生まれは裕福な家庭だった。父は医者で、母は看護師。典型的な職場恋愛の末に結婚したらしい。いわゆる医療一家だ
齢七歳になった私は、父と母からの愛を受け、命の危険などない、安全で緩やかな毎日を過ごしていた
小学校という学舎で未だ自己を確立出来ていない幼子と遊びに興じるのは詰まらないことでは無かったし、しかしながら心の底から楽しいと思えた訳でもなかった
本を読んでいるのもお構い無しに腕を引っ張ってくるガキは居るわ急に泣き出す奴等には手を焼かされる
生まれ変わってからの七年で平和に毒されてしまったのだろうか。そもそも、生まれ変わりは本当の事なのか。見知らぬ誰かの記憶を引き継いだ全くの別人である可能性は無いのか
迷いはまだある。後悔も山のように積み上がっている。その麓で私は生きている
彼女の残した折り鶴を取り出し、机の上に置いて眺めながら彼女の事を想う
今や彼女の残してくれた物はこれだけだ。彼女を感じられる物は世界でこの一つしかない
ふと、それに気付いてしまうと、途端に寂しくて、空しくて、彼女に会いたくなって、もう二度と会えないと自覚する。私自身の所為だと、自覚する
教室に設置されている時計を見てみると授業が始まる2分前を指していた。私は折り鶴を収納し、小学校低学年に相応しいレベルの授業を受ける準備を始めた
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チャンスを与えようと私に力を与えた存在は言っていた。願いを三つ、叶える力
発動キーは強く願う事。私は既に一度、過去に一つ願い力を得た。その力にはこれまでに何度も助けられてきたが、残り二つの願いが問題だ
一体何を願えば良いのだろうか。真っ先に思い浮かぶのは死者蘇生。彼女を甦らせる事
会いたい。たった一つの感情は削ぎ落とす事が不可能なくらいに私に絡み付いている。未だその感情から、手を離せずにいる
声を聞きたい。目を見て話をしたい。また夢を語って欲しい。愉快で痛快な作り話で笑わせたい。言葉を聞きたい。彼女の憧れた世界は、実は薄汚く、汚れきった世界だったんだと。教えてみたい
ただ、ただ、彼女が健康に、健やかに、快適に。何も不自由なく生きてほしい。生きていてほしい
あんなワンルームの窓のない室屋に閉じ込められるていた彼女だ。外に対する渇望はかなりの物だろう。それを私が、叶えてあげたい
そうだ。そうしよう。それなら私でも願える筈だ。そこまで考え、思考が覚める。脳が己の身勝手を自覚させる
それは彼女に対する冒涜なのではないだろうか。安らかな死とは言いがたい死であっても、静かに目を瞑る死者の眠りを妨げる事など、果たして許されるのだろうか
否、否である。許される訳がないじゃないか
本日何度目かの溜め息を吐きながら、私は折り鶴を手のひらの上でゆらりゆらりと揺らす
周りの人間達はつい六年前までは訳もわからぬ赤子同然のガキだったと記憶しているが、今現在はどうか
周りの人間達は皆男女の違いはあれど、統一された制服に身を包んでいる
通称、学生服というやつである。かくいう私も同様に学生服を身に纏い将来の為になると噂の勉学に励んでいる訳だが、特にこれといった悩みもなく、問題などありもせずに、ただただ普遍的な、普通の毎日を送っている
忘れる訳がないと思っていた彼女の声も、今ではすっかり記憶の向こう側へと消え去ってしまっていた
それでも、もう会えないのだろうと諦めたフリをしつつも、未練がましくこの折り鶴を後生大事にしているのは、それはやっぱり、私はまだ諦めきれていないという事なのだろう
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世間一般の皆々様が青春と崇め奉る時間もそろそろ終わりを告げる頃だった。高校生活が始まったばかりでこんな事を言うのも無粋であるが、三年などはすぐに過ぎ去る程度の年月である
そんな私の考え方が気に入らなかった連中が居たらしい。公言している訳ではなかったが、彼らにしか感じられない何かを感じたのだろう。それが彼らの気に触ったらしい。
校舎裏に連れ込まれ、集団から殴る蹴るの暴行を受けたのは一度や二度じゃない
そしてとうとう、今日この時に、彼らは一線を越えた
「なんとか言ったらどうなんだぁ? あぁ!? 」
あぁ、よく吠える人間だ。金がなかったのだろう。理性を二束三文で売り払ってしまったらしい
「なんとか」
引き締まっている訳ではないが、弛んでいる訳でもない肉体は人並みの運動をしている者達なら誰しもが持ち得るものだった
「舐めてんじゃねぇぞゴラ! 躾てやるよ! 」
故にそれから放たれる殴打は用意に見切ることが出来たが、残念な事に私の両手を取り押さえられている
結果、拳は勢い良く私の顔にクリーンヒットした。いや、文句の付け所は山程にあるけど
歯は折れていないようだが、口を切ってしまったらしい。口の中に鉄の味が充満する。相手は私が口から血を流しているのを見てニヤついている
「んぁー血の味。苦くて苦手なんだけど」
「お前のそのすかした態度が気に食わねぇって言ってんだよ。大体教室で年がら年中
