へと沈んで行くと、その残された光が遊馬を守る盾のように展開される。

 放たれた閃光の一撃は確かに遊馬に直撃するもダメージはない。

 効果を受け付けない《ルーンアイズ・ペンデュラム・ドラゴン》ではなく、あくまで遊馬自身のライフを1にして身を守るカードという事か。

 なるほど、確かにそれならばルーンアイズ相手にも効果があるカードだ。

 

「食いしばられたか……!」

「へっ、これがオレの最後の希望って奴だ!」

「なら、それを超えて行くぜ、俺は!カードを1枚セットしてターンエンドだ!」

 

 なんとか遊里の怒涛の攻撃を凌いだ遊馬。

 手札は2枚。この手札に遊里のルーンアイズを超える手段は存在しない。

 全てはこのドローにかかっている。

 だが残りのデッキからほんの僅かのカードを引けるかどうかに賭けるしかない。

 そしてそれを可能にする手段はある。

 しかしそれを使っていいものかと悩む遊馬であったが、きっかけを作ったのは遊里であった。

 

「さぁ、遊馬!アストラル!お前達の全力を見せてくれ!遠慮なんて今更気にするなよ」

「遊里……」

「だから、見せてみな。お前達の力を!」

 

 そんな言葉に遊馬はしっかりと目を閉じる。

 数秒後、目を見開くとアストラルに話しかける。

 

「なぁ、アストラル」

『どうした遊馬』

「オレは……遊里に勝ちたい」

『奇遇だな、私もだ』

 

 思いは一緒。

 ならば遠慮なんてしてやるものか。

 

「なら見せてやるぜ遊里!」

『我々の力を!』

「ああ!」

 

 遊馬とアストラル。

 2人が手を繋ぎ合わせる。

 これこそが2人の真の力。

 

「オレと!」

『私で!』

「『かっとビングだー!』」

「来るか!」

 

 2人が光を纏い始める。

 

「オレはオレ自身とお前でオーバーレイ!!」

 

 遊馬は赤き光となり、上空へ。

 アストラルも青き光となり、遊馬を追うように駆け上がっていく。

 

「オレ達2人でオーバーレイネットワークを構築!!」

『絆は進化する!より強く!より硬く!』

「『絆結ばれし時、力と心が1つとなり、光の奇跡と伝説が生まれる!エクシーズ・チェンジ!ZEXAL!!』」

 

 2人がエクシーズチェンジする事により一体化となり、その身に黄金の鎧と翼を見に纏う。

 これこそが2人の最終進化系。

 ZEXAL。

 

「行くぞ!オレのターン!最強デュエリストのドローは全て必然!その光はカードを導く!我が身が放つ一点の光を目指し、来たれ!シャイニング・ドロォォォォ!!」

 

 巨大な光を放ちながらカードをドローするZEXAL。

 ドローするカードさえも光り輝いている。

 

「来たぜ!オレは《死者蘇生》を発動!!」

『蘇れ、No.39!希望皇ホープ!!』

「ホープか!」

 

 何度でもとばかりに蘇る希望の皇。

 それも当然か。

 折れぬ力こそそれは希望となるのだから、その皇ならば1度や2度、倒された程度で折れる筈もない。

 

「そしてオレは《RUM-アストラル・フォース》を発動!このカードは自分フィールド上の一番高いランクのモンスター・エクシーズを選び、選んだモンスターのランクより1、または2つ上のエクシーズモンスターを特殊召喚する!ランクアップ・エクシーズ・チェンジ!」

「最後の切り札か……!」

「限界突破だホープ!!」

 

 天高く飛翔するホープ。

 そしてその周りには4体の影が現れていた。

 《CNo.39 希望皇ホープレイ》、《CNo.39 希望皇ホープレイV》、《CNo.39 希望皇ホープレイ・ヴィクトリー》、《No.39 希望皇ホープ・ルーツ》。

 その全てのホープの鎧が分解され、中心にいる希望皇ホープへと装備されていく。

 これこそが希望皇ホープの最終新化した姿。

 

「現れろ、No.39!人が希望を越え、夢を抱くとき、遥かなる彼方に、新たな未来が現れる!限界を超え、その手につかめ!希望皇ビヨンド・ザ・ホープ!!」

 

 純白の鎧と翼。

 すべてのホープが一体化した姿だけあって、それは神々しい美しさと力強さを感じ取れてる程だ。

 

『行くぞ遊里!』

「ビヨンド・ザ・ホープは相手のカードの効果を受けない!」

「くっ!」

「そしてビヨンド・ザ・ホープが攻撃する時、相手フィールド上に存在するモンスターの攻撃力は0になる!」

 

