部位欠損の異常状態にはいくつかの特徴がある
一つ、欠損した部位の面積に応じた分のHP総量の減少
二つ、欠損した部位を使用する行動は動作に制限がかかる
ソードスキルなんかもモーションに使用する部位、例えば両腕が切り落とされてしまえば、剣は振るえない。勿論、ソードスキルも使用不可となる
三つ、部位欠損は安全地帯の即時回復効果等の一部例外を除き欠損した部位の耐久値がゼロになる事でのみ回復する。対応する結晶や回復アイテムは一切存在しないのだ
プレイヤーの場合はステータスに応じて耐久値が上昇する為、五分もすれば再生していた
実験に使ったのが低レベルプレイヤーの為、サンプルに偏りがあるがある程度の予想は出来る。例えば攻略組プレイヤーであれば、腕を切り落とされても大抵の場合、二十分もすれば部位欠損は解消されるだろう
なのでフロアボスのHPの削れ具合から推測し、再生のタイミングを予測していたのだが、どうやらわたしと攻略組のメンバーとの間には認識の差が存在していたらしい
攻略組メンバーにとってモンスターの部位欠損とは治ることのない異常状態であり、部位欠損とは安全地帯に戻る事のみでしか治療出来ない異常状態だったのだ
そう勘違いしてしまうのも無理はない。モンスターの腕を切り落とし、その腕が再生するまでの間には致命的な隙が生まれる
その間にモンスターを倒してしまえば、切り落としたモンスターの腕が治るなんて。思いもしないだろう
ベータテスターであれば知っていそうなものだが、現在ベータテスターは悪意を向けられる対象にされている。わざわざ自身の命を危うくしてまで大勢を助けようなんて馬鹿な考えをする人間は流石にいなかったらしい
「全く、世話が焼けるな」
コボルトロードの手にする刀にソードスキル特有のエフェクトが発生する。しかしその構えは片手直剣スキルのものではなく、攻略組メンバーの使用していた曲剣スキルのものにも該当せず、全くの未知のソードスキル
ああもう、対応が面倒だ。さっきみたいにパリィ出来れば良かったけどコレは無理そうだし、仕方ない
武器を投げ捨てコボルトロードへと駆け、迫る。メニューを開き、ストレージから愛用の短剣を選択。クイックチェンジを習得しておけば良かったと後悔しつつも、ソードスキルを起動するため、モーションを起こす構えを取る
短剣スキル、斬属性 単発技 ラピットバイト
空中へと飛び上がり、ソードスキルの促進力に身を任せ、コボルトロードへと差し迫る
「ディアベル! 」
ソードスキルの標的はディアベルだ。攻撃がヒットした瞬間、強烈なノックバックが発生し、ディアベルは危険地帯を脱出。お、何とかキリトが受け止めてくれたらしい
しかしディアベルを攻撃したのにカーソルがグリーンのままなのは不自然だっただろうか? 【隠蔽】【隠匿】【詐称】【偽装】のスキルのおかげでカーソルは緑のままだが、これを解除するにはウィンドウを開く必要があるので、手間がかかるし、解除したところでカーソルのカラーは先程の罪と釣り合わない程に赤黒くなってしまっている
しかしどうしようか。僅に動かせる指でカーソルの件は解決できたけど、迫るコボルトロードのソードスキルは凌げそうにない。あと三秒で硬直も解けるし、一撃だけ受けて逃げようかな
「逃げろ! そのソードスキルはスタン属性付きだ! 」
キリトから情報を何とか聞き取ったが時既に遅し、回避する事も出来ず全ての攻撃を受けたわたしは衝撃で攻略組の方まで吹き飛ばされてしまった
しかしHPが七割も持っていかれるとは思わなかったな。回復薬も全部アスナにあげちゃったし、一応回復手段は無いことは無いけど
「ジブン大丈夫なんか!? ええくそ、ちょっと触るで! 嫌でも我慢してや! 」
なかなかスタンが解けずに動けないでいると、トゲトゲ頭のプレイヤー──確か名前はキバオウだったか──がわたしを担ぎ上げてくれた。どうやら後方へと退避させてくれようとしてるらしい
【戦闘時回復】の回復量では当分危険域を脱せそうに無かったので正直ありがたいが、どうやらわたしはコボルトロードのヘイトを稼ぎすぎていたらしい
