現実世界での肉体の管理は茅場晶彦の連れの女が行うらしいが、茅場が頑なに顔合わせを拒んだ為、名前だけしか知らない
神代凛子。茅場が言うには体内に爆弾を仕込んでいるらしく、現実世界側の問題で私と茅場とのゲームが中断される事は絶対に無いとの事。自爆覚悟で私達を殺しに来る可能性は零ではないが、その程度の不安要素は捨て置くべきだ
「さて、場合によっては最後の会話となる訳だか、なにか言いたいことはあるかね」
ナーブギア越しに茅場の顔が見える。ベットで楽な体制を取っている所為かその身体は大きく威圧的に見えた
越えるべき壁だ。壊すべき壁だ。彼女のが心の底からの救われる為の、たった一つの道を作る為の挑戦である
「手早く殺してやる。完璧な治療法をとっとと完成させておけよ」
楽しみにしているよと笑う茅場を横目に、私は異世界への渡航権を行使する為の
「リンクスタート」
一分一秒たりとも無駄には出来ない。時間との戦いだ。己の限界との戦いだ。今度こそ、今度こそ彼女を救う。その為の闘争だ
戦争を始めよう。茅場晶彦。私はお前が思っている程、甘くは無いんだぜ
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前の持ち主が行っていたであろう初期設定をやり直し、ステータスを割り振り、スキルを選ぶ。名前なんかに拘る時間が勿体無いので、プレイヤーネームは前の持ち主のものを流用させて貰う
デスゲームは既に開始されている。が、数日程度の遅れは実はそれほど大きな問題ではない。原作では浮遊城アインクラッドの第一層は少なくとも1ヶ月間は攻略されない
長い停滞の時期だ。既にロスが発生している以上、多少無理をしてでも攻略を進める必要がある。その為にも先ずは私自身の強化を進めなければ
ストレージから
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街を出てすぐの平原にスポーンするモンスターはフレンジー・ボアの一種類のみである。奥に進むと蜂やら狼やらコボルト等も出現するが、この辺りにはレベルは一から五のフレンジー・ボアと
身体を解しながらプレイヤー達を観察する。平均レベルは四から五前後、十二人で集まって盾役と攻撃役に別れているようだが、連携なんて取れちゃいない。突けば崩れる、寄せ集めのパーティーだ
舌舐りをしながら目線を這わせる。もし誰かに見られていたら気味悪がられらるかも知れないが、癖だ。ある種のスイッチを入れる作業とも言える
プレイヤーを殺害する事でデメリットもいくらか発生してしまうが、今回はそれを遥かに上回るリターン、旨みが多きい。最初の獲物はアレにしよう
初期装備の短剣は刃渡りは七寸程の長さ。使い慣れたものよりも三寸程短い為、間合いの管理に気を付けなければいけない
さて、
深呼吸をして呼吸を整える。ターゲットを一人一人視認し、所持している武装、攻撃、防御、回避の傾向を確認する
最低限の傾向を確認しているのとしていないのでは大きな差が生じる。準備不足で苦渋を舐めるのはもう懲り懲りだ
効果があるかわからないが姿勢を低くして、【
一人の背後に素早く忍び寄り、喉笛を切り裂き、続けざまに腹部を四度斬り込み、勢いを載せた蹴りを入れ、仲間の方に突き飛ばす
「イッツ、ショウタイム。なんてね」
唖然とした表情で硬直したままのプレイヤーの顔面を三発殴り、地面に押し倒し、心臓を四度突き刺す。青いフラグメントとして大気中にプレイヤーが拡散した瞬間、私のカーソルはオレンジに染まった
これで犯罪者プレイヤーの仲間入りである。いや、現時点ではオレンジカーソルなど私一人だけかも知れないが
カーソルの変化を確認した後、素早く立ち上がり近くに居た盾役のプレイヤーの両足と右腕を切り裂き、ついでに通りざまに何人かのプレイヤーに適当な斬撃を与え、距離を取る
「なんでだよ……なんでなんでなんで!! 俺が何をした!? なんでこんな……あぁあぁああああ!! 」
「待てって! 俺は敵じゃない! 俺はモンスターじゃない!! 嫌だ嫌だ嫌だ! 」
癇癪を起こしたプレイヤー達の声量が
「三割が五人、五割が八人。八割が二人か。案外紙耐久が多かったな。もしかしてMMO初心者だったりしたのかね」
かくいう私も実際にこういったゲームをプレイするのは初めてなのだが、私にはあった事前知識が、彼らには無かった
たったそれだけの差だ。それだけで彼らは今、命の危機にさらされている
このまま放置していてもフレンジー・ボアが後片付けをしてくれるだろう。しかしそれでは私に入る経験値の量が減少してしまう
「あがっ!? 苦しい苦しい苦しい!! 」
開きっぱなしの口に短剣を捩じ込み、首を絞める。本来なら意識を保てないくらいの痛みと、発声など行えない程の致命傷を与えた筈だが不思議な事に獲物は意識を保ち、悲鳴を上げている
ダメージ量はかなりのものだが、現実的に考えればこれはあり得ない事だ。肉を内側から斬られる痛みがこの程度である訳がない
もしかしたらこのゲームの中では痛覚を軽減するようなシステムが存在するのかもしれない。痛みに慣れていないプレイヤー達への配慮だろうか?
