乾いた破裂音が三度鳴る。腹部に熱を感じ、全身から力が抜けた。腹部からは夥しい量の血液が流れ、それは皮膚を伝って血溜まりを作っている
手は酷く震えていて、これではまともに標準も合わせられないだろう
素早く判断を下し、手榴弾のピンを口で抜き、発砲音が聞こえた方向に発煙弾と共に投げる
数秒後、爆発音と共に心地の良い悲鳴が耳に届くが、視界はとうに目の前の情景を写していなかった
傷口から熱を感じる。血は今も止めどなく流れている。さて、追手はとりあえず凌いだ。今は一刻も早くこの場を離れなければ
壁を伝い、立ち上がろうとするが身体が言うことを聞かず壁に背を預け、座り込むだけで精一杯だった
頭に鈍い痛みを感じる。身体が痺れてしまったように言うことを聞かない
ここまでの事が起きて、これほどまでに悪化して漸く、私は自分に這い寄る死を認識した
実につまらない人生だった。私のこれまでの人生を表す物語は、どれだけ言葉をかき集め、飾り付けてもなお、たかが400文字の用紙一枚に収まってしまうほどに、それ程に薄っぺらい人生だった
死に際には走馬灯が視えると聞いた事があるが、私の目にそのような情景は一切浮かんでこない
同僚が語っていた事とは言え、確証があるわけでもなく、証明されている訳でもない。所詮は噂という訳か
期待の割に呆気ない物だ。何もない人生から、何もない事自体が無くなる。そこには対した感情も浮かんでこない
血液は止めどなく流れている。死はもうすぐそこまで近付いてきている。にも関わらずそれに感傷的に怒ったり、泣いたり、絶望したり出来ていない自分は、やはりヒトとして失敗作なのだろう
本を読むのは好きだった。ここではない何処かへの夢想。現実逃避は実に甘美な味がした
その中でも私は、ライトノベルなんかを好んでいた。本を貸してくれる友人に影響を受けたのかもしれない
死後、転生というプロセスを踏む事で新しい人生を。何もかもが新鮮で幸福な人生を歩む内容の物のような幸せな物語の主人公に感情移入し、現実逃避から生じるズレに吐き気を覚えて生きてきた
スポーツも賭博も、少しでも興味を持ったものはなんでもやってきた
それなのに、私は未だ何一つとしてわかっちゃいない。馬鹿か輩と同一で、無理解であるのだ。いや、馬鹿の方がまだマシかもしれないな
意識が遠退く。生きようと足掻く気力は残されていた。ただ意志が、感情が足りなかった
魂が堕ちていく。奈落へと、底へ底へと堕ちていく
──チャンスを与えよう
声が聞こえた。何処からではない。声を、焼けるような痛みと共に、言葉が脳に書き込まれる
──君次第だ。上手く使うと良い
何かが身体に捩じ込まれる。抵抗する事は出来ない。身体は既に私の支配を脱している
──都合の良い妄想に身を浸した。その末路を見せておくれ
血は止めどなく流れ続けている。生ぬるい血液が衣服を濡らし、私の大切な宝を汚していく
黄金で出来ている訳でもなければ、何かしらの特異性が備わっている訳でない
何処にでも居る、たった一人の少女が作った。世界に一羽だけの折り鶴だ
だけどもそれは、私にとってはなによりも大切で、替えがたい、かけがえのない至上の宝であって、間違ってもこんなドブネズミの血液で汚れて良い代物ではない
身体は動かない。既に肉体は死んでいる。肉は腐り、骨にはヒビが入り、身体がポロポロと灰のように崩壊してゆく
身体は動かない。右腕の肘から下はもう存在しない。それは左腕も同様だ
身体は動かない。だからと言って──
──諦めて良い理由にはならない
「……ぁあ………ッ…………」
声帯は存在しない。故にそれは魂の叫びだ
力を使う。つい先程得た力を。その力は三つの願いを叶える力だと、本能的に理解していた
願う。ただひたすらに、世界を歪めてしまうくらいに強く願う
至高の宝を汚さないように。誰にも奪われないように。その美しさを、永遠と保ち続ける為に
願いが形を得る。宝は姿を消し彼の元に還る。彼が一つ、願った通りになった
満足そうな笑みを浮かべ、青年は、生きた証を残さず、灰と化してこの世を去った
第一層フロアボス攻略後の展開について。階層スキップして二十五層のクウォーターポイントの話から赤鼻のトナカイやら圏内事件の流れに入ろうかと思うんですが、二十五層までの主人公の話は冒頭でさらっと開示するだけで良いですか?
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いいよー
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駄目だ。一話分使ってちゃんと書け
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作者に任せる