 ビヨンド・ザ・ホープから放たれる光線がルーンアイズに襲い掛かると、苦痛に悶え苦しむドラゴン。

 当然だ。

 その身に宿す神秘の力の一切が全て失われてしまったのだから。

 これでルーンアイズの攻撃力は0。

 そしてビヨンド・ザ・ホープの攻撃力は3000な上に効果を受け付けない。

 

「これで終わりだ!ホープ剣・ビヨンド・ザ・スラッシュ!!」

 

 両手に現れた3振りずつの剣が頭上で一体化し、その大剣を《ルーンアイズ・ペンデュラム・ドラゴン》へと振り下ろす。

 これが通れば遊馬の勝ちである。

 

「まだ俺も終わらない!罠発動《スピリット・フォース》!このターン、戦闘ダメージは0になる!」

「くっ!」

 

 確かにビヨンド・ザ・ホープの一撃はルーンアイズに直撃し、ルーンアイズを破壊した。

 しかしそこから発生するダメージは遊里の周りに展開された不可視の壁によって防がれたのだ。

 

「本来ならば自分の墓地に存在する守備力1500以下の戦士族チューナー1体を手札に加える事ができるが、俺の墓地にはいないからな回収は出来ない」

 

 《ジャンク・シンクロン》など落ちていれば話は別だったのだろうが、そちらは未だにデッキの中だ。

 

『これでも駄目なのか……!』

「まだだぜ!オレはカードを1枚セットしてターンエンド!」

 

 これで遊馬の手札は0。

 遊里もまた手札は0だ。

 

「……ふ、俺の……ターン!ドロー!」

 

 遊里にとってラストドローになるかもしれないカードをデッキから引き抜く。

 そして遊里は笑みを浮かべた。

 まだ終わりではない。

 

「俺は《貪欲な壺》を発動!墓地の《ダンディライオン》、《カードガンナー》、《アンノウン・シンクロン》、《フォーミュラ・シンクロン》、《クリボー》をデッキに戻してカードを2枚ドローする!」

 

 これで手札は2枚。

 だがこれでも足りない。

 

「更にペンデュラム召喚!舞い戻れ、《オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン》!」

 

 三度、蘇る二色の瞳を持つ龍。

 

「そして俺は魔法カード《七星の宝刀》を発動!フィールド、手札のレベル7のモンスターを除外してカードを2枚ドローする!……すまない、オッドアイズ」

 

 壁役になったりドローする為のコストになったりと散々ではあるが、これで遊里の希望は確かに繋がったのだ。

 

「そして魔法カード《融合回収》を発動!融合素材となったモンスターと魔法カード《融合》を墓地から回収する!そして回収するモンスターは《ブラック・マジシャン》!」

「ブラック……マジシャン!」

「ここまでくれば分かるよな。俺は《融合》を発動!!」

『来るか!』

「黒き魔導師と竜破壊の剣士が1つになる時、それは友情の剣となる!」

 

 黒魔導師《ブラック・マジシャン》と竜破壊剣士《バスター・ブレイダー》。

 初代決闘王、武藤遊戯を支えた伝説のモンスター達。

 それが1つになり、再び伝説が蘇る。

 

「融合召喚!!《超魔導剣士-ブラック・パラディン》!!これが俺の切り札だ!!」

「ブラック・パラディン……!」

 

 《ブラック・マジシャン》に竜破壊の剣士の鎧が装備され、その杖も《バスター・ブレイダー》の剣が融合し一体化している。

 まさしくこれがドラゴンキラーの姿だろう。

 

「ブラック・パラディンはお互いのフィールド、墓地に存在するドラゴン族の数だけ攻撃力を500アップする!俺と遊馬の墓地には5体のドラゴンがいる!」

『つまり攻撃力は5400……!』

「ビヨンド・ザ・ホープを上回った!」

 

 確かにビヨンド・ザ・ホープは攻撃する時、相手のモンスターの攻撃力を0にする効果を持っている。

 だがそれはあくまで自身が攻撃する時、限定だ。

 それに対抗するならば簡単だ。

 それ以上の攻撃力を持ったモンスターで攻撃すればいいだけの話。

 そして遊里はあっさりとそれを叶えたのだ。

 

「遊馬、アストラル……」

「遊里……」

 

 竜破壊の力を得た黒魔導師、《超魔導剣士-ブラック・パラディン》。

 全ての希望を束ねた皇、《No.39 希望皇ビヨンド・ザ・ホープ》。

 それを従えた遊里とZEXALが向き合う。

 お互いが直感で悟っていた。

 この攻撃が全ての決着をつけるだろうと。

 お互い、残っているのは遊里は手札が1枚。ZEXALはセットカードが1枚。

 この1枚ずつのカードで全ての決着がつこうとしていた。

 