刀を振り回し、アスナの指揮する攻略組のタンクを吹き飛ばしたコボルトロードの目は、間違いなくわたしを睨み付けていた
瞬間、コボルトロードが三度、大振りに刀を振るう。すると刀の軌道上に斬撃が発生、こちらへと向かってきている
当然、キバオウのレベルでは飛ぶ斬撃を避けきる事は出来ず全て命中。しかしHPの減少は残り一割の所で収まっていた
「無事かいな…ほんなら良かったわ、無理した甲斐もある」
斬撃の衝突する際に、身を挺して肉壁となり、わたしを護ってくれたらしい。そのせいかキバオウのHPは数ドットまで減少している
ボス戦中に殺したルイン・コボルト・センチネル達のお陰てあと一体適当なプレイヤーを殺せば、わたしはレベルアップによりHPを全回復出来る
つまり、わたしはこのまま瀕死のキバオウを殺せば安全に、余裕を持ってフロアボスを討伐することが出来る。それにフロアボスに気を取られて誰もわたしを見ていない
しかし黒鉄宮の蘇生者の間にある生命の碑には死因がしっかりと記載される為、フロアボスの攻撃によりキバオウは死んだと嘘をついたとしても死因はプレイヤーキルと表示されてしまう。そうなれば真っ先に疑われるのはわたしだ
ならここは一つ、曲がりなりにもわたしの事を身を挺して護ってくれたキバオウに恩を返しておこうか
「キバオウ、ありがとう。助かったよ。これはそのお礼だ」
スタンの解除された肉体を軽く伸ばしながらストレージから一つの結晶アイテムを取り出し、キバオウに使用。直後キバオウのHPは危険域を脱し、一瞬でMAXまで回復した
「じ、ジブンこれなんや!? 一瞬で回復してしもうたやんか! こんなええもんがあるならはよ使わんかい! 」
「あーごめん。それ一つしか持ってなくてさ」
というかいきなり興奮しないで欲しい。ディアベルは無事のようだが、指揮はアスナがしているようだし前線にはB隊と 隊のメンバーが見えるが、何人かは何処かへと逃げ去ってしまっている。あれでは前線はほぼキリト一人で維持しているような物だ
【戦闘時回復】のスキルによって既にわたしのHPは全体の三割まで回復している。コボルトロードのHPも残り少ないし、わたしも戦線に加わるかな
「じゃ、わたしは前線に戻るから」
キバオウが何か言っていたような気もするが意図的に無視し、私は一先ず、全体の指揮をしているアスナの方へと向かう
「やっほ。順調? 」
「そんな訳無いじゃない! 見ればわかるでしょう!? リーダーは自身を無くしたなんて言って指揮を変わってくれないし! そもそも何でわたしが」
「だってそう言うの得意そうだし。少なくともキリトよりは…ってそれより、状況は? 」
「正直あまり良くはないわ。今のところキリトくんのお陰で何とか皆無事だけど…」
「最初の死者が出るのも時間の問題、よし。手早く済まそうか。アスナ、行くよ」
一瞬ポカンと呆けた面をしたアスナの手を引っ張り、キリトと合流するために前線へと駆ける
「ちょっと! なにを…」
が、何故かアスナはわたしの手を振りほどき、立ち止まってしまう
「決まってる。これ以上戦闘が長引けば攻略組が無駄に数を減らしてしまう。彼らは階層を進む上で貴重な戦力だ。数が減るのは好ましくない。なら話は簡単じゃないか」
温室育ちの甘ちゃんにはここまで言わないとわからないか。これだからガキは嫌いだ
「戦闘が長引けばロスが生じてしまう。ならとっととフロアボスを殺せばいい。わかった? 先行くよ? 」
言葉を残し、私は一足先に前線へと全速力で向かった
第一層フロアボス攻略後の展開について。階層スキップして二十五層のクウォーターポイントの話から赤鼻のトナカイやら圏内事件の流れに入ろうかと思うんですが、二十五層までの主人公の話は冒頭でさらっと開示するだけで良いですか?
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いいよー
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駄目だ。一話分使ってちゃんと書け
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作者に任せる