さて、どうしてやろうか。現在地は校舎裏。監視カメラ設置されていない。だからこそこの場に私を連れ込んだのだが、それが命取りになるとは、まさか相手は思っちゃいないだろう
相手の数は三人。皆、ただの不真面目な学生であり、小銃や刃物を隠し持っている素振りは無い。もしかしたらカッターナイフくらいは持ち歩いているかもしれないが、あんなものを用いて素人が事を成すのは難しいだろう
私の教科書等が入った通学カバンは取り上げられているが、私には一つ願い、手にした力がある
状態変化の発生しない異空間に物質を収納し、取り出す能力。指定できる物質は最大十個までだが、これがなかなか使い勝手が良い
なんてファンタスティックで奇天烈な力だと指を指して笑う輩は居るだろう。気が狂ったか妄想癖と気味悪がる者も居るだろう。だが事実である
前世では命よりも大事な折り鶴を護る為に能力を使ったが、偶然巻き込まれてしまったのか、折り鶴以外にも身に付けていた物を此方側の世界にいくつか持ち込んでいた
「残念だ。死体を処理するのもタダじゃ無いってのに。手間だってかかるし面倒だし」
口から血をだらだらと垂れ流し、ぐたりと両手を拘束する二人に体重を任せた私が言った言葉は、実に滑稽に聞こえたのだろう。負け犬の遠吠えに聞こえたのだろう。自分を害する獣の声だとは、霧程にも思える筈がない
「…まぁ仕方ないか。君らには死んでもらうよ」
人間は、生物は侮っている相手に警戒することが出来ない。それが命取りなのだ。それこそが欠陥たる所以なのだ
私は右手に大型のサバイバルナイフ──一般的にマチェットと呼ばれる物に酷似した形の特注品──を出現させ、手首を捻り、私の腕を掴んで拘束していた人間の首の側面を斬りつける
大型のサバイバルナイフは三層の断層を容易に切断した
おやおや、情けない瞳には動揺の色が浮かんでいる。左手を拘束されたままだと面倒だ。大型のサバイバルナイフを逆手に構え、左手を拘束していていた人間の喉仏を掻い潜るように直線に突き刺す。
二人死んだ
残るは私に対して先程まで殴る蹴るの暴行を行っていた人間のみだ
震える手で携帯を操作している。誰かに助けを求めようとしているのだろうか? 警察でも呼ぼうとしているのだろうか?
それは困る。とても面倒だ
腰が抜けているのか地べたに座ったまま動けないでいる人間から携帯電話をその手ごと蹴り、携帯電話を破壊し、それを、わざわざ拾い上げて返却する。この後の工程を行うためにこれは必須である
「なんだよ、なんなんだよお前! 俺達が何を……」
「恐喝に暴行、私に行っていたのはそれくらいだけど、それ以外にも、私の以外の人間にも同じような事をしていたんだろう? 」
勝手な想像だ。先入観に満ちた偏見だ。それは今回、的を射ていた
「だからって……殺すことはないだろうが! 犯罪者、この犯罪者! お前は最低の糞野郎だ。この人殺しが! 」
「あいや、勘違いしないで欲しいのだけど。そんなしょうもない事で怒っている訳じゃあないんだよ」
これから死ぬ人間であるが、この世には転生なんて摩訶不思議なシステムも存在しているくらいだし、万が一、億が一もう一度彼が生まれ変わる事も考慮して死因くらいは教えてやろう
「ただね、君は私の大切な、大切な折り鶴を奪おうとしたよね? だから君らは死ぬんだよ。あぁ、既に二人死んでいたね。あれはジョークという事にしておいてくれ。ユーモアに溢れているだろう? 」
もっとも、三人の死体は私が処理する為。この
「さて、もうすぐ君は死ぬ訳だけど。今、どんな気持ちだい? なぁ、教えてくれよ」
大型のサバイバルナイフを弄びながら十秒を数え、最後に残った首を落とす
Congratulationと脳内でファンファーレが鳴る。ゲームクリアだ。敵性エネミー三体の討伐。これだけの事をやって報酬は不自由で大切な者が欠落した毎日なのだからままならないものだ
私は手早く三つの死体を収納し、痕跡を残さぬようにその場を立ち去る
髪の毛くらいは落ちているだろうが、地面に散った僅かな血痕を踏まないように気を付ければ言い訳などいくらでも出来る
学校から煙たがられていた問題児が三人非行に走り何処かへと失踪しただけなのだから何も問題は無い。これでも一応、成績は優秀な方なのだ。教員は成績の良い生徒を無意識に優遇する
それに殺した三人は家に帰らず夜遊びをしている事もあったようだし、二、三日の間で死体の処理を済ませておけば良いだろう
早速死体を溶かす準備を始めよう。その前に次の授業の準備をしなくては。次の授業は体育だったかな
私は急ぎ教室に戻り、次の授業の準備に取りかかった
第一層フロアボス攻略後の展開について。階層スキップして二十五層のクウォーターポイントの話から赤鼻のトナカイやら圏内事件の流れに入ろうかと思うんですが、二十五層までの主人公の話は冒頭でさらっと開示するだけで良いですか?
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いいよー
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駄目だ。一話分使ってちゃんと書け
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作者に任せる