「行くぜ!バトル!ブラック・パラディンでビヨンド・ザ・ホープを攻撃!」

 

 竜破壊の剣を振るい、攻撃を仕掛けたのはブラック・パラディン。

 すぐさま6振りの剣を操り迎撃するビヨンド・ザ・ホープ。

 振り下ろされる竜破壊剣を6本剣で押さえ込む。

 だがその攻撃力は圧倒的にブラック・パラディンの方が上。

 その力に圧倒されていく。

 確かにビヨンド・ザ・ホープにはナンバーズでしか戦闘破壊されない効果を持っているが、ZEXALのライフは僅か1。

 ダメージさえ通ればその時点で遊里の勝ちなのだ。

 だがそれを補うのがデュエリストの役目。

 そしてこれがZEXALのラストカード!

 

『罠発動!《聖なる鎧 -ミラーメール-》!』

「それは!」

 

 聖なる鎧がビヨンド・ザ・ホープに装備されていく。

 それは鏡のような鎧は相手を写していく。

 

「自分フィールド上の攻撃表示モンスターが攻撃された時、発動できる!」

『攻撃されたモンスターは攻撃してきたモンスターの攻撃力と同じになる!』

「相打ち狙いか!」

 

 攻撃力3000であった、ビヨンド・ザ・ホープの攻撃力がブラック・パラディンと同じ4900に変わる。

 このままでは相打ち。

 だがそこで活躍するのがナンバーズ特有の戦闘耐性である。

 

「同じ攻撃力でも破壊されるのはブラック・パラディンだけだ!」

「くっ!」

 

 遊馬の言う通りである。

 攻撃力が同じなら戦闘破壊されるのはあくまでブラック・パラディンのみ。

 そうなれば遊里の場は文字通りがら空きになり、次のターンの攻撃で遊馬達の勝ちになる。

 

『そしてブラック・パラディンの効果で無効に出来るのはあくまで魔法のみ!』

「罠なら無効にはできない!」

 

 押されていたビヨンド・ザ・ホープが聖なる鎧の力を得て、ブラック・パラディンを弾き飛ばす。

 上空へと退避したブラック・パラディンはすぐさま魔法攻撃をばら撒くが、その程度の攻撃でビヨンド・ザ・ホープが止まる筈もない。

 ブラック・パラディンよりも高く、高く、空へと飛んだビヨンド・ザ・ホープの剣が1つへと収束していく。

 この一撃こそが希望の光。 

 

「こいつで終わりだぁ!天地神明にオレは誓う!未来をつかむために闘い抜くと!輝け、希望の光!ホープ剣・ビヨンドスラッシュ!!」

 

 そしてブラック・パラディンへと振り下ろされる時。

 2人は見た。

 遊里が笑っているのを。

 その笑みはやりきった時でもなければ、疲れた時に見せるような表情などではない。

 それは勝ちを確信した時の笑みだ。

 そしてそれをすぐに理解する事になった。

 ビヨンド・ザ・ホープの攻撃をブラック・パラディンはその剣で止めたのだ。

 

「なっ!」

『何っ!?』

「俺も攻撃宣言時、こいつを発動していたのさ。速攻魔法《決闘融合-バトル・フュージョン》!俺の融合モンスターが攻撃宣言した時、相手モンスターの攻撃力を融合モンスターに加えるカード!」

「な、なんだって!?」

 

 《超魔導剣士-ブラック・パラディン》がビヨンド・ザ・ホープを捌ききると、その剣に魔力を集中させていく。

 自身の力だけではない相手の強大な力を利用した一撃。

 

「そして俺の《決闘融合-バトル・フュージョン》の発動に対して《聖なる鎧 -ミラーメール-》した事になる。つまり先に攻撃力が上がるのはビヨンド・ザ・ホープ。そしてその後にその力をブラック・パラディンが吸収する!」

 

 チェーンの処理により、《聖なる鎧 -ミラーメール-》でビヨンド・ザ・ホープの攻撃力がブラック・パラディンと同じになり、その後にブラック・パラディンの攻撃力はビヨンド・ザ・ホープの攻撃力を足した数字になる。

 その結果、ビヨンド・ザ・ホープの攻撃力は5400。

 逆にブラック・パラディンの攻撃力は10800となったのだ。

 

「これで本当に終わりだ!《超魔導剣士-ブラック・パラディン》の最後の一撃!」

 

 剣に蓄えられた魔力が一気に放出される。

 これが最後の一撃。

 

「超・魔・導・烈・波・斬!!!」

 

 全てを切り裂く最後の一撃。

 それがまさに炸裂したのだ。

 勝者……青山遊里。

 