直接的な痛みが与えられなくとも、苦しめる方法はいくらでもあるというのに。やはりこの世界は欠陥品である
片手直剣使いのプレイヤーの斬撃を避け、手首を掴み関節を壊す。ふむ。ダメージ量は変わらないが、敵を無力化する時には使えそうだ
骨をへし折ってもポーションと僅かな時間で回復してしまうのはやはりゲームバランスを保つ為か
接近していた大柄な戦鎚使いのプレイヤーが勇敢にも正面から戦鎚を振り下ろし攻撃を仕掛けてきたが、大柄なプレイヤーでも小柄なプレイヤーでも、ダメージ量に違いはない事は検証済みである
私は無駄な動作が多いまま振り下ろされた戦鎚をパリィし、無防備なその両腕を切り落とした
「ああああ! 俺の、俺の腕が! ちくしょうちくしょうちくしょう!! ああああ!! おい、その回復ポーション、俺に飲ませてくれ! 」
両腕の切断による部位欠損の効果はHP最大値の現象と、一定時間の持続ダメージ
それにより戦鎚使いの彼は回復をする為にメインメニューを開き回復ポーションを取り出すことが出来ないまま、ジリジリとその命を死へと近付ける
「お、おい! 早く渡せ! あぁクソ。……HPが危険域なのはお前にもわかってんだろ? お前は俺を殺すのかよ!」
「黙れ! お前なんかに渡すわけ無いだろうが! 俺だってまだ死にたくねぇんだよ! 」
曲剣を構えたプレイヤーが、両腕を欠損したプレイヤーを蹴り倒し、私と真逆の方向へと駆けだした
どうやら仲間割れが起こってしまったらしい。戦鎚使いのプレイヤーを囮に自分はこの場から逃げ去るつもりのようだが、一匹でも逃がせば次の狩りがやりずらくなる
良くない。それは非常によろしくない
私は短剣を投擲し背を向ける曲剣使いのプレイヤーの左足を切断。眼球を二度、突き刺し捻る。案外紙耐久だったらしい。曲剣使いののプレイヤーはそれだけでフラグメントと化し消滅した
戦鎚使いのプレイヤーも持続ダメージで瀕死の状態、HPも僅か数ドットしか残っていない
すっかり覇気を失い、ひどく怯えた様子の大男には抵抗する意志が残っていない。首に短剣を這わせ、処理を済ませた
さて、各部位に与えるダメージ量の測定は大雑把にではあるが完了した。プレイヤーの残数は二人余裕をもって作業を終えられて良かった。後は残りを片付けるだけだ
脳内麻薬が過剰生成されているのが感じ取れる。やはりこういった背徳的な行為は甘美な味がする
しかし下準備が成されていない所為か、やっぱり何処か物足りなさを感じる。素材そのままの味と言えば耳障りは良いが、結局の所工場生産の量産品と変わらないような一定の上限を越えることはない
「うおおおおぉ!!! 」
叫び声を上げながら短剣を大きく振りかぶったプレイヤーは私が手を下す前にフレンジー・ボアによってアイテムとコルに変換された
残る大楯使いのプレイヤーは四方八方から襲い掛かるフレンジー・ボアに抵抗できずじりじりとその命を赤色へと染めていった
その様子を眺めながら、私はフレンジー・ボアの処理を済ませ、HPが数ドットまで減少した大楯使いに近寄り、短剣による一刀を下す
ターゲットの全滅を確認。私が殺害したプレイヤーが11名、フレンジー・ボアに倒されてしまったプレイヤーが一人。一人分のロスであるが、初めてにしては上手くやれた方だと思考を改める
次からの改善点を纏めながら、私はドロップしたアイテムとコルの回収を進めた。残念ながらその全てを回収することは重量制限に引っ掛かったので出来なかった
私はプレイヤーからドロップしたアイテムの内金目のものだけを抜き取りその場で破壊した
レベルの上昇値もかなりの物だ。これで数日間の遅れは取り戻せたのではなかろうか
しかし遅れを取り戻した程度て満足する事は出来ない。より速い攻略を、一日でも早くこの浮遊城を駆け上がらなければ、彼女を救うことは出来ない
ならばそれを成すためには先ず何から始めれば良いか
短期間の目標を掲げよう。一刻も早くこの城を落とす。その為に一先ずは──二週間での第一層攻略
成功すればかなり大きなメリットなるが、失敗すればより長期的な停滞を生むことになる。けれどもやるしかない
一年と言う短いタイムリミットでこのデスゲームを攻略するには、常に危険と隣り合わせの道を歩む他にない
獲得したSPを割り振った後、私は迷宮区を目指し、短剣を片手に街道を駆けた
お風呂入って少し寝たら続き上げます。多分十時くらい?
第一層フロアボス攻略後の展開について。階層スキップして二十五層のクウォーターポイントの話から赤鼻のトナカイやら圏内事件の流れに入ろうかと思うんですが、二十五層までの主人公の話は冒頭でさらっと開示するだけで良いですか?
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いいよー
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駄目だ。一話分使ってちゃんと書け
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作者に任せる