 

 

 

 

「……負けたかぁ」

「勝ったぜ」

 

 道路に遊馬と遊里が倒れこむ。

 長いデュエルだった。

 だがそれは2人に達成感と程良い疲れを与えていた。

 

「……なぁ、遊里」

「んー、どうした遊馬?」

「デュエルって……楽しいな」

「……ああ」

 

 偽りのない気持ち。

 本当に楽しかった。

 

『しかしZEXALまでして負けるとは……我々もまだまだだな遊馬』

「ああ。オレ、もっと強くなる!そして遊里、お前に勝つぜ!」

「いつでもかかってきな」

『どうやら時間のようだ』

「え?」

 

 アストラルの言葉に驚くように起き上がる遊馬。

 気がつけば、周りのビルがゆっくりと消え始めているのだ。

 まるでデュエルが終わるのを待ってから消えて行くようにも感じられる。

 

「そうか」

「ま、夢は覚めるもんだから仕方ないさ。明日、また会えるだろ」

「そうだよな」

 

 だが会えるのは遊馬と遊里だけ。

 アストラルは元の世界に戻っているだろう。

 事実、アストラルの体もまた少しずつ消えていく。

 

「アストラル」

『どうした遊里?』

「またな」

 

 そんな遊里の言葉に驚くアストラル。

 またな。

 それは再会を願う言葉。

 それをかみ締めるように目を閉じると、アストラルもまた返した。

 

『ああ、まただ。……遊馬』

「おう」

『また、どこかで会おう。我々は繋がっているのだから』

「ああ!オレ達はいつだって一緒だ。たとえ離れていてもきっと!」

『ああ!』

 

 こうしてアストラルの姿は消えていった。

 元の世界に戻ったのだろう。

 そして次は遊馬の番だ。

 

「遊里」

「ん」

「また明日な」

「おう」

 

 たったそれだけ言葉を交わす。

 いや、気持ちいい音が鳴り響き。

 2人がハイタッチをした音だ。

 そして遊馬もまた消えていった。

 残されたのは遊里のみ。

 

「……いるんだろ、カミサマさん」

 ――気がついていましたか。

 

 遊里が振り向いた先にいたのはぼやけて輪郭がうまく見えない誰かがいる。

 声質からすると女性だろうか。

 

「ありがとうよ。あの2人とデュエルさせてくれて」

 ――礼には及びません。それが貴方との契約でしたから。

「覚えてないんだけどねぇ、俺」

 

 カミサマの言葉に困ったように呟く遊里。

 

「……んじゃとっとと回収してくれ」

 ――……いらないのですか?

「ああ」

 

 遊里の言葉に驚いた様子を見せるカミサマ。

 一体何を回収するというのか。

 

「俺はいらないよ。『望んだカードをドローできる力』なんて」

 

 そう。

 これこそが遊里が感じ取っていた違和感。

 遊里が持っている筈のない力。

 

 ――ですがそれはあの世界の人々なら当たり前に持っているもの。これを手に入れて初めて貴方もあの世界に馴染むのですが。

「でもそれを持ったら、もう俺のデュエルはできない」

 

 遊戯王世界の住人が当たり前のように持つ力。

 でなければあんなハイランダーなデッキを回せる筈もない。

 だけどいらない。

 青山遊里にはいらないのだ。

 

「確かに今のデュエルはアニメみたいでかっこよかったし、楽しかった。でもあれは俺のデュエルじゃないからな」

 

 青山遊里に望んだカードをドローする力なんてない。

 だけどそれが当たり前で普通なのだ。

 今更、そんな力を貰っても困るだけ。

 あんなのはアニメだけで十分だ。アニメ世界にいるが。

 

 ――そうですか。わかりました回収しますね。

「おう」

 

 遊里の体から光の球が抜け落ちてカミサマの元へと戻っていく。

 これで遊里はいつものへっぽこドロー力に戻った訳だ。

 

「……さっきの街は東京か」

 ――はい。

「そっか……」

 ――元の世界に戻る事も可能ですが。

 

 カミサマのそんな言葉に遊里は目を閉じる。

 元の世界に帰れる。

 それは確かに魅力的だろう。

 だけど。

 

「待ってる人がいる。だから俺はここで生きて行くよ」

 ――そうですか。

 

 遊里にはなんとなくカミサマが笑ったような気がした。

 

 ――体に気をつけて。

「ああ、ありがとう」

 

 それだけ言葉をかわすと遊里も夢の世界から帰っていった。

 今、帰るべき場所に。

 

 ――頑張ってください、ね。




最後の決闘。

シンクロやペンデュラムを使わないとは一度も言っていない。

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20141118 文章修正
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20150914 誤字